何ですぐアスナ寝取るん?   作:蛮族

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物語本格始動


トキワの森 その1

 

 俺の名前は狭間元徳(はざまげんとく)。

 運命と出会った。とか抜かして謎の女性に救助されてから意識を失い、今は医療施設らしき場所で目を覚ましたところだ。

 

 部屋には自分が寝ているベッドの他に3つ空のベッドがあり、いかにも病室といった感じだ。カーテンの開いた窓からは芝生と、その先にある森が見える。高さ的に2階かな?

 

「かなり出血していたから助からなくてもおかしくなかったんだが、これはどういうことだ?」

 

 ひとり呟く。

 車両から放り出されたことで無数に重い打撲や骨折、切り傷を負っていたはずだが体に巻かれた包帯は思ったほど多くなく、何より骨折してたはずの場所も治っている。

 

 完治するほど長く意識不明で眠っていたにしては筋力はそのままで衰えていない。

 何がどうなったんだ。

 

「よかった、意識がもどられたんですね?」

 

 声のする方を見ると、部屋の入り口から女の子が声をかけてきた。

 

「ここはどこだ?君は一体?」

「ここはポケモンセンターの隣にある診療所です。私はナースのジュンといいます」

 

 ジュン……ナース服の上に白衣を羽織っている少女だ。年齢は見た目から15か16。ずいぶんと若い。

 彼女が俺を救出したのだろうか?この怪我の治り方……まるで奇跡だ。

 

「何がどうなってるかわからないと思いますけど、あのあとレンジャーさんに救助を要請してこちらに緊急入院したんです。」

「ああ。助かった、本当に。」

 

 本当に感謝しかない。あのまま森で一人死んでいくのかと思った。

 

「ポケモンセンターにはポケモンドクターがいるんですけど、彼は今他のポケモンを治療中で手が離せないんです。

 でもあなたの怪我は重そうだったから、ほんとはいけないんですけどもすごいキズぐすりを投与させていただきました。そしたら、みるみる怪我が治って……。」

「ちょっと待ってくれ、情報量が多い。」

 

 どうやらまだ助かってはいないらしい。

 こうして話していると普通の少女にも思えるが、どうやら彼女は具現化されたゲームのキャラクターのようだ。

 葛葉キョウジ以外に具現化に成功したキャラクターは確認されていないので俺が初の接触者ということになる。森もこの病院も具現化で発生したもので間違いないな。

 

 しかし、ポケモンにジュン何て名前のキャラクターがいたかな?最近はゲームをやっていないのでどんなキャラなのかわからないぞ。

 

「あー、状況を整理するために自己紹介といこう。俺は狭間元徳、麻生警察署に所属する3課の刑事だ。」

「警察?ポケモンの保護区の取り締まりでですか?」

 

 彼女は不思議そうに首をかしげる。

 

「いや……ここはポケモンセンターじゃないのか?」

「はい、そうですけど……」

 

 ポケモンセンターとはポケモンという生き物を無償で回復する施設だったはずだがどうやらその建物に併設されている病院に俺は担ぎ込まれたらしい。

 ゲーム内で人間の入院する設備などは描かれていなかったが、土地を変換するような大規模な具現化は初なので要検証といったところか。

 

「君はポケモンのナースなのか?」

「いえ。私は人間専門ですよ?ポケモンに治療はできないので……ポケモンセンターに勤めてますけど仕事は病院のナースをしています」

 

 失礼ながら人間なのか、という意味で聞いたのだが伝わらなかったようだ。

 随分と整った顔立ちをしていて、お世辞にも美形とは言えない俺が見ても可愛らしいと感じる容姿をしていた。

 変な質問をしたことで怪訝な表情をされてしまう。

 

「アザブ?という町は聞いたことがないですね。」

「逆に、ここはどこのポケモンセンターなんだい?捜査本部に連絡を取らなくては。」

 

 彼女は知らないのか。それとも知らない振りをしているのか。

 まあポケモンの登場人物であるなら架空の世界の住人なので、現実の地名は知らない方が自然な気もする。いや、具現化された人物が現実の世界の常識を理解している方が異常だろうな。

 

「すみません。

 ご家族の方に連絡が取れないかと荷物を改めさせていただいたんですが、お持ちの携帯電話は壊れてしまってるようです。服などもそちらの籠に。」

 

 そういうと、彼女は俺の寝ているベッドの角度を変え、体が起きた状態にしてくれたあと、俺の所持品の入った籠を持ち上げ、差し出してきた。

 礼を言って荷物を漁ると、ハーモナイザーは今も起動中。表示されているHPは少し減っているものの壊れてはいないようだ。

 

「うーん……」

 

 俺は業務用携帯電話を取り出し電源を押してみたが反応はなかった。まあ派手に画面にひびが入っているし仕方がないか。

 そこまで破損していないので充電すれば起動できる可能性はある。

 

「どうも電池が切れているようだな。よければ充電器を貸してもえないか?」

 

 俺は首を振った。さすがに充電器は持ってない。

 彼女は困ったように眉を寄せた。

 

「申し訳ありません。その携帯電話の規格の充電器がなくて……」

「そうか……」

 

 

「ずいぶんと元気になったようだな。これなら話を聞けそうかな?」

 

 唐突に、第三者の声が割って入ってきた。

 

「サカキさん!おかえりなさい。」

 

 ジュンがほっとしたような顔で彼を迎える。

 サカキ!ロケット団の首領にしてトキワジムのジムリーダーを務める男。つまりここはトキワシティか!

