私は魔人ならシルキィとレイ、ケッセルリンクが好きですがこれを書いているうちにサテラにも愛着が湧きました。
「な!?」
思わずサテラが声を上げる。セナが自分に背中を向け、すさまじい速度で逃げ出したからだ。
サテラはちらりと倒れ伏すランス様──いや、ラークか──を見るが、すぐにガーディアンのシーザーとイシスに指示を出し、セナを追いかける。
セナが本当にランスについて知っているかはわからないが、このまま逃がすのは危険であると思わせるほどに、最強の冒険者と名乗った女の剣と魔法は鋭かった。
しかも、恐ろしく素早い。自分の足では追いつけないかもしれない。スピード特化のイシスでどうにかといったところだろうか。
もしかすると逃げ切られるかも。そんな考えがサテラの頭をよぎったときに、意外にもセナに追いついた。まっすぐとサテラを見据え、何やら呪文を唱えている。
「~~~~~」
「っ! イシス!」
イシスが高速で接近し、セナに攻撃する。攻撃は避けられてしまったが、呪文の詠唱は中断させられた。
あまり魔法に詳しくないサテラだったが、セナが放とうとしていたのは破壊光線の魔法──最高ランクの攻撃力を誇る上位魔法──だった。何色かまではわからないが、ライトニングレーザーを細く鋭く放つことのできる使い手だ。破壊光線も同じく貫通力を高めて放ってくるかもしれない。
ちらりと自分のガーディアン達を見る。特にイシスにあいた小さな穴を。もしセナが破壊光線を放てば、ガーディアンたちでも耐えられないかもしれないと、サテラは思った。
逃げたのは距離をとるためだったのか! 小癪なまねをして!
だがすでに目論みはバレて、セナはイシスの攻撃圏内に入った。もう不意打ちは通用しない。このまま力で押し切ってやる。
そんな風に考えた瞬間、セナが今度はサテラの方へと踏み込んできた。
無駄だ! 無敵結界がある! いや、狙いはシーザー?! それも無駄──────
キィンと高い音が響く。人間の振るう剣なんかにサテラのシーザーは傷つけられない。そう思っていたのに、サテラはシーザーをフォローするように鞭を放っていた。
パァンと空気が破裂する音がする。つまり鞭は肉を裂かなかったということだ。しかも、剣よりも遅い。シーザーも迎撃しようと動くが、殊更遅い攻撃だった。
すべての攻撃を躱し、シーザーを足蹴にしてセナは再びサテラ達から距離をとった。その華麗な動きに思わずサテラは息を飲み、自身の感情に憤った。人間ごときに見惚れさせられるなんて、とんでもない屈辱だった。
ふと気が付いて、シーザーの方を見る。セナの斬撃によって、小さく長い傷が腕についている。
「よ、よくもサテラのシーザーに傷を!」
「そう……その子はシーザーっていうの。そっちの子は確かイシスだったけ? こんなに強いガーディアンと戦うのは初めてよ」
「当たり前だ! サテラが直々に作ったガーディアンが、そこら辺のやつらと一緒なわけあるか!」
「そうね。私の考えが甘かったわ。断つつもりで斬って、相手が生きてるなんて経験を一日に何回もすることになるなんて……」
「最強の冒険者なんて持ち上げられても所詮は人間! さっさと知ってることをすべてサテラに話すんだな!」
「……そうね。
セナが自身の片手剣を構えなおした。また一段階、サテラが感じる圧力が大きくなる。
「ソードダンサー。これからはそう呼んで。魔人サテラ」
そこから先は、より一層サテラにとって屈辱的な展開だった。
セナは彼女が名乗った通り、まるで踊るかのような戦い方でサテラを翻弄した。何度も何度もシーザーとイシスを切りつけ、こちらの攻撃は避けられた。かと思えば、距離を取り、魔法の詠唱を始める。そのせいで、作戦を立てる余裕すらないのだ。
途中、三人組の冒険者とすれ違い、一瞬意識がそちらに向いてしまったときなどは特にひどかった。
セナはサテラ達の隙を見逃さず、素早くライトニングレーザーをシーザーの足に放った。驚くべきことに全く同時に右手の剣が振るわれ、ライトニングレーザーと寸分たがわぬ個所に傷をつける。
