GQuuuuuuX式ちいかわ(臨戦)になった人がなんやかんやで諦める話 作:何でもいいでしょ?
いつもの時間が近付いてきたから、シュウジの隠れ家からお暇して、今日も今日とて闇バイト……だったのだが、今日はちょっと違った。
いつものように、密輸品のインストーラーデバイスを受け取ろうとした訳なのだが、ひょいと取り上げられ、ちょっと相談があるとラーメン屋に連れてこられた。
「娘の発表会があってよ。頑張ったご褒美に何かあげたいんだが……何がいい?」
麺を啜る手と口を止める。
「娘さんが欲しいものでいいんじゃないんですか?」
正直これとしか言えない。
別に私はその娘さんを知ってる訳でもないし、いらないもの渡されて喜ぶかと言われたら、微妙だし。
「欲しいもの、か」
顎に手を当てて、考え込み始めたのを横目に流し見、再び麺を口に吸い込み始める。
久しぶりの濃厚とんこつラーメンの味わいに口が喜ぶのを感じた。
「そういえばさ、お前、金貯めてどうすんだ?」
「ん」
「夢があるとか、言うなよ」
レンゲでスープを掬って口に含み、じっくりと味わったあと、ひと仕事終えたレンゲを皿に置く。
「いつか、地球に行きたいと思ってて」
「地球に?なんで地球なんかに」
眉を寄せる上司の目を見つめる。
「約束したんです」
「約束?地球に行こうってか?」
訝しげに目を細める上司。
その目に静かに頷き、あの日のマチュの言葉を口にする。
「いつになるかは分からない。でも、絶対行こうって」
再び食べる手を進め始める。
これ以上は言わない。いくらこんな私にも仕事をくれると言っても、所詮は密輸品のブローカー。非合法な売人だし、話しすぎるのはあまり良くない。
「……ありがとよ。参考にはなった」
「そうですか。それはよかったです。こちらこそ、ご馳走様でした」
「気にするな。ま、これからも頼むぞ」
「こちらこそ」
元々奢ってもらうという話だったこともあり、会計は向こう持ち。お代を払ってもらい、店を出て帰路に着く。
結局、今日は相談聞きながらラーメン食べただけで終わった。
お金は入らなかったけど、お陰様で久しぶりに美味しいものも食べれたし、まあいいかな。
我が家であるアパートに着き、鍵を開けて中に入る。
広いとは口が裂けても言えないけど、女の一人暮らしをする分には別段問題ない1LDK。
むしろ、私の立場からすれば贅沢にも程がある家だろう。
……違法建築という部分に目を瞑れば、だけど。
バッグを置き、トイレ兼用のユニットバスルームへ。
脱いだ服は袋に入れてまとめておき、後日コインランドリーで洗濯する。
蛇口を捻り、流れ出す水流が湯船にお湯を貯める中、少しずつ水位が上がっていく湯に浸かる。
水道代を気にしながら体を洗い、もう一度湯に浸かり、体を温めてから上がる。
タオルで体の水気を取り、パジャマに着替える。
窓を開けて外気を室内に取り込み、ベッドに腰掛けた。
「明日が最後のクラバ、かな」
シュウジの体調は落ち着いて来た。
原因はまだよく分かってないけど、いつものようにスプレーアートし始めたし、元気にはなったんだろう。
明日のクラバ大丈夫かな…という不安も無くはないけど、本人が任せてって言ってたし、大丈夫だよね。
「はぁ」
小さく息を吐き、カーテンに覆われた窓に目を向ける。
時折風が吹き、ゆらゆらと揺れるカーテンを見つめること暫く。
立ち上がってカーテンを開け、窓の外を眺める。
空がある方向へ目を向けても、見えるのはもう一つの街並み。
コロニーの中では、本当の空が見えることはない。
「
いつかのマチュが、シュウジと私に語った話。
憧れと興奮の色を滲ませた、喜色満面の笑みで地球について話す中で、ぽつりとこぼされたその言葉。
理由こそ分からないものの、その言葉は、私の記憶に強く焼き付いていた。
直径6.4km、113.5秒に一回回転し、地球と同じ1Gの重力を生み出す宇宙に浮かぶ人口の大地。スペースコロニー。
そんなコロニーの一つ、イズマコロニーに私達は住んでいる。
