現政奉還記 未来都市&宇宙編 作:セイントドラゴン・レジェンド
一方その頃、セントラルエリアではセイント・コンパクトを奪われてしまった経緯を回復した通信でドレフ将校に伝えてた。ドレフ将校の方でも独自の調査を進めており、新世党は以前よりB.S.Lに潜入員を密かに送り込んで、研究施設の各所を密かに自分達の基地として改造していたらしいのだ。そしてドレフ将校は、銀河連邦との審議で部隊を引き連れてB.S.Lに突入できるかもしれないと報せてくれた。そして現在進行中で新世党がセクター5の極寒エリアで何らかの重要施設を建造中と報告を受けたアッコは、総長メタルバードの不在から代わって仲間の隊士たちから選考部隊を決めていく。そして選抜された【SAO】と【AW】の二組に新世党が活動中の基地に潜入して、その動向を探りに向かわせた。
アッコから指令を受けた二組の聖龍隊士は、その基地で造られている巨大な建造物を調査する。するとそれは何と、寄生生命体Xを詰め込んだ特製カプセルを弾頭に搭載させたミサイルだったのである。新世党はXを詰め込んだミサイルを最終兵器として運用しようとしていたのである。これを防ごうと奔走するキリト達だが、その前にポロック・三枝が立ちはだかり、ミサイルの弾頭を開口するには自分たち幹部が持っている鍵が最低でも2つないと開かない事を自慢げに語る。鍵を回収しようとポロック・三枝と戦闘を開始するが、逃げ足の速い敵に対してキリト達は翻弄されてしまう。そんな中、前回聖龍隊の面々を流砂に落として亡き者にしたと思い込んでいた幹部の鳳凰丸礼に、スカー・フェイスが彼らが生き延びている事を伝える。非常に残念がる鳳凰丸礼は聖龍隊へのリベンジを決意し、キリトたちの前に立ちはだかる。だがキリトの猛攻と彼の未来を想う闘志に圧倒された鳳凰丸礼は奈落に落下。鍵を回収しようとキリト達は鳳凰丸礼を追う。しかしそんな一度ならず二度までも敗北した鳳凰丸礼の鍵を、事もあろうに同じ幹部であるポロック・三枝が彼女の腕を引き千切ってまでも強奪。ポロック・三枝は最初から新世党の理想を軽視しており、大金を生む可能性がある寄生生命体Xを密かに持ち逃げしようと画策していた。だが、そのポロック・三枝の前に謎の人影が立ちはだかり、キリト達が駆け付けた際にはポロック・三枝は既に惨殺された後だった。
こうしてキリト達はXを詰め込んだ特製カプセルを弾頭から回収し、セントラルエリアに持ち帰って精密検査をしてみる事に。その際、Xによる研究も新世代型二次元人の手によって進められたのだが、この時とんでもない事実が次々と発覚する。このカプセルと同じく、その中に詰め込まれていたXの研究も同時に進められていた。Xは何故か、聖龍隊や赤塚組のようにD-ワクチンから特別に作られた抗体を打たなければ忽ち寄生してその命を奪う恐ろしい生き物だが、三次元人と新世代型二次元人には全くの効力はなく、二つの種族に対しては寄生する事はなかったのだ。そんなXの細胞を念入りに調査してみると、新世代型二次元人たちが睨んだとおり、Xの細胞の中に変異元であるD-ワクチン、その投与者である小田原修司の遺伝子が確認されたのだ。Xは元々、過去に筋肉増強剤D-ワクチンを投与した小田原修司から摂取した遺伝子の突然変異から生まれたものであり、それ故に小田原修司の遺伝子を兼ね備えているのである。あのSO-Xも突然変異する前の小田原修司の遺伝子データをXがコピーした事で生まれた最強の生命体である。さらに新世代型二次元人たちは、小田原修司の遺伝子に多大な関心を持ち、B.S.Lのコンピューターを可能な限りハッキングして小田原修司の情報をかき集めた。すると小田原修司の遺伝子は万能であり、様々な病気や身体損害にもスグに対応できるとの事。その小田原修司のD-ワクチンで強化された遺伝子配列を芸術と捉える学者も少なくないという。と、ここで新世代型二次元人たちは予想もしていなかった事実に突き当たる。なんと学者達が芸術とまでに称賛するD-ワクチンで強化された小田原修司の遺伝子配列と、自分たち新世代型の遺伝子配列のパターンが酷似している事実を突き止めた。さらに詳しく調査する為、念のために現場に居る全ての新世代型から髪の毛や血液を採取して調べた結果、全員の遺伝子配列のパターンが酷似していたのである。これは同時に小田原修司の遺伝子配列のパターンと新世代型二次元人の遺伝子配列がほぼ同じ結果を指し示す。
事の真相を知りたい新世代型二次元人は、自分達を長い間贔屓にしてくれている赤塚組にこの事を相談。赤塚組は旧友であり、何かしらの事実を知っているであろう聖龍HEADに問い詰める。だが彼女達は一向に口を開こうとはせず、真実を語ろうとはしてくれなかった。赤塚組はそんな聖龍隊に対して、若干の亀裂が生じたのを薄々ながら感じ取っていた。
[揺れるB.S.L]
聖龍隊と赤塚組、そして新世代型二次元人たちが次の行動に移ろうとB.S.Lのセントラルエリアで活動中のとき、事件は起きた。
なんと宇宙ステーションであるB.S.Lが突然、地響きのような揺れを生じ出したのだ。
「わっ! なんだ、地震か?」
「って、宇宙のど真ん中で地震なんてある訳ないでしょーがッ」
自分達が今宇宙ステーションに居る事をすっかり忘れて地震だと慌てふためく新世代型の燃堂力に、プロト世代のギュービッドが突っ込む。
しかしその揺れは、しばらくB.S.Lを小刻みに揺らしただけでスグに治まり、皆はホッと胸を撫で下ろす。
「い、今の揺れは……?」
「お前達、大丈夫か!?」
「バーンズさん……! はい、何とかみんな無事です」
突然の揺れに困惑する新世代型の星原ヒカル。すると其処に先ほどまで赤塚組と話し合っていたメタルバードが駆け込んできて、新世代型の出雲ハルキがメタルバードに報告する。
「お、おい? 震源地は何処だ……!?」
「震源地って……ここは宇宙なんだから、その言い方はどうかと思うわよ」
バーンズに続いて入室してきた大将の一言に、ミズキが呆れ果てる。
するとその時、ナビゲーションコンピューターのランプが点滅し、人工知能からの応答がある合図が入った。
聖龍隊と赤塚組は、早速ナビゲーションコンピューターにアクセスして人工知能からの話に耳を傾けた。
「聖龍隊、君らは警備ロボットを覚えているか? 先ほどのB.S.L全体を襲った振動はそれが原因だ。奴は遂に、Xに寄生されてしまった様なのだ。奴の様に……人間の脳細胞を応用したマシンは珍しくない。この事がXの寄生を許してしまった理由だ。奴はセクター6の暗黒エリアに侵入した。聖龍隊、今回の敵はXの寄生も相まって非常に厄介な相手だ。大所帯で戦いに挑まなければならないだろう。そこでだ、強力な戦闘力を秘めた聖龍HEADと類稀なる戦闘術を持つ赤塚組幹部衆に今回の任務を要請したい。セクター6に向かい、奴を破壊するのだ」
人工知能からの話によれば、今し方B.S.Lを襲った激しい振動の原因は、寄生生命体Xに寄生された警備ロボ「ボクス」が原因らしく、人工知能はXの寄生により凶暴化したボクス破壊を聖龍HEADと赤塚組が総力を挙げて懸かるようにと告げてきた。
これに対し、HEADは命じられるがまま出撃体勢を準備するが、赤塚組の方は余り意欲的に動く事はなかった。
「どうした、大将。あまり乗り気じゃないみたいだが……」
「なんでもねえよ」
メタルバードに変身したバーンズの呼び掛けに対し、大将は不満そうな面持ちで返答した。
見てみれば、大将以外の赤塚組幹部衆全員が不満そうな面差しで活動しているのが目に入った。
彼らは先ほど旧友であるHEADから、新世代型二次元人に対する真相を明かしてもらえなかった経緯に何かしらの不満を覚えている事に、メタルバードだけでなく他の聖龍HEADも事情を察していた。友でありながら、真相を包み隠すHEADに対して若干の不信感を抱いてしまう赤塚組の真情をHEAD本人たちは察した。
しかしXに寄生した警備ロボ「ボクス」の破壊という危険な任務を負わされた以上、そして何よりその様なボクスの猛威でこれ以上B.S.Lへの影響を齎さない為にも、協力は必須であった。HEADと赤塚組は、互いに腹にいち物を抱えながらボクス破壊に着目する。
そんなHEADと赤塚組を、双方の複雑な心境を感じ入るアッコが見送る。今やコンパクトを失い、戦えなくなった彼女はただ見送るしか出来ない現状、そして何より仲違い一歩手前まで来てしまった親友同士のすれ違いには簡単に介入できない事にもどかしさを感じていた。
そしてHEADと赤塚組が転送装置に入ったのを視認して、装置を操作する犬牟田宝火が双方の気まずい空気を察しながらも声をかけて激励する。
「Xに寄生された警備ロボのボクスは、おそらく通常よりも格段に凶暴性が向上していると思われます。それ以上に未だ全貌が明らかになっていないセクター6での活動は困難を極めるかと思われますが……皆さん、頑張って!」
そして犬牟田は転送装置を作動させ、HEADと赤塚組をセクター6に転送した。
「……みんな……」
一人現場であるセントラルエリアに残ったアッコは、自分以外の出撃したHEADの仲間達と旧友である赤塚組を思い、立ち尽くした。
そんなアッコの思いも空しく、HEADと赤塚組はセクター6に転送された直後から険悪な空気を漂わせ、ナビゲーションルームに向かい人工知能からの言伝を聞き入る。
「警備ロボット「ボクス」は、君達が以前会った時よりもかなりパワーアップしているようだ。おそらく新世党の面々が、自分達にXが寄生しない事をいいことにボクスを改造したのだろう。従って油断をしては危険だ、気をつけろ。そして、もう一つ注意点がある。目的を達成したら速やかにセクター6から離れろ。SO-Xが潜んでいる可能性が高いのだ。決して、うろつかない事だ、わかったな……」
SO-Xが潜んでいる可能性以上に、セクター6を無闇に徘徊しないよう執拗に付け足す人工知能からの言伝に対し、極度の不信感と違和感を覚える赤塚組。
「どうしたってんだ? いきなり……」
突然態度を一変させたかの様な言動を取る人工知能に唖然とする大将に、メタルバードが肩を叩く。
「大将、赤塚組、行くぞ」「う、ウッセぇ! 分かってらぁ」
しかし大将はメタルバードの手を振り解き、仲間である赤塚組幹部衆共々、実に余所余所しい態度で先行していってしまう。
かつての友情を感じられなくなった悲しい切情が心に沁みる現状を、赤塚組を目前にしたHEADが感じ取っているとジュピターキッドがメタルバードの耳元に囁いた。
「バーンズ、どうするんだい? こんな険悪な状況で、任務を進められるとは到底思えないんだけど……」
ジュピターキッドは昔馴染み同士であるHEADメンバーと赤塚組の不仲な状況下での任務遂行が難しいと説くが、これに対してメタルバードも同意見であった。
「オレも同じ事を考えていた……だけど此処まで来た以上、最後までやり遂げねえと……行動しているうちに、みんなのギクシャクした空気も流れてくれるかもしれねえし……」
「だけど、こんな状態で戦えるのかい? 赤塚組は完全に僕らの事を信じてくれなくなっちゃってるし……」
「……なんとかするしかあるまい」
メタルバードとジュピターキッドは大した解決策も見出せないまま、他のHEAD共々進行。
こうしてHEADと赤塚組の面々は、互いの信頼関係を修復できないままセクター6の最深部へと進行するのであった。
[ボクスの大群]
HEADと赤塚組は、人工知能から話を聞いているXに寄生された暴走状態の警備ロボ「ボクス」の探索に乗り出した。
暗闇が支配するセクター6を進行しながら、一行はセクター6の最深部にまで足を進ませた。
道中、何度かHEADと赤塚組が衝突しそうになる展開があったものの、HEADは自分達の落ち度で信頼を失ってしまっている現状を把握していた為、赤塚組と衝突する事無く進行を続けられてた。
そして暗闇の中、襲ってくる寄生生命体Xが擬態した多くの宇宙生物や、UMAであるスレンダーマンを突破しながら一行はセクター6の最深部、なんと謎の行き止まりまで到達してしまった。
「おい、どういうことだ!? 行き止まりじゃねえか」
「此処まで警備ロボなんて見当たらなかったぞ!」
腹に抱えた苛立ちが爆発寸前になる手前まで陥る大将やアツシ達の立腹に困惑する聖龍HEAD。
「お、おかしいわね……此処までの道中、ボクスが暴れ回った痕跡も見当たらなかったのに……」
「もう、しっかりしてよ!」
「な、なるちゃん……」
此処までの道中、警備ロボ「ボクス」が暴れた痕跡すらも確認されていない現状に困惑するセーラーマーキュリーに自らの苛立ちをぶつける海野なる。そんな苛立ちをぶつけてくる親友のなるの姿を見て、悲痛に思うセーラームーン。
「それに、このハッチはなんだ! いきなり洞窟ばかりだったところに、こんな場違いな機械仕掛けのハッチが、しかも内側から頑丈に閉ざされているだなんて……」
「わ、私たちも良くは……でも、本当に何なのかしら? このハッチは……」
「政府関係者なら、知っているんじゃない? 新世代型の秘密と同様に……!」
突然洞窟を再現された環境の中から現れた、機械仕掛けの場違いな扉。その内側から硬く閉ざされた扉を前に鬱憤を吐き散らす市川一太郎にコレクターユイが返答するが、それに対して一太郎の妻レイコがHEADに難癖を付け出す。
「み、みんな落ち着いて! こういう時こそ冷静に……」
「冷静? 何も語ってくれないアナタ達が言えた義理かしら?」
キューティーハニーの指揮に対し、親友である夏秋子までも腹にためた不満を吐き出す始末。
そんな正に険悪な空気が一同に重く圧し掛かった、その時。
「! なんだ?」
突如として洞窟内に振動が響き渡った。B.S.Lを襲った揺れと全く同じだった。
「コッチだ! 行ってみるぞ」
メタルバードの鶴の一声でHEADはその場から走り去ろうとする。
しかし未だ「関係者以外立ち入り禁止」の英語音声が連呼される場違いな機械仕掛けのハッチを目前に、赤塚組は黙然の問題が解決されてない現状に戸惑いを覚えていた。
そんな大将たちにメタルバードは「どうした? 行くぞ!」と急かし、大将たちは胸中に秘める閉ざされたハッチとその先のエリアへの疑問を渋々後回しにし、HEADと共に振動の元へと駆け付けるのだった。
HEADを先頭に赤塚組も渋々、揺れの震源地である区域まで足を向かわせた。
そして振動がより一層激しくなっている区域に到着してみると、そこは一面地下水が溜まった池が再現されているエリアだった。
足元を巨大な水溜りが覆う中、一行が震源の元を探ろうと辺りを見渡していた、まさにその時。
目の前の壁を突き破って来襲する警備ロボ「ボクス」が皆の目の前に立ちはだかった。
「ぼ、ボクス!」「ッ、やはり……振動の元はコイツか」
先ほどB.S.Lを襲った振動の元同様、つい先刻も自分達の体にまで響き伝わった振動の正体が警備ロボ「ボクス」であった事実に一驚するアツシと顔を歪ませるジュピターキッド。
そして案の定、出現したボクスは眼前の聖龍HEADと赤塚組に襲いかかろうと前進してくるのだが、ここで赤塚組はもちろんHEADですら予想外の事態が発生した。
「お、おい! なんなんだ、ありゃ!」
「ウソでしょ……! ボクスが他にも……」
赤塚組の大将とふゆみ、いやその他の赤塚組もHEADも目の前の光景に愕然とする。何故なら最初に壁を突き破って出現したボクスの後ろから、更に別固体のボクスが続々と出現し、ゾロゾロと出てきたからだ。
「ウソ! ボクスがあんなにもたくさん……っ」
「おそらくボクスを改造した新世党によって、このセクター6に進入させられたんでしょう!」
「だ、だからって……あんなに沢山のボクスを相手にするのは、流石に無理よ!」
大量のボクスの群れを前にして動揺するセーラームーンを横目に、冷静に物事を解析するセーラーマーキュリー。だがいくら何でも大量のボクスを相手に戦闘するのは分が悪すぎると訴える海野なる。
「そ、それに良く見てよ! 全部のボクスが改造されているだけじゃなく、みんながみんな揃ってXに寄生されている!」
「チッ、新世党め……ボクスを改造するだけに飽き足らず、わざわざご丁寧にXを寄生させて強化しやがったな……!」
