現政奉還記 未来都市&宇宙編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[痛心]
前回、戦いの渦中で大切な仲間フレッドを失った聖龍隊は、新世党対策委員長に任命されたドレフ将校に連絡を取ろうと試みるのだが……
「ダメだわ!」
「いけない、通信妨害が酷くなってきたのか、まったく繋がらなくなりました」
B.S.L内部から発生している妨害電波が、今まで以上に増強されたのか外部との連絡が取れなくなっていた。
この事態に、連絡を試みようとするアッコや犬牟田宝火は悪戦苦闘していた。
「ミラーガールのコンパクトが奪われ、新世党がそれを悪用している事をドレフ将校に報告したいのだが……」
「新世党との決戦を控えて、ドレフ将校との連絡が断たれたのは厳しいわね」
敵である新世党が、ミラーガールのセイント・コンパクトを強奪して悪用している件などを報せた上で、新世党との決戦に備えようとする美木杉愛九朗やミラールは、ドレフ将校との連絡が付かない現状に困惑するばかり。
新世党が流している妨害電波に苦戦させられている現状に、アッコは困り果てていた。
「何とか新世党の妨害を止める事はできないのかしら?」
敵が流している妨害電波を、どうにか停止できないのかと首をかしげるアッコに、機材の設定を担当している犬牟田が言い伝える。
「通信妨害波の発信地点を絞り込みました。でも……」
犬牟田は自身が割り出した妨害電波の発信地点をメイン画面に表示すると、B.S.L内部を既に精通している美木杉が血相を変えて驚いた。
「なにっ!? セクター3の砂漠地帯だと?」
「何か問題でも?」
何ゆえセクター3の砂漠地帯が問題なのか聖龍HEADのセーラーマーキュリーが問い掛けると、犬牟田が代わって返答した。
「このセクター3の砂漠エリアは非常に危険なんです。予測できない流砂がいくつもあって、それに飲み込まれたら一巻の終わりです!」
セクター3に設けられた人工の環境下である砂漠地帯には、流砂の中でも生息できる宇宙生物を飼育する為に人工の流砂も多く設けられている事実を犬牟田は述べる。
この事実に。美木杉は難色を示す。
「新世党の連中め、とんだ場所に施設を作ったものだ! いくら何でも、あそこに乗り込むのは……」
飲み込まれたら一巻の終わりである流砂が発生している砂漠エリアに足を運ぶのは危険と判断する美木杉だが、そんな危険な任務になる有事にワイルドタイガーは険しい面魂で言い放つ。
「行こう! どんなに危険でも俺達は、もうやるしかない」
仲間として最後まで戦い抜いてくれたフレッドの死を乗り越える勢いで言い放つタイガーに続いて、そのフレッドに不信感を抱いてしまってたミスティーハニーが皆に問う。
「これから決戦に向けて、危険じゃない任務なんて一つもない。そうでしょ?」
このミスティーハニーの問いに、アッコが力強く言った。
「そうね。もう私達は前進するしかないわ……フレッドの為にも……!」
戦死したフレッドの分まで、自分たちは戦い抜かなければならないと主張するアッコの言葉にその場の誰もが共感した。
しかし、仲間を守る為に身を挺して自らを犠牲にしたフレッドの戦死は、セントラルエリアを拠点に置く聖龍隊や赤塚組そして新世党に連行されてもなお逃げ出してレジスタンスを結成した新世代型たちには大きな痛感だった。
「……決して、楽な戦いではないと覚悟はしていた。例え、わが身が滅びようと私は構わない……だが……仲間を失うのは、つらいな……」
美木杉愛九朗は新世党との戦いに苦労が絶えない事を把握していたとはいえ、共に戦ってくれる仲間を失う悲しみだけは率直に痛心していた。
そして仲間を失う辛さは、伊織糸朗も同じ心境だった。
「フレッドさん……こんな事になるなんて……彼がダメージを負った後、治療のために検査しようとしたんですけど……フレッドさん、勝手に検査するなって怒り出して……何が不満だったんでしょう」
検査に対して異常なまでに嫌悪感を示していたフレッドを不思議がりながらも、何ゆえ不満を覚えていたのか懸念する伊織糸朗。
そしてフレッドの異常なまでの検査嫌いに、レジスタンスの看護治療を専門に取り組んでいる満艦飾薔薇蔵も不思議がっていた。
「フレッドくん……きっとすぐに良くなって……また、いつも通りの調子に戻れたと思ってたんだが……まさか、あんなに呆気なく死んでしまうとは……」
フレッドの死を非常に悔やむ薔薇蔵同様、同じく看護治療に専念している聖龍HEADのナースエンジェルも悔やんでいた。
「フレッド……私達が検査しようとしても、体を調べさせてくれなかったのよ……なんであんな意地を張ったのかしら……辛い時は、辛いって言ってくれれば良かったのに……!」
ナースエンジェルは、フレッドが自身の体の不調を我慢して訴えなかったのだと思い込んでいた。
そんな素性が不明のフレッドであったが、聖龍隊や新世代型二次元人達からの信頼は厚かった。
「気まぐれで、ちょっと謎めいてて変わったところもある奴だったけど……良い奴だったな、フレッド……」
「私が、もっともっと、もっともっと強かったら……本当の英雄だったら……彼を助ける事が、できたのかな」
ワイルドタイガーと楓の鏑木親子は、自分達が現場に居たならフレッドを助け出す術があったのではないかと、悲痛に暮れる。
そんな鏑木親子同様、フレッドの突然の戦死にルーキーズ総部隊長ミラールも悲しんでいた。
「死ぬのは大抵、悪い奴だけで良いのに……フレッド、かっこよかったのに死んじゃうなんて……」
フレッドの死を残念がるミラールは「いつの時代も、善人ほど早死しちゃうのが道理なのかしら……」と、フレッドが善人だったからこそ早死したのかと思い悩む。
そんなミラール同様、ルーキーズの期待の新人キリトと恋人のアスナもフレッドの戦死には衝撃を受けていた。
「フレッド……最初は、どうせ賞金稼ぎだろうからなって軽視していたけど、最後には仲間のために命を投げ打ってくれて……こんな事ならもう少し気を許してやるんだった」
気落ちするキリトの傍らでアスナが言う。
「でも、きっと……フレッドに二度も助けられたマン・ヒールズが……一番ショックを受けているのかも」
一度ならず二度までも助けられたマン・ヒールズ自身が一番フレッドの死に嘆いているのではないかと説くアスナ。
事実、マン・ヒールズが一番フレッドの死に対して落胆していた。
「あーーあ、もう……しんみりしちゃうじゃないの……」
マン・ヒールズのハルカ・ヘップバーンはフレッドの戦死で空気がどんよりする現状に気落ちしていた。
「それにしても……また、あたし達も助けられたって訳だ……こうなったら、とことんまでやるよ……新世党を、ぶっ潰してやる」
命を投げ打って自分達を救ってくれたフレッドの恩を返す為にも、新世党を必ず倒してやろうと密かに意気込むマン・ヒールズのブラック・ラヴァーズ一員であるあらら。
そんな各々がフレッドに対して様々な思想を胸中で滾らせるマン・ヒールズにアッコが歩み寄り、心配そうに声をかけてきた。
「マン・ヒールズ……大丈夫?」
「アッコちゃん……」「ああ、僕らはもう大丈夫」
自分達を救う為にフレッドが命を投げ打った現実に失意に暮れるマン・ヒールズに声をかけるアッコに、マン・ヒールズの芹沢ルリ子とデューイが空元気の面差しで返事する。
フレッドの戦死を受けて落胆する自分達を心配して様子を見に来てくれたアッコに、マン・ヒールズが総部隊長ミスティーハニーは心の内を打ち明けた。
「
フレッドを死に追いやった新世党の連中を片っ端から切り刻みたい真意を打ち明けるミスティーハニーの物騒な言動に、他のマン・ヒールズの面々も静かに同意する。
「くっ、フレッドの奴……借りを返す前に、いなくなるなんてね……」
最初シャドウの騙まし討ちからミスティーハニーを身を挺して庇ったフレッドに対して借りを返したかった卑怯番長は、その前に戦死したフレッドを非常に残念がった。
そんなフレッドの死に様々な私情を巡らせるマン・ヒールズの近場には、悲しみに暮れるマギカ組の少女達の姿があった。
まどかやほむら達の中心には、荷材に座り一人延々と泣き続ける百江なぎさの姿が見られた。
「うぅ……うっ……」
