現政奉還記 未来都市&宇宙編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[宇宙蜘蛛]
シルバー・ウィング機内のナビゲーションから人工知能よりメインサイロへの調査と復旧を申し付けられたメタルバード。
メインサイロは、B.S.Lの中枢にある6つのセクターの中心部に存在するステーション全域に電力を供給する施設であり、まずはメインサイロの近くに存在する補助電源の制御室を探索しようとメタルバードは行動に出る。
通常の人では入り込めない隙間や、隠し通路などを進行し、時には寄生生命体Xが擬態した宇宙生物と戦闘しながら先へと潜行していくメタルバード。
やがてメタルバードは広い空間へと辿り着き、調査の為に最深部へと降り立つ。
最下層にまで降り立ったメタルバードは、此処が何もない殺風景な縦長の空間であると認識する。
「さてと……抜け道らしい道はないものかね」
メタルバードは辺りを見渡して、そろそろ見えてきても良い筈の補助電源制御室への道を探し回る。
するとメタルバードが上を見上げた先に、先ほど自分が飛び降りた場所からは死角になっている処に、別通路への入り口がポカンと口を開けていたのだ。
「なんだ、あんな所に道があったのか。これなら飛び降りず、翼で飛行して移動すりゃ良かった」
愚痴を零すメタルバードは、早速翼を開いて飛び上がろうとする。
が、まさにその時。何かの獣らしき鳴き声が響いてきた。
「! なんだ、この声?」
飛び上がろうとするまさにその瞬間に耳に入ってきた謎の鳴き声に反応するメタルバード。
すると彼の頭上から、巨大な火の玉が幾つも降り注いできたのだ。
「うわっ」
慌てて火の玉から我が身を守ろうと素早く回避するメタルバード。
すると天井の暗闇から、実におぞましい姿と巨体を持ち合わせる蜘蛛のような巨大生物が来襲してきた。
「こ、コイツは……確か、スペース・スパイダー!」
メタルバードは愕然とした。自分の目の前に現れたのは、凶暴性の高い人食い宇宙蜘蛛スペース・スパイダーだった。
巨大な口から火の玉を吐き、相手を弱らせてからじっくり捕食する、この宇宙蜘蛛が厄介な相手だという事をメタルバードは知っていた。
それからも宇宙蜘蛛はメタルバードの頭上で右に左にへと移動しながら上がっていき、再び地上のメタルバードに火炎攻撃をお見舞いしようと上昇する。
しかしメタルバードも防戦一方ではない。宇宙蜘蛛が真下に向かって一気に降下して、火の玉を吐く為に巨大な口を開口した瞬間を見計らって、メタルバードは強力な光線を口内にお見舞いしてやる。
宇宙蜘蛛の外殻は頑丈で、唯一ダメージを与えられるのが開口した口内のみである事をメタルバードは周知していた。
頭上から降り注ぐ火の玉に躊躇う事無く、メタルバードは宇宙蜘蛛の巨大な口が開口する瞬間を見定めて何度も何度も連続で攻撃していく。
そして幾たびの攻撃を与え続けて、遂に宇宙蜘蛛は内部から大爆発した。
「や、やったか!?」
爆発する宇宙蜘蛛を見て、メタルバードは突破の成功に浸ろうとした。
が、内部から爆発した宇宙蜘蛛は、なんと8本の足を全て爆発四散させた直後から胴体のみで高速回転を始め、回転しながら口から胃酸を吐くように変化したのだ。
「な、な、何だって!!」
全ての足を失いながらも胴体のみで高速回転しながら攻撃を続ける宇宙蜘蛛の脅威に目を疑うメタルバード。
縦横無尽に予測がつかない高速回転で、此方の攻撃の隙を与えない宇宙蜘蛛の猛威にメタルバードは反撃の糸口を掴むため部屋の片隅に移動する。
そして片隅に移動したメタルバードは其処で斜め上に向かって攻撃を連射していき、高速回転する宇宙蜘蛛の開口にどうにか攻撃を当てようと必死になる。
すると斜め上に攻撃を直射していくのが効果があったのか、開口した口に攻撃が当たり始め、メタルバードは更に攻撃の勢いを増して撃ち続けた。
と、メタルバードが連続で砲撃を撃ち続けていた矢先、高速回転していた宇宙蜘蛛が突如として動きを止めて爆発した。
「!」
苦しみながら爆発して果てていく宇宙蜘蛛を見上げて唖然となるメタルバード。
だったが、爆発した宇宙蜘蛛はその全貌を一変させて正体を晒した。
「ッ、やっぱXだったか!」
寄生生命体Xの集合体であるコアXに変化した宇宙蜘蛛を見て、宇宙蜘蛛がXによる擬態であったのだと認識するメタルバードはコアXに向かって砲撃。
硬い外殻を何度も砲撃で撃ち破ろうと連続で発射していくメタルバードの猛攻を浴びて、コアXは分解。メタルバードに寄生できないXの群れは何処へと姿を消した。
宇宙蜘蛛に擬態したXを善戦の末、撃破したメタルバードは翼を広げて真上の上方へと飛び上がった。
そして死角になっている通路への入り口に進入したメタルバードは、そのまま通路を駆け抜けて先へと前進。
するとメタルバードはようやく補助電源の制御室に辿り着き、即行で補助電源を入れた。
補助電源が入れられた事で、制御室の点灯は灯り、B.S.Lの一部の機能が回復した。
一部の機能を取り戻したメタルバードは、制御室の隣にあるナビゲーションルームから人工知能に通達した。補助電源が入れられた事で、人工知能にアクセスできるナビゲーションルームも機能が回復したのだ。
メタルバードがナビゲーションルームから人工知能に接続してみると、人工知能は次の話をメタルバードに通告した。
「セーブルームやメディカルルームは、機能回復した。しかし補助電源のパワーだけでは……エレベーターやハッチを作動させる事ができない。メインサイロが作動しなければ、問題は解決しないのだ。君も目にしたと思うが、サイロに絡みついている植物の根の様なものが原因と見て間違いない。あれを一掃するには、元を断つのが効率的だろう。発生源を突き止め、処理するんだ」
此処まで来る道中で目視した通路の壁などに張り付いている植物の根が原因だと説く人工知能は、その元である発生源を潰して処理するようメタルバードに通告した。
人工知能からの通告を受けて、メタルバードは早速行動を開始した。
ナビゲーションルームを出て、すぐにメタルバードが出たのは問題に挙げられている中央動力炉のメインサイロだった。
メインサイロは完全に植物の根に覆われており、完全に機能が停止した状態だった。人工知能の言うとおり、植物の根の発生源を潰さねば、中央動力炉は回復しないとメタルバードは見た。
すると植物の根だらけの中央動力炉を突っ切ろうとするメタルバードの前に、虫のような宇宙生物が飛来してきて襲いかかってきた。
メタルバードは目の前に飛来してきた宇宙生物を刃に変形した右腕で意図も容易く斬り捨ててみると、案の定その宇宙生物はXによる擬態した姿だった。
飛行する宇宙生物を斬り捨てたメタルバードの前に、今度は同型の地面を跳ね回るタイプの宇宙生物が襲い掛かる。だがメタルバードはこの固体も先ほどと同様に一振りで斬り捨ててみせる。
(この生物は……確かセクター2に徘徊していた芋虫の様な宇宙生物がサナギを経て変態した生物だったな。こいつ等がメインサイロにまで入り込んでいる事は……)
メタルバードはセクター2の熱帯エリアで確認された芋虫の様な生物がサナギを経て姿を変えた生物である事を思い出し、その生物が中央動力炉に入り込んでいる事実を踏まえると、容易に想像ができた。
早速辺りを見渡したり、飛び上がって付近を探索してみるメタルバードは、生き物が何とか通り抜けそうな細い穴を発見する。
「やっぱり。この穴から芋虫から変態した固体が抜け出てきたんだな」
メタルバードは早速その穴に体を軟体化させて潜入してみる事に。しかし穴にも植物が複雑に絡み合っている状態で、メタルバードは少しずつ植物を刈りながら前進していった。
細い穴を前進していくメタルバードは、予想通りに熱帯エリアであるセクター2にそのまま進行する事が叶った。
彼の考えが当たっていれば、セクター2にこそ中央動力炉に張り巡る植物の発生源がある筈。
自分の考えを信じて細い穴を突き進むメタルバード。だがその時、彼が進行する穴の奥から不気味な足音が聞こえてきた。
(! だ、誰か居るのか……!)