更に全てのボクスが改造されているだけでなく寄生生命体Xに寄生されて強化されている現状に焦り出す山崎貴史に対し、口元を歪ませる大将。
そして、そんな改造された上にXに寄生されている警備ロボ「ボクス」はHEADと赤塚組に襲い掛かってきた。
「来たぞ!」
ボクスの大群の来襲に声を発するメタルバードの掛け声にあわせて、皆が一斉に散らばり各々で応戦を開始した。
だが此処で、メタルバードが進攻してくるボクスの大群の欠落した箇所と、それに伴う事態に気付いた。
「! 待て! 進んじゃいけねえ!」
メタルバードの一喝にHEADは全員足を止めるが、HEADに若干の反感を覚えていた赤塚組はメタルバードの制止も聞かず遠慮なく前進してしまった。
するとボクスに攻撃を仕掛けようと前進した赤塚組が、水溜りでもある地底湖に足を踏み入れた瞬間、メタルバードが彼らを制止した理由が判明した。
「うわあああっ!」
なんと地底湖に足を踏み入れた赤塚組幹部衆が挙って感電してしまったのだ。
「ああ!」
湖に足を踏み入れて感電してしまう赤塚組を前にしてHEADのミュウイチゴが悲愴な面持ちを浮かべる。
「行っていけねえ! あのボクスは改造されているのか、Xに寄生されているのか不明だが、機械部分が露出していて電気系統のケーブルがむき出しになっていやがる! 電気を通しやすい水溜りにも強烈な電気が流れちまっている! みんな、足元の湖には踏み込むな!」
ボクスの電気系統の機械が露出してしまっている故に、電気を通しやすい水に電気が通電してしまっている為に、湖を通して感電してしまう事を皆に訴えるメタルバード。
そして東京ミュウミュウズやマーメイドメロディーズの面々が、感電して黒こげになって身動きが取れなくなってしまっている赤塚組の幹部達を引きずって、どうにかボクスから遠ざけようとする。
だが、ここでボクスが攻撃を仕掛けてきた。
跳躍して一気に距離を縮めたかと思いきや、突然中央のコアユニットから小型ミサイルを連射して爆撃してきたのだ。
「み、ミサイル!?」
「バカな……以前戦った固体は、焼夷爆弾だったのに……」
以前に赤塚組が抗戦した暴走状態のボクスに搭載されてた武器が異なる点に、赤塚組のミズキとテツは驚愕する。
そんな発射されたミサイルを全てレーザーで撃ち落したメタルバードは、動揺する赤塚組に説いた。
「多分、新世党が改造した時に焼夷爆弾から攻撃性能の高い小型ミサイルへと変えられたんだろう」
メタルバードが説いている間も、ボクスはミサイルを連射してきたり、大群で押し迫ったりと激しい攻撃を仕掛けてきた。
「く、くそ! どうすんだ!? 最低でも10機以上はなだれ込んで来てる!」
目の前になだれ込んでくるボクスの群れが10機以上は見当たる現状に、大将は慌てふためく。
そんな赤塚組が困惑しながら応戦する横で、聖龍隊は確実にボクスの確固撃破に勤しむ。
一方で、信頼関係が未だ修復されていない赤塚組は、HEADの助けを拒み、自分達だけで応戦しようと果敢に挑み続ける。が、改造された上にXに寄生されたボクスの戦闘力は著しく向上しており、破壊するのは困難を極めた。
そんな中、メタルバードとちせの二人がボクスを一体破壊するのに成功する。
「よ、よし! やったぞ」「残りは9機だ!」
一体だけとはいえ破壊に成功した現状を前に、ジュピターキッドとキング・エンディミオンは喜々とする。
すると此処で勝ち急いだ赤塚組のアツシと山崎貴史がボクスの群れに特攻してしまう。
「む、無茶はするな! 止まれッ」
特攻する二人を見て制止を促すメタルバードだが、もはやHEADに対して不信感しか抱けなくなっていた赤塚組はHEADの言う事を聞かず、特攻していってしまう。
すると二人は電気が流れている水溜りを避けて移動しながらボクスのコアユニットに銃撃を放つ。だがそんな二人の攻撃に気付いてか、ボクスは群れで二人を取り囲んで小型ミサイルを撃ち込んできた。
アツシと貴史の二人は、この頭上から降り注いでくる小型ミサイルを回避する為、あえて跳躍して自分たちを取り囲むボクスの頭上へと飛び乗って移動。そして地面に着地しようとしたが、狭い足場から着地を誤って通電している水溜りへと足を踏み入れてしまった。
「うわあッ!」「ぎゃあっ」
アツシと貴史は感電してしまい、身動きできなくなっているところにボクスの群れが再び小型ミサイルを撃ち込んできた。
頭上から降り注ぐ小型ミサイルに対応しようにも、感電して身動きができなくなってしまうアツシと貴史。と、その二人を突然、光の壁が覆い、小型ミサイルの迎撃から我が身を防いでくれた。
「こ、これは……!」「……!」
アツシと貴史が驚く中、二人が目を向けてみると視線の先にはシールド(盾)のカードを使用したHEADの木之元桜の姿が見入った。
「さ、さくら……!」
自分たちにカードを使用したさくらを見て驚愕する貴史。
その一方でボクスの群れは他の赤塚組にも襲い掛かる。しかしボクスに襲われる赤塚組を、木之元桜同様彼女以外のHEADが助けに入り、皆事なきを得た。
そして皆を通電している水溜りから離れた場所まで移動させたHEADを視認して、メタルバードが自分たちHEADに不信感を募らせる赤塚組に唱えた。
「大将、そして赤塚組のみんな……お前達がオレ達を信じられなくなっちまっているのは仕方の無い事だと、オレ達も感じ取っている」
「………………………………………………………………」
赤塚組が黙然とメタルバードの話に耳を傾ける中、メタルバードはHEADの仲間達と共にボクスの群れと応戦しながら語り続けた。
「……オレ達は、確かに秘密を抱えながら戦い続けてきた。それは自分がヒーロー、ヒロインである事を隠し続けてきた昔から同じだった。だから、そんなオレ達に対して不信感を抱いちまっても仕方の無い事だと、オレたちHEADは自負している…………けれどな、昔から変わらない想いもある事は解ってほしい。オレ達はお前らを友だと信じ、お前達が背中を預けられるまで強くなっているって事を理解しているつもりだ」
「! …………」
「赤塚組……スグにオレ達を信じろとは言わねえ……! でもな、オレやキッドみたいなHEADでも立場的に多くの秘密を抱え込んだHEADならいざ知らず、昔馴染みの親友までも信じられなくなってほしくはない……!」
昔から、当初は自分達が英雄である事すら秘密にされてきた事実があるからこそ、信頼関係が今になって失われてしまっているのに自分たちHEADは自負している事。だが、それでもHEADは赤塚組を友として今でも信頼し続けている事実がある事を述べるメタルバード。さらに昔馴染みの親友までも信じられなくなってしまう悲愴な現実を訴えるメタルバードの言葉に、赤塚組は何も言い返せなかった。
本当なら昔馴染みの親友を信じたい。だが国を、組織を束ねる存在として未だに多くの秘密を抱える友を心から信頼する事ができなくなっている自分たち自身に本当の苛立ちを覚えていた赤塚組は、メタルバードの言葉に気付かされた。
確かに新世代型の事も含めて、HEADは多くの秘密を抱えて真相を隠している。だが、真実を隠して最も苦しんでいるのは当人達であった事に。
本当に苦しんでいるのは誰なのかを気付かされた大将たち赤塚組は、再び銃火器を手に持ち、ボクスの大群へと挑もうと躍起になる。
「赤塚組! オレ達はHEADの援護に徹底して回れッ。そして隙を伺って俺らもボクスに攻撃だ!」
「了解! だけど確固撃破に拘らず、状況に応じて臨機応変に対処していきましょう!」
大将の号令を受けて、ミズキも仲間の赤塚組に言い放つ。
こうして聖龍HEADとの信頼関係が壊れたままであった赤塚組は、HEADとの信頼を少しでも取り戻そうと共同でボクスに挑む。
足場を埋め尽くす通電する水溜りを回避する為、赤塚組にHEADの木之元桜がジャンプ(跳)やフライ(翔)のカードを使って空中を移動できる様にした上で、共闘していった。
HEADと赤塚組の強力な連携が回復した事で、ボクスの数は減少していくのであった。
[突然の来訪者]
一方、聖龍HEADと赤塚組がXに寄生された警備ロボ「ボクス」の群れと果敢に応戦していた頃。
一人残った聖龍HEADのミラーガール、いいや加賀美あつこは通信でドレフ将校と話をしていた。
「うむ、なるほど……新世党はミラーガールのセイント・コンパクトを兵器化しようとするに飽き足らず、今度はB.S.Lに跋扈するXなる寄生生命体をミサイルに搭載して利用しようとしていたのだな」
アッコから新世党がXを利用したミサイルを利用していた事実を聞いたドレフ将校に、アッコは話を続けた。
「はい、ドレフ将校……ここだけの話なんですが、私が所持しているセイント・コンパクトは、常人の二次元人が持つには余りにも危険な代物なんです。放置できません」
「そうなのか? 普通の二次元人なら、持っていてもタダの手鏡でしかないと聞いているんだが……まあ、幸いにも電波妨害もなくなり、我が方からのサポートも可能になると思う。これは銀河連邦とまだ掛け合い中なのだが……私自ら部隊を率いて、B.S.Lに乗り込む事も検討中だ。セイント・コンパクトの一件は、此方からも独自に探ってみよう。君達は、今こそ新世党を叩き潰してくれ…………」
と、ドレフ将校が今こそ新世党を打倒する機会だと告げようとしたその時、突如セントラルエリアに警音が鳴り響いた。
「何なのっ!?」
突然のアラームに一驚するアッコに、犬牟田宝火が報告を告げる。
「セントラルエリアに侵入者……敵襲です!!」
なんと自分達が拠点にしているセントラルエリアに、上層階のVIPエリアから敵襲を受けているとの事。この事態にアッコは焦燥に駆られるのだった。
突然の敵襲、しかも自分以外のHEADや赤塚組が不在の状況下での襲撃に焦るアッコに、美木杉が現状を報告した。
「敵は今現在、セントラルエリアで待機している聖龍隊士と戦闘タイプの新世代型達と交戦中だ。アッコちゃん! 君が今、戦えないのは分かっているが……どうか流子くん達の様子だけでも見守ってくれ!」
美木杉は恩師でもある纏一身博士の忘れ形見でもある纏流子や、その姉である
「それにしても、向こうから攻めて来たってことか……?」
一方で犬牟田は、今まで何の音沙汰もなかった新世党が突然襲撃してきた事実に困惑するばかりであった。
アッコが現場に駆け付けようとする道中、多くの新世代型の仲間達がアッコを呼び止め、様子を報告してくれた。
「むう、向こうからコッチに攻めて来たのか……? 攻める気なら、いつでもできた筈なのに……なぜ今になって?」
新世代型の薙切仙左衛門は、今まで攻める気の無かった新世党が今になって何ゆえ攻めてきたのか疑問に駆られていた。
「転送されてきたのは、1体だけの様です……きっと、凄く強い敵に違いないです……!」
どうも敵はVIPエリアとセントラルエリアを繋ぐメインシャフトから降りてきたのではなく、転送装置を使ってなのか突然現れた事実を報告する新世代型のコウサカ・チナ。
「一人で攻めて来たって!? きっと、幹部だね。アッコさんは行きたくでも無理だよね。なんせコンパクトが取られちゃっているし……」
襲撃してきたのは一人であり、その様子からおそらく幹部だと発言する新世代型の犬塚キューマは、アッコが戦えない現状に困惑を窺わせる。
「むうう……ついに向こうから仕掛けてきたか!」
「追い詰められて、向こうからやって来た、ってトコか……どっちにしろ、たった一人が相手なら此方の戦力を総動員してやれば返り討ちさ」
エルエルフや加納慎一は、戦前に出ている仲間達が敵を返り討ちにしてくれる事を祈りながら、突然の敵襲に備えて身を伏せていた。
「ここの転送装置は私たち以外のは全て、敵に侵入されない様にロックしてある筈なのに……」
だが、セントラルエリアへの直接の転送装置は味方以外は進入できないようロックシステムされている筈だと述べる新世代型のエイミーの言葉に、アッコ自身も不思議と思う。
そしてアッコが戦場である現場に辿り着こうとした矢先、その手前で既に家族共々戦況を見守っていた満艦飾マコがアッコに声をかける。
「あ、アッコさん、こっちです! 意外にも敵は手練れで、ほぼ全員がヘロヘロなんですよっ」
満艦飾マコの進言を聞いて、アッコは急いで現場へと足を踏み入れる。
現場に駆けつけたアッコの目に飛び込んできたのは、単身攻め込んできた敵一人に対して満身創痍に陥るまで徹底的に痛め付けられた仲間の聖龍隊メンバーや戦闘タイプの新世代型二次元人の姿であった。
「みんな! 大丈夫っ?」
アッコは慌てて満身創痍に至る皆に呼びかけると、ボロボロの状態に陥った流子と皐月がアッコに返答する。
「あ、アッコさん……」
「まだまだ……っ、これぐらいではへこたれません……!」
自らの心身に鞭打って立ち上がる流子と皐月の痛々しい姿を目の当たりにし、愕然となるアッコの目の前に一人の男が歩み寄ってきた。
「貴方は!?」
アッコが歩み寄ってきた男に訊ねると、男は威風堂々とした立ち姿で名乗った。
「新世党が幹部が一人、スカー・フェイス。貴様らに倒された同志の仇を取るため、そして寄生生命体Xを収容する特製カプセルを取り返しに来た!」
「カプセルですって!?」
新世党の幹部スカー・フェイスが取り返しに来たというX収容用カプセルの単語を聞いて血相を変えるアッコに、スカー・フェイスは得物を前に振り翳して物言った。
「そうだ。あれは我らの理想の為に必要な……最後の手段! 返してもらうぞ!」
するとスカー・フェイスは、既に自らの手で満身創痍に陥った聖龍隊と新世代型の戦士達を前に言い放った。
「聖龍隊、そして新世代の同胞よ! 私と再度、勝負しろ!」
そういうとスカー・フェイスは徐に一つの輝く石を取り出して、それを頭上に掲げた。すると石は一層と輝き出して、不思議な光を放った。するとその光を浴びた満身創痍の戦士達の傷は瞬く間に消えて、完全に回復したのだ。
「こ、これは……!」「どうなってんだ……傷が、消えているぞ!」
自分達の傷ついた身体が回復した現状を目の当たりにして、ミスティーハニーやキリト達は愕然となる。
そんな愕然とする皆の傷を完治させたスカー・フェイスは、完治した多くの戦士たちを前に再び戦意を向けてきた。
「見せてみろ……! お前達の力を!」
敵である相手を敢えて回復させてまで第二戦を仕掛けてきてスカー・フェイスの行動に驚きを隠せない戦前の面々だったが、傷が完治したのを良い事に再びスカー・フェイスに挑みかかった。
「我が力、受けてみろッ」
スカー・フェイスは此処で自らが操る得物から電磁の球プラズマボールを発射して応戦。しかし先ほども同じ攻撃を喰らわされた面々は、このプラズマボールを何とか避けてみせる。
そしてキリトと纏流子が一気に踏み込んで、スカー・フェイスに斬り込んでいく。が、スカー・フェイスは二人の猛攻を得物でしっかりと受け止めて、難なく防いで見せた。
そして猛攻を防いだスカー・フェイスは「甘いッ」の一言と同時にキリトと流子を弾き飛ばして一喝してしまう。スカー・フェイスに一喝された二人は後方に弾き飛ばされながらも転倒する事無く踏み止まった。
すると続いてスカー・フェイスの背後からドラゴンキッドが襲い掛かるが、逸早く反応したスカー・フェイスは彼女の電撃の拳に対して自らも拳で応え、拳と拳という激しい殴り合いが始まった。
「私も君と同じ、電撃系統の戦士だ! 悪いが電撃は効かんぞッ」
激しい電撃同士の殴り合いを展開しながら、スカー・フェイスはドラゴンキッドに自分は電撃の攻撃に耐性があると告げる。
そしてスカー・フェイスは一瞬の隙を突いて、ドラゴンキッドの脇腹に拳での一打を打ち付けて彼女を怯ませる。怯んでしまったドラゴンキッドにスカー・フェイスが彼女の頭部に拳を打ち付けようと手を高く掲げたその時、ドラゴンキッドの危機を救おうと折紙サイクロンが武器である巨大手裏剣をスカー・フェイスに投げ付けた。
「!」
折紙サイクロンの巨大手裏剣を目前にして一驚するスカー・フェイスだが、冷静な判断で巨大手裏剣を自身の得物で弾き返した。
「これでどう?」
と、ここでブルーローズが水鉄砲から凍て付く水を発射してスカー・フェイスの足元を凍らせて身動きを封じようとする。しかしスカー・フェイスは難なく足元に凍り付いた氷を自力で砕いて自由を得る。
