現政奉還記 未来都市&宇宙編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 一行が訪れた赤塚組の平和な領地に突如として襲撃してきた謎の軍勢。その軍勢を相手に果敢に挑む聖龍隊と赤塚組であったが、その最中ミラーガールが容姿を激変させて襲撃してきた軍勢を一掃してしまう。驚く赤塚組と二次元人たちに、バーンズは昔語りとしてミラーガールが戦いの最中に自らを進化させるかの様な戦いの数々と、その戦いで見せた小田原修司に植え付けられた催眠暗示による暴走およびその暗示を植え付けたマッドサイエンティストとの激戦を語る。メカルスとヴァルツ、二人の驚異を退けた戦いの数々を聞かされつつも、戦いの中で己を変化させて強化するミラーガールの驚異にも心底衝撃を受ける二次元人たちであった。



現政奉還記 未来都市&宇宙編
現政奉還記 ジャッジ・ザ・シティ 平等な人工島都市


[chapter:海上の人工島]

 

 赤塚組が巨大戦艦、百鬼命義に搭乗して海路を突き進む一行。

 すると赤塚組の子分が、自分たちの頭領である大将に威勢のいい大声で告げる。

「大将! ジャッジ・ザ・シティが見えてきやした!」

「オウッ、野郎ども! 船を着ける準備をしろッ!」

 子分からの伝達を聞いて、大将はジャッジ・ザ・シティへの上陸準備を子分たちに指示する。

 ジャッジ・ザ・シティ。それは太平洋沖、日付変更線からアメリカよりの沖合いに建造された巨大人工都市であり、今では多くの難民などを受け入れて何百人と人口が増えた未来都市である。

 このジャッジ・ザ・シティへの上陸に、二次元人たちも胸を躍らせていた。

「いよーー、遂に噂に聞くジャッジ・ザ・シティに着いたかい」

「どんな所なんでしょうね、ギュービッド様!」

 噂に名高いジャッジ・ザ・シティへの到着を前に、プロト世代のギュービッドとチョコは海上に見受けられる大都市を目視して胸が高まる。

 そんな二人同様に、多くの新世代型たちも誰もが夢や理想を叶えられる都市だというキャッチコピーが売りのジャッジ・ザ・シティを目前に胸が高まっていた。

「わあ……でっかいんだなぁ」

「思った以上に大規模な都市なんだな、ジャッジ・ザ・シティは……」

 視界の先に聳える大都市を前に、新世代型の瀬名アラタも星原ヒカルも目を輝かせる。

 朝日に照らされる摩天楼の高層ビルが反射する光が、より一層都市の輝きを象徴させている。

 そんな光明に照らされる海上の大都市を前に、二次元人達は先の出来事を思い返してしまう。

「それにしても、赤塚組の島は本当に安全で自由なところだったな!」

「ホントです。ですけど……そんな島が襲撃されてしまうなんて……」

「あの異常者(ヒール)の軍勢は何者だったんだろうか……?」

 新世代型の真鍋義久の台詞に続いて、各々の率直な意見を述べる同じ新世代型のアリス・カータレットと一条蛍。

 更に話しはミラーガールの脅威の変身能力についても語られた。

「ミラーガールの変身能力のお陰で助かったといえば助かったけど……」

「あんなに破壊的な変身ができるのは、少しニャ……」

「そう、言っては何だが、まるで破壊の象徴にも感じられた……」

 小鳥遊おとは/森園わかな/そして神浜コウジは他の二次元人同様、畏怖にも近い感情を覚えていた。

 そして話は革命軍士が起こしたイレブンズ・プロジェクトに話題が移った。

「イレブンズ・プロジェクト……歴史の勉強でも少しは学んでいたとはいえ、体験者から聞かされた話の方が何倍も迫力があった……」

「殺戮陽動プログラム……人の愛情を憎悪や殺意に変換する催眠暗示。それで小田原修司という人間は、破滅の神と称されるメシアへと変貌を遂げてしまったんだろうな」

「なんだか悲しいな……修司さんの力があったからこそメカルスに勝てたのかどうか……」

「どっちにしろ、聖龍HEADも小田原修司も一度は死んでしまった……そこに、二次元界の神様が現れた事で聖龍HEADは生き延びたんだろう……小田原修司の方も、ドクターヴァルツに生かされたけど……」

 星原ヒカルはバーンズより聞かされたイレブンズ・プロジェクトの実体験を聞かされ驚異し尽くし、出雲ハルキは小田原修司に植え付けられた殺戮陽動プログラムによって通称メシアと呼ばれる殺戮兵器に変貌してしまった事に落胆し、それに対して瀬名アラタが悲しみに暮れる中、細野サクヤはどちらにしろHEADも小田原修司も生かされた顛末に驚異してしまう。

 すると話は次に、その殺戮陽動プログラムを考案し開発した心理学者ヴァルツが引き起こしたCLAMPの世界観での戦歴に移った。

「クロウ・リード……多くのCLAMPキャラクターを守るために自ら命を投げ捨てて……」

「強大な魔力を持っていたからこそ、様々な問題も引き起こしてしまった彼も、最後には皆の為に……」

「ヴァルツの奴め……! 何処まで俺たち二次元人を犠牲にしていくつもりなんだ……!」

「でも、最後にはクロウ・リードの魂も、メシア・リードも救われて良かったです」

 斉木楠雄と鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は強大な魔力を誇るクロウ・リードの死に嘆く中、そのクロウ・リードの魔力と小田原修司の遺伝子を組み合わせたメシア・リードを創り出したヴァルツの行為に怒りを表に出す磯谷ゲンドウに反し、最後にはクロウ・リードの魂と共に異次元へと自分の居場所を探す旅に向かったメシア・リードの顛末に日向縁はのほほんと笑顔を浮かべる。

 

 

 皆がバーンズより聞かされた昔談義に物議を醸し出している最中、船はジャッジ・ザ・シティの港に着いた。

 そして皆がジャッジ・ザ・シティに上陸すると、バーンズがここで皆に提示する。

「そんじゃ、まずはこのジャッジ・ザ・シティの警備を総括している国連軍の軍人に挨拶しておかないとな」

 バーンズの言葉に二次元人たちは苦々しい顔を浮かべた。

 国連軍とは以前にも何かと衝突してしまった経緯もあるが、このジャッジ・ザ・シティは国連軍本部より強ち近場であり、国連軍の軍人を無視する事はできなかったのだ。

 そんな不安そうな顔を浮かべる二次元人たちにバーンズは言った。

「大丈夫だって。これから会う軍人は、赤犬とかのおっかない軍人じゃなく、生き神様と呼ばれるほど穏やかで気のいい軍人だと聞いているぜ。……まあ、まだジャッジ・ザ・シティに所属されて日も浅い人物みたいだが、安心しとけ。オレ達もついているから」