メタルバードは細心の注意を払いながら前進し、天井裏から地上の様子を覗き見る。
するとあろう事か、なんと真下の部屋にはあのSO-Xが探索をしていたのだ。
これには流石のメタルバードも驚愕し、身震いしてしまう。
そしてSO-Xはメタルバードが潜んでいる天井裏の真下の部屋で、何度も徘徊しては一向に立ち去ろうとはしなかった。
SO-Xはあのメタルバードの好敵手であり、聖龍隊最強の小田原修司をXがコピーした存在。如何に不死身で鋼の肉体を持つメタルバードでも、迂闊に闘う事はできなかった。
(ど、どうするオレ? このままじゃセクター2を探索して、植物の発生源を探す事も侭ならねぇ……)
メタルバードは悩んだ。このままではB.S.Lの停電の原因である植物の発生源を特定する事も叶わないと。それには今、下で徘徊し続けているSO-Xを掻い潜らなければならない。
時間だけが悪戯に過ぎていく中、メタルバードは決心した。
(よ、よし! こうなったら……)
メタルバードは右腕のレーザー砲を、冷却砲に変換すると天井裏から飛び出した。
そしてSO-Xの前に飛び出たメタルバードは、速攻で冷却砲を撃って目の前のSO-Xを凍り付かせた。
「今のうちッ!」
SO-Xを凍らせたメタルバードは、慌てて部屋から脱出した。しかし凍て付かせられたSO-Xはスグに解凍してしまい、メタルバードを追尾し始めてしまう。
「ハッ、行き止まり!」
部屋から出たメタルバードは、辺り全体が植物に覆われた異様な環境に変化したセクター2の状況に驚く暇もなく、目の前が行き止まりである事に動揺した。
そんなメタルバードの背後から攻撃してくるSO-Xに慌てふためいたメタルバードは、再度冷却砲を発射してSO-Xを凍らせて一時的に動きを封じる。
その間にメタルバードは目の前の壁をスキャンして、壁の向こう側に空間がある事を突き止める。そして最大火力の砲撃で壁を破壊して、再びSO-Xから逃亡する。
「ひィ~~ッッッ!」
後方から迫るSO-Xに本気で涙目になるメタルバードは必死で逃げ続ける。
植物が張り巡り、足場が不安定の中、もはや飛べる事を忘れたメタルバードは足で直接自力で駆け抜け、SO-Xから逃げ回る。
そしてメタルバードが駆け続けてしばらくすると、目の前にハッチが全開している部屋が飛び込んできた。
「あ、あそこに隠れよう!」
メタルバードは早速、SO-Xから隠れようと部屋に飛び込んだ。無論、その後を追ってSO-X本人も部屋に突入した。
しかしSO-Xが部屋に踏み入ってみると、何故かメタルバードの姿は忽然と消えていた。
跡形もなく姿を晦ましたメタルバードの姿を視認しようと辺りを見渡すSO-X。しかしやはりメタルバードの姿は発見できなかった。
姿形を捉える事ができない為、SO-Xはその場から仕方なく立ち去る事に。
そしてSO-Xが立ち去った後、そのSO-Xが突っ立っていた近くの壁から、ぬっとメタルバードが姿を現して胸を撫で下ろす。
「た、助かったぁ……」
メタルバードは部屋に突入してスグ、間近の壁に自らを擬態させてSO-Xの目を欺いたのだ。
それでもドッと体の力が抜けたメタルバードはその場に崩れ落ちてしまう。
しかし休んでいる暇もない。SO-Xの追撃を逃れた今だからこそ、再びセクター2の探索を開始しようとメタルバードは立ち上がる。
部屋を出て、既にSO-Xの姿がないことを確かめたメタルバードは、再び抜け道を探しながら探索を再開。
[超獣像]
辛うじてSO-Xの追撃から逃れられたメタルバードは、謎の植物の根が生い茂るセクター2を探索する。
全ては中央動力炉にも生い茂る植物を根絶し、メインサイロの機能を回復させ、電力供給を再開させる為に。
しかし電力供給を行う中央動力炉が停止している為、ハッチなどの扉も全て完全密閉されてしまった現状での探索は困難を極めた。
メタルバードはそれでも僅かな抜け道を手探りで探し当てながら活路を見出していく。
上へ下へ、右や左へと抜け道を懸命に探し当てながら突き進んでいくメタルバード。
と、メタルバードが無我夢中で前だけを見据えて前進していた、その時。
「ん? ……うわっ」
なんとメタルバードの足元が突然崩れてしまい、彼はそのまま奈落の底へ急降下。
足から落下していったメタルバードが落っこちた先は、不気味な草花が生い茂る謎の空間。
その空間に咲き誇る花々は、天井に咲いている花は得体の知れない花粉を撒き散らし、地面に生えている個体は巨大な口を開いて獲物を捕食する異質な巨大花であった。
「な、何なんだ此処は!?」
メタルバードは運よくも、高台の真上に落下した為、地上に咲いている巨大な人喰い花の開口には落ちずに助かっていた。
そんなメタルバードが不気味な花々の数々を見渡していると、前方に植物の根が絡み付いている巨大な石像の存在に気付いた。
「アレは……! 超獣像!?」
メタルバードが目撃した石像は、彼ら超獣族の姿を模した石像であった。おそらく政府が研究の為に、地球からB.S.Lへと持ち込んだのであろう。
自分の一族が遺した石像に見取れているメタルバードは、此処である事実に気がついた。
「! まさか、そんな……」
それは、超獣族の石像に植物の根が絡み付いているのではなく、石像から無数の植物が自生して辺りに生い茂っている環境を作っている事に。謎の植物の発生源、それは超獣族の石像だったのだ。
メタルバードは自分たち一族が造った石像を破壊するのに最初戸惑ったが、植物の根を根絶し、中央動力炉を復旧させて電力を回復させるという使命感から超獣像に砲撃を試みた。
標的の超獣像に接近したくとも、地面には無数の人喰い花が咲き乱れ、行く手を塞がれている現状から、メタルバードは遠距離での砲撃で超獣像を破壊し始めた。
すると辺りに咲き誇る植物が、防衛本能からか蔦を伸ばしてきてメタルバードの身体に絡み付こうとしてきた。金属の肉体を誇るメタルバードには、植物による物理攻撃も花粉によるダメージも受けないのだが、身動きを封じられては如何にメタルバードとて堪ったものではない。
メタルバードは超獣像に砲撃を続けながら、自身に絡み付こうとしてくる植物の蔦相手には両腕を刃物に変形させて切りかかる。
しかし植物の蔦も絶えずメタルバードを捕獲しようと、切られても切られても蔦を伸ばしてくる。
仕方なくメタルバードは頭部を砲撃用の砲口に変形させて、両腕を切り取り用の刃物に変形させて、植物の大群と応戦を開始。頭部が砲口で両腕が刃物という何とも奇抜な姿で戦闘を続行した。
それから幾度となく超獣像に砲撃を撃ち続けていくメタルバード。すると超獣像の様子が一変し、メタルバードに襲い掛かる植物の蔦を伸ばしてきた天井の草花が消滅。
天井からの攻撃が無くなり、メタルバードは砲撃を専門にしていた頭部の砲口を変形させて元の頭と顔に戻る。
自分を襲撃する植物の攻撃がやみ、メタルバードが一安心していると、其処に今度は前方から強力な光線が発射されてきた。
メタルバードはひらりと身体を反らして光線から身をかわす。そして目を向けると何と先ほどまで砲撃を浴びせていた超獣像から強力な光線が放たれていたのだ。
光線を発射し始める超獣像に対し、メタルバードは反撃とばかしに今度は両腕を砲撃用の砲口に変形させて、二刀流の砲撃で超獣像に応戦する。時には超獣像から発射される光線をかわしながら強力な砲撃をお見舞いしていくメタルバード。
だが超獣像も右へ左へと身を反らして攻撃を回避していくメタルバードの動きに追い付こうと、発射する光線の数を増やして直撃を狙う。メタルバードはそれでも必死に光線の直撃をかわしながら両腕の砲口で超獣像に砲撃を直射させていった。
絶えず、そして諦めずに超獣像に砲撃を連射していくメタルバード。すると遂に超獣像とそれから自生している植物が力尽きたのか、超獣像は崩れ始め、壁や地面に生い茂っていた植物は瞬く間に消滅して地面に生えていた人喰い植物も消え去った。
だが闘いはこれで終わった訳ではなかった。なんと破壊された超獣像が姿を変えて、メタルバードに襲い掛かってきたのだ。それもあの寄生生命体Xの集合体であるコアXに変貌して。
「ッ、Xめ……超獣像にも擬態してやがったのか」
Xが超獣族のバイオテクノロジーで造り出された超獣像に擬態していた事実を把握するメタルバードに、コアXは容赦なく襲い掛かってきた。
メタルバードは強固な外殻を誇るコアXを破壊しようと、外殻に空いている光線を発射する為の開口部分に砲撃を直撃させた。
するとコアXにダメージを負わせる事が叶い、メタルバードは光線が発射される瞬間を狙って開口部分に砲撃を狙い撃った。
狙撃し続けるメタルバードの猛攻も相まって、遂にコアXは大破。内部のXたちはメタルバードに恐れをなして散り散りに退散していった。
コアXが大破したのを視認したメタルバードは、現場に残された遺伝子を念のためスキャンしてみた。すると意外なデータを取る事に成功した。
それは例のSO-Xに確実なダメージを与えられるD-ワクチンからでしか生成できないと言われている「ワクチンビーム」のデータだった。これにはメタルバードも驚かされたが、どちらにしろこれでSO-Xに確実な損傷を与えられる攻撃手段が手に入った訳である。
そしてメタルバードは、対SO-Xに応用できるワクチンビームの生成とメインサイロに絡み付いていた植物の根絶を人工知能に伝えるべく、その場を後にした。