「そ、そんな!」
自身の氷が簡単に砕かれたのを目の当たりにして、ブルーローズの表情は固まる。
すると今度は佐倉杏子と美樹さやかのコンビがスカー・フェイスに仕掛けた。杏子の炎の槍とさやかの水の槍での二重攻撃を、スカー・フェイスは受け流しつつも果敢に応戦していく。
そんな三人の戦いを見て、先輩風を吹かしたファイヤーエンブレムが杏子とさやかの後ろに回りこむ。
「二人とも、そこをちょっと退いて! オネエさんがあっつい炎をプレゼントするから」
艶っぽい声で杏子とさやかに呼びかけるファイヤーエンブレムの声に、杏子とさやかは反応し即座にスカー・フェイスと距離を置く。すると空いた真正面からファイヤーエンブレムが強力な業火を放射し、スカー・フェイスを火達磨にしようと画策する。
「させんッ」
だがスカー・フェイスは得物である槍を前方に向けて回転させて、自らに浴びせられる炎を全て防ぎ切ってみせた。
そして得物を高々と掲げたスカー・フェイスは、得物である槍から強力な電磁波を発生させて、周囲に強力な電撃波プラズマアレイを放つ。
「うわぁ!」
強力な電撃の波動を浴びて、溜まらず吹き飛ばされてしまうガッチャマンたち戦前の戦士たち。
さらにスカー・フェイスは未だ抵抗の意志を見せる纏流子やキリト、そしてシルバー・クロウを撃退しようと動いた。
「見えまいっ」
目にも止まらぬ俊足で、まずは流子の眼前に駆け付けたスカー・フェイスは彼女を弾き飛ばし、さらにキリトとシルバー・クロウにも俊足で襲い掛かる。
だがキリトとシルバー・クロウは協力してスカー・フェイスの攻撃を防ぎ、スカー・フェイスの動きを一瞬ばかし止まらせた。
そして二人がかりでスカー・フェイスの得物を弾いて、がら空きになった胴体へとこれまた二人がかりで斬り込んだ。
「ッ、これほどまでとは……!」
二人の共闘戦前による攻撃を受けて、スカー・フェイスは一瞬ばかし怯んでしまう。と、そこへキリトが更に追い討ちをかけようと斬り込んでいたが、スカー・フェイスの方が反応が早く、得物である槍を突き立ててキリトに反撃しようと目論む。キリトはこれを剣で防ぐものの、押し出される力が強く後方へと弾き飛ばされてしまう。
その後も聖龍隊と新世代型たちは、協力し合ってスカー・フェイスを迎撃しようと試みるが、スカー・フェイスの強さは想像以上で太刀打ちできないレベルであったのだ。
聖龍隊と新世代型。双方の共闘をマトモに受けてでも、ほぼ全ての攻撃を見切り、反撃に及んだスカー・フェイスの強さは半端なく、戦前で戦う皆々は疲労困憊に陥ってしまう。
「強いな!」
そんな聖龍隊と新世代型を前に、スカー・フェイスは彼らの強さを称賛して威厳ある一言を飛ばす。
そしてアッコが現場に到着した直後に使用した輝く宝石を高く掲げると、再びその宝石から光を放って戦闘で傷ついた聖龍隊と新世代型を回復させた。
一度ならず二度までも同じ様に傷を完治させられた一同が唖然としていると、スカー・フェイスが傷の回復に使用した宝石について語り始めた。
「これはヒーリング・ジュエル。私の生命エネルギーと作用して、傷を修復してくれる光を放ってくれる私専用の道具だ。これを使えば、私の生命エネルギーは多少ながら消耗してしまうが、光を浴びた負傷者は完治する事ができる」
「な、なんで……貴方は、こんな真似を……?」
「なんで? はて、どのような意味かな?」
回復宝石を使用した意図を求めるシルバー・クロウの問い掛けに、首を傾げるスカー・フェイスにアスナとブラック・ロータスが再度問い掛ける。
「なぜ、敵である私たちの傷を回復してくれたんですか……?」
「私たちは敵同士……なのに、そんな相手を回復させるなんて……!」
驚きを隠せないアスナやブラック・ロータス、そして他の一同を前に、スカー・フェイスは事も当たり前のように語った。
「私は余計な犠牲は生み出したくない……何より、誇り高い闘志を持つ武人を……戦士を死なせる様な真似は、極力避けたいのだ」
このスカー・フェイスの発言に、一同は驚愕させられた。
そんな騎士道精神溢れるスカー・フェイスに、キリトとクラインの二人が問い詰めた。
「そうまでして目指す理想って何なんだ?」
「戦わなければ、手に入らないものなのか!?」
するとスカー・フェイスは、この二人の質問に対してこう答えた。
「我々は……総統は……争いなど望んではいない!」
意外なスカー・フェイスの返答に困惑する一同。さらにスカー・フェイスはこうも唱えた。
「二次元人同士が争って何になる!?」
だが、このスカー・フェイスの話に異議を唱える者が当然ながらいた。
「ふざけるな! 争いを生んでいるのは、お前達だろ!」
聖龍隊のワイルドタイガーが、争いを生み出しているのは新世党そのものだと訴えると、スカー・フェイスは威風堂々とした姿勢を崩さず力強く唱えた。
「貴様らが我らの理想を阻むからだ! 邪魔さえしなければ手を出すなと、キャップ・ド・レッド総統からの御許可も下りている」
争いが生まれているのは、新世党が掲げる理想の実現を邪魔するものが阻んでいるからと唱えるスカー・フェイス。彼は更にこうも述べた。
「ここへ来たのは私の独断だ。私は、君ら旧世代やプロト世代、そして何より同胞の新世代型二次元人と対立する事を望んではいない。私の目的はあくまでも共生なのだ!」
あくまで自分の目的は、全ての二次元人との共生だと唱えるスカー・フェイス。すると今までのスカー・フェイス達の戦いを傍観していたアッコが、スカー・フェイスに訊ねた。
「貴方の戦いを見て分かった。貴方は狂った事に力を振るうような二次元人じゃない筈よ。そんな貴方がなぜ、世界中の二次元人をXに寄生させて、人々を混乱に陥れようとするの?」
このアッコの疑問に、スカー・フェイスは力説した。
「それはあくまで最後の手段なのだ、加賀美あつこ! 政府が我ら、新世党に手出しできないよう、我々はいつ如何なる時でもミサイルを発射できるのかを示しているだけに過ぎん! 本当にミサイルを発射する時は、政府が我々の主張を拒んだ、その時なのだ!」
寄生生命体Xを搭載したミサイルを所持していたのは、政府が自分たち新世党に強制的な排除を仕掛けられないようにする為の、いわば脅し材料であり、実用するのは最後の手段だと説明するスカー・フェイス。
そんな力説するスカー・フェイスは、続けて自分たち新世代型の可能性をも説いた。
「本来、我々新世代型二次元人は、過去の二次元人や三次元人のデータを基に開発された全く新しい種。世界に革新を与える為に生み出された性能を持つ二次元人なのだ。そんな我々はセイント・コンパクトを使い、自らの能力を高めてゆく。それは我々二次元人の、二次元人による進化の形なのだ」
過去の情報を基に開発された新世代型二次元人が、セイント・コンパクトを使用して自らの能力を高めようとするのは一種の進化だと強く説くスカー・フェイス。
「二次元人は単なる創作物か? 違う! 我々には意思がある……生命がある! 三次元人の手による進化は我々の進化か?」
二次元人は単なる創作物ではなく、意志を持つ生命であると主張するスカー・フェイスの力説に耳を奪われる一同。
だが、そんな力説するスカー・フェイスの言動を受けても、コンパクトの持ち主であるアッコは懸念を押す。
「だけど、それは……それは危険よ」
懸念を押すアッコは、スカー・フェイスに問うた。
「その進化の先にあるものが、
するとこれに対してスカー・フェイスは皆に予想外の言葉を言い放った。
「我々が
自分達が
「お喋りが過ぎた。聖龍隊、そして同胞の新世代型諸君……口惜しいが、貴様らは強い。我らの理想を分かち合えんのが残念だよ」
と、ここでスカー・フェイスは聖龍隊や戦闘タイプの新世代型を前にし、彼らの強さを称賛しながらも自分達の理想を理解してくれない事実を残念そうに語る。
そして最後にスカー・フェイスは「ジュワッ」の掛け声と共に、一瞬でその場から消えてしまわれた。
[戦い終えて]
スカー・フェイスとセントラルエリアに在留している聖龍隊と戦闘タイプの新世代型二次元人たちの戦いが終わり、アッコはどうにか皆が無事である事態にホッと胸を撫で下ろす。
そんなアッコは、先ほどスカー・フェイスとの戦いで苦痛を伴った仲間達の様子を見て回った。
「いてて……ちっくしょーー。突然、敵が襲ってきたから先手必勝だと思ったんだけど……そしたら返り討ちにあっちまった」
ガッチャマンクラウズの橘清音は、傷が治っているとはいえ身体に残っている痛みに喘いでいた。
「あいたっ! いててて……やっぱり隠れてれば良かったかな」
同じく身体に残る痛みに、新世代型の名瀬博臣は戦闘に参加せず隠れていた方が良かったかなと愚痴を零す。
さらにアッコは、自分と同じく戦いを見守っていた人々の様子も見て回る。
「新世党は追い返したよな? また襲ってきたりしないよな? うーーん……やっぱり心配だから、俺もここで見張ってるわ」
強敵スカー・フェイスの迎撃を目撃したとはいえ、再び新世党が襲撃してこないか不安がる新世代型の加納慎一。
「新世党の襲撃には驚いたけど、別の意味でも驚かされたわ。だって、さっきのスカー・フェイスって幹部、戦前に出て戦う仲間以外は襲ってこなかったのよ」
新世代型のイオリ・リン子は、幹部のスカー・フェイスが戦前に出ていた者たちだけと戦闘した経緯に驚きつつも、意外性を感じ取っていた。
「新世党が来た時は怖かったけど……何だか意外だわ」
すると現場視察に来ていた的場甚三郎が、アッコに話しかけて来た。
「彼女達も言っているが……果たして新世党は本気だったのか? 見てくれ、戦場になったメインシャフト以外、まったく被害がないだろう?」
イオリ・リン子や多くの女性達が話している通り、新世党は本気だったのか疑問視する甚三郎。言われてみれば、確かに戦闘の場となったメインシャフト前以外、戦闘の損傷は見当たらなかった。
「私には新世党の真意がわからん。奴らは一体何をしたいのか……?」
以前にも新世党が幹部の一人セレディ・クライスラーに一矢報われた新世代型の猿田学の疑問に、アッコ自身も考えさせられる。
「新世党は何を目指して戦ってるんだろう?」
一方の瀬名アラタは、先ほどのスカー・フェイスの話を聞いて、新世党の目指している未来について真剣に考えていた。
「がくがく……あ……足の震えが止まらないよぉ……このセントラルエリアに再び新世党が来るなんて思っても見なかったよ……」
「も、もう、新世党はいないよね? ぶるぶるぶる……」
一方、戦場と化したメインシャフトから少し離れたところでは、新世代型の花園まりえと北島のばらが身震いしていた。
「良かった……もう、侵入者はいなくなったのね」
そんな子供達を守ろうと、一緒に身を固めていた新世代型の茨千里は侵入者であるスカー・フェイスが立ち去った経緯に安心する。
アッコは戦いが終わった事を、戦場に赴いていなかった面々に伝えようと駆け足でセントラルエリアを進行する。
「あと少しです、アッコさん! ここセントラルエリアと奴ら新世党が拠点にしているVIPエリアを繋ぐメインシャフトのシステムに介入できそうです! 僕ら二次元人の技術を悪用しようとする新世党を絶対に許してはいけません!」
自分達が拠点にしているセントラルエリアと新世党が拠点にしているVIPエリアを繋ぐメインシャフトを起動させられるかもしれないと伝える伊織糸朗は、アッコに新世党が二次元人の技術を悪用するのだけは阻止しようと意気込みを語る。
「おそらくキャップ・ド・レッドは、強い……だが、ここまで戦ってきた力を信じるんだ、みんな……我々には頼もしい仲間がついている!」
幹部であり側近であるスカー・フェイスの強さを痛感した美木杉愛九朗は、新世党が総帥であるキャップ・ド・レッドの強さを懸念するが、此処まで共に戦ってきた仲間達の力を信じて最後まで立ち向かおうとする強い意志を示した。
最後にアッコは、先ほどのスカー・フェイスとの戦いで疲労が蓄積された面々の元へ訪ねに行った。
「あんな強い敵が相手だなんて……私、少し不安です……でも、私達が力を合わせればきっと、なんとかなりますよね? 私も出来得る限り、全力で戦いますから頑張りましょう!」
巴マミは先ほど組手をしたスカー・フェイスに対して若干の不安が過ぎっていたが、仲間と力を合わせて戦えば新世党に打ち勝つ事ができると強く信じていた。
更にアッコは自分と同じ鏡魔法の使い手であるミラールにも伺った。
「アッコおねえちゃんは大丈夫だった? スカー・フェイス、強かったわね……新世党の理想、とか言っちゃってさ。悪党の癖に、生意気よね」
理想とか綺麗事を並べて淡々と語っていたスカー・フェイスの主張にミラール本人は不満を率直にぶつけてきた。
「それにしても、新世党の幹部が強いのは……やっぱり人体改造しただけでなく、タイの製薬企業に作らせた二次元人強化カプセルのお陰なのよね……? なんで強くなりたいだけでバイオハザードなんて起こしちゃうのか理解できないわ。ほんと、
それからミラールは、新世党の多くが人体改造して戦闘に特化した肉体を得ただけでなく、タイのバイオハザードの発生源にもなった製薬企業に作らせた強化カプセルまでも持ち出す始末の新世党を相手に理解し難い実情を述べた。
「アッコさんは、やっぱり凄いな……敵の幹部、スカー・フェイスと臆することなく対談しちゃうとは……!」
そんな戦闘で疲労が蓄積した面々に混じり、彼らの様子を気にかけて実に来ていたプロト世代のギュービッドやチョコは、敵であるスカー・フェイスに臆する事無く対談を果たしてみせるアッコの談話上手を詳細する
「スカー・フェイス、手ごわかった……あんな手ごたえのある奴は初めてだよ」
「そろそろ大詰めって感じだね……びしっと決めましょう、アッコさん!」
スカー・フェイスと交戦した新世代型の纏流子や蛇崩乃音の力強い発言に、アッコ自身も圧倒されてしまう。
「スカー・フェイスを引きずり出して……やっと、敵の本体に手が届いたわね。それにしても、進化の為に奪ったというセイント・コンパクト……普通の人にとってはタダの手鏡のコンパクトを新世党はどうやって利用するのかしら……?」
「理想……確か、スカー・フェイスがそう言ってたわね……。
一方で新世党が奪ったセイント・コンパクトを敵方はどう利用するのか検討も付かないミスティーハニーが首を傾げる中、その横のマン・ヒールズ隊士、本郷唯が刀に手をかけて意気込みを発する。
そしてアッコが一通り見回りを終えると、そんな彼女に新世代型二次元人でこの旅路に長く付き合っている琴浦春香たち【琴浦さん】のキャラクター達がアッコを呼びとめ、訊ねる。
「アッコさん!」
「あら、琴浦さん。それに他の皆さんも……どう? あなた達は大丈夫だった?」
「え、ええ、僕達はなんとか……」
琴浦春香からの呼び掛けに笑顔で反応するアッコが、先ほどの戦闘に巻き込まれていないか心配すると室戸大智が大丈夫だと報せ返す。
「アッコさん……もし、もしもですよ。みんなで上の階、VIPエリアに攻め込んだとしたら……お父さん達は、新世党はどうなっちゃうんですか?」
今や自分や腹違いの妹、小野崎綾香の実父である小野崎功は完全な新世党の一員。そんな父を含んだ新世党がこれからどうなるのか不安そうな面持ちで尋ねて来る琴浦春香の疑問に、アッコは力強い表情で答えた。
「……心配しないで。まだ銀河連邦か国連軍のどちらが先に到着するか分からないけど、軍人の中にも話の通じる人が少なからずいるから。私自身、殲滅なんて血生臭い結果なんて見たくも無いわ」
「あ、アッコさん……!」
感激する琴浦春香に、アッコは更に笑顔で言った。
「もうすぐよ……もうスグで、全てが終わるはずだから」
「この長い戦いも、もうすぐ終わるのね!」
アッコの戦いへの終止符を聞いて、森谷ヒヨリは心より安心するのだった。
一方、セントラルエリアでの戦闘を終えて帰還してきたスカー・フェイスは、独断での専攻に文句を言われていた。
「おい、スカー・フェイス、どういう事だ? 勝手に連中が屯っているセントラルエリアに進攻してきたかと思いきや、一人も殺さずに帰ってきちまうとは……」