「え! オレ達もついているって……つ、つまり、俺らもその軍人に会うって事ッすか?」

「そう慌てふためくな。ここの軍備を統括している軍人なんだし、お前たちの事を包み隠さず紹介しなきゃならないしな」

 バーンズの話を聞いて新世代型の真鍋義久が一驚する中、バーンズは彼ら二次元人たちに事情を説明する。

 自分たちを何かしら新世代型として見做している国連軍の軍人を前にすると思うと、胸中が不安でいっぱいになってしまう二次元人たち。

 

 

 

[神のドレフ]

 

 聖龍隊に連れられて二次元人たちが最初に訪れたのは、ジャッジ・ザ・シティの中央市役所。

 その一室には、眼鏡をかけた初老の白髪の男性が皆を出迎えてくれた。

「初めまして、ジャッジ・ザ・シティ市長のユウラと申します」

「久しぶりだな、市長。こいつらが電話で話した二次元人たちだ」

「おおっ、これは……随分と賑やかですな」

 ユウラと名乗る市長の挨拶に、顔馴染みであるバーンズが改めて二次元人たちを紹介するとユウラは笑顔で彼らを出迎えてくれた。

 この時、新世代型たちは琴浦春香と斉木楠雄のテレパシーでユウラの思考が読み取れない事から、互いに共有感知で彼が生粋の三次元人である事を周知した。

 そして互いの挨拶を終えた市長ユウラとバーンズは、椅子に腰を下ろし、早速バーンズが市長に問うた。

「市長、彼ら新世代型二次元人が大半の面子をジャッジ・ザ・シティに案内してほしいんだが……」

「ほう? それはまたなんで……」

「彼らはまだ生まれて間もない……今の内からアニメタウンと協定を結んでいるジャッジ・ザ・シティの仕組みや何やらを教えてあげたいんだ。その為には観光や見物が打ってつけだろ?」

「ううむ、しかし…………新世代型を前に言うのは何だが、未だに危険視されている彼らを町に招いても良いのだろうか……」

 バーンズの新世代型が大半の二次元人たちに町を観光させて学ばせてほしいという嘆願に対し、市長は苦々しい顔で悩み込んでしまう。

 実際、新世代型二次元人を危惧する思想は未だ高い。そんな現状の中で彼らを町に解き放てば、如何なる有事に発展するか危険性も伴ってしまう。

 市長の苦悩に、バーンズたち聖龍隊も彼らの対談を側で見守る二次元人たちも考えさせられてしまう。

 

 ――――と、その時だった。

「……市長、その件、私に委ねてくれませんか?」

 と、部屋の外から男性らしい声が。

「む、君は……!」

 男性の声に聞き覚えがあるのか、市長は反応した。

 ドアをゆっくりと開けて入室してきたのは、三メートル級のしっかりとした体躯を誇る、爽やかな笑顔の軍人だった。

「おおっ、ドレフ将校! 君かっ」

「ドレフ……彼かそうか……」

 入室してきた男の顔を見て笑顔がこぼれる市長に反して、初対面であるバーンズは初見の男を前に硬直する。

 そして入室してきた男は市長に「どうぞ、どうぞ」という感じで市長の横の椅子に勧められ、腰を下ろす。

「紹介が遅れた。彼はこのジャッジ・ザ・シティの警備を総括しているドレフ将校だ」

「ドレフです。以後、お見知りおきを」

 腰を下ろした市長からの紹介で、ドレフ将校は腰を下ろしたままバーンズたち聖龍HEADに敬礼する。

「ドレフ将校は非常に物腰が低いが、実に丁寧で仕事にも率直な真面目な軍人でね。戦歴も目を見張るもので、その穏やかな人格から「神のドレフ」とまで呼ばれているぐらいで……本来なら、中将にまで昇格してもいい逸材と私は思っている」

「いやはや、私にはそれ程の器量はありません」

 ドレフ将校を賞賛し尽くす市長に反し、ドレフ本人はただただ謙遜するばかり。

 そんな中、ドレフ将校は市長に提議した。

「市長、彼ら新世代型二次元人のジャッジ・ザ・シティへの案内は私に任せてくれませんか?」

「え、君が? それはまたなんで……」

「はい、私もバーンズ氏同様、彼ら新世代型たちにもこの町の……人工島都市の素晴らしさを知ってもらいたいのです。如何に危険と言われている新世代型であっても、教養を与えてはならないという決まりはありません。ここは私の顔を立てて、彼らをジャッジ・ザ・シティに招いてもらえませんかね」

「うーーむ、確かに。君に任せればそれはそれで安心だが……」

 ドレフの言い分を聞いて、再び考え込んでしまう市長。

 皆が市長の決断に無言で注目する中、市長は決断した。

「…………ふむ、よし良いだろう。ドレフ将校に任せれば何か有事の際には解決してくれる事だろうし、安心できる! ではドレフ将校、後は任せたよ」

「はい! 許可してくれて、ありがとうございます!」

 新世代型二次元人をジャッジ・ザ・シティへ入国させてくれた市長の決定に、ドレフは深々と頭を下げて感謝の意を示す。

 そしてドレフは改めて聖龍隊や二次元人たちと話を交わす。

「聖龍隊、バーンズ氏……あなた方の様な素晴らしい戦歴を持った方々と出会えるとは真に光栄であります!」

「いやいや、そんな……あんたこそ、ジャッジ・ザ・シティでの評判は上々じゃないか」

「四名のプロト世代、そしてその他多くの新世代型の皆々様! よくぞ技術の結晶ともいえるジャッジ・ザ・シティへと御越し頂きました! 以後、宜しくお願いします……!」

「い、いえ、こちらこそよろしく……」

 バーンズとプロト世代の海道ジンと拍手を交わしながらも、有望な軍人とは思えないほど丁寧かつ低い物腰で接してくるドレフに皆は戸惑ってしまってた。

 

 そんな中、ドレフ将校は新世代型二次元人と共に聖龍HEADについてきたシバ・カァチェンを目にして彼に話しかける。

「おや、君は確か台湾軍の……」

「お初にお目にかかります。恥ずかしながら台湾軍が将軍、シバ・カァチェンと申します。以後、お見知りおきを……」

「ははっ、そんなに硬くならなくて良いですよ。軍人としての地位では貴方の方が上なんですし、私程度にそこまで低い物腰で話す必要はありませんよ」

「は、はぁ……」

「それとも、私の体格に驚いてしまっているのですか? それはそれで申し訳ない、私は元々戦闘用として生み出された二次元人ですからな。体躯が大き過ぎるのは生れ付きなんですよ」

「はぁ、そうですか……」

 人望の厚さでは天と地ほどの差があるのに、地位的には国将軍の方が上だと唱えるドレフ将校の話にカァチェンは返事をするしか出来なかった。

 

