現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい   作:サモア リナン

18 / 20
うぉー、むーずかーしーいーぞー。


第19話 成長

部室から戦場は一気に拡大した。

 

霧と火花が交錯し、砕けたガラスと破片が床を覆う。崩れた壁の向こう――校舎の廊下から、異形の気配が続々と溢れ出していた。

 

そんな中、太から情報が提供される

 

「皆さん、コイツらは《生体融合型兵装》――通称《V.I.T.A.L.(ヴァイタル)》です!ネクスト社と神宮寺家が共同開発した、魔族を素体とした融合機械兵です」

魔族、術式、機械。三つの異質を無理やり一つに繋ぎ止めた歪な存在。

言葉もなく、ただただ純粋な“殺意”だけが、空間を支配する。

 

皆、情報の出所に疑問を持ち、察した太は

 

「すいません、説明は戦いの後にします」

 

と頭を下げる。

 

 

「……臨時休校にしておいて正解だったわね」

 

春佳奈が銃を構えながら、肩越しに静かに呟いた。

 

──

 

ランカー達も部室から脱出。自然と、それぞれが《V.I.T.A.L.(ヴァイタル)》を相手取る。

 

【春佳奈&ふとし vs スライム&ヴァイタル2体】

 

星璃愛を抱えた黒オーガの背後。そこに、門番のように立ちふさがる巨大スライム。

 

ぬるり、ぬるりと全身を蠢かせ、不気味な呻きを漏らす。

それは怒りでも怨嗟でもない。否――“意思”を持ったような、強い殺意。

 

「……そうだよな。俺の延命に使われた命。……その残骸がお前ってわけか」

 

ふとしの拳が、音もなく震える。

 

「来い……いや、違う。ごめんな。俺から行かなきゃ、だよな」

 

――爆符展開、一拍。

 

拳撃が火花を纏い、唸りを上げる。

 

だがスライムは分散、その攻撃をかわし、逆に粘液を刃と化し、無数の刃がふとしへと迫った――!

 

「くっ、罠か……っ!」

 

その瞬間――天井が崩れる。

 

轟音。瓦礫。激震。

 

「任意発動型術式――起動!」

 

春佳奈の声とともに、ふとしの足元が崩落。

スライムごと足場を落とす、罠型地形術式。

 

「先輩、ありがとうございます!」

 

「次はベレッタ。気をつけて。あのスライム、思考能力あるよ。私はヴァイタルの相手、任せたわ」

 

ふとしの背中に声をかけ、春佳奈は2丁ベレッタを構える。

 

「右から来るわ、バースト・一番弾装!」

 

「了解!」

 

ふとしは再び肉薄。掌に赤い符式を展開。

 

「――喰らえ、《符式転撃・双掌》!」

 

だがスライムはまたも分散し、核を回避。

ふとしの拳は虚空を打ち抜いた。

 

「そりゃ、死にたくないよな……でも、ごめん。また謝ってる……!」

 

彼の目に宿るのは怒り、悲しみ、そして――決意。

 

「弾倉切り替え!」

 

(ふとしくん……教えたこと、ほとんど身に付いてる。実戦でここまで成長するなんて……!)

 

春佳奈は2丁銃を軽やかに操る。跳躍、滑走、旋回。

 

《地属性・重力弾》でスライムの粘性を封じ、

《貫通弾・スティンガー》でヴァイタルの頭部に穴を開ける。

 

(頭撃ったのに動いてる!?いや、治ってる!?)

 

動揺し僅かに注意が散漫となる。

 

「先輩、背後ッ!」

 

「分かってるッ!そっちにもいってる!」

 

咄嗟に足元に魔法陣を展開、《爆裂防壁》で間合いを取る。

 

「援護、助かります。……もう一発、行きます!」

 

ふとしは三重術式を同時展開。

その掌から、極限の魔力が溢れ出す。

 

「《循環回路・三重結印》……砕け!」

 

拳がスライムの核へと突き刺さる――

 

「――《奔叩》ッ!」

 

核を貫いた一撃。轟音と共に、スライムは霧となり崩れ落ちた。

 

──

 

「……」

 

ふとしはその場に立ち尽くす。

 

「お疲れ様。骨、筋肉、打撲程度ね。拳の出力は……うん、及第点」

 

汗を拭いながら、彼は振り向く。

 

そこには――ヴァイタル2体をすでに沈めている春佳奈の姿。

 

「……ありがとうございます」

 

「今は息を整えて。気は緩めないで、次は他のランカーの援護へ向かうわよ」

 

「はいっ!!」

 

(この人のもとにいれば、俺はもっともっと強くなれる……理想の自分になれる)

 

──

 

春佳奈は、歯を食いしばる。

 

“守りたい”という想い。

 

“より良くしたい”という願い。

 

……でも現実は、銃を構え、平和を謳いながら敵を撃つ。暴力でしか守れない日々。

 

(私がやってるのは、理想と真逆……それが、悔しい)

 

力が足りない。

 

言葉だけじゃ、何も変えられない。

 

――それが現実。

 

「……私は、まだまだ無力だ」

 

──

 

別の戦場では、3人のランカーがヴァイタル2体と死闘を繰り広げていた。

 

少女、阿戸は暗殺術式でナイフを操り、関節を断つ。

巨大盾と防御術式で守りを固めるのはヒゲ男(ヒゲダン)。重力で敵を押し潰す。

中性的で性別不明な通称ミセス。優秀な狙撃手。雷矢を連射していた。

 

「チィ、高速再生持ちかよコイツら! 阿戸。一旦下がれ!」

 

「うっせぇわ!私のこと守りすぎ、良いからミセスさんを守ってよ!」

 

「僕の援護とヒゲダンさんがいなかったら、さっき頭半分無くなってたよ。…って、バカ!前見なさ――」

 

「うっせぇ、うっせぇ!わかってるってば……あ……」

 

ナタが迫る。暗殺少女の目に、その軌道だけが焼き付いた。

 

もう一体のヴァイタルにミセスは弓を破壊され、ヒゲダンに庇われる。勢いのまま逆方向へ吹き飛ぶ。

 

少女、阿戸は、もう――助からない。

 

そう思った。

 

だが、

 

――ターン。

 

――ターン。

 

静かに響く、2発の銃声。

 

2体連続のヘッドショット

 

―直後―ヴァイタルは倒れ、沈黙した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。