メスガキ志望のTS魔法少女   作:ブナハブ

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魔法少女(メスガキ)の戦い

 魔物と戦えるのは魔法を使える存在、即ち魔法少女だけである。しかし魔法少女(・・)と呼ばれるように、彼女達は一部の例外を除いたほとんどが未成年者だ。

 普通の軍人のようには扱いにくい魔法少女とどう接するか。国によって様々で、日本の場合は希望者だけ兵役し、そうでなくても魔法少女になった事を国に報告する義務がある、

 政府非公認の魔法少女は俗に野良の魔法少女と呼ばれ、補導対象として一度拘束して魔法局に連行される。……とは言っても、野良の魔法少女が現れる事自体、そもそも稀なのだが。

 魔法少女はその特性上、時が経っても見た目が一切変化しない。育ち盛りな子供にとって変化しないという事は目立ちやすく、どれだけ上手く正体を隠しても数年経てばバレてしまう。だったら面倒事になる前に素直に自分から明かせば良い。……そういった理屈から、野良の魔法少女という物は影の薄い概念となっていた。

 

……そんな中、彼女は現れた。僅か一年で世間に注目されるほど大立ち回りしているにも関わらず、国が全国中を捜索しているのに関わらず、その正体の影すら掴ませない野良の魔法少女、アンジュローゼという存在が。

 

▼▼▼

 

「アンジュローゼちゃん、華麗に参上! ワタシが来てやったんだから、引き立て役のアンタ(魔物)はさっさとくたばっちゃいなさい♪」

 

 目標の魔物がショッピングモール内を漂っている所を発見した俺は、メスガキらしく堂々と敵の目の前へと姿を出した。

 

……あ、どうも、メスガキ大好きおじさんです。ただいま絶賛魔法少女(メスガキ)としての責務を果たしている最中です。

 

『いつも思うけど、なんで君は不意打ちせずにわざわざ真正面から戦おうとするんだい?』

『そんなのメスガキらしくないからに決まってるでしょ。アルティーは不意打ちなんて臆病者と取られかねない行動、彼女達(メスガキ)がすると思うかい?』

『いや知らねえよ』

 

 相変わらずメスガキ関連になると辛辣だなぁ相棒は。……まあ、アルティーとの戯れもこのぐらいにして。

 

「コウゲキヲカイシ」

(パパッと片付けますか)

 

 俺の事を発見するや否や、魔物は何十という数の目玉から大砲を突き出して攻撃を仕掛けてくる。

 

(……なるほど、俺の耐久力じゃ一度の被弾でも危ういな)

 

 向かってくる砲弾を見ながら俺は推測する。狙いは雑だが雨霰と降り注がれる砲撃、その一発一発の速さも火力も決して油断ならず、加えて全方位に備わる目玉で敵からの攻撃を事前に察知する。

 

(攻防共に隙が無い。今まで見た魔物の中でも上の下ぐらいの強さはありそうだ。……まあ)

 

 魔物が撒き散らす砲弾の雨……それを俺は、弾幕ゲーよろしく次々と紙一重に回避していく。

 

「キャハハ! そんなの当たるワケないでしょー?」(勝てない程じゃあないな)

 

 頭に背中、両足にと、真っ白な羽を備えたまんま飛行タイプなこの姿は詐欺なんかじゃない。ご覧の通り、俺の強みはその機動力だ。

 

「ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ」

 

 易々と砲撃を掻い潜ってくる俺に危機感を持ったのか、魔物は備わっている大砲を全て展開し、全方位に見境なく乱射し始めた。

 

(甘ァい!! その程度でメスガキをわからせられると思うなよ!)

 

 例え全身に武器を装備しても、正面の敵に攻撃できるのは正面の武器だけ。大砲の弾道も単純で予測しやすく、集中力さえ切らさなければ回避は可能だ。

 唯一の懸念点は、魔物の無差別攻撃で周りが大惨事になりかねない事なのだが、ホーリーガーディアン(警音ちゃん)が建物に結界を張ってくれていたお陰でその心配も不要だ。

 

「あれあれー? 当たらなすぎてムキになっちゃってるの? ダッサ〜!」

「ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ」

「……」

 

 うーん、見事なまでに無反応。こういう無機質な機械系モンスターだと煽り甲斐が無くて、わからされる展開の方が美味しくなっちゃうんだよね。少し唆られるが、この程度の相手にわからされるほど俺のメスガキは安くない。

 

『いつ見ても君の操縦能力には感心するよ。これで変な嗜好が無ければ文句なしなのに』

『なんでや! メスガキ関係ないやろ!』

 

 そもそもこの変態機動だって、操縦ミスで墜落なんてドジっ子展開をメスガキにさせたくない一心で胃液撒き散らしながら身に付けた物だ。つまり、この強さもメスガキがあったお陰なのだ!

 

『……本当にどうにかならないかな』

『なんでや!?』

 

 アルティーとは二年近く共に過ごしてるけど、一向にメスガキに理解を示してくれる気配が無い。いつもこんなにメスガキについて熱弁してるのに!