それからメタルバードはナビゲーションルームを探し出し、そこで人工知能に停電の原因であった植物の根絶と銀河連邦が生成困難だと伝えてきたワクチンビームのデータ摂取に成功した事実を伝えた。
「なに? ワクチンビームのデータ生成に成功しただと? ……そうか、それは何よりだ。しかしSO-Xと戦うのは、まだ見合わせた方が良い。何故なら、奴はさらに進化している可能性がある。以前と同じ能力のままだという保証はない。それに、何より……新世党も倒してない君たちを、まだ危険な任務であるSO-X退治に向かわせる訳にはいかない。無茶は禁物だ……」
意外にも自分達の安否を気にしている様な発言をする人工知能に驚かされるメタルバード。
すると人工知能は次の様な話をメタルバードに告げた。
「メタルバード、君は重要なB.S.Lにおける司令塔だ。すぐさまセントラルエリアに帰還して、現場の聖龍隊や赤塚組に指示を飛ばしてほしい。それと、これは前にも言ったが、私はB.S.Lでの全権限を銀河連邦に委ねられている。今までもそうだが、今後も私の許可無く行動しないよう慎んでくれ」
最後に上から目線の発言を告げた人工知能の言葉に、メタルバードはどこか違和感を感じた。
だがメタルバードはスグに気分を変えて、通信でセントラルエリアの仲間に連絡を取った。
「此方バーンズ、此方バーンズ。セントラルエリア、応答してくれ」
「此方セントラルエリアです。バーンズさん、遂に電力を復旧できたんですね!」
「お疲れ様バーンズ! こっちでもエレベーターやハッチが元通りに使えるようになったわ」
メタルバードからの連絡に対して、セントラルエリアの犬牟田宝火やアッコが喜々と応答する中、メタルバードは通信でセントラルエリアに帰還する事を伝える。
「オレはこれから、そっちに戻る。だがその間にも新世党が何か活動しているかもしれない。アッコ、お前はまず復旧した通信で地球のドレフ将校と連絡を取れ。それから現場の聖龍隊士を動かして、新世党に対抗しといてくれや。オレもスグにそっちに帰るからよ」
「分かったわ、バーンズ。あなたも無事に帰ってきてね」
アッコとの通信を終えたメタルバードは、そのままナビゲーションルームから退室してセントラルエリアへと足を向かわせた。
だがメタルバードがナビゲーションルームから出た直後、突然ナビゲーションルームの画面が点灯して人工知能が人知れず銀河連邦との連絡を繋げていた。
「……緊急事態です。メタルバードが、いや、聖龍隊がワクチンビームのデータ生成に成功しました」
「なにっ? 本当か!?」
「はい、間違いありません」
「そうか……だが、まだSO-Xを倒してしまった訳ではないのだろう?」
「……はい」
「そうか、それなら良かった。なら引き続き、聖龍隊や赤塚組、そして例の新世代型二次元人の監視を怠るな。あの秘密研究室を発見されたら事だ」
「承知しています……」
[セクター5への進攻]
メタルバードが中央動力炉に蔓延る植物を根絶し、さらに人工知能が密かに銀河連邦と連絡を取っていた頃。
アッコはメタルバードからの言伝で、電力が復旧した事で回復した通信機で地球のドレフ将校と連絡を試みていた。
「……ドレフ将校、ドレフ将校、聞こえていたら応答してください」
アッコが何度も呼びかけると、通信にドレフ将校が応答した。
「ミラーガールか……! ん? どうしたのだね? 元の加賀美あっこの姿に戻っているが……」
「それが将校……私の不手際です。新世党に私のコンパクトが……変身に必要なセイント・コンパクトが奪われてしまいました……」
「なにっ! それは本当か?」
「はい……私が油断しなければ、コンパクトは奪われず……そして新世党は、私のコンパクトで何かを企んでいるらしいんです!」
「そうか……私の方でも、独自に調査して判明した事実がある。どうやら新世党は以前よりB.S.Lに潜入員を送り込んで、研究施設の内部を密かに改造して自分達の施設として悪用していたらしいのだ! そして、それは現在も目下継続中だ……新世党は現在、セクター5の極寒エリアにて総力を挙げて何か活動中との事……行って、調査してきてほしいのだ」
「セクター5……極寒エリアですね。その飼育エリアで、新世党は何かしらの計画を進めているんですね、将校」
「ああ、その通りだ。現在、私たち国連軍側と銀河連邦の間で話が進められているが……どうにかB.S.Lに進軍できないか検討中なのだ。もうじき全ての審議が終わり、B.S.Lへの突入が許されるかどうか審議が下される。それまで持ち堪えてくれ」
ここでアッコとドレフ将校との通信が終わり、アッコたちは考えさせられた。
「もうじき、国連軍か銀河連邦が此処に攻め込んでくるわ。ドレフ将校は温情ある人物だけど、他の軍人は何を仕出かすか分からない人たちだらけ。軍が介入する前に新世党をどうにかしないと、大勢の血が流れてしまうでしょう……!」
アッコの信念溢れる言動を受けて、聖龍隊士の一人であるキリトが皆に言い放った。
「行きましょう! ここで悩んでいても仕方が無い」
キリトの言葉を受けて、全員が新世党への進軍を決意する。
改めて決意を固める一同を前に、アッコはセクター5の極寒エリアに進軍するべきメンバーを考える為にも皆に話を聞いて回った。
「新世党が総力を挙げて取り組んでいる活動、か……これがどんな計画なのか分かれば、いよいよ新世党の企みが明らかになるだろう。ありがとう、聖龍隊。此処まで来れたのも、君達の活躍があればこそ、だ」
遂に新世党の企みを白日の下に曝せる事態まで来れた事に、美木杉愛九朗は聖龍隊に多大な感謝を示す。
「私達も、二次元界の科学技術を使って現実空間でも戦えるようになっています。だから、なんとなく分かるんです! 新世党がやろうとしている事は、危険です!」
二次元人の科学技術を悪用しようとしている新世党の野望に危険を覚える聖龍隊のシリカは、さらに己の心情を述べた。
「どうして、新世党みたいに……技術を、悪いことに使おうなんて考える人たちが、いるんでしょう? どんな技術だろうと、きっといい使い道がある筈なのに……」
自分の実母、羅暁も加わっている新世党のセクター5での企みを聞いた鬼龍院皐月は、母羅暁が行おうとしている悪事に痛感していた。
「二次元人の科学技術……やはり恐れていたように新世党の連中は……二次元界の科学技術を悪用しようと企んでいたみたいだったな。我が母、羅暁がまさか此処まで落ちぶれているとは……失意の極みです」
聖龍隊の新人や新世代型二次元人の多くが新世党の企みを暴こうと躍起になっている中、聖龍隊総部隊長のミラールは以前自分達が戦い合った新世党の幹部の一人ポロック・三枝について語り明かしていた。
「いや~~、あのポロック・三枝、幹部にしとくには勿体ないほど面白い奴だったわ。あそこまで、おマヌケな奴だと返ってやる気が削がれちゃって大変だわよ。でも、あんな奴に限ってしつこかったりするのよね~~。面倒な事にならなきゃいいけど」
更にミラールは、ポロック・三枝が使用した二次元人強化カプセルについても語った。
「あのポロック・三枝が持ってたのって、確かタイの製薬企業に作らせた二次元人強化カプセルだったわよね。まさかタイでのバイオハザードと新世党が裏で繋がっていたとは……ますます許せないわ」
多くの人命を失わせる結果に誘ったタイでのバイオハザードの一件と新世党が裏で繋がっていた事実を知って、ミラールは新世党に対してますます敵愾心を燃やした。
「二次元人の技術にも、色々あるんだな。今じゃ、魔法に忍術に科学と……最早カオスだよ。この先、新世党がそんな二次元人の技術を使って悪事を働くと思うとやるせないよ」
ソファーに腰を下ろし、新世党が二次元界のあらゆる技術を悪用すると思うと、実に嘆かわしい事態だとクラインは語る。
「ポロック・三枝……私や葉留佳にとって、忌むべき三枝一族。まさか人体改造に加えて、強化カプセルなんて無粋な真似するほど三枝一族が落ちぶれているとは……呆れてものも言えないわ」
複雑な血縁関係である従姉妹の葉留佳や自分たちと同族の三枝一族が起こした横暴に、
「なによ、そのポロック・三枝とか言う丸いおっさんは……!? 大層なこと言ってた割には、最後にはちょろちょろ逃げ回った挙句、一人で撤退とは……何か企んでるのは、みえみえだけどやってやろうじゃないの」
何かを企んでいるのが見え見えな例のポロック・三枝。もし今度会う機会があれば成敗してやろうといきり立つルーキーズのスカーレット・レイン。
もちろん不満の種はポロック・三枝だけでなく新世党の面々全員に向けられていた。
「キャップ・ド・レッドの奴の泣きっ面を拝んでやるわ!」
自分達の為に戦い抜いて戦死したフレッドの無念を晴らす為にも新世党が総帥キャップ・ド・レッド打倒を掲げるブラック・ロータス。
そしてマン・ヒールズも、新世党への不満が積み重なる一方だった。
「ポロック・三枝め……ふざけてるわ! 次に見つけたら、叩き斬ってやるわ」
人をおちょくった様な馬鹿丁寧な口調のポロック・三枝に怒りを露にするミスティーハニーは、次こそ完全に息の根を止める闘志を燃やす。
そして、そのポロック・三枝が使用したと思われる二次元人強化カプセルについて、新世党が占拠しているB.S.Lのコンピューターにハッキングして聖龍隊が独自に調査に乗り出していた。
「分析の結果……あのポロック・三枝が使用した二次元人強化カプセルは、通常の二次元人では効力を現さないわ。浸食値があまりにも高すぎて、投薬した瞬間
