「ウチが通りかからんかったらどうするつもりやったんや、あんたはもう!」
「あり、が、とう……ニコちゃ……」
「喋んな! 死ぬでほんまに!」
本来、かなり愉快で欲深い性格をしているはずのユニコーンが真剣そのものの雰囲気で言う。
その言葉の通りに獣部分の背に乗せた少女は死にかけていた。
応急処置のために自身の秘蜜を飲ませたが、まるで興奮しなかった。ウチ的に悲しいのはNGだ。
果たしてダンジョンの出口にいったところで生きられるんか!?
しかし、ウチにはそこまでしかできん!
ウチは焦りながらも迷子の森の出口へと向かう。しかし、その途中で衝撃的な香りにぶつかった。
「う、な、なんや。これは……明らかにビッチの香り!!」
ユニコーンは清らかな乙女にしか懐かぬ神秘の種族(諸説あり)である。男遊びに明け暮れるような女には近づくことさえ苦痛だ。
それでもウチは走った。セナを死なせるわけにはいかなかった。むしろビッチがいるということはセナの生存確率は少しでも上がったということだ。
紫髪のビッチが視界に入る。
うう、最悪や。なんちゅうハレンチな恰好。清楚さの欠片もない。
「セナ! なんで、ユニコーンが……!」
「ゆ、ゆにゆに」
「ああ、そんなもんどうでもいい! 助かる! こいつを手当てしてやんなきゃ!」
ビッチの匂いに怯んだせいで、ウチはセナがひったくられるのに抵抗できなかった。
ビッチは意外にもなれた手つきでセナを手当てし始めた。荷物から取り出した布で体を拭いてやり、薬をつけて、包帯で止血する。
朦朧としているセナの顔から、少し楽になったことが読み取れた。
感謝するわビッチ。まったく吐き気するほど好みやないけど。あんたのおかげでセナは助かりそうや。
「セナ、セナ……! 起きろ! 生きてるか!? お前がこんなになるなんて、どれだけの敵だ、魔人は……!」
「……あ、ああ」
「ゆに!」
「セナ! 起きたか! よかった! 薬が効いたんだな。意識保てよ! 死ぬぞ!」
「ゆに!!」
「……あ……ミリ……」
「う、うそやろ。そんなことがそんなことが許されてええんか?」
「!!?????!!?!?!? 喋ったー!!!???」
こ、このビッチがミリ……! セナのキッスを初めて奪った相手!? こんなやつ百合やない! ラフレシアや!
ウチのセナがこんなやつにコマされとるんか!? あんなにやさしくて可愛いセナが! こいつがあの魔性をセナに植え付けたんか!?
セナの純白が裏ではこんな汚ねぇ女に汚されとったんか!? ウチが見たあの純真は……!
アカン脳が! 脳が破壊される! ああああ~!
う、秘蜜でる! セナをめちゃめちゃ汚してまう!
「うお! な、なんだ!? 何しやがるテメェ!」
「……ふ、ふふ……ニコちゃんったら……ガク」
「うわああ! セナ!? しっかりしろ!! 何だってんだチクショウ! いや、秘蜜か!? だったらむしろいいのか!? いや、それでも何やってんだテメェ!!」
「ふぅ…………ゆにゆに~」
「ふざけんな! 喋ってただろ! 聞いてたぞ!」
「チッ」
「舌打ち聞こえてんぞ半畜生が……! クソ、そんなことどうでもいい! セナ起きろ! すぐにレッドに連れ帰ってやる! セルならお前を治せる!」
そう言ってセナを担ぐミリ。セナは少し目を開けて、ウチに力なく手を振った。ウチも手を振り返した。
きっとミリはセナを助けるだろう。セナは助かる。ウチはそう思うだけでうれしくなる。
二人の姿が消えていく。迷子の森から出たのだ。きっともう会うことはあるまい。
セナ頑張れ。もしそのビッチに振られたら、ここに戻ってきてもええ。慰めたる。でも、そんな不幸には見舞われんでくれ。
あと彼氏だけは作らんでくれ。後生や。
迷子の森の話は全体的に気に入っています。