遅ければ宇宙空間に丸ごと放り出されて自爆してしまう密室に閉じ込められた自分達を救う為、我が身を犠牲にして窮地を脱してくれたフレッドの勇気と思いやりに涙を流すなぎさ。
彼女の手には、フレッドから託された彼の亡き母から譲り受けたと言われる形見の懐中時計が握り締められていた。
実はフレッドに淡い恋心を抱いていた百江なぎさ。彼女は片思い中であったフレッドの死に、誰よりも心を傷付けていたのである。
そんななぎさの悲恋を知って、まどかやほむら、マミや杏子にさやか達は掛ける言葉が見つからず、ただただ泣き崩れるなぎさを見詰めるしかできずにいた。
しかし気落ちする大勢の中にも、フレッドの死を乗り越えて前進していかなければならない決心を固める者も中にはいた。
「今、我々はフレッドの死を悲しんでいるヒマはない! 彼の為にも……先へと進んでいかねばならない!」
内閣府直轄の「極東文化交流推進局」の局長である的場甚三郎は、死没したフレッドの為にも絶えず前進していかねばならない決意を皆に説き明かす。
だが加納慎一は頼もしかったフレッドの死を受けて、やる気が失せてしまってた。
「はぁ……フレッドが死んだと聞いて、更に仕事をやる気がなくなったよ……」
フレッドの死は、更にセントラルエリアで活動中のレジスタンスである新世代型二次元人にも衝撃を与えていた。
「フレッドが死んだだって!? その話、本当か? 我々、レジスタンスを救った英雄の一人が……惜しい人を亡くしたものだ」
「しかしこれは、大変なことだぞ。彼はレジスタンスの中心人物だから……戦力ダウンは確実だろうな。この先の戦いに影響しなければいいんだが……」
エルエルフや時縞ハルトは、戦前で活躍していたフレッドの死が戦力低下に繋がると、先の戦闘への影響に懸念を張り詰めていた。
しかし戦況に対して不安がる者も居れば、不安など感じていない面子も居た。
「フレッドがいなくなってこの先、大丈夫なのか? って話をよく聞くけど……心配いらないかもよ? ミスティーハニー達マン・ヒールズがレジスタンスに加わったっていうしな!」
「ミスティーハニー達マン・ヒールズは……S級の
【弱虫ペダル】の面々は、マン・ヒールズが戦力に加算された経緯から、逆に安心する者が目立っていた。
それでも、やはり新世代型の中にはフレッドの死に衝撃を受ける者の姿が目に付いた。
「フレッドが死んだ……って、ちょっと待ってくれよ! それって、フレッドがやられるくらい新世党が強いって事だよな? 新世党がそんなに強いなんて……この先、どうなるか心配だよ」
新世代型の嵐山ブンタは、フレッドが死に追いやった新世党の実力に一抹の不安を感じずにはいられなかった。
「皆はフレッドが死んだというが……ワシにはそう思えん。彼は死んではおらん! ……いや、生きていてほしいのぅ」
薙切えりなとアリスの祖父である薙切仙左衛門は、勇猛果敢に戦ったフレッドの死を労わりつつも、彼の生存を強く信じていた。
「私達には、悲しんでいる余裕はないわ。今、やらなきゃいけない事を考えるのよ!」
最初はマギウスを忌み嫌っていた新世代型の北川イオリは、フレッドの勇敢な戦死を直視してマギウスも関係なく皆を先導する意志を見せていた。
「あのフレッドが……俺達を救ってくれた英雄だったのに……ホント、惜しい人を亡くしちまった……」
新世代型のレドは、フレッドの死に惜しい人物を亡くしたと気分が若干落ち込んでしまう。
「でも、メタルバードたちがいれば大丈夫だよな? もう新世党に占拠されたりとか……起こったりしないよな?」
フレッドが死没しても、現役続行中のメタルバードたち聖龍隊の隊士たちがいれば、もうセントラルエリアが敵に占拠されたりしないなと心配がる犬塚キューマ。
そんな様々な心境の二次元人たちの中で、数少ない一般のプロト世代である黒鳥千代子、通称チョコはフレッドの死を嘆きながらも力強く前を向こうとしていた。
「フレッドさんは、私たちの英雄でした……。みんな……いくら泣いても足りないくらい悲しんでますよ。でも! いくら悲しんでもフレッドさんが戻ってくる訳ではありません。私たちは彼の分まで、頑張らなければいけないんです!」
戦死したフレッドの犠牲の上に立って、前を向いて生きていかねばならないと力説するチョコの言動に、近場のギュービッドが腕を組みながら言った。
「無理しちゃって……フレッドが死んで悲しいのに強がって、平気なふりをしてるんだ。……まあ、強がっているのはアタイも同じなんだけどね」
チョコ同様、ギュービッドもフレッドの死に胸を締め付けられていた。
新世党に立ち向かおうとする大勢の者が、勇敢にも戦闘で命を散らしたフレッドの戦死に心を痛めていたのだった。
[危機]
皆がフレッドの死に悲観する一方で、聖龍隊総長メタルバードは指揮を執っていた。
「フレッドの死は確かに手痛い事態だ。だけど、立ち止まっている訳にもいかねえ……とにかく今は地球との通信を回復させるため妨害電波を何とかしないといけねえな」
メタルバードはセクター3にある妨害電波発生装置を何とか停止させて、外部との連絡を復旧させなければと思案を巡らせていた。
「ううむ、相手は妨害電波発生装置と、その装置を制御する敵施設……ここはコンピューターに精通しているメンバーを選考するか」
今回の任務では、妨害電波発生装置と制御装置のある施設への潜入がメインという事で、メタルバードはコンピューターに精通している上に機械には強いメンバーをセクター3の大砂漠地帯に向かわせようかと考える。
その結果、メタルバードは次のメンバーを妨害電波発生装置の破壊に向かわせようと名を言った。
「……うむ、よし。ちせ、ミズキのサイボーグコンビ、そしてコレクターズのコンピューター精通組の五人に委ねよう!」
このメタルバードの決定事項に、五人は反論せず同意する。
そしてメタルバードは五人に妨害電波発生装置が在る大砂漠地帯に進攻する様にと指令しようとした、その時。
「よし! 五人とも、発生装置の破壊は頼んだ、ぜ……って、な、なんだなんだ急に!?」
なんとメタルバードが五人に出撃命令を下そうとした矢先、突如屋内の緊急警報が鳴り響き、部屋全体が紅く染まったのだ。
なにか非常事態が発生しているとメタルバード達は、この事態を確かめるため人工知能にナビゲーションで問い掛けた。
「どうした! 何が起こってる?」
メタルバードたちが慌てて問い掛けると、俗称「修司」の人工知能は鳴り響く警報の騒音について説明し出した。
「緊急事態だ。セクター3の室温が、急上昇し始めた。原因はセクター3のメインボイラーの冷却装置が、機能していない事だ。このままでは、ステーション全体に影響が及び、大爆発を起こしかねない。このステーションには、惑星一つを消し去るほどの、自爆装置が搭載されている。このままでは約6分が限界だろう。とにかくセクター3へ向かえ。そして……ボイラー室の隣にある「制御システム室」へ向かい、冷却装置の機能回復に、全力を尽くせ。現在セクター3の施設は、ほぼ全てダウンしている。メインボイラーの異常と同様に……これは明らかに、第三者が故意に起こしたトラブルだ。今も誰かが、制御システムにハッキングしている。SO-Xの仕業である可能性が、極めて高い。奴の知能レベルなら、ありえる話だ。気をつけろ。時間に余裕はない。セクター3の「制御システム室」に急ぐんだ」
この通告を受けて、メタルバードは直ちに叫んだ。
「ちせ、ミズキ! 結、春菜、愛! 妨害電波の事はいい! お前達は急いで制御システム室に急ぐんだ! 一刻も早く冷却装置を回復させろ!」
下手すれば今自分たちが居るB.S.Lが自爆しかねない事態を避ける為、メタルバードは五人に冷却システムを作動させる制御システム室へ急ぐように通達する。
メタルバードからの指令を受けて、五人は即座に行動を開始。
まずは有無を言わず、犬牟田宝火が操作する転送装置に乗り込んでセクター3の出入り口付近へと転送される。
そして其処から五人は全速力でメインボイラー室へと向かった。だが最終目的地はボイラー室ではなく、その隣の制御システム室だ。
ちせとミズキは機械の翼を展開して滑空移動し、その後ろをコレクターズの三人が電子エネルギーで発生させた羽で飛行して前の二人を追尾する。
こうして五人はB.S.Lの命運を賭けて、急きょメインボイラー制御システム室へと特攻していくのだった。
