GQuuuuuuX式ちいかわ(臨戦)になった人がなんやかんやで諦める話   作:何でもいいでしょ?

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今回は短めです。


04

いつもの時間が近付いてきたから、シュウジの隠れ家からお暇して、今日も今日とて闇バイト……だったのだが、今日はちょっと違った。

いつものように、密輸品のインストーラーデバイスを受け取ろうとした訳なのだが、ひょいと取り上げられ、ちょっと相談があるとラーメン屋に連れてこられた。

 

「娘の発表会があってよ。頑張ったご褒美に何かあげたいんだが……何がいい?」

 

麺を啜る手と口を止める。

 

「娘さんが欲しいものでいいんじゃないんですか?」

 

正直これとしか言えない。

別に私はその娘さんを知ってる訳でもないし、いらないもの渡されて喜ぶかと言われたら、微妙だし。

 

「欲しいもの、か」

 

顎に手を当てて、考え込み始めたのを横目に流し見、再び麺を口に吸い込み始める。

久しぶりの濃厚とんこつラーメンの味わいに口が喜ぶのを感じた。

 

「そういえばさ、お前、金貯めてどうすんだ?」

 

「ん」

 

「夢があるとか、言うなよ」

 

レンゲでスープを掬って口に含み、じっくりと味わったあと、ひと仕事終えたレンゲを皿に置く。

 

「いつか、地球に行きたいと思ってて」

 

「地球に?なんで地球なんかに」

 

眉を寄せる上司の目を見つめる。

 

「約束したんです」

 

「約束?地球に行こうってか?」

 

訝しげに目を細める上司。

その目に静かに頷き、あの日のマチュの言葉を口にする。

 

「いつになるかは分からない。でも、絶対行こうって」

 

再び食べる手を進め始める。

これ以上は言わない。いくらこんな私にも仕事をくれると言っても、所詮は密輸品のブローカー。非合法な売人だし、話しすぎるのはあまり良くない。

 

「……ありがとよ。参考にはなった」

 

「そうですか。それはよかったです。こちらこそ、ご馳走様でした」

 

「気にするな。ま、これからも頼むぞ」

 

「こちらこそ」

 

元々奢ってもらうという話だったこともあり、会計は向こう持ち。お代を払ってもらい、店を出て帰路に着く。

 

結局、今日は相談聞きながらラーメン食べただけで終わった。

お金は入らなかったけど、お陰様で久しぶりに美味しいものも食べれたし、まあいいかな。

 

我が家であるアパートに着き、鍵を開けて中に入る。

広いとは口が裂けても言えないけど、女の一人暮らしをする分には別段問題ない1LDK。

 

むしろ、私の立場からすれば贅沢にも程がある家だろう。

……違法建築という部分に目を瞑れば、だけど。

 

バッグを置き、トイレ兼用のユニットバスルームへ。

脱いだ服は袋に入れてまとめておき、後日コインランドリーで洗濯する。

蛇口を捻り、流れ出す水流が湯船にお湯を貯める中、少しずつ水位が上がっていく湯に浸かる。

 

水道代を気にしながら体を洗い、もう一度湯に浸かり、体を温めてから上がる。

タオルで体の水気を取り、パジャマに着替える。

窓を開けて外気を室内に取り込み、ベッドに腰掛けた。

 

「明日が最後のクラバ、かな」

 

シュウジの体調は落ち着いて来た。

原因はまだよく分かってないけど、いつものようにスプレーアートし始めたし、元気にはなったんだろう。

 

明日のクラバ大丈夫かな…という不安も無くはないけど、本人が任せてって言ってたし、大丈夫だよね。

 

「はぁ」

 

小さく息を吐き、カーテンに覆われた窓に目を向ける。

時折風が吹き、ゆらゆらと揺れるカーテンを見つめること暫く。

 

立ち上がってカーテンを開け、窓の外を眺める。

 

空がある方向へ目を向けても、見えるのはもう一つの街並み。

コロニーの中では、本当の空が見えることはない。

 

宇宙(そら)は足の下にある、か」

 

いつかのマチュが、シュウジと私に語った話。

憧れと興奮の色を滲ませた、喜色満面の笑みで地球について話す中で、ぽつりとこぼされたその言葉。

 

理由こそ分からないものの、その言葉は、私の記憶に強く焼き付いていた。

 

直径6.4km、113.5秒に一回回転し、地球と同じ1Gの重力を生み出す宇宙に浮かぶ人口の大地。スペースコロニー。

そんなコロニーの一つ、イズマコロニーに私達は住んでいる。

 

