現政奉還記 未来都市&宇宙編   作:セイントドラゴン・レジェンド

14 / 14
 新世代型二次元人の真実に対して、執拗に隠蔽する聖龍HEADの態度から、彼らに対して不信感を募らせてしまう赤塚組。そんな折、突如B.S.Lに激しい揺れが。原因は以前にも戦った事のある警備ロボ「ボクス」の暴走。人間の脳細胞を応用したボクスに寄生生命体Xが寄生してしまったらしい。この非常事態に人工知能は、厳しい任務となる事を見越してHEADと赤塚組にボクスの破壊を指示。その道中、ボクスが潜伏してると思われるセクター6で一行は見慣れぬ機械仕掛けの扉を発見。と、その時、突然セクター6を激しい揺れが襲い、HEADと赤塚組は急いで現場に急行。そこで彼らが対峙したのは、なんと新世党によって改造された上に、Xに寄生された警備ロボ「ボクス」の大群であった。ボクスの群れに、HEADの協力を拒みながら戦闘していく赤塚組は当然ながら苦戦を強いられる。どうにか信頼を少しながら回復できた両者は、その後は協力しながらボクスの殲滅に勤しむ。その頃、セントラルエリアではアッコがドレフ将校と通信している最中に敵幹部のスカー・フェイスが来襲してきた。どうにか善戦の末、スカー・フェイスを退かせたセントラルエリアの戦士達だった。その頃HEADと赤塚組が踏み込んだ謎のエリアの正体は、銀河連邦が秘密の研究を進める秘密研究所であった。其処では数多くのUMAが飼育されていたが、ここで世界各地で目撃されるUMAの大半が突然変異した二次元人である事をメタルバード達から聞かされて絶句する面々。すると、その秘密研究所で独自の研究を進めていた新世党の時縞ソウイチ/指南リュージ/北島ミツトシの三人がHEADと赤塚組に接触。その三人から拝見させられたのが、かの鬼神小田原修司の肉体に打ち込まれたD-ワクチンその幼生や成長した個体を収めた標本の数々だった。銀河連邦はUMAに変貌した二次元人だけでなくD-ワクチンの秘密研究までも密かに進めていたのだ。と、ソウイチたち三人に二次元人の進化の奇跡を説かれる面々だったが、そこにSO-Xが襲来して飼育されていたD-ワクチンの幼生を次々と排除。すると逃げ出した幼生たちは、自分たちを攻撃してきたSO-Xだけでなくソウイチたち三人にも牙を振るい捕食するのであった。すると同時に秘密研究所の非常装置が作動して、研究所の区間が宇宙空間に放り出されると警告が。これにHEADと赤塚組も急いで秘密研究所から脱出して事なきを得る。それからアッコたちは人工知能からB.S.Lに潜伏しているSO-Xは幾多にも分裂・増殖を繰り返して今や10体以上いる事が明らかにされた。それから間もなく、人工知能は突如として聖龍隊や赤塚組たちに保護した一般人を引き連れて全員撤退を命じた。これにアッコがその訳を問い質すと、人工知能は銀河連邦が部隊を引き連れて新世党の殲滅だけでなく危険極まりないSO-Xの捕獲と言う任務を遂行すると言う。SO-Xを宇宙に解き放ってはいけないと人工知能「修司」に訴えるアッコの想いが意外にも通じたのか、人工知能は彼女達にB.S.Lの軌道を変更して太陽に衝突させれば惨事は防げると説く。一行は早速行動に移り、皆は新世党に強襲をかける。だが、その矢先HEADは仕掛けられていた爆弾に吹き飛ばされ、生死不明となってしまう。だが他の聖龍隊士はそれでも果敢に進攻を続行。そして新世党の面々を追い詰めるとシバ・カァチェンが彼らとの一件を一任して欲しいと嘆願。これに他の聖龍隊も赤塚組も同意して、カァチェンは単身新世党へと挑みかかる。そして羅暁やアマデウス、セレディ・クライスラーをも急所を外して存命させた状態で全員を確保、拘束したところに銀河連邦から部隊派遣の容認許可が降りないまま駆けつけて来てくれたドレフ将校が。カァチェンはドレフ将校に迷う事無く、新世党が奪ったミラーガールのセイント・コンパクトを手渡すと、全員はその後ドレフ将校が用意してくれた宇宙戦艦に同乗して地球に帰還しようと言うところだった。



現政奉還記 宇宙編  ln the name of JUSTICE

[別れ際の……]

 

 前回、遂にB.S.Lの最上部、幹部クラスの乗員しか入室を許してもらえてないVIPエリアを拠点に反乱活動を起こしていた新世党を追い詰め、打倒する事に成功した聖龍隊と赤塚組。

 しかし、新世党との決着を済ませた聖龍隊と赤塚組だが、決着の場となり、もうじき迎えの宇宙戦艦が到着するスペースポートに肝心の聖龍HEADが未だ姿を見せていない現状。