 

『寧ろソレのせい余計鬱陶しく感じてるんだけど……ところで大丈夫? さっきから避けてばかりで全然近付けてないけど』

『ああ、その事ね』

 

 確かに俺は、魔物の周囲を飛び交うだけで肉薄できていない。流石にこれ以上近付くと被弾は免れないが、かと言って蹴り技主体で碌な遠距離武器を持っていない俺は近付かないと攻撃できない。……例外を除いて。

 

『大丈夫、ちゃんと勝ち筋(逆わからせ)は考えてあるから』

 

 そうアルティーに伝えた後、そろそろ頃合いだろうと感じた俺はソレを実行する。

 

「キャハハ! ちょっと見過ぎだってばー、どんだけワタシの事を好きなの?」

「ハイジョ、ハイジョ、ハイ「あーあ、いつになったら気付くのかにゃー」……」

 

 俺の言葉に反応したのか、はたまた言われた直後に気付けたのか、フッと魔物は砲撃を止める。

 

「あ、やっと気付いた? そんだけ目があってぜーんぶ節穴とか、なっさけな♪」

 

 そう言って煽る俺の周りに……いや、魔物を包囲するように至る所で、魔物が放った大砲の弾が真っ白な羽を携えて羽ばたいていた。

 これが俺の魔法。触れた箇所に白い羽を付与して、それをいつでも自由に操れる。

 

「キケンヲ、カンチ」

「自分で散らかしたんだから、後片付けはきちんとしましょうね♥︎」

「ゲイゲキカイシ」

 

 口元に手を当ててケラケラと笑いながら、もう片方の手で魔物を指差す。

 次の瞬間、羽を生やした無数の砲弾が魔物目掛けて突進する。それに応じて魔物も砲撃を繰り出した。

 

「ハイジョ、ハイジョ、ハイジョ」

 

 砲弾のぶつかり合う重々しい音がそこかしこで響き渡る。自己防衛に徹したらしい魔物は向かってくる砲弾を一つも漏らす事なく命中させ、見事俺からの攻撃を凌いでみせた。……計画通りだ。

 

「ぷっ、やっぱり節穴じゃん♪」

 

 砲弾の対処に必死な魔物は、今やもう俺の事なんて後回しだ。この瞬間、俺への監視の目は完全に消え失せた。

 

「なんだか機械みたいな喋り方してたけど、所詮は魔物ね。おつむヨワヨワ〜───【ジャッジメント・キック】」

 

 トドメの前の煽りも忘れずに、俺は某仮面のヒーローから着想を得た必殺技、【ジャッジメント・キック】を放って魔物の体を貫いた。

 

▼▼▼

 

「す、凄い」

「……ああ」

 

 アンジュローゼと魔物の戦いを遠目から見ていたホーリーガーディアンとアクアブルーム。二人はアンジュローゼの戦いぶりに圧倒されていた。

 

(……これほど)

 

 ホーリーガーディアンも噂では聞いていた。アンジュローゼという野良の魔法少女がどれだけ強いのか。たった一年余りで名が知れ渡るのだから、よほど強いのだろうとは思っていた。

 

(これほど、違うのか)

 

 けれど違った。彼女の内包する魔力量は自分を大きく超え、技量だって長く魔法少女を続けている自分よりも洗練されているように見えて……何よりその目からは、自分と違って迷いも恐れも毛ほども見えなかった。

 強いなんて物じゃない。あまりにも規格外だ。国が必死になって捕まえようとするのも分かる。彼女は野良の魔法少女として活動するには影響力が大きすぎる。

 

「くっ……」

 

 その事実にホーリーガーディアンは俯いて歯噛みする。野良の魔法少女に手を貸して貰わないと勝てない、自分の弱さを情けなく思う。

 

「あっ」

 

 ふと隣からアクアブルームの呟き声が聞こえた。顔を上げて前を見てみれば、アンジュローゼがコッチに向かって飛んで来ていた。

 

「アンジュローゼ……」

「わざわざお膳立てありがとね〜、お陰でバッチリ決まったわ♪」

「っ、煽りに来たならさっさと立ち去れ。それとも、わざわざ自分から捕まりに来たのか?」

「キャハハ! 出来もしない事をキャンキャン鳴いちゃってカワイイ〜」

 

 キッと睨み付けても全く意に介さないアンジュローゼに心底腹立つものの、ホーリーガーディアンは努めて冷静を装った。

 

「あ、あのっ!」

 

 その時、今まで黙り込んでいたアクアブルームがアンジュローゼに向けて声を発する。

 

「ん〜?」

「あっ、いや、その」

 

 先ほどのホーリーガーディアンとの問答を見て怖気付いたのだろうか、口を開け閉めするだけで何も言わない。

 

「なにかなー?」

 

 そんな彼女に対し、アンジュローゼはジッと待ち続ける。その表情はニヤニヤと煽るような笑みを浮かべているが、ホーリーガーディアンの時のように罵ったりはしなかった。

 

「……あ」

 

