メスガキ志望のTS魔法少女   作:ブナハブ

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性癖(メスガキ)に人生を捧げすぎた男

 諸君はメスガキについてどれほど理解があるだろうか? ……煽り厨の糞餓鬼? 殺すぞ。

 

 まあ冗談はさておき、俺はメスガキが好きだ。「ざぁこ♡ざぁこ♡」と煽られたいし、大人を舐めやがってとわからせてやりたい。

 SとM、その両方を満たす事が出来る素晴らしい属性だと思っている。異論は認めよう。意見は変えないが。

 

 もう一度言おう。俺はメスガキが好きだ。これだけならまだ共感できる人も多いだろう。ただ俺は好き過ぎるあまり、更にその先を求めてしまっていた。そして最終的に辿り着いた欲求が、俺自身がメスガキになるというものだった。

 なんともキッショい話である。これには俺の中のイマジナリーメスガキも「え? いやキッツ…」とドン引きだ。

 だけど仕方ないだろう? 実際なりたいと思ってしまっているのだから。誰もが働かずニート生活を送りたいように、俺はメスガキになりたいのだ。

 

 まあ当然の如く俺の望みは叶わぬ願いだった。というか男の時点で無謀な話だった。ひょんな事から一度死んで転生しているが、転生後も俺の性別は野郎であった。

 え? さらっと異世界転生するな? いやいやいや、メスガキじゃないただのオッサンの体験談なんて深掘りする必要ないでしょ。俺の事は何処にでも居るただのメスガキ大好きオジサンだと、そう思ってくれるだけで良い。

 

 話を戻そう。それで転生しても男だった俺は、当たり前だがメスガキになれないまま歳だけ食っていった。転生した世界では魔法少女が魔物と戦っているという、なんともメスガキロールプレイが捗りそうな世界観なのに、残念な事この上ない。

 あと数年も経てば二度目の三十路到達だ。このまま二周目の人生を無意味に浪費するのか、そう危惧していた頃、俺は一匹の妖精と出会った。

 

 え? 男だけど魔法少女になれる? 見た目もちゃんと女の子の姿? マジで? それで魔法少女になってくれるのか、って、

 

……なるでしょ、そりゃあ。

 

▼▼▼

 

「グギョゥワアアア!」

 

 町の大通りで響く醜悪な声。その声を発していたのは、無数の触手が絡み付いて出来たような、そんな人の形をした異形である。

 

「オ゛オ゛オ゛ンギュグアアア!」

「くっ、いい加減喧しいぞ化け物が!」

 

 異形の胴体部分を裂くように付けられた大きな口からは、聞くに堪えない悍ましい絶叫を絶えず放ち続ける。

 それに対して苛立たしげに罵声を飛ばしたのは、異形から十数メートル先に一人佇んでいる少女である。

 三メートルはあろう異形は、大きな口の中から見え隠れする目玉を少女に向ける。普通なら底冷えするような場面だが、少女に恐れは無い。

 普通ではない反応を示す少女は、その服装もまた普通ではなく、青を基調とした軍服のような格好だった。

 

「【トライアングル・ショット】」

 

 一見ただコスプレをしているだけの女の子に見えるが実は違う。それを示すように彼女が力強くその単語を放った直後、彼女の背後に三角形状の半透明な物体が三つ出現。

 

……魔法少女ホーリーガーディアン。それが彼女の名であり、今まさに目の前で戦っている異形、すなわち魔物こそ、魔法少女たる彼女が倒すべき存在だった。

 

「くたばれ!」

 

 ホーリーガーディアンの命令と共に、三角形の物体三つは寸分違わず先端を魔物に向け、そして弾丸のように射出する。

 

「ア゛ギャオ゛オ゛オ゛!!!」

 

 放たれた三角形の物体はそれぞれ魔物の肩、腕、足に直撃する。心なしか魔物の絶叫にも悲鳴が含まれていた。が、

 

「ッ、まだ倒れないのか!」

 

 魔物は依然として立っていた。さっきの攻撃をかれこれ四度は受けていたが、魔物はまだ立っていられた。

 

