現政奉還記 未来都市&宇宙編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 セクター4での水棲生物飼育エリアで暴れ回るUMAヒトガタを討伐した大将一行。そのヒトガタの正体は、やはり擬態していたXであった。一方、灼熱エリアに建設された兵器製造工場に潜入したミラーガール達は、そこでルーキーズおよびマン・ヒールズと再会を果たす。そして善戦の末、どうにか工場を統括していたツバメ型二次元人マッハ・ジェントラーを倒す事に成功した一行は、改めて新世代型二次元人たちの元へと案内されるのだが……



現政奉還記 宇宙編 友の条件

[反発]

 

 ウルファト生産工場を停止に追い込んだミラーガール達は、改めてルーキーズとマン・ヒールズに今回の戦いに協力してくれている新世代型二次元人を紹介しようとしたのだが……

 

「ふざけないで!」

 一同が拠点にしているセントラルエリアに、ミスティーハニーの怒号が響き渡る。

 そしてミスティーハニー率いるマン・ヒールズは仲間である聖龍隊の制止を振り切り、セントラルエリアから立ち去ろうとした。

「待って、ミスティーハニー!」「聖羅!」

 早々に立ち去ろうとするミスティーハニーを、仲間であるミラーガールと姉であるキューティーハニーが呼び止めようとする。

 だが、ミスティーハニーの手を掴んだミラーガールの手を彼女は振り解き、鋭い眼光でミラーガールたち仲間の聖龍隊に訴えた。

「シャドウに裏切られたのを忘れたの!? もう新世代型は、いつ異常者(ヒール)化して、敵になってもおかしくないのよ!」

 ミスティーハニーたちマン・ヒールズは、過去に新世代型のシャドウに裏切られた事を苦渋に思っており、半ばトラウマになっていた。故に、新世代型に対して極度の不信感を覚えていたのだ。

 ミスティーハニーたちの訴えに対して、ミラーガール達は何も反論できないでいると、その状況を傍観していたフレッドが口を挟んできた。

「へっ、よく言えたもんだぜ。元々は異常者(ヒール)認定されていたにも関わらず、今では聖龍隊の汚れ仕事まで引き受けちまう精鋭部隊が……異常者(ヒール)だなんだのと、よく言えたもんだな」

 このフレッドの暴言に、月詠イクトやガイト達が反感を抱いた。

「なんだと、このヤロ……ッ!」

「おお? やろうってのか……!」

「やめろって、お前ら!」

 一触即発しそうになる空気に、すかさずメタルバードが間に入って仲裁する。

 そんな取っ組み合いになりそうな嫌悪感漂う空気の中、ミスティーハニーの一喝が響いた。

「やめなさいっ」

 ミスティーハニーの一喝で、その場の騒動は静まり返った。

 そしてミスティーハニーは、再びミラーガールたち仲間に背を向けると物静かに語り掛けた。

「みんなの人を信じたい気持ちは分かるけど……私達は私達で勝手にやらせてもらうわ」

 そう言い終るとミスティーハニーたちマン・ヒールズは早々とセントラルエリアを後にしてしまった。

 新世代型への不信感から離脱してしまったマン・ヒールズを前に、メタルバードは悲痛に暮れる。

「ああぁ……なんで、こうなっちまうんだよぉ」

 メタルバードは、上手く組織内での統括がとれない現状に嘆いた。

「分かってもらうのに、時間がかかるんだよ。きっと……」

 そんな殺伐とした現状で、ワイルドタイガーは理解し合えるのには時間が必要なのだと皆に説いた。

 

 こうしてマン・ヒールズがチームから離脱してしまった。

 

 そして基地であるセントラルエリア、そのメインフロアにて犬牟田宝火は居た堪れない心境でミラーガールと対話した。

「僕たちを信じてくれないなんて、ちょっと残念でならないです。マン・ヒールズの皆さん」

 犬牟田が、自分たち新世代型に対して不信感を募らせるマン・ヒールズを残念がっていると、そこに通信が入ってきた。

「あっ、通信入ります、ドレフ将校です!」

 通信は即座に通話状態に保持され、ミラーガールへと繋げられた。

「……聞こえるか? 聖龍隊? マン・ヒールズは? 彼女達はどうだった?」

「マン・ヒールズは生存していました! やっぱり彼女達は……! でも、また……自分達だけでやると言って……」

「そうか、彼女達なりに考えが……のかもしれん。気を取り直して……らしい情報が入った。新世党の……重要施設……」

 するとメインフロアの画面に何かの画像が表示された。

「これを見てくれ……新世党……の……秘密研究施設だ……奴ら……ここ……何か重大な……研究……」

 しかし、やはり未だに通信の具合が悪いのか、すぐにドレフ将校からの通信は途切れてしまった。

 だがドレフ将校が送信してくれた画像の解析に美木杉がスグに解析を進めさせる。

「犬牟田君……この施設の位置を割り出せるか……?」

「はい、多少時間はかかりますが」

「ああ、頼む」

 

 美木杉愛九朗の指示で、犬牟田が画像の解析を進めている間、ミラーガールと美木杉は対談していた。

「裏切りで、命を落としかけたマン・ヒールズが……我々、新世代型二次元人を信じられない気持ちは分かる。だが、目指すところは同じなのだ。いつかは分かり合えるだろう」

「そうね……彼女達もきっと、いつか新世代型を受け入れてくれる事を信じましょう……」

 ミラーガールは美木杉に、自分の切実な想いを包み隠さず打ち明けた。

 一方で犬牟田は、ドレフ将校が送信してくれた画像の解析に専念していた。

「画像の解析を進めています。もう少し時間がかかりそうですね……」

 犬牟田が画像解析に専念している間、ミラーガールはセントラルエリアを一通り見て回ろうかと思い、メインフロアから退室した。

 

 ミラーガールが悲痛な想いで退室すると、彼女の視界に謎の光が。

 その蒼い光に見覚えのあるミラーガールが歩み寄ろうとすると、その光の中から賞金稼ぎのフレッドの姿が確認された。

 光の中から現れたフレッドは、鉢合わせしたミラーガールを前に、半ば戸惑いながら声をかけた。

「よ、ミラーガール……! どうかしたかい?」

「あっ……ああ、フレッド。今ドレフ将校から通信が入って……」

 ミラーガールはフレッドに、今さっきドレフ将校から通信が入ったのを伝えた。

 ミラーガールよりドレフ将校から通信が入った事を伝え聞いたフレッドは、先ほど喧嘩に発展しそうになったマン・ヒールズを思い返してミラーガールに語った。

「マン・ヒールズ、か……異常者(ヒール)ハンターにしちゃあ、骨のある奴らだったな。……おっと、ミラーガール達に骨が無いって話じゃあないぜ!」

 すると此処でフレッドは、ミラーガールに語り掛けた。

「ま、俺もさっきは言いすぎたと反省しているよ。マン・ヒールズの様な連中は、しばらく好きにさせるのがベストなのかもしれないけど……そのうち、分かり合えると思うぜ。この俺ですら、そうだったんだからな」

 かつては敵対していた自分も聖龍隊と理解し合えたように、マン・ヒールズともいづれは分かり合える時が来ると説くフレッドの言葉にミラーガールは少し励まされた。

 

 更にセントラルエリアを徘徊している時、ミラーガールを更に励ます声が。

「マン・ヒールズって、元敵役とはいえ今は聖龍隊の仲間なんでしょ? そう……分かり合えなくて残念だったわね……」

 新世代型のイオリ・リン子からの言葉に耳を傾けるミラーガールに、リン子は更に「でも、気にしちゃダメよ。誰だって、そういうこともあるわ」と続けて励ます。

 

 そして更に新世代型の能美クドリャフカ達からも励ましの声が。

「ミラーガールさん達と、ミラールさん達は、ミスティーハニーさん達マン・ヒールズとは、友達なんですよね……? だったら、きっとすぐに仲直りできますよ!」

「ミスティーハニーさん達って、恐そうだけどいい人みたいだし……きっと、さびしがり屋さんなんですよ」

 能美クドリャフカ達の助言に、半ば力を貰うミラーガールは更にセントラルエリアを見て回った。

 

 聖龍隊士の待機室ではミラールが「やれやれ」といった感じで休んでいた。

「やれやれ、マン・ヒールズも相変わらずね。目的は同じなんだし、一緒の方が楽しいのにねえ……?」

 ミラールは他人との触れ合いを余り好まないマン・ヒールズのやり方に半ばあきれ返っていた。

 そんな待機室では、早々に離脱したマン・ヒールズに対して挫折しそうな心持に浸っているメタルバードの姿があった。

「……はあ、スター・コマンドーに続いてマン・ヒールズにまでも離脱されちまうとは……オレの統括ってヤバイのかな……」

 メタルバードは、自分の指揮官としての能力の低さが組織の分裂に繋がっているのではないかと途方に暮れていた。

 そんなメタルバードにミラーガールが申した。

「バーンズ、そんなに自分を追い込まないで。誰にでも失敗はあるものよ。マン・ヒールズだって、きっといつかは分かってくれるわ」

 メタルバードを励ますミラーガール。だがメタルバードは絶えず落ち込んだままだった。

 

 さらにセントラルエリアを巡るミラーガール。

 すると此処で徘徊していた新世代型の井ノ原真人(いのはらまさと)の愚痴が耳に入ってきた。

「何かよほど酷い目にあったんだろうな、マン・ヒールズは……それで、誰も信じられなくなってるんだろうけど、さ……異常者(ヒール)呼ばわりは、酷いぜ……」

 確かにシャドウの裏切りで深手を負い、不信感を抱いても可笑しくないとはいえ、異常者(ヒール)呼ばわりされるのだけは困惑してしまう真人たちだった。

 

 処変わって、今度は一ノ瀬はじめ率いるガッチャマンクラウズの面々とミラーガールは対談した。

「ははん……ミスティーハニーって案外カッコイイじゃないっすか。自分達だけでやるのは、大いに結構。でも、ね……ミラーガール、貴女はマン・ヒールズとは友達なんでしょ……? 友達まで信じられないってのは、少し悲しいっすね」

 友達まで信じられなくなるのを悲観する一ノ瀬はじめの言葉に胸が締め付けられるミラーガール。だが、はじめはミラーガールにこうも言った。

「ま、ボクのカンだけど、マン・ヒールズはそのうち戻ってくるっすよ……友達を見捨てる様な奴には見えなかったし、ね」

 

 ガッチャマンクラウズの面々と対談したミラーガールは、続いてセントラルエリア内で活動しているマギウスのエルエルフ達に話しかけた。

「マン・ヒールズの事は残念です……あの方々には、ぜひとも残ってほしかった」

「実はあなた達、主力部隊が強いほど負傷兵も減っているのよ。だから、私としてはマン・ヒールズに協力してほしかったの。……いつか戻ってきてくれないかしら」

 マン・ヒールズには是非とも残って、共に戦ってほしかった真意を語るエルエルフに流木野サキ。

 

 と、ここでミラーガールは能力者監禁施設から保護したプロト世代の黒鳥千代子や琴浦春香たちと遭遇する。

「今ではミラーガールも含め、主力部隊も大所帯になってきましたね。最初の頃に比べたら、それはもう凄い部隊になりましたね」

「皆さんのおかげで、レジスタンスの負担も減っています。新世党との戦いに終止符が打たれるのも、近くなってきたという気になります」

 チョコや真鍋義久たちの視線から見たレジスタンス内での活動報告を受けて、ミラーガールは俄然やる気を燃やそうと闘志に火をつける。

 

 しかし、やはり折角合流したマン・ヒールズとの離別はレジスタンス内を跋扈していた。

「マン・ヒールズが来てくれて、戦力拡大! と、思いきや急に飛び出していっちゃったんだもの……お先真っ暗だぁ~~」

「マン・ヒールズ……戻ってきてくれないかな……」

 一流の異常者(ヒール)ハンター、マン・ヒールズが自分達とは別行動を取った経緯に、新世代型の加納慎一やペトラルカ・アン・エルダント三世らは途方に暮れていた。

 すると、此処で筋肉質な一人の老人がミラーガールに話しかけてきた。

「お主の仲間……マン・ヒールズじゃったの。分かり合えなかったらしいな。じゃが、心配するな。そやつらはきっと、戻ってくるじゃろう。おぬしら、仲間なんじゃろ?」老人は笑顔でミラーガールに言うと、続けて激励した。「年寄りのカンっちゅう奴じゃ。意外とあたるもんじゃぞ」