いままでで一番大きなダメージにシーザーの体勢は崩れ、サテラも焦りを見せた。再び同じ構えをとるセナに対して、イシスが腕を振り上げた。サテラも鞭を構える。
「おらー!!」
「なに!?」
イシスの攻撃と同時に冒険者の男がサテラに飛び掛かってきた。思わず、サテラの攻撃が止まる。
「ぬわー!?」当然、無敵結界に阻まれて男はずっこける。
「助太刀サンキュ! けが人よろしくね!」
イシスの攻撃をいなしたセナは再び身を翻し、サテラから逃げていく。
「邪魔だどけ!」
サテラは冒険者どもを無視して、セナを追いかけた。冒険者どもを殺す手間すら惜しい。とにかく今はあの女を見失わないようにしなければ。
いいようにやられていながらも、サテラにはまだ余裕があった。見失いさえしなければ、最後に勝つのはサテラだという確信があった。
そして、長い長い鬼ごっこの終点に二人はたどり着く。どんなにセナが速くとも、この洞窟を抜けるには小さな出入口を這っていかなければならない。そんな隙を逃すほど、サテラは甘くはない。
「はぁ、ようやくおしまいだ」サテラが言った。一筋の汗が頬を伝った。
「……ええ、そうみたいね」セナが言う。息すら切れていない。
「さっさとお前の知ってることを教えろ」
「そうすれば、命だけは助けてくれる?」
「……いや、お前は危険だ。ここで殺す」
サテラを知る者が聞いたら耳を疑っただろう。人間の力を認めたに等しい、危険という評価。サテラ自身、意外に思っている。
「ふふふ、正直でいいね。でも、戦いではもっとずるくなくっちゃ」
「なに?」
「~~~~~」
「イシス!!」
始まった詠唱を止めるために、イシスがセナに飛び掛かった。今まで通り、セナは攻撃を捌く。
「~~~~~」
「なに!?」
だがセナの詠唱は止まらなかった。
こいつ、あれだけ動きながらでも魔法を撃てるのか! いままで詠唱を止めていたのはブラフ!
イシスの猛攻にサテラとシーザーが加わる。初めてセナに傷がつき始めるが、それでも詠唱は止まらない。
そしてついにセナが左手をイシスに向けた。イシスは咄嗟に防御の体勢をとった。
「黒色破壊光線」
最後の一言と共にイシスへ向けられていた手は全く違う方に向き直る。
そうか! こいつの狙いは初めから壁の破壊!
最強の破壊光線と名高い魔法は、その名に恥じぬ威力で、本来のものよりもずっと大きな出入口をこの洞窟に作った。
セナは穴に向かってすでに走り出している。
当然、少し身構えたサテラが、全力で穴へと向かうセナに追いつけるわけもない。
「クソっ!」
思わずサテラは吐き捨てた。逃げられる! 自分の攻撃ではもうあの女に届かないだろう。
だがセナの動きは彼女の予測を超える。
セナは穴から脱出するのではなく、壁を蹴り、ほとんど地面と平行に、かつ猛烈な速度でイシスの懐へ舞い戻った。
誰一人、スピード特化のイシスでさえもなんの反応もできなかった。
「ビリー・ギリー」
先ほども繰り出されたライトニングレーザーと剣の同時攻撃。しかし、威力は比べ物にならない。
本気で放たれるセナの必殺技。
サテラの思考よりも早く、イシスの右足が切断された。
「イシス!」
そう叫ぶ頃にはセナは洞窟外へと逃げ出していた。
サテラはあまりの悔しさに奥歯が砕けそうなほどだった。鞭を握る手が震える。
「サテラ様……」
「戻るぞ……! シーザー。もうあいつには追いつけない。イシスも直さなきゃいけないしな」
サテラは洞窟に開いた大穴をキッとにらみつけた。
「覚えたぞ、セナ……! ソードダンサーなんていい気になって……! お前はサテラが殺す!」
サテラ達の足元に魔法陣が現れ、サテラ達は洞窟から姿を消した。
名前 :セナ・ベリウール
レベル:84/111
技能 :剣戦闘Lv3、魔法Lv2、神魔法Lv1、踊り子Lv1、冒険Lv0
特技 :戦うこと
趣味 :冒険、踊り、食べ歩き
必殺技:ビリー・ギリー
これぐらい強いつもりで書いてます。
必殺技は当初『びりびり斬る斬る』という名前でしたが、メルドロスによって今の名前に変更されています。