五人がメインボイラー室に急いでいた頃、新世党が拠点にしているVIPエリアでも同様に緊急警報が鳴り響いていた。
「わっ、わわわ……なんだなんだ!? このアラームは……!」
「一体全体、何が起きたんだ?」
非常に動揺する落ちぶれた名士、三枝一族の面々が慌てふためいていると其処に幹部であり総統の側近であるスカー・フェイスが騒然となる一同に呼びかけた。
「慌てるな、同胞よ! 落ち着くのだ! この問題も、どうせ聖龍隊が片付けてくれるだろう」
「だ、だが! いつも聖龍隊が上手くいくとは限らないぞ! もし失敗したら、どうするんだ!」
B.S.L内部における寄生生命体Xが起こす有事の解決に聖龍隊を動かせる策に対して、セレディ・クライスラーは聖龍隊といえど毎回上手く事を運べない可能性があると示唆する。
そんなセレディを含む、現場の同士諸君にスカー・フェイスは言い切った。
「落ち着くのだ! 聖龍隊は聖龍隊で活動しているゆえ、それに便乗して我らも奴らを動かしておればよいのだ!」
聖龍隊にB.S.Lでの有事を解決させる策を、あくまで実行させていくスカー・フェイス。
すると其処に、新世党の総統であるキャップ・ド・レッドが姿を現した。
「皆の諸君、慌てるな!」「きゃ、キャップ・ド・レッド総帥……」
姿を見せたキャップ・ド・レッドを目視して新世党の小野崎功は落ち着きを取り戻す。
そしてキャップ・ド・レッドは混乱する現場の皆々を落ち着かせるように言い聞かせた。
「此方が入手した情報では……現在、聖龍隊の面々が冷却装置を起動させる為に制御システム室へと向かっている。彼女達に任せれば、万事大丈夫だろう」
「し、しかし! もしも間に合わなかったら……」
小心者の小野崎功がキャップ・ド・レッドに問い詰めると、キャップ・ド・レッドは寡黙な態度で言った。
「聖龍隊も間に合わなければ自分たちが危険な目に遭うと理解している……ここは高みの見物といこうではないか」
緊急事態にも関わらず、堂々とした姿勢を崩さず寡黙な態度を示し続けるキャップ・ド・レッドの威光に新世党の面々は注目するばかりだった。
一方、新世党が根城にしているVIPエリアより一つ下の階層のセントラルエリアでも、鳴り響く警告アラームと赤色灯の発光で二次元人の多くが混乱していた。
「きゃーー、一体なんなのデース?」「ううぅ……怖いよぉ……」
新世代型のアリス・カータレットと猪熊陽子は鳴り響くアラームと紅く染まる部屋という緊急事態を表す環境に怯えていた。
「全員、うろたえるな! 今、ちせやコレクターズの連中が現場に向かっている! 絶対、大丈夫だから落ち着け!」
メタルバードが混乱する状況を、どうにか宥めようと言い聞かせていくが、共有感知によるテレパシーで自分達が居るB.S.Lが自爆するかもしれない現状を知ってしまっている新世代型の混乱は静まる事はなかった。
「落ち着けって言ったって! 下手したら、このB.S.Lが吹き飛ぶんだぞ! 冷静でいられるか!!」
事態を収拾しようとするメタルバードに、共有感知で事態の詳細を把握してしまう新世代型の真鍋義久がメタルバードに訴えかける。
そんな事実を知ってしまっている故に混乱するセントラルエリアの現場を取り仕切るメタルバードは、制御システム室に向かった五人の安否を気にしつつも彼女達の任務成功を案じた。
(……ちせ、ミズキ……それに結に春菜に愛……何とか間に合ってくれ!)
制限時間内に冷却装置を作動させる為に向かった五人を案ずるメタルバードだった。
その頃、原生する宇宙生物に擬態したXの猛攻を掻い潜りながら邁進する五人は、ようやくセクター3の最深部であるメインボイラー室へと到着していた。
メインボイラー室は、既に侵入してきた何者か、あるいは原生生物に擬態したXによるものなのか酷く荒れており、所々破損している壁や機材、床などが垣間見れた。そして当然、メインボイラーの冷却装置は作動しておらず、このままではオーバーヒートして自爆装置を作動させてしまう結果に至ってしまう。
五人はメインボイラー室で猛威を振るっている原生生物に擬態したXの猛攻をかわしながら、一気に隣室であるメインボイラー制御システムへと特攻する。
急ぎ隣室のメインボイラー制御システム室に駆け込んだ五人は、そこでまず制御システムにハッキングしている人物を直視する。
その人物は、初老の科学者らしき人物であり、科学者は故意に制御システムにハッキングして冷却装置を停止させていた。
「あ、あなたは誰!? ハッキングを停止しなさい!」
ミズキが科学者を制止させようと呼びかけるが、科学者は聞く耳を持たず敢えて無視して機械の操作を黙々と行い続ける。
「やめなさいったら!」
ミズキが遂に痺れを切らして科学者を押しのけて強引に端末の操作を停めさせる。
すると突然、科学者の姿が一変して、初老の科学者がXの集合体であるコアXに変化したのだ。
「や、やっぱり……!」「Xの擬態だったのね!」
制御システムにハッキングして故意に冷却装置を停止に追い込んでいた存在の正体がXによる擬態だと知って、驚愕するコレクターアイとコレクターユイ。
そして正体を現したコアXは案の定、襲い掛かってきた。
これにちせとミズキの二人は、コアXの襲撃を一手に負って、制御端末からコアXを遠退けた。
「今のうちに……! 冷却装置を復旧させて!」
ちせは仲間であるコレクターズに、制御端末にハッキングして冷却装置の復旧を進めるよう進言する。
これにコレクターズは急いで制御端末の前まで駆け寄ると、システムにハッキングして冷却装置の回復に全神経を注ぎ込む。
その間、脅威となるコアXをちせとミズキの両名が果敢に攻撃していた。
しかし相手であるコアXは通常のものよりも外殻が頑丈であり、弱点は光線を放つ際に開口される瞳孔の様な発射口のみであった。ちせとミズキは狙いを定めて、発射口が開口した瞬間を見定めて反撃のレーザーをお見舞いする。
ちせとミズキがコアXの相手をしている間、コレクターズの三人は一生懸命に冷却装置の回復に務めた。
そして度重なる交戦を繰り返して、ちせとミズキの両名はようやくコアXを撃破する事に成功する。
それと同じく、コレクターズの三人も冷却装置の作動に成功し、冷却装置は無事に作動を開始した。
冷却装置が無事に作動した事により、急上昇していたセクター3の室温が平常通りに戻り、B.S.Lに搭載されている自爆装置発動も回避できた。
と、ここで一気に力が抜けたのか、コレクターズの三人はその場に座り込んでしまった。そんな三人を横目に、ちせとミズキの両者も爆破を回避できた事に安堵しながらも緊張状態から解放された。
五人は早速、セントラルエリアに帰還しようと帰路に着いた。
その頃、無事に冷却装置が作動した事で自爆を回避できた事態に大いに喜びあうセントラルエリアの面々。
そんな中で、メタルバードは安堵に浸りながらも次に急いで取り掛からなければならない任務である妨害電波発生装置の解除に思想を過ぎらせた。
「さて、無事に冷却装置が作動して自爆装置もナリを潜めた。次は発生装置の解除だが……ちせ達が帰ってくるのを待つとするか……?」
最初に任務を与えようとした、ちせたち五人の帰還を待った方が良いかと考えるメタルバードに、ミスティーハニーが切り出した。
「メタルバード! こうしている間も時間がもったいないわ! 私が妨害電波の装置を止めにいくわ!」
「ミスティーハニー……!」
「どうしてもジッとしてられないのよ……少しでも、少しでいいの。新世党の連中に一矢報いらないと気が済まないの!」
自分達を身を挺して守ってくれたフレッドへの恩を少しでも返す為、そしてそのフレッドの仇を少しでも晴らす為、ミスティーハニーは出陣する気でいた。そんなミスティーハニーの意志を感じ入るメタルバードに、新たな立候補者が名乗りを挙げた。
「聖羅が行くなら私も行くわ!」
「キューティーハニー……分かった、久方ぶりの姉妹での任務だ。気を抜くなよ」
メタルバードは妹であるミスティーハニーの出撃に自らも出向くと名乗りを挙げるキューティーハニーの言い分に同意した。
「でも、まずは機械に滅法強い奴も同行した方が良いだろう……オレは指揮として残らなきゃならねえし……よし、マーキュリー、コンピューターに強いお前も同席してくれ」
「分かったわ、バーンズ」
