現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
部室から戦場は一気に拡大した。
霧と火花が交錯し、砕けたガラスと破片が床を覆う。崩れた壁の向こう――校舎の廊下から、異形の気配が続々と溢れ出していた。
そんな中、太から情報が提供される
「皆さん、コイツらは《生体融合型兵装》――通称《V.I.T.A.L.(ヴァイタル)》です!ネクスト社と神宮寺家が共同開発した、魔族を素体とした融合機械兵です」
魔族、術式、機械。三つの異質を無理やり一つに繋ぎ止めた歪な存在。
言葉もなく、ただただ純粋な“殺意”だけが、空間を支配する。
皆、情報の出所に疑問を持ち、察した太は
「すいません、説明は戦いの後にします」
と頭を下げる。
「……臨時休校にしておいて正解だったわね」
春佳奈が銃を構えながら、肩越しに静かに呟いた。
──
ランカー達も部室から脱出。自然と、それぞれが《V.I.T.A.L.(ヴァイタル)》を相手取る。
【春佳奈&ふとし vs スライム&ヴァイタル2体】
星璃愛を抱えた黒オーガの背後。そこに、門番のように立ちふさがる巨大スライム。
ぬるり、ぬるりと全身を蠢かせ、不気味な呻きを漏らす。
それは怒りでも怨嗟でもない。否――“意思”を持ったような、強い殺意。
「……そうだよな。俺の延命に使われた命。……その残骸がお前ってわけか」
ふとしの拳が、音もなく震える。
「来い……いや、違う。ごめんな。俺から行かなきゃ、だよな」
――爆符展開、一拍。
拳撃が火花を纏い、唸りを上げる。
だがスライムは分散、その攻撃をかわし、逆に粘液を刃と化し、無数の刃がふとしへと迫った――!
「くっ、罠か……っ!」
その瞬間――天井が崩れる。
轟音。瓦礫。激震。
「任意発動型術式――起動!」
春佳奈の声とともに、ふとしの足元が崩落。
スライムごと足場を落とす、罠型地形術式。
「先輩、ありがとうございます!」
「次はベレッタ。気をつけて。あのスライム、思考能力あるよ。私はヴァイタルの相手、任せたわ」
ふとしの背中に声をかけ、春佳奈は2丁ベレッタを構える。
「右から来るわ、バースト・一番弾装!」
「了解!」
ふとしは再び肉薄。掌に赤い符式を展開。
「――喰らえ、《符式転撃・双掌》!」
だがスライムはまたも分散し、核を回避。
ふとしの拳は虚空を打ち抜いた。
「そりゃ、死にたくないよな……でも、ごめん。また謝ってる……!」
彼の目に宿るのは怒り、悲しみ、そして――決意。
「弾倉切り替え!」
(ふとしくん……教えたこと、ほとんど身に付いてる。実戦でここまで成長するなんて……!)
春佳奈は2丁銃を軽やかに操る。跳躍、滑走、旋回。
《地属性・重力弾》でスライムの粘性を封じ、
《貫通弾・スティンガー》でヴァイタルの頭部に穴を開ける。
(頭撃ったのに動いてる!?いや、治ってる!?)
動揺し僅かに注意が散漫となる。
「先輩、背後ッ!」
「分かってるッ!そっちにもいってる!」
咄嗟に足元に魔法陣を展開、《爆裂防壁》で間合いを取る。
「援護、助かります。……もう一発、行きます!」
ふとしは三重術式を同時展開。
その掌から、極限の魔力が溢れ出す。
「《循環回路・三重結印》……砕け!」
拳がスライムの核へと突き刺さる――
「――《奔叩》ッ!」
核を貫いた一撃。轟音と共に、スライムは霧となり崩れ落ちた。
──
「……」
ふとしはその場に立ち尽くす。
「お疲れ様。骨、筋肉、打撲程度ね。拳の出力は……うん、及第点」
汗を拭いながら、彼は振り向く。
そこには――ヴァイタル2体をすでに沈めている春佳奈の姿。
「……ありがとうございます」
「今は息を整えて。気は緩めないで、次は他のランカーの援護へ向かうわよ」
「はいっ!!」
(この人のもとにいれば、俺はもっともっと強くなれる……理想の自分になれる)
──
春佳奈は、歯を食いしばる。
“守りたい”という想い。
“より良くしたい”という願い。
……でも現実は、銃を構え、平和を謳いながら敵を撃つ。暴力でしか守れない日々。
(私がやってるのは、理想と真逆……それが、悔しい)
力が足りない。
言葉だけじゃ、何も変えられない。
――それが現実。
「……私は、まだまだ無力だ」
──
別の戦場では、3人のランカーがヴァイタル2体と死闘を繰り広げていた。
少女、阿戸は暗殺術式でナイフを操り、関節を断つ。
巨大盾と防御術式で守りを固めるのはヒゲ男(ヒゲダン)。重力で敵を押し潰す。
中性的で性別不明な通称ミセス。優秀な狙撃手。雷矢を連射していた。
「チィ、高速再生持ちかよコイツら! 阿戸。一旦下がれ!」
「うっせぇわ!私のこと守りすぎ、良いからミセスさんを守ってよ!」
「僕の援護とヒゲダンさんがいなかったら、さっき頭半分無くなってたよ。…って、バカ!前見なさ――」
「うっせぇ、うっせぇ!わかってるってば……あ……」
ナタが迫る。暗殺少女の目に、その軌道だけが焼き付いた。
もう一体のヴァイタルにミセスは弓を破壊され、ヒゲダンに庇われる。勢いのまま逆方向へ吹き飛ぶ。
少女、阿戸は、もう――助からない。
そう思った。
だが、
――ターン。
――ターン。
静かに響く、2発の銃声。
2体連続のヘッドショット
―直後―ヴァイタルは倒れ、沈黙した。