人体改造を施した二次元人でなければ、カプセルを投薬した瞬間
そんな新世党の支配下に置かれているB.S.Lのコンピューターハッキングに意外にも手助けしたのが、新世代型のキャサリン・ルースだった。
「長い作業の甲斐があって、強力なプロテクトを解除できたの。そこで少しだけど、情報の取り出しに成功したわ! その情報は犬牟田さんに渡してあるから、解析が済んだら報告があるはずよ」
いよいよ出撃の時が来て、戦闘に出られないアッコが不在のメタルバードに代わって出撃メンバーを指名した。
「そ、それじゃ……まずは……」
「アッコさん、落ち着いて落ち着いて」
慣れない職務から動揺するアッコに、キリトが落ち着くよう言い渡す。
そんなキリトの助言を受けて、アッコは冷静になりながら申し付けた。
「あ、ありがとう……ふぅ、それじゃ発表します! 今回は敵が拠点にしている謎の基地に潜入してもらいますっ。そこでキリト君たちSAO組とAW組が潜入して、新世党がその拠点で何を企んでいるのか、そして現在どのような活動をしているのか調査してちょうだい!」
「了解しました、アッコさん!」
アッコからの指令を受けて、キリトたちは勇ましく返答した。
そしてキリトたちはセントラルエリアからセクター5の最下層に一気に到達する為、犬牟田宝火が操作する転送装置に搭乗しようと足並みを揃えて歩く。
そして犬牟田は転送装置をセクター5、新世党が今も建造中であると報告を受けている彼らの拠点に転送装置を設定してキリト達に力強く言った。
「僕たち新世代型の未来……それが何であれ、それでいがみ合ったり傷つけ合ったり、間違っています……! 皆さん、新世党を止めましょう!」
こうしてキリトたちは転送装置でセクター5の建造中の拠点へと転送された。
[新世党の企み]
一方その頃、そのセクター5の建造中の拠点では。
先に聖龍隊の選考隊を流砂に叩き落した鳳凰丸礼がスカー・フェイスと言い合っていた。
「ウソだ、スカー・フェイス! 私はハッキリと見たんだ。あいつ等が流砂に飲み込まれるのを!」
「いや……鳳凰丸礼。奴らは運良く地下断層に逃れたのだ」
「……聖龍隊め!」
「残念だが、そういう事なのだ礼。だが、奴らも此処までだ。我々がいる限りは……」
「待ってくれ、スカー・フェイスよ! 私に任せて欲しい。今度こそ仕留めてみせる」
先の聖龍隊選考部隊を倒せなかった事を深く後悔する鳳凰丸礼は、スカー・フェイスに新たな機会を与えてもらうのだった。
その頃、キリトたちはセクター5の地下1階エントランスホールに到着していた。
辺り一帯を氷が張り付き、凍て付く突風が吹き荒ぶ中、吹雪の中を猛進する一行。
そして吹雪を遮れる建物内部へと突入すると、そこには厳重に守られている何かの施設が聳え立っていた。
「やけに厳重に守られているね。何だと思う、キリト」
シルバー・クロウがキリトに訊ねると、キリトは早速無線でセントラルエリアに連絡を入れた。
「犬牟田、犬牟田、それに美木杉愛九朗、聞こえるか?」
「何ですか、キリトさん」
通信に犬牟田と美木杉が出て、訊き返すとキリトは近くの小窓から覗ける状景を写真データに収めて答えた。
「映像を送るから解析してほしい」
キリトは小窓から覗く状景を写真に収めて、セントラルエリアの仲間達に解析をお願いする。
「……どうだ?」
「うーーむ、これだけでは何とも言えません。他の角度からの映像も手に入れば……お手数ですが、転送してくれませんか。それで解析してみます」
「分かった。他の場所から、また映像を送る」
キリトは通信を切り、右側に奇妙な模様が見えた小窓から立ち去った。
「みんな、手分けして同じ様な小窓を探すんだ! そして写真データに収めて解析してもらおう」
「そうだね。みんなで手分けして探索すれば、スグにアレが何なのか判明する筈だ」
キリトの提案に、シルバー・クロウたちは同意し、早速行動に移った。
階段を上り、途中で降りたアスナ/シリカ/リズベット/リーファ達は謎の物体が見える小窓を発見。
早速画像データを撮影し、セントラルエリアに送信して解析をしてもらう。
「うーむ……何かの柱でしょうか……? この画像だけでは分かりません……もっと他の画像を送ってほしいです」
何かの柱らしき物体が視認できる画像を解析したセントラルエリアに待機している犬牟田宝火からの言伝に、アスナたちは他の小窓の探索に移行する。
そしてシルバー・クロウ、ブラック・ロータス達は最上階まで上がり、そこでも小窓を発見。早速、小窓から僅かに覗ける画像を撮影して、データを送信する。
「これは……! 新世党のマーク!! やはり新世党が作ったものだったみたいですねッ! しかし、これが何なのか見当が付きません……もっと違う角度から画像を撮って送ってください」
新世党の紋章が刻まれた巨大な何かを見て、犬牟田はまだ何なのか見当がつかないため、もっと違う角度からの画像送信を現場の皆にお願いする。
キリト、クライン、エギルの三人は地下一階からは移動せず、別角度からの新たな小窓を発見。小窓からは何やら機械の一部が垣間見えていた。
早速画像を撮影して、データを送信するとセントラルエリアの犬牟田が自己判別した結果を伝える。
「うーん……これは何なんでしょう……? もっと何か特徴的なものを映した画像を送ってください」
しかし今まで撮影した画像からは、特徴的なものが見出せず、巨大な物体が何なのか判別が未だ困難な状態であった。
更に地下最上階での小窓からは、何やら見た事のないカプセルが人工物の天辺に搭載されている様子が伺えた。
「うーん、あれは……間違いない。新世党の奴ら、寄生生命体Xを詰め込んだカプセルを、あの人工物に搭載しているみたいですね。でも、これが一体何なのか皆目見当もつきません」
犬牟田は、新世党が寄生生命体Xを凝縮して詰め込んだカプセルを搭載している人工物が何なのかまでは把握する事ができなかった。
それから間もなく、地下一階での別所でライム・ベルやシアン・パイルが小窓を発見。
小窓からは太いケーブルのようなものが見え、それが巨大な人工物に接続されていた。
「む?? 画像の左側に何かが見えます! もっとよく見える画像が欲しいです! 左側に回り込んで、画像を撮って下さい!」
犬牟田に言われるがままに、ライム・ベルとシアン・パイルは左側に回り込んで、別の小窓を探索する。
すると案の定、別角度から識別できる小窓を発見した二人は、そこから傍観できる画像を撮影して送信した。何やら太いチューブが巨大な人工物に接続された画像だった。
「エ……エネルギーを送るチューブ! 何故こんなものが付いてるんですか!? かなり危険なものかもしれません! もっと情報が欲しいです! どんどん画像を送ってくださいッ!!」
犬牟田は現場の皆に、新世党が建造している謎の物体が危険な代物である可能性を示唆し、更なる情報を求めた。
そしてキリトたちとアスナたちは合流し、その後に別の小窓を発見して一緒に画像を撮影した。小窓から見えるのは、頑丈な外装を施された巨大人工物であった。
「うーむ、かなりの外装ですね……どんな衝撃も防げる代物です。この構造……どこかで見た気がするんですけど……忘れてしまいました」
如何なる衝撃をも防げる頑丈な外装と、それを施された人工物の構造に見覚えのある犬牟田。だが彼は人工物に対してド忘れしてしまい、途方に暮れてしまってた。
謎の巨大人工物が何なのか、それを調査する為にも一旦合流しようと地下一階で待ち合わせるキリトたち。
そしてキリトたちはシルバー・クロウたちと合流を果たし、再び探索しようと歩き出した。が、その矢先、シリカが自分達が見落としていた小窓の存在に気付き、指を差した。
「キリト、あそこにも小窓があるよ。見てみようよ」
これで最後になる小窓からは、何かの発射口が三つ見られた。その画像を撮影して送信してみると、キリトが犬牟田に訊ねた。
「どうだ、犬牟田?」
「!? こ……これは!」
「どうした、何が分かったんだ!?」
「キリト! シルバー・クロウ! そこにあるのは間違いない、ミサイルです!」
「ミサイルだって!?」
犬牟田からの報せで、人工物の正体が長距離ミサイルである事を知ったシルバー・クロウたちは驚愕した。そんな驚愕する現場の一同に、犬牟田は更に告げた。
「そう、奴ら新世党はミサイルの弾道に寄生生命体Xを詰め込んだカプセルを搭載するつもりだ!」
「ミサイルが爆発したら、どうなるんだ?」
キリトが寄生生命体Xを搭載したミサイルが爆発してしまったらどうなるのか恐る恐る訊ねると、犬牟田は蒼褪めた様子で語り明かした。
「無論、カプセルの中に凝縮されたX達が解放され……少なくとも北半球一帯の人間達に悪影響が出る!」
「悪影響?」
「X達が耐性のない二次元人に寄生して……地上はパニックに陥ります!」
「何だって!?」
新世党の目論見が、B.S.Lを前線基地にしただけに飽き足らず、セクター5そのものをミサイル基地へと改造した上で、地球の北半球一帯に寄生生命体Xをばら撒いて大混乱を引き起こす計画を知って焦燥する現場の一同。
そんな現場の皆に、セントラルエリアの犬牟田宝火が提案を持ちかける。
「キリト、シルバー・クロウ……ミサイルを何としても発射させてはいけません! 弾頭からX入りのカプセルを取り外すんだ!」
「分かった!」
犬牟田よりミサイル弾頭からX入りのカプセルを取り外して、ミサイル発射を阻止せよと指示を受けたキリト達は力強く返答するのだった。