「ギャオ゛オ゛オ゛ン゛!!」

 

 それどころか魔物は、自身の生命力に驚く彼女の隙を突いて攻撃を仕掛ける。

 彼女の華奢な胴体より二回りほど太い剛腕、魔物はそれを少女目掛けて伸ばして突く(・・・・・・)

 

「しまっ……!?」

 

 射程距離外だと思っていた所からの攻撃。意表を突かれたホーリーガーディアンは、無惨にも魔物が放った拳を受けてしまう……。

 

「キャハハ! あの程度(てーど)の攻撃で怯んじゃうなんて、ザコすぎでしょ?」

 

……少なくも、彼女はそう思っていた。

 

「……? なっ!? お、お前は」

 

 死ぬ事すら予期して思わず目を瞑っていたホーリーガーディアンは、耳元から聞こえて来たその声に恐る恐る目を開けて……自分が横抱きになって抱えられている事に気が付く。

 

「ン゛ギィァア゛オ゛オ゛オ゛!」

 

 攻撃を避けられた魔物は口を大きく開けて、口の中にある目玉でソイツを見た。……ホーリーガーディアンを抱えて上空を舞う、その少女の姿を。

 

 風に揺れる金色のツインテール、愛らしい桃色の瞳、白を基調としたワンピース、どれも彼女の美しさを彩る要素だが、注目すべき点はそこじゃない。

 頭に一対、背中に二対、そして両足に一対ずつ。大小の差はあれど、そこには純白の羽が生えていた。

 

「ザコは大人しく引っ込んで、ワタシの活躍ぶりを拝んどきなさい」

「……ッ、アンジュローゼ!」

 

 魔法少女アンジュローゼ。ホーリーガーディアンと同じく、人々を襲う魔物共を屠る戦士だ。

 

「何しに来た!」

「だーかーらー、ザコなアンタに変わってワタシがアレを倒してやるって言ってんのよ」

「必要ない! お前のような奴の手を借りるなど」

「あーもうめんどくさい。いいからほら、さっさと消えなさい」

 

 そう言うとアンジュローゼは、ホーリーガーディアンの背中に触れる。すると彼女の背中にアンジュローゼと同じ純白の羽が生えてくる。

 

「ま、待てっ! 話はまだ」

「じゃーねー」

 

 そして次の瞬間、ホーリーガーディアンの背に生えた羽は彼女の意思に関係なくパタパタと羽ばたき、あっという間に彼女を戦場から遠のかせた。

 

「……さてと」

 

 怒りの形相を向けてくるホーリーガーディアンの姿が見えなくなるまで手を振り続けていたアンジュローゼは、不意に地上から放たれた魔物の伸びる拳を易々と回避して見せる。

 

「ンギアアア!!」

「あれれー? どこ狙ってんのよ?」

 

 直後、彼女は一瞬で魔物のすぐ側まで接近し、敵の耳元で囁きかける。

 

「アンギャアアア!!」

「はいハズレー、トロすぎでしょ♪」

 

 その声に反応した魔物が後ろに向かって腕を薙ぎ払うものの、彼女は一瞬でその場から退いて今度は反対側の耳元で再び囁きかける。

 

「攻撃って言うのはー」

 

 そして次の瞬間、彼女は宙に浮いたまま片足を後ろへ大きく下げて、

 

「こうすんの、よっ!」

 

 凄まじい速度で振りかぶった。

 

「アギャアアア!!?」

「キャハハ! この程度(てーど)で喚くなんてザコすぎ〜」

 

 彼女の蹴りは魔物の脇腹に直撃。その威力は凄まじく、胴体を大きく抉り取った。

 

「グオ゛ア゛ア゛ア゛!!」

「そうピーピー泣かないの。……もうすぐ終わらしてアゲルから」

 

 未だに抵抗の意思を見せる魔物は、今度こそ攻撃を当てようと考えて……自身の体が宙に浮き始めている事に気付いた。

 