 薙切えりなとアリスの祖父であり、新世党に連行されてきた薙切仙左衛門の激励に、ミラーガールは力付けられた。

 

 

 その頃、メインフロアでは犬牟田宝火が画像解析を済ませていた。

「画像解析できました」

 報せを受け、ミラーガールもメインフロアに入室すると犬牟田が解析した画像について語った。

「この施設があるのは恐らく……B.S.L南西、セクター1の最深部です!」

 この犬牟田の報せを聞いて、美木杉は画像を見て言った。

「ふうむ、規模からして相当に大掛かりな研究をしているようだが」

 するとこの話を聞いて、フレッドが目の色を変えて口走った

「面白いじゃねぇか、秘密研究施設ね。行ってみようぜ!」

 

 

 早速ミラーガールは今回、いつも自分に同行してくれるフレッドに加えて、同じHEADの魔法騎士の三人と【魔法少女まどか☆マギカ】の5人組を引き連れてセクター1の最深部に進攻した。

「このセクター1のどこかに、秘密研究施設があるって訳だな」

「ええ、新世党が黙って私達を行かせてくれるとは思えないけど……」

「守りが堅けりゃ、それだけ大事な場所って事さ。行こうぜ!」

 ミラーガールが懸念を押す中、フレッドは行く気満々で進攻を開始する。

 

 と、その頃。そんな彼女達の進攻を逸早く察した人物が、不敵な笑みを浮かべていた。

「やはり来たか。計画通りに行くぞ」

 その人物は、他でもない裏切り者のシャドウだった。

 シャドウは仲間側である鳳凰丸礼や針目縫に告げると、即座に行動に移った。

 

 

[ボクス]

 

 ミラーガールたち魔法騎士とマギカ組、そしてフレッドの一団がセクター1の最深部に潜入していた頃、赤塚大作は聖龍隊総長にして全身が金属化しているメタルバードと共に人工知能の指示を受けていた。

「銀河連邦本部から、また君達に支援データが配布されるそうだ。受け取り先のデータルームだが、現在使えるのはセクター3の灼熱エリアしかない。しかしセクター3のデータルームはレベル2のセキュリティで守られている。君らには、自力でセキュリティ端末を探し出して、レベル2のセキュリティを解除してもらわなければならない。無論、この行為はまたしてもXの侵入を許してしまう結果になってしまうが……今は君たちレジスタンスへの協力が最優先だ」

 赤塚組に配布されている武装を強化する支援データを受信する為、またしてもセキュリティ端末を自力で探し出して解除行動に移らなければならない経緯を語る人工知能。

 そんな人工知能、俗称「修司」の指示を受けて承諾する赤塚組に、人工知能「修司」はこう付け足した。

「ぐれぐれも灼熱のエリアには足を踏み入れない事。今の君達では高温の環境下では息苦しく、かえってダメージを受けてしまうだろう。セキュリティルームまでの道には、灼熱エリアはない故、避けてデータルームまで向かえる。これを頭に入れておくように」

 人工知能から話を付け加えられた一同は、さっそく転送装置でセクター3に移動し始める。

 と、その時、出立しようとする一同に先刻度重なる疲労から意識が低迷してしまったシバ・カァチェンが申し訳なさそうに声をかけてきた。

「皆様方……」「おっ、カァチェン!」「気分は大丈夫?」

 物静かに声をかけてきたカァチェンに、大将やミズキたちが心配そうに返事すると、カァチェンはそのまま申し訳なさそうに語り始めた。

「皆様方、此度も私が迷惑をかけてしまって……誠に申し訳ありません……」

 これに対し大将たちは笑顔で返答した。

「別にいいって、カァチェン!」

「貴殿は貴殿で、今まで頑張ってきてくれた! 今はゆっくりと養生するが良い! なあに、我々だけでも何とかなる!」

「そうだよ! カァチェンはカァチェンで、今まで頑張ってきてくれたんだし、皐月ちゃんの言うとおり今はゆっくり休んでいて」

「………………………………」

 纏流子/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/蛇崩乃音(じゃくずれののん)の言葉を受けて、カァチェンは素直に現状を受け止めた。

 そして今回は、少数精鋭という結論から、メタルバードは戦闘のベテランである大将とミズキの三人でセクター3に潜行する事となった。

 

 それからまもなく、メタルバードたち三人はセクター3へと転送され、銀河連邦からの支援データを受け取る為、セキュリティ解除端末を自力で探し出し始めた。

 セクター3に潜行してみると、まだセキュリティが解除されてないのか、目立った敵は一体も居らず、すんなりと進軍する事ができた。

 しかし内部は砂漠地帯を催した構造ゆえに熱気が悶々と立ちこもり、暑さに参ってしまいそうであった。これで更に灼熱のエリアもあるという事から、セクター3は非常に厳しい環境なのであろうと大将たちは認識した。

 だが大将は長年の義賊としてのカンから、即座に進行が難しい通路を見つけ出し、その先にセキュリティ解除端末がある事を突き止める。

「こっちが怪しそうだぜ、バーンズ」「ああ、行ってみるか」

 大将とメタルバードのやり取りを、彼らが装備しているカメラや通信機で中継されているセントラルエリアで観戦していた新世代型たちの一人、纏流子が「順調に進められているじゃないか」と無線を通して現場の三人に告げると、この流子の感心にミズキが言伝する。

「感心しないで。一応は賊のカンって奴なんだから」

 長い間、政府から一部の犯罪行為を許されているセブンズ・ガードの一組として共に行動してきたミズキにとっても、盗賊行為は余り感心できなかった。

 そして早々に三人はセキュリティ端末を発見し、そこでセキュリティを解除、一部のハッチ扉が開放された。

 だがセキュリティルームから出た途端、セキュリティを解除した為に即行で侵入してきた寄生生命体『X』が灼熱エリアの宇宙生物に擬態して襲い掛かってきた。

 咄嗟に反撃に転ずる大将たち。そしてXの猛攻を掻い潜りながら今度はセキュリティを解除した事により入室できる様になったデータルームへと足を進ませる。

 飛行型、壁に張り付くタイプなど、様々な宇宙生物に擬態したXを突破しながら一行はデータルームへと足を急がせる。

 

 

 そして三人はどうにかデータルームへと足を進められ、そこのデータルームで新たな支援データを受信した。これでセントラルエリアの拠点で解析してもらう事で武装を強化できる。

 と、データルームを出ようとした一行だったが、ここで突然の地鳴りが部屋一体に響き渡った。

「な、何なんだ、一体……!」

 突然の地鳴りに驚き動揺する大将たち。

 一行は部屋を出て元来た道を戻って帰参しようとするが、その道中、扉であるハッチが何かの強烈な爆発により破壊され、塞がれているのを目視する。

「こ、これじゃ帰れねえぞ……!」

 大将が塞がれたハッチを見て困惑していると、突然真上の天井から地響きが。

「な、何がいるぞ……!」

 大将は何かの危険を察知したかのように地響きする天井を見上げる。

 そして地響きが移動し始めると同時に、大将たちも地響きを追う様に移動を開始する。

 謎の地響きを追って移動していた一行。すると突然、目の前に巨大な四足歩行の節足動物の様な巨大ロボが天井を突き破って出現したのだ。

「な、なんだ、こいつは!」

 謎のロボットの登場に焦燥するメタルバードたち。するとロボットはすかさず大将たちに迫ってきた。

「き、来やがった……!」

「ッ、ここは応戦するしかないみたいね……!」

 突然のロボットの来襲に大将とミズキは戦闘に入るしかないと判断する。

 その間、司令塔であるセントラルエリアでは、映像を通して現場の大将たちに指示が伝えられた。

「皆さんを今、襲っているのはこのB.S.Lに配置されている警備ロボ「ボクス」です! 完全に暴走していて、もはや破壊するしか手立てがありません! 注意してっ」

 たまたま現場の活動をセントラルエリアのメイン画面から拝見した伊織糸朗が、無線で現場の大将たちに指示を伝える。

 今、現場の大将たちを急襲してきたのは、優秀な軍人や科学者の頭脳を埋め込まれた警備ロボ「ボクス」。

 するとボクスは此処で、その巨体を活かして突進してきた。

「回避しろッ」

 メタルバードが即行で告げると、現場の三人は散り散りに散ってボクスと距離を置く。

 するとボクスは大将たちを不審者として認識しているのか、節足動物の様な足の中央に存在するコアユニットから焼夷爆弾を投下。自身の周辺に巨大な火柱を発生させる。

「あっちィ! 焼夷爆弾まで搭載されているのかよ……!」

 突然発生した火柱を何とか回避した大将は、その業火に圧倒される。

 更にボクスは、その卓越した機動性で跳躍してジャンプ攻撃まで仕掛けてきた。

「ッ、来たぞ!」

 メタルバードの指示に、赤塚組のミズキも即座に移動してボクスの攻撃を回避する。

 すると此処でセントラルエリアの犬牟田宝火が現場の蛇崩乃音に指示した。

「メタルバード、ミズキさん! あなた達の砲撃でボクスの中央部分、コアユニットを攻撃してください! 其処しか弱点は無い!」

「OK! 了解……!」

 犬牟田から指示を受けたメタルバードは早速ミズキと共に、警備ロボ「ボクス」の中央コアユニットに有りっ丈のミサイルを撃ち込む。するとボクスの外壁が剥がれ落ち、内部に組み込まれている人体の脳組織が確認された。

 コアユニット内部が視認できるほどのダメージをボクスに与えられた経緯に、大将も装備している武器で二人と共にコアユニットを追撃する。

 すると強力な大将の爆撃、ミズキとメタルバードのレーザーが的確にボクスのコアユニットに被弾。たちまちボクスはボロボロに崩壊してきた。

 すると此処でボクスに変化が。コアユニットへの総攻撃を受けたボクスの動作が鈍くなり、徐々に後退していったのだ。これには大将たちも戸惑いを感じ始めてたが、次の瞬間、警備ロボ「ボクス」は高々と跳躍すると、そのまま爆発してしまった。

 上方から降り注ぐボクスの残骸だけが大将たちの前に漠然と残り、地面に突き刺さる。

「ど、どうやら倒せたみたいだな……」「ええ……」

 苦戦の末、どうにかボクスを自爆まで追い込んだ大将やミズキたちは、早々に現場から撤退を開始した。

 

 

 そして大将一行はセクター3のナビゲーションルームまで帰還を果たし、人工知能「修司」にデータ引き継ぎとその直後に来襲してきたボクスの経緯を伝えた。

「警備ロボ「ボクス」に襲われたようだな。奴は完全に暴走している。今後、襲われた場合は破壊してもかまわない。君達の安全を最優先とし、特別に許可する」

 人工知能、俗称「修司」はまた別機体の警備ロボ「ボクス」に襲われた際は、レジスタンスである大将たちの身の安全を優先させ、特別に破壊を許可した。

「本題に移る。レベル2のセキュリティが解除され、セクター5とセクター6に徒歩での移動が可能となった。そして、両セクターには既にXが侵入したようだ。もはや、Xの勢力拡大の阻止は困難になってきた」

 人工知能「修司」は再度のセキュリティ解除から、他セクターである5と6にも既に寄生生命体『X』が侵入した経緯から、その勢力拡大に拍車がかかった事態を告げる。

 そして此処で人工知能「修司」は大将たちに次なる目的地を指摘した。

「セクター5は超低温エリアだ。極寒の凍て付くエリアでの行動は困難を伴うとみて……セクター5への出入りはしばらく見通そう。本題に入る。本部は君達のバイオスーツを極寒や高熱環境に適応できるような、組織変化を促す為の……データを開発中だ。完成の時は近い。転送され次第、スグにダウンロードすべきだ。しかし……過去に君らが使用してきたデータルームは、悉く使用不能にされてきた。Xの防衛本能の現れなのかもしれない。今回はセクター6のデータールームを使う。セクター6は、既に加賀美あつこらが転送装置で赴いているため、知っているだろうが暗黒セクターと呼ばれている」

 人工知能「修司」は大将達がいま着衣しているバイオスーツの機能を向上させるデータを、以前ミラーガールたちが侵入したセクター6の暗黒エリアのデータルームで受け継ぐ必要があると言い伝えた。

