くじらとダンスは踊れない   作:勇気生命体

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エピローグ:心は空と同じ色

「よし、OK! さーて、出発しますか」

 

 叙勲式から数日経ち、セナはゼスへ向かうことに決めた。だがすんなりは着かないだろう。なんてたって一人旅。迷子になることは確実だ。

 だがあまり気にはしていなかった。なんでもやってみるに限る。やり続ければできるようになるのは、イカカレーで実証済みだ。

 

 剣と皮鎧はもらったし、食料も分けてもらえた。路銀も持ち切れるギリギリ持った。失くして困る勲章もミリに預かってもらったので安心だ。

 

「みんながランスくんの捜索にかかりっきりなのに申し訳ないけど、冒険者だからね。冒険しなきゃ」

 

 そういえば、いつかランスとした踊りを見せるという約束が、いまだ果たされていないことを思い出す。

 今度、彼と彼の大事な奴隷に会った時には、必ず自慢の剣舞を披露しよう。その時はきっとそんなに遠くないはずだ。

 

 セナは地図を取り出した。リーザスの首都からゼスまで、まっすぐ行ってもかなりの距離だ。果たして自分にたどり着けるだろうか。

 たどり着けたとして、どうするつもりなのだろうか。

 

「あーもう考えない考えない。決めたでしょ。一度帰るって」

 

 本当はずっとゼスにもう一度戻りたいと思っていた。しかし、いろんな理由をつけてそれを先延ばしにしていた。

 だが冒険者はバカになった方がいいのだ。バカになって、やりたいという直観に従うべきなのだ。

 

 そんな風に考えると頭の中にボヤっとミリの顔が浮かんでくる。こんな風に直観に従えという教えは、思えば彼女から受け取ったものだった。

 まぁ、その後、代わりに結構なものをもらわれることになってしまったが。

 

「故郷に禍根を残したままじゃ、絶対後悔するからね! みんなのことを思い出してセナ!」

 

 自分を鼓舞するように、自由都市地帯のために、リーザスのために戦った戦友たちを思い出す。

 彼らが命懸けで守ったものを、自分はあっさり捨ててしまったのだ。

 あるいはゴミのように捨てられたと言った方がいいかも。

 

 本当のことを言うならば、ゼスにいい思い出などほとんど残されていない。この帰郷はただ自分を苦しめるだけに終わるのではないか。

 そんな不安がずっと胸の奥にこびりついている。

 

 セナは首を振って嫌な考えを振り払った。そして空を見上げる。

 気分がいい青空だ。太陽は暖かく、冒険日和。自然と背筋が伸びる。

 

「まぁ、何とかなるでしょう。魔人とだって戦ったんだから、怖いものなんてないわ」

 

 セナはようやく再び歩き始めた。近頃ずっと浴びせられてきた称賛の声は聞こえない。たった一人の出発だ。

 しかし、正しく冒険者の旅立ちだった。




一か月くらいかけて書き溜めた分をすべて出しました。
これにてリーザス陥落は終了となります。

話の組み立て的に少なくともゼス崩壊は書きたいなぁと思っていますが、
いつになるかは不明です。

おそらく今回のように一章分書き溜めてから放出するので、
最低でも一か月はかかります。

100カノの二次創作が楽しかったので、
オリジナルのランチル書きてぇ→出会いから書きてぇ→たまには最強物書きてぇ。
という流れで描き始めた本作ですが、もしそこまで行くならどんだけ時間が必要なんだよと戦慄しています。

ともかく、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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