なんか温泉開発部にオリ主が退部届け出すやつ   作:ブルアカアンチ

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ブルアカアンチです。対戦よろしくお願いします。


温水ウナは目覚める

 

ーーかぽーん、と温泉鳥が鳴いている。

 

もちろん比喩表現である。

 

「はーっはっは!諸君、我々の勝利だ!これまでになく作業も捗り、我々の目標にも一歩前進したとも言える!それでは、温泉建立を記念してーーかぼべっ」

 

ぱしゃん、と何かが水飛沫を撒き散らして彼女ーー鬼怒川カスミの声を遮る。彼女らの掘り当てた温泉に大きな物体が降ってきたのだ。

温泉開発部に入部して幾度目かの祝勝ムードを台無しにされたカスミは当然のごとく憤った。

 

「いったいなんなんだ!この喜ばしい場に水を差すなんて!出て来い!」

 

その言葉に応答するかのように、未だ揺れ動く水面から人型の物体がぷかりと浮き上がった。

否、人型ではなく正真正銘の人間が浮かびあがった。しかも傷だらけである。カスミの顔はしわしわになった。

 

「ひええっ、し、死体…?め、メグ部長っ。」

 

「あちゃー、酷い傷だ。…とりあえず運ぼうか。」

 

カスミにとって温泉開発部部長ーー下倉メグほ己の窮状を救ってくれた恩人である。おおかた降ってきた彼女をどうするのかは予想が着いていたが、新参者の自分は上意下達として動くべきだと指示を仰いだ。

メグはその赤いポニーテールを揺らし救助の指示をーーいや彼女を抱きかかえ医務室へと運び出す。。

 

「よかった、息はある。…ん?軽い…まぁいっか!」

 

幸いにも心臓が動いているということを確認し安堵したメグであったが腕に違和感を感じた。

抱えた身体が異様に軽いのだ。如何に現実離れした身体能力を持つキヴォトス人と言えど人間はこれほど手応えなく持てるものでは無かった。

しかし難しいことを考えることが得意ではないのを理解していたメグは違和感を頭の片隅に追いやり、ゲヘナ学園救急医学部のもとへと駆けるのであった。

 

ーーー

 

 

「外傷の治療は完了しました。死体はベッドに置いてあるので目が覚め次第引き取っていただいて構いません。」

 

開口一番に物騒なことを宣うのはゲヘナ学園救急医学部所属の2年生、氷室セナである。

 

「死体っ!?生きてるよねっ?」

 

「失礼、言い間違えました。負傷者です。」

 

セナの言葉に顔を綻ばせるメグ。

 

「良かった〜っ!…あっ、もうこんな時間!あの子が起きたら連絡してねっ!ありがと〜!」

 

メグは同級の彼女の腕を信頼しているのだ。ともすれば、あとは目覚めるのを待つだけであるため、メグはさっさと現場作業に戻った。その背中に尻尾を振った犬を幻視しながらセナは他の患者の治療にあたるのだった。

 

 

ーしばらくの時が経ち

 

 

「…んぅ、ここは…?」

 

「おや、目が覚めましたか。しばらくお待ちを。」

 

ずきりと痛む頭に手を当て、彼女はあたりを見回した。

白いベッド、綺麗な床、窓から覗く緑の庭、救護服を纏う少女、その全てに彼女は覚えがなかった。否、彼女は自分の存在すらも不確かであった。名前すらも思い出せない、彼女はまことに記憶喪失であった。

 

「はーっはっはっは!私、参上ぅ!おやおや、目が覚めたようだねぇ、気分はどうだい?」

 

「あの、あなたは誰ですか?」

 

「これは失敬!私は鬼怒川カスミ。まぁ普通の生徒さ。君を助けた人のひとりでもある。さぁ、今度は君の番だよ?」

 

カスミはメグの代理として彼女の様子を見に来ていた。普通ならば救護部に放り込んでサヨナラだが、メグはたいそうお人好しであった。カスミもそれに救われたクチであるため強くは言えず、また確認したいこともあったのだ。

 

「…ごめんなさい。まだ、何も」

 

「なんだ、何も隠す必要はないさ。我々は君を助けたんだ、これもまた縁さ。後ろめたいことは何も無い、仲間に対して隠し事なんてしないだろう?」

狼狽える彼女に目を細めてカスミは追求を繰り返す。あくまで親しげに、優しい声色で。

 

「…ほんとうに、何も、覚えてないんです。わたしは、誰ですか?」

 

「はっはっは!メディーック!彼女の頭を診てやってくれ!」

 

記憶にございません(禁じ手)』という返答にカスミは一旦匙を投げた。

 

ーーー

 