「分かった。俺たちは一先ず、武装のバージョンアップの為に一旦セントラルエリアに帰還する。それから、また転送装置でセクター6に移動する」

 大将も人工知能の言い分を理解した上で、先に受信したデータの解析のためにセントラルエリアに帰還してから一旦体勢を整えた後にセクター6に移動していくと伝える。

 この大将の判断力に、人工知能「修司」は改めて大将たちに告げた。

「Xは、そしてSO-Xは、非常に危険な存在だ。ある意味、新世党以上にだ。最終的に、君らがSO-Xを倒してくれると期待している。我々は君達に全てを託している。どんな協力も支援も惜しまない、頼んだぞ」

 そう言い残すと人工知能「修司」は一旦接続を切り、画面を消灯した。

 大将たちも人工知能からの言伝を聞いたうえで、受信したデータ解析のため一旦セントラルエリアに転送装置で帰還した。

 

 

[理屈]

 

 その頃、ミラーガールと賞金稼ぎのフレッドを先頭にした一行はセクター1の最深部に潜入していた。

 まずは最下層に潜る為に、新世党の研究施設になっている人口の洞窟をエレベーターで降りていく。

 

 エレベーターを使って最下層にまで降りてみたミラーガール達。

 すると其処で彼女達を待ち受けていたのは、トンでもない相手だった。

「あなたっ!」「久しぶりだな、ミラーガール」

 待ち構えていた人物を前に、ミラーガールの表情が険しくなる。

「シャドウ!」

 待ち受けていたのは、なんと裏切り者のシャドウ達だったからだ。

「シャドウ、あなたよくも……!」

 自分たちを裏切って新世党側に寝返ったシャドウを前に、怒りを露にするミラーガールたち聖龍隊のメンバーに対し、シャドウは同じく大部屋で待ち受けていた針目縫や鳳凰丸礼らと共にミラーガールたちHEADと対峙する。

「ミラーガール、お前達が此処まで来るのは俺たちの算段通りだ。……手始めに、貴様らをいたぶってから例のブツを頂戴しよう」

「頂戴? この期に及んで、何を奪おうっていうの!?」

 シャドウの言動から、彼らが何かを奪い取ろうとしている事を察する暁美ほむら達が訊き返すと、シャドウはギザ歯を怪しく光らせて言い返した。

「貴様らが知るまでもない、どうせ例のブツは貴様には宝の持ち腐れだ……それは我々新世党の、いや、全二次元人の理想の為に必要なものだ。貴様の様な軟弱な二次元人が持っていい物ではない!」

 このシャドウの言動にフレッドが訊ねる。

「理想? 興味あるねえ。一体全体、そのブツって奴で俺たち二次元人は何ができるんだい?」

「……能書きは、よかろう。お前らの体に教えてやる、来い!」

 するとシャドウは針目縫と鳳凰丸礼と共にミラーガール一行に襲い掛かってきた。

 

「一人ずつバラシてやるぜ……!」

 

 一人ずつ嬲り殺しにする勢いで攻撃態勢に入るシャドウは、まず自身が背負う大砲「雷牙」に必殺の大爆砕砲のエネルギーを充填して、遠距離砲撃の体勢を整える。

「思い通りにはさせないわよ!」

 と、シャドウが強力な大爆砕砲の準備に入っているのを視認した暁美ほむらが、ここでシャドウの砲撃体勢を崩そうと動いた。

 だが、その間に針目縫が割り込んできて暁美ほむら達マギカ組のシャドウへの追撃を妨害する。

「悪いけど、君達の相手はボクだよ!」

 シャドウがエネルギーの充填をして身動きが取れない間、針目縫はマギカ組を、鳳凰丸礼は魔法騎士の三人の迫撃を阻止する役目を担ってた。

 その間、シャドウは十分に大砲「雷牙」にエネルギーを充填させて、針目縫と鳳凰丸礼と対峙する戦前の聖龍HEADに向かって砲撃した。

「大爆砕砲!」「うわっ!」

 シャドウが放った大爆砕砲をマトモに受けた美樹さやか達は、強烈な痛みと共に電撃砲による痺れを身体に生じさせていた。

 そんな電撃の爆撃で痺れて身動きができなくなった美樹さやか達にシャドウが非情の追撃を仕掛けていく。

「ひゃははははっ!」

 左腕のレーザーサーベルで身動きが取れなくなった美樹さやかや巴マミを甚振る様に攻撃するという残酷な戦法を、心から好んでいるシャドウの本性に砲撃を免れた鹿目まどか達は蒼然となった。

 この事態にミラーガールが有無も言わせない即行でシャドウの凶行を制止するが、シャドウは一旦退いて再び大爆砕砲の準備に取り掛かる。その大爆砕砲のエネルギー充填の間を、上手く針目縫と鳳凰丸礼が補助して巧みな連携でミラーガールたちを苦しめる。

 しかし相手はエネルギー充填を中心に行動しているシャドウに、そのシャドウのサポートに徹している針目縫と鳳凰丸礼の三人のみ。ミラーガールは先陣を切って、どうにか針目縫と鳳凰丸礼の斬撃を掻い潜り、シャドウに急接近。するとシャドウは自分に急接近した彼女に応戦する為、左手のレーザーサーベルを振り下ろし、頭部から一刀両断しようと試みる。

 

 だが、そのシャドウの一振りを魔法騎士の獅堂光が剣で受け止め、その間にミラーガールはミラーソードでシャドウの腹部を突いた。

「ぐほっ」

 ミラーガールの鋭い一撃がシャドウに直撃。シャドウは雷牙へのエネルギー充填を中断されてしまう。

「許さねえ……!」

 エネルギー充填を妨害され、シャドウはその顔に怒りを込み上げる。

 するとシャドウはエネルギー充填してない状態で、通常攻撃の爆砕砲を連射、当たり一帯を無差別に爆撃し始めた。

「うわっ!」「しゃ、シャドウよ! 私たちまで巻き込むな!」

 龍咲海が悲鳴を上げ、鳳凰丸礼はシャドウに無差別爆撃をやめるよう呼び止める。

 そんな爆撃で辺り一帯に硝煙が舞い上がる中、フレッドは懸命に応戦をし出した。

「ごほっ、ごほっ……こ、このヤロッ」

 フレッドは舞い上がる硝煙の中を咽ながらシャドウに向かって4連式のリボルバー銃を発射。するとその銃撃の一発が、たまたまシャドウに直撃。

「うぐッ」

 シャドウは爆砕砲の連射を止めた。

 と、シャドウの無差別爆撃が一旦やみ、爆煙が視界を遮っていたその時。

「も~らいっ」「っ!」

 なんとミラーガールの左腕に装備されている小型化したコンパクトに、針目縫がしっかりとしがみ付いて来たのだ。

「ちょ、ちょっと何なのよ、あなた!」

「うるさいっ、これさえ貰えれば文句はないんだよっと!」

 抵抗するミラーガールに対し、針目縫は強引にミラーガールの左手首に装備されている小型化したコンパクトを奪い取ろうとする。

 ミラーガールの必死の抵抗もむなしく、コンパクトは奪い取られてしまう。

「よこせっ」「ああっ」

 すると針目縫がミラーガールからコンパクトを奪取した瞬間、ミラーガールの変身は解除されてしまい、元の加賀美あつこの姿へと戻ってしまった。そして同時に小型化していたコンパクトも元の大きさへと戻り、セイント・コンパクトとして輝きを発しながら形状変化していった。

「あ!」「そんな、コンパクトが……!」

 フレッドと共に鳳凰丸礼と混戦していた魔法騎士の獅堂光と鳳凰寺風が愕然とする中、素早くミラーガールからセイント・コンパクトを奪取した針目縫は得意げな表情で言い出した。

「へっへ、甘いね。隙がありすぎるよ……まあ、これでボクらの目的は果たされたけどね」

「!? あなた達の狙いは……アッコさんののコンパクトだったの!?」

 得意げな笑みを浮かべる針目縫に暁美ほむらが問い詰めると、針目縫はこれまた得意げな様子で言い返した。

「へへっ、今さら気付いても、もう遅いようだ! これさえあれば、聖龍隊なんか興味のかけらも無いんだからね、ボク達は!」

 不敵な笑みで強奪したセイント・コンパクトを手にする針目縫に続いて、鳳凰丸礼も語り始めた。

「我らの狙いは、最初っからミラーガール……いいや、加賀美あつこが所有するこのコンパクトのみだ! これであの方が……鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)様は満足される!」

 此処で明らかになった、新世党の真の目的。それはセイント・コンパクトの奪取であった。この非常事態にコンパクトを奪われてしまったが故に変身が解けてしまったアッコも、他の聖龍隊メンバーもフレッドも驚愕してしまう。

 すると針目縫がセイント・コンパクトの奪取に成功したのを視認したシャドウが、針目縫と鳳凰丸礼に告げた。

「よし、縫、鳳凰丸、お前らは早くコンパクトを持ってこの場から離脱しろ。キャップ・ド・レッド様から力を授かった俺だけでも、十分にコイツらと渡り合える……お前達は一刻も早く、コンパクトを安全圏まで」

「心得ておる、シャドウ! 針目縫、早々にこの場から離脱するぞ」

「ちぇっ、本当ならもっと聖龍隊と殺し合いたかったけど……羅暁様やキャップ・ド・レッドの命令だし、ここは退くとしますか」

 シャドウからの言伝に素直に従う鳳凰丸礼と針目縫。両者はミラーガールから強奪したコンパクトを持って、研究施設の最深部へと駆け込んでいった。

「あ、待て!」

 獅堂光たちHEADが逃げていく針目縫たちを追おうとすると、その目前にシャドウが爆砕砲を撃ち込んで行く手を阻む。

「こっから先には通さないぞ! お前達の相手は俺だ……!」

「っ、シャドウ……貴方!」

 針目縫たちへの追撃を阻むシャドウの行動に、怒り以上に焦燥心が顔に表れる暁美ほむら達。

 

 

 針目縫と鳳凰丸礼によってミラーガールのセイント・コンパクトが奪取されてしまった一行。

 コンパクトを奪われた事で変身が解けてしまった加賀美あつこが戸惑う中、他の聖龍隊メンバーやフレッドに焦燥の顔色が窺える一方、シャドウは彼女達の追撃を食い止めていた。

 すると此処でシャドウは、変身が解けてもはや戦えなくなったアッコに向けて言葉を放った。

「ミラーガール、分かるだろう。俺は強くなった、これが……二次元人の進化の力だ!」

 自身が強くなった経緯を二次元人の進化と説くシャドウの言い分に、静かに耳を傾けるアッコたち。

「俺はキャップ・ド・レッド様に忠誠を誓い、力を授かったのだ!」

 新世党に寝返り、総統であるキャップ・ド・レッドに忠誠を誓ったがために新たな戦闘力を授かったと豪語するシャドウ。そんなシャドウに変身が解けたアッコは力強く言い返した。

「そんな力の為に、仲間を売ったの!? 何が理想よ! あなた達は所詮、力に溺れた異常者(ヒール)よ!」

 シャドウも、彼が寝返った新世党の面々も力に溺れた異常者(ヒール)だと説き返すアッコの返答に、シャドウは睨みを利かせて言った。

「キャップ・ド・レッド様を異常者(ヒール)呼ばわりするのは許せんな。ミラーガール……聖龍隊、いや二次元人で唯一セイント・コンパクトを扱えるお前なら仲間に……と思ったが、此処までだな」

 シャドウは最初、コンパクトを扱えるアッコだけは新世党に引き入れようと考えていたが、キャップ・ド・レッドや自分達を異常者(ヒール)呼ばわりする彼女の言い分を聞いて考えを改め、彼は左手のレーザーサーベルを掲げてアッコに言い放った。

「せめて、その首をキャップ・ド・レッド様に捧げよう……終わりだ!」

 シャドウがミラーガールだったアッコに向かってレーザーサーベルを振り下ろして彼女の首を撥ねようとした、その瞬間。

「うぐっ……貴様ら! 生きていたのか!?」

 そのシャドウの行動を妨害する者によって、アッコは一命を取り留める。

 アッコたち現場の聖龍隊メンバーやフレッドが顔を上げて直視すると、そこには馴染みのある顔ぶれが勢揃いしていた。

「……! ミスティーハニー!」

 そう、駆けつけて来てくれたのはミスティーハニー率いるマン・ヒールズの一団だった。

 現場に駆けつけたミスティーハニーは、シャドウが振り下ろそうとしたレーザーサーベルを自らのハニーフルーレで弾き返すと、シャドウに突っぱねた。

「足りないわね、こんなもんじゃ!」

「シャドウ! お前には、まだたっぷりとお返ししないとな!」

 ミスティーハニーに続いてマン・ヒールズのゼブラもシャドウに啖呵を切る。

 突然の来訪者に困惑するシャドウ。そんなシャドウを尻目に、マン・ヒールズは現場の聖龍隊とフレッドに共闘する姿勢で自分達を裏切ったシャドウに反撃を開始した。

「第二ラウンドよ、行くわよシャドウ!」

 ミスティーハニーは自身が率いるマン・ヒールズと肩を並べて、裏切り者のシャドウを打倒する構えを見せる。

 

