やあみんな、俺だ、前回メスガキについて散々語りまくったメスガキ大好きおじさんだ。今日もメスガキの良さについて語り合おうぞ。
『いったい誰に向けて喋ってるんだい君は?』
「志を同じくするみんなに向けてだよ」
「マスター、誰と話してるんすか?」
「私の
俺を
『……っと、いけない。思わずアルティーの存在を口にしちゃってた』
流れるようなツッコミに思わず返事をしてしまった。本当ならアルティーに話しかける時もこうして念話を使うべきなのに……俺もまだまだだな。
『恩人と思われてるのは嬉しいけど、別に僕は君をそのメスガキとやらにするつもりは無かったからね?』
『だとしても感謝するよ。アルティーが現れなかったら、あのままずっとメスガキになれないまま一生を終えていただろうし』
本当に、心からそう思っている。アルティーはただ自分の仕事をまっとうしただけなんだろうけど、結果的に俺の望みを叶えてくれたのだから感謝しない方がおかしい。
『うん、というか寧ろ僕はあの気持ち悪い振る舞いをやめて欲しいんだけどね?』
『やだ』
『コイツ……!』
ただ一つ残念な事に、アルティーは俺のメスガキロールプレイを全くお気に召してくれなかった。
『アルティーにはメスガキに振り回される苦労人マスコットをやって貰いたいんだけどなぁ』
『もう十分に苦労してるよ……』
メスガキ魔法少女のワガママに振り回される妖精、これほど美味しい役回りも中々無いと思う。事あるごとにその御御足に踏ん付けられるのも良し、助けを求めてきた所を突っぱねて
「マスター、お客さん来てるっすよ?」
「え? ああホントだ」
ついついメスガキ魔法少女の妖精ポジについて想いを巡らせていた俺は、少女二人が店の玄関上で立ち往生している事に気が付けなかった。
「すみません気付かなくて……って、警音ちゃんだったか」
慌てて対応しに向かうと、二人の内片方が見知った人物である事に気がつく。
「こんにちは、数日ぶりですマスター」
幼い見た目に似合わず礼儀正しい黒髪ぱっつん少女、
「こんにちは。珍しいね、大体月に一回ぐらいのペースなのに」
「ご迷惑だったでしょうか?」
「いやいや、ウチは基本暇してるからね。話し相手にもなってくれる常連さんが来てくれるのは嬉しい事だよ」
俺が前世でメスガキの次になりたかった物、それは喫茶店のマスターだ。残念ながら前世では叶わなかったが、この世界では人生二周目という利点を生かして見事自分の仕事にする事が出来た。出来たのだが……予想以上に暇な時間が多く、割とマジで話し相手が居ないとやってられないのだ。
「はは、そう言ってくれると来た甲斐があります。……そうそう、今日は後輩を一人連れて来たんです」
そう言うと警音ちゃんは、自身の後ろに隠れていた少女を前に出す。
「こ、ここ、こんにちは! あ、
「はい、こんにちは。私はこの店の店長の
緊張気味に挨拶するのを見て、俺は話しかけやすいように屈んで目線を合わせてから挨拶し返す。
「ふむ……」
パッと見は小学校高学年ほどだろうか? 少なくとも警音ちゃんより背は高く、並ぶと彼女の方が歳上に見えるが……。
「後輩と言われてたね。いくつか聞いても良いかい?」
「じゅ、十二ですっ」
「年相応……なるほど、まだ魔法少女になって間もないという所か」
「流石マスター、仰る通りです」
おっ、どうやら正解したらしい。警音ちゃんから賞賛の言葉を送られた。
(夢ちゃんより警音ちゃんの方が歳上なんだよね……うーん、未だに感覚がバグる)
良くバトルものでは相手の強さを測る時に見た目に騙されてはいけないと言うが、魔法少女業界ではそれが顕著になる。なにせ魔法少女は、歳を取らないのだ。
……いや、歳を取らないは語弊だったな。正確に言うと、少女は妖精と契約して魔法少女になった瞬間、肉体がその時点の状態に固定されるのだ。
魔法少女は肉体を固定する事により、どんなに酷い怪我でも肉体を固定していた状態に戻る事が出来る。この特性があるお陰で、魔法少女は魔物との戦いで重傷を負っても一週間足らずで完治する事が出来る。で、肉体を固定している都合上、老化も一時ストップするという訳だ。
(この事実を知った時は、ネットの同志達と一緒に合法ロリとメスガキは両立可能なのかという談議に明け暮れた物だなぁ)
メスガキの一般的な癖ポイントは、歳下の女の子が大人相手に舐めた態度で煽ってくるという所だ。しかし合法ロリだとそれが実現できない。見た目ロリならOKという同志も居たが、俺としてはやはり年齢差を大事にしていきたい。
(最終的には可愛ければ正義って結論が出たんだよなぁ、みんな違ってみんな良いメスガキって事だ)
……え? おじさんがメスガキするのは良いかって? 俺のは
「───ーぃ、おーい、マスター、またトリップしてるっすよー」
「え? あ、ああ、ごめんね二人とも」
しまった。ついつい思考がメスガキに逸れてしまった。しっかりしろ俺!