……そういえば、このコロニーも、築70年が過ぎたんだっけ。
一生のうちには2、3回は新しいコロニーに移り住まないと行けないって聞くし、このコロニーもいつまで持つんだろ。
窓を閉め、充電コードに挿していたスマホを手に取る。
元々中古の、それも使い古された機種だからバッテリーも弱ってしまっている。
だからあまり頻繁に操作しないように気を付けてはいた。いたんだけど、如何せん今日は
コードを挿したまま電源を入れ、パスワードを入力。
端末の起動が終わると、トークアプリの通知が振動と共に表示された。
送り主は……マチュ。
「マチュ、連絡くれてたんだ」
頬が緩むのを自覚しながら、通知のステータスバーをタップ――しようとしたところで、書かれていた文の異常に気付く。
「時間が無いかもしれないって、なにがあったの?」
言葉の節々からマチュの焦りが伝わるその一文。
何があったんだろ。絶対
「……っ、ええい!なるように、なれ!」
意を決し、ステータスバーをタップしてトークアプリを開く。
少しの時間を置いて表示されるトーク画面。
「えっ」
目に入ったそれに、思わず戦慄した。
『シュウジの隠れ家がバレた!赤いガンダムを隠せるところ、どこか知らない!?』
――直感的に悟った。
これまでの日常は、終わってしまったんだって。
あの緑のおじさん達から解放された後のこと。
何も考えられずに、私はただ歩いていた。
どこに行きたい訳でもなく、目的地がある訳でもない。
本当にただ、歩くだけ。
思い返すのは、さっきのこと。
『――ああ、そうでしたね。ニュータイプといえば、マチュさんもそうかもしれませんね?』
『――えっ?』
『――あれは、誰にでも動かせる代物ではないんですよ。ジークァックスというもの、ね』
『――っ!?』
あの目、あの目だ。
冷たくて、鋭くて……何よりも、暗い。そんな、怖い目。
『――ここで別れるのが残念に思えますが…マチュさんのお陰で、貴重な実働データも得られましたからね。ここはひとつ、良しとしておきましょう』
浮かぶ微笑みに変化はない。
でも、なにかが違う。決定的になにかが違うんだって、私の勘が叫んでいた。
ニュータイプ。あいつは、その言葉を口にした瞬間に変わった。
見た目は変わってない。でも、その中身が、確かに。
怖くて仕方なかった。
逃げ出したくてしょうがなかった。
だから……
『――そうそう、気をつけてくださいね』
『――明日のクラバ。いえ、この場合、明日一日というべきでしょうかね?』
一目散に逃げ去る中で、後ろから聞こえてきたその言葉。
あいつがなにを考えてるのか、それが何を意味するのかも、考えたくなかった。
歩いて、歩いて、最後には走って。
辿り着いたのは、いつもの場所で。
ポメラニアンズ。ジークアクス。私の、居場所。
みんな仲間なんだって……そう信じてた。
『――赤いガンダムの隠れ家はもう見つけてある』
『――
私のせいだ……私のせいで、シュウジが。
「シュウジの新しい隠れ家を見つけなきゃ……じゃないと、シュウジは……」
「ガンダムモイッショ!」
ハロの声に、ハッとする。
そうだ。シュウジは赤いガンダムを絶対に手放さない。
ガンダムと一緒に隠れられる場所を探さなきゃいけないんだ……
「うん?」
そこまで考えて、ふと思ったのだ。
そういえば、ニャアンもガンダム持ってたよね?と。
あの4号機という青いガンダム。
その大きさはシュウジの赤いガンダムにも負けていなかった。
今まで噂にも聞いたことなかったし、きっとどこかに隠してる筈……
「ニャアンに聞かなきゃ――えっ」
ポケットからスマホを取り出し、トークアプリをタップ。
友だち欄からニャアンの名前を探し出し、ニャアンから何度か連絡が来ていたことに気付く。
内容は大きく分けて二つで、私を心配しているものと、私に謝りたいというもの。
「ッ!」
返したい気持ちも山々にあった。
でも、今はそれどころじゃない。フリック入力で次々文字を打ち込んで行き、送信。