「軽度の記憶障害ですね。専門ではありませんが、嘘をついているということも無いでしょう。」

セナの診断が下される。カスミもとりあえずそれを信じることにした。なにしろ日頃からお世話になっているので。

 

「ふむ、難儀なものだねぇ。ほんとうに何も覚えてないのかい?名前も?」

 

「はい、なにも…。わたしはいったいどうすればいいんでしょうか…。」

 

「むむむ…」

 

しかし怪しい、カスミにとって彼女は非常に怪しかった。いつになくスムーズに進んだ温泉開発に文字通り降って湧いた刺客。まるで狙ったかのような登場に疑うなという方が酷だろう。

 

「…そうだ!いったん我々の部活に入るというのはどうだろう!ちょうど人員が不足していたところなんだ。そうだ、それがいい!」

 

「いいんですか!?自分で言うのもなんですけど、わたし怪しいですよ?」

 

「はっはっは!気にする必要はない、今この瞬間から我々は仲間さ!」

 

名も無き彼女は気の良い返事に目を輝かせた!なんていい人なんだろう!

 

「わぁっ、嬉しいです!こんな優しい人に出会えるなんて感激ですっ!」

 

「ふふん、我々は極めて平和で善良な心を持って活動しているからね。困っている人を放っておけないのさ。」

 

巻き込んで操るのはカスミの得意とするところであった。彼女がシロにせよクロにせよ染めてしまえば問題ない。そして、人手不足出会ったのも事実。カスミは強かな女であった。

 

「ということで、まずはそうだな…。君に名前を与えてあげよう!うむ、温泉に降って湧いたから…温水 (ぬくみず)ウナというのはどうだろう?」

 

「うな…ウナ!わたしは今から温水ウナです!素敵な名前をありがとうございます!頑張ります!」

 

噛み締めるようにつけられた名前を反芻する彼女、温水ウナの様子を見てカスミは鷹揚に頷いた。

 

「気に入って貰えて結構、それでは部活動と行こう!」

 

温水ウナの手を取って、外へ出るカスミ。

その背中を氷室セナは胡散臭そうに見送るのだった。

 

 

ーーー

 

「はーっはっはっは!諸君、新しい部員の登場だ!そして!温泉開発部へようこそ、ウナ!」

 

カスミに連れられてやってきたそこは温泉付きの小屋、いや掘っ建て小屋つきの温泉であった。ウナが知る由もないが冒頭で彼女が着水した温泉である。

 

「先程入部させていただきました!記憶なし、身分証なし、住居なし、やる気あり!の温水ウナと申します!よろしくお願いします!」

 

「ギャハハ、いいぞー!」「お前も入れー!」「重いぞー!」

 

「では、入らせて頂きます!…〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」

 

 

ーー足をつけ、つま先からじわりと拡がる熱にぶるりと身体が震える。身体中が今だ!と心を急かしつけ、本能のままにどぼんと音を鳴らした。

まるで砂漠に一滴の水を垂らしたかのように、温かさがヒトの外殻の隙間を縫い、神経を濡らす。

目を閉じれば宇宙が見える。冷たい星空にやわらかな光が染み込み、シナプスが弾ける。そして弾けた火花は太陽と混ざり合い、調和し、だんだんと自己が解けていくのを自覚する。

そう、例えるならば母親の愛にどこまでも優しく包まれるようなーーー

 

 

 

「どうだ、我ら温泉開発部の温泉は?」

 

崩壊したウナの意識は、カスミの声によって取り戻された。

 

「…最っ高ですっ!この温泉を先輩たちが作ったんですか!?」

 

「もちろんだよ!私たち温泉開発部は温泉を開発してるの!」

 

そりゃそうだろ。

にこやかにメグが答えた。ウナは目を輝かせた。

 

「いつかキヴォトス中にいーっぱい温泉を掘って、巨大温泉郷を作るの!」

 

「素敵ですっ!わたしも手伝わせてくださいっ!」

 

「もちろんっ!なんてったって温泉開発部の仲間だもんね!」

 

「ハッハッハ!やはり温泉はすべてを解決するようだな!よぅし、新入部員歓迎を込めて乾杯っ!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

そうして和気藹々と今後の温泉開発計画などを話しながら夜は更ける。

誰もが他人の迷惑を考えず、けれども一心にキヴォトスがみんなの楽園になることを考えていた。

記憶喪失のウナもまたそれに染まり、しかし話の途中に出てきたとある高校にどこか引っかかりを感じながらも夢を膨らませるのであった。

ーーー

「うへぇ、退学届けもこれで3枚目か…」




原作未読、未プレイです。地雷原を走り抜け!
※知らない設定があれば捏造です。ノリで書いてます。
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