……そういえば、このコロニーも、築70年が過ぎたんだっけ。

 

一生のうちには2、3回は新しいコロニーに移り住まないと行けないって聞くし、このコロニーもいつまで持つんだろ。

 

窓を閉め、充電コードに挿していたスマホを手に取る。

 

元々中古の、それも使い古された機種だからバッテリーも弱ってしまっている。

だからあまり頻繁に操作しないように気を付けてはいた。いたんだけど、如何せん今日は事情が事情(高熱シュウジ)だから仕方なかった。

 

コードを挿したまま電源を入れ、パスワードを入力。

端末の起動が終わると、トークアプリの通知が振動と共に表示された。

 

送り主は……マチュ。

 

「マチュ、連絡くれてたんだ」

 

頬が緩むのを自覚しながら、通知のステータスバーをタップ――しようとしたところで、書かれていた文の異常に気付く。

 

「時間が無いかもしれないって、なにがあったの?」

 

言葉の節々からマチュの焦りが伝わるその一文。

何があったんだろ。絶対なにか(・・・)があったのは確かなんだろうけど……

 

「……っ、ええい!なるように、なれ!」

 

意を決し、ステータスバーをタップしてトークアプリを開く。

少しの時間を置いて表示されるトーク画面。

 

「えっ」

 

目に入ったそれに、思わず戦慄した。

 

『シュウジの隠れ家がバレた!赤いガンダムを隠せるところ、どこか知らない!?』

 

――直感的に悟った。

これまでの日常は、終わってしまったんだって。

 


 

あの緑のおじさん達から解放された後のこと。

 

何も考えられずに、私はただ歩いていた。

どこに行きたい訳でもなく、目的地がある訳でもない。

本当にただ、歩くだけ。

 

思い返すのは、さっきのこと。

 

『――ああ、そうでしたね。ニュータイプといえば、マチュさんもそうかもしれませんね?』

 

『――えっ?』

 

『――あれは、誰にでも動かせる代物ではないんですよ。ジークァックスというもの、ね』

 

『――っ!?』

 

あの目、あの目だ。

冷たくて、鋭くて……何よりも、暗い。そんな、怖い目。

 

『――ここで別れるのが残念に思えますが…マチュさんのお陰で、貴重な実働データも得られましたからね。ここはひとつ、良しとしておきましょう』

 

浮かぶ微笑みに変化はない。

でも、なにかが違う。決定的になにかが違うんだって、私の勘が叫んでいた。

 

ニュータイプ。あいつは、その言葉を口にした瞬間に変わった。

見た目は変わってない。でも、その中身が、確かに。

 

怖くて仕方なかった。

逃げ出したくてしょうがなかった。

 

だから……

 

『――そうそう、気をつけてくださいね』

 

『――明日のクラバ。いえ、この場合、明日一日というべきでしょうかね?』

 

一目散に逃げ去る中で、後ろから聞こえてきたその言葉。

あいつがなにを考えてるのか、それが何を意味するのかも、考えたくなかった。

 

歩いて、歩いて、最後には走って。

辿り着いたのは、いつもの場所で。

ポメラニアンズ。ジークアクス。私の、居場所。

 

みんな仲間なんだって……そう信じてた。

 

『――赤いガンダムの隠れ家はもう見つけてある』

 

『――あれ(ジークアクス)も含めて、これまでは福の神だったが、これからは疫病神になる』

 

私のせいだ……私のせいで、シュウジが。

 

「シュウジの新しい隠れ家を見つけなきゃ……じゃないと、シュウジは……」

 

「ガンダムモイッショ!」

 

ハロの声に、ハッとする。

 

そうだ。シュウジは赤いガンダムを絶対に手放さない。

ガンダムと一緒に隠れられる場所を探さなきゃいけないんだ……

 

「うん?」

 

そこまで考えて、ふと思ったのだ。

そういえば、ニャアンもガンダム持ってたよね?と。

 

あの4号機という青いガンダム。

その大きさはシュウジの赤いガンダムにも負けていなかった。

 

今まで噂にも聞いたことなかったし、きっとどこかに隠してる筈……

 

「ニャアンに聞かなきゃ――えっ」

 

ポケットからスマホを取り出し、トークアプリをタップ。

友だち欄からニャアンの名前を探し出し、ニャアンから何度か連絡が来ていたことに気付く。

 

