くじらとダンスは踊れない   作:勇気生命体

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みんなで迷子の森へ行こう

「つまるところ、レイラっていう人が受けた洗脳魔法はユニコーンの秘蜜っていうのがないと解けなくて、それを見つけにみんなで冒険にいくってこと? なんでそれを私に教えてくれないのよ!」

 

 めんどくさそうな顔をするランスに対して、ぷりぷりと怒りながらセナは言った。

 レッドの街の外でランス達を見つけたのは本当に偶然だ。もし次の戦いに備えて基礎訓練をしようと思わなかったら、本当に置いてかれるところだった。

 

「ほ、ほら、セナさんは今朝あの場に居なかったし、わざわざ呼びつけなくてもこれだけ戦力があれば十分かと」かなみがなんだか早口で言った。

「朝ごはん食べてたから……それにちょっとどうやったら魔人たちに勝てるのかを考えてたの」

「なにか浮かんだ?」

 

 興味深そうに志津香が言うが、セナは首を振った。

 

「昔、父から聞いたことを思い出しつつ考えてるんだけど全然。とりあえず、剣のキレが良くて困ることはないだろうと思って、ここで訓練してるの」

「なんというか、意外とおバカ側だよな、セナちゃん」ランスが言う。

「そうなのよねぇ、基本的に私が敵と会えば勝てるから、戦略と戦術とかの大き目な視点の話が全然で。目の前で起きたことに対処するのは得意なんだけど……」

「す、すっごい強者の理由……!」マリアが驚く。

「こういうのはランスくんとかバレスさんが考えた方がいいかもね……ってそうじゃない! なんで私を置いていくのって話よ! いまレッドで数少ない冒険者なんだけど!?」

「あー、それはだな」ミリが頭を掻いた。

「これから行くのが迷子の森だからだ。そんなとこにセナちゃんが行ったら五分で迷子だろう。冒険オンチだし」

「バカ、ランス! そんな言い方したら」

 

 ミリの忠告は手遅れだ。すでにセナはムッとしている。

 

「私もついていきます」

「ほら、ムキになった」

「絶対ついていきますから! ね! シィルちゃんもついていっていいと思うよね!?」

「ええ!? は、はい。もちろんです」

「ほら!」

「なにを勝手に言っとるんだお前は」ランスがポカっとシィルをたたく。

「ひんひん……」

「ふふふ、絶対ついていくから。逃げてみる? 私よりも速く長く走れる人なんてこの世界に存在しないから」

「強者の脅しね……」マリアが呆れた。

「はぁ、まぁ戦力が増えたと思いましょう」志津香も呆れた。

 

 そんなやり取りがあり、レイラのためのユニコーンの秘蜜探し一行にセナは加わった。ランス、シィル、かなみ、志津香、マリア、ミリ、そしてセナの七人パーティだ。

 

 セナちゃんは美人だが、居るとくだらん話を喋りまくるからな、うーむ、女どもが団結するからやりにくいぞ。

 ランスはそんな風に考えたが、意外にも今回のセナは話はするものの今までのような世間話は少なかった。

 

「うーん、やっぱり魔人を倒すにはとにもかくにもあの無敵結界をどうにかしないといけないのよね」

「少なくとも魔法は効かないことはわかってるわね」志津香が言う。

「剣も効かないんだよね。私、魔人斬ったことあるけど、キィンって感じにずらされちゃって……ランスくんもサテラに切りかかったことあったよね? どんな感じだった?」

「ああん? あの赤髪のカワイ子ちゃんか? うーん、がきーんと弾かれた感じだったな」

「へー意外。あんたってちゃんとそういうの覚えてるんだ。どうせその魔人の尻でも見て覚えてないかと」

「なんだとー!?」

「あんまり揶揄わないの志津香ちゃん。ランスくんは凄腕だからね。いつもふざけてるだけでちゃんとわかってるよ」

「どーだか」

「それにしても気になるねぇ。私とランスくんの感想の違い。ここになにか勝機がありそうな……」

「あれじゃないか? ランスの剣はめちゃくちゃだからな。あいつらの結界もうまく受け流せなかったのかも」ミリが言った。

「確かに。ランスくんは剛の剣だから私の剣とは違う。だとしたら一撃の威力が高ければ突破できるのかな?」

「それならチューリップ3号の主砲でどうにかなるかも!」マリアが言う。

「どうかしら、確かにあれは強力だけど、それでどうにかなるなら今までにもっと魔人が倒されてそうじゃない? 範囲はともかく、白色破壊光線より少し強いくらいの威力でしょ?」

「うーん、魔法は完全に無効で、物理的な手段だと効果あるとかじゃないかしら」かなみが言った。

「あ、そういえば昔ヘルマンのすごい人が魔人と戦って勝ったことがあるってバレスさんが言っていました」

「本当? シィルちゃん。どうやって勝ったって言ってたの?」

「詳しいことはわかりませんが、その人は格闘術の天才だったという話です」

「うーん、素手なら触れるってことかしら?」

「ランスくん、あの時半分くらい抱き着こうとしてたけど触れた?」

「触れん! ちょっとも触れんかった。次こそはあのカワイ子ちゃんにタッチしてやるぞ」

「出来たら、私にもやり方教えてね」

 