「いえ、大丈夫ですよ。いつもの事ですので」
「え? あ、いえ! お、お構いなく!」
あーほら、見慣れてる警音ちゃんはともかく、一見さんの夢ちゃんはポカンとしちゃってるじゃんか。「子どもに気を遣わせるとか、大人としてなっさけな♡」くっ! 俺の中のイマジナリーメスガキがここぞとばかりに罵ってくる!「いいからさっさと接客したら?このグズ♡ノロマ♡」はい!!!
「コホン……それじゃあ席まで案内するね」
▼▼▼
「お冷どうぞっす〜」
警音と夢の二人は
「……ふぅ」
「ふふ、どうだ、くつろげるだろう?」
「うぇ!? は、はい、先輩!」
先輩魔法少女である警音から不意に投げ掛けられた問いに動揺しながらもなんとか答える夢。そんな彼女に警音は落ち着けと苦笑する。
「そう畏まらなくても大丈夫だ。……少なくとも、ここで
「……」
夢は一度、静かに周囲を見渡す。客は少なく、自分達の他には二、三人ほどしか居ない。
「そう、ですね」
しかし誰も自分達には興味を示さない。この静かな店内ならさっきの話も……自分達が魔法少女であるという事についても聞こえているだろうに、だ。
「なんだか、こういうのは久しぶりです」
突如として現れた人類の敵、魔物。それと唯一戦える力を持った魔法少女は、注目されて然るべき存在だった。……その中には当然、邪推も含まれる。
力に怯える者に羨む者、下心ありきで近づく者や逆に煙たがる者、果てには謂われのない罪を問う者まで居る始末。
魔法少女になって半年、夢は賞賛の声に潜む悪意を見つけて以来、人の目を恐れるようになった。
「とても、居心地が良いです」
そんな彼女にとって、警音に誘われたこの店は驚くほど人の目が気にならず、心が安らげた。
「……ああ、そうだな。私も此処に通って二年ほど経つが、いつ来てもそう思う」
老いない魔法少女は、時が経つにつれてその異質さを増していく。子どもというのは成長が早いものだ。その中で一切容姿が変わらない同年代が居たら、その者は皆からどう映るだろうか? ……同じ人間と思ってくれるのだろうか?
警音はかれこれ六年、魔法少女稼業に勤しんできた。その間彼女はずっと幼いまま……年齢にしては幼すぎるその容姿は彼女が魔法少女である事の証でもあり、通っている高校では常に注目の的だった。
「それにここの店長……えっと、マスターさんも良い人そうですし」
「そう! マスターはすごく頼りになるんだ!」
「へ?」
夢の何気ない発言、それに警音が予想外の食い付きを見せて思わず彼女はポカンと口を開ける。
「先ほども見せた魔法少女に対する深い理解、加えて
「へ、へぇー」(先輩のこんな饒舌な所、初めて見た)
出会ってからずっと警音の冷静沈着な姿を見せつけられてきた夢は、こうも彼女を熱く語らせるマスターは何者なんだと興味が湧いた。
「えっと、マスターさんは魔法局の人なんですか?」
魔法局とは、魔法少女を支援する為に政府が作った機関の事だ。単純に魔物退治のバックアップをする他、生活面、教育面でも色々なサポートをしてくれる。
「うん? いや違うと思うぞ。そういった話は聞いた事ないし」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、あーでも、たまに私が
「……」
夢は考える。生真面目な
(マスターさんって、いったい……)
夢は今日この店に初めて訪れたが、マスターに対する謎と興味は大きく深まっていた。
『───ユ、ユメ、魔物が現れた、よ?』
「……!」
その時、夢の脳内でエルオーの……自身が契約した妖精の声が聞こえてきた。
「せ、先輩!」
「ああ、そっちにも来たか」
咄嗟に警音に呼び掛けると、どうやら彼女の方にも契約した妖精から連絡があったらしく、既に行く気満々だった。
「ご注文決まりましたか〜?」
「すみません、急用が出来たので今日はもう帰ります」
「ご、ごめんなさい!」
「……あー、了解っす」
注文を聞きに来た店員は、しかしそのただならぬ雰囲気から何が起きたかすぐに察した。
「冷やかしに来てしまってすまないと、マスターにも伝えておいて下さい」
「ま、また来ます!」
「お気をつけて〜」
そしてそのまま嫌な顔一つせず、店員は平常運転のまま彼女達を見送るのだった。
「……ん?」
二人を見送った後、店員は警音の伝言を伝えにマスターを探そうとした直前、スマホからメールの通知音が鳴った。
『ちょっと外に出るから、店番よろしくね』
「あ、またマスターどっかに行ってる」
いったいいつもどこにほっつき歩いてるんだろうと思っていると、再びマスターからメールが送られてきた。
『店に居るのが常連さんだけだったらスマホ弄ってても良いよ』
「……」
それで良いのかと思いつつ、まあ実際ウチに来る常連客はそういうの気にしない人達ばっかりだなと彼女は思い直して、
「今のうちに周回しよ」
ひとまずソシャゲをする事にした。