 

 温情な人柄ゆえに神様と人々から人望を託されているドレフの付き添いの元、HEADと二次元人たちは役所から出てきた。

「おっ、お前ら話は済んだようだな……おっ、その面は見たことあるぜ。確か神様の異名を持つドレフ将校様ではないか」

「そういう君たちは略奪行為を行いながらも義賊面している赤塚組だな。いや、初めまして」

 出てきた皆を心配して役所の前で待ち侘びていた大将たち赤塚組は、同行しているドレフを見て、互いに皮肉交じりの台詞を笑顔で交えた。

 すると此処でバーンズがドレフにお願いをした。

「なあ、ドレフ将校……」

「ドレフで良いですよ。で、何でしょうか?」

「いやな、オレ達これからちょっとジャッジ・ザ・シティの聖龍隊基地に赴かなきゃならなくて、悪いけど二次元人たちとカァチェンの世話お願いできない?」

「別に全く以って構いませんが……二次元人たちやカァチェン氏を放っておいて、どうするおつもりで?」

「それがよ、この現政奉還で異世界各地でも戦乱が勃発しているんだ。その状況をちょっとジャッジ・ザ・シティの基地で確認するのと、そんな戦乱が勃発した異世界の聖龍隊同士にこっちの世界への助成は可能なのかも確かめておきたくてな……」

「なるほど、承知しました。確かに、現政奉還の煽りはこのジャッジ・ザ・シティにも影響が出ておりますし、お気持ちは察します。では彼ら二次元人の事は私に任せてください」

「ありがとう、助かるよドレフ」

 同士である聖龍隊加盟国である異世界の現状を把握するべくジャッジ・ザ・シティの聖龍隊基地で確認を取りたいと願い出るバーンズの申し出に、ドレフ将校は快く笑顔で承諾。これにはバーンズたち聖龍HEADも心から感謝した。

 そして聖龍HEADは先に役所前から離脱して、早々にジャッジ・ザ・シティの基地に向かう中、残された二次元人たちに対してドレフ将校が申し開いた。

「では、私たちはこれからジャッジ・ザ・シティの観光と参りましょうか。楽しく観光しながら都市を巡れば、如何にこのジャッジ・ザ・シティが素晴らしい所か理解できるはず!」

 このドレフ将校の発言を聞いて、赤塚組が頭領の大将も言った。

「それなら俺たちもご同行させてもらうとするか。今更だが、俺たちもまだまだジャッジ・ザ・シティの仕組みとか建造については分かりにくい所もあるし……何より、二次元人どもが心配だ。余計なお世話かもしれないが、俺たちも一緒に行くぜ」

「ああ、構わんとも。如何に義賊といえど、二次元人たち同様大事な客人には変わりない。思う存分にジャッジ・ザ・シティを案内させてあげようではないか!」

 こうしてドレフ将校を筆頭に、一般の二次元人たちにシバ・カァチェン、そして大将たち赤塚組はドレフ将校の案内の元ジャッジ・ザ・シティを観て回るのだった。

 

 

[ジャッジ・ザ・シティの機能]

 

 まず最初にドレフが皆を案内したのは、驚く事に華やかで壮大な地上とは裏腹の地味な地下。

 地下に潜っていくと、ドレフは海上都市ならではの機能について説明した。

「知ってのとおりジャッジ・ザ・シティは太平洋海上沖に建造された巨大都市だ。最初は環境破壊が議論になったが、この都市の設立者である小田原修司は島の基盤すなわち海中や海上に建造する機械の大部分を汚水浄化装置として機能させて、ジャッジ・ザ・シティで排出される汚水を全て濾過して海に放出されている訳だ。同時にジャッジ・ザ・シティ周辺海域の海水も濾過して浄化も行っているのだ」

 都市の排水および周辺海域の海水までも濾過してしまう巨大な汚水浄化装置の上にジャッジ・ザ・シティは建造されていると語り明かすドレフの説明に、二次元人の多くが納得する。

 

 

 ところ変わって彼らは地上に出ると、ドレフに連れられて都市を進行していく。

 都市にはあらゆる国や異世界から来た住人で溢れ返り、実に活気盛んでいた。

 暑い残暑を乗り切るトルコアイス屋やケパブの屋台、多種多様な種族が暮らしているジャッジ・ザ・シティでの風景に一同は和んでいた。

 すると此処でドレフ将校は皆を、屋台とは違うトルコアイスのチェーン店の前まで誘導していくと皆に言った。

「ここのトルコアイスは実に種類豊富でね。君たちも食べないかい? なに、お金なら私が払うよ」

 気前のいいドレフ将校からの申し出に、二次元人たちは断るのも失礼かと思い、率直に御馳走される事となった。

 店には定番のバニラ味はもちろん、チョコやカシューナッツなど様々な味のアイスが並んでいた。

 と、そこに店長である男性が声をかけてきた。

「なあ、君たち日本人だろ? ちょっくら試作のアイスがあるんだが、食べてみてくれないか? ゴマ味なんだが……」

 聞く所によると、今ジャッジ・ザ・シティでは欧米と同じく日本食がブームになっているらしく、それに便乗して和風のゴマ味を試作してみたところ味の良し悪しが判別できずに困っていたという。

 これに二次元人たちは味見をしてみて、素直に美味しいと答えると店長はご機嫌になる。

「そうか、それは良かった! ゴマ味が成功したとなると、次は何味にチャレンジしてみようかな……味噌とかどうだろう……?」

 店長の独り言を耳にしつつも、新世代型たちは共有感知で案内をしてくれるドレフ将校の心の内を自然と周知してしまう。

(う~~ん、今日は思い切ってチョコ味を頼むか……いや、大人の風味でコーヒーを選ぶか。種類が多いと、どうしても迷ってしまう……)

 一人黙々とどの味のアイスを頼もうか自問自答するドレフ将校の思想を知って、新世代型たちは彼の子供みたいに無邪気な一面を知ってより一層ドレフに心を許した。

 

 

 アイスを堪能した彼らが次に案内されたのは、水族館であった。

 水族館では、主にジャッジ・ザ・シティで行われている自然保護活動についてドレフより説明があった。

「ここは水族館。ここではジャッジ・ザ・シティ周辺海域における環境維持について市民からのリクエストを受けつつ、それを実現可能かどうか研究する機関でもある。写真を見て分かるとおり、ジャッジ・ザ・シティ周辺海域には廃棄された電車やバスなどを敢えて海中に沈めて小魚たちの居住にしているんだ。ただ生活排水を浄化するだけでなく、魚などの海中生物の住処を守るのも、自然保護の一環なのだよ」