[理想を軽視する者]
キリト達は早速、コンピューターにハッキングしてミサイル発射の為の区域に潜入しようと試みていた。
まずはミサイルサイロのゲートを管理するシステムにハッキングして、門扉を開放させる。
「ミサイルサイロへのゲートを開放します」
コンピューター音声に告げられて、キリト達は迷う事無く特攻状態で邁進する。
そんなキリトたちがミサイル制御区域に突入した矢先、彼らの目の前に見覚えのある丸い体の声楽家が立ち往生しているのが目に入ってきた。
「おい!」
「ぎょっ! ぎょぎょぎょぉ……」
キリトに無愛想な声色で呼ばれた声楽家は、独特の口癖で静かに振り向いてキリト達とご対面する。
「お前は確か……ポロック・三枝!」
先の選考部隊との戦闘で、辛くも撤退して事なきを得た新世党が幹部の一人ポロック・三枝を発見して戦闘体制に入るキリトたちに、ポロック・三枝は独特の口調で動揺しながらも話しかけて来た。
「こ、これは聖龍隊、お早いお着きでしたな。きょ~ほっほ……」
激しく動揺するポロック・三枝に、キリトとクラインが強気な態度で言い放った。
「お前たち新世党が寄生生命体Xを使って、何をしようとしているのか全て分かった!」
「だが、お前らのくだらねぇミサイルは絶対に発射させねぇ。この俺達がな!」
「ぎょほっ? ミサイルの事までバレてしまったんですね」
新世党が開発しているミサイルの事まで露見した事実を知ってあっけらかんとするポロック・三枝に、アスナも険しい面差しで言い切ってみせる。
「あなた達の企みは、私たち聖龍隊が潰します!」
こんな強気な姿勢で立ち向かってくる聖龍隊の新人達を前に、ポロック・三枝は怯む事無く、臆する事無く得意げに熱弁し始めた。
「きょ~~ほっほっほっほ……素晴らしい! ミサイルの弾頭についてもご存知なんですか? 弾頭の鍵は、私たち新世党幹部が持っているのですよ」
Xを詰め込んだカプセルを搭載した弾頭を開く鍵は、自分たち幹部しか持ち合わさっていないと説くポロック・三枝は、更に続けて熱弁した。
「きょ~~ほっほっほっほ……幹部の持っている鍵を2つ合わせないと、弾頭は開かないのですぞ。きょ~~ほっほっほっほ……」
するとこのポロック・三枝の癪に障る話し方にイラついたキリトは、両手に剣を携えてポロック・三枝に言い寄った。
「だったら簡単だ。まずは、あんたをぶっ倒して鍵を頂くとしようか!」
「きょ~~ほっほっほっほ……はたして、できますかな?」
いきり立つキリトたちを前に、ポロック・三枝は自信満々に抵抗の姿勢を示してきた。
「何度も何度も鬱陶しいねっ!」
聖龍隊との戦いを鬱陶しく感じ始めるポロック・三枝は、奇襲攻撃として自身が操る天使型小型兵器「Qビット」を展開するトリオ・ザ・ポロックを発動。自身の左右にQビットを配置させた。
そしてポロック・三枝がQビットに攻撃を命じて、聖龍隊の新参者たちを懲らしめようと指示を出そうとした、その時。
「うりゃりゃりゃりゃりゃ……!」
目にも止まらぬ剣さばきでキリトがポロック・三枝に特攻。激しい猛攻に、ポロック・三枝は堪らず逃げ出してしまう。
「きょほほほ、強いですねえ。しかし私も……まだやられる訳にはいかないのですよ。きょほほほー、またお会いしましょう!」
「逃がすか!」
ロクに戦いもせず逃げ出すポロック・三枝を、キリト達は彼ら幹部達が持っているという弾頭の鍵を入手する為にも後を追った。
そして地下五階 東西ブロック連絡路
連絡路を突っ切って、キリトたちがポロック・三枝を部屋まで追い詰めると、ポロック・三枝は予想外の行動に移った。
「きょ~~ほっほっほっほ」
なんと天使型小型ビット「Qビット」を使って、自分の分身を生成したのだ。そして部屋の中で縦横無尽に入れ替わり、どれが本物か判別できなくなったところで再び逃亡。2体のポロック・三枝はそれぞれ右と左の出入り口から逃亡していった。
「ど、どっちが本物なんだ?」
「わ、分からないよ……まさか自分の分身を作って逃げ出すなんて思いもよらなかったし……」
予想外の行動に移ったポロック・三枝の行動に戸惑うキリトとシルバー・クロウたち。
そして遂には「右だ!」「いいや、左だ!」と言い合う顛末にまで至ってしまう。
キリトたちがそれぞれ右だの左だのと言い争っている最中、冷静沈着なシアン・パイルが落ち着いた面差しできっぱりと言い切った。
「……右ですね、ほら早く行きましょう」「へ?」
シアン・パイルの一言に動きが止まる言い争っていた者たち。するとそんな面々にシアン・パイルがはっきりと言い渡した。
「動体視力はいい方でしてね。あれぐらいの動きだったら、すぐ目が追いつきますよ」
そういうとシアン・パイルは自分が差した右の方角へと足を進ませた。このシアン・パイルの一言に、誰も反論できず黙って彼に着いていった。
(まるで鶴の一声だ)
リーファはこの情景を目の当たりにして、シアン・パイルの発言力に唖然としていた。
そしてシアン・パイルの動体視力の賜物か、一行はたちどころに本物のポロック・三枝を追い詰める。
「きょほ? せ……聖龍隊! なぜバレた!? 仕方が無い……お相手しましょう……」
こうしてポロック・三枝は再び戦闘に突入した。
「何度も何度も鬱陶しいねっ!」
しかし口とは裏腹に、非常に焦っているポロック・三枝は慌てていた。
そして事もあろうにQビット二体を残して、そのまま戦闘から離脱。逃走してしまった。
キリト達は臆病風に吹かれてそそくさと逃げ出すポロック・三枝を追うため、僅か数秒でQビットを破壊してポロック・三枝の後を追った。
「きょ~~ほっほっほっほ」
再びポロック・三枝を追い詰めた一行。だがポロック・三枝はまたしても天使型小型ビット「Qビット」を使って、自分の分身を生成。今度は高速でランダムに入れ替わり、前と左側の部屋へと逃亡してしまった。
「い、今の動きは早すぎだろ!」「逃げ足だけは異常に速いな!」
異常なまでの俊足な動きで此方を翻弄した上で逃亡してしまったポロック・三枝の動きを目の当たりに、キリトとシルバー・クロウは愕然としてしまう。
と、ここで皆は先ほどポロック・三枝の動きを捉える事が出来たシアン・パイルの動体視力に頼ろうと彼に熱い眼差しを向ける。
皆の眼差しを受けて、シアン・パイルは本物のポロック・三枝が逃亡した先を指差して皆と共に追跡を再開した。
「きょほっ!? なんと、しつこいのですか! まったく……邪魔ですねぇ……」
一度ならず二度までも自分を追い詰めてくる聖龍隊を鬱陶しく感じるポロック・三枝は、三度目の対戦を開始した。
「何度も何度も鬱陶しいねっ!」
しかしポロック・三枝が内心慌てているのは変わらず、彼はまたしてもQビットを二体現場に残して逃げ去ってしまった。
後を追おうとするキリトたちの前に、Qビットが立ちはだかり、キリトたち戦前の者たちに向けて攻撃を仕掛けてきた。
Qビットの攻撃に耐えながらも、キリト達は一撃必殺の技でQビットを破壊。
再びポロック・三枝の探索に乗り出した。
「きょ~~ほっほ」
「あっちだ!」
気味の悪い独特な笑い声を発するポロック・三枝の声が聞こえてきた先を指し示し、キリト達は前進していった。
[忠誠者の戦い]
ポロック・三枝の後を追って、キリト達はミサイルサイロ内、その中段部メンテナンスデッキへと出た。
そこで一行の目に飛び込んできたのは、既に完成されている弾道ミサイル、その中段部であった。このミサイルが寄生生命体Xを搭載して地球に向けて発射されれば大惨事が起こるのは必然。
キリト達はミサイル発射を防ぐ為にも、X入りカプセルが搭載されている弾頭を開く為のカギを求め、ポロック・三枝の姿を探した。
と、キリトたちがポロック・三枝の姿を探し回っていると、皆の頭上から声が聞こえてきた。
「聖龍隊の坊や達、こんにちは。しぶといもんだね」
頭上を見上げてみると、其処にはあの鳳凰丸礼の姿が確認できた。
「お前は!」「貴様、よくも!」
キリトとシアン・パイルが顔を険しくさせる中、当の鳳凰丸礼は落ち着いた様子で言葉を返す。
「慌てなくても、ゆっくり相手してあげるわ」
鳳凰丸礼は、新世党に加盟した時に自分が崇拝する鬼龍院羅暁がREVOCSコーポレーションの技術で作り上げた特製の戦闘スーツを着用していたのだが、此処でその本領を発揮してキリト達に挑んできた。
「かかっておいで、坊や達!」
鳳凰丸礼は戦闘スーツと同等に特製の得物である電磁鞭ブラッディスネークをキリトたちの足元に打ち付けて猛威を示す。
「体に教えて差し上げよう」
丁寧な口調で臨戦態勢に突入する鳳凰丸礼に、キリト達は応戦しようと攻撃を仕掛けていく。
だが機敏性の高い特製スーツを着用した鳳凰丸礼の動きを捉える事は至難であり、簡単に攻撃を当てる事が難しかった。
しかも此処で鳳凰丸礼は俊敏なスーツから残像が発生し、その残像を何重にも纏ってキリトたちの目を欺こうとする。
さらに残像を纏った鳳凰丸礼の攻撃も過激に変化し、電磁鞭ブラッディスネークの攻撃回数も上昇した。
「うわッ」「きゃあ!」
残像から放たれる連続攻撃に、戦前の者達は苦戦を強いられる。
「こ、コイツ!」
クラインとエギルが二人がかりで鳳凰丸礼に攻撃を当てて、撃墜させようとするが、鳳凰丸礼が纏っている残像体と本体が見分けがつかず、本物の鳳凰丸礼に攻撃を直撃させる事ができず逆に返り討ちに遭ってしまう。