 セイント・コンパクトを奪取されたために変身が解けてしまったミラーガールこと加賀美あつこに代わり、マン・ヒールズのミスティーハニーらが戦前に出てシャドウと戦闘を開始。

「これはあの時のお礼だ、喰らえッ」

 ここでマン・ヒールズの卑怯番長が左手の義手から中戦車をも破壊できるグレネードランチャーを砲撃して、かつて自分達を不意打ちして生死の境にまで陥れたシャドウに手痛い攻撃を与える。

 しかしシャドウも新たな戦力であるマン・ヒールズに対抗しようと、雷牙にエネルギーを充填せずに爆砕砲を連射し始めて応戦。

 辺りは砂煙と火だるまに飲み込まれるが、聖龍隊側はシャドウの猛攻に反撃し、徹底抗戦を布く。

 と、ここでシャドウは遠距離からの砲撃から一気に間合いを詰める白兵戦に移行し、左腕のレーザーサーベルで接近戦を開始した。

「ッ、もうお前の好きにはさせないぞ、シャドウ……!」

「へへ、今度は完全に息の根を止めてやる……!」

 激しく火花を散らしながら、マン・ヒールズの門脇将人はシャドウと剣戟する。

 最初はパワーアップしたシャドウの戦力から苦戦を強いられていた聖龍隊。だが次第に数でシャドウを圧倒していき、シャドウを追い詰めていく。

「一気に行くよ、みんな!」

 ここで獅堂光が鹿目まどかと共に一気に勝負を付けようと、仲間達に号令をかけ、シャドウを完全に包囲した。

 そしてシャドウを包囲した聖龍隊は総攻撃を仕掛け、シャドウを徹底的に痛め付けた。

「くそォ~~……っ!!」

 総攻撃を四方八方から受けて、シャドウは遂に力尽き、倒れた。

 

 何とかシャドウを打倒したHEADは、ここで改めて加勢してくれたマン・ヒールズに礼を述べる。

「ありがとう、来てくれて」

 アッコがマン・ヒールズに礼を述べると、ミスティーハニー達マン・ヒールズは呆れながらアッコ達に口を酸っぱくして言う。

「みんなは甘いのよ。昔からそうよ。仲間にしたって……」

 と、ミスティーハニーがHEADメンバーに「人を信用しすぎると痛い目に遭う」と説こうとしていると、倒されて気絶している様に自分を偽ってたシャドウが静かに顔を上げて前方のミスティーハニーに狙いを定める。

 そして次の瞬間、シャドウは一瞬で起き上がると素早くミスティーハニーに最高威力の爆砕砲を放った。

「ぐはあ……っ!」

 最後の力を振り絞ってミスティーハニーに砲撃をお見舞いしようと発射したシャドウの砲撃は、一直線にミスティーハニーへと直射。

 だが「危ないっ!」寸前のところでフレッドがミスティーハニーを押しのけて代わりにシャドウの砲撃を右腕に受けた。そして同時に左手でリボルバー銃を発射してシャドウに反撃。シャドウの息の根を完全に止めた。

「フレッド! あなた腕が……!」「ちょっとカッコ良すぎたかな」

 シャドウが放った砲撃を代わって右腕に受けたフレッドにアッコが言い寄ると、フレッドは苦笑いを浮かべる。

 そんなフレッドの突然の行動に、ミスティーハニー達マン・ヒールズは動揺しながらフレッドに問い詰めた。

「何故なの!? 私たちは、あなた達の事を仲間じゃないと言ったのに!」

 新世代型を含め、彼らと協力関係にある賞金稼ぎのフレッドにも不信感を抱いていたミスティーハニー達マン・ヒールズが問うと、フレッドは負傷した右腕を押さえながら語った。

「ッ……ミラーガールが……加賀美あつこが、俺みたいなゴロツキを仲間にしてくれたのも、難しい理屈は何もないのさ。そう、何も難しくない。俺がそうしたいと思ったから……ミスティーハニー、あんたを助けたのさ」

 理屈無しで自分を信用してくれるアッコの純粋な想いと同様、自分も理屈無しに誰かを庇い力になる。そう己の真情を述べるフレッドの言葉にマン・ヒールズは衝撃を受けた。

「だけど、どうするんです? セイント・コンパクトは奪われてしまったのです……」

「先に進んで、研究施設を調べないと……」

 ミラーガールの能力の損失、そしてフレッドの負傷を受けて、百江なぎさと巴マミが不安そうな面持ちで言うと、変身が解けたアッコは残念そうな面差しで話した。

「……残念だけど、この先からは戦えない私は足手まとい。潔く撤退するわ」

「アッコちゃん……」

 自らの失態を素直に受け止め、引き際を認識するアッコに獅堂光は悲しげな表情を向ける。

 するとアッコは利き腕である右腕を損傷したフレッドに話しかけた。

「フレッド、あなたの傷もこの際、精密検査して治療する必要があるわ。一緒にセントラルエリアに撤退しましょう」

 アッコが戦闘力を失った自分と共に、重傷を負ったフレッドも拠点であるセントラルエリアにて精密検査を受ける必要があると述べると、フレッドは慌てた様子で皆に言い放った。

「待ってくれ! 俺も研究施設の奥……最深部まで連れて行ってくれ! S級の異常者(ヒール)ハンター、マン・ヒールズが仲間に加わってくれたんだ。それに、戦えなくなったミラーガールの補欠要員ぐらいには、なれるぜ」

「フレッド、何もそこまで……!」

 右腕を損傷したにも関わらず、戦闘不能に陥ったミラーガールの代理ぐらいは務めると言い切るフレッドの言動に佐倉杏子たちが愕然としていると、フレッドは鋭い眼光で言い放った。

「言ったろ、興味があると……奴らのくそったれな理想とやらに!」

 この強い信念を感じさせるフレッドの言動に感化され、ミスティーハニー達マン・ヒールズもようやくフレッドを受け入れた。

「分かったわ、よろしくねフレッド!」

 仲たがいしていた関係を修復しようと、ミスティーハニーが右手をフレッドに差し伸べる。が、フレッドの右腕は損傷で思うように利かなかった。

 そこでミスティーハニーは右から左手に変えて、フレッドと互いに握手を交わした。

 

 と、此処で先にセクター3からセントラルエリアに帰還していたメタルバードから通信が入った。

「アッコ、オレだ、メタルバード! 事情は聞いている、コンパクトを奪われたらしいな……!」

「バーンズ……そうなのよ」

「そうか。マン・ヒールズが仲間に加わってくれたのは力強い、だがアッコのセイント・コンパクトが奪われた事が一大事だ。取り合えず、お前は一旦セントラルエリアに戻って来い! 今のお前は非力な一般人となんら変わりない! 危険が及ぶ前に戻るんだ!」

「バーンズ、分かっているわ」

 メタルバードと通信を終えたアッコは、一人来た道を戻ろうとする。

 すると此処で魔法騎士の三人が動き出した。

「アッコちゃん!」

「私達も着いていくわ!」

「危険な宇宙生物に擬態したXに、いつ襲われるか分かりませんもの……私達も同行しますわ」

「光さん、海さん、風さん……ありがとう」

 寄生生物Xにいつ襲来されても対処できる様に、自分達も一緒にセントラルエリアまで同行すると言ってくれる魔法騎士の三人に、己の非力さを痛感するアッコは暗い面持ちで述べ返す。

 そんなアッコと魔法騎士を前に、合流したマン・ヒールズのリーダー、ミスティーハニーは現場を仕切った。

「それじゃ、私達はこのまま坑道を進んで研究施設の最深部まで潜入するわ。さっきの二人を追わないと」

 ミラーガールのセイント・コンパクトを奪還するためにも、研究施設の調査を続行しなければならないと断言するミスティーハニーの判断に現場の一同も納得する。

 そんな現場に残る皆々に、アッコは言い残した。

「残念だけど、あとはみんなに任せるわ。フレッド、みんなと協力して帰ってきてね」

「ああ、OKだぜミラーガール……いいや、今はアッコだったな」

 変身が解けたミラーガールことアッコに自分達の拠点であるセントラルエリアへの帰還を告げると、アッコはそれに素直に同意。そして彼女はフレッドに皆との共闘を任せると、フレッドは損傷した右腕を庇いながら返事を述べる。

 こうしてマン・ヒールズが新たな戦力として仲間に加わった。

 そしてセイント・コンパクトを奪取されたミラーガールと、変身が解除されたアッコを護衛するため魔法騎士の計四人がパーティから外れた。

 

 

[悲しみの帰還]

 

 セクター1の新世党の研究施設の調査を、セイント・コンパクトの紛失で断念したアッコが魔法騎士の三人の護衛の下、渋々セントラルエリアに帰還すると。

「アッコ!」「……大将」

 先にセクター3から銀河連邦からの支援データを持ち帰ってきた大将が悲痛な面持ちのアッコに声をかける。

「アッコ、中継された映像を観ていた新世代型達から聞いたんだが……コンパクトを奪われちまったんだって!?」

「大将……うん、そうなの……」

 アッコは悲しそうに大将に返事をした。

 するとアッコと共にセントラルエリアに帰還した魔法騎士の三人も、悔しい気持ちを大将に語った。

「ごめん……私達がついていながら……」

「まさか新世党の狙いが、アッコちゃんのコンパクトだったなんて……」

「乱闘に無我夢中で、アッコさんにまで気が回らず……本当に申し訳なく……」

「い、いやな、誰もお前さんたちを責めているわけじゃないから、そうしょ気るな」

 気落ちする光/海/風の三人を宥める大将。

 すると、アッコたちの帰還を聞きつけ、セントラルエリアに待機している新世代型たちが帰還したアッコたちを迎え入れた。

「アッコさん……!」

「モニターで一部始終、拝見してました。まさかコンパクトが奪われるなんて……」

 新世代型同様に、気落ちするアッコを出迎えるプロト世代のチョコと桃花・ブロッサムの言葉を受けて、アッコは気落ちしながらも持ち前の明るさで空元気を見せ付けた。

「は、はは……私も、ついウッカリしていたのよ……ふぅ……」

 苦笑しながらも言葉を返すアッコの気落ち振りに二次元人たちは掛ける言葉を見失う。

 すると此処で新世代型たちがある疑問を呟き始めた。

「でも……なんで新世党はアッコさんのコンパクトを奪ったんだろう?」

 この細野サクヤたち新世代型の疑問に、同じくアッコを出迎えに来たメタルバードが代弁した。

「アッコは変身能力を持つ二次元人の始祖……その能力の根源であるコンパクトを使って、新世党は何かを企てているんだろう」

 メタルバードなりの解釈は続いた。

「アッコが今までコンパクトの力を使って引き起こした奇跡は数知れない。あの修司ですらアッコの能力、魔鏡聖女の奇跡には目を見張るものだった……その奇跡の力を、新世党は何かしらの悪事に利用しようって魂胆だろう」

「おいおい、アッコの能力の根源を悪用されちまうとは……大問題じゃないか」

 メタルバードの解釈を聞いて大将が事の深刻さを追求しようとすると、メタルバードは自信溢れる面差しで言い切った。

「でも、大丈夫だろう! セイント・コンパクトを扱えるのは、この世にただ一人……アッコしかいないのが現状だ! 新世党の連中が奪っても、連中が何かに変身したり、能力が向上する訳じゃないだろうしな。シャドウはアッコがコンパクトを持つこと自体が宝の持ち腐れだって言ってはいたが……結果的にコンパクトを使えるのはアッコの方なんだし、新世党の連中こそ逆に宝の持ち腐れだろうよ」