 市民からの提議が実現可能かどうかを研究する機関だけでなく、ジャッジ・ザ・シティ周辺海域には敢えて廃棄された電車やバスを放置させて小魚の住処として提供する活動を伝える場所であると、ドレフは二次元人たちに語る。

 更に都市を移動中にも、ドレフ将校は案内の元付いてきている二次元人達とシバ・カァチェン、そして彼らに同行する赤塚組に語る。

「ジャッジ・ザ・シティの各建物の屋上には、必ずCO2除去装置が取り付けらる事が義務化されている。温暖化の原因である二酸化炭素の排出を抑える事もまた、ジャッジ・ザ・シティの取り組みなのだ」

「何かと自然保護とか環境維持に取り組んでいるな。ジャッジ・ザ・シティは」

 ドレフの説明に真後ろについていた幸平創真が同じ新世代型の疑問を代弁すると、ドレフは和気藹々とした笑顔で返答した。

「ふむ! それはだね、少年。ジャッジ・ザ・シティ建設中の時より、設立者である小田原修司の意向により、環境の良質化が図られていたからだ。海上に人工都市を創るのは環境には悪いというイメージを払拭するため、小田原修司氏はジャッジ・ザ・シティを実にエコロジーな都市へと発展させようと意識していたのだ」

 ジャッジ・ザ・シティは環境に適した素晴らしい都市なのだと微笑みながら力説するドレフの言葉を聞いて、彼が心の底からジャッジ・ザ・シティに心酔している事を理解する二次元人達。

 

 

 更にドレフ将校はある建物の前まで連れてくると、その公共の建物について説明し出す。

「ここはジャッジ・ザ・シティのハローワークだ。知ってのとおり、ジャッジ・ザ・シティには毎年多くの移民や労働者が世界各地だけでなく異世界からもやってくる。そんな彼らに労働の場を提供し、案内するのもジャッジ・ザ・シティの取り組みの一環だ。誰もが努力すれば、必ず努力が実る……実に素晴らしい事だ!」

 ジャッジ・ザ・シティの職業案内所について熱弁するドレフ将校の論弁は治まらなかった。

「誰もが自由を求めてやってくるジャッジ・ザ・シティ、そこにはメキシコからの移民なども数多く存在する! だが、全ての移民を受け入れてかつ正しい労働場所を提供して社会の流通を発展させる! これぞ! ジャッジ・ザ・シティの機能の中心なのだ!!」

 誰よりも熱く熱弁するドレフ将校の論弁に戸惑い始める二次元人達は「まあまあ」と半ば興奮状態に陥るドレフを宥める。

 

 そんな熱弁を語るドレフ将校を宥めた後、気を落ち着かせたドレフは同行している皆々を楽しませようと、ジャッジ・ザ・シティの玩具店へと足を運ばせる。

「ここはジャッジ・ザ・シティでも指折りの玩具店だ。LBXはもちろんガンプラ、さらに聖龍隊隊士のフィギュアなども数多く揃っている!」

 と、まるで自分の事の様に自慢するドレフ将校の子供じみた論弁に耳を傾けながらも、新世代型たちは最新のLBXやガンプラ、更には実際に見慣れている聖龍HEADの精鋭たちのフィギュアも数多く展示されており、皆は目を奪われていた。

 するとその時、店の店主なのか一人の黒人男性が店先に並んでいた一部の商品を片付け始めた。二次元人達は何を片付けているのかと目を向けると、それは村田順一や彼と同じスター・コマンドーのフィギュアやグッズだった。

「ど、どうするんですか? その商品……」

「ん? どうするも何も……スター・コマンドーが聖龍隊を裏切っちまっただろう? 聖龍隊っていう組織を離反した連中のフィギュアやグッズなんか店先に置いておけねえよ……タクッ、本当ならこの商品もウチの目玉商品だったんだがな……」

 新世代型の燃堂力が店主に訊ねると、店主は国際的組織聖龍隊と離反したスター・コマンドーの商品を店先に並べておく訳にはいかないと、苦々しい顔で答え返す。

 これを聞いて、二次元人達は聖龍隊とスター・コマンドーの仲違いを再認識されてしまう。

 

 

 皆が玩具店より出ると、目に入ってきたのは獣人の二次元人が普通の二次元人にサインを求められている光景だった。

「うわっ! あの人、もしかして有名人?」

 新世代型の燃堂力が、サインを求められている獣人を見て有名人かと騒ぐとドレフ将校が詳しい経緯を代弁する。

「はは、あれは違う。このジャッジ・ザ・シティにはさっきも言った通り数多くの人種や種族が行き交っている。それで初めて見る二次元人の獣人を相手に珍しくて思わずサインを要求してしまう人々が未だに多いのだ」

「へぇ、そうなんだ……」

「なにせ、このジャッジ・ザ・シティはアニメタウンと違い誰もが旅行目的でも来れる、唯一手軽に二次元人に出会える交流の場でもあるからね。中には、自分の考えたオリジナルの二次元人や獣人を探す為にジャッジ・ザ・シティを訪れる旅行者も少なくないからね」

 自分が考案して想像した二次元人や獣人を探す為にジャッジ・ザ・シティを訪れる三次元人も少なくないと語るドレフ。

 

 

 

[ジャッジ・ザ・シティの警備]

 

 それからドレフ将校は、自身が総括しているジャッジ・ザ・シティの軍事警備体制も二次元人達に紹介した。

「皆の中には既に周知している者もいると思うが……ジャッジ・ザ・シティの犯罪やテロリズムの傾向は上昇する一方なのだ。それは多くの種族を迷わず受け入れているのが現状で、その中には当然異常者(ヒール)と変化してしまう者まで出没してしまう。そこで都市の至る所に軍の部隊を警備待機させて、治安の維持を図っている訳だが……それも簡単には上手くいかなくてね」

 

 そう最後には呟きながら語り明かすドレフは、そう語りながら配置に就かせている部隊の方へと皆と共に歩み寄る。

「どうかね? 調子の方は……」

「こ、これはドレフ将校! はい、順調ですッ」

 ドレフの呼びかけに反応した兵士は、全身を金色のアーマーで覆う男だった。ドレフは彼を二次元人達に紹介する。

「紹介しよう、この部隊の隊長を務めているシャドウだ」

「よっ、オレがシャドウだ。ん? なんで金色のアーマーを着けているのにシャドウかって? そんなの、製作者の二次元人に聞いてほしいね」

 上官であるドレフの紹介に対して、シャドウは飄々とした態度で話し返した。

 そしてドレフはシャドウに対して厳しく言い付けた。

「シャドウ! いつ異常者(ヒール)が発生するか分からないんだ、我々がしっかりしなければ市民の安全は護れない! 肝に命じるように!」

「イエッサー!」

 いつもは笑顔を絶やさないドレフ将校の厳しい物言いに、二次元人達はドレフ将校も責務に徹する時は厳しいんだなと実感する。

 と、ドレフ将校は更にシャドウについて二次元人に説明した。

「ああ、それと……シャドウは君らと同じ新世代型の二次元人でね。いや、実に勇猛な兵士なのだよ」

「なぁに、異常者(ヒール)狩りぐらい訳ないですよ、将校」

 シャドウも新世代型二次元人であると説くドレフに対し、シャドウは異常者(ヒール)を狩るのは雑作もない事だと自負を表す。

 これに二次元人達は、ジャッジ・ザ・シティでも容赦のない鉄槌が行われているのだなと実感するしかなかった。

 

