現代魔法術はアプリで効率化!私は私の魔法術を極めたい 作:サモア リナン
数日後、香坂さんから連絡があった。指定されたのは、法術協会の地方支部。少し緊張しながら3人で足を踏み入れると、広い会議室に通された。そこには、香坂さんの他に数名の研究員のような人物がいた。
「皆さん、ようこそ。早速ですが、あなた達にお願いしたいのは、昨日の粘体種との戦闘における魔力波形の解析です」
香坂さんはそう言うと、モニターにグラフのようなものを映し出した。それは、私が《マスケット・ビエント・エスピラル》を発動した際の魔力の流れを記録したものらしい。
「春佳奈さんの魔法陣は、従来の古式魔術とは異なる、独特の位相を持っています。特に、風の螺旋状の干渉パターンが興味深い。この波形を分析することで、あの粘体種の対策やフードの人物の痕跡がわかるかもしれません」
私は、モニターに映し出された複雑なグラフを食い入るように見つめた。自分の魔法が、こんな風に客観的に分析されるのは初めての経験だった。
「私に、何ができるでしょうか?」
「あなたの魔法構築の理論、そして発動時の感覚を、私たちに詳しく教えていただきたいのです。それを基に、シミュレーションを行い、対抗策を練りたいと考えています」
さらに
別の研究員の一人が、巨大なディスプレイに映された戦闘記録を指さした。そこには、各属性の魔法術式を展開・生成し、巧みに操作し、最終的に再吸収し再運用する星璃愛の術式構築が映っていた。
「君たちの戦闘記録、特にこの子――佐藤星璃愛さんの魔法操作が興味深くてね」
「この表現方法と構築、操作はアプリ由来の通常魔術ではまず再現できません。制御式が独自拡張されている。君、何か特殊な書式を使っているのかい?」
「うーん、もともとは《術式分離展開》っていう同人理論をベースにしてます。自分なりに解釈と修正を加えて……」
星璃愛がタブレットを操作し、自作の制御書式の記録を提示した。
研究員が目を丸くする。「これは……この行の表記……公式の基本制御定義と違うな」
それから数時間、私達は自分の魔法について、できる限り詳しく説明した。リボルバーアークも含めて魔法陣の構造、魔力の流れ、そして発動時の感覚。研究員たちは熱心にメモを取り、様々な質問を投げかけてきた。
疲れる作業ではあったが新しい発想が浮かんでは検討したりと実りある時間でもあった。奏先輩は魔法術アプリの改善と古式魔法術との良いとこどりが出来ないかなど研究員から指導を受けていた。
ただここで、星璃愛が数時間で研究員と専門的な話ができるようになるどころか、改善点の指摘までするようになっていた。本当に天才っているんだなぁとか、言い出して周りがざわついていた。なんとなく、そうなるかな気はしてた。
奏先輩は予想外だったのか目を丸くして固まってたので、つい笑ってしまった。
「……あれ、このパラメータ……おかしくない?」
その星璃愛が地表魔力残滓測定値と自身の地図アプリ画面を見比べ、眉をひそめた。
香坂さんがそっと声をかけた。「どうしたの?」
星璃愛への評価はうなぎのぼりで無視できないところまで来ていた。
「さっき見た最新の術式記録と、戦闘時の魔力パターン、地表魔力残滓測定値、私の温度測定地図アプリを照合したら一部の地域に不自然な改竄パターンが検出されているの。これらを全部組み合わせなきゃ違和感すら見つからなかった。すごく巧妙ね」
私は思わず口を挟んだ。「それって、誰かが意図的に書き換えてるってこと?」
「可能性はあるわ」香坂さんが頷く。
「プラスして、この場所、地図には載ってない建物があるみたい。衛星写真で見ると、結構大きいんだけど……」
「春佳奈さんの魔力波形データが示す干渉パターンからフードの人物がある程度の時間滞在した可能性がある地域が115箇所…その中の1箇所も、この場所を示しているわね。」
さらに香坂さんは続けて
「フードの人物に会えるかもしれないわね。流石に、これ以上は安全が確保できないわ、あとは私たちプロに任せて下さい、おかげで想定より早く場所を特定できました。ありがとうございます」
早速、調査員やランカーを要請して慌ただしく準備を進める香坂さん達を私たちは見ていることしかできなかった。
帰宅途中、暗い表情だった星璃愛が「私達のおかげで見つけれたんだから、遠目で見るぐらいは許されると思わない?それに実際に行って観察する事の意義は大きいよ!」
と急に口角を上げて提案してきた。
どうやら、功績を横取りされたような気持ちになっているのかもしれない、実は私も同じ事を思っていたから手に取るようにわかる。
「さすが、星璃愛!私も思ってた」
私たちは頷いた。もはや、好奇心だけではない。背後に見え隠れする“意図された何か”を、見過ごせなくなっていた。
湊先輩も「どうせ止めても行くんでしょ、仕方ないわねぇ、危ないと思ったらすぐに帰るよ」とやれやれと言いながらもついてきてくれた。
⸻
指示された場所は、鬱蒼とした木々に囲まれていた。注意深く周囲を探索すると、確かに、古びたコンクリートの建物がひっそりと佇んでいるのを見つけた。表札などは一切なく、まるで隠されているかのようだ。
「ここが……地図に載ってなかった建物か」
星璃愛が小さな声で呟く。建物の周囲には、強力な魔力の残滓が漂っていた。
「流石というか、多国共同の境界管理軍と魔法術協会に所属しているランカーがたくさんいるね」
その影響で魔力残滓が多くあるのだろう。
奏先輩の誘導で私たちは建物を見れる位置で観察が出来ていた。どうやらフードの男はいなかったようだが、衝撃的な場面でもあった。
中からは意識のない子供達が何十人も毛布に包まれて運ばれていたのだ。
「あんな小さな子がたくさん、許せない・・」
「なんで、、こんな」あまりにも壮絶な場面で目を伏せる私たち、さらに追い討ちを掛けるような光景に私は
「う、嘘でしょ!?」
「しー!大声出しちゃだめだよ」
先輩に口を押さえられた。
ランカーや調査員の人達には気付かれなかったが、それでも自分の心臓がバクバクと大きな音を立てているのが聞こえて来た。
星璃愛も「だめだよ、こんな事あっちゃだめだよ」
と口に両手を当てて震えていた。
先輩は「これは・・・流石に予想外すぎるね」
運ばれて来たのは人間の子供だけではなかった、ケンタウルス、アラクネ、ハーピィ、マーメイド、オーガ、ケットシー、ワーウルフ、ワーケン、ドラゴニュートなど、大災害時や架空の話でしか見た事や聞いたことのない境界の向こうにいるはずの人型魔族の子供達だった。