メスガキ志望のTS魔法少女   作:ブナハブ

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今回、メスガキ成分が薄いです。

……メスガキ成分ってなんだ?


魔法少女の戦い

「……早いな」

「え? な、何がですか?」

 

 警音は店を出た直後、ふとそんな事を呟く。それに夢が反応して尋ねる。

 

「魔物が現れるペースが、だ。この町に魔物が出現したのは数日前、これまでなら同じ場所に魔物が現れるのは月に一回あるか無いかで、早くても一週間の空きはあった」

「ぐ、偶然今回がすごく早かったという事は」

「だと良いんだが……魔物と戦い続けて六年、こんな事は初めてだ」

 

 自分の知らない所で何かが起きているのか? そんな不吉な考えが警音の頭に過ぎり……すぐにその思考を追い払った。

 

「いや、考えるのは後だ。今はとにかく、魔物を倒す事に専念しよう」

「は、はい!」

 

 警音はそう言うと自身胸に手を当てる。それを見た夢も、慌てて同じポーズを取った。

 

「「チェンジ! ホーリーガーディアン(アクアブルーム)!」」

 

 そしてそれぞれが持つ自身のもう一つの名(・・・・・・)を叫ぶ。その直後、二人の姿は眩い光と共に変化する。

 近衛(このえ)警音(けいね)は黒髪黒目といった容姿はそのままに、軍人を思わせる帽子にマント、星形のバッジを身に付け、服装はミニスカートの制服へと変化していた。

 阿波木(あわぎ)(ゆめ)はその容姿も大きく変化させて、短い茶髪はピンクの長髪に、目元を隠す前髪は消えて水色の瞳が露わとなり、服装は胸元にリボンをあしらった可愛らしいワンピースとなっていた。

 

「既に魔法局と警察の人達が民間人を避難させている。私達も急ごう」

「はい、先輩!」

 

▼▼▼

 

 警音が言っていた通り、魔物の出現場所では既に魔法局や警察の人間が民間人の避難誘導の為に来ており、そして彼女達が来た頃には粗方終了していた。

 

「父さん!」

「……! 警音か」

 

 警音はその中で一緒になって動いている警察官……自身の尊敬する父親に向けて声を掛ける。

 

「もうこの辺りの人達の避難は済ませた。存分にやって構わないぞ」

「うん、分かった」

「い、いつもありがとうございます」

「ははは、お礼なんて要らないさ。……むしろ子ども達に戦わせてばかりで、不甲斐ないと思ってるよ」

「父さん……」

 

 父の切実な想いを聞いた警音は、思わず悲痛な表情を浮かべてしまうもかぶりを降り、心配させまいと勇ましい表情を父に向けた。

 

「大丈夫だよ父さん。少なくとも、私は自分の意思で戦っているから」

「警音……」

 

 その言葉に目を丸くした後、父は苦笑しながら警音の頭を撫でて言う。

 

「本当はお前()にこそ戦って欲しくないんだが……気をつけるんだぞ、無茶はするな」

「はい!」

 

 

 

 町にある大きなショッピングモールの中、一階と二階を繋げる吹き抜けの空間、その空間を切り裂くように現れた真っ黒な亀裂こそ、魔物がこの世界にやって来る為の通路、通称ポータルだ。

 

「よりによって屋内か……」

「こ、ここだと色んな物が壊れちゃいそうですね」

 

 ポータルは街中で開かれる事が多い。その為、魔法少女と魔物の戦いは必然的に人工物に囲まれた場所で勃発する。

 戦い終わったら全て元通り、なんて都合の良い事は無い。建物が倒壊する事態も割と良くある為、魔法少女達の戦いによる二次被害の問題は深刻だった。

 

「……仕方ない。魔力の消耗は激しいが使っておこう」

 

 その点で言うなら、ホーリーガーディアンが使う魔法は建築業者に非常に優しいと言えるだろう。

 

「【フィールド・プロテクト】」

 