 

 と、ドレフ将校が部下であるシャドウに固く命令を告げて立ち去ろうとしたとき、ドレフ将校の胸元から一冊の本が零れ落ちてしまった。

「あっ、落ちましたよ……って、これは……!」

 零れ落ちた本を拾ってあげようと屈んだ琴浦春香の目に飛び込んできたのは、小田原修司が書き綴った聖龍伝説の自伝本だった。

「おお、これはこれは。ありがとう、拾ってくれて」

「い、いいえ……あの、ドレフ将校もこの本を読んでいるんですか?」

「ああ、そうだ。二次元人と三次元人の架け橋になってくれた小田原修司の自伝本を私が読まない筈がないだろ。……まあ、彼が発達障害者である事は衝撃的であったが」

 ドレフ将校は本を拾ってくれた琴浦春香に対して、自身も小田原修司が発達障害者である事を知って驚嘆したと発言する。

 そんな小田原修司の自伝本について語り合っていると、後ろのシャドウがぼやいた。

「あ~~あ、そんな本、分厚くて読む気にもなれねえぜ。小田原修司も、二次元好きなら漫画とかで自伝本書けってんだ」

「こら、シャドウ! 前々から言っているが、たまにはこの様な分厚い本を読んでみるのも教養があって良いぞ。めんどくさがらず、彼ら君と同じ新世代型を見習ってこの自伝本を読んでみたまえ! 実に面白いからな」

 分厚い文字ばかりの本を読む気がしないとうっかり口を滑らせてしまうシャドウに、ドレフ将校は同じ新世代型の皆々も自伝本を読んでいる事を薦める。が、この時一般の新世代型二次元人たちに疑問が生じた。

(あ、あれ……? 私たち、いつドレフ将校に自分達も自伝本を持っているって話したんだっけ……)

 新世代型二次元人達は、ドレフ将校に話した覚えもない自伝本の事を彼がいつ知り得たのか少しばかり不思議に思った。

 と、そんな疑念が募る中、ドレフ将校は皆に向かって話し出した。

「……と、警備の方はこれで以上だ。まあ、シャドウはああ見えて仕事は実直に行う者だから、彼が目を光らせている限りテロが簡単に行われる筈はないと思われる……無論、テロはいつ如何なる事態と状況で起こり得るか分からないのでハッキリと断言はできないがな」

 そう話し終わると、ドレフ将校は現場を隊長であるシャドウに任せて二次元人達とシバ・カァチェンそして赤塚組を引き連れて去って行った。

 彼らが立ち去った直後、現場を任されているシャドウが持つ携帯が鳴り、シャドウはその電話に応対する。

「はい、もしもし……ああ、なんだ、アンタ達か。大丈夫、もう仕掛けは町中に設置しておいた。後はアンタらの好きな様にスイッチを入れてくれれば……まっ、だがオレ様まで巻き込ませないよう気を付けてくれよ。折角、あんたらの計画に便乗してやったんだからよ」

 話が終わると、シャドウは携帯を切って通常の職務に戻った。

 

 

[小田原修司の祭典]

 

 皆がドレフ将校の案内の元、ジャッジ・ザ・シティを徘徊していると同行している赤塚組の大将が声を上げた。

「おっ、何だか面白そうなのやってるぜ!」

 大将が指差した方には、何やら人だかりができていた。

「ほほう、これは……この都市の創設者、小田原修司の今までの戦歴を振り返る祭典らしいな」

 ドレフ将校が語るには、ジャッジ・ザ・シティの設立者 小田原修司の今日までの戦歴を振り返る祭典がちょうどジャッジ・ザ・シティで行われているのだという。

 

 さっそく中に入って、展示されている写真や説明文に目を釘付けにする面々。

 その中には、小田原修司がキン肉マンら超人たちと奮闘している場面も展示されていた。

「ふぅん、超人プロレスにも手を出していたんだな、修司って人は」

「おっ、お前さん達もキン肉マンは知っているんだな!」

「まあ、一応はジャンプの先輩ですからね」

 何気なく小田原修司と超人の闘いぶりを写真で眺める幸平創真たち【食戟のソーマ】組に大将が声をかけると、彼らは掲載雑誌の先輩にあたる為に周知しているとの事。

 そんな小田原修司が超人とのプロレスで見せた得意技や必殺技についても解説が載せられていた。

 まずはデーモン=クロー。これは相手の内臓までも引き摺り出してしまうほどの強力な握力でのクロー技。

 次に写真や映像で解説していたのはデーモン=クラッシャーという荒々しい体当たり技であった。これは相手にショルダータックルや体全体を用いて繰り出す強力な突撃技で、この技を受けた相手は宙に舞ってしまうほどだという。

 最後に小田原修司が得意としていたプロレス技はオリジナルの物ではなく、地獄の死刑というインドで生まれた関節技。羽交い絞めで背中を絞り上げながら捻じれる背骨を更に頭で攻めるという、相手に地獄の激痛を与える悶絶技。

 

 展示されている写真の中には、2010年9月12日から28日の間に開催された多次元ワールドオリンピックでの写真も公開されていた。

 数多くの名立たる超人たちと死闘を展開する小田原修司の奮闘ぶりを写真越しとはいえ拝観した二次元人達は、その写真からにじみ出る威圧感に圧倒されてしまう。

 

 こんな小田原修司の格闘ぶりを展示する中、そんな小田原修司の心の格闘を表す詩も祭典には展示されていた。

(俺は小田原修司 人呼んでファイティングソルジャー 俺のことをどっちつかずの異能者と笑わば笑え 確かに俺は三次元人ゆえに能力者と呼ばれず、逆に能力者であるから通常の人間とも違う。だが言っておくが俺や仲間たちをバカにするやつはこの鬼の爪 デーモン・クローが貴様の心臓を抉り取る事を覚悟しとくがいい)

 小田原修司が実際に吐いた台詞から始まり、詩は綴られていた。

 デーモン・クローが鋭く光り、戦地に広がる地獄絵図

 地獄の死刑で、返り血浴びる。冷たいファイティング・ソルジャー

 修司よ、苦しみを超えたとき、修司よ、微笑みさえ失くしちまった

 ただただ悲しみが戦地に零れ落ちる

 愛を感じず、夢に外れた 悲しき鬼よ

 