 そんな風に魔人攻略方法への相談をしながらまったりと迷子の森へ向かう一行だったが、次第に考察だけではどうしようもないという結論にいたり、話の話題が変わっていく。

 今回の冒険の話題だ。

 

「それでその迷子の森にはあとどれぐらいで着くんだ?」ランスが言った。

「えーと、教えてもらった地図によると、あと一時間くらいですね」シィルが答えた。

「もうちょっとね。どうする、ランスくん? いったん休憩する?」

「いや、急ぐべきだろ。あの女騎士様があとどれくらい持つかわからないしな」ミリが首を振りながら言った。

「そうね。休まず行くべきだわ」志津香も同意する。「マリアは大丈夫?」

「だ、大丈夫。頑張るわ」マリアは一人だけ疲れ気味だが答えた。

「がはははは、全く体力のないやつだ!」

「完全に後衛な上に、本来は技術班だからね。大丈夫? マリアちゃんおぶっていこうか?」

「え!? いいのいいの!! 大丈夫だから!! 私歩けるわ!!」

「そ、そう?」

 

 セナちゃんに密着されたら、この前のチューリップ3号でのこと思い出しちゃうわよ、とはマリアは言えなかった。

 

「しかし、迷子の森なんてダンジョンでそんな希少なモンスターを探すなんてできるのかしら」

「そりゃあ、冒険オンチのセナちゃんには難しいだろうが、俺様にかかれば簡単だぞ」

「むぅ、またそういうこと言って! まぁ、否定は出来ないわね。ランスくんの冒険力(ぼうけんぢから)は私よりも高いから」

「なんだ冒険力って」ミリが呆れる。

「今日はランスくんの冒険力を学ぶつもりでついていくことにする。気張ってね、ランスくん!」

「がははは! 仕方あるまい! よーく勉強するように!」

「おー!」セナが拳を上げる。

「お、おー!」シィルもつられて上げる。

「ぐふふ、ではまずは気持ちいい指導を」

「あ、それはいいです」

「ぷっ」ミリが噴出した。「ふ、残念だったなランス。そういうのはオレが教えることになってるんだ」

「あ、ミリからもいいです」

「ぷぷぷ、だっせー!」ランスがミリを指さして笑う。

「はぁ、どんどん会話の知性レベルが下がっていくのを感じるわ」志津香が額に手を当てる。「あまり気を抜かないでよ。迷子の森は帰り木も使えないし、コンパスも効かないんだから、本当に出られなくなっても知らないわよ」

 

 セナがじっと志津香を見るので、ちょっとだけ志津香は狼狽した。

 

「な、なに? セナ」

「…………帰り木ってなに?」

 

 がーん。その場にいるセナ以外のみんなが思わずセナを見た。

 

「う、嘘でしょ……?」志津香が言った。

「え、な、なに? 私まずいこと言った?」

「セナさん、帰り木っていうのは──」

 

 シィルがセナに帰り木について話す。それは帰巣本能を持つ不思議な木で、ダンジョンの中で使うと即座にダンジョンから出られるマジックアイテムだ。

 冒険の必需品で、当然、冒険者なら誰でも知っている。

 

「帰り木! そういうのもあるのか……!」

「冒険オンチだ、冒険オンチだとは思っていたが、まさかここまでとは……」ランスがちょっと引き気味に言う。

「し、仕方なくない!? 私、まだ冒険者になって二か月ちょっとだし……」

「冒険者じゃない志津香も知っているぞ……」

「し、志津香先生……!」

「やめて」

「……やっぱり飛びぬけたものを持ってる人ってどこか抜けてるとこもあるのね」かなみが言った。

 

 シィルはセナを見て、マリアを見て、ランスを見た。そして言葉が見つからず、「あはは……」と笑った。

 

 そんな一行もようやく迷子の森に着いた。色々衝撃も大きかったが、実に和やかな道中だった。

 

「よし、じゃあ出発!」ランスが言って、一行はダンジョンに入っていく。

「……おお、本当にコンパスが効かないのね」マリアが驚きの声を上げた。

「どれどれ」ランスがコンパスをのぞき込む。「おお、ぐるぐる回ってる」

「ああっ!!!」シィルが大声を上げた。

「な、なんだシィル大声出して、驚いたではないか!」

「ラ、ランス様! セ、セナさんが……!」

「……う、嘘だろセナちゃん……! セナちゃんが……! 五分どころか、五秒で迷子になった……!」

 

 すっかり姿を消したセナにさすがのランスも戦慄した。

 

「……オレ、なんかこうなるって思ってたよ」

「コ、コラ! ミリ!」

 

 呆れる友人に思わずマリアが突っ込んだ。




セナが混じるとランスと日常会話しやすくなる(セクハラが減るため)ので、かなみを筆頭とした女性陣から重宝されているセナ。
しかし、彼女の無意識の色香に気が付いた者たちからは、逆に危険物(強制的に目覚めさせられるので)扱いされている。
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