内容は大きく分けて二つで、私を心配しているものと、私に謝りたいというもの。

 

「ッ!」

 

返したい気持ちも山々にあった。

でも、今はそれどころじゃない。フリック入力で次々文字を打ち込んで行き、送信。

 

『シュウジの隠れ家がバレた!赤いガンダムを隠せるところ、どこか知らない!?』

 

少し待って、それでも返信は来なくて。

もう少し待ったら、あとちょっと待ったらと先延ばしにしても、やっぱり返信は来なくて。

 

「……そうだよね。当たり前だよね」

 

よく考えなくても分かる話だった。

謝りたいって言ってくれたニャアンの気持ちを蔑ろにするなんて、なにやってるのかな……私。

 

「ごめんなさい」

 

今更謝ったところで意味なんてない。

この場にいないニャアンに聞こえる筈もない。

 

それでも、謝らずにはいられなかった。

自分の口でも、文字でも。

 

「ダイジョウブカ?ダイジョウブカ?」

 

「ハロ。うん、私は大丈夫」

 

分かってる。虫のいい話だって。

でも、今だけは力を貸して欲しい、シュウジのために。

 

『本当にお願い!時間が無いかもしれないから!』

 

全部私のせいなのに、白々しいよね……軽く自己嫌悪しつつも、素早く入力、送信。

ドキドキしながら返信を待っていると、特徴的な通知が鳴り響く。

 

「っ!来た――って違うし!」

 

お母さんじゃん!紛らわしいなぁ。

 

「まだ上手く行ってないってば。そもそも会えてないし」

 

書かれていたのは、仲直りできたかを問う言葉。

 

「もうちょっと探したいっと……三者面談?分かってるってば」

 

時間までには学校向かうからっと。

 

胸をぽんと叩くアニメキャラのスタンプを送ると、心配そうにため息を吐く犬のスタンプが返ってきた。

し、信用がない……

 

流石に三者面談までには返信くれるよね…?

 

「こんにちはアマテさん」

 

「……こんにちは」

 

――結局、あれから返信は返って来なかった。なんなら既読すら付かなかった。

 

なんで、なんで見てくれないの?

もしかしてニャアンにもなにかあったんじゃ……

 

先生とお母さんを待つ間、ちっとも落ち着けなかった。

ずっと嫌な想像ばかりが頭に浮かんで、思わず拳を握りしめる。

 

窓の外に目をやり、この景色のどこかにいるであろう2人に思いを馳せていると、遠くから足音のような音が聞こえてくる。

 

ん?あれ?なんか……機嫌悪い?

 

「アマテッ!」

 

「うぇ!?」

 

速いテンポで、重い足音を響かせながら教室へ入ってきたお母さん。

開口一番に怒号を上げるや否や、机になにかのプリントを……あっ。

 

「塾行ってないわね?毎晩何してるのよ!」

 

「そ、それは」

 

「父さんになんて言えばいいのよ!」

 

バレるにしてもさ、もっとタイミングとかあるじゃん。なんで今なの……

 

「答えなさい!」

 

「別に、やましいことじゃないし」

 

……嘘だけど。

 

「またそうやって……進路のことは真面目に考えて言ってたでしょ!」

 

「お母様、少し落ち着いてください。アマテさん、なんでもいいから、なにかやりたい事でもないの?」

 

「なにかあるなら話してよ。先生もお母さんも、ちゃんと聞いてあげるから」

 

ちゃんと聞くって……言ってもどうせ否定してくるくせに。

 

「地球の海で、友達と泳ぎたい」

 

「そういうのは進路じゃない!」

 

ほらね。

 

頬杖を付き、息を吐く。

 

「じゃあどうすればいいの?やりたいことなんてこれくらいしかないし、考えたってわかんないよ」

 

「っ、……やりたい仕事とか、なりたい職業とかはないの?」

 

やりたい仕事?なりたい職業?

そんなの……

 

「特にないよ。思いつかないし」

 

「特にないって……」

 

「アマテさん……」

 

ごめん、ニャアン。

やっぱり私、普通の幸せって……わかんないや。




漫画とかアニメとか見てると、「それ死亡フラグなんじゃ……」とか主人公が疑うシーンがあったりしますが、実際のところ死亡フラグだ!って気づいたりするもんなんですかね?

Simca Ⅴさん誤字報告ありがとうございます!

うちの子はジフレドくんに乗る?(4号機もエクシアとかストライクみたいな感じで、何かしらの形では出すつもりです)

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