 地面に手を当てながら言葉を紡ぐ。すると彼女の手のひらを基点に半透明の膜ような物が床へ壁へと伝っていき、建物内に広がる。

 

「……良し、これなら多少暴れても大丈夫だろう」

 

 魔法少女達は、魔物に対抗可能な力と高い身体能力の他、それぞれ固有の魔法を持っている。ホーリーガーディアンの場合、それはあらゆる攻撃を阻む結界を展開する力だった。

 たった今彼女が使った魔法は、周囲の構造物の保護。それは戦いによる二次被害を防止する他、魔物が外に出て行って逃げられる事を防ぐ意図もあった。

 

「私は結界を維持し続けないといけないから全力が出せない。何かあったらアクアブルーム、お前に任せた」

「は、はいぃ」

 

 その言葉にプレッシャーで尻込むアクアブルーム。心の準備をしたい所だが、向こうはそれを待ってくれるほど優しくない。

 

「っ、来るぞ!」

 

 そうホーリーガーディアンが告げた直後、ポータルからソレは出てきた。

 

「ケイカイ、チュウ、ケイカイ、ケイカイ」

 

 現れたのは、浮遊する正二十面体の真っ黒な物体だった。光の一切を吸収するほどに黒いソレは、各面に一つずつ赤い瞳が付いていた。

 

「い、いつ見ても怖いですね」

「そこはもう慣れるしかない。……結界もそう無敵じゃない」

 

 そう言うや否や、ホーリーガーディアンは攻撃を仕掛ける。

 

「【トライアル・ショット】」

 

 彼女の背後に三角形状の半透明な物体が三つ現れる。それらは結界の壁で構成されており、彼女の数少ない攻撃手段であった。

 

「大暴れされる前に片付けるぞ!」

 

 三つの物体はホーリーガーディアンの意思に従い、浮遊する魔物へ突撃する……が、

 

「ケイカイ、ケイカイ……キケンヲカンチ」

 

 魔物の全方位を見渡す二十の瞳、その内一つが自身に向かってくる三つの物体を発見し、ホーリーガーディアンの攻撃は直前になって回避される。

 

「よ、避けられました!」

「ちっ、あの目は節穴じゃないという事か」

 

「……テキヲハッケン」

 

 続けて攻撃しようとするホーリーガーディアンだったが、それよりも先に魔物の何十という目が彼女達を捉える。

 

「ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ」

 

 次の瞬間、魔物の目の瞳孔が大きく開き、そこから筒状の物体が突き破って出てきた。

 

「……! 後ろに隠れろ!!!」

「は、はい!」

 

 出てきた筒状の物体の先が全て自分達に向けられているのを見て嫌な予感がしたホーリーガーディアンは、仲間へ咄嗟にそう呼び掛ける。

 

「【ウォール・シールド】!」

「コウゲキヲカイシ」

 

 そしてすぐさま正面に結界の壁を張ったとほぼ同時、魔物は筒状の物体……大砲から弾を発射させる。

 

「ぐぅっ……!」

「ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ」

 

 絶え間なく放たれる砲撃。今のところ完璧に防いではいるが、ホーリーガーディアンの表情は苦しそうだった。

 

(防御するのは悪手だった……! コイツ、まったく攻撃の手を緩めない!)

 

 まるで弾は無尽蔵にあると言わんばかりの連続砲射、かといって一発一発の威力も油断ならない重みがあり、少しでも集中力を切らすとあっという結界が破壊されそうだった。

 

「先輩! 大丈夫ですか!?」

「少し厳しい! アクアブルーム、奴の注意を惹きつけてくれ。その後に一旦退く!」

「は、はい!」

 

 指示を出されたアクアブルームは、何処からともなく先端に大きな輪っかが付いた杖を取り出し、それを振るう。

 

「【バブル・ショット】!」

 

 そして振るった直後、杖の先端の輪っかを通じて大小様々なシャボン玉が現れた。

 

「当たれ!」

 

 アクアブルームは杖を使って指示棒のように魔物へ向けると、現れた無数のシャボン玉は魔物に向かって突撃する。

 