メタルバードは発生装置の解除に必要なハッキング要因として、コンピューターに精通しているセーラーマーキュリーを向かわせる事に。
「これだけじゃ心もとない……もしかしたら変身能力が役に立つかもしれんし、ミラール一緒に向かってくれ」
「了解っ」
更にメタルバードは、意外にも応用の幅が利く変身能力を持っているミラールにも同席するよう言い渡した。
「あとはそうだな……ワイルドタイガー、バーナビー、そして楓! お前達も発信装置の破壊に一役買ってくれねえか?」
「おうっ、待ってました!」
「此方も久方ぶりの虎徹さんとのツーマンセル。腕が鳴りますね」
「私もいけるのね! フレッドさんの仇を少しでも晴らしてやらないと……!」
NEXTヒーローでも黄金コンビであるワイルドタイガーとバーナビー、そしてタイガーの娘である楓も任務に参堂する事となった。
「ふぅ、キューティーハニーとミスティーハニーの姉妹コンビ。そしてタイガーとバーナビーの黄金コンビ……。なんだか、私やマーキュリー、それに楓がハブられちゃっているみたいね」
名物コンビが目白押しする現状を前にして、ミラールは自分たちが蚊帳の外にいるみたいだなと零す。
こうしてキューティーハニー、ミスティーハニー、ミラール、セーラーマーキュリー、ワイルドタイガー、バーナビー、鏑木楓の七人が妨害電波発生装置の破壊に向かう事となった。
「セクター3の大砂漠、その地表には妨害電波発信機が設置されています。妨害電波発信機からのびるケーブルの向きに進んでいけば、敵施設に辿り着くでしょう。敵施設に近い発信機ほどエネルギーレベルが高くなっています。それを目安にすると良いでしょう」
任務に向かう一行が転送装置に乗り込む前に、犬牟田が助言を進言する。
そして「皆さん、頑張って下さい」の一言で、キューティーハニー達を転送装置でセクター3の砂漠地帯に送り込んだ。
キューティーハニー達が転送装置で送られた直後、入れ替わるようにちせ達も転送装置で帰還してきた。
「おお、ちせ、みんな無事に帰ってこられたか」
「何とかね、バーンズ」
出迎えるメタルバードに返事するちせに続いて、帰還したミズキもメタルバードに言った。
「まさかオペレーターに擬態していた、Xがトラブルの元だったとは……」
そんな彼女達にメタルバードは言う。
「まあ、どちらにしろお疲れさん! 入れ違い様に、お前達の代わりにキューティーハニー達が妨害電波発生装置の破壊に向かってくれた。お前達は此処でしばらく休憩してろ」
メタルバードは五人にそう言い伝えると、任務の終了と報告を伝えるべく人工知能との接続を試みた。
人工知能、俗称「修司」は通信に出て、メタルバード達にトラブルの終息と、自分なりの見解を語り出した。
「オペレーターに擬態したXが起こしたトラブルだったようだな。Xが、宿主の知識や記憶までコピーするという事が、はっきりと裏付けられたことになる。実に驚異的な生物だ。本部も、そうとう驚いている。しかし聖龍隊、少し妙に思わないか? 今回のトラブルで、もしステーションが爆発すれば……ここのXたちは全滅してしまう。もちろんSO-Xもだ。知的な生命体にしては、あまりにも自虐的な行為だ。考えられることは……奴らは君達を倒したいのだ。D-ワクチンの効能を受け継いだ新たな天敵、聖龍隊と赤塚組を恐れているのだ。これは仮説だ。疑問の残る行為であることに変わりはない。おそらく……Xの生存本能が借り物の知性に勝った結果だ。これが私の見解だ。いずれにしろ気をつけろ。Xは本能的に、寄生または寄生しようとした生物の生存を許さない」
この人工知能からの話を聞いて、メタルバードも少なからず同意していた。
Xは本能的に自分たちを驚異に思っていることに。そして、その為なら自虐的な行為も辞さない邪悪な知能を滾らせている事に。
[砂漠地帯を抜けて]
セクター3に設けられた大砂漠地帯を再現されたフィールドにて。
キューティーハニー達は砂漠地帯に設置された連結装置を確認する。
「これが犬牟田くんが言っていた装置ね……ケーブルの向きに沿って進めば良かったのよね。この砂嵐でかなり視界が悪くなっているわ。道を見失うと命取りね……慎重に進みましょう」
ミスティーハニーが設けられた数多くの妨害電波発生装置を視認して、慎重に装置の制御端末を探索しようと進言する。
「これが発生装置か……一思いにぶっ壊しまった方が早いんじゃないか?」
「それはいけないわ。こういった装置はまず、完全に停止させてからでないと、壊しても妨害電波を流し続ける可能性があるわ」
「……だ、そうですよ、虎徹さん」
率直に装置そのものを破壊した方が得策ではないかと説くワイルドタイガーに、セーラーマーキュリーがまず装置の完全停止が優先であると説き返すと、それにバーナビーも呆れながら言った。
それから一行は、装置の制御端末を探し出そうと、装置と装置を繋ぐケーブルに沿って移動し始めた。
しばらく砂嵐の中を進んでいくと、制御端末があると思われる妨害電波発生装置の屋内に通じる扉を発見。
しかし……「この扉……何の反応もないわね。もしかしたら近くに何らかの装置があるのかもしれない。調べてみましょう」
扉は外部からは開かず、キューティーハニー達は別の発生装置を探し出そうと再び歩き出した。
風塵吹きすさぶ砂嵐の中、一行は果敢にも歩みを止めず突き進んでいた。
と、その時。砂嵐の中を翼のある飛行物体が飛んできて、突然鞭のような武器で前進していたキューティーハニーを弾き飛ばした。
「うわっ!」「姉さん!」
砂嵐の中からの奇襲を受けて弾き飛ばされるキューティーハニーを目の当たりにし、妹のミスティーハニーが声を上げる。
すると風塵が吹き荒ぶ砂嵐の中から、奇襲を仕掛けてきた輩が一行の前に立ちはだかった。
「よく来たわね、あなた達……」「! あなたは……!」
皆の目の前に現れたのは、新世党が一人、鳳凰丸礼であった。目の前に立ち塞がる鳳凰丸礼を前に、ミスティーハニーは目付きを鋭くさせる。
「ここから先は通さないよ」
得物である鞭を振りかざして行く手を塞ぐ鳳凰丸礼に対し、ミスティーハニーはハニーフルーレを翳して言い切った。
「なら、力ずくで通るまでよ!」
すると鳳凰丸礼は清々しい面差しでミスティーハニーたち抵抗意識を持つ面々に向かって言った。
「あら、勇ましい事。嫌いじゃないけどね、そういうの。だけど……」
鳳凰丸礼の意味深な言動と彼女の視線の先に、ミスティーハニーたちは先ほど礼に弾き飛ばされたキューティーハニーの緊急事態にようやく気付く。
なんとキューティーハニーは礼に弾き飛ばされた際、誤って流砂に入り込んでしまってた。
「あら大変。お砂に埋まっちゃうわよ」
「姉さん!」「キューティーハニー!」
嘲笑を浮かべる鳳凰丸礼に反し、ミスティーハニーやセーラーマーキュリーは砂に埋もれるキューティーハニーを引き上げようと、皆で一丸となって手を繋ぎ引き上げ始める。
だがキューティーハニーを飲み込む流砂の勢いは激しく、引き上げる事は容易ではなかった。
「くっ、ダメだ……! 勢いが激しくて、引き上げられない!」
5分間だけ常人の100倍の力を出せるハンドレッドパワーを持つバーナビーでも、キューティーハニーを引き上げる事はできなかった。
次第にキューティーハニーを流砂は飲み込み始め、彼女の手を掴む他の6人も流砂は容赦なく飲み込んでいく。
「ミスティーハニー! 手を放してっ」
最後部で手を掴み、引き上げようとするミスティーハニーにキューティーハニーは手を離すよう言い渡す。
その間もキューティーハニーと、彼女を救い出そうと手を掴んだ5人の身体は流砂に飲み込まれる。
今や流砂に飲み込まれていないのは、ミスティーハニーだけ。そんな彼女にワイルドタイガーが言う。
「そうだぜ、ミスティーハニー……きみ一人でも残って、あいつを倒してくれ!」
目の前の敵である鳳凰丸礼を倒してくれるようミスティーハニーに言い渡すワイルドタイガー。そんな彼女達を目前に、鳳凰丸礼は冷然とミスティーハニーに声をかける。
「ほうら、お友達もそう言ってる事だし……早く手を離して、こっちにかかっておいで?」
それでも手を離さないミスティーハニーに、鳳凰丸礼は背後から鞭を打ち付けて挑発する。
「ほうらミスティーハニー、私を倒すんでしょ?」
決して手を離さないミスティーハニーに挑発をかける鳳凰丸礼。するとミスティーハニーは、皆の手を引きながら鳳凰丸礼に言い返した。