すると鳳凰丸礼の残像をかき消そうと、キリトが鳳凰丸礼に特攻して鬼神の如き迫力で二刀流の剣を振り翳して連撃をお見舞いする。
「きゃあっ!」
キリトから浴びせられた連撃に、堪らず鳳凰丸礼は怯んでしまい己の身体に纏っていた残像体が掻き消えてしまった。
「今だ! 残像が消えた今を狙うぜ!」
キリトの掛け声を合図に、シルバー・クロウやその他の戦士達も鳳凰丸礼に攻撃を浴びせていった。
しかし幾度とない攻撃を浴びせようとも、瞬時に肉体を再生させられる鳳凰丸礼の耐久力の高さに圧倒されてしまう一同。
「こ、コイツは……纏流子や鬼龍院皐月と同じ……!」
新世代型二次元人で驚異の再生力を誇っている纏流子と鬼龍院皐月と同様の再生力を備えている鳳凰丸礼に一驚するエギルたち。
そんな驚くプロト世代の面々を前に、鳳凰丸礼は目力を強くさせて言い放った。
「どうだ……! これが、我ら新世代型二次元人の力! お前達、出来損ないのプロト世代とは訳が違うのだ!」
次の瞬間、鳳凰丸礼は自分が得物にしている電磁鞭ブラッディスネークを一直線に振り付けてアスナの首を捕らえた。
「うっ」「あ、アスナ!」
首に鞭を巻かれたアスナも、それを目撃したキリトも呆気に取られたその瞬間、鳳凰丸礼は電磁鞭に強力な電撃を発生させてアスナを感電させる。
「きゃあああっ!」「アスナ! ……クソッ」
悲鳴を上げるアスナを救おうと、キリトはアスナの首に巻きつく電磁鞭を切断しようと剣を振り上げる。だが電磁鞭は何やら特殊な物質で作られているのか、並大抵の斬撃では歯が立たなかった。
「クソッ、こうなったら……」
鞭を切断できないと判断したキリトは、再度、鳳凰丸礼に飛び掛ってアスナへの攻撃を遮断させようと試みる。
しかし地上戦を展開するキリト達とは裏腹に、空中を舞う様に滞空する鳳凰丸礼は、ひらりと身体を反らしてキリトの攻撃を回避する。
そして鳳凰丸礼は、一定時間痺れさせたアスナの首から電磁鞭を引き離すとまた新たな標的に狙いを付けて応戦する。
「これでどう?」
鳳凰丸礼は電磁鞭を振り当てて今度は戦前の者たちに鞭攻撃をお見舞いした。
「うわッ!」
クラインやシアン・パイル達は、その強烈な鞭捌きに圧倒され、鳳凰丸礼に近づく事が困難に至った。
「どうして……どうしてアンタらは、こんな真似をするんだ!」
戦いの最中、キリトが対峙する鳳凰丸礼に強く問い詰めると、鳳凰丸礼は目の前のキリトたちプロト世代を見下す様な眼差しで申し付けた。
「私が崇拝する鬼龍院羅暁様は、生命戦維で世界を支配するという野望を昔から持っていた……だが、あのキャップ・ド・レッドが我々の目の前に現れたとき、全てが変わった。羅暁様はキャップ・ド・レッドの思想を崇拝するようになり、我々新世代型二次元人の世を創世するという高貴な目的のために今でも活動していらっしゃる……私には心変わりした鬼龍院羅暁様の考えなど遠く理解できない。だが、私はあの方に救われた……あの方が、羅暁様が理想とする世界が、お前たちの様なプロト世代や旧世代の二次元人が蔓延る世界ではなく、全く新しい我々新世代型による世界であるのなら……私はそれに従うのみ……!」
鬼龍院羅暁への篤い忠誠心を見せる鳳凰丸礼の力強い言動に、キリトやシルバー・クロウ達は圧倒されてしまう。
鳳凰丸礼。彼女は過去に二十年前のアフリカ某国の内戦が激しい地域で羅暁に命を救われ、羅暁からサングラスと「鳳凰丸礼」という名前を与えられ、羅暁に絶対的な忠誠を誓うようになったのだ。
そんな忠誠心の篤い鳳凰丸礼と対峙して、キリトは目付きを鋭くさせて礼に言い返した。
「新世代、新世代って……そんなに新世代型が偉いのか!? お前たち新世党以外の新世代型は、誰もが気兼ねなく付き合ってくれる気立てのいい連中ばかりだ! お前らみたいに、大勢の罪なき人々の人名を奪うテロリストと……
すると、このキリトの言い分に鳳凰丸礼もすかさず反論した。
「愚かな! 劣等種であるプロト世代や旧世代と互いを利用し合うとも、そこからは何も生まれない! 優れた種、優れた逸材こそ未来を築ける力があるのだ!!」
「利用し合う……だと? その考えから既に間違っている!」
協力ならいざ知らず、利用し合うという考えに異論を唱えるキリトは次のように語った。
「所詮、俺たち二次元人は、どんな高等な種だろうと関係ない。三次元人からしてみれば、ただの創作物……紛い物の命と見られているのが現実だ」
「き、キリトくん……!」
キリトの発言にアスナたち周囲の仲間たちは愕然となる。するとそのキリトの話を聞いて鳳凰丸礼がさも当たり前のように語り返した。
「それこそ、今までの二次元人の限界なのだ! 創作物、紛い物としてしか捉えられない我々二次元人の世界に革命を起こせるのは、優れた遺伝子を持って生まれてきた我ら新世代型を置いて他に居ない! ……かの小田原修司のコピー、メカルスが言い残している。「二次元人が偽物だとは認めよう、だが偽物が本物を越えてはいけない決まりは誰が決めた?」と! 我々二次元人が、百歩譲って只の偽りの種族だとしても……三次元人を超えてはいけないという決まりには縛られてはいない筈だ!」
「それが……変える力か?」「……?」
「それが二次元人の変える力か! 世の中を、時代を変えていける力だとでも言うのか!!」
次の瞬間、キリトは目の色を変えて鳳凰丸礼に二刀の剣で斬りかかりながら熱く語った。
「支配するんじゃねえ……共に支えあい、助け合いながら、前へと向かって生きていけるのが二次元人の本質じゃないのか!」
「ッ……!」キリトの気迫に押され、凄まじい攻撃の数々に圧倒されていく鳳凰丸礼。
しかし鳳凰丸礼も、負けじとキリトが放つ剣戟に応戦しながら語り返していく。
「フッ、だから貴様らプロト世代という出来損ないの限界だと申しているのだ! 二次元人が今より高い技術、高い能力を欲し続ける……すなわち進化への意志! それを具現化した我ら新世代型二次元人こそが、今までの古き二次元人を払拭する進化した二次元人である事を、なぜ理解しようとしない!」
「お前達の言う進化は……自分たち以外の二次元人や三次元人を排除しようとする、腐った野心か!」
「我々は今まで、あしらわれていた二次元人に代わりこの世を創り直せる偉大な力が、遺伝子レベルにまで刻み込まれているのだ! 今までの古き種を滅ぼして、新たな時代を築く事こそ二次元人の進化そのものなのだ!!」
「それは違う!」「……!?」
「……俺も一昔前は、二次元人は三次元人に支配されるだけの……非業の運命を与えられるだけの存在なのかと思い詰めていた。しかし! ……バーンズが、総長が教えてくれた。「二次元人には世界を、そして何より人を変えられる可能性がある」と」
「………………………………」
「お前達の言う進化までは否定しない! だけど俺たち二次元人の可能性が……古い種を、他の二次元人や三次元人を滅ぼすのが進化だと俺は認めない! 共に生き、共に支え合える三次元人と一緒に次の時代を切り拓けると……俺は信じたい!」
激しく言い合いながら二次元人の進化について語り合うキリトと鳳凰丸礼。その中でキリトは過去に自分が二次元人の現状について思い悩んでいた時に、総長バーンズから「二次元人の変える力」について聞かされ、更に今日にまで至る日々の中で出会ってきた多くの名のある武人である三次元人との出会いを思い返して、彼らと共に生きてこそ次なる時代を創れるのではないかと鳳凰丸礼に強く主張したのだった。
そして己の力強い信念と意志を全て吐き出したキリトは、凄まじい剣戟の嵐で鳳凰丸礼を圧倒していき、彼の熱弁を聞いて愕然としている鳳凰丸礼の僅かに生じた隙を突いてキリトは快心の一撃を浴びせた。
「きゃあっ!」
キリトの快心の一撃を浴びた鳳凰丸礼は崩れ落ち、ゆっくりと地面に足を着けた。
「くっ……やるではないか」
キリトの熱い意志と闘志が鳳凰丸礼を崩し落とした。
「ああ……っ!」
そしてキリトの一撃に意識が低迷した鳳凰丸礼は、足元をふらつかせてメンテナンスデッキから足を滑らせてしまった。
奈落の闇に引きずり込まれるように落下していく鳳凰丸礼を傍観して、クラインがある事を思い出して皆に言った。
「おい、あいつも幹部だろ」
このクラインの発言に他の皆々もすっかり忘れてしまってた例の品を思い出した。
「鍵だ! 行って取って来なきゃ!」
幹部が持つといわれるミサイルの弾頭を開口する為の鍵。その一つを落下していった鳳凰丸礼が持っていた事実を思い出して、シルバー・ロウが自分たちも急ぎ、最下層に降りて落下した鳳凰丸礼からミサイル弾頭の鍵を回収しなければならないと告げる。
一行は急ぎ、鳳凰丸礼が落下したミサイルサイロ基底部へと向かうのだった。
[謎残る顛末]
キリトたちが落下していった鳳凰丸礼を追っていたその頃。
当の鳳凰丸礼はミサイルサイロの基底部に落下したまま悔しがっていた。
「ちくしょう! あいつらめ……」
鳳凰丸礼は最後の力を振り絞り、何とか壁伝いで立ち上がる事が出来た。と、其処に一人の丸い体をしている男が礼に歩み寄ってきた。
「ポロック!」
鳳凰丸礼は負けた自分を笑いに来たのかと思ったポロック・三枝に対してすかさず弁論した。
「言っとくが、まだ負けたって決まった訳じゃない!」
すると鳳凰丸礼の強気な態度を前に、ポロック・三枝は礼に予想外の話を伝える。
「それなんだがね、鳳凰丸礼。たった今、我らが総統であるキャップ・ド・レッド様と君が崇拝してやまない鬼龍院羅暁からの緊急連絡でね。寄生生命体Xを詰め込んだカプセルを回収して、撤退する事になったのだよ」