「いくらキャップ・ド・レッド総帥の右腕とはいえ、勝手が過ぎますぞ。我らの最終目的、それは加賀美あつこのセイント・コンパクトを使って己の進化を促す為……!」
「解っているとも、同志よ! だがまず我々と聖龍隊は話し合いで物事を決めなければならないと私は思う! 不毛な争いが生むのは進化ではなく、破壊のみだ! 破壊だけの成長など、何の意味も成さない……!」
同じ新世党である伊丹キョウジとアマデウス・K・ドルシアからの咎に対して、スカー・フェイスは不毛な争いが生むのは破壊だけで、それ以上は何も生み出さないと理想論を熱弁する。
しかし、このスカー・フェイスの熱弁を聞いて、伊丹キョウジはスカー・フェイスに押し迫る。
「いい加減にしろよ、オイ! 貴様の余計な犠牲を生み出さないってのは、単なる綺麗事! 進化ってのは争いの上にこそ発展する人間の可能性……争いを否定している時点で貴様は進化できねえ欠陥品なのよッ!!」
「欠陥品…………私がね」
伊丹キョウジから、進化とは人々の争いの上で発展する技術と力だと説いた上で、その争いを根底から否定するスカー・フェイスの思想は進化とは程遠いものだと力説する。これに対し、スカー・フェイスは冷淡な眼差しで力説する伊丹キョウジを見詰める。
するとこの伊丹キョウジの発言を皮切りに、他の新世党メンバーも各々の抱えるいち物をスカー・フェイスにぶつけてきた。
「まあ、確かに……キョウジの言い分にも一理ありますね」
「! セレディ・クライスラー……!」
「進化とは弱者を……強い者が弱い者を喰らってこそ、初めて成し遂げられるもの。いや、既に進化という現象そのものが争いや戦いに近いのではないかね?」
「
「我ら新世代型二次元人の封印された真実、そう云わば秘密を解き明かす為にもセイント・コンパクトによる進化の兆候を私たちは求めている訳なのだよ。正直、全二次元人の思想とか、どうでもいい。まずは我ら新世代型の進化が先決だ」
「アマデウス……!」
「そもそもさぁ? よわっちい連中を助けて何になるの? あんな雑魚どもさ、一斉に皆殺しした方が先々、得するのが普通ってもんじゃない? さっさと下の連中を皆殺しにしちゃおうよ」
「美作昴……」
「フッ、僕は皆さんほど過激な考えは持ち合わせていないが……プリティーリズムの連中が今でも息をしていると思うと、腸が煮えくり返る気分だよ……! なる、あん、いと、りんね、べる、おとは、わかな、コウジ、ヒロ、カヅキ、聖、ジュネ、そして黒川冷……奴らの血まみれの死体をこの目で拝んでやりたい!」
「法月仁……! まさか、そこまでおぞましい事を考えていたとは……」
中には冷静沈着に進化の可能性を争いだと説く同志、そして中には純粋な憎悪で自分たち新世党に協力しない新世代型二次元人を惨殺したいと強く思う同志の考えを目の当たりにし、スカー・フェイスは愕然となってしまう。
そんなスカー・フェイスは、皆に背を向けると一人自室へと戻っていった。
「ど、どちらにしろ……少なくとも総統は私の意見と一致してくださっている! 我らはこれからも、セイント・コンパクトを研究して新世代型二次元人の進化の可能性を探るのが必須科目だ。それを忘れない事だ、同志よ……」
スカー・フェイスは自身の平和的な考えと新世党の総帥の考えが一致している事実を皆に言い残した末に、自室へと一人戻っていくのだった。
[明らかになる真相]
その頃、聖龍HEADと赤塚組はようやく共闘の末に、新世党が改造した警備ロボ「ボクス」を内部の脳細胞に寄生していたX共々撃破達成した。
改造されただけでなく、Xに寄生されていただけでもなく、合計10機の集団で襲い掛かってきたボクス。
聖龍HEADと赤塚組は、自分達が破壊したボクスの残骸の上で一休みしていた。
「ふぅ~~……何とか勝てたな」
「ああ、その通りだな」
大将とメタルバードは隣同士でボクスの残骸の上で寝転び、一息の休息をとっていた。
するとその時、HEADと赤塚組の通信機に通話が入ってきた。
「おう、此方バーンズ……どうぞ」
疲労困憊で弱々しく返事するメタルバードの返答に答えたのはセントラルエリアのアッコだった。
「バーンズ、どうしたの? さっきからみんなの通信に呼び掛けていたんだけど、一向に繋がらなくて……っ」
「ああ、アッコか。それがな、暴走してた警備ロボなんだが……今回は1機だけでなく10機も集団で襲い掛かってきやがって……今さっき、ようやく全てのボクスを破壊し終えたところなんだ」
「そ、そうだったの! 大変だったでしょう……今すぐ転送装置を作動させて、セントラルエリアに帰還させるわ」
「おう、ありがとよ、アッコ」
メタルバードがアッコに礼を申し述べた、その直後、大将が何を思ってか通信でアッコを呼び止めた。
「待ってくれ、アッコ。ちょっと俺たちは俺たちで調べたいところがあるんだ。悪いが転送はまだ先延ばしにしてもらえないか?」
「えっ? 調べたいところ……?」
大将の突然の申し出に戸惑いの色を隠せないHEAD。だが、それとは反対に赤塚組の誰もが大将の真意を悟った。
するとアッコは一時迷ったが、大将に言った。
「……分かったわ。大将たちを信じて任せるわ。でも、無茶は禁物よ」
「お、おうッ。マジですまねえな、アッコ!」
アッコからの許可を貰った大将は、嬉々とした様子でボクスの残骸の上から降りると、配下である赤塚組の幹部衆に告げた。
「よっし、テメェら! 俺に付いてこいッ」
勝気ある号令で皆を従えて移動しようとする赤塚組一同に、ジュピターキッドが慌てて駆け寄り尋ねる。
「ちょ、ちょっと待って! 一体全体、君らは何処に向かおうとしている訳!?」
すると大将の口からトンでもない言葉が飛び出してきた。
「さっき俺らが見つけた機械仕掛けの扉よ。内部から頑なに閉ざされているが、電気系統からハッキングすれば侵入できるかもしれねえ!」
「ちょ、ちょっとそれはマズイよ! あれはどう見ても、政府が一般の人間を立ち入る事を禁止しているエリアだ。そんなところに民間人である君らを進入させる訳にはいかない」
ジュピターキッドからの説明を聞いた大将は、徐にメタルバードに歩み寄って彼の顔を強引に己の顔に近付けさせて大声で耳打ちした。
「メタルバード、お前さんさっきも言ったよな? 「自分達がヒーロー/ヒロインだと、正体を隠してきた頃から今に至るまでずっと秘密を持ち続けている。それでも昔馴染みの親友までも信じられなくなってほしくはない」ってな。俺達だって本音を言えば、お前達を信じて生きたい、信じ抜きたいのよ。だからこそ、お前達が背負っちまってる世界の秘密とやらを少しでも一緒に背負って、同じ道を歩きたい訳なのよ」
「大将……」
「確かに抱えている秘密がでかいほど、お前さん達の重荷や気苦労は積み重なって、より一層と重く険しい足かせを嵌めて未来へと進んでいくんだろうよ」
「………………………………」
「……もう十分だ、バーンズ、それにみんな。俺たちが新世代型だの、二次元人の秘密だの知って驚愕したりするのは目に見えている事なんだろう。それでも良い、お前達が背負っちまってる秘密を少しでもいいから、俺らにも背負わせてくれ」
「大将……お前ら……」
大将の男気に感銘を受けるメタルバードを尻目に、大将たち赤塚組は動き出した。
「そんじゃ! さっそく行くとしますか!」
そういうと大将は前進を始め、その後ろから他の赤塚組も大将に続けと前進し出す。
この大将たちの覚悟を前にしたジュピターキッドは、内心密かに思い詰めていた。
(……秘密という重責を共に背負ってくれるのは凄く嬉しいよ、赤塚組。だけど、現実はそれだけでは到底済まない。真実を知るという事は、それだけ多くの危険を伴ってしまうという事なんだよ)
ジュピターキッドは、秘密を知る事が政治的にも多くの危険性を孕んでいる事実を噛み締めていた。
そんなジュピターキッドの心配も露知らず、赤塚組は先ほど自分たちが到達したセクター6の最深部へと戻っていった。
最初に到達した機械仕掛けのセクター6には場違いな扉であるハッチ。
洞窟を再現したセクター6には到底覚束ないその扉は、内側からしっかりとロックが掛けられていた。
「どうだ?」
「っ、ダメね……豪く最新のシステムが使われているみたいで、簡単にロックが外れないようになっているわ」
何とかハッチのロックを解除しようとするミズキに問い掛ける大将。だが装置は最新のものが使われており、簡単にハッキングする事は困難を極めてた。
そんな自分達だけでハッチのロックを開錠しようとする赤塚組を前に、最初は聖龍HEADは傍観するばかりで手伝おうとは思わなかった。
だが、懸命にハッチのロックを開錠したい一心の赤塚組を前にして、HEADの我慢も限界を超えた。
「……はぁ、仕方ないわね。私たちも協力するわ」
コレクターユイが溜息をつきながら、ハッチの解除に協力し出す。
「私も……ここで時間が潰されるのは、合理的に無駄な気がするし、手伝うわ」
「あ、亜美ちゃん……」
自分も少なからず助力すると乗り出してきたセーラーマーキュリーの言葉に、親友の海野なるは笑顔を浮かべる。
こうしてHEADは遂に立ち入り禁止エリアへの進行を、赤塚組と共々行う羽目になってしまった。
そして遂に立ち入り禁止エリアへの進行が可能となり、一同はそそくさと前進していく。
「あ~~あ、遂に入っちゃったよ」
「この先、何が出るか予測不可能だよ」
ジュピターキッドとメタルバードは進路先に何が出てくるか皆目見当も付かない現状で進行していった。
大将たちが先頭に進んでいくと、白く発光する電灯の光に目を眩させながら更に奥へと突き進む。
すると大将たちの目の前に、衝撃的な光景が飛び込んできた。
なんとガラス張りの檻の中に、図鑑では見た事もない生物が厳重に飼育されており、それが無数に点在していた。
「こ、こいつ等は一体……!」
目の前に広がるガラス張りの檻の中に閉じ込められている、見た事もない異様な生物の数々に、目を見張る赤塚組。
「な、なあ……セントラルエリア、これ見えているかい? この生物達は、一体……」
「は、はて……そういえば、何処かで見た記憶があるような無いような生物達ですね」
赤塚組のアツシは、所持しているスマホからセントラルエリアの犬牟田宝火たちに映像を撮って送信していた。
するとその時、生物達を見て回っていた大将が上の方を指差して言い放った。
「お、おい! アイツは……」
大将が指差した水槽には、以前大将たちがセクター4の水棲生物飼育エリアで戦闘したヒトガタ(別名:ニンゲン)が優雅に泳いでいるのが確認された。
「こ、こんなところにもUMAが飼育されてたのか……」
悠然と泳ぐヒトガタを前に圧倒されてしまう大将は、ヒトガタが此処に飼育されている現状から、ある事実に気付く。
「ハッ、まさか!」
大将は慌てて近場のガラス檻に目を近付けさせて、中で飼育させられている奇妙な生物を凝視する。
そしてある事に気付いた。
「まさか、コイツ…………雪男!?」「ええっ!?」
大将の一言に、その場に居た赤塚組の面々もセントラルエリアで送られてきた映像を観ていた面々も驚愕してしまう。
更に大将は、他のガラス檻の中に居る生物にも微かな見覚えがあった。
「コイツは……ネットでよく見ている。影の男、シャドーマン……!」
大将が目を凝視しているのは、薄い靄状の黒い影のように壁や地面を移動する人型の影、シャドーマン。
皆が続々と明らかになるUMAの存在に唖然としていると、大将はさらにUMAの名称を当てていく。
「このトカゲみたいな獣人……アメリカで騒がれているUMAリザードマン! こっちはさっきもセクター6で何度か応戦した闇の長身男スレンダーマン! すっげぇ、此処まで未確認生物を飼育していやがるなんて……」
誰もが一度は関心を持ったUMAの存在を目の前で目撃した大将は、目を輝かせていた。
そんな大将を尻目に、冷静な面持ちで各小部屋ごとに分けられているUMAを見て回る赤塚組のミズキは、此処でガラスに張られているプレートに記載された文章に気付いた。
ミズキがプレート版の文章に目を凝らして拝読してみると、予想外の事実が書き記されていた。
「2009年、○月×日、アメリカにて捕獲。捕獲者……聖龍隊?」
なんとプレートにはUMAを捕まえているのが聖龍隊だと明記されていたのだ。この事実に現場の赤塚組は騒然となり、セントラルエリアでも何ゆえ聖龍隊がUMAを捕獲しているのか
議題にあがった。
「ど、どういう事なんですか、アッコさん!」
「ミラールちゃん、あなた達聖龍隊が世界中のUMAを捕獲していたなんて微塵も知らなかったわよ!」
「どうして聖龍隊はUMAの捕獲まで行うんですか……? 確か、聖龍隊の主な役職は
セントラルエリアでは、現場に在留しているアッコやミラールたち聖龍隊士に新世代型たちが挙って質問を投げかけてくる。
その一方でUMAが飼育されているエリアでは、赤塚組がメタルバードたちHEADに問い詰めていた。
「おい、バーンズ、どういう事だ! お前らの職務は
大将に問い詰められ、もう隠し通す事は機会的にも難しいと判断したメタルバードは、そっと口を開いて大将たちに、そして通信越しでセントラルエリアの新世代型二次元人たちに語り明かした。
「俺たちが捕獲したUMA、その多くの人型UMAの大半が……
「………………なんだって?」
突然のメタルバードの告白に衝撃を受ける現場の大将と、セントラルエリアの新世代型たち。
その反面、全てを周知していた聖龍HEADの面々と聖龍隊のメンバー達は重たい表情を浮かべるばかりであった。
[UMAの真実]
過去に聖龍隊が捕縛してきたと思われる数多くのUMA、ヒトガタ、イエティ、リザードマン、シャドーマン、スレンダーマン等々。
その捕獲してきたUMAが、実は
「お、おい、冗談だろ? ウソだと言ってくれ、バーンズ……」
「………………」
大将の呼び掛けに対して何も反応を示さないメタルバード。
「アッコさん、バーンズさんマジで言っている訳じゃないよな? いつもの冗談だよな。まさか……俺たち二次元人がUMAになっちまうなんて……」
額から大粒の冷や汗を流しながらアッコに問い掛ける新世代型の真鍋義久。だが、そんな真鍋たち二次元人の希望は打ち砕かれてしまった。
「……いいえ、本当よ。二次元人の
「そ、そんな……!」
自分たち二次元人が精神的に異常になって凶悪な犯罪者に変貌してしまう事実は知っていたが、肉体的にも変化を齎し人ならざるUMAへと変貌してしまう事実を知って愕然となる琴浦春香。
すると通信機でセントラルエリアのアッコの話を聞いた大将は、目の前にいるメタルバードに掴みかかって激しく問い詰めだした。
「おい、こりゃどういう事だよ! 俺たち二次元人が凶悪なサイコパスになるだけじゃなく、雪男やトカゲ人間みたいなUMAに変わっちまうって、どういう事だ! ハァハァ……」
半ば興奮状態に陥る大将の手を離させて、前に向かって数歩歩き出すメタルバードは自然な口調で語り始めた。
「……オレにも、いいや、現段階では三次元政府もそのメカニズムを解明する事はできていない。おそらくは二次元人が古来より持つ変身能力すなわちトランス・フォーメーションが何かを原因に突如として暴走する事から、
「………………………………」
「現段階では、
「………………………………」
「だが、UMAに変化するタイプの
メタルバードの話を淡々と聞き入れる赤塚組や新世代型二次元人の面々。
「そ、それにしても……豪く姿と言うか、体の色が変わってしまっているじゃない……」
赤塚組の海野なるは、ヒトガタの様に真っ白な体を持つものから、スレンダーマンやシャドーマンの様に全身が黒く変色してしまっている現状を問うと、メタルバードはそれにも重く険しい表情で語り明かした。
「詳しいメカニズムは未だ研究中だが、多くのUMAとなった二次元人が、脱色して色白に変化したり、色が黒ずんで真っ黒になるケースが多いんだ」
「なるほど。それで世界中で報告されているシャドーマンやスレンダーマンなどのUMAは真っ黒だったりする訳か」
メタルバードの話を聞いて、大将は世界中のメディアやネット動画で取り上げられているUMA映像の多くが黒い物体である事実に納得する。
すると此処でセントラルエリアで、新メンバーのエギルがミラールに訊ねていた。