 その様子を見たアクアブルームは、思い切って思いを吐露する。

 

「ありがとうございます! …………その、魔物討伐に協力してくれて」

「……ふふ」

 

 バッと勢いよく頭を下げるアクアブルーム。彼女から感謝の言葉を送られたアンジュローゼは、柔らかな笑みを浮かべる。

 

「へー、良い心がけじゃない。そうそう、ワタシが出てきてやったんだからこれぐらい感謝してくれなきゃ。アンタも見習わなきゃね〜?」

 

 しかしそれも一瞬の事で、すぐにアンジュローゼはいつもの意地悪な笑みを浮かばせた。

 

「なんだと? ……いや、助けられたのは事実だな。感謝するよ」

「えーそれがお礼の言葉ぁ? もっと後輩ちゃんを見習ってー、腰を低く低ーくしなきゃさあ」

「こ、こいつ……!」

(……あれ?)

 

 その時、アクアブルームはアンジュローゼの発言に違和感を覚えた。

 

(なんでこの人、私が後輩だって知ってるんだろう?)

 

 チラリとホーリーガーディアンの方を見るが、彼女は気にしていない様子。気付いていないのか、はたまた自分が知らない所でアンジュローゼとそういった話をした事があるのか。

 

(……考えすぎかな?)

 

 暫く思案して、そこまで深く考える事でも無いかとアクアブルームは気にしないようにするのだった。

 

▼▼▼

 

 俺がメスガキ魔法少女になる上で一番苦悩した事、それは同業者(他の魔法少女)との接し方である。

 メスガキたるもの、ウザ可愛い罵倒の仕方は心得ている。しかし俺が修得した物のほとんどは対大人を想定したものだ。年頃の女の子へ使うには少し、いやかなり口撃力が高過ぎる。少年少女を泣かせるのはメスガキに相応しくないし、人として普通に最低だ。

 だったらどう魔法少女達と接するべきか。考えに考えて、ひとまず俺はメンタル強そうな子だけに罵倒を解禁しようと決めるのだった。

 

(その点で言うと、ホーリーガーディアンは接しやすくて良いんだよね。どれだけ罵ってもへこたれず噛み付いてくるんだから、メスガキとして煽り甲斐があるという物)

 

 まあでも、彼女の新しく出来たパートナーは打たれ弱そうだったし、今後アンジュローゼとして接する時は少し自重するか。

 

『呑気だねぇ君は。いくら強いからって少しは危惧したらどうなんだい?』

『いやいや、勿論あの件の事もしっかり考えてるぞ? メスガキと同じぐらい』

『いやメスガキより上であって欲しいんだけど……』

 

 あの件、というのは俺が今回最初に(・・・)戦った魔物についてだ。

 警音ちゃん……ホーリーガーディアン達が戦っていた魔物、ソイツの元へ向かっていた道中、俺は偶然にも別のポータルを見つけた。

 そのポータルは通常の物よりかなり小さく、出てきた魔物も普通と比べてかなり弱い個体だった。まあやけにすばしっこくて、戦うより追う方が苦労したんだけど。

 

『僕ら妖精でも意識しないと感知できないほど隠蔽されたポータル……敵がこの町で何か仕掛けようとしている可能性が高い』

『やっぱりそう考えた方が良いよな』

『うん……っていうか、この事をあの二人に話さなくて良かったのかい?』

『あー』

 

 そう言ってアルティーは、まさか話し忘れたのかと声を低くして俺に問う。そう、俺はこの事をホーリーガーディアン達に伝えていなかったのだ。というかアルティーの言う通り、普通に話し忘れた。

 

『ごめんなさい』

『まったく……今なら二人と別れて間もないし、急いで戻ったら見つかると思うよ?』

『いやでも、わざわざ伝えに戻るのはお節介な優しさが見えてメスガキらしくないと言いますか』

『この野郎……!』

 

 確かにアルティーの言う通り、この話は他の魔法少女や魔法局の耳に入れた方が良いだろう。こんな情報、野良の魔法少女である俺が持っていても宝の持ち腐れだ。

 

『いやいやいや、そこまで理解しているなら今からでもあの二人に伝えに行きなよ!』

『で、でもそれはメスガキ魔法少女としての矜持が』

『そんな矜持捨ててしまえ!』

 

 うーん困った。どうすればこの事を魔法局や魔法少女達の耳に入れられる? 匿名で魔法局にリークでもするか? いやでも信じてくれるか分からないし……そういえば、

 

(一つだけ、アテがあったな)

 

 アンジュローゼ(魔法少女)の時の俺の数少ない知り合いの一人を思い出す。とてもとても頼りになって……非常に扱いづらいその人の事を。

 

『……会いに行くかー』

『会いに行くって、誰にだい?』

『魔女に』

『は?』

 

 この世界で一番長く魔物と戦い続けている、今でも現役バリバリの魔法少女にして、この国の平和の象徴。

 

(あんまし頼りたくないんだけどなあ)

 

 そんな御方と俺は、ひょんな事から過去に接点を持っていた。

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