「キケンヲカンチ」

 

 しかしシャボン玉のスピードは遅く、すぐに魔物に察知され、残っている瞳から大砲を新たに飛び出させて対処する。

 

「ゲイゲキヲカイシ」

 

 放たれる砲撃、無惨にも砲丸はシャボン玉を散らす……事は無く、シャボン玉は向かってくる砲丸を優しく受け止め、内側へと取り込んだ。

 

「や、やった!」

 

 自身の魔法で砲撃を無効化できた事に喜ぶアクアブルーム。しかし次の瞬間、砲丸を取り込んだシャボン玉は、続けて放たれた砲撃で敢えなく弾けた。

 

「ダ、ダメだ……」

「いやダメじゃない! そのまま打ち続けてくれ!」

 

 ホーリーガーディアンは気付いていた。魔物が自身の放った弾をシャボン玉が取り込んだ時、一瞬大砲の先をアクアブルームに向けていた事を。

 

「は、はい! 【バブル・ショット】!」

 

 そして予想していた通り、魔物は一瞬でも自身の攻撃を無力化したシャボン玉を危険視したらしい。あからさまに大砲の狙いをホーリーガーディアンからシャボン玉に変えていた。

 

「良し、今だ!」

「あ、はいぅグェ!?」

 

 そして完全に魔物のヘイトがシャボン玉へと向いたのを確認した後、ホーリーガーディアンは未だにシャボン玉を飛ばし続けるアクアブルームの首根っこを掴んでその場から離れた。

 

 

 

「ケイカイ、ケイカイ、ケイカイ」

「「……」」

 

 ショッピングモール内を浮遊して漂う魔物。それに彼女達は付かず離れずの距離を保ちつつ、不意を突こうとしていた。しかし、

 

「……ッ、ダメだ。どこを見ても死角が無い」

「ど、どうしましょう……」

 

 浮遊する正二十面体の体、その体の各面に備わる真っ赤な瞳は常に全方位を見渡しており、見つからずに肉薄するという事は至難の業だった。

 

「……っ」(早く考えろ! どうすればあの魔物に攻撃できる?)

 

 魔物から後退して十五分、何もせずともホーリーガーディアンの魔力は【フィールド・プロテクト】を維持する為に消費され続けており、このままでは戦う前に力尽きてしまうだろう。

 焦る彼女は考える。しかし何も思い浮かばない。その原因の一つは、自身とアクアブルームの魔法が攻撃に向いている物では無かったからだ。

 

(こんな時、あの人が居たら……ッ、違う!!!)

 

 一瞬思い浮かべたとある人物、ホーリーガーディアンは自分が無意識にその人の事を考えていた事に気がつくと、咄嗟にその考えを振り払う、

 

(私はもう、あの頃とは違うんだ)

 

 そう言い聞かせて必死に作戦を考えるが、やはり何も思い浮かばない。

 

「……クソッ」

「せ、先輩!」

 

 何も考えつかない自分に嫌気がさしていると、隣からアクアブルームが慌てた様子で呼び掛けてきた。

 

「どうかしたか? 何か考えでも」

「───キャハハ!」

「……! この声は」

 

 嘲笑という言葉が良く似合う、鼻につく笑い声。咄嗟に声が聞こえた方を振り向くと、そこには宙を舞いながら魔物と対峙する一人の少女が居た。

 

「……っ」

 

 ホーリーガーディアンはその少女を知っていた。いや知らない筈が無い。ほんの数日前、彼女はその少女と魔物退治中に出会しているのだから。

 

「あ、あの人って」

「ああ……」

 

 一年前、突如として現れて以来目覚ましい戦果を挙げ続ける期待の新人。しかし性格が愛らしい顔に見合わず苛烈極まりない事と、魔法で空を飛べるという事以外はほとんど分かっておらず、その正体は謎に包まれている。

 

「アンジュローゼ!」

 

 正体不明の魔法少女、アンジュローゼ。この業界(魔法少女の世界)では珍しい、野良の魔法少女である。

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