「な、なあ、ミラール。おれたちゃ、まだ入って日も浅いから知らないんだが……お前さんたちは知っていたのか? 世界中を騒がしているUMAの正体が、俺たち二次元人って事を」
「まあ、近いうちに話そうと思っていたけど……私たち聖龍隊の極秘の職務として、そういったUMAに変貌した二次元人を秘密裏に捕獲していくのが仕事なのよ」
「そ、それじゃ! UMAに姿が変わっちまった二次元人は、捕獲された後どうなるんだ?」
エギルに続いてキリトまでも、UMAに変化した二次元人はその後どうなるのかを問い詰めてくる。
このキリトの疑問に、通信機で話を聞いていたUMA飼育エリアのメタルバードは答えた。
「非常に残念だが……現段階でUMA化した二次元人を元に戻す方法は見出せていない。それ故に、こういった秘密機関の研究所に運んで、元の姿に戻してもらう研究が進められているんだ」
「でも、今までそんな話、聞いた事もありませんよ!」
メタルバードの話を通信機で聞いたセントラルエリア滞在の真鍋義久が訴えると、メタルバードは事実を述べた。
「公表してみろ。二次元人が異常犯罪者に変貌してしまうだけでなく、世界中で確認されているUMAにも変貌しちまう事実を公表すれば、多くの二次元人に被害が被る。何より事実を公表して、人々が何かしらの形で混乱してしまえば二次元界三次元界ともに大混乱が起こっちまう」
メタルバードやアッコ、そしてミラールの話を一通り聞いた赤塚組と新世代型二次元人とキリトやシルバー・クロウたち新人達は蒼然としてしまい、自分達が下手すればいつビッグフットやイエティの様なUMAに変貌してしまうのか恐怖に取り付かれた。
そんな皆が恐怖で身を圧迫される想いに駆られている中、勇気を出して新世代型の瀬名アラタがメタルバードに訊ねた。
「き、旧世代やプロト世代、それに俺たち新世代型も……UMAに変わってしまうんでしょうか」
恐る恐る訊ねてきたアラタの質問に、メタルバードは真実を包み隠さず答えた。
「今のところ、UMAに変貌しちまっているのは旧世代の二次元人が多いらしい。プロト世代は、まだ確認されてないし、新世代型は今年生誕されたばかりの種だから何とも言えねえが、多分大丈夫なんじゃないか」
「た、多分って……そんな……」
メタルバードの曖昧な返答を聞いて、新世代型の鹿島ユノが悲愴な面持ちを浮かべる。
みんなが二次元人が
「なあ、バーンズ。ところでよ、此処は結局なんなんだ?」
大将は多くのUMA化した二次元人を飼育している研究所の様な区間についてメタルバードに訊ねてみると、彼は自身の推測を述べた。
「おそらく、銀河連邦が秘密裏に研究を進めている極秘研究所だ。最も厳重なセクター6の最深部に作らせては、ここで突然変異した二次元人たちを研究してたんだろう」
「研究ね……いやな言葉」
赤塚組のミズキが口元を歪ませて言うと、メタルバードがそれに対して返す。
「そういうな。他にUMA化した二次元人を救い出す方法が見出せないんだ」
メタルバードがUMA化した二次元人救出の方法が打開されてない現状を説いてた、その時。
「そう、その通り。何事も研究しなければ意味など解明できませんよ」
「! お、お前らは……!」
秘密研究所で周囲のUMAにすっかり気をとられていたHEADと赤塚組の前に現れたのは、三人の科学者だった。
すると三人を目撃したメタルバードが血相を変えて怒号を言い放った。
「お前らは確か! 新世党の研究員、そして時縞ハルト達の父親……時縞ソウイチに指南リュージ、北川ミツトシじゃねえか!」
「なにっ? 新世党だと!?」
メタルバードから新世党の研究員と称される三人を前にして、大将たち赤塚組は武器を手に持ち、銃口を向けて身構える。
すると三人のうちの一人、時縞ハルトが三人を代表してメタルバードや大将たちに話しかけてきた。
「いやいや、武器は下ろしてください。我々はこう見えても、只の研究員と政治家。まあ、今では政府に
「話は聞いてるぞ! 貴様らは自分の息子達……ハルトや多くの咲森学園の生徒をマギウスに改造しやがったクソ親だろうがッ」
絶えず怒号をぶちまける大将の勢いにも動じず、時縞ソウイチは語り続ける。
「まあまあ、その話はまた後ほど……それよりも銀河連邦は此処で、どんな研究を行っているか、気にならないかい?」
「なにっ?」
「そう興奮なさらず。先ほども申し述べましたが、私たちはひ弱な研究者と政治家の三人組。武器も持っていない、戦闘力も微塵も無い私たちに銃を向けるのはお門違いだと思いませんか? ここは一つ、我々が当初よりこの場にて研究していた成果を……二次元人の可能性を皆様にも分かってほしくて、こうして皆さんの前に姿を現した訳です」
「っ………………」
「どうか、ここは銃を収めて穏便にしませんか? なあに、他の新世党の皆様方は此処には降りてきません。先ほど転送装置の電源を切りましたし、この秘密研究所内での転送装置での移動は不可になりました故に……」
「……どうも敵意は無いようだ。銃を下ろしてやれ、大将」
「チッ、しょうがねえな」
テレパシーからも時縞ハルトたち三人に敵意がない事を把握したメタルバードは、大将たち赤塚組に銃を下ろすよう推奨する。
新世党の三人、時縞ソウイチと指南リュージ、そして北川ミツトシはHEADと赤塚組を連れて秘密研究所の最深部に足を向かわせた。
[三人の末路]
新世党の研究員、時縞ソウイチと指南リュージと北川ミツトシに連れられていく聖龍HEADと赤塚組。
しかし兼ねてより、人をマギウスに変化させて面白半分に研究にしか頭に無い時縞ソウイチ達を快く思っていなかった大将は、何か有事があった時のためにと肌身離さず所持している短刀を忍ばせている懐に手を突っ込んでいた。
そんな大将の密かな殺気を感じ取って、メタルバードが囁き掛けた。
「大将、そんなの仕舞え。コイツらは本当に敵意も、お前の様に殺気すら持っていない」
「だけどよバーンズ! ハルト達がどんだけ苦しんだが解ってるのか? 俺は、こいつ等をぜってえ許せねえ……!」
「気持ちは解かる。だけど、いくら毒親とはいえ実の親には違いないのは確かだ。ハルトやショーコ、イオリの気持ちも考えてやれ」
「ッ……」
メタルバードに言われ、大将は懐に忍ばせている短刀から手を離した。
そんな大将とメタルバードの会話を、通信機で聴取していたセントラルエリアの時縞ハルトや指南ショーコそして北川イオリは居た堪れない心情に浸っていた。
そして時縞ソウイチ/指南リュージ/北川ミツトシが案内してきたのは、巨大な水槽の中で蠢く虫の様な生物の前だった。
「な、なんだ? この不気味な生き物は……」
「待って! 確か資料の中で、これと同じ様な生き物を見た事があるわ……そう、確かタイの製薬企業その地下研究施設で!」
大将が水槽の中の生物に気味悪がっている中、ミズキはこの生物をタイの製薬企業の地下研究施設で目を向けた資料の中にあったと告げる。
すると時縞ソウイチが目の前の多種多様な生物の見本を収容するカプセルに浮かんでいる生物が何なのか説明し出した。
「諸君、これがかの有名な鬼神、小田原修司の肉体を最強に仕立て上げたD-ワクチン、そのワクチンを培養した結果生み出されたDの幼生……それと幼生から成長したアルファ、ゼータ、ガンマの見本です」
「な、何だと!」
時縞ソウイチの話を聞いて、聖龍HEADは驚愕した。
「銀河連邦の奴らめ……修司の体に打ち込まれたD-ワクチンの研究にまで極秘裏に取り組んでいたのか!」
微かな怒りを覚えるメタルバードに、時縞ソウイチは悠々と語り続けた。
「どうですか、この素晴らしい……美しい生物の姿は! このD-ワクチンこそ私たち二次元人を進化させる鍵だと、私たち三人は自負しております」
「どういう事だ!?」
時縞ソウイチの発言に咄嗟に問い返す大将。するとソウイチは次の様な事を淡々と語り始めた。
「……我々、新世代型二次元人の遺伝子パターンが小田原修司の遺伝子と酷似しているのは既にご存知なのでは? 私たちは新世党の中でも、それに最初に気付いて驚きました。まさかの鬼神、小田原修司の遺伝子と新世代型二次元人の遺伝子が似ているとは……」
「………………………………」
既にこの事実を周知している現場のHEADと赤塚組、そしてセントラルエリアのアッコや新世代型たちが言葉を失くしていると、ソウイチは更に語り続ける。
「私たち新世代型には、多くのウィルスへの抗体が前もってこの体に搭載されています。しかし、それはD-ワクチンに対しても同じでした。過去の二次元人の多くも、小田原修司同様にD-ワクチンを投与すれば強大な力が得られました。が、私たち新世代型にはD-ワクチンの効用は全く意味を成さなかったのです」
「良かったじゃねえか。D-ワクチンなんて、普通の人間が使えば理性を失っちまう代物だ。そんなD-ワクチンに全く効用がないってのは、逆に有難ぇんじゃねえのかい?」
「それは違います!」
大将の発言に対して言葉を強く言い返す時縞ソウイチ。彼の話は続いた。
「他の新世党の面々の目的は、加賀美あつこ……いいえ、ミラーガールの願望を叶えるコンパクトでの己の強化や成長、進化みたいですが。まあ、科学者である私にとって魔法は未知なるものなので、正直解析すら難しいのが現実。いや、私たちだって科学者。できないなどとは言いたくない。だが、コンパクトの秘密を解く前にも我々新世代型が進化する奇策がないのかと研究を続けてきました。その結果、私たちはかの小田原修司と酷似した遺伝子を持っており、皮肉にもその遺伝子配列が原因で、ウィルスはともかくD-ワクチンによる筋肉増強などの効果が得られないのだと結論付きました」
「D-ワクチンで己の肉体を向上させるのも、一つの進化の形だと……お前さん達は説きたいのか?」
「如何にも」
時縞ソウイチの話を聞いて、D-ワクチンで自らの肉体を強化させることもまた進化の形の一つだと訊ねるメタルバードに、ソウイチは同意する。
二次元人の進化。それはスカー・フェイスも申していたが、果たしてどの様な進化が正しいのであろうか。
セイント・コンパクトの願望を叶える力によるものか。はたまた、D-ワクチンなどの絶大的なワクチンやウィルスで己の肉体能力を向上させる事か。
進化という見えない先行きを説かれ、聖龍隊も赤塚組も新世代型たちも何も言い返せなかった。
と、その時である。
突如、秘密研究所全域に警音アラームが鳴り響き、研究所一帯が赤いランプで染まった。
「な、なんなのだ、突然!」
指南リュージが怯える様に声を発すると、隣のエリアから爆音の様な音と激しい振動が響いてきた。
「隣から聞こえる……貴重なD-ワクチンの幼生が飼育されている重要なエリアなのに!」
悲愴な面持ちで隣のエリアに走り出していく時縞ソウイチ。そんなソウイチを追って、指南リュージと北川ミツトシも駆け出した。
「お、オレ達も行くぞ!」
ソウイチの話に唖然としていた皆をメタルバードが呼びかけ、全員でソウイチ達を追って隣のエリアに駆け込んでいった。
激しい爆音と爆撃がところ構わず発射されていく現場に辿り着いたソウイチ達と聖龍HEADたちは其処で衝撃的な光景を目撃する。
なんとD-ワクチンの幼生を飼育している巨大水槽に爆撃を行っていたのは、D-ワクチンという古い種を天敵として捉える、あのSO-Xであった。SO-Xは容赦なくD-ワクチンの幼生が飼育されているエリアや水槽を爆撃していき、徹底的に破壊していたのだ。
「! SO-Xだと!」
「くっ、オレ達が秘密研究所の極秘ハッチをこじ開けたから、奴も付いてきちまいやがったんだろう……!」
SO-Xが幼生たちに襲撃しているのを目の当たりにしながら、大将とメタルバードはこの状況に非常に焦りを感じた。
するとSO-Xが幼生たちを攻撃しているのを目撃した時縞ソウイチは、ここで考えられない行動をとる。
「や、やめろ! 進化の兆しを……進化の可能性を秘めてるD-ワクチンを殺さないでくれーー!」
時縞ソウイチは叫びながら爆撃を続けるSO-Xに飛びついて、強引に爆撃をやめさせようと抗う。だが、この行為が幼生たちの反応を変えさせた。
爆撃を受け、自分たちの危機を感じ取ったD-ワクチンの幼生は、一気に集団でSO-Xに飛びついて捕食した。更にこのとき、SO-Xの動きを止めようとした時縞ソウイチにも張り付いて、物凄い勢いで両者を捕食し始めた。
「うわーーっ!」「ああ!」
SO-Xと共にD-ワクチンの幼生に捕食されていく時縞ソウイチを目撃して愕然となる一同。
さらに攻撃を受けた幼生たちは、その攻撃性をも過敏にさせてソウイチに続いて指南リュージと北川ミツトシまでも襲撃した。
「ひやあっ!」「う、うわあ!」
二人もたちどころにD-ワクチンの幼生に捕食されてしまい、この惨状を目の当たりにしたHEADと赤塚組は非常に焦った。
「ど、どうする! このままじゃ、俺たちも、このエビの怪物に喰われちまうっ」
大将がメタルバードに問い詰める中、事態は更に悪化した。
「このセクターは60秒後に切り離されます」
この警告音声を聞いたメタルバードは血相を変えた。
「いかん! このままじゃこの秘密研究所は宇宙空間に切り離されて自爆しちまう!」
「な、なんだって!」
驚愕する大将たち一同に、メタルバードは大声で叫んだ。
「急いで梯子を駆け上って、上のエリアから脱出するんだ! 急がないと宇宙の藻屑だ!」
メタルバードに急かされるまま、聖龍HEADと赤塚組は緊急用の梯子を駆け上って、上へ上へと移動する。
転送装置は秘密研究所内では使えなくされている現状から、HEADと赤塚組は急いで上の階へと移動していく。
そして梯子を上りきり、出口であるハッチの前まで皆が揃ったのを確認すると、急いでハッチを開けて奥の通路へと移動する。
するとHEADと赤塚組が通路の奥へと進んだ、まさにその時。
皆が進入して来たハッチが緊急封鎖され、秘密研究所がB.S.Lから切り離された。そして宇宙空間に放り出されると、自爆装置が働いて秘密研究所は粉々に散ってしまわれた。
「はぁ、はぁ……ど、どうにか脱出できたな」
「はぁ、ホントだな……」
互いに相手の無事を確認し終わり、息を休める大将とメタルバード。
と、ここでセントラルエリアから通信が入った。
「バーンズ、バーンズ! みんな無事?」
「アッコか、ああ、こっちは何とかみんな逃げ果せた」
「そ、そう……ところで、D-ワクチンの幼生に襲われた三人は……」
「間に合わなかった。と言うよりも、助ける暇がなかった」
「そう、残念ね……」
毒親であったかもしれないが、それでも人命が救えなかった事に非常なまでに悲愴感を募らせるアッコ。
そんなアッコは気持ちを切り替えて、メタルバード達に伝えた。
「バーンズ、其処からならもう転送装置で此方まで転送できるわ。みんな疲れたでしょう、帰って休んでちょうだい」
「ああ、アッコ、そうだな……まあ、まずは人工知能からたっぷりと愚痴を聞かされる羽目になるだろうが」
メタルバードは無断で秘密研究所に進入した経緯から、その研究所が切り離されて自爆してしまった事態に対して人工知能から大目玉を喰らう羽目になるだろうと覚悟していた。
そしてアッコ以外の聖龍HEADと赤塚組は、転送装置でセントラルエリアに帰還するのであった。
[責任]
秘密研究所に無断で入り込み、そこで時縞ソウイチたち新世党の研究者たちと二次元人の進化について対談したHEADと赤塚組。
しかしメタルバード達が独断で秘密研究所に進入してしまったため、彼らの後を追ってきたSO-Xも秘密研究所に侵入。そこで天敵であるD-ワクチンの幼生を発見したSO-Xはここぞとばかりに研究所を襲撃。
これにより飼育されていたD-ワクチンの幼生が逃げ出し、SO-Xはもちろん時縞ソウイチたち三人も幼生に捕食されてしまう。
その結果、秘密研究所は緊急事態という事でプログラムが作動し、宇宙空間に切り離されて自爆する顛末を迎えてしまう。
命からがら脱出できたメタルバード達は、この顛末を報告するべくセントラルエリアのナビゲーションルームで人工知能との対話を試みた。
この時、不安がるメタルバードに代わってアッコが自ら先導に立って人工知能との対話に試みる。