 再び詩は小田原修司が過去に吐いた台詞から始まる。

(愛を感じない俺の半生は厳しかった 何を考えているのか理解されずに気味悪がられて皆に石を投げられたものさ。そんな俺が入ったアメリカの極秘軍隊は、国の英雄とは名ばかり……その実態は、要人専門の暗殺部隊! 所詮この世は何か正しいか正しくないかで判別されない。役に立つか立たないかで人の価値を判断されるんだ。だから俺は役に立つ人間だと証明し続ける為に戦い続ける……! だが言っておくが、俺の欠落した心にも労わりの想いが少なからずある)

 鬼の心が重いお前は、戦う事が生きがいなのか

 怒れた鬼だと、仇名されても 無口なファイティング・ソルジャー

 修司よ、残酷なラフ・ファイト 修司よ、心の闇に悲劇を隠す。悲しみが戦地にこぼれ落ちる

 愛を感じず 夢に外れて 己に怒る鬼よ

 

 この詩を目にして二次元人達は悟った。

 発達障害者でありながら周囲から蔑にされてきた半生。その半生を拭い取るように、如何に汚い職務でも成し遂げようと、自分の価値を認めてもらうために奮闘してきた事。

 どんな戦闘でも血を浴びて真っ赤になろうとも、愛を感じない鬼には夢を見る資格は無かったのだと小田原修司は思い込んでいた。

 そう何故か確信する新世代型たちだった。

 

 

 その一方で、パワーファイターの小田原修司を猛る鬼神の如く言い表した台詞と詩も公開されていた。

「俺が聖龍隊No.1 ダークパワーの小田原修司だ! 世界中の悪党どもの多くは特殊能力で戦い続ける奴等よ フンっ! そんな悪党共が全ての能力を無力化しちまう俺に束になってかかってきても敵うと思うか」

 体に流れるDのパワー 軍政に血を売り、俺は生まれ変わった

「パワーの違いは歴然 だが二次元人の主人公たちが見せるネバー・ギブアップの精神 あれこそ無限のパワーに違いない 俺も、この俺もいつか、あんなパワーを手に入れてみたい」

 きれい事だけ 並べてみたって 勝たなけりゃ 負け犬の遠吠えさ

 ムダなあがきに ピリオド打つぜ デーモン・クラッシャーで 地獄に堕ちろ

 体に溢れるDのパワー 軍政に捧げた、真紅の殺戮の証

 

 この台詞と詩からは、力に固執した小田原修司がD-ワクチンという筋肉増強剤を投与した結果を、軍政に血を売ったと表現されており、また体に溢れるDのパワーで敵対する異常者(ヒール)を血祭りにあげて殺戮の証の如く己の身を真紅の血で染め上げた経緯を察する。が、同時に小田原修司が二次元人の無限の可能性に憧れを抱いていた経緯も察する事が出来た。

 

 

 

 更に別の詩の題名には、こんなものまで。

 その名も『異常者(ヒール)の狩人』

「地上最強といわれる聖龍隊総長 その首領こと鬼神とは他でもない この小田原修司である!」

「俺の武道 すなわち 剣道 柔道 空手道など あらゆる武芸を極めた俺は他のヒーロー/ヒロインにも匹敵する実力を秘めている それ故にこの世に恐れるものはない」

 武士道に磨かれた鋼鉄の身と心。残虐鬼神と呼ばれる俺の技は無限だぜ

 我が主はウォール・トゥーサム 武士の誇りが下等な二次元人 ぶっちぎる

 生きて恥を晒すな

 みせかけの強面はがし、勝利に酔えば カタナ赤く燃える小田原修司

「二次元人とは本来、三次元人の手本となるべき高等な種族だ。それが今はどうだ、悪に道を走り、遂には異常者(ヒール)と成り果てる。そういう下等な二次元人をこらしめるのも、我が役目なのだ」

 志かなうまで、憎まれ役を演じよう 

 下劣な面の悪役ども、俺がカタをつけるぜ

 振れば 玉散る刃 胸に 闇の渦

「愛」だとか「友情」だとか、俺には得られずとも、勝ち続ける

 小田原修司

 

 この台詞と詩からは、小田原修司の自信が表れていた。

 二次元人を、三次元人の手本となる高等な種族と信じて疑わなかった小田原修司は、そんな二次元人の中から現れる異常者(ヒール)を決して許さず容赦なく排除する勇姿。

 武を極めた武人であると同時に、異常者(ヒール)のいない世界を心より願った武士道精神に二次元人達は感服させられた。

 

 

 

 そして次にお披露目したのは、小田原修司がただのパワーファイターだけでなくテクニカルな技も多用していた写真や動画、そして詩であった。

『聖龍ファイター』

「人類四千万年の神秘 小田原修司」

「俺はその昔 異端者だった。小さい時、俺はよくいじめられ 異端に扱われたものよ。だがその苦難の子供時代が この俺に悪を決して許さない 不屈の精神を与えてくれたのだ!」

 

 風にそよぐ、柳のように

 ゆるやかに、攻撃を避けて

 東南西北、何処から来ても、右に左に身をかわす

 静かなまなざし 聖龍ファイター

 獲物ねらう 獣のように息ひそめ チャンスを待つ

 春夏秋冬いつでもじっと、勝負の流れ 読んでいる

 大いなる 民の叫び

 愚かなる異常者(ヒール)よ 無へと還れ

 残虐非道 ファイトの裏の優しい心を 君は見たか

 

 詩の中半には、小田原修司が実際に言い残した名台詞が記されていた。

 

「勝負は最後は技ではない 精神力、心だ。何事においても強くなりたかったら、己を追い詰めて心を磨け」

 

 花に揺れる蝶々のように、ふわふわとリングに舞って

 何人来ても呼吸一つも 乱さない

 しなやかに決める 聖龍キック

 遙かなる 民の祈り

 異常者(ヒール)の魂よ 地獄へ還れ

 変幻自在 ファイトの裏の、人類の神秘を 君は見たか

 

 この詩からは、小田原修司の業師としての腕前だけでなく、勝負ごとに関しては技や力だけでなく精神力の大切さを教わり、更に小田原修司が異常者(ヒール)も万民も全て平等な命として扱い敬いながらも異常者(ヒール)を討伐していた事が伺えた。

 

 

 詩だけでなく、革命軍士から放たれた革命超人との死闘を写し出した写真を一通り拝観した二次元人達は、次に小田原修司が公式に出版した自伝本「聖龍伝説」の三章が大々的に公開されている展示場へと移った。