「バーンズの言うとおり……セイント・コンパクトは一応、私以外の二次元人は使えない仕様なのは間違いないんだろうけど……なんだろう、この胸騒ぎは……」

 メタルバードの解釈を聞いたアッコは、胸中にひしめく胸騒ぎに悪い予感を感じずにはいられなかった。

 そんな予感にひしめくアッコに、メタルバードは激励をかける。

「アッコ、そんなに心配するなって! 連中が何かを企んでいようとも、お前のコンパクトはオレ達が必ず取り戻して見せるさ!」

「バーンズ……ありがとう」

 自分のコンパクトを気にしてくれるメタルバードの激励に、アッコは少しながら元気付けられた。

 すると今は亡き、敵方に寝返ったシャドウと共にミラーガールのコンパクトを奪取した針目縫と鳳凰丸礼と顔見知りである鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が申し訳なさそうにアッコに語った。

「私が母、羅暁が差し向けた針目縫と鳳凰丸礼によってコンパクトが奪い取られた経緯、ホントに申し訳ない所存……!」

「さ、皐月ちゃん! 貴女が謝る事は無いのよ! だから顔を上げてっ」

 自分の実母である鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)の下で活動している針目縫と鳳凰丸礼によってコンパクトが奪い取られた現状に頭を下げる皐月に、アッコは顔を上げるよう言い渡す。

 しかし新世代型たちの懸念が消える事は無かった。

「それにしても……アッコさんしか扱えないコンパクトを奪って、新世党は何を目論んでいるのかしら?」

 本来はミラーガールこと加賀美あつこしか扱えないセイント・コンパクトを奪取した新世党は何を目論んでいるのか、考え耽る新世代型の御舟百合子の言葉にメタルバードが返答した。

「さあな、アッコのコンパクトは正真正銘、この世に一つしかない変身能力の起源であり根源。連中が何を企んでいるか、見当もつかない……」

「………………………………………………………………」

「……ま、まあ、そんなに心配するな、お前ら! 新世党がいくらコンパクトを解析したり、研究したりしても、それだけで何かできる訳はないだろうよ。コンパクトで変身できるのはアッコだけなんだし、さっきも言ったが、連中にとってアッコのコンパクトは正真正銘、宝の持ち腐れだろうよ」

 無言になる新世代型たちに対してメタルバードは弁論を語り続けるが、新世代型の瀬名アラタが言った。

「でも……何か考えが、策があるから新世党はアッコさんのコンパクトを奪い取ったんじゃ。あのセレディが、無意味な略奪をするとは到底思えない」

「……ま、まあ……オレにも新世党の考えは解らんが、連中が何もできない事を今は願おうじゃないか。文字通り、アッコのコンパクトじゃ何もできないって事をよ」

「そんな勝手な」

 アラタの言い分に対して適当な発言を述べるメタルバードに、大将はあきれ返ってしまう。

 

 そんな中、皆の話題に持ち上げられているコンパクトを奪われたアッコは一人、気落ちしながらセントラルエリアの中を移動し始めた。

「あ、アッコさん……!」

「……ごめん、今は一人にさせて……」

 新世代型の琴浦春香が声を掛けるものの、アッコは一人にしてほしいと皆に告げると、一人無人の部屋へと入室していった。

 このアッコの落ち込んでいる様子に、新世党に身内や知人が加担している新世代型たちは本当に申し訳ない気持ちで胸中が一杯になった。

 一方のアッコは、一人部屋に入室すると悔しさを噛み締めながら懐から一枚の写真を取り出して見詰める。

「……ごめん、修司。コンパクトが……」

 アッコが取り出した写真には、自分と一緒に撮られた写真の中で無愛想な顔を浮かべる小田原修司の姿が。

 アッコは写真の中の修司に、今まで自分が愛用していたコンパクトが敵の手中に落ちてしまった経緯に悲観しながら謝罪するばかりだった。

 

 一方で、一人、無人の部屋に入室したアッコを見届けた面々は彼女の落ち込みように唖然としていた。

「アッコ……」

 誰よりも鏡好きなアッコが、大切にしていたコンパクトが悪党の手に渡ってしまった経緯に落ち込んでいる様子を見て、幼馴染の大将は胸が締め付けられた。

 

 ミラーガールことアッコのセイント・コンパクトの行く末に対して議論が続いた中、メタルバードは新たに銀河連邦から送信された武装のバージョンアップのデータを引き取ろうと動き出す。

「……それじゃ、データの受け取りはオレとミズキを筆頭に行こうと思うが……他に志願者はいないか?」

「バーンズ、そんな……一般人である新世代型を戦いに巻き込ませる様な提案はしないで」

「でもよ、ミズキ。みんなも挙ってオレ達に協力的なんだ。ここは、みんなの努力や意志を受け入れて、一緒に活動してみようじゃないか」

「で、でも……」

 ミズキは一般人である新世代型も戦力として加えさせようとするメタルバードの提案に乗り気ではなかった。

 しかし、そんなミズキの考えとは裏腹に、自分達と同じ新世代型二次元人がアッコのコンパクトを奪取した経緯も知ってか、味方陣営の新世代型が挙手した。

「わ、私も行きます! 少しでもアッコさんの……い、いいえ、聖龍隊の力になれるのでしたら……!」

「私も行くよ! 寄生生命体Xは私たち新世代型には寄生しない特性だってのが解っているし、飼育エリアの探索には持って来いだろう!」

「そうね。何の能力もない私だけど、武器の扱いには長けている方よ! 余力ながら私も加勢させてもらうわっ」

「おおう、戦意満々だな君らは! よし、君らも同行してくれて構わないぞ!」

「バーンズ……ふぅ、しょうがないわね」

 新世代型の栗山未来に蛇崩乃音、そして朱鷺戸沙耶(ときどさや)の申し出を聞き入れるメタルバードに、ミズキはやや呆れてしまうが協力的な新世代型の姿勢も汲んで承諾してしまう。

 

 そして一行はメタルバードとミズキの戦闘ベテラン組に加え、Xに対して耐性のある新世代型二次元人の栗山未来と蛇崩乃音そして朱鷺戸沙耶(ときどさや)の計五人でセクター6に向かおうと転送装置に乗り込んだ。

「では皆さん、気をつけて」

 出発しようとするメタルバード達に、転送装置の制御端末を操作する犬牟田が声をかける。

 するとその時、先ほど一人だけで部屋にこもっていたアッコが駆けつけて、今まさに出発しようとするメタルバード達に声をかけた。

「バーンズ……!」

「アッコ、お前はちょうどいい機会だ。少しばかし休んでろ」

「………………」

 アッコにしばらく休養しろと言い渡すメタルバードの言葉に、コンパクトを失ったアッコは申し訳ない気持ちで胸を一杯にする。

 そんなアッコに歩み寄るシバ・カァチェンを目視したメタルバードは、カァチェンにも申し渡した。

「カァチェン! アッコやセントラルエリアのみんなの事、頼んだぜ!」

「心得ました、バーンズ殿……」

 現場の皆々を任せると言い渡すメタルバードの言葉に、カァチェンは静かに頷く。

 そしてメタルバードたち五人は、転送装置で暗黒飼育エリアであるセクター6へと赴いた。

 

 

[適応]

 

 転送装置でセントラルエリアから飼育エリアのセクター6に到着したメタルバードたち五人は、早速ナビゲーションルームに赴いて人工知能との対話へと移行した。

「本部から、早速データが届いた。通称「バリアスーツデータ」だ。早速、データルームに向かってくれ。しかし厄介なことが起きた。先にセクター5極寒エリアに侵入したXが……このセクター6に入り込んでいた。そのX達は……セクター5の環境から、体質を極端に変化させている。そのXに触れてみようものなら君達は……体内から急激に冷却され、ダメージを負ってしまう。本能的に君らへの対抗策を身に付けたのだろう」

 極寒エリアであるセクター5の環境から、体質を変化したXがセクター6に侵入している経緯を人工知能から聞かされたメタルバード達は、そのまま話に耳を傾けた。

「しかしバリアスーツデータをダウンロードして、セントラルエリアの研究部で解析すれば、この問題は解決する。しばらくの辛抱だ」

 人工知能が言うには、高温や低温環境下でも適応できるバリアスーツのデータをバイオスーツに取り込めば、冷却してくるXに対抗できるとの事。

 続いて人工知能は暗黒エリアのデータルームをマップに表示すると同時に警告を告げる。

「セクター6のデータルームは此処だ。バリアスーツデータのダウンロードおよび解析が済むまで「ブルーのX」には、むやみに近づくな。奴らが密集している場所に、足を踏み入れるなど、もってのほかだ。だが、まったく出会わずに進む事は不可能だろう。ルート上で、やむを得ず出会ってしまった場合は……ビームなどの特殊攻撃を当てて、奴らの動きを、しばらく止めろ。その隙に振り切るんだ」

 これに続いて「理解したか?」と付け加える人工知能の発言に、メタルバード達は同意の意志を示すと人工知能は更に警告した。

「気をつけろ、敵は確実に君らを狙っている。そしてこのセクター6は……暗黒セクターの名の通り、非常に視界が悪い。注意深く進む事だ」

 

 人工知能の警告を聞き入れたメタルバード達は、早速行動に移った。

 セクター6の暗黒エリアを進行するメタルバード達は、洞穴などの光が届かない環境で生息する宇宙生物に擬態したXの襲撃を掻い潜りながら先へと進む。

 すると一行が慎重に進んでいると、先ほど人工知能との話に出てきた体内から急激に肉体を冷却する青いXが皆の頭上を舞っていた。

「急いで進むわよ!」

 咄嗟にミズキが頭上を舞う青いXにレーザーを直射して動きを止めると、皆は一目散にその場から離れて難を逃れる。

 しかし青いXはその後もメタルバードたちの行く手に現れ、隙あらば肉体の内部から冷却しようと襲い掛かってくる始末。

 すると青いXの襲来を受けて応戦しているメタルバード達であったが、ここで蛇崩乃音の体内に青いXが侵入してしまった。

「じゃ、蛇崩!」「わあっ!」

 蛇崩に青いXが寄生した瞬間、蛇崩の体を凍て付く冷気が襲い掛かった。その冷気に蛇崩は堪らず悲鳴を上げて、体内から急激に冷却されてダメージを負ってしまった。

「じゃ、蛇崩、大丈夫か!?」

「うぅ……聞いていた通り、体の芯から急に冷やされる……!」

 青いXが体内に侵入した事で、体を急激に冷却された蛇崩を心配するメタルバード。そんな彼に蛇崩は人工知能から聞いていた通りの結果だったと報告する。

 

 こうしてメタルバード達は、青いXの猛攻や群集を避けながらセクター6のデータルームへと進行を続けた。

 すると進行する五人の前に、爆破不可能な壁が立ちはだかった。

「ううむ、オレ達の武装や能力じゃ、この壁は破壊できないな」

「困ったわ。他のルートは青いXの群集で通れないし、あとは此処の道しか残ってないし……」

 目の前の壁を突破する術が今の自分達にはないと告げるメタルバードに続いて、ミズキも他に進行可能な道がない現状を述べていた。

 と、その時。一行の後ろからハッチが開く音と何者かの不気味な足音が聞こえてきた。

「! 誰か来る! 隠れろッ」

 メタルバードは背後から迫り来る謎の存在が何なのか確かめる為にも、皆と共に辺りに隠れた。

 するとその場にやってきたのは、なんとあの小田原修司に擬態しているX、SO-Xだった。不気味な威圧感を醸し出しながら一人、壁の前まで歩むSO-X。

 すると壁の手前までやって来たSO-Xは両手から黒い球体を出現させると、それを目前に放った。するとどうだろうか、黒い球体は大爆発を引き起こして、行き止まりの壁を隊はさせたではないか。

 擬態したと同時に習得した小田原修司の闇の能力で壁を突破したSO-Xを目撃して、メタルバード達は驚きの余り声を失ってしまう。

 そしてSO-Xは、そのまま何事もなかったかのように壁の向こう側へと移動し、向こう側のハッチの奥へとその姿を消していった。

「………………」

 強大な闇の能力で行く手を塞ぐ壁を難なく突破したSO-Xの攻撃力の高さを、改めて思い知らされたメタルバードたちは失言するばかり。

 しかしこの場で立ち往生している暇もなく、メタルバード達も進行を再開した。

 