「ええ、望み通り倒してやるわ! みんなを助けた後にね!」
「ミスティーハニー! 手を離せ!」
もはや完全に足元が砂に飲み込まれて、身動きが出来なくなった一堂の手を離さないミスティーハニーにワイルドタイガーが再度声をかける。
するとミスティーハニーは毅然とした面差しで皆に言い放った。
「黙って! 私はもう目の前で、仲間がやられるのは見たくないのよっ!」
自分たちを守る為、自らを犠牲にしたフレッドの死を目撃したミスティーハニーは、もう自分の目の前で仲間が死ぬのを見るのは堪らない心境だったのだ。
そんなミスティーハニーの思いを知って、鳳凰丸礼は呆れてしまう。
「何よそれ、しらけちゃうわね。じゃ、もういいわ。逝っちゃいな!」
そう言うと鳳凰丸礼は、ミスティーハニーに再度鞭で攻撃して、彼女達を完全に流砂に押し出した。
鳳凰丸礼の攻撃を受けて、ミスティーハニーたちは全員、流砂に完全に飲み込まれてしまい、礼の目の前から姿を消してしまった。
そして妨害電波発生装置の解除に向かった一行が流砂に飲み込まれて数分後。
「……ハニー……ミスティーハニー!」
皆の声に導かれて、ミスティーハニーが目を覚ました。
「こ、ここは……」
目を覚ましたミスティーハニーが問うと、ワイルドタイガーが皆に代わって答えた。
「運が良かったよ。砂漠の下の地盤層に出たようだ」
幸運にも、一行は流砂に飲み込まれながらも砂漠の下にある地盤層へと抜け出せていた。
そして更に幸運な事に、地盤層は発生装置の内部に通じると思われる道へと繋がっていた。
「もしかしたら、この先……奴らの施設まで、繋がっているかもしれません」
バーナビーが敵施設への潜入が可能かもしれないと説くと、ミスティーハニーとワイルドタイガーが挙って言った。
「ともかく助かったって訳ね」
「奴ら、俺達が砂に飲み込まれた思って、油断してくれたらいいけどな」
どうにか助かった現状に安堵するミスティーハニーに、敵方が油断してくれたらと願望を呟くワイルドタイガー。
すると此処でワイルドタイガーが、普段あまり共に任務を行わないミスティーハニーの一面を指摘する。
「しかし知らなかったよ。ミスティーハニーがあんなに仲間思いだったなんて」
これに対しミスティーハニーは、口元を笑ませて反論した。
「フレッドにこれ以上、借りを増やしたくなかっただけよ」
死んだフレッドの想いに応えるためと論ずるミスティーハニーの言葉に、現場のリーダーであるキューティーハニーが皆に言った。
「ええ、フレッドの為にもやり遂げましょう。行くわよ!」
一行はキューティーハニーを先頭に行動を開始した。
「ここは基地の中枢部って感じね……此処で上手くやれば、妨害電波を止められるかもしれないわ」
皆が進行していくと、そこは妨害電波発生装置を操作する基地の中枢部らしく、ミラールは此処で上手く端末を操作すれば妨害電波を停止させられるのではないかと語る。
そこで早速、近くの操作端末に駆け寄り、コンピューターに精通しているセーラーマーキュリーがハッキングして操作してみると、一部ではあったが発生装置を停止させる事に成功した。
「やった! 成功したわね、みんな! 私の言ったとおり! この装置……上のフロアと繋がっているみたい、行ってみましょう!」
妨害電波発生装置の一部を停止できた結果に満足したミラールは、制御端末のケーブルが繋がっている上の階層にも向かおうと提案する。
ミラールの提案どおり、そして他の制御端末からも発生装置を停止させるべく一行は上の階層へと通じる道を探し出す。
すると一行は、上の階層に向かえるエレベーターを発見し、それに乗り込む。
「移動するフロアを選択してください」
コンピューター音声に誘導されるがまま、キューティーハニーたちは上の別階層へと進んだ。
しかし、このエレベーターでの移動が敵に発見されてしまう結果に繋がってしまった。
「ぎょっ!? 聖龍隊! 生きているではないか。礼のやつめ、先走った事をしておいて、しくじったと言うわけだな!」
妨害電波発生装置の制御施設の統括を一任されている新世党の幹部が、先ほど鳳凰丸礼からの報告で倒されていた筈の聖龍隊が施設内を徘徊している事態に立腹していると、有線機から新世党のナンバー2であるスカー・フェイスが立腹する幹部に言った。
「奴らの悪運が強かったという事であろう。礼は責められんよ」
あくまで聖龍隊の悪運が強かっただけで、鳳凰丸礼を責められないと告げるスカー・フェイスは、更に通告した。
「ポロック・三枝。お前がこの施設で、カタをつければ良いだけの話だ。頼んだぞ」
スカー・フェイスは施設内で聖龍隊を倒せば良いだけだと通告すると、そのまま通信を切った。
すると通告された幹部は不敵な面構えで呟いて、不敵な笑みを浮かべた。
「キャップ・ド・レッドに気に入られて、片腕気取りか。だが、いきがっていられるのも今の内よ。きょほほほ……」
[遭遇]
その頃、新世党に抵抗する面々が集うセントラルエリアでは。
例の人工知能が、通達してきた。
「聖龍隊、赤塚組。居住デッキで生体反応が確認された。生存者である可能性が高い。あのオペレーターも最近まで生き延びていたようだ。かなり期待できる。保護に向かってくれ」
先の、冷却装置を停止させたオペレーターに擬態したX。そのオペレーターが最近まで生き延びていた事から、B.S.Lの研究者とその家族が居住するデッキでの生体反応が生存者の可能性が高いと示唆する人工知能の通達に、聖龍隊と赤塚組は早速動いた。
「生存者か。ホントなら助けに行かないとな」
「そうだな。ここまでB.S.Lの研究者は、ほとんどXの餌食か新世党に殲滅されたかで生存が確認されてないが、居住デッキに生体反応があるんなら行って確かめてみないと」
赤塚組の頭領である大将と聖龍隊総長のメタルバードは、人工知能が確認した生体反応が本当なら確かめに向かわないといけない事実を確認し合う。
すると生存者の可能性がある生体反応の確認と聞いた大将は、メタルバードに言った。
「バーンズ、生存者の確認なら俺たちだけで十分だ。それに、居住デッキは丁度このセントラルエリアの真下。近いし、大した任務じゃないだろうしな」
この大将の申し出に、メタルバードも生存者の確認だけなら赤塚組幹部衆だけでも大丈夫だろうと思い、大将たちに一件を委ねた。
「そうか、分かった。それじゃ、お前らに任せるわ。生存者が見つかるといいな」
大将たち赤塚組にメタルバードが言うと、アッコも幼馴染である大将たちに声をかける。
「大将、それにみんな、生存者の保護といっても油断しないで気をつけてね」
「おうッ、分かってるってアッコ!」
大将は自分たちを気にかけてくれるアッコに元気よく返事した。
そして大将たち赤塚組は、エレベーターで一つ下の階層である居住デッキまで降りて生体反応の確認に向かった。
生体反応が確認された付近まで到着した大将たち。
しかし其処は何重にもゲートが閉ざされたエリアだった。
「このゲートの奥に生体反応があったらしいわ」
「なるほど、厳重な密閉状態だからXの侵攻を食い止められている訳か」
赤塚組のミズキと大将は、厳重なゲートに守られている為に寄生生命体Xの侵攻を阻む結果に繋がったのだと推測する。
そして赤塚組は、ゲートを操作する端末にハッキングして開平するが、肝心の生体反応が示された空間にまでは辿り着けなかった。
「この先は内側からじゃないと開けられないみたいでヤンス」
「どうにか別の道を探して、入り込まないと生存者のところまで行けないだわさ」
赤塚組のギョロとチカ子が別の道を探し出さないと進めない現状を述べると、大将は早速辺りを見渡して進行できる通路を探し回る。
大将に続き、他の面々も別通路を探し出そうと色々探索してみた。すると下の階層に人一人入り込める通気口を発見した。
「此処なら何とか入り込めるかな……」
探し出した通気口から、上の立ち入れなかった空間に進行できないかと大将が単身潜入する。
そして通気口に入った大将は、内部の梯子を上り、一人で上へ上へと駆け上る。
そうして大将は、上の階層に通じる換気扇をこじ開けて、立ち入る事ができなかったエリアへと突入する事ができた。
其処は何かの生物を飼育する密室に通じる操作室だった。