 展示場には今まで小田原修司や聖龍隊が倒した異常者(ヒール)、すなわち敵役の模型が展示されていた。

 その中にはあの闇人の模型も飾られていた。

「ププッ、ほんとに黒いローブだけはそっくりだよな、ギュービッドと闇人」

「いい加減にしてくれないか? あんたに黒魔術かけたくなってきやがったよ……!」

 黒ローブ姿が一見して酷似している点を指摘され、ギュービッドは燃堂力に微かな怒りを抱く。

 

 

 

[衝撃の賞金稼ぎ]

 

 ドレフ将校より、一通りジャッジ・ザ・シティの案内をしてもらった一行は、ジャッジ・ザ・シティの聖龍隊基地へと連れて来られた。

「……では私はこれで。そろそろHEADが迎えに来てくれるはずだ。先ほど連絡を入れておいたからね」

 ドレフがそういうと、その直後聖龍隊の基地から蒼い衣を着飾った女性が出てきた。

 そう、ミラーガールである。

「ミラーガール!」

「みんな、どうだった? ジャッジ・ザ・シティの感想は……」

 ミラーガールは二次元人やシバ・カァチェン達にジャッジ・ザ・シティを見て回った感想などを聞いて回った。

 そんなミラーガールにドレフ将校が声をかける。

「ではミラーガール、私はこれで。まだ職務が山の様にあるのでね……」

「解りました、今日は本当にありがとうございます。ドレフ将校!」

 ミラーガールはハキハキとした笑顔でドレフ将校に礼を言った。

 するとドレフ将校はポケットを弄り、二次元人達に何かを差し出した。

「そうだ、これを持っていくと良い。このジャッジ・ザ・シティの公共交通を自由に搭乗できるフリーパスだ」

「わあっ! 良いんですか……?」

「良いとも良いとも。これで今日、見て回れなかったジャッジ・ザ・シティの名所を見て回ってくれたまえ。君たちがこのジャッジ・ザ・シティにいる間だけ特別に貸し出そうではないか」

 こうして二次元人達は各々、ジャッジ・ザ・シティの公共交通を自由に使えるフリーパスを渡されて喜々とする。

 

 その後、ドレフ将校は職務の為に二次元人一行と別れ、一行はミラーガールとお喋りをしながらジャッジ・ザ・シティを歩いていた。

「……ところでどうだった? 異世界の現状は……」

「相変わらずですね……何処も現政奉還の影響で混乱しているばかりで」

 ジャッジ・ザ・シティを歩行中、立ち寄った噴水広場で休息を取りながら新世代型の美都玲奈はミラーガールに異世界の現状を訊ねると、彼女は苦々しい面差しで述べ返す。

 現政奉還、世界の平穏を一瞬で奪った混乱を招いたのは自分達と同じ新世代型二次元人という事で、美都玲奈ら一部の新世代型は思い悩んでいた。

 と、皆が和気藹々とこれからどうするか各々で話し合おうとした矢先の事。

「うわあっ!」と、大声が皆の耳に入ってきた。

「この声……マコじゃねえか!」

 声の主が新世代型の満艦飾マコである事を悟った纏流子は急きょマコの姿を探し求め、声のした方へ駆け付ける。

 すると噴水広場の片隅、人が出入りしない細い路地で皆が見つけたのは、何者かに縛られて身動きが取れなくなってしまっている満艦飾マコに大宮忍、相川千穂の三名だった。三人とも、ただ縛られているだけでなく何やら透明な四角い箱の中に閉じ込められていた。

「ま、マコ! いま助けるぞ! ッ、なんだ、この箱? ビクともしねえ……!」

 捕らわれている親友の満艦飾マコを助けようと透明な箱に斬りかかる流子。だが、透明の箱に片太刀バサミが箱と接触した瞬間、衝撃が走り箱には傷一つ付けられなかった。

「流子ちゃん退いて! この箱は最先端の科学技術で作られた代物よ……簡単には破壊できないわ!」

 箱に斬りかかる流子に、ミラーガールが簡単に破壊できない故に一旦退くよう推奨する。

 そして彼女は辺りを執拗に見渡した。

「……どっかに、この箱を制御してる人がいる筈……出てきなさい!」

 するとミラーガールの掛け声に招かれるように、一人の青年が姿を見せる。

「おやおや、流石は聖龍隊の副長にのし上がったミラーガール様だ。スグに見破っちまうとはね……」

「あ、あなたは……!」

 何もない場所からスウッと浮かび上がるように全貌を現したその青年は、タキシード風の格好に片手にはポテトチップの袋を手にした細身の青年だった。

 青年は空になりかけのポテチを袋越しから一気に口に全て運んで食べ切ると、空になったポテチの袋を足元に捨ててミラーガール達に迫った。

 

「オレの名はフレッド……まあ、名乗る必要はねえか。早く他の新世代型をよこせ」

「目的は新世代型……!? でも、なんで……?」

 フレッドと名乗る青年の出現と台詞に動揺するミラーガールが訊き返すと、フレッドは冷淡な台詞を吐いた。

「フッ、決まっているだろ……コイツらの価値は非常に希少だ。ウィルスに支配されない肉体を欲しがっている連中は五万といる…………上手くすればボロ儲けだろ?」

「! 彼らを売る気!? なんてことを……!」

「仕方ねえだろ。今のご時世、こうでもしない限りやっていけないんだからよ」

「ッ、あなた……賞金稼ぎね」

「それがどうした?」

 新世代型を人身売買の目的で手に入れたいと口にし出すフレッドの発言と口振りから、ミラーガールはフレッドが賞金稼ぎである事を察する。

 するとフレッドは手元から一丁の信号拳銃らしい武器を取り出すと、ミラーガールを睨み付けて言った。

「どうする? オレ様と一戦やるか? 他人の力を借りるしか能のないアンタにオレ様が倒せるとは思えないがね……」

 金になる新世代型を手に入れるためなら戦闘もしかねないフレッドの挑発に皆が苛立つ中、ミラーガールは悠然とフレッドに視点を向ける。

 するとその時、フレッドと対峙するミラーガールの後ろからシバ・カァチェンが歩み寄ってきて、ミラーガールに耳打ちする。

「ミラーガール……私が行きましょうか……?」

「いいえ、私に考えがあるわ。カァチェン達は下がってて」

 自分が代わってフレッドと対戦しようかと呟くカァチェンに、ミラーガールは自分なりの考えがあると答え返し、カァチェン達を下がらせる。

 そしてフレッドと対峙するミラーガールは、フレッドに胸を張って語り始めた。

「あなた、私の変身能力を甘く見ないで!」

「へっ、他者変身するしか能のない女が……オレ様の四連式リボルバーエネルギー弾に太刀打ちできるかな?」

 この相手を軽率している態度に、遂に一部の新世代型たちが怒り出す。

「好き勝手言いやがって!」「ま、待つのだ皆の者!」

 フレッドの言動に蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)/犬牟田宝火(いぬむたほうか)の三名が飛び出してしまうが、それを制止しようと鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が呼び止めるが、三人は一斉にフレッドに襲い掛かろうとする。