 そして苦労の末、何とかセクター6のデータルームへと辿り着いたメタルバードたち。

「ふぅ、何とか到着したな」

「う、うん、早くデータを受け取ってみんなのところに帰ろう」

「そ、そうしましょう……」

 データルーム入り口の前で一息入れるメタルバードに蛇崩、そして朱鷺戸沙耶(ときどさや)が呟く中、一行は早々にデータの引継ぎのために部屋へと進入した。

 だが、そこで彼らの目に飛び込んできたのは予想だにしなかった光景だった。

「こ、これは……!!」

 データルームに足を踏み入れたメタルバード達は、余りの光景に衝撃を受けた。

 なんとデータルームで、支援データを引き継ぐ機械にXの集合体であるコアXが搭乗していたのである。コアXはなんと連邦から支援データとして送付されたバリアスーツのデータを自らの体内に吸収していたのだ。

「う、ウソでしょ……! データを吸収している!?」

 ミズキ達が驚愕している最中、コアXはデータを吸収し終わるとそのまま搭乗していたデータルームの機材を全て破壊して、メタルバードたちが入ってきた扉とは向かい側になるハッチの奥へと消えていった。

「ど、どうすんの!? データルームは破壊されちゃったし、肝心のデータが……!」

 蛇崩乃音が激しく動揺する中、メタルバードが皆に告げた。

「と、兎に角さっきのコアXを追うぞ! 奴が吸収したデータを、どうにか手に入れねえと……!」

 メタルバードはどうにかして、コアXが吸収したデータの奪還を図ろうと、同行する皆と共にコアXの追撃に勤しんだ。

 

 データを吸収したコアXを追ってメタルバードたちが出たのは、広い鍾乳洞を再現された大空間だった。

 五人は鍾乳洞を再現された大空間の中を、警戒しながら進行していくと、鍾乳洞の奥から巨大化したコアXが飛来してきた。

「な、なんなの! こいつ、普通よりも巨大に……それも頑丈になっている!」

 飛来してくると同時に、攻撃をコアXに仕掛けた蛇崩は、コアXが通常よりも頑丈な造りになっていることに気付く。

「まさか……! オレ達が受け取るはずだったバリアスーツのデータを吸収して、自分達の体に取り込んだって言うのか!」

「そんな……! あの寄生生物に、そこまでの知能があるっていうの!?」

 メタルバードの推測にミズキも驚きを隠せない。

 だが、そんな彼女達に強化したコアXは襲い続ける。

「怯むな! どんなに頑丈になろうと、ダメージを与えられない訳じゃない! 攻撃し続けろッ」

 巨大化した上に頑丈になったコアXに対して怯む事なく攻撃を続けるように皆に言い渡すメタルバード。

 その言葉を受けて、栗山未来はコアXに斬り付き、蛇崩乃音はミサイルで迎撃。ミズキと沙耶は武装した装備で巨大化したコアXに応戦していった。

 するとしばらくコアXに攻撃していった現状を診てきたメタルバードは、ある弱点を発見する。

「なるほど……実弾よりも、レーザービームなんかの非物質的な攻撃なら頑丈な外殻を貫通して本体のコアに直撃するみたいだな」

 メタルバードは、ミサイルや銃弾などの物質での攻撃よりも、ビーム系の攻撃なら頑丈な外殻を貫通して本体であるコアに攻撃が直撃する弱点を発見する。

 それからメタルバードは強力なレーザービームを絶えずコアXに直射して攻撃をし続ける。

 するとどうだろうか、コアXは見る見るうちに弱体化していき、次第に縮小していった。

 そして最終的には通常のコアXと同様の大きさにまで弱体化した。

「よっし! 今度はミサイルの雨を浴びせてやんな!」

「ほい来た!」

 メタルバードからミサイル攻撃が有効であると聞き受けた蛇崩や沙耶は、装備していたミサイルでコアXを砲撃。

 二人の少女からの砲撃を浴びて、コアXは遂に破裂。その肉片が地面に落下した。

 地面に落下したコアXの肉片にメタルバードはすかさず駆け寄り、即座に肉片をスキャンしてみた。

 すると肉片から、本来はメタルバードたちが受け取る手筈だったバリアスーツのデータが入手できた。

「よし、これを解析すれば高温や低温環境でも活動できるスーツが作成できる筈だ」

 バリアスーツデータを解析する事で、大将たち赤塚組幹部衆が着衣しているバイオスーツが高温や低温環境でもダメージを受けないでいられるスーツが作成できると頷くメタルバードは、朱鷺戸沙耶(ときどさや)ら新世代型と共にセントラルエリアへと帰還していった。

 

 

 セントラルエリアに帰還したメタルバードたちは、早速入手したデータを伊織糸朗に託して新たな装備を作成してもらう事に。

 その一方で、人工知能には先ほどデータを吸収して自らを強化したコアXの経緯を報告した。

「Xが「バリアスーツデータ」を、ダウンロードした事は、我々も驚いている。見かけからは想像もできないが、Xは、かなり高度な知能を持っている可能性が高い。何にせよ、君らが無事バリアスーツデータを持ち帰って来られたことは何よりだ。これで、また一歩、君達はSO-Xに対抗できる力を得られた。とはいえ、実際にSO-Xと戦える様になるのは、まだまだ先の話だ。これからも装備を着実に強化していく必要がある」

 人工知能は任務を終えたメタルバード達に告げると、最後に話を締めくくった。

「引き続き、飼育エリアの状況は私の方から報せるつもりだ。それまで新世党の動きにも、注意してくれたまえ」

 メタルバード達は、人工知能からの報せを待つ間、セクター1に侵攻しているマギカ組とマン・ヒールズの戦況を捉えることに。

 

 

[3つの門番]

 

 その頃、マン・ヒールズと合流したマギカ組の面々は、フレッドと共に最深部の部屋に通じる扉を制御する装置の前に到着していた。

「ワレ……3種ノ守護者ニ、マモラレシ扉。守護者ノ、許可ナキモノハ通サズ」

 この制御装置の発言に、ミスティーハニーは扉を開けるには門番とも言える兵士を倒すしかないと判断。

 一行は急ぎ先を進むため、門番が潜んでいる各部屋に進攻を開始した。

 

「ワタシは水を司る者。荒ぶる洪水がお前達を飲み込む!!」

 青い扉の先に潜んでいたのは、水属性を持つ水兵三体。このメカニロイドの攻撃に、聖龍隊は反撃する。

「喰らいなッ」

 フレッドも4連式リボルバー銃で特殊弾丸を発射して、迎撃していく。

 鹿目まどかたちマギカ組に続いて、新たに加わってくれたマン・ヒールズの火力も相まって水兵たちはたちどころに迎撃され、破壊された。

「……ふぅ、何とか突破できたな」

 辛くも最初の属性兵士を突破できた事態に、フレッドが呟く。

「お嬢ちゃん達も大変だろう。異常者(ヒール)を倒す為に聖龍隊に加担させられて……」

「まあ、今はもう慣れたわ」

 フレッドからの問い掛けに、暁美ほむらは無愛想な面差しで返事する。

 すると、そんな聖龍隊の業務に口を挟むフレッドにマン・ヒールズのデューイが声をかけた。

「……ところでフレッド、右腕の傷はどうだい?」

「ああ、デューイ……さっきお宅らがしてくれた応急処置のお陰でだいぶ良くなった」

 デューイたちマン・ヒールズの応急処置で、先ほどシャドウに負われた傷が大分癒された事を伝えるフレッド。

 そんなフレッドにマン・ヒールズのエリルは申し訳なさそうに言った。

「ごめんね、私たちナースエンジェルやセーラームーンみたいに誰かを治癒する能力は持ち合わせていなくて……」

「良いって、そんな事……こうして一緒に戦ってくれるだけでも、ありがたい」

 治癒能力を持ち合わせていないエリルたちマン・ヒールズに対して、フレッドは共闘してくれるだけでも十分だと言い返す。

 

 それから一行は、続いてオレンジ色の扉の部屋に突入した。

 部屋の中には、やはり門番兵が待ち受けており、門番兵は炎属性を兼ね備えていた。

「ワタシは炎を司る者。ほとばしる爆炎がお前達を焼き尽くす!!」

 門番兵は強力な火炎攻撃を仕掛けてくる属性持ちのメカニロイドであり、聖龍隊を強力な業火で手当たり次第攻撃していった。

「炎属性ならこっちが有利!」

 マン・ヒールズの沙羅は、水属性である自分達ブラック・ラヴァーズの共闘と、美樹さやかの水属性の技で炎属性の門番兵をアッと言う間に倒してみせる。

「ひゅ~~、流石は聖龍隊ってところかな? それにしても、さっきの水属性の門番にも劣らない水の技だな」

 忽ち敵兵を突破してみせる聖龍隊の猛攻を目の前に、感心するフレッド。

 すると激流の如き水属性の攻撃を受けた門番兵が、最後の力を振り絞って戦前の聖龍隊メンバーに攻撃してきた。

「っ!」

 この攻撃に怯んでしまう巴マミ。だが、そんな彼女の危機にフレッドはリボルバー銃を発射して敵兵にトドメを刺す。

「大丈夫か、マミ」「フレッド、ありがとう」

 フレッドの支援攻撃で危機を脱したマミは、素直に礼を述べる。

 するとフレッドはマギカ組の女子達に告げた。

「それにしたって、魔法が使えるからって聖龍隊は、こんなか弱いレディーたちまで隊士として入隊させちまうとは……やれやれだぜ」

 このフレッドの言葉に、暁美ほむらが答える。

「まあ……私たちの能力も、異常者(ヒール)狩りに一役かえるって事で、聖龍隊に入隊させられたりはしてるけど……」

 ほむらに続いて巴マミもフレッドに語る。

「私たちのような能力者は、その能力が貢献できるようにと、聖龍隊にスカウトされて入隊させられた次第ですの」

「でもねえ……だからって、危険な異常者(ヒール)ハントにまで借り出す必要はないと思うけどな」

「あら、意外に優しいんですね、フレッド」

 マミの話に危険な異常者(ヒール)狩りにまで借り出す必要性がないと申すフレッドの発言を聞いて、百江なぎさは彼の優しさを問う。

 

 と、その時。聖龍隊の通信機からメタルバードの声が。

「おおい、まどか! それにミスティーハニー! 聞こえているか!」

「あ、総長」「バーンズ、どうかしたの?」

 名前を呼ばれて返事する鹿目まどかとミスティーハニーに、メタルバードは問うた。

「お前達の現在地は、通信機に搭載されている発信機で解るんだが……もうすぐで研究施設の最深部に辿り着けるはずだが」

 この問い掛けにミスティーハニーが返答した。

「こっちも、もうすぐで門番を倒し切るから。あと1体で扉が開くはずなのよ……」

「うむ、こっちは緊急時のために、いつでもお前達を転送できるよう準備しておく。何かあったらスグに帰って来い」

「了解したわ、バーンズ」

 ミスティーハニーはメタルバードとの通話を終えると、即座に移動を始めようと現場の皆に告げる。

「さあ、あと1体でハッチが開くはずよ。最後の門番を探し出しましょう」

「おお、やる気だねぇ。こっちも俄然、闘争意欲が湧くってもんよ」

 ミスティーハニーのやる気に感化されたのか、フレッドも自身の闘争心を湧かせていった。

 

 マギカ組にマン・ヒールズ、そしてフレッドが最後の門番を探索しようと小部屋を片っ端から探していると、案の定最後の門番が出現した。

「ワタシは雷を司る者。うなる雷鳴がお前達を引き裂く!!」

 最後の門番は、雷の属性を持つメカニロイドだった。

 雷のメカニロイドは、文字通り電撃系の技を連発して一行を攻撃する。

「ッ、電撃か……!」

 強烈な電撃攻撃にマン・ヒールズの門脇将人は思わず怯んでしまう。

 さらに其処へメカニロイドは威圧してくるかのように、強烈な電磁波攻撃を仕掛けてきた。

 強力な電磁波に、戦前の者達は苦戦を強いられる。

「こ、コイツは効くぜ……!」

「だ、だが……黙ってやられる訳にはいかないッ」

 電磁波を受けながらも屈強な肉体で耐え忍ぶゼブラ。その横では、同じく電磁波を受けながらも果敢に反撃していくフレッドが。

 フレッドの4連式リボルバー銃が火を吹く中、鹿目まどかと暁美ほむらが遠距離から門番に向けて攻撃。攻撃を受けた門番は堪らず怯み、その隙を突いて佐倉杏子と美樹さやかが接近して門番を打破。

