くじらとダンスは踊れない   作:勇気生命体

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へっぽこ最強冒険者

 セナは神妙な表情で一緒に鍋を囲む三人を見た。そして気まずそうに口を開く。

 

「えー……調べた結果ですが、この盾は一度装備すると外せない。そういう呪いをかけられているみたいでした……。あと、装備すると盾を使いこなせるようになるみたいです……」

「そ、それじゃあ、私はずっとこの盾つけっぱなしになるってことですか?」サチコがわなわなと言う。

「……はい」

「がはははは! やらかした、やらかした! セナちゃんがやらかした!」

「はい……やらかしました。やらかしてしまいました……」

「し、仕方ないですよ! 命を助けてくださったんですから、安いくらいです!」

「ううう! ごめんね、サチコちゃん!」

 

 セナはサチコを抱きしめる。盾が当たって痛い。

 

「私が最初から解析の魔法を使っていれば……!」

「でも、これだけ時間がかかりますからね。あのモンスターの巣でやるのは無理があったんじゃないですか?」かなみが言った。

「私が攻撃魔法以外苦手だから!」

 

 実際はレベル1でもそれらの魔法が使えることは結構驚くべきことである。

 

「しかし、困りましたね。依頼をどうするか……」かなみが顎に手を当てる。

「そんなもん。こいつごと持っていけばいいだろう」

「……そうするしかないかもね。私じゃたとえレベル下がってなくても呪いの解呪なんてできないし」セナはサチコの目をまっすぐ見た。「申し訳ないんだけど、サチコちゃん。私たちと一緒にCITYまで来てくれるかしら?」

「あ、はい。いいですよ」

「か、軽い……!」セナはちょっとびっくりした。

「長期休みですし……ちょっと気になったんですけど、セナさんってレベルが下がってるんですか? あんなに強いのに?」

「そうなのよ。ちょっと事情があって100くらい下がっちゃってね。そのせいで色々大変」

「冒険者ってなんかすごいんですねぇ」

 

 まったりとサチコは言った。下がったレベル量については冗談だと思っている。実は彼女も英雄セナ・ベリウールの噂について知らないわけではなかったが、目の前のちょっとうっかり者のセナさんとは結び付いていなかった。

 

「せめて三分の一でも元の力があれば盾を持ったまま戦えたんだけど……はぁ、冒険できるのは楽しいけど、さすがにもうちょっとレベルは上げとかないとね。早くレベル屋さんに行かないと」

「ん?」話に飽きてごはんを食べていたランスがセナを見た。「なんでレベル屋だ?」

「なんでって……あー!!」

 

 がーんとセナはショックを受けて項垂れた。ランスは専属のレベル神が付いている特別な冒険者である。いつでもどこでもレベル神ウィリスを呼び出すことが出来るのだ。

 

「なかったんだった……! 町に戻る必要とか全然! 私レベル1のまま何日も……! なんですぐに言ってくれなかったのよ!」

「……忘れてた」

「ううう……私も」

「そ、そんなに気落ちしないでください! これに関しては皆同罪ですよ!」かなみが必死にフォローした。

「そんじゃ呼ぶか。やーい、ウィリスやーい」

 

 ランスの適当な呼びかけで、レベル神のウィリスが降臨する。突然現れた神の一柱にサチコは驚いた。

 

「あら、セナさん。かなみさん。お久しぶりですね。どうされました?」

「気にしないでください……己の愚かさに打ちひしがれているんです……」

「そ、そうですか。それではレベルアップしますね」

 

 いつもの光が放たれると、ウィリスが驚いた表情を浮かべる。

 

「ランスさんは1レベルアップですね。かなみさんは変わらず……セナさんは何があったのかは知りませんが、随分レベルが下がっていますね」

「色々ありまして……」

「……まぁ深くはお聞きしません。とりあえず、レベル1からレベル32まで上がりました」

「32!!?」かなみが思わず声を上げた。

「え、え、はい。32まであがりました……何か問題でも?」

「だ、だって、レベル1になったの四日前ですよね!? たった四日で32も!?」

「……確かに、私小さい頃結構レベル上がるの早かった気がするわ。レベル60くらいまで。そういう体質なのかも」

「……しょ、正直ランスのこと言えないですよ」

「そ、そう?」

「なんでちょっと照れてるんですか……」かなみが驚きを通りこして呆れて言った。

「ごほん」混乱し始めた場を鎮めるようにウィリスが咳払いする。「では私はこれで。セナさん! 次のレベルアップの時もぜひ私をご利用ください!」

 

 とびっきりの笑顔でウィリスは消えていった。レベル神は上げたレベルに応じて評価が上がる。そんな話をセナは思い出す。

 

 ぞくり。やや鋭さを取り戻した感覚が不躾な視線を感じ取った。

 み、見てる! 腰のあたりをすっごい見てる!

 それは間違いなく途中から黙っていたランスの視線である。いまセナのレベル32。禁欲モルルンの効果対象外まで目前だ。その実感が彼の中の獣性をいつも以上に駆り立てているのだろう。

 

 満更じゃない。正直まったく満更ではない。でも、サチコちゃんがいるから! かなみちゃんもいるから!

 

 その後、セナは自分とランスの二人を相手に誘惑と戦う羽目になった。ついでにCITYまでの道のりで二度モンスターとも戦った。誘惑の方には悶々と、モンスターの方には悠々とセナは勝利した。

 

 CITYについたその日、セナはレベル41になった。

 その晩、レベル1になった。




セナの体質はゲームだったら、一度パーティメンバーに入れてクエストを完了するとモルルン解禁のレベルになる、みたいな感じです。
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