 しかし強面の蟇郡苛(がまごおりいら)たちを前にしながら、フレッドは余裕を感じさせる笑みを口元に浮かべた。

 そして三人が眼前に迫ろうとした瞬間、フレッドは四連式のリボルバー式拳銃を発射。銃口から単一電池なみの大きさの弾丸が発射され、その弾は三人の目前で爆発した。

 強烈な閃光が三人の前で拡散したと思った次の瞬間には、三人とも銃弾から噴き出た粘液によって体中を雁字搦めにされてしまい、身動きが封じられてしまった。

「ど、どうなっているんだ……!」

 どうにか体中に纏わり付く粘液をはぎ取ろうと必死になる蟇郡苛(がまごおりいら)達だったが、粘液は見る見るうちに固まっていき、硬度の高い物質へと変化してしまった。

 彼らの肉体にへばり付く粘液は、どうやら空気に触れると瞬く間に硬直してしまう特殊な粘液弾だったらしい。

 すると三人をまとめて固めてしまった銃撃を行ったフレッドは、得意げに呟く。

「フッ、一丁上がりっ。どうも一片に三匹も捕まえたみたいだな」

 人身売買する為に新世代型たちを捕縛していこうとするフレッドの行動に、ミラーガールは怒った。

「ちょっとあなた! 相手は私の筈よ……!」

 そしてミラーガールは自身の左手に装着しているコンパクトに右手を翳すと、お決まりの呪文を唱えた。

「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン……恐竜になれっ!」

 するとミラーガールは瞬く間に巨大な肉食恐竜ティラノザウルスに変身して、その巨大な容姿でフレッドの前に立ちはだかった。

「オーマイ、ゴット……」

 巨大な肉食恐竜に変身したミラーガールを前にフレッドは完全に戦意喪失してしまい、意気消沈してしまう。そして彼と同じく、ミラーガールが肉食恐竜へと変身したのを目の当たりにした二次元人一行も全員が顔面蒼白となってしまう。

 そして次の瞬間、恐竜に変身したミラーガールはその巨大な口で眼前のフレッドを丸かじりした。

「うわーー、わーーーーッ!!」

 巨大肉食恐竜に上半身を食われそうになり、大混乱するフレッドを前に皆の血の気が一層引く。

 そして十数秒、フレッドを咥えたミラーガールは彼をペッと吐き出して壁に衝突させる。

 壁に衝突したフレッドは全身を血塗れ……いや、恐竜のよだれ塗れにされながら悶絶していた。

「………………………………」

 すると恐竜に変身していたミラーガールは元の姿へと戻って、よだれ塗れになったフレッドに言い放つ。

「どう、まだやる気? もっと恐いものに変身してあげてもいいのよ」

 鋭い目付きでフレッドを睨み付けるミラーガールの眼力に、流石にフレッドは降参を示す。

 フレッドの降伏を呑んだミラーガールは、更にフレッドに言い付ける。

「それじゃみんなを……三人の女の子を解放しなさい! オマケに、カチカチになっちゃった三人も元に戻してくれたなら何もしないわ」

 ミラーガールの要求を聞いて、フレッドは顔面蒼白で頷いて胸元に隠し持っていた電源ボタンを押してマコたち三人を閉じ込めていた光化学製の箱を消滅させた。

「マコ! みんな」

 解放されたマコたちを出迎える流子たち。

 そして更にフレッドは蟇郡苛(がまごおりいら)たちの動きを封じている硬直した粘液を元通りの粘液に戻す薬剤を手渡す。これを受け取ったミラーガールは早速三人に塗し掛けると、三人の動きを拘束していた物質はベトベトの粘液へと戻っていく。

「ひ、ひぃ~~、体中ベトベトだ……」

「ミラーガールの、私の指示なしに動くからだ。まったく……」

 体中をベトベトの粘液に晒される自分達の現状に嘆く猿投山渦(さなげやまうず)鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が指示なしに動いた報いだと三人を叱咤する。

 だが此処で、先ほどまで恐竜のよだれ塗れになって困惑していたフレッドの姿がいなくなっていた事に新世代型たちは気付く。

「あっ、あの野郎どっかに逃げやがった……!」

 だが、この状況にミラーガールは落ち着いた様子で皆に言った。

「もう放っておきましょう。このジャッジ・ザ・シティには、あんな無法者の賞金稼ぎがゴロゴロしてるし、無視した方が得策よ」

 そしてミラーガールは最後に、新世代型たちに笑顔で言った。

「でも安心してちょうだい! またこんな事態が起きたら、私たち聖龍隊が助けてあげるから!」

 ミラーガールの頼りがいのある台詞を前にしてると、彼女に続いて二次元人一行に付いてきている赤塚組の大将も言った。

「そうよ! でもって、俺様たちもいるって事、忘れるなよ! 何かあったら全力で助ける……それが赤塚組の鉄則よ」

 弱き者を庇い、助けるは必然だと堂々と公言する大将の格言に二次元人達は驚かされてしまう。

 

 

 しかし、そんな二次元人達とミラーガール達の会話を陰で聞いていたフレッドの存在に誰も気が付かないでいた。

「……フッ、何があっても助けてやる、か……甘ったれた事を」

 そうぼやきながらフレッドはよだれ塗れの現状でその場を立ち去って行った。

 

 実際、これが新世代型二次元人に襲い掛かるジャッジ・ザ・シティでの悲劇の序章だと誰も思いはしなかった。

 

 

 

 

 

[登場オリジナルキャラ]

 

 

ドレフ

 国連軍の将校。ジャッジ・ザ・シティの警備総括を担っている。

 誰にでも明るく穏やかに接している事から、人々から「神のドレフ」との異名で呼ばれている。

 非常に温厚かつ優しい性格だが、緊急事態には威厳ある風貌に表情を変えて対応する一面もある。

 常に背中に二対のサーベルを背負っており、戦闘時にはこれを使用して戦う。

 

シャドウ

 金色の戦闘アーマーを着込んだジャッジ・ザ・シティの警備を担う部隊の隊長。

 右肩に砲口が設置されおり、戦闘時はこの砲口にエネルギーをチャージして戦う。

 

フレッド

 賞金稼ぎを生業としている青年の姿をした二次元人で、ジャンクフードが好物の細身でタキシードを着た人物。

 武器は四連式の信号拳銃から様々なエネルギー弾を発射しての多種多様な道具。

 最初は新世代型二次元人の貴重性から、彼らを誘拐して人身売買しようとするがミラーガールによって阻止。

 以降、姿を消すが後々貴重なキーパーソンとなる。

 

 

 

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