 

 実はファンなので不謹慎ながら笑顔になりつつも、俺は警戒した。

 トキワシティで公然と活動していることをみるとまだロケット団の首領だと周囲は知らない段階のようだ。ジュンは純粋にジムリーダーとしてのサカキの帰還を喜んでいるのだろう。

 

「初めまして、麻布警察署の狭間元徳です」

「ジュン。すまないが少し席を外してくれるか?この方は患者さんというより客人のようだ」

 

 彼が目を細める。威圧感を感じて背筋が伸びた。

 

「わかりました」

「悪いな」

 

 サカキはジュンに対しては口調が柔らかい。これが彼のジムリーダーとしての顔なのだろう。

 

「お待たせしました」

 

 ジュンが去ると、サカキは俺の方を向き直った。

 

「さて。私はトキワジムのジムリーダーのサカキだ。お前は警察と言っていたな?」

「正確には麻布警察署の刑事ですね。」

 

 その返答にサカキは目を細めて窓際まで歩き、カーテンを閉じる。

 

「警察が、ポケモンも連れず銃で武装してトキワの森で何をしていたんだ?発見現場を見てきたが君の血の跡だけで何かと争ったというよりは君がすごい勢いで木にぶつかっていったように見えたが。」

 

 ああ、銃は念のためうちのジムで保管させてもらっているよ。とサカキは続けた。

 

 まあ彼方からしたら俺は警察を名乗る武装した不審者だからな。わからなくもない。

 

「君の所持していた警察手帳も、よくできているが見慣れない形式の物だ。そもそも近隣の住民にキミがトキワの森に入っていく姿を見たものはいないそうだよ。キミはどこから来たんだね。」

 

「それも込みで説明させていただきます」

 

 俺は手短にゲームデータ具現化アプリとポケットモンスターというゲームソフトの話をし、森と俺がいるこの建物が具現化で出現したことを話した。

 

「なるほど、理解できた。しかし我々はこの世界での知識を持っていないのか。それは困ったな」

「えっ!?」

 

 あっさりとゲームデータ具現化アプリを理解したサカキに驚く。

 

「何を驚いているんだ?君の説明は理にかなっている。

 具現化を起こすと周囲の物質が吸い上げられて置換されるから、我々が具現化されると共にあの森が出現したといいたいのだろう?」

 

「何でそんなに理解が早いんですか?」

 

 俺はサカキの反応に不信感を抱いた。正直もっと混乱するか、こちらに不信感を抱くと思ったのだが。

 だが、サカキは疲れたような顔で溜息を吐くと失礼するよといって隣のベッドに腰掛けた。

 

「トキワシティは、小さな町だ。

 特にこれといった産業もなく、私の運営するジムがあるだけ。これでどうやって生計を立てているのか、立ててきたのかが私にはわからない。

 フレンドリィショップもポケモンセンターも外部から来るトレーナーの為の設備だがポケモンセンターは基本無償だし、フレンドリィショップはそれほど客もいないからね。

 

 わからないというのが恐ろしい。町の住人も疑問を抱いていないようだよ。

 

 これまでどうやって生きてきたのかという記憶はあるのにそれが本当のことなのか確信できなかったんだ。まさかゲームの存在だったとはね。」

 

 ひどく気落ちした顔のサカキに、俺は言葉を詰まらせた。

 

「ゲームだといったね。それならばキミは私の裏の顔も知っているのだろう?」

「ロケット団の首領ってことは、まあ。」

「もうそれどころではないがね。他のシティの人員に連絡が取れないと思っていたがまさか存在しないとは。」

 

 そう言って顔を覆ってしまったサカキは、ただの守るべき市民にしか見えなかった。

 

「外部との連絡を取るのに協力してくれませんか?なんとか政府にこの町、いや、具現化された人間やポケモンを保護してもらえるように掛け合いましょう。」

 

 俺はサカキに警察官の身分証を手渡した。

 

「これを預けておきます。どうやってトキワシティを外界と接続するかはまだわかりませんが、とりあえず信用の証として」

 

 サカキは俺の身分証を受け取るとベッドから立ち上がり、俺の肩に手を置いてありがとうと言った。

 

「私はこの街のジムリーダーだ。住民の安全を守らなければならない。ロケット団の首領としてではなくね」

「俺も全力で協力しますよ」

 

 そう言って俺もベッドから立ち上がった。とりあえず入院服から無事な装備に着替えよう。

 

 トキワの森にいる人々への接触はサカキで行い、具現化による危険性とサカキのロケット団首領としての悪行が発覚したときの対策は二人でを練るという話に落ち着いた。

 こちらとしてもあくまでそういう設定だったというだけで具現化してからなにか悪事を働いていたわけでもないサカキを逮捕する理由はない。葛葉キョウジという例があるんだ、まあ何とかなるだろう。

 

 ロケット団に関するあれこれは正直心配していないが、問題はインフラだ。

 

 聞くと今のところなぜか問題なく水も電気も使えるというが、どういうことだろうか。少なくともゲーム内での発電所はマップのはるか東側にあったはずなので、そこまで具現化しているとなると東京どころか千葉も巻き込まれていることになるんだが……。

 

「とりあえず、ハザマさん用のポケモンを捕まえておきましょう。警察がパートナーもなしにうろつくというのは体裁が悪い。」

「マジか」

 

 おお、リアルポケモントレーナーになれるのか!

 年甲斐もなく、心が躍りはしゃいでしまい、サカキに困惑されるのであった。




のんきしとる場合じゃないぞ元徳。
武装集団が迫っとるで!
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