大将はその操作室の、端末にハッキングして密室状態である飼育部屋の扉のロックを解除した。
するとロックが解除された事で、操作盤のある部屋を区切っていたゲートが開くと同時に、密室状態だった飼育部屋の扉も開平され、中から飼育されていた生物が飛び出てきた。
「な、なんだ、このサルと鳥?」
サルのような三匹の生物と、親子と思われる鳥のような生物二羽が飼育部屋から出てきた事で戸惑う大将。
するとサルと鳥のような生物は、まるで飼育部屋から出してもらった事に礼を述べる様に、こぞって大将に頭を下げた。
そして大将に一礼すると、サルと鳥のような生物は全速力でその場から去っていってしまった。
「な、なんだったんだ、今のは……」
無言の礼を述べられ、そのまま立ち去ってしまった生物達を目撃して唖然とする大将。
と、そこに他の赤塚組が駆けつけて大将に声をかける。
「大将!」「どうだった? 生存者はいたか?」
仲間達に訊ねられた大将は、正直に自分が進入した操作室の飼育部屋から見知らぬ生物達が出てきて、そのまま逃げ去ってしまった経緯を仲間達に伝えた。
大将に生体反応が見知らぬ動物達であった事を伝えられた赤塚組の仲間達は、大将同様に唖然としてしまう。
「そうか……生存者じゃなかったのか」
「残念ね。生き残りがいると思ったんだけど……」
赤塚組の市川一太郎とレイコ夫妻が残念そうに呟く中、大将は仲間達に言った。
「残念だったが仕方がねえ。とりあえず戻って、人工知能やアッコたちに生体反応の正体を伝えようぜ」
大将は取り敢えずセントラルエリアに帰還して、生体反応を見つけた人工知能やアッコたちに報告しようと皆に伝える。これを受けて赤塚組は大人しく拠点に帰還する事にした。
セントラルエリアに帰還した大将たち赤塚組に、アッコたち聖龍隊が出迎えた。
「大将、お帰り! どうだった? 生存者だったの?」
アッコが訊ねると、大将たちは残念そうに申し返した。
「アッコ、それが……生体反応は人間じゃなかったんだ」
「え?」
「大将の目撃談だと……なんだかサルと鳥のような生き物だったみたいで」
「サルと、鳥?」
ミズキの言葉にセーラーマーズが反応すると、大将は詳細を述べた。
「そうなんだ。まあ、その生き物はスグにどっかに行っちまったんだけどな」
「サルと、鳥……まさか……!」
大将の目撃談を聞いて、アッコは目の色を変えた。
「どうしたんだ、アッコ。そんな目の色を変えて……」
「い、いえ……」
アッコはそのまま、大将たち赤塚組に彼らが目撃した生物の詳細を語った。
エテコーンとダチョラ、赤塚組が出会った生物の名前だ。
意外にも高い知能を持つ彼らと聖龍HEADは、過去に出会った事がある。
奇妙な偶然により、彼らはB.S.Lにて再会したのだ。
彼らはHEADに大切なヒントを与えた事がある。HEAD自身が気付けなかった能力を引き出すヒントを。
しかし、その恩人達は逃げて行ってしまった。
無事でいてくれることを、HEADは願った……。
アッコたち聖龍HEADの話を聞いて、大将たち赤塚組もHEADと顔見知りであるそのエテコーンとダチョラの無事を願った。
そして聖龍隊に報告した赤塚組は、続いて人工知能にも生体反応の正体を報告した。
「そうか、生存者ではなかったか。非常に残念な事ではあるが……ステーションの職員達の全滅は決定的となった。予想はしていたが、望みは絶たれた。あのオペレーターにXが擬態したのは、彼の知識が必要だったからに過ぎない。通常の生身の人間の身体は……Xや新世党と戦うには余りにも、ひ弱過ぎる。他の職員達は、Xの餌として寄生されたか、新世党によって殲滅させられたのか、みんな犠牲になったのだろう」
人工知能、俗称「修司」はステーション内の職員の全滅が決定的になった事実と、彼らがXと新世党によって滅ぼされた顛末を語った。
この話を聞いて、聖龍隊や赤塚組は改めてXの驚異と新世党の惨さを痛感した。
そして、そのXは確実に進化していた。今や赤塚組や新世代型二次元人の装備では、歯が立たない物も現れ始めていた。
何より聖龍隊の能力でも倒しにくい個体も現れ始めていた事実に、当人達はまだ気付いていない。
[発生装置の停止]
赤塚組が生体反応の正体を報告していたその頃、キューティーハニー達は通信妨害装置の中枢部に突入していた。
厄介な事に、妨害電波発生装置の制御パネルは強力なレーザー包囲網で護られており、レーザーをまずは停止させなければ発生装置の制御パネルにまで到達する事はできない状況だった。
この事態にキューティーハニー達は、レーザーを直射する各装置の向きを回転させて、レーザーの向きを変える事で制御パネルに辿り着く方法を施行する。
しかし何重にも張り巡らされたレーザーの向きを変えるのは至難の業で、一種のパズルみたいであった。
「……ふぅ、エネルギー動力炉から直射されるレーザーの向きを変えるのもしんどいわね」
「そうですね。こう何重にもレーザーが張り巡らされたんじゃ、先に進むのも一苦労ですね」
レーザー発射装置の向きを変えていくキューティーハニーと鏑木楓は、何重にも張り巡らされたレーザーの直射向きを変えていく作業に苦労を感じていた。
と、ここで作業していたミラールが愚痴を零す。
「あ~~あ、アッコおねえちゃんが居れば……コンパクトがあればレーザーの向きを曲げて悠々と目的地に辿り着けるんだけどな」
このミラールの発言にバーナビーが申し付けた。
「ミラール、あなたの鏡魔法ではレーザーの向きを変える事はできないんですか?」
バーナビーはアッコ同様鏡魔法が使えるミラールに、アッコができる芸当ができないのかと訊ねる。するとミラールは、わざわざ発生装置の位置を変えてレーザーの向きを変えていく作業に草臥れながら返事した。
「私の鏡魔法には、そんな器用な真似はできないわよ。私は基本、変身魔法や相手の戦法を少しだけ真似る能力しかないんだって」
「まぁ、鏡魔法にも色々あるみたいだし、それ以上言うのはやめてやろうぜ、バニーちゃん」
ミラールの能力の限界にワイルドタイガーがそれ以上の指摘をするのは野暮だとバーナビーに告げる。
そして七人は協力しながら、防衛装置であるレーザーの向きを変える事に成功し、妨害電波の制御装置の前に到達する事ができた。
「ノースブロックの妨害電波を停止します」
妨害電波装置の制御パネルを操作して、まず一つ目の妨害電波を停止させる事に成功する一行。
「これで装置を一つ止められたみたいだけど……でも、妨害電波発生装置は他にもいくつかあるみたい。別の部屋も探してみましょう」
北の区域の妨害電波発生装置を停止できた結果に、ミラールが別室も探索して他の発生装置も停止させようと提案する。
ミラールの提案どおり、一行は次の区域を目指して移動を開始した。
道中エレベーターも使って別区域に移動した一行は、東側の区域に潜入する事ができた。
そこでも先ほどの北の区域同様に、エネルギー動力炉から直結しているレーザー発生装置による防衛網が張り巡らされていた。
キューティーハニー達は、文句も言わずレーザーの向きを変える作業を黙々と進める。
「はぁ、それにしたって……どのレーザー装置を、どの向きに変えれば正しいのか訳が分からなくなっちまうぜ」
「ちょっとしたパズルみたいですからね。頭を使わないと先には進めないですし、文句を言うのはやめましょう」
しかしパズルみたいにレーザー発生装置の向きや位置を変える作業に愚痴を零してしまうワイルドタイガーに、バーナビーが文句を言わず作業にあたる様指示する。
そして皆の苦労と連携の末、どうにか妨害電波の制御装置の前まで無事に辿り着けた。
「イーストブロックの妨害電波を停止します」
「イーストブロックの装置は、これでOKね。つぎ行きましょっ」
東区域の妨害電波発生装置を停止できた一行は、ミラールの進言どおり別の区域へと移動する。
「北に東とくれば……あとは南と西と考えていいわね」
「そうね。まずは南の方角に向かってみましょう!」
残りは南と西と考えたセーラーマーキュリーの考えに同意するキューティーハニーは、まず南の方角へ進むことを皆に進言した。
そして南の区域。
ここでは前々の区域とは格段にレベルが上昇したレーザーが幾段にも張り巡らされていた。
一行はまたしても、いや今まで以上に難易度が上がったレーザーによる防衛装置の向きと位置を変えて、レーザーの向きを変更していった。