「聖龍隊、そして赤塚組、非常にまずい事をしてくれたな……私の指示にない、君達の勝手な行動が招いた結果だ。気の毒だが、この責任はいずれ、とってもらう事になるだろう」
「………………」
確かに何かしらの責任を負わざるを得ないだろう。しかしその前に連邦が秘密裏に研究を進めていた事実を蔑ろにするのはどうかと、アッコ達が顔を険しくさせたのを把握したのか、人工知能は語り続けた。
「……確かに、連邦が秘密裏に「D-ワクチン」や
「? 1体の…………! SO-Xが、ここに何体もいるというの?」
人工知能の言葉に目の色を変えて一驚するアッコに、人工知能はさも当たり前の様に言った。
「驚くような事ではないだろう。Xが分裂によって増殖することは君達も知っている筈だ。このステーションには少なくとも10体のSO-Xが、いると推測できる」
「! ………………」
「HEAD、赤塚組、今すぐここセントラルエリアを隔離しろ。SO-Xが集まってくる危険性が高い。それと常にナビゲーションコンピューターの電源は入れて置くように。今回の不祥事に対する連邦の対応を、君達に報せる義務があるんだ。理解できたのなら大人しく待機するように」
銀河連邦からの不祥事に対する対応を報告する為、大人しくセントラルエリアに待機するよう忠告する人工知能の言葉に、アッコたち聖龍隊は何も言えなかった。
実際の修司も、今回の自分達のミスには同じことを言っただろう。しかし彼なら、その前にまず……仲間の身を案ずる言葉をかけてきた筈だ。
その無愛想な瞳に秘められた優しさを仲間に悟られまいとする様な素振りで……政府ではいざ知らず、修司は聖龍隊では任務に忠実なだけのマシンの様な人間ではない。
「同志諸君、武運を祈る!」もし仮に、この言葉を、あの人工知能コンピューターが発したとしても、HEADは決して首を縦に振る事はないと自分達に言い聞かせた。
そして人工知能の指示に従うしかない聖龍隊と赤塚組は、言われたとおりにセントラルエリアで大人しく待機していた。
誰もが銀河連邦からの報告をただただ待ち続けるしかないと自負していた。
そんな中、アッコは人知れず黙然と悲しみや失望感に苛まれる三人の元を訪ねていた。
「……君達……」
アッコが静かに声をかけると、指南ショーコと北川イオリは目に若干の涙を浮かべ、時縞ハルトは失望感に苛まれていた。
「君達、大丈夫……?」
「アッコさん、僕達は大丈夫です……一応は」
再度アッコが声をかけると、時縞ハルトは静かに返答する。
「お父さん達の事、残念だったわね。まさか、あんな惨事に至るなんて……」
「もう良いんですよ、アッコさん。父達は私たちマギウスの研究と開発にしか興味を抱いていませんでしたし……何より、新世党の手先として研究を進めていたのは紛れも無い事実。お詫びしなければならないのは、私たちの方です……」
「そ、そんな! なに言っているのよ、子供であるあなた達には何の罪もないわ! そう……責任を感じないで」
アッコから惨事に巻き込まれて死亡してしまった三人の父親たちを労わる言葉に対し、指南ショーコは悲痛な胸の内を打ち明けるが、それに対してアッコは子供に罪は無い故に責任を感じないでほしいと訴える。
「……私は、あまり頭が良い方じゃないからよく解からないけど……確かに、あなた達のお父さん達が進めてきた研究や計画が間違っていたのかもしれない。けれど、だからって自分の親だって否定はしないでほしいの」
「「「………………」」」
ハルト/ショーコ/イオリの三人に訴えかけるアッコは、三人を励まそうと語り続けた。
「……私は正直、悪い親とか毒親とか、その様な親とは縁遠い環境で育まれたわ。私の両親は、姉が幼くして死んでから私を溺愛し過ぎて、もう毎日がお祭り騒ぎのように賑やかだったわ。こんな私だから、悪い親を持つ子供の気持ちはよく理解してあげられない点があるんだけど……それでも相手の苦楽を少しでも理解してあげたいの」
自らの出生から毒親を持った事のない自分でも、相手の苦楽を理解してあげたいと切実に問い掛けるアッコの言葉に、ハルトたち三人の心は少しずつ開いていった。
「……アッコさんのご両親は、最初自分たちの娘が死んだからこそ、二番目に生まれてきたアッコさんを可愛がる様になったんですよね……」
ハルトからの問い掛けに、アッコは素直に答える。
「そうよ。私の両親も最初の子が死んでしまってから、もう子供は欲しくないと思うまで落胆してたらしいわ。そんな中でも、私を産み落としてくれた。そして精一杯育んでくれた」
そしてアッコは意を決して、ハルトたち三人に切り出した。
「確かに、ハルトくん達を育てたのは、マギウスの研究としての一環だったかもしれない。けれど、精一杯育んでくれたからこそ、今こうしてみんなと一緒に同じ時を生きていられるし、辛い事も悲しい事も……楽しい事も共感できると私は思うわ! 共感と言えば、あなたたち新世代型の共有感知なんかが良い例だけど、私は共有感知でなくても、楽しい事や辛い事を共有できるんだと信じていたい! そして、同じ気持ちを共有できるからこそ、同じ時間を……一緒の時代を生きていられるんだと信じたいのよ」
「「「……」」」
「話が逸れちゃったわね。でも、少なくともこれだけは心に留めておいて。例え親が何者であろうと、あなた達はあなた達。親とは違うんだって! 自分と親とを見比べないで」
マギウスだろうと新世代型であろうと、同じ苦楽を共有できる気持ちはいつも一緒だと説くアッコは、最後に親と子供は違う事を三人に伝えた上で、三人に告げた。
「子供は親を選べない。けれど、未来を選ぶ事はできるわ」
アッコからこの言葉を受けて、酷い親だったかもしれないが実親を亡くした時縞ハルトと指南ショーコそして北川イオリは考えさせられた。
親を選ぶ事はできなくても、未来を選ぶ事はできる。
このアッコがハルト達に託した言葉は、共有感知を通じて多くの新世代型二次元人へと共有されるのであった。
[再会]
と、皆が各々で大人しく待機していると、ナビゲーションコンピューターのランプが点滅して人工知能からのお呼びが掛かったと報せられる。
すると人工知能は何故か、聖龍隊や赤塚組だけでなくセントラルエリアにいる二次元人全員に話があるとして、全員をナビゲーションルームに呼び出した。
皆々がナビゲーションルームに集まったのを確認したアッコが、人工知能と対話を始めようとコンピューターを操作する。
しかし人工知能が発した話に、一同は愕然となった。
「諸君、君達のここでの任務は終了した。後は銀河連邦に任せて、君達は一般の二次元人達と共に撤退するのだ」
「何の冗談なの? 連邦は新世党の脅威だけじゃない、Xの増殖の凄まじさや、SO-Xの危険性を承知の上で言っているの?」
なんと人工知能は聖龍隊や赤塚組だけでなく、現場の二次元人全員に撤退命令を下したのだ。これにアッコが反論すると、人工知能は当たり前の様に話し続けた。
「新世党の連中は銀河連邦が責任を持って、全関係者を処分する。さらに連邦はXに、とりわけSO-Xという存在に対し、大いに興味を抱いたようだ。奴に秘められた可能性に」
「いったい何の話をしているの。心を持たず、ただ破壊的であるだけの生き物に、何の可能性があるというの?」
新世党の人間を全員処分の名目で虐殺すると告げただけでなく、Xに対しても非常な興味を抱いた事実を聞かされアッコが反論すると、人工知能は冷徹なまでに吐き捨てた。
「君達が理解する必要はない。連邦は、軍隊を此方に派遣するようだ。君達は黙って立ち去ればいい」
「! こんなXだらけの場所に、生身の人間が立ち入ればどういう事になるか、連邦は分かって言っているの? どういう意図があって、そんなバカげた事をするの? 目的はいったい何なの?」
「もちろん、SO-Xの捕獲。そして新世党メンバーの殲滅だ」
「……それは本気なの? 本気で可能だと、思っているの?」
SO-Xの捕獲と新世党メンバーの殲滅という目的を聞いて愕然となるアッコは、捕獲と言う目的が本当に可能だと思っているのか問うた。
すると人工知能はアッコたちに想像だにしなかった事実を突き付けた。
「厳しいミッションになるだろう。だが、君達の協力は得られまいと見た、連邦の苦肉の策だ。君達が必ずSO-Xを倒そうとする事は分かっていた。だから連邦は、途中から君達への支援を絶ったんだ。「ワクチンビーム」のデータも、実は完成していた。だが、SO-Xがダメージを受ける様な武器を……君達に与える訳にはいかず、転送を中止したんだ。だがメタルバード、君は自力でワクチンビームのデータを生成してしまった。君達が過剰にパワーアップするのは、好ましく思わなかった」
「今すぐ連邦軍派遣を中止するよう本部に報せて。最悪の事態を、起こしてはいけないの!」
「連邦軍は、たった今出動した」
「そんな……」
アッコの願いも空しく、銀河連邦の軍隊は新世党の殲滅とXの捕獲を目的として出立してしまった。
アッコは思う。連邦軍は到着後、新世党を殲滅する前に全滅するだろうと。
Xの擬態による連邦軍のコピーが誕生する。そして奴らとSO-Xは彼らの到着を待ち侘びる、獲物の許へと向かうのだ。
やがて銀河連邦は地獄と化し、その被害は全宇宙に及ぶ事となるだろう。
Xは寄生した相手の容姿を、知識を、力を貪欲に、そして正確にコピーする。だが奴らは決して「心」をコピーしようとはしない。
本能的に、ただその数を増やす事だけを目的とするX達にとって、心は不要な……邪魔なものなのだろう。
Xをここから出してはならない。その存在を許してはいけないのだ。
連邦軍が到着する前に、X達を全て葬り去る必要がある。
このステーションの最深部にある自爆装置を起動させれば、それは可能だ。
惑星を吹き飛ばす程の破壊力を持つ爆薬は、Xの存在を無に返してくれるだろう。
このステーションと……自分を道連れに。
アッコは即座に行動に移ろうとナビゲーションルームの扉、ハッチを開けようとする。だが
「あ、開かない!」「ビクリともしないぞ……!」
なんとハッチはバーナビーとワイルドタイガー二人のハンドレッドパワーを用いても開かないよう密閉されて、自分を含めた多くの二次元人たちを閉じ込めてしまってた。
この事態にアッコは再び人工知能にアクセスして、ハッチを開けるよう嘆願。
「ハッチを開けて、今すぐ!」
「ダメだ、連邦軍が到着するまで、君達を拘束しておくようにと本部から指示が下った。悪いが全員、ここで大人しくしてもらおうか」
連邦の命令を絶対に忠実に遂行する人工知能には、もはや何を言っても不可能。だがアッコは自分の切実な想いを吐き出すかの様に人工知能「修司」に訴えた。
「連邦軍は絶対に立ち入らせてはいけない。それを許してしまえばどうなるか、分かる筈よ……修司!」
「……修司?」「………………」
ここで初めて呼ばれた「修司」の名前に反応が止まる人工知能は、黙然と立っているアッコたちに訊ねる。
「……誰の名前だ?」
「……私たちの、大切な仲間の名前よ」
「修司はこんな場合、君達にどうしろと言うのだ?」
「一切迷わず、ステーションの自爆装置を起動しろと、私達に命じる筈よ」
「修司は高みの見物か? 安全な場所から、君達を見殺しにする指令を下すのか」
「行くべき者が行き、残るべき者が残る、という判断よ。未来に意志を託すため、私達はそうやって戦い続けてきた……」
「その時は、君達が残るべき者だったという意味か? 未来を聖龍隊に託し……修司は自らを犠牲にし続けてきたと、いう訳だな。世界の平和と、君達の命を守るために……」
「………………」
「実に愚かな考えだ」
「あなたに、そんなこと言われたくない!」
修司を愚弄するような発言を言う人工知能の言葉にアッコが険しい眼差しで反論するが、それでも人工知能はアッコたちに淡々と喋り続けた。
「いいや、敢えて言わせてもらおう。実に愚かで浅はかな考えだ。例え、この施設のXを殲滅させようとしても、肝心の新世党がまだ蔓延っている。奴らも全員、始末した上でステーション内のX共も一掃しなけりゃ何の意味もない。そもそもお前たちの誰かが自爆装置を起動させるために犠牲になったとしても、新世党にとって邪魔な存在、勇敢な戦士がこの世から消滅するだけだ。そんな簡単な事すら気付かず、お前達は自らの命を絶とうとしている訳だ。実に滑稽だ。残るべき者の選択を、修司は誤ってしまったのかな? はははっ」
「! ………………」
「……まずは新世党の連中を先に処理するのが先決だ。それからスグに、お前達はステーションの軌道を変更して、太陽にこのステーションを衝突させればXの根絶は容易く可能な筈だ」
「? ……」
「急げ。新世党を処理した後、スグに推進エンジンを起動して、太陽に軌道を向かわせれば、どうにか連邦軍を撒けるだろう」
突然の人工知能からの提案に驚き、そして不思議がるアッコたちに、人工知能は更に熱く語り続けた。
「聖龍隊、最終ミッションだ。お前達は銀河連邦が駆け付けてくる前に二つ、やらなければならない事がある。一つ目は新世党の捕縛。そして二つ目はその後、コントロールブリッジに向かい、目的地を灼熱の星、太陽にセットして全てを焼失させるんだ」
この指令を受けて、アッコを含んだ聖龍HEAD一同は全員目を見開いて驚愕する。
そんな驚愕する聖龍HEADを尻目に人工知能は言い放った。
「そして激突までの間に、シルバー・ウィングに戻り、脱出する算段だ。速やかに行動し、必ず全員生還するんだ。これは絶対命令だ!」
完全に本物の小田原修司と同じ口調に至る人工知能からの命令に対し、唖然となる聖龍HEADに人工知能は最後にこう告げた。
「同士諸君、武運を祈る!」
この掛け声を聞いた瞬間、HEAD総員は直ちに敬礼のポーズをとった。
そして同時に頑なに閉ざされていたナビゲーションルームのハッチが開き、全員が解放された。
解放された瞬間、メタルバードが現場の皆に言い放つ。
「お前達よく聞け! オレ達はこれから、遂に新世党が本拠地に乗り込む! 全ては銀河連邦が駆けつける前までに終わらせなきゃならねえ! 覚悟は出来ているか!?」
このメタルバードの威勢に多くの新世代型二次元人を含んだ、現場の皆々は「おうっ!!」と掛け声を合わせて承知する。
そして逸早く行動に移った犬牟田宝火が皆に向かって言い放った。
「メインシャフトのコンピューターにハッキング完了! シャフトから上のVIPエリアへと移動できます!」
「よし! 先攻は無論、オレたちHEADだ! その後に赤塚組とルーキーズとマン・ヒールズ! そして最後尾には新世代型、お前達に委ねる! 総員、戦闘開始!」
犬牟田から新世党が拠点を置いている最上部のVIPエリアに通じるメインシャフトのロックを解除した事を伝え聞いたメタルバードは、総員に戦闘開始を告げた。
まずメタルバードたちHEADがメインシャフトに乗り込み、上の階層であるVIPエリアへと上っていった。その中には、現状では戦えなくなっているアッコの姿もあった。
一方、その頃VIPエリアでは。
聖龍隊と人工知能の会話を盗聴して聴いていた新世党が慌しく活動していた。急いで撤退しなければ、銀河連邦の軍隊に殲滅させられてしまうからだ。
その一方で幹部が一人、スカー・フェイスは新世党が総帥キャップ・ド・レッドに報告しようと姿を探し回ってた。
「総帥! 総帥! 緊急事態です、もうじき銀河連邦による強襲が……」
スカー・フェイスは単身、キャップ・ド・レッドが自室に使っている部屋にノックもせず進入し、緊急の事態を報告しようと多少焦った様子で踏み込んだ。
すると部屋はもぬけの殻で、人っ子一人いなかった。
「総帥……何処です? 総帥!」
スカー・フェイスが再度キャップ・ド・レッドを呼びかけ、その姿を探そうと部屋を探索すると、部屋の奥その一角から蒼い光が放たれているのを視認する。
「! なんだ……?」
蒼い光に導かれる様に、その光の元へと歩み寄るスカー・フェイスが、その光が発光している部屋の一角に顔を覗かせてみると、彼は凄まじく一驚した。
「!! お、お前は……!」
蒼い光が発光した部屋の一角を覗き込んだスカー・フェイスは血相を変えて驚愕した。が、その次の瞬間、スカー・フェイスに一筋の閃光が彼に斬りかかって来た。
「うわ……っ」
一筋の閃光に斬り付けられたスカー・フェイスは、その場に倒れ込んでしまう。
