現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
香坂さんと別れた後も、心のざわつきは収まらなかった。あの人の言葉は確かに優しかったけれど……どこか、核心を避けているような違和感があった。
「ねえ、春佳奈」
隣を歩く星璃愛が、少し眉をひそめながら声をかけてくる。
「やっぱり、昨日のこと……ただの魔物騒ぎじゃない気がするよね」
「うん。あのフードの人物も、普通じゃなかった。それに……スライムも明らかに異常だった」
「香坂さんも、全部は話してない気がするな」
奏先輩が落ち着いた口調で言う。
「法術協会の人間だ、情報開示にも制限があるんだろう」
私たちは古研の部室に戻り、昨日の出来事をもう一度整理した。
「あの人物が言った、『未成熟の人間ごときでも、これほどか』って言葉……あれ、私たちを試してたように聞こえない?」
私の言葉に、星璃愛が自分のスマホを取り出す。
「ねえ、これ見て。最近、全国で原因不明の魔力反応が観測されてるみたい。ほとんどがすぐ収まるから、ニュースにも小さくしか載ってないけど…」
彼女が見せてくれた記事には「局地的な魔力の乱れ」「未特定エネルギー波動を感知」などの文言が並んでいた。
「昨日の出来事も、その一環……かもしれない」私は呟いた。
「だとすると、あのフードの人物は、その背後にいる何かの“観察者”か“発起人”なのかもしれないね」
奏先輩が静かに続ける。
「そして……春佳奈ちゃんの魔法陣構築と星璃愛ちゃんの魔法術式に興味を持っていたようだった」
私は、《マスケット・ビエント・エスピラル》の魔法陣を思い出す。リボルバー型とは違う、単発型の一点集中構造。粘体のような敵には、あれが最も効いた。
「………」
星璃愛は俯いている
「もっと、応用できるようにしないと……」
私は呟くようにそう言って、立ち上がった。
—
放課後、私は一人、旧校舎の裏庭にいた。誰もいない静かな場所で、新しい魔法陣の試作をしていたのだ。地面にチョークで線を引き、仮の構築を開始する。
今回は、防御と回復を合わせた魔法陣だ。一層は全方位防御にしたいけど、威力軽減率が低い、だから突破される事を前提とする。ダメージ分散のため、衝撃を受けた瞬間に全方位が全部壊れる方が良いかもしれない。まぁ大事なのは局所的な集中防御に繋げるための時間稼ぎだ。欲を言うなら貫通されても、ある程度動けるまで自動回復する重層構造の発展した障壁を作りたい。名付けて「多響防崩壁・反転回架」私の中で少しずつ、魔法陣のイメージが形を成していく。
集中していた私の背後に、ふと気配が差した。
「熱心ですね」
振り向くと、そこには昨日職員室で出会った香坂さんが立っていた。
「香坂さん……?」
「驚かせてごめんなさい。魔力波形のログを見ていて、あなたがここで何かしているのが分かったの」
彼女は微笑みながら、私の描いた魔法陣に視線を落とす。
「これは……防御型ですね。重層展開式、3点式投影……面白い発想です」
「昨日のことで、防御の大切さを痛感したんです」
「実践から学ぶ――とても大事なことです」
香坂さんの笑みが、少しだけ真剣なものに変わった。
「……春佳奈さん。あなたに、正式にお願いがあって来ました」
「お願い、ですか?」
「私は法術協会の《境界異常調査部門》に所属しています。昨日の事件――あれは、自然発生ではありません。協会では、意図的な侵食の可能性を疑っています」
私は息を呑んだ。やはり、あの異常は偶然ではなかった。
「今、私たちは断片的な情報から背後を探っています。ですが、鍵になるのは、あの場にいた者の“体感”と“魔法構築”です。あなたの魔法陣――あれは非常に特異な波形を持っていました。あなたの魔力パターンと知識と経験が、協会にとって重要な手がかりになる可能性があるのです」
香坂さんは、私の目をまっすぐ見ていた。
「もちろん、危険な任務をお願いするわけではありません。ただ……協力していただけるなら、私たちもあなたを全面的にサポートします」
胸の奥で、なにかが脈打つ。
怖い。昨日のあの戦いを思い出すと、足がすくむ気がする。でも、それ以上に――
「知りたいです。あの人が何者だったのか。何のために……私たちを見ていたのか」
私は香坂さんを見返した。
「私にできることがあるなら、協力します」
その言葉に、香坂さんはようやく表情を緩めた。
「ありがとう。近いうちに、改めて連絡させていただきます」
でも
不安は消せない
「あの!」
だから 呼び止めてしまった
「何かしら?」
私は
「先輩と友達も一緒じゃだめですか?」
後から、この選択を後悔する。
「昨日一緒にいた2人ね、聞く限り、優秀な評価を受けているみたいだし、こちらからお願いしたいぐらいよ」
彼女が去ったあと、私は茜色に染まった空を仰いだ。
――これはほんの始まり。
戻れるなら戻りたい過去
私たちの知らない何かが、もうすぐ動き出す。
私は、それをただ見ているだけの存在にはなりたくないって思ってた。
選択による後悔が襲ってきても、止まることは出来ない。
自分の信じる魔法で、何ができるかを確かめたい。
そんな使命感と、葛藤に、
私は・・・