……魔物には知る由も無い事だが、アンジュローゼにコッソリと触れられた両肩には、彼女が身に付けている物と同じ純白の羽が一対ずつ生えていた。

 

「はいそれじゃあトドメねー」

 

 そう言ってアンジュローゼは魔物から距離を取ると、右足に生えた羽を大きくする。

 

「【ジャッジメント・キック】」

 

 さながらライダーキックが如く、右足を空中でジタバタともがく魔物に向け……その身で射抜く。

 

「───ァァ」

 

 魔物は、絶叫を発する暇すらなく、貫かれ、大きな風穴を開けて、その肉体を塵と化して消えていくのだった。

 

▼▼▼

 

 メスガキと一口に言っても様々なタイプがある。「お兄さんヨワヨワ〜♡」と甘い声で煽ってくる者、「大人の癖にこんな事も分からないのですか?」と冷めた口調で罵る者と、色々居る。ちなみに俺はどれも癖だ。

 

 多種多様に存在するメスガキ、そんな中でもし俺がメスガキになれるとするならば、許されるメスガキ(・・・・・・・・)になりたい。

 ほら、許されるキャラって居るだろう? 天然ドジっ子が馬鹿みたいなやらかしをしても「まあ、〇〇だしな」とあっさり受け入れられたり、極悪非道な魔王が鬼畜の所業をしても「アイツならやりかねん」と思われたり、要はそういう話だ。

 顔が良いから許される理論と同じだ。ブスがぶりっ子しても腹立つだけなこと然り。キモ豚がナンパしても即通報案件なこと然り。メスガキも素晴らしい属性だが、安易に演じるとただの性悪女としか捉えられかねないのだ。

 

 では許されるメスガキとは何か? 俺はそれを考えた時、一つの答えに辿り着いた。それは実力……もっと言うなら才能があるという事だ。

 考えてみれば当然の事だ。煽り罵倒しまくってくる相手が実際に自分より劣っていたらどの口で言ってんだと即わからせられる。逆にエリートと称されるほどに優秀なら、不満はあっても言い返す事は難しいだろう。そんなメスガキが圧倒的な力にわからせられる展開も俺は好きです。

 

 そんなこんなで、魔法少女というメスガキになる為の手段を得られた俺は、まず最初に戦闘訓練を行う事にした。その期間は約一年、魔物を倒す事なく修行に明け暮れる日々が続いた。

 仕事が結構自由に出来る物だった事もあり、みっちり修行する事が出来た。そしてその甲斐あって、俺は今の地位を確立する事に成功したのだ!

 

「くっ、また奴に軽くあしらわれてしまった」

「君も大変だね〜」

「アンジュローゼ……いったい何者なんだ!?」

 

……とんでもなく強い謎の魔法少女、という地位を。

 

「マスターは奴について何か知っていませんか?」

「うーん、残念だけど私も心当たりは無いかな。あ、最近出来た新作のパフェがあるんだけど食べる?」

「いただきます」

「まいどあり」

 

 身バレに繋がる質問が来たのでそれとなくはぐらかした俺は、彼女……ホーリーガーディアン改め近衛(このえ)警音(けいね)ちゃんに出すパフェを作り始める。

 あ、ちなみにマスターって呼ばれてるのが俺ね。喫茶店の店長をしているからマスター。店員や常連さんからはみんなそう呼ばれている。まあ俺がそう呼ばせてるんだけど。

 

(謎の魔法少女、ねぇ)

 

 パフェを作る中、俺は世間で通っている(アンジュローゼ)のイメージについてふと思う。

 

(本当はメスガキ魔法少女とかって呼ばれたいんだけどなぁ)

 

 正体を徹底的に隠している事が災いしたのだろうか。ネットに潜む一部同志達を除き、アンジュローゼの事はみんなメスガキ魔法少女ではなく、正体不明のミステリアス魔法少女という認識らしい。

 

(どうにかならんものかねぇ)

 

 折角メスガキになれたんだから、そういうキャラとして名を売っていきたいのが人情というもの。世間が持つミステリアス魔法少女という認識をどう払拭するか、それが今の俺の課題だった。

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