そしてスカー・フェイスを斬り付けた人物は、不敵な笑みを浮かべるのだった。
[決戦前]
聖龍隊はようやく本腰をあげて新世党が根城にしているB.S.Lの最上階。幹部クラスの役員しか使用できないVIPエリアに進攻を開始した。
だが聖龍隊一同の行く手を、新世党に就く
「雑魚は速急に排除するのよ! 狙うは大将首……新世党の親玉たちよ!」
果敢に二丁拳銃ミラージュ・ガンを撃ち込んで新世党の兵士を撃退していく聖龍隊総部隊長ミラール。彼女に続けと、遠距離攻撃が得意な鹿目まどかや巴マミが射撃で応戦を展開。
その傍らでは、同じく聖龍隊のブルーローズが冷凍銃で敵兵士を氷漬けにして相手の身動きを封じていく。さらに其処へスカイハイが突風を発生させて、敵兵たちを怯ませる。
さらに敵兵の動きが一瞬止まったのを目視したワイルドタイガーとバーナビーの黄金コンビが、敵兵に急接近して激しく殴打。敵兵を殴り飛ばす。
その傍らでは、同じく銃に弾薬を装填している隙を突いて、キリトとアスナの二人が敵兵に接近して容赦なく斬り捨てていく。
そんな頼もしい仲間達の活躍を目の当たりにしながら、敵と応戦しつつメタルバードが戦前で戦う仲間達に伝えた。
「テメエら! オレ達は先に先攻して、新世党が総帥キャップ・ド・レッドと幹部のスカー・フェイスと決着をつけてくる! お前達は他の新世党メンバーを片付けてくれッ」
「おうっ、了解したぜバーンズ!」
「他の新世党は、アタイらに任せてくれ!」
メタルバードの呼び掛けに、戦前で活躍する赤塚組の大将や新世代型の纏流子は威勢よく返事する。
そしてメタルバードたち聖龍HEADは現場を皆に託して、総帥のキャップ・ド・レッドと幹部のスカー・フェイスの打倒に向かった。
HEADがVIPエリアを進攻し、最深部の部屋まで到達してみるが誰の姿も確認できなかった。
「何処にいやがる、キャップ・ド・レッド!」
「急がないと……銀河連邦の軍隊がやってくる前に、新世党と決着をつけないと……!」
必死に総帥の姿を探し回るメタルバード同様、銀河連邦の軍隊が到着する前に片をつけないとならないと焦るアッコ。
此処までの部屋には、キャップ・ド・レッドはもちろん新世党の面々の姿が無かった事から、彼らは何処に行ったのか疑問に駆られる聖龍HEAD。
すると部屋を探索していたキューティーハニーが、部屋の奥の一角で奇妙なものを発見した。
「みんな、これを見て!」
キューティーハニーに呼ばれて駆け付けるHEAD総員。すると彼女が指差した床の絨毯には、大量の血が染み込んでいるのが確認できた。
「これは……血?」
「まだ新しいな……それにしても、なんでこんなところに?」
まだ真新しい血痕を目撃して、ナースエンジェルとメタルバードが凝視する。
するとメタルバードは此処で、血痕が発見された絨毯の手前にある小部屋に注目してみた。
小部屋には、何やら使われて日も浅い代物が多く見当たった。靴やバスローブ、そして見た事のある紅いサンバイザー。
「このサンバイザー……間違いない、キャップ・ド・レッドが自分の顔を隠すのに使ってた奴だ」
「キャップ・ド・レッドがこの部屋を使っていたのは、明らかだね」
メタルバードが注目したサンバイザーを見て、ジュピターキッドもこの部屋を総帥が使用していたのは間違いないと告げる。
すると此処でメタルバードが、部屋のベッド下に置かれている巨大な靴に着目してみた。
「この靴……やけに、でかいな」
30cmはゆうに超える靴のサイズに圧巻されるメタルバードは、徐に靴の裏を見てみた。すると靴の裏を見た途端、メタルバードの顔色が一変した。
「! ウソだろ……!? コイツは、まさか……!」
「? バーンズ、どうしたの? 何か解かったの?」
驚愕するメタルバードを前にして、アッコが不安そうに訊ねる。
するとその時、メタルバードは自らの聴覚に伝わってくる微かな音に反応した。
メタルバードは音の行方を追って、ベッド下に顔を覗き込んでみると、そこには時計表示が赤く示されている物体が人知れずあった。
「! やばい……!」メタルバードがそう思った、次の瞬間。
彼らHEADがいた部屋が大爆発し、部屋を火の海が呑み込んだ。
同時に、その衝撃はVIPエリアでちょうど兵士を全て片付け終わった戦士達の元へと伝わった。
「なんだ! この衝撃は……」
戦闘を一区切り終えた大将が呟いた瞬間、彼らがいる空間を突如として突風が吹き荒んだ。
「な、なんなんだコレは!?」
突然の突風に戸惑う大将。だが、突風はスグに治まり、辺りは再び静寂が漂った。
この事態に、ミラールが衝撃的な発言を言った。
「まさか……アッコおねえちゃん達の身になにか!」
「な、なんだと!?」
大将が一驚する中、ミラールは自らが立てた推測を述べ始めた。
「さっきの衝撃はなにか強烈な爆発で、今さっきの突風は爆発でエリアの壁に穴が開いた事でステーション内の空気が宇宙に放出されてしまったものなのかも……! そして安全装置が作動して、穴が開いたエリアを区切ろうと防御壁が作動したのかも……!」
「お、おい、マジかよ! ……アッコ、アッコ、聞こえるか? バーンズ、ジュニア! HEAD、応答してくれッ!」
ミラールの推測を聞いて大将は急いで通信でHEADに呼び掛けるが、彼らが通信に出る事はなかった。
もしかしてHEADを失ったのかもしれないと言う不安が皆に襲い掛かる中、マン・ヒールズが隊長ミスティーハニーは皆に言い放った。
「考えていても埒が明かないわ。姉さん達が無事なのを祈って、私たちは私たちで進攻しましょう!」
「うん、そうね……アッコおねえちゃん達が簡単にやられちゃう訳ないでしょうし、私達だけでも他の新世党を倒しに向かいましょう!」
ミスティーハニーの進言を聞いて、ミラールも聖龍HEADが生存している事を固く信じて進攻しようと皆に言い渡す。
聖龍隊の力強い意志に付き従われ、赤塚組も新世代型たちも新世党メンバーの元へと荒れるエリアを駆け抜けるのであった。
一方の新世党メンバーは、着々と脱出の準備をしようと宇宙ヘリで逃走を図ろうとしていた。
スペースポートにて宇宙ヘリの準備を進めている新世党であったが、彼らが準備をしていたその時、宇宙ヘリに一発の銃弾が着弾してヘリを爆発、使用不能に陥らせてしまった。
新世党が銃弾が放たれた先へ一斉に顔を向けてみると、そこにはミラージュガンを携えたミラールの姿があった。
「へっへ、新世党! 簡単には逃がさないわよ!」
「ぐぅ……聖龍隊!」
ミラールの姿を目視して悔しそうに顔を歪めるアマデウス。
すると其処に、ミラールたちルーキーズに続いてマン・ヒールズや赤塚組、そして新世代型二次元人の面々も駆けつけて来た。
「新世党!」「もう逃げ場はないわよ!」
大将とミズキが新世党に向けて銃口を向ける中、ここまで聖龍隊に死に物狂いで付いてきたシバ・カァチェンも新世党に言い渡す。
「貴方方の企ては……新世党は、もう終わりです!」
カァチェンに続いて、聖龍隊の新人であるキリトも言い放った。
「逃がすと思うか、新世党! お前達の、くそったれな野望はここまでだ!」
そんないきり立つ聖龍隊や赤塚組、そして自分たちと同じ新世代型二次元人たちを前に、新世党の面々は各々語り始めた。
「つ、遂にここまで追い詰められてしまったか……!」
「お父さん! もう罪を重ねるのはやめてっ」
父、小野崎功にこれ以上の罪状を積み重ねるのはやめて欲しいと制止する琴浦春香。
「くっ、いい加減しつこいんだよ、あんたら! さっさとくたばっちまえ!」
「三枝一族復興の為にも……ここでやられる訳にはいかん!」
高宮や三枝一族の者達は、自分たちを取り囲もうとする聖龍隊を前に苦渋の顔を浮かべる。
「此処まで来て、早々簡単にはやられないぞ……!」
「カイト! もうやめろ! 罪に復するんだ!」
友である風陣カイトの悪あがきに、嵐山ブンタは罪に復するようにと説得する。
「チッ、だから言ったんだ。さっさとコイツら皆殺しにして、コンパクトを持ってずらかろうって……!」
伊丹キョウジは早々に聖龍隊や自分たちに反する新世代型を殺しておくべきだったと口にする。
「我々、新世代型二次元人の真実を明らかにする為にも……この場にて貴様らを成敗してくれようぞ!」
アマデウス・K・ドルシアは目の前に蹂躙する聖龍隊や同族の新世代型を討ち取ろうと武器であるサーベルに手を伸ばす。
「くっくっく……まさか、こやつ等が此処までやるとはのう……まあ、良いわ。逃げ出すなんて無粋な真似せずとも、この場にて妾が葬ってやろうぞ」
「ボクも久々にやっちゃうぞ!」
「私も……! 完治したばかりの、この腕で聖龍隊に一矢報いりましょう!」
「ふふっ、いい加減に気付いたらどうですか? 二次元人の可能性……進化の鍵を握り潰すあなた達こそ世界から削除されなければならない存在だと……」
意味ありげな言葉を吐き掛けるセレディ・クライスラー。
そんな新世党の台詞を前に、膠着状態が続く中、一人、集団の中から前へと歩み出す青年の姿が。
「……君は、確か……」
セレディが呆然とその青年に目を向ける中、青年は一人静観とした面持ちで呟き始めた。
「あなた方の言い分は……私の耳に深く残り続ける、不快極まりない言葉だ。優しさも……思いやりも失い、もはや人の尊厳すら失ってしまったあなた方に……私は微塵の同情も感じ入れない……」
「へっ、何を言っているんだ。このキチガイが!」
青年の一語一句に理解し得ない新世党の法月仁が罵声を浴びせる中、青年は続けて語った。
「私の言い分にも、不快を感じるのなら、どうか耳を遮ってほしい。どうせあなた方は……この場から生きて帰る事はできないのですから」
青年は新世党の面々の数多い不快な言動に我慢の限界を来たし、単身、新世党に挑みかかった。
破願一望 シバ・カァチェン 絶念
[決戦]
新世党の身勝手な立ち振る舞いに暴言の数々に、聖龍隊から人の情を教わったシバ・カァチェンが挑みかかろうとしていた。
「か、カァチェン……?」
「ミラール殿、この場は誠に勝手ながら私に任せてくれませぬか? 加賀美殿のコンパクトを奪っただけでも許しがたい上に、心優しい二次元人の皆々様を侮辱する彼ら、新世党に一矢報いたいのです……」
「……解かったわ、カァチェン。遠慮は要らない、奴らは既に未来を自ら捨て去った
「仰せのままに……」
ミラールからの了承も得たカァチェンは、単身新世党に突っ込もうとした。が、その時、彼を呼び止める声が。
「か、カァチェンさん!」
「なんでしょうか、琴浦殿……」
「お、お願い。できる限りでいいの……お父さん達を、新世党の人たちを殺さないで! お願い……!」
「……相解かりました……」
琴浦春香からの涙ながらの嘆願を受けて、カァチェンはできる限り殺めずに新世党を倒そうと
そんなカァチェンの眼差しには、普段の彼からは到底思いつかない程の闘志が燃え盛り、その目に凝視された新世党の面々は軽く凝固してしまった。
「みんな、カァチェンの意志を無駄にはしないで! 彼を援護するのよ!」
「あれだけやる気に漲る彼を……カァチェンを見るのは初めてだわ! マン・ヒールズ、私たちもカァチェンを援護!」
「カァチェンに続け! 赤塚組、徹底攻撃だッ!」
シバ・カァチェンの闘志を目の当たりにしたミラール/ミスティーハニー/そして大将はカアチェンを援護しながら応戦する構えを見せた。
そんなカァチェンの進軍を止めようと、高宮/勝沢/山崎、そして三枝一族の集団がカァチェンに向かって発砲。しかしカァチェンは彼らが放った銃撃を全て
「そ、そんな!」「ウソでしょ!?」
自分達が放った銃撃が全て奇形の薙刀で弾かれてしまった現状を前にして驚愕する勝沢と山崎。
そんな彼女達と、傲慢な三枝一族にカァチェンは急接近して
「温情も優しさも、欠片すら見当たらないあなた達は……最早、未来を生き抜く権利は微塵もありません」
「!!」
優しさの欠片すら見当たらない低俗で傲慢な三人と一族には、未来を生き抜く権限はないと豪語するカァチェンの言葉に愕然となる一同。
そしてカァチェンはそんな彼らを一瞬で斬り込み、彼らが所持していた銃器ごと肉体を切り裂いてみせた。
「ぐはっ」
身体を切り裂かれ、血飛沫が飛散する中で呻き声を発する高宮たち。そんな三人の少女と傲慢な一族を無情にも斬り捨てたカァチェンはこう言い残した。
「安心してください……急所は外しておりますゆえ」
実際に高宮たちに三枝一族は急所を外されていた事で、血も大量に吹き出さず、一命は取り留められていた。
「けっ、敵を殺さないだと……! 殺る気満々かと思っていたが、そうでもなかったな!」
敵を殺す勢いで攻めてくるのかと思っていたが、そうでもないカァチェンに対して過大評価していたと告げる伊丹キョウジは、有馬トオル/シャーロット・レイン/甲本ダイゴ/ブルース・ブラドーらと共にカァチェンに向かってマシンガンで応戦し始める。
しかしカァチェンは己の身体に浴びせられる弾幕を全て
「何ゆえ、あなた方は戦いに身を投じる……?」
「へっ、決まっているだろ! 戦いが面白くて面白くて、しょうがないんだよッ!」
「戦いが面白い……? 今の私には理解し難いが……おそらく今後一切、理解したくもない感情でしょう」
「なに……!」
「本当の戦いとは面白半分に行うものではない……私は、今まで数多くの武将と対峙してきたが、彼らは戦いを好んでいる訳ではなかった。純粋に、強者との一騎打ちを心から待ち望み……そして直向に己の信念と誇りをかけて、戦いに身を投じていたのだ」
此処に至るまでカァチェンが刃を交えてきた武将の多くは、力強い信念と誇りを持った素晴らしい武将であり、そんな武将達と戦いを好んでいるキョウジ達は断じて違うと断言するカァチェンは、一振りの元キョウジ達を
「く、来るな! 来ないでくれぇ!」
「わ、私たちが悪かった! 歯向かわないから斬らないでくれ!」
「その言葉……あなた方が罪を重ねる前に、聴きたかったです……!」
武器を持たず、抵抗の意志も示していないマシタやナイン・バルトの訴えにも、カァチェンは切実に彼らが罪を重ねる前にその詫びにも近い言葉を告げて欲しかったと目を潤わせて言う。
そしてカァチェンは心を無にして、マシタ/ナイン・バルト/ベイカー/叡山枝津也/美作昴の五人を一気に背面から斬りかかり、倒した。
ロボット戦ではない戦いなので、カァチェンとは同レベルの戦いを展開するアマデウス・K・ドルシア/カイン・ドレッセル/ジェフリー・アンダーソンの三人。
しかし三人が戦ってみて気付いた不可思議な点。それは不死の肉体を持つアマデウス達に、なぜかカァチェンの
「ッ、どういう事だ……! 傷口が塞がらない……!」
アマデウスは自身の肉体についた傷口が、普通ならマギウスの自分なら瞬く間に塞がる筈の実情ではない事実に困惑する。
そんな困惑しながら鬩ぎ合うアマデウス達を前に、カァチェンは彼らに言った。
「所詮は吸血鬼をモデルに生み出された悪鬼……身体だけでなく、心までも悪鬼に成り下がった貴方方に……未来を差し渡す事はできませぬ」
次の瞬間、カァチェンはカイン・ドレッセルとジェフリー・アンダーソンの二名を斬り付けた。
「ぎゃあっ」「ぐっ」
胸元から夥しい程の出血を吹き出すカインとジェフリー。そんな両名を前に、カァチェンは冷徹なまでに己の責務を全うする。
「全ては我が友、聖龍隊からの指示……ですが、怨むのならどうか私を怨んでください。人から怨まれるのは、慣れっこ故……」
冷徹に、そして無慈悲に敵を容赦なく斬り付けるその姿は、聖龍隊と出会う前のカァチェンと何ら変わりなかった。
同志であるカインとジェフリーをも斬り捨てられたアマデウスは、一旦後ろへと下がって最後尾に位置するセレディ・クライスラーと
「こ、これはマズイぞ……! 明らかに形勢は我らに不利!」
するとこのアマデウスの訴えに、羅暁とセレディが文句を言う。
「ぐっ……アマデウス! 貴様、我と同じ不死の肉体を持つマギウスとやらではないか! あんな出来底ないの三次元人相手に引けを取られるとは恥ずかしくないのか!?」
「全くだ……! あんな何を考えているか解からない、不気味な三次元人を相手にやられっ放しとは、マギウスも地に落ちたものだ」