 しかし過激な攻撃を受けた門番は、最後の力を振り絞るかのように突如として巨大な電気の球を成形、それを一気に戦前へと投げつけた。

「や、やべぇ! あの電撃の球は、そう簡単に落とせねえぞ!」

 フレッドが巨大な電撃の球を撃墜させるのは困難だと騒ぎ出した、その時。

 なんと最年少の百江なぎさが戦前に飛び出ては、即行でシャルロッテへと変身。電撃の球を飲み込んでみせる。そして飲み込むとスグに体内で高エネルギーをシャボン玉に変換して吐き出した。

「ひゅ~~、エネルギーをシャボン玉に変える能力か……やるねえ、お嬢ちゃん」

 百江なぎさの能力に驚きつつも、フレッドはリボルバー銃を発射して門番にトドメの一発をお見舞いした。

「へへっ、楽勝楽勝♪」

 余裕満々で最後の門番をも突破したフレッドたち。

 すると丁度その時、最深部へと通じる扉を閉めるロックが全て開錠された事で、進攻が可能となった。

「さあ、鬼が出るか蛇が出るか……行ってみようぜ!」

 フレッドは、何が登場するか分からない最深部への進攻を皆に推奨する。

 

 そして一行が最深部へと通じる扉の前まで来たのだが、ここでフレッドがある事に気付く。

「ん? どうしたんだい、お嬢ちゃん達」

 フレッドは、何やら不安がるマギカ組の女子達の様子に気付いて声をかけてみる。

 すると百江なぎさがフレッドに言った。

「い、いえね……ここまで来て、今さらって感じなんですけど……なんだか、急に怖くなって……」

「えっ? ……まあ、色々と危険な目に遭っている訳だし、急に怖気づくのも分かる気がするな」

 なぎさ達の反応を見て納得するフレッドは、ここまで最年少で着いてきた百江なぎさの前に歩み寄ると、静かに跪いてなぎさと同じ視線で語った。

「俺も賞金稼ぎになったばかりの頃は、怖い経験で足がすくんじまった事が多々あった。だけど、今はあの頃とは格段に状況が違う……何故なら、今は一緒になって戦ってくれる仲間が、こんなにもいるんだからな」

 フレッドはなぎさ達マギカ組の女子達に続けて語った。

「一人で戦っている訳じゃない。みんなと一緒に戦っているってだけでも、戦況は大きく変化するもんだぜ」

 フレッドの言葉にマギカ組は多大に感銘を受けた。

 するとフレッドは、ここで胸元から一つの懐中時計を取り出して、なぎさに手渡した。

「これは俺のお袋の形見だ。俺が怖い思いをしたり、もうダメかと思った時に、いつも握り締めて共に困難を乗り越えてきた大切な代物だ。これを持っていれば、少しぐらい勇気が湧いてくるかもしれないぜ」

「フレッド。そんな、大切な代物を……」

 母親の形見である懐中時計を何の躊躇なく手渡すフレッドの好意に戸惑う暁美ほむらだが、フレッドは笑顔で彼女達に言った。

「なあに、今の俺様よりも、恐怖でビビッているアンタ達に預けておく方が、お袋も喜んでいるだろう。それ預けておくから、大事にしなよ」

 カッコよくなぎさに懐中時計を手渡すフレッドの男気に、当のなぎさは胸を射止められてしまう。

 

 そんな道中を過ごし、一行は開錠された扉の奥へと進攻していった。

 

 

[友の最後]

 

「ぐっふっふっふ、来たか」

 門番兵を倒して、3つのセキュリティを解除したミスティーハニーたちが最深部のコンピュータールームに進攻すると、そこにはスフィンクスや阿修羅をモチーフにした二次元人が六本の腕を組んで待ち受けていた。

「シャドウの奴では足止めにならなかったと言う訳だな。総統から、ほんの少し力を授かったとはいえ、所詮は政府の犬だった奴だからな」

 最初から政府から寝返ったシャドウを信用していなかった事を仄めかす言動を口にする六本腕の二次元人に、フレッドが問い詰めた。

「おい、ここは新世党の研究施設じゃないのか?」

 すると六本腕で三つの人面を頭部に持つ二次元人は、不敵な笑みを浮かべて言った。

「愚かな連中よ、お前達はワナに落ちたのだ。このエンシェンタス様のな!」

「ワナだと?」

 エンシェンタスと名乗る二次元人の言葉にフレッドが動揺すると、エンシェンタスは包み隠さず述べた。

「そう、ここにはセイント・コンパクトなど、ありはしない。既にコンパクトは我々新世党の拠点に運び込まれた。お前達、間抜けなレジスタンスや聖龍隊を釣るための偽情報として、この研究施設の最深部にコンパクトを移送したとデマを流したに過ぎない」

 全ては新世党の作戦だと豪語するエンシェンタスは、遠隔操作で更に自分達がいる大部屋のセキュリティを操作して皆の逃げ道を奪った。

「これでお前達は袋のネズミだ。この研究施設から俺以外の二次元人は、決して転送できない!」

 遠隔操作で二次元人専用の転送装置も、エンシェンタス以外の二次元人は使用不能と豪語するこの言葉に、ミスティーハニーがハニーフルーレを振り翳してエンシェンタスに言い返す。

「私達が大人しくネズミになるとでも思っているのかしら!?」

 すると戦意満々のミスティーハニー達マン・ヒールズを前にしたエンシェンタスは不敵な笑みを浮かべて言い放った。

「ぎひひ……俺が身体改造で手に入れた戦闘能力は、シャドウの比ではないぞ? それでもやると言うのなら相手になってやろう!」

 エンシェンタスとの戦闘が勃発した。

 

「観念させてやるわ!」

 

 スフィンクスや阿修羅を模したと思われる三面の頭部を持つエンシェンタスは、マギカ組とマン・ヒールズそしてフレッドの前に立ちはだかった。

 部屋を完全な密室状態にして逃げ道を奪ったエンシェンタスは、最初は炎系の攻撃で聖龍隊を威圧。

「うわっ!」

 灼熱の炎を放つエンシェンタスの攻撃に皆は怯むが、スグに炎系の能力に対抗できる美樹さやかやブラック・ラヴァーズら水属性の能力者が戦前に出てエンシェンタスに反撃する。

 だが、それよりも早くエンシェンタスは頭部を回転させて行うエレメンタルチェンジをして、自らの属性を変化させる。

「凍り付けッ!」

 属性を変化させたエンシェンタスは、氷属性の攻撃技を放って戦前のフレッドやミスティーハニーたちを凍て付かせる。

「うおっと!?」

「ッ……自身の属性を変化させて戦うタイプ! ……厄介ね」

 3つの頭部を回転させる事で属性を変化させられる二次元人のエンシェンタスに対して苦戦を感じ入るミスティーハニー。

 更に属性を巧みに変更するエンシェンタスは、転々と切り替えていく属性によるエネルギーを巨大な球体に形成して戦前の戦士たちに放り投げて応戦してきた。

「わっ!」

 強烈な炎属性のエネルギー球体を前に驚き慄く暁美ほむら。

 すると仲間に強大なエネルギー球体による攻撃が当たらない様にと、百江なぎさが此処でシャルロッテに変身してエネルギー球体を呑み込んだ。巨大なエネルギー球体を呑み込んだシャルロッテは、聖龍隊で新たに会得した「エネルギーをシャボン玉に変換する能力」で、エネルギーを全てシャボン玉に変換させて吐き出した。

 シャボン玉を無数に吐き出すシャルロッテを目撃して、エンシェンタスは悔しがる。

「ぐぬぬ、それが貴様が聖龍隊で新たに会得した能力か! だが、所詮は進化の可能性に目をつぶる貴様ら出来底ないのプロト世代の芸当だ!」

 しかしエンシェンタスは、なぎさたちプロト世代の二次元人たちを進化の可能性に目をつぶる出来底ないと見下し、再度属性を変化させる。

「雷あれ!」「うわあっ!」

 属性を雷属性に変化させたエンシェンタスは、雷を発生させて鹿目まどかたちに強力な電撃をお見舞いする。

 そして案の定、雷属性に変化したエンシェンタスはまたしても雷のエネルギー球体を形成して敵対する相手一体に対して砲撃をお見舞いしようとする。が、その電撃のエネルギー弾もシャルロッテに変身した百江なぎさが巨大な口を開いて一口でパクリと呑み込んで即座にシャボン玉に変換してしまう。

 だがエンシェンタスの猛攻は絶える事無く、今度は氷属性に変化して凍て付く氷のエネルギー球体を放とうと身構える。

 二度に渡るシャルロッテのシャボン玉変換に、シャルロッテ本人も疲労が見えていたが、自分と親しくしてくれている巴マミや仲間達そしてフレッドに魔の手が伸びないようにと、シャルロッテは凍て付く氷のエネルギー弾も一口で呑み込んでシャボン玉に変えてみせる。

 三連続で強大なエネルギーをシャボン玉に変換したシャルロッテは、ここで蓄積された疲労からか元の百江なぎさに姿を戻した。

「ふぅ、ふぅ……」「くっ……あじなマネを……!」

 息切れするなぎさに、幾度となく自分の最大攻撃を無力化されたエンシェンタスは六つの腕から衝撃波を繰り出してなぎさに攻撃を仕掛ける。

 なぎさの危機にフレッドが4連式リボルバー銃を連射するが、4つの銃撃はエンシェンタスの衝撃波を4つかき消しただけで、残りの2つの衝撃波はなぎさに直撃してしまった。

「きゃっ」か細い絶叫がなぎさの口から飛び出す。

 するとエンシェンタスは再び属性変化エレメンタルチェンジを行い、炎属性で一行の前に立ちはだかった。

「ぐはははっ、所詮聖龍隊といえど……旧世代のポンコツ共が軒並み揃えているだけの無能な衆。我ら、進化を求め続ける新世党には遠く及ばない」

 このエンシェンタスの言葉に、暁美ほむらの感情が昂った。

「進化、進化って……その為だけにアッコさんのコンパクトを奪った訳なの!?」

「ぐひひ、その通り……ミラーガールのセイント・コンパクトは変身能力の始祖たる根源……そのコンパクトを解析すれば、我ら新世党は今以上に強力な能力を授けられる事だろう……」

 エンシェンタスの不敵なほくそ笑みが密室に響く中、皆の不満は爆発寸前だった。

 

 すると、その時。

「ぐふっ、ふぅ……!」

 コンパクトを奪取した経緯をほくそ笑み続けるエンシェンタスにミスティーハニーの痛烈な射撃が直撃した。

「進化、進化……何が進化よ。その為にジャッジ・ザ・シティでは多くの罪なき人々を爆破テロで殺め、シャドウも私たちを裏切った……そして終いには、アッコちゃんのコンパクトまで奪う始末……! アナタ達がしているのは進化なんかじゃない! ただの異常者(ヒール)の悪事よ!」

 エンシェンタスの論議に怒り心頭状態に血の気が昇り切ったミスティーハニーたちマン・ヒールズは覚醒した。

「真の力を見せてあげるわ!」

 ミスティーハニーが掛け声をあげると、マン・ヒールズの容姿が一変。全員が特別なボディアーマーを装着した。

「むむッ! な、なんなのだ、そのボディアーマースーツは!?」

 容姿が一変したマン・ヒールズを目前にエンシェンタスが叫ぶと、ミスティーハニーたちは力説した。

「これは……神の息子と呼ばれている、手塚マコト先生が私たちマン・ヒールズに託してくれたボディ・アーマー……これを託された時から、私たちは決心したの。人々の希望の結晶である二次元人として、私たちマン・ヒールズは自分達の戦闘力を正しい事のために使おうって……そう、平和のために……!」

 マン・ヒールズ全員が、手塚プロダクションの虫ロゴマーク入りのボディ・アーマーを着用した瞬間、彼らは目つきを一層鋭く変えて一気にエンシェンタスに向かって総攻撃を仕掛けた。

「手塚先生、見ていてください!」

 マン・ヒールズの手塚マコト氏への想いを咆哮しながら、彼らはエンシェンタスに一斉攻撃を開始。たちまちエンシェンタスは爆煙に呑み込まれて絶句する。

「バ、カ……な……!」

 手塚マコト氏から託された最先端のボディースーツによる戦闘力強化での総攻撃を受けて、遂にエンシェンタスは膝をついた。

 