「はぁ、はぁ……防衛装置の数も、今までより多いし、張られてるレーザーも凄いぜ……」
「これほど警備を厳重にしているという事は、それだけ妨害電波を停止させられたくないって事なんでしょう」
レーザーを直射する防衛装置の数の多さに悪戦苦闘するワイルドタイガーに、バーナビーは如何に敵が妨害電波を停止させられたくないのかを説く。
そしてようやく南区域の妨害電波装置の制御装置に辿り着けた。
「サウスブロックの妨害電波を停止します」
「サウスブロックはこれでオッケーね。残りは一つ、気を引き締めていきましょう!」
南区域の妨害電波を停止させられたミラールは、意気込みを入れると皆に最後の妨害電波装置へ向かおうと進言する。
そして一行は最後の区域、西の区域へと進行を開始した。
最後の関門である西の区域、その防衛システムは今までの非ではないほどの強靭なレーザー網が張り巡らされており、おそらく最高難易度のレベルだと思われた。
「あ~~あ、最後のブロックは思ってた通り最大級の難しさだよ。俺様、見ただけでも分かっちゃうもん」
「おじさん、文句を言っても始まらないでしょ。ここは一つずつ、慎重に向きや位置を変えて少しずつレーザーの向きを変えていくしか方法がありませんよ」
最後の区域に張り巡らされたレーザーでの防衛網の難しさを痛感するワイルドタイガーに、バーナビーは慎重に少しずつ向きを変えていくしかないと伝える。
そして一同は右に左に、時には横に斜めへとレーザー発生装置の向きや位置を変えて、レーザー防衛網を掻い潜ろうと必死になって考えていく。
そしてそれから十分後。一行は苦労の末、何とか最後の妨害電波発生装置の制御パネルにまで到着した。
「ウエストブロックの妨害電波を停止します」
「これでウエストブロックの妨害電波発生装置は止まったわね」
西区域の妨害電波発生装置の停止を確認したミラールは、早速通信が回復したかどうか確認を入れようとした。
「これでよしっと……これで妨害電波はでなくなったかな?」
ミラールは自身の通信機で、セントラルエリアのアッコに通話を試みてみた。
「セントラルエリア、アッコおねえちゃんどう? 通信は使えるように……」
と、ミラールがアッコに通信を入れようとした瞬間、謎の通信が割り込んできて、謎の声が通信機から流れてきた。
「きょほほほ! 皆さん、よくもやってくれましたね。よろしい……最上階へご案内しましょう。中央エレベーターから上がって来なさい……この私が直々にお相手してあげましょう、きょぉぉ~~ほっほっほ~~!」
怪しげで甲高い独特の笑い声をする相手に、ミラールの表情は険しくなった。
「今のは此処のボスみたいね。キューティーハニー、倒しに行きましょうよ!」
謎の声を、此処の施設を統括しているボスだと判断するミラールに言われ、キューティーハニーは早速ボスの元へと向かう決心を固めた。これには目の前でフレッドを亡くしたミスティーハニーやワイルドタイガーたちも同じだった。
そして一行は中央エレベーターで最上階の三階へと進攻した。
[ポロック・三枝]
キューティーハニー/ミスティーハニー/セーラーマーキュリー/ミラール/ワイルドタイガー/バーナビー/鏑木楓の七人がエレベーターで最上階の三階へと到達すると、そこには実に転がりやすそうな丸い体型をしている声楽家姿の二次元人が待ち受けていた。
「きょ~~ほっほ!」
人をおちょくるような馬鹿丁寧かつ、ひょうきんな口調から発せられる独特な笑い方で出迎えるその二次元人は目の前の聖龍隊に向かって言い放った。
「死にぞこないの皆様、ようこそ!」
更に二次元人は、先ほど流砂に飲み込まれた一行を皮肉るかのように語り始めた。
「いや、しかし……流砂に飲み込まれたのに生きているとは、悪運の強い方々ですな。いや、むしろ運が悪いのかもしれませんね」
二次元人は如何に運が悪かったのか、その理由を説く。
「このわたくしの前に、やってくる羽目になったのですからね!」
「お喋りな奴ね、何者なの?」
喋りっ放しの二次元人を前に、ミスティーハニーが目付きを鋭くさせて問い詰めると、二次元人は馬鹿丁寧な口調で申し上げた。
「これは紹介が遅れましたな。わたくしはポロック・三枝。全二次元人の輝ける理想……新世党が幹部の一人にございます」
「くだらないわね、通してもらおうかしら」
ポロック・三枝と名乗る二次元人、いや新世党の幹部だと聞いてミスティーハニーの戦意に火がついた。
「三枝……ああ、思い出したわ。【リトルバスターズ!】に登場してた悪名高い名士……いいえ、今では完全に落ちぶれた元名士ね。また私が独房にぶち込んでやるわ!」
以前に自分たちスター・ルーキーズが捕縛して投獄した名士三枝一族を思い出して、ミラールも戦闘意欲を上げる。
するとポロック・三枝はまるで小ばかにした様な態度で言った。
「きょ~~ほっほ、そうはいきません」
するとポロック・三枝は更に懐から一粒のカプセル錠を取り出して得意げに語り始めた。
「じゃーーん! 皆さんにはお初にお目にかかります、これは二次元人強化カプセル。タイの製薬企業に作らせた、このカプセル……」
「タイの製薬企業だと!?」
ポロック・三枝の口から飛び出してきたタイの製薬企業だと聞いて、ワイルドタイガーたちは驚愕した。何故なら自分達がゾンビや様々な生体兵器に苦戦を強いられたバイオハザード、その発端であるタイの製薬企業と新世党が繋がっている事に、ここで初めて知ったからだ。
「そうでーーす。これっぽっちのカプセルでも一つ飲み込めば……」
驚愕する面々を前にポロック・三枝は取り出したカプセルを口に運び、ゴクリと一飲みすると……
「きょ~~ほっほ……ごらん下さい、この漲るパワー!」
なんとポロック・三枝は飲み込んだカプセル錠の効能からか、格段に戦闘力が向上したのだ。
「それでは、このパワーで皆様方を、ぼこぼこにして差し上げますね」
そしてパワーアップしたポロック・三枝はキューティーハニーたちと戦闘に突入した。
「たっぷり苦しませてあげましょう……!」
不敵な笑みを浮かべるポロック・三枝は、まず天使型戦闘マシン「Qビット」を展開。通称トリオ・ザ・ポロックを発動。
二体の天使型戦闘マシンを展開して下準備を進めるポロック・三枝に、まずはミスティーハニーがフレッドの仇と言わんばかしに先制攻撃を喰らわした。
「アイタタタ……」
ミスティーハニーの攻撃を受けて倒れるポロック・三枝は後方に転倒。だがスグに起き上がり、展開した「Qビット」に攻撃を命じようとするが、その前に「変身っ」とミラールが自身の変身能力を発動。以前に苦戦を強いられたシルバー・ホーンドに変身して、大津波を発生させて全体攻撃を仕掛け、Qビットを全滅させる。
しかし自身の手駒であるQビットを全て破壊されたポロック・三枝は、諦めずに再度Qビットを展開させる。
そして声楽家としての能力である歌唱力で必殺の「バトルアレグロ」を発動。Qビットたちの能力を上昇させた。
すると能力が上昇したQビットは様々な技で戦前の面子を攻撃し始めた。
「うわっ」「ひぃっ!」
強力な火炎放射に電撃と、超火力の攻撃技に楓もワイルドタイガーも苦戦させられる。
しかしセーラーマーキュリーが自身の水技でQビットの火炎攻撃を遮断する。それに続いてバーナビーがハンドレッドパワーでQビットを破壊。
そして残る一体のQビットをミスティーハニーが破壊して、キューティーハニーがポロック・三枝本人に攻撃を直撃させる。
「うぎょっ」
攻撃を受けたポロック・三枝は怯み、その隙をついてワイルドタイガーと鏑木楓の親子がポロック・三枝に迫る。
だがポロック・三枝は二人が迫る瞬間、背中のホバージェットを噴出させて頭上へと退避。
そして皆の上空から、ポロック・三枝は攻撃を仕掛ける。
「きょっほほぉ」
自身が装備しているスーツからレーザーを発射して、地上の七人を纏めて総攻撃するポロック・三枝。
しかし此処で怒り心頭中のミスティーハニーと、妹に続けと姉のキューティーハニーが一斉にポロック・三枝に駆け寄って一斉攻撃を仕掛けた。
ミスティーハニーの怒りの猛攻と、妹と息を合わせた合体技を放ったキューティーハニーの攻撃はポロック・三枝を押し退けた。
「ぎょっ、うぎょぎょ」
球の様に転がりながら後方の壁へと激突するポロック・三枝は目を回してしまう。