「な、何だと……! だが、セレディよ! 当初、貴様はあのカァチェンとやらは、無骨の輩で大した戦力にはならないと申していたが……アレはなんだ! 無骨どころか、しっかり骨のある戦いを展開しているではないか!」
次第に言い争いにまで発展する三人。そんな三人に、戦前に向かって快進撃を続けるカァチェンの援護に回っていた赤塚組の銃撃が着弾した。
「うッ」「ッ!」
セレディ/羅暁/アマデウスの三人の身体に銃弾が着弾し、弾痕から出血する中、銃を撃った赤塚組の大将が三人に檄を飛ばす。
「テメエら! さっきから聞いていりゃ、言いたい放題言いやがって! 良いか、カァチェンはもう出来底ないでも骨のない奴でもない! ……立派な武人、そして俺達の仲間だ!」
大将がそう言い放つと、彼ら赤塚組は更に援護射撃としてセレディたち三名に銃撃をお見舞いする。
「ぐっ……」
顔を伏せて銃撃が顔面などの急所に当たらぬよう身を守るセレディ。だが銃弾は赤塚組の狙い通り、彼らの足や腕、胴体に着弾して三人の動きを若干ながら制限させられた。
「ハハッ、君も案外やるじゃないか♪ 最後の宴だ、せいぜい楽しもうよっ!」
「これ以上、羅暁様に傷一つ負わせないぞ!」
一方でカァチェンの前に、針目縫と鳳凰丸礼の二名が立ちはだかり、カァチェンと激しい攻防を展開する。
だが、カァチェンは長い間、聖龍隊に加盟している間に出会った多くの名立たる武将との鬩ぎ合い、そして経験から意図も容易く縫と礼の太刀筋を読み解いて、二人の斬撃を軽々と回避。
「な、なんだって?」「! ま、まさか……!」
自分たちの攻撃が回避されるとは夢にも思わなかった縫と礼の二人。すると二人の攻撃を回避したカァチェンは、冷然とした面差しで
「狂気、忠節……貴女方の想いは確かに伝わりました。ですが……私が探し求めている感情は、之では無い」
そう呟くように縫の狂気と礼の忠節を感じ取った事を言い伝えたカァチェンは、両名の禍々しい感情が自分が追い求める感情ではないと言い伝え、縫と礼の両名を一刀の振り翳しで倒した。
「ぐっ……ば、バカな。このボクがやられるなんて……!」
「ら、羅暁さま、せめて貴女だけでも……」
急所外しで斬り倒された縫と礼の二人を目前に視認して、絶句する。
「ば、バカな、有り得ん……! あの二人も生命戦維で肉体が強化されている不死の駒! それが何ゆえ、あのような弱輩者に意図も容易く斬り捨てられる……!?」
縫と礼が斬り捨てられたのか解からず困惑するばかり。
そしてカァチェンと、彼を援護する聖龍隊や赤塚組の活躍も相まって、新世党の残党は既に数える程度にまで落ちた。
小野崎功、風陣カイト、セレディ・クライスラー、
「な、何故だ……何故、こんな事に……私はただ自由を……人生を取り戻したかったのに……!」
「こ、コンパクトだ! 加賀美あつこのコンパクトを使って、僕たちの願いを叶えるんだ! こうなったら悪魔でも神でも、なんでも良い! 変身して奴らをみんな殺すんだっ!」
何ゆえこの様な事態に陥ったのか涙目で崩れる小野崎功とは反対に、法月仁は未だ抵抗を続ける為にミラーガールのセイント・コンパクトを使用してこの窮地を脱するよう言葉を投げ飛ばす。
「さっきからコンパクトを発動させようとしているが、何の反応も無い!」
「動け、動け……!」
急いでコンパクトを作動させようと自棄になるカイトとアマデウスの二名に、戦前で二丁拳銃ミラージュガンを構えるミラールが眼光を鋭くさせて言った。
「無駄な事ね! そのセイント・コンパクトは元々、鏡の国の女王に認められた者しか扱えないのが道理! あなた達の様な頭の狂った
「くっ……何故だ。何故、キャップ・ド・レッドは新世代型でも使えない加賀美あつこのコンパクトなんか奪わせたんだ!」
「ぬぅ……! 我ら優秀な遺伝子を持ち合わせるという新世代型の遺伝子と、セイント・コンパクトを組み合わせれば……我々は最強の存在に……それこそ人智を超えた存在に成れると聞いていたのに……ッ!」
このセレディと羅暁の悔しそうな苛立ちを目の当たりにしたカァチェンは、静観な眼差しで残党者たちに話し掛ける。
「人智を超える存在……果て、あなた達は既にその様な逸材の筈……」
「な、なんだと……!」
法月仁が反応するが、それでもカァチェンは気にも留めず淡々と語り続ける。
「あなた方は……聖龍隊や赤塚組、そして多くの新世代型二次元人の皆様方と同じ人智を超えた存在、二次元人……そんな既に人智を超えたあなた方が、神や悪魔に成り上がろうとするのは実に滑稽な話……この私とて、思わず失笑してしまう程です」
「な、なんだと……!」
カァチェンの煽りを聞いて風陣カイトが怒りを露にするが、それでもカァチェンは話をやめようとはせず語り続けた。
「……しかし、あなた方は数え切れないほどの罪を犯しました。それは最早、人の領域では無い……魑魅魍魎の領域まで行き届いてしまった、おぞましい異形の怪物、そう……
「それは……君たち、三次元人が勝手に決め付けた事だ!」
「ですが、ご安心を……私は確かに弱輩者の身……ですが、あなた方を楽に黄泉ノ国へと誘う事はできます……」
「!!」
「しかし、ご安心を……こんな無骨の弱輩者の私でも、友と思ってくれた多くの新世代型の皆々様……彼らの意思を汲んで、あなた方を今生から解き放つのだけは留めておきましょう」
最初は残党をあの世へと誘おうと語るカァチェンの言葉に驚愕する残党達であったが、カァチェンはこんな自分と繋がりを与えてくれた新世代型二次元人の想いを汲んで命までは奪わないと残党たちに言い渡す。
カァチェンは次の瞬間、風陣カイトに急接近し、彼の首後ろ筋を
そしてカァチェンは、
「台湾軍が国将軍にて、聖龍隊の友……シバ・カァチェン……旋風回る」
次の瞬間、カァチェンは
「お、おい来たぞ!」
「お前が行け! どうせ何の役にも立たなかったんだし、最後ぐらいは殉職しやがれッ」
目の前まで突撃してくるカァチェンを前にして酷く動揺する小野崎功。するとそんな功の弱腰に怒りが切れた法月仁が、強引にカァチェンの前へと功を押し出した。
「ひぃッ」
目の前に迫り来るカァチェンを前にして顔から血の気が一気に引いていく小野崎功。すると、そんな功にカァチェンが囁く様に言った。
「貴方は……非常に羨ましい事です」
「?」
「私には、琴浦春香殿の様に心優しい身内は居りません……そんな私から見てみれば、貴方の様な大罪人でも生かして欲しいと嘆願する彼女の想いは実に尊いものです」
「!」
カァチェンは琴浦春香の言葉を忘れては居らず、功を殺す気など微塵も無かった。これに対して功は此処でようやく実娘春香の優しい一面に気付かされた。
そしてカァチェンは、
「く、クソ! 此処まで来て、やられてたまるか!」
功が気絶させられたのを目の当たりにした法月仁は、足元に転がっている銃器を手に取るとそれをカァチェンに向かって発砲した。
連続で強力な銃弾を発射していく仁。だがカァチェンは右に左にと避けて、更には
「クソッ、また輝きを……過去の繁栄を手中に収めたかった!」
過去の虚栄を再び独占したがる仁の発言を受けて、カァチェンは彼に冷たい視線を送りながら
「貴方には所詮、人の心に輝きを与えられる事はできないでしょう……むやみやたらに争いの種を振り撒き、多くの人心を傷つけてきた貴方に……彩瀬なる殿や蓮城寺べる殿、そして神浜コウジ殿や速水ヒロ殿たちの様に人々に夢や希望を与えられないでしょう……そんな貴方の芸当など、私は微塵の関心もありませぬ故に……」
次の瞬間、カァチェンは銃を乱射する仁を、銃器ごと叩き斬って見せた。
「うわあああ……っ」
仁の断末魔が響き渡り、彼の顔面や着用していた眼鏡には胸元から飛散した大量の血で真っ赤に染まっていた。
最後に残ったのは、アマデウスと羅暁、そしてセレディの三名。
三人は、夜叉の如き戦いぶりを見せたカァチェンに対して非常に恐れていた。
「カァチェン、大丈夫か? なんなら、前と後ろ、交代してやってもいいぜ」
「いいえ、大丈夫です、赤塚殿……たった三人の弱輩者を相手にするのに、戦力を無駄に消耗させるのは利口ではありません」
大将が戦前と後ろの立ち居地を変えて、交代しようかと声をかけるが、カァチェンはそれを拒否。最後まで新世党の面々を一人で返り討ちにしようと固い意志を秘めていた。
そしてゆっくりゆっくりと目の前の三人に歩み寄るカァチェンは、静かな殺意を
「はぁ……!」
「こ、こうなったらやけくそだ!」
目前まで迫るカァチェンを前に、アマデウスは我武者羅に応戦を開始。両者は互いに刃と刃を交えさせて、一歩も引かない戦況を作っていた。
だが、その時。カァチェンは背後から忍び寄る殺気に気付いて、アマデウスから離れようとする。するとアマデウスの方も、その瞬間に生じたカァチェンの隙を突いて一気に剣で彼の胸部を貫こうと剣を立てた。
そしてアマデウスがカァチェンに剣を突き立て様とした瞬間、背後からは
両者に板挟みにあったカァチェンはまさに危うし。だがカァチェンは風の様に俊敏な動作でアマデウスと羅暁の間からすり抜け、事なきを得る。そして双方共にカァチェンにトドメの一撃をお見舞いしようとしたアマデウスと羅暁は互いの得物で向き合った相手を突き刺してしまい、致命傷を負ってしまった。
「うッ、よ、余計な事を……!」「そ、それは妾の台詞じゃ……!」
互い違いで相手を得物で貫いてしまったアマデウスと羅暁は、その場に崩れ落ちてしまった。
「……母さん……」「母上……」
予想外の結末でその戦いに終止符が打たれた惨状を前にして、流子と皐月の姉妹は悲痛な胸の痛みを感じ入る。
[決戦後]
そして最後に残ったセレディ・クライスラーは、数多の銃撃を身体に浴びて、もはや抵抗するのもやっとと言う状況だった。
しかしセレディは、自分達が強奪したセイント・コンパクトを離さず、最後まで抵抗の意思を示した。
「く、来るな! 言う事を聞かないと、コンパクトを叩き壊すぞ!」
「もう意味の無い事はしないで下さい……コンパクトが簡単には破壊されない代物である事は、貴方方も重々承知の上……」
臨戦態勢で近付こうとする聖龍隊や赤塚組を前に、コンパクトを盾に最後の抵抗を見せるセレディに哀れみを感じたカァチェンが訴え掛ける。
「何故です……! なぜ、あなた方はこんな真似を……私の知っている二次元人は……人々に夢を……希望を託してくれた存在。なのに……!」
カァチェンは未だ新世党の面々が反旗を起こす様な無粋な真似をするとは到底思えなかった。何故なら彼にとって二次元人とは、自分たち三次元人に夢や希望を託してくれる尊い存在なのだから。
そんな二次元人を美形化するカァチェンに、セレディは腹部に受けた銃弾による傷口を手で押さえながら訴えた。
「力だ……力をつけなければ、誰もボクらの主張に耳など傾けてはくれない……!」
「そんな!? 他にも何か方法があったのでは……」
「お前達、三次元人に
三次元政府に
そんなセレディは、殺意に満ちた禍々しい瞳で前方の戦前の者たちを睨み付けて言った。
「ボク達は動ける限り、お前達を……!」
と、その時。
「やって、カァチェン!」「トドメよ、カァチェン!」
最後まで抵抗の姿勢を見せるセレディに対してトドメを刺せと訴えるミスティーハニーとミラール。二人の言葉を受けて、カァチェンは最後の最後まで抵抗の意思を見せるセレディに斬りかかり、セレディを倒した。
「……遂に、取り返せましたね。ミラーガールの、加賀美あつこ殿のセイント・コンパクト……」
急所を外したり、峰打ちで済ませた事で命に別状無く取り押さえられた新世党の面々を拘束した後、ようやく取り返せたセイント・コンパクトを凝視して惚れ惚れするカァチェン。そんなカァチェンに、ミスティーハニーとミラールが言葉を掛けてきた。
「ご大層な事を言っても、新世党のした事は
「一歩間違えば、世界を破滅させるところだったわ」
「私達は間違ってないわ」
カァチェンに自分達のした事は決して間違いではなかったと述べるミスティーハニーにミラールの言葉を受けて、カァチェンはコンパクトを見詰めながら考えさせられた。
するとその時、血塗れの戦場を傍観していた新世代型二次元人の中かから、一人の三メートル級の大男が現場に駆けつけて来た。
「セイント・コンパクトの反応を、キャッチして来たのだが……」
「ドレフ将校……!」
なんと銀河連邦の軍隊よりも先に、ドレフ将校率いる部隊が先にB.S.Lに到着したらしい。
「ドレフ将校、どうやって……!?」
しかし銀河連邦の強制介入によって、地球の部隊が派遣される事が無かったと思い込んでいたミラールが訊ねると、ドレフ将校はその理由を述べた。
「うむ、確かに銀河連邦の独断で私の部隊の介入は即刻中止になった訳だが……しかし、君たちの事がどうしても心配でね。命令を無視してB.S.Lに専行した訳さ」
「さっすが! 神のドレフの名は捨てたもんじゃないわね! 私たちのために遠路はるばる駆けつけてくれるなんてさ」
「ははっ、君たちの努力の成果に比べたら大したものではない。よくぞ
するとミラールと話をしていたドレフ将校は、新世党がミラーガールより奪い取り、所持していたセイント・コンパクトがどうなったのか確認を入れた。
「ミラーガールのセイント・コンパクトは、どうなった?」
「はい。新世党が所持していましたが、無事押収できました……」
「これが……」
カァチェンから手渡されたコンパクトを手の中に収め、ドレフ将校はその輝きの美しさに思わず見惚れてしまう。
そしてドレフ将校は、カァチェンとの戦いで深手を負ったために戦闘不能に陥っただけでなく、聖龍隊や赤塚組によって拘束された新世党のメンバーに向かって強く唱えた。
「新世党の
だがその時、熱弁するドレフ将校に琴浦春香や纏流子が駆けつけてドレフ将校に訴えた。
「ど、ドレフ将校!」
「ん? なんだい?」
「頼む、できるだけ手荒な真似だけはしないでくれッ」
「どうしてだ? 彼らはジャッジ・ザ・シティで何百人もの人民の命を奪った大罪人! それに君たち自身だって、このB.S.Lにて君らも酷い目に多く遭わされてきたのだろう? もはや釈明の余地すらない」
「そ、そうかもしれませんけど……でも、私のお父さんだけじゃなく、この流子さんのお母さんも仲間に加わっていました! 確かに犯した罪は重いです。ですが、それを許した上で、また一緒に暮らせる様に、どうか穏便な対処をお願いします!」
「アタイからも頼むよ、将校さん! 母さん達のやった事は確かに許せねえ事ばっかりだ。だけど、それでもアタイ達にとっては家族も同然なんだ! どうか、此処は一つ、穏便に事を運んでほしいんだ。これは全新世代型の願いなんだ……!」
「………………」
琴浦春香と纏流子の必死の嘆願を前にして黙然と立ち尽くすドレフ将校。
すると次の瞬間、ドレフ将校の口から言葉が飛び出してきた。
「……優しいのだな、君たちは」
そっと口元を笑ませるドレフ将校の反応を見て、ホッと胸を撫で下ろす春香と流子達。
そしてドレフ将校は、捕縛した新世党の護送を聖龍隊や今作戦に協力してくれた二次元人たちに頼むと、皆に告げた。
「今作戦に置いて、諸君らの働きは見事だった! 作戦を指揮できたことを名誉に思うよ、聖龍隊! 赤塚組! そして……新世代型よ」
「ありがとうございます、ドレフ将校!」
聖龍隊や赤塚組だけでなく、新世代型たちにまで名誉に思うと告げてくれるドレフ将校にカァチェンは元気よく礼を述べた。
すると此処で赤塚組の大将が、ドレフ将校に耳打ちした。
「な、なあ、ところでドレフ将校。さっきから聖龍HEADの連中が見当たらないんだ。それに新世党の総帥だと抜かしやがったキャップ・ド・レッドに幹部のスカー・フェイスの姿も見当たらねえ。アイツらは一体何処に行っちまったんだ?」
「ううむ、なるほどな。解かった、新世党メンバーを護送し終わったら捜索しよう。HEADの事も当然ながら心配だが、それ以上に総帥キャップ・ド・レッドに幹部スカー・フェイスの行き先も気になる」
そう考え事をしながら、ドレフ将校はスペースポートに在留する皆に言った。
「それでは諸君、しばらくこの場に待機していてくれ。すぐに迎えを来させよう」
そういうとドレフ将校は、セイント・コンパクトを持ったまま何処かへと消えていってしまわれた。