「撤退!?」礼が驚くと、ポロック・三枝は話し続けた。
「キャップ・ド・レッド様は寄生生命体Xを詰め込んだカプセルが、聖龍隊に奪われる事を恐れているんだ」
「で、でも……XはこのB.S.Lに五万といるんだ。今更、カプセルのXが奴らに奪われても、また新たにXを収集すれば良いだけの話なんじゃ……」
「どちらにしろ、鳳凰丸礼……! お前の鍵を渡してもらおうじゃないか」
「ま、待ってくれ。弾頭の鍵は、私達が手首に装着している腕輪に埋め込まれていて、簡単には外れない仕組みなのは知っているだろ!? スカー・フェイスに確認を……」
「確認など要らん! 鍵を寄越せ、礼!」
ポロック・三枝は強引に鳳凰丸礼の腕を引っ張り、遂には彼女の腕を引き千切って鍵入りの腕輪ごと強奪したのだ。
「さあ! 鍵を貰うぞ!」
鳳凰丸礼から腕ごと鍵を強奪したポロック・三枝は、そのまま現場から走り去ってしまった。
一方キリト達は、エレベーターで最下層にまで降りて、エリアW-BO3に到着した。
彼らはまずミサイルサイロの基底部内に進入できる扉を探し出すところから探索は始める。
急ぎ鳳凰丸礼から鍵を回収してミサイル弾頭に仕掛けられた寄生生命体Xを詰め込んだカプセルを押収しなければ、新世党の驚異は低下しない。
キリト達が必死にサイロへの入り口を探し続けていると、ようやく此処で基底部メンテナンスサイロへの入り口を発見する。
皆が発見したミサイルサイロ基底部へと進行すると、そこには血の海の中で倒れる鳳凰丸礼の惨状が飛び込んできた。
「可笑しいぞ? 鳳凰丸礼の腕が引き千切られている……!」
「酷い。この血の量……私たちとの戦闘でついた傷では、ここまでの出血は無いのに……」
先の戦闘では腕に全く損傷など見られなかった事実を述べるシアン・パイルに対し、アスナは余りにも酷い出血の量に思わず口を押さえて悲観してしまう。
すると此処で、強引に腕を引き千切られ、大量の出血と激痛で気絶していた鳳凰丸礼の意識が戻った。
「きさまら、聖龍隊!」
片腕を失いながらも未だ敵意をむき出しにする鳳凰丸礼に、キリトが弾頭の鍵の提出を求める。
「あんたはもう戦闘不能だ。弾頭の鍵を渡してもらおうか」
「鍵!? ッ、ちくしょう、ポロック!」
「ポロックって……ポロック・三枝か?」
突然怒りを露にする鳳凰丸礼の反応を前にして、キリト達は直感でポロック・三枝が鍵を強奪した事実に気付いた。
「仲間割れ? ポロックって奴が彼女を襲って、腕輪の中に隠してあった鍵を、腕ごと奪ったってこと?」
「そうらしいわ」
ポロック・三枝が鳳凰丸礼の腕ごど、鍵が入っている腕輪を強奪した事実にシルバー・クロウが驚いていると、ブラック・ロータスもその様な凶行に走ったポロック・三枝に対して怒りを通り越して呆れ果ててしまってた。
困惑する仲間達に、キリトが力強く告げた。
「よし、ポロックを追おう。鳳凰丸礼は、この状態じゃ、もう戦えないだろう。それよりもポロック・三枝だ!」
ミサイルサイロ基底部で、血まみれの鳳凰丸礼を発見したキリト達は、彼女からミサイル弾頭の鍵を強奪したポロック・三枝を追って移動しようとしていた。
「ぐっ……くそぉ……ポ、ポロック……め………………許さない……」
何とか意識を取り戻したものの、腕から流れる夥しい程の出血で意識が昏迷する鳳凰丸礼は、壁に寄りかかり少しでも楽な姿勢を取ろうとする。
「……彼女の事は、多分ほかの新世党の連中が拾いに来て、どうにかしてくれるだろう。俺たちはそれよりもポロック・三枝を追うんだ!」
重傷の鳳凰丸礼は、その他の新世党の面々が回収しに来てくれる事を示唆するキリトは、自分たちは自分たちでポロック・三枝の追跡をしなければと仲間に言い聞かせる。
その頃、鳳凰丸礼からミサイル弾頭の鍵を強奪したポロック・三枝は、ミサイルの弾頭から寄生生命体Xを詰め込んだカプセルを一人で移送しようと取り掛かっていた。
「きょほほほ! やった、遂にやったぞーー。きょほほほ!」
大いに喜ぶポロック・三枝は高々と笑い飛ばす。そして己の野望を淡々と語り始めた。
「これだけの寄生生命体Xを一人で地球に持ち帰れば、好奇心の塊である科学者共が高い値をつけて買い漁ってくれる! きょほほほ!」
そう、ポロック・三枝の目的は新世党の思想とは正反対。研究資料として寄生生命体Xを地球に持ち帰り、密かに売買して得た巨額の金で落ちぶれた三枝一族を復興しようと企んでいたのだ。
「キャップ・ド・レッドめ、何が新世党だ! 何が全二次元人の理想だ! そんな絵空事が何になる!? 結局、ミラーガールのセイント・コンパクトを研究しても私たち新世代型に何の作用も齎してくれなかったじゃないか! 裏切っても、奪っても、最後に力を手にしたものが勝つのだーー」
ポロック・三枝。彼は表向きはキャップ・ド・レッドに忠誠を誓っている様な素振りを見せていたが、裏ではキャップ・ド・レッドたち新世党の思想を軽視し、己の欲望のために虎視眈々と大金を生む可能性を持っている寄生生命体Xを狙っていたのだ。
「きょほほほ!」
己の欲望を満たしてくれる代物を新世党から奪い取れる顛末に大満足するポロック・三枝。
と、そんな彼が喜々と高笑いを上げている時だった。
「その通りだ。ただのデブかと思いきや、案外良いことを言うな、あんた」
「お、お、お、お、お前は!?」
突然目の前に現れた、その人物を見てポロック・三枝は激しく動揺してしまう。
その頃、エレベーターで最下層のミサイルサイロ基底部から一気に、最上階のミサイルサイロ最上部に昇降するキリト達はエリアW-BO4に降り立った。
其処でまたしてもミサイルサイロへの入り口を探索するが、先ほどとは違いミサイル弾頭へ向かえる出入り口をスグに発見できた。
一行は急いでポロック・三枝の野望を阻止しようとミサイルサイロ上層部に駆け込んだのだが……
「死んでる」
なんと現場では既にポロック・三枝は何者かに惨殺された後であり、腕が消失してしまうほどの惨たらしい状態で発見された。
「ひ、酷すぎる……敵とはいえ、此処まで無残に殺されるなんて……」
余りにも惨たらしい殺し方に、アスナはドン引きしてしまう。
「でも、ほら。Xが凝縮されたカプセルは弾頭に残ったままだよ。急いで持って帰ろう!」
しかしポロック・三枝が持ち去ろうとしたX入りのカプセルは無事であり、シリカはこれを解析の為にもセントラルエリアに持っていこうと提案する。
「ど、どっちにしても……ミサイルはこれで効力を失ったし、結果オーライって事で良いんだよね、お兄ちゃん……」
「あ、ああ、そうだけど……」
義妹のリーファから訊ねられるものの、キリトはポロック・三枝が何者かによって惨殺された経緯、そしてなぜ現場にはX入りのカプセルが残されていたのか思考にふけた。
「一体、何が起こっているんだ?」
[謎多き現状]
その頃、新世党が拠点にしているB.S.Lの最上層部VIPエリアでは。
新世党が幹部の一人、スカー・フェイスがVIPの見回りと、新世党メンバーがちゃんと活動しているのかを見て回っていた。
「うむうむ……よし! 全員が各々に与えられた責務を全うしている様だな!」
新世党の面子が、しっかりと与えられた責務をこなしている現状を目視して首を縦に振るスカー・フェイス。
するとそんな矢先の出来事だった。
スカー・フェイスが今度は一部の幹部メンバーしか立ち入れられない総統キャップ・ド・レッドの部屋に近づこうとした時、彼の視界にある光が飛び込んできた。
スカー・フェイスがそっと覗き込んでみると、蒼い光の中から自分達が信じてやまない総統キャップ・ド・レッドの姿が現れたのだ。
「……おお、スカー・フェイスではないか。見回りか? それはそれは……ご苦労な事だな」
「は、はッ! 総統も快調のご様子で何よりです! ところで、此処で何を……?」
「ははは、私も少しながら君の見回り活動に協力していたのだよ。何せ最初の頃はリフレッシュセンターに引きこもりっきりで、大した役目も果たせなかった始末だしね」
「そ、そんな! 総統は、我ら新世党の理想そのもの! 何もしなくても、その場に居てくれるだけで宜しいんです!」
「はは、まあ、だが何もしない上役では誰もついて来ない。自ずと自らの足、自らの耳と目で物事を確認せねばならない」
「素晴らしい……! このスカー・フェイス、感服いたしました!」
「はは、もうこの辺は私が見回った後だし、もう大丈夫だよ。スカー・フェイス、君は他の新世党の面々にだけ注意を払ってくれないかね? 彼らは我々と同じ新世代型だというのに、思考の違いから何かと衝突してしまうのが目立ってしょうがない。同じ志を持つ同志として、これ以上の衝突を避けていてほしいのだが……」
「はッ! 心得ました、キャップ・ド・レッド総帥!」
キャップ・ド・レッドから申しつけを告げられたスカー・フェイスは、早速実行に移そうとその場から去っていった。
そしてスカー・フェイスが立ち去るのを見届けたキャップ・ド・レッドは、心の内で密かに思いを滾らせていた。
(クククククク、せいぜい最後の時まで足掻き続ければいいさ、お目出度い連中め。裏切り者のポロックは始末した、我が部品となる新世代型二次元人も集まった……後は時が来るのを待ち続け、機会を見計らってセイント・コンパクトを手中に収めれば……私は最高の存在に、究極の生命にシンカする事ができる……!)