『シュウジの隠れ家がバレた!赤いガンダムを隠せるところ、どこか知らない!?』
少し待って、それでも返信は来なくて。
もう少し待ったら、あとちょっと待ったらと先延ばしにしても、やっぱり返信は来なくて。
「……そうだよね。当たり前だよね」
よく考えなくても分かる話だった。
謝りたいって言ってくれたニャアンの気持ちを蔑ろにするなんて、なにやってるのかな……私。
「ごめんなさい」
今更謝ったところで意味なんてない。
この場にいないニャアンに聞こえる筈もない。
それでも、謝らずにはいられなかった。
自分の口でも、文字でも。
「ダイジョウブカ?ダイジョウブカ?」
「ハロ。うん、私は大丈夫」
分かってる。虫のいい話だって。
でも、今だけは力を貸して欲しい、シュウジのために。
『本当にお願い!時間が無いかもしれないから!』
全部私のせいなのに、白々しいよね……軽く自己嫌悪しつつも、素早く入力、送信。
ドキドキしながら返信を待っていると、特徴的な通知が鳴り響く。
「っ!来た――って違うし!」
お母さんじゃん!紛らわしいなぁ。
「まだ上手く行ってないってば。そもそも会えてないし」
書かれていたのは、仲直りできたかを問う言葉。
「もうちょっと探したいっと……三者面談?分かってるってば」
時間までには学校向かうからっと。
胸をぽんと叩くアニメキャラのスタンプを送ると、心配そうにため息を吐く犬のスタンプが返ってきた。
し、信用がない……
流石に三者面談までには返信くれるよね…?
「こんにちはアマテさん」
「……こんにちは」
――結局、あれから返信は返って来なかった。なんなら既読すら付かなかった。
なんで、なんで見てくれないの?
もしかしてニャアンにもなにかあったんじゃ……
先生とお母さんを待つ間、ちっとも落ち着けなかった。
ずっと嫌な想像ばかりが頭に浮かんで、思わず拳を握りしめる。
窓の外に目をやり、この景色のどこかにいるであろう2人に思いを馳せていると、遠くから足音のような音が聞こえてくる。
ん?あれ?なんか……機嫌悪い?
「アマテッ!」
「うぇ!?」
速いテンポで、重い足音を響かせながら教室へ入ってきたお母さん。
開口一番に怒号を上げるや否や、机になにかのプリントを……あっ。
「塾行ってないわね?毎晩何してるのよ!」
「そ、それは」
「父さんになんて言えばいいのよ!」
バレるにしてもさ、もっとタイミングとかあるじゃん。なんで今なの……
「答えなさい!」
「別に、やましいことじゃないし」
……嘘だけど。
「またそうやって……進路のことは真面目に考えて言ってたでしょ!」
「お母様、少し落ち着いてください。アマテさん、なんでもいいから、なにかやりたい事でもないの?」
「なにかあるなら話してよ。先生もお母さんも、ちゃんと聞いてあげるから」
ちゃんと聞くって……言ってもどうせ否定してくるくせに。
「地球の海で、友達と泳ぎたい」
「そういうのは進路じゃない!」
ほらね。
頬杖を付き、息を吐く。
「じゃあどうすればいいの?やりたいことなんてこれくらいしかないし、考えたってわかんないよ」
「っ、……やりたい仕事とか、なりたい職業とかはないの?」
やりたい仕事?なりたい職業?
そんなの……
「特にないよ。思いつかないし」
「特にないって……」
「アマテさん……」
ごめん、ニャアン。
やっぱり私、普通の幸せって……わかんないや。
漫画とかアニメとか見てると、「それ死亡フラグなんじゃ……」とか主人公が疑うシーンがあったりしますが、実際のところ死亡フラグだ!って気づいたりするもんなんですかね?
Simca Ⅴさん誤字報告ありがとうございます!
うちの子はジフレドくんに乗る?(4号機もエクシアとかストライクみたいな感じで、何かしらの形では出すつもりです)
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YES
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NO