「聖龍隊めーー、ここまでやるとわーー」
ポロック・三枝は悔しそうに、ひそりひそりと密かにその場から逃げ出そうと腹の出た上半身で匍匐前進をし出した。
しかし其処にミスティーハニーが、逃げ出そうとするポロック・三枝にハニーフルーレを突き向けて睨みを利かせる。
この追い詰められた現状に、ポロック・三枝は堪らず立ち上がり、颯爽と逃げ出した。
「やむを得ない。ここは、ひとまず撤退だーー」
ポロック・三枝は、現場に設けられていた新世党が拠点にしているVIPエリアに移動できる転送装置で一人逃げ出してしまった。
「何だ、たいしたことない奴だったわね」
大した強敵でもなかったポロック・三枝の異常なまでの逃げ足の速さに呆れ果てる鏑木楓。
そんな中、全ての妨害電波発生装置を停止させられたキューティーハニーが言い放つ。
「よし、とにかく装置を止める事はできた!」
早速キューティーハニーは通信でセントラルエリアに報告した。
「キューティーハニー! やったんですか? 通信妨害が消えました!」
「ええ、犬牟田くん。装置は完全に破壊したわ」
通信妨害が完全に消滅した現状を犬牟田が伝えると、キューティーハニーは装置を完全に破壊した事を伝え返す。
「やったな、聖龍隊!」
美木杉愛九朗も聖龍隊の活躍で妨害電波が消滅した現状を大いに喜んだ。
「よし、戻りましょう!」
そして無事に通信の回復も確認できたミラールは、皆にセントラルエリアに戻ろうと言う。
だが帰り際、あまり本気で活躍する場が少なかったワイルドタイガーは不満そうだった。
「あ~~あ、あんまり活躍できる場が少なかったな」
「ふふ、もう良いじゃないですか虎徹さん」
「そうよ、お父さん。無事に発生装置も止められたんだし、結果オーライじゃない」
不満げなワイルドタイガーに笑顔で言葉を掛けていく相棒のバーナビーと娘の楓。
しかし全力を出し切れていないワイルドタイガーは、思い切ってある行動に出てしまった。
「こうなったら……このっ」
「わっ! 虎徹さん、何してるんです!」
「お父さん!」
バーナビーや楓が制止する中、ワイルドタイガーは妨害電波発生装置の施設内を暴れ回った。
そして全員が施設から出た時には、施設は完全にワイルドタイガーの強靭なパワーによって完全に壊滅させられた痕だった。
「ひゅう、スッキリしたぜ! 正義の壊し屋、ワイルドタイガー様は、やっぱこれぐらいはしないとな!」
「も、もう用済みの施設を壊滅させちゃうとは……」
「お父さんったら……」
妨害電波を発生してた施設を完全に破壊し尽くしたワイルドタイガーの猛威に唖然としてしまうバーナビーと楓。
一方で同じく唖然とするキューティーハニーたちは、破壊された施設を見届けて各々言った。
「ま、まあ、結果的には……敵はもう二度と妨害電波を使えなくなった訳だし、良かったんじゃないのかな?」
「そ、そうですよね! こんな状態じゃ、修理しようとしても何ヶ月もかかるでしょうし……」
「そ、それにしてもやる事が毎度派手よね。ルーキーズって……」
「……ま、まあ、どちらにしろ妨害電波発生装置の施設はこれで完全におじゃん。結果良好じゃないですか、はは」
口々に呆れ果ててしまうキューティーハニー/セーラーマーキュリー/ミスティーハニーの言葉に、ミラールも唖然としながら言い返した。
こうして一行は残骸と化した妨害電波発生装置施設から撤退した。
[停電]
セントラルエリアにキューティーハニー達が戻ってくるや否や、皆は無事に妨害電波を停止させた彼女達を大いに出迎えた。
「よくやったな、お前ら! これで地球のドレフ将校に連絡がとれるってもんだぜ!」
「メタルバード、どうにか任務は無事、終えたわ」
「キューティーハニー、それにみんな、お疲れ様!」
任務を無事に達成したキューティーハニーたち七人を出迎えるメタルバードに続いて、変身が使えなくなってしまったアッコも皆の無事を祝福した。
するとそんなお祝いムード一色の状況で、ナビゲーションルームから人工知能のい通告が入ってきた。
「なんだよ、こんな時に……」
いい気分の最中に呼び出されたメタルバードは、ナビゲーションルームの画面の前に立つと人工知能がメタルバードに向かって言い渡した。
「メタルバード、一度シルバー・ウィングに帰還してくれ、話がある」
そう言い残して人工知能、俗称「修司」は通信を切断してしまう。
「なんだってんだよ……」
呼び出した詳細な理由も告げず、ただ話があるとしか伝えない人工知能に苛立つメタルバード。
だが仕方なくメタルバードは、さほど休養でないだろうと一人で自身の愛機シルバー・ウィングに戻ってみる事に。
「それじゃバーンズ、気をつけてね」
「なあに、気を付けてっても、所詮はB.S.Lに潜入した際に使用したオレの愛機だ。オレ一人で十分だよ」
アッコたちからの見送りを後に、メタルバードは単身ドッキングベイへと向かう。
その道中、階層に降りるエレベーターをメタルバードが使用中、突如してエレベータの電気が落ちて、室内は消灯エレベーターは停止してしまった。
「何だよオイ、まだ停電か」
最初のアッコと黄長瀬紬が起こした停電以降、電気系統に何の問題もなかった筈の状況で起こった二度目の停電に戸惑うメタルバード。
メタルバードは早速、別電源である自分たち聖龍隊の通信機からセントラルエリアのアッコに通信してみた。
「アッコ、アッコ、聞こえるか?」
「バーンズ、どうしちゃったの? まだ停電よ」
「こっちも同じで、エレベーターん中に閉じ込められた! そっちは問題ないか?」
「大有りよ! ハッチは閉ざされたままになっちゃうし、地球への通信も使おうと思ってたら停電で使えなくなっちゃうし、豪い事態よ!」
「そうか、それじゃ修司に何があったのか其方から聞く事はできないんだな?」
「ええ、そうよ。ナビゲーションルームの電源も落ちちゃって、人工知能の修司とは連絡がとれなくなっちゃってるわよ」
「分かった。それじゃオレはこれから、抜け道を探し出して何とかシルバー・ウィングから人工知能にアクセスしてみる。それまでは、この停電で新世党の奴らも何も出来ない状況だろうし、皆には落ち着いてその場を動き回らないよう指示しといてくれ」
「分かったわ、バーンズ」
メタルバードはアッコとの通信を終えると、自らの体を軟体化させてエレベーターの隙間から密室を脱出する。
その後もメタルバードは、軟体化させられる自身の肉体を駆使して自分の愛機シルバー・ウィングが停泊しているドッキングベイへと踏み込む。
停電の影響もあって、非常灯しか点いていない暗闇の中を、メタルバードは自身の眼球を光らせて進路方向先を照らして進んだ。
そしてメタルバードは無事に自分の愛機シルバー・ウィングへと辿り着き、早速機内に入って中のナビゲーションから人工知能「修司」にアクセスした。
「動力部のメインサイロが突然停止してしまった。エレベーターが途中で停止したのは、その為だ。このトラブルにより、ステーション内の施設が使用できなくなった。これは新世党の方も同じことだが、エレベーターやハッチも機能していない現状では我々としても事態は深刻だ。このままでは原因の調査すらままならない。メタルバード、君は補助電源をONにする設備に向かい、補助電源を入れろ。サイロ停止の原因究明は、それからだ」
人工知能は停電の原因が電気系統などを全て統括している動力部のメインサイロが急停止した事を伝え、原因究明の為にはまず補助電源を入れる必要があるとメタルバードに説く。
そして更に人工知能は、メタルバードをシルバー・ウィングにまで呼び戻した理由を説明した。
「君をシルバー・ウィングまで呼び戻した理由を、まだ伝えてなかったな。実は先ほど……この鳥の様な生物とサルの様な生物が、機内に入り込んできた。Xではない事が確認できたので保護しておいた。君は彼らに見覚えは、あるのか?」
宇宙生物である彼らを見たメタルバードは、それが居住デッキで確認されたエテコーンとダチョラ達である事を人工知能に伝えた。
「……居住デッキでの生体反応は、彼らだったのか。貴重な生き残りだ、保護しておこう」
そして人口知能から動力部の急停止の原因究明のために、まずは補助電源を探し出して入れる事だと任務を仰せ付かったメタルバードは、暗闇が支配するB.S.Lへと単身進攻していった。