 だがエンシェンタスは余裕を感じさせる笑みを浮かべながら対峙する一同に向かって言い切った。

「なかなかやるな……だが、お前達の状況が絶望的なのは変わりがない!」

 そうエンシェンタスが言い切った次の瞬間、エンシェンタスは即行で移動し、部屋のコンピューターを操作し始めた。

「ぐはははっ」

 不敵な笑みでコンピューター端末を操作し出したエンシェンタスは、操作し終わるとミスティーハニー達に言い放った。

「これで5分後に施設は宇宙空間に切り離されて自爆する!」

「な、何ですって!?」

 今自分たちがいるコンピュータールームが宇宙空間に放り出されて自爆すると言われ、困惑する暁美ほむら達。

 聖龍隊は急いで部屋の扉を閉め切るロックを打ち破ろうと、扉に向かって攻撃するがビクともしない。

「そんなもので扉が開くものか!」

 並大抵の攻撃で扉を打ち破る事はできないと豪語するエンシェンタスは「あと4分!」と聖龍隊を煽る。

 聖龍隊の一行が頑なに閉じられた扉の打破に集中している最中、エンシェンタスは悠々と一人だけ脱出しようとしていた。

「ぎひひ。それでは、そろそろ転送させてもらうとしよう。さらばだ!」

 一人だけ、転送装置で脱出を図ろうと画策するエンシェンタスであったが、そんなエンシェンタスにフレッドが体当たりした。

「ぬおおーー!」「ッ、悪あがきをっ!」

 単身、エンシェンタスに突っ込むフレッド。フレッドにしがみ付かれ、転送装置から出てしまうエンシェンタス。

「フレッド、何を!?」

 この突然のフレッドの行動にミスティーハニーが問い掛けると、フレッドはエンシェンタスを離さないまま叫んだ。

「聖龍隊の総攻撃でも破れないご自慢の扉らしいが……二次元人2体分の爆発なら、隙間ぐらいは開くんじゃないか!?」

 この時、聖龍隊はフレッドの目論見を悟った。

「やめろ、フレッド!」

 マン・ヒールズのガイトが制止するものの、フレッドは抵抗するエンシェンタスを必死に押さえ込みながら言い返した。

「おのれ……!」「悪いがやめないよ、理屈じゃないんだ」

 理屈や道理抜きで、仲間を助ける為に我が身を犠牲にしようとするフレッドの行動に戸惑う聖龍隊。

「ふ、フレッド……!」

 ここまで何かと自分を庇ってきてくれたフレッドの突然の行動に、戸惑いや驚きを隠せない百江なぎさ。

 だがフレッドは、頑丈に閉ざされる扉の前までエンシェンタスを押さえ付けると、懐から強力な爆薬が詰まった銃弾を取り出して、それを起爆させた。

「くっ……後は頼んだぜ、聖龍隊!」

 辺りを眩い光が包み込み、それと同時に巨大な爆発音が密室に響き渡った。

 そして皆がそっと目を開けてみると、目の前の閉ざされていた扉の前には粉砕した肉片が転がっていた。

 だが、同時に固く閉ざされていた扉にも隙間が開き、聖龍隊一行はその隙間を潜ってようやく部屋からの脱出に成功する。

 そして一同が部屋から抜け出ると同時に、部屋はB.S.Lから切り離され、宇宙空間に破棄。そのまま爆発して部屋は跡形もなく消し飛んだ。

 フレッドがエンシェンタスを道連れに自爆した事で、聖龍隊メンバーは事なきを得たのだった。

 

 

 聖龍隊一行は転送装置でセントラルエリアに無事帰還することが出来た。

 ただ一人、フレッドを除いて。

「フレッド……」「フレッドさん……」

 百江なぎさや巴マミは、自分達の脱出路を開く為に自ら犠牲になったフレッドを偲んで悲しみに暮れていた。

「あいつが……フレッドが命を張ってくれなければ、オレ達は此処に帰ってくることはできなかった」

 マン・ヒールズのジェラール・フェルナンデスは自分達のために身を犠牲にしてくれたフレッドを労わり、それと同時に当初仲間とは受け入れてなかったフレッドに対して非常に申し訳ない気持ちで一杯になっていた。

「フレッド……! いい奴だったぜ……」

 涙ながらにフレッドの死亡を悲しむ赤塚組大将。

「フレッド……みんなを守る為に、自分を犠牲にするなんて……」

 仲間を守る為とはいえ、自らを犠牲にしたフレッドに戦闘不能に陥ったアッコは悲しみに暮れる。

 そんなセントラルエリアの仲間と同様、マン・ヒールズの面々がフレッドに対して感謝の意と申し訳ない気持ちで胸中を埋め尽くしていく中、ミスティーハニーが暗く圧し掛かる空気を断裁するかのように言い放った。

「聞いて、フレッドは私を……みんなを仲間じゃないって言った私達を助けるために、命を投げ出してくれた。私達は、それに応えたい。いいえ、応えなくちゃいけないのよ!」

 自分達を助け出す為に命を投げ出してくれたフレッドの想いに応えたいと嘆願するミスティーハニーたちマン・ヒールズは、今まで自分達抜きで活動していた聖龍隊の仲間や最初は忌み嫌っていた新世代型二次元人たちにお願いした。

「みんな、私達を仲間に入れさせて! お願い!」

 このミスティーハニー率いるマン・ヒールズの嘆願を前にして、司令塔の美木杉愛九朗も啖呵を切る勢いで言った。

「ああ、そうだな。この仲間達で……新世党を倒そうじゃないか。フレッドのためにも!」

 

 こうして惜しくも、フレッドの戦死を切っ掛けにマン・ヒールズは正式にHEADやスター・ルーキーズと共闘する新世代型二次元人たちと手を組む事と相成った。

 そしてフレッドは、名誉の戦死として皆の胸にその名が刻まれたのであった。

 

 

[不穏]

 

 同じ頃、セントラルエリアの上層階。VIPエリアでは。

 新世党の面々によって密かに転送装置で移送されてきたセイント・コンパクトの研究が行われていた。

「な、なんなんだ、このコンパクトは!?」

「アレだけのエネルギーや光線を発射しても、傷一つ付かないぞ!」

「それに、このエネルギー……途轍もない反応が見られる」

 セイント・コンパクトの実態を詳しく解析しようと、強エネルギーや光線などをコンパクトに向けて放射したにも関わらず傷一つ付かない現状。そしてコンパクトから放たれる未知の高エネルギー反応に、新世党の面々は驚愕されっぱなしであった。

「ふふ、遂に手に入りましたね、ミラーガールのセイント・コンパクト。此処まで来るのに長かった……そして、想像以上の代物ですね」

「ほんに、そうじゃのう。我ら新世党の長きに渡る計画も、遂に進展するときじゃ」

 ミラーガールからコンパクトを強奪できた結果に、セレディ・クライスラーも鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)も心より満足していた。

 だが満足する一団に、総統の側近であるスカー・フェイスが物を言う。

「諸君! これで満足していてはいかん! このセイント・コンパクトを解析し、我々新世代型の進化に繋がる可能性を探し出さねばなるまい! それまで気を緩めるな」

「けっ、分かってるよ! このコンパクトがあれば、俺たち新世代型は今以上に強く、進化できるってんだろ……!」

 スカー・フェイスの言い分に、伊丹キョウジはコンパクトで今以上に強く進化できる自分たち新世代型二次元人の可能性を示唆する。

 すると其処に、何処からともなく新世党の総帥であるキャップ・ド・レッドが現れては、針目縫たちが強奪してきたセイント・コンパクトに群がる新世党メンバーに歩み寄ってきた。

「遂にやったな、諸君!」「キャップ・ド・レッド総帥!」

 本懐を成し遂げた新世党の面々に険しい面差しを向けるキャップ・ド・レッドに、セレディ達は敬礼のポーズで出迎える。

「総帥、今まで何処に居られたのですか?」

「私か? はて、私はずっと皆と同じVIPエリアに居たが。それはさておき、遂にミラーガールの……いいや、加賀美あつこのコンパクトを手に入れられたな」

 アッコのコンパクトを強奪できた結果に御満悦するキャップ・ド・レッドに羅暁が言う。

「キャップ・ド・レッドよ……このコンパクトは確かに未知なる技術と魔力で作られた品じゃが、本当にこれが我ら新世代型の進化に繋がるのか?」

 羅暁の疑問にキャップ・ド・レッドは真顔で答え返した。

「大丈夫だとも。知ってのとおり、加賀美あつこのコンパクトは我ら二次元人の変身能力の始祖たる根源。その変身能力の源であるコンパクトを解析すれば、二次元人の進化の秘密も解き明かせるだろう」

「ほんに……そうであろうか?」

 力説を聞いても未だに疑問が晴れない羅暁に、キャップ・ド・レッドは再度力説する。

「無論、兼ねてより研究および調査してきた結果だ。タイの製薬企業と連携して、様々な生物兵器を研究してきた末に、我ら新世代型二次元人の中に眠れる進化の可能性を紐解く数少ない力こそ……変身能力の始祖である加賀美あつこのコンパクトなのだ!」

 すると、この力説を聞いてセレディがキャップ・ド・レッドに訊ねた。

「そういえば、此方の調査では……瀬名アラタたちボクたち以外の新世代型を誘拐させて研究していたタイの製薬企業、その首謀者であるゴールドマンとアナタが結託していたみたいですね」

「ああ、その件か。確かにゴールドマンと協力して、我々以外の新世代型二次元人の遺伝子を用いた研究を進めさせていたのはこの私だ。まあ、ゴールドマンは生態系を崩してきた人間という種を滅ぼす為に計画に賛同していたらしいが……どちらにしろ、その一件によって研究対象として捕らえた新世代型の同胞達に共有感知が目覚めたのは、好都合だった」

「お、恐ろしい……タイのバイオハザードも、結果的にアナタが発端だったとは……」

 タイの製薬企業による新世代型二次元人の誘拐および監禁による研究と、その過程で起きたバイオハザードの発端がキャップ・ド・レッドであった事実に小野崎功は恐怖の余り身震いしてしまう。

 と、タイの製薬企業の重鎮ゴールドマンとキャップ・ド・レッドが結託していた事実を新世党が改めて認知した矢先、スカー・フェイスが総統であるキャップ・ド・レッドに声をかけた。

「総統! 加賀美あつこのセイント・コンパクトを奪取したのは大きな成果ですが……同士であったシャドウやエンシェンタスを失ったのが痛手です」

「うむ、彼らにも悪い事をした……だが、彼らの犠牲は無駄にはしない。セイント・コンパクトを研究し尽くして、我ら新世代型の失った進化の力を取り戻すのだ! 我ら、新世代型の失われし大いなる力を……!」

 キャップ・ド・レッドの力説を聞いて、同士を失ったと説くスカー・フェイスは黙然と話に耳を傾ける。

 その時である。VIPエリアの通信が入り、画面に新世党の研究機関に所属する時縞ソウイチの姿が映し出された。

「総統、例のセイント・コンパクトのデータなんですが……」

「おお、何か判ったか?」

「はい、素晴らしいデータです。もう、想像以上の物です。このデータを元に、此方でも更なる研究を進めていきます」

 この時縞ソウイチの解析結果を聞いて、セレディ・クライスラーは「ええ、頼みましたよ」と一言添えて返した。

 研究者、時縞ソウイチからの報告を聞いて、キャップ・ド・レッドは神妙な面差しで言った。

「ふふふ、もうすぐだぞ……もうすぐで我々、新世代型の未来がやってくる」

 この言葉を聞いてセレディや羅暁も口を開く。

「そうですね。ボクら新世代型の未来が遂に切り拓かれる」

「我々が全てを支配する、素晴らしい未来が遂に目の前まで……!」

 誰もが野心高まる中、新世党の手中に収められたセイント・コンパクトはその輝きを失う事はなかった。

 

 

 一方、その頃。

 メタルバードや大将たちがバイオロジック宇宙生物研究所に乗り込んだ際のシルバー・ウィングでの機体の内部、そのメインコンピューターに何やら銀河連邦本部から人工知能に向けて通信が入ってきていた。

 人工知能に対して、銀河連邦側は次の様な通話を内密に行った。

「……彼女達は、計画に気付いていないだろうな?」

「はい、問題ありません」

「よし、引き続き、彼女達の行動に注意してくれ」

「了解しました」

 銀河連邦からの通達に人工知能は同意を示し、人知れず通信を終えた。

 

 

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