何やら不穏が流れ出るVIPエリアとは裏腹に、その真下のセントラルエリアではキリト達が持ち帰ってきた寄生生命体Xが詰め込まれたカプセルの調査が始まっていた。
「う~~ん、これは……」
「ちょっと犬くん! 何か判ったんならハッキリと言ってよっ!」
「落ち着け、蛇崩……それで犬牟田、なにか判ったのか?」
伊織糸朗やキリト達より早く帰還していたメタルバードと共にカプセルの調査をする犬牟田宝火に、同じ生徒会四天王の蛇崩乃音が結果を急かす。それに対して
すると犬牟田はコンピューターでXが詰め込まれているカプセルを調べてみた結果を言い渡した。
「このカプセルは大気圏を突破しないと割れない特殊な素材で作られています。なので宇宙空間に発射されても、スグにはX達は拡散しないように設計されていますね」
犬牟田に続いて、自分のレーダー化した眼球で調査してみたメタルバードが結果を皆に報せる。
「オマケに、このカプセルの素材はB.S.L内でも特に貴重な材料で作られているから、おそらく新世党の連中はもうXを詰め込めるカプセルは作れないだろうよ」
「そ、それって……つまりこのままカプセルを私たちが自衛していれば、新世党はXを地球にばら撒く事はできないのね!?」
「そういうことだよ、アッコ」
Xを詰め込む為のカプセルは、B.S.Lでも貴重な材料から作られているため、二度目の製作は困難だろうと説くメタルバードの話を聞いて、アッコは自分達がカプセルを自衛していれば新世党が地球に向けてXを搭載したミサイルを発射できない事実を悟って安堵する。
このカプセルと同じく、その中に詰め込まれていたXの研究も同時に進められていた。
Xは何故か、聖龍隊や赤塚組のようにD-ワクチンから特別に作られた抗体を打たなければ忽ち寄生してその命を奪う恐ろしい生き物だが、三次元人と新世代型二次元人には全くの効力はなく、二つの種族に対しては寄生する事はなかったのだ。
そんなXの細胞を念入りに調査してみると、新世代型二次元人たちが睨んだとおり、Xの細胞の中に変異元であるD-ワクチン、その投与者である小田原修司の遺伝子が確認されたのだ。
Xは元々、過去に筋肉増強剤D-ワクチンを投与した小田原修司から摂取した遺伝子の突然変異から生まれたものであり、それ故に小田原修司の遺伝子を兼ね備えているのである。あのSO-Xも突然変異する前の小田原修司の遺伝子データをXがコピーした事で生まれた最強の生命体である。
さらに新世代型二次元人たちは、小田原修司の遺伝子に多大な関心を持ち、B.S.Lのコンピューターを可能な限りハッキングして小田原修司の情報をかき集めた。
すると小田原修司の遺伝子は万能であり、様々な病気や身体損害にもスグに対応できるとの事。その小田原修司のD-ワクチンで強化された遺伝子配列を芸術と捉える学者も少なくないという。
と、ここで新世代型二次元人たちは予想もしていなかった事実に突き当たる。なんと学者達が芸術とまでに称賛するD-ワクチンで強化された小田原修司の遺伝子配列と、自分たち新世代型の遺伝子配列のパターンが酷似している事実を突き止めた。さらに詳しく調査する為、念のために現場に居る全ての新世代型から髪の毛や血液を採取して調べた結果、全員の遺伝子配列のパターンが酷似していたのである。これは同時に小田原修司の遺伝子配列のパターンと新世代型二次元人の遺伝子配列がほぼ同じ結果を指し示す。
以下の事実を突き止めた新世代型二次元人たちは、今までの旅路で自分たちに対して良くしてくれた赤塚組の幹部衆たちに相談した。
聖龍隊に話してみても、また上手く話を逸らされてしまう可能性があるからだ。
大将たち赤塚組も、前々から新世代型二次元人とは何なのかを旧友であるHEADから聞きたかったのであるが、これまた上手く話を逸らされてしまう事が多かったのだ。
だが苦悩する新世代型二次元人を前にして、大将たちも決意を新たに、旧友であるHEADから「新世代型とは何なのか?」を問い詰める事にした。
「ねえ、うさぎちゃん! あなた達は知っているんでしょ? 新世代型二次元人の秘密……」
「教えてくれないかい、うさぎちゃん、いや、ネオ・クイーン・セレニティ!」
親友である、なるとぐりおの海野夫妻から問い詰められるセーラー戦士達。だが彼女達は全員、重く険しい面差しで夫婦に言った。
「………………ごめんなさい、なるちゃん、ぐりおくん」
セーラームーン率いるセーラー戦士達からは何も答えてもらえなかった。
「りりか! もういい加減に教えてくれる? 新世代型の子達も気にしているのよ! みんなの不安を消してあげて」
親友の水原花林はナースエンジェルに、新世代型二次元人たちの不安を解消してくれるよう嘆願するものの。
「……本当にごめん。それには答えられないわ」
と、どこか悲しみすら感じられる険しい表情のナースエンジェルに拒まれてしまった。
「ハニー、教えてちょうだいよ! 何だか、他の聖龍隊……マン・ヒールズやルーキーズも何か知っているみたいだけど、あなた達に口止めされているのか何も答えてくれない!」
「……夏子、私は聖龍隊を束ねるHEAD、そして何よりアニメタウンという一国家を統括する組織の一員として、友達である貴女に言える事は何もないの……」
秋夏子からの問い掛けに、キューティーハニーも他のHEAD同様なにも答えてはくれなかった。
「さくらちゃん、あなたまでも他の聖龍隊同様、口を閉ざしたままなの!?」
「木之元、お前達が今や国の……アニメタウンのトップである事は重々承知している。だけど真実まで隠し通す事はないだろ」
「……ごめんなさい……」
千春と貴史の山崎夫妻からの悲痛な訴えに対して、カードキャプターの木之元桜は悲愴な面持ちでただただ謝罪するばかりであった。
「結ちゃんたちも他のHEADと同じか……親友である僕達にも何も話してくれないんだね」
「結ちゃん、春菜ちゃん、愛ちゃん……私たち、何だか悲しいわ……」
「「「………………………………」」」
コレクターズの三人までも無言の相を保持する現状に、一太郎とレイコの市川夫妻は悲しみに暮れた。
「ちせ……友人である俺たちにすら、話せない事が新世代型には隠されている訳なのか?」
「ちせちゃん……新世代型って、一体なんなの……?」
「ちせ君、私たちはこうして運命が変わり、あれからも色々な事を積み重ねて今を生き抜いている。どうか新世代型の子達にも、そんな安心を与えてくれないだろうか……」
「お願いよ、ちせちゃん……貴女だけでも答えてちょうだい」
「ちせ……貴女は昔より強くなったわ。無論、それは力じゃなく、心の方が……そんな貴女に私たちは敬意を示してもいる。なのに、何も答えないのは少し癪じゃない?」
「……私から話せる事は、今はないわ……」
アツシ/アケミ/テツ/ふゆみ/ミズキから問われるものの、ちせは何も話そうとはしなかった。
「……なあ、バーンズ、ジュニア、アプリ、それにアッコ。ずっと黙り続けている気かよ?」
大将に問い詰められ、メタルバードとジュピターキッドとウォーターフェアリーとアッコは困り果てていた。
「新世代型の子供達が、怯えているでヤンス」「なんであの修司と自分の遺伝子が似ているのかって……」
ギョロとゴマが不安そうな面持ちで問い詰める。
「アッコちゃん! アタイ達にすら話してくれないってワサ!? そんなに薄情な連中だったの、聖龍隊は!!」
チカ子の怒号まで響き渡る始末。それでもアッコも他のHEADも語ろうとはしなかった。
「……なあ、アッコ。そんなに言うのが嫌なら、別に答えなくても良いぜ。代わりに俺様のホッペにチューしてくれたら、これ以上の問答はやめにしてやるぜ」
大将はアッコに、頬にキスをすればこれ以上の詮索はやめてやるとフザケ半分に言い付けた。
すると何ということか。アッコは大将に徐に顔を近づけて、頬に口付けをしようとしてきたのだ。
「わっ、わっ! や、やめろよ……」
突然のアッコからの口付け行為に戸惑う大将は、険しい顔付きでアッコに言った。
「そんなに言うのが嫌なのかよ……! 親友である俺たちにも、何も話してくれねえのかよ」
悲痛な想いで精一杯の真情を口から出す大将に、アッコは険しくも悲しい顔で話し始めた。
「……大将、世の中にはね、知らなくても良い事が沢山あるのよ。知ってしまえば必ず、少なからず後悔してしまう現実が世の中には残酷なほどある……もちろん、私たち聖龍隊はいつまでも新世代型の事を隠す気はないわ。時を見て……いいえ、少なくともこのB.S.Lでの一件が片付いた後には、語れる時にでも語るつもりよ……真実ってものは、いつまでも隠し通せるものじゃないんだから」
アッコがそう大将たちに言い残すと、アッコたちHEADはその場から立ち去ってしまった。
無二の旧友である聖龍HEADから何の情報も教えてもらえなかった大将たちは物凄く残念でならなかった。
お互いを良く知り合う親友だというのに、その親友にすら事実を隠し通す聖龍HEADの心意に赤塚組は心を痛めていた。
「一体なんなんだ……新世代型ってのは……」
大将は全てを教えてくれないHEADへの苛立ちを抑え込みながら、落ち込むのだった。