 更に新世党が総帥キャップ・ド・レッドに幹部のスカー・フェイスも行方不明という状況に皆が困惑していた。

 数多くの懸念を抱えたまま、皆を心配して銀河連邦の許しを得る前にB.S.Lに降り立ったドレフ将校の案内の元、彼が寄越した迎えの宇宙戦艦に皆は搭乗しようとしていた。

 その乗員する面子の中には、聖龍隊と赤塚組によって捕縛させられ、拘束された新世党メンバーの姿も。

 拘束され、無念さを訴えかける様な重々しい面差しを浮かべる新世党メンバーと共に、民間の二次元人達も迎えの戦艦に同乗しようと全員がB.S.LのVIPエリアそのスペースポートに集合していた。

「………………………………………………」

 電子部品を使った拘束器具で両腕を後ろ手に縛り付けられ、補導されていく新世党の面々を暗黙とした面持ちで見届けるシバ・カァチェン。

 自分達の主張を認めてもらいたい、その一心から反乱を起こした新世党が護送される様を捉えて、カァチェンは色々と考えていた。

 そんな黙々と考え込むカァチェンに気付いて、マン・ヒールズが隊長ミスティーハニーが声をかける。

「私達は任務を果たした。今はそれでいい、違うかしら?」

 自分達は異常者(ヒール)を討伐すると言う大義名分を果たした、それだけで良いではないかと説くミスティーハニーの説にカァチェンも同意するのだが。

「ええ、それはそうですが……新世党の総帥、キャップ・ド・レッドは、どこに……?」

 カァチェンはミスティーハニーに新世党の総帥であるキャップ・ド・レッドは何処に消えたのか訊ね返すと、そこにスター・ルーキーズ総部隊長ミラールが話に割り込んできて現状を報せに来た。

「キャップ・ド・レッドだけじゃないわ。幹部のスカー・フェイスも姿が見えない……それに、さっきからアッコおねえちゃん達HEADとも連絡がとれないし、どうなってるのかしら?」

 ミラールは新世党の総帥だけでなく、幹部のスカー・フェイスはもちろん聖龍HEADとも連絡が取れない現状に頭を悩ませていた。

「確かに捕縛した新世党の連中は口々に、知らないの一点張り……さっきVIPエリアを襲った爆発の事はもちろん、二人の頭目の行方もね……」

 ミラールの話を聞いて、ミスティーハニーも総帥だけでなく幹部までも姿を晦ました一件に加えて、捕縛した新世党メンバーが何も知らないとシラを切る現状に違和感を覚えていた。

 そんな総帥に幹部、そして聖龍HEADの行方が掴めない現状に現場の聖龍隊や赤塚組が疑問に思う中、ミラールが軽々しく発言する。

「まあ、新世党が壊滅して後々調査が進めば……きっと二人の行方も判明するわよ。アッコおねえちゃん達HEADとも、いずれ連絡がとれるわよ」

「「………………」」

「だ、だって……あの、アッコおねえちゃん達なのよ。爆発だが何だか知らないけど、簡単にくたばっちゃう訳ないじゃない」

 新世党が壊滅した今となっては、後々の調査で二人の行方も判明し、更にHEADも姿を見せるだろうと口にするミラールに対して、ミスティーハニーとカァチェンは唖然としてしまう。

 

 皆がドレフ将校が派遣した宇宙戦艦に搭乗する為、VIPエリアのスペースポートに集結していく中、スペースポートに集まる二次元人たちは嬉々としていた。何故なら……

「わあい! ワタシたち、アニメタウンに帰れるんですネっ!」

「俺たちも元居た世界に送ってもらえそうだし……本当に助かるよ」

 自分たちが元いたアニメタウンや異世界に移送してくれる事実を、ドレフ将校から伝え聞かされている聖龍隊から報せられて心から嬉しく思う新世代型のアリス・カータレットとレド。

 どうやら此処で一般の二次元人たちは、ドレフ将校の力添えでそれぞれが元居たアニメタウンや異世界に送ってもらえるらしい。

 この事態を聞いた二次元人達は大いに喜んだが、中には今まで長い間共に苦楽を体感し、頑張ってきた友や仲間との別れを惜しむ余り、目から一滴の涙を流す女子の姿までも目撃された。

 

 

「改めて礼を言わせてくれ、聖龍隊……新世党のやり方に疑問を持ち、レジスタンスやヌーディスト・ビーチの頭目として今まで戦ってきたが……正直に言って、君達の力がなければ此処まで来ることは、できなかった……ありがとう、聖龍隊! 君達は最高のヒーローであり戦士だ」

 此処までの長い道のりを来られたのは、レジスタンスやヌーディスト・ビーチの戦力だけでなく、聖龍隊のお陰でもあると美木杉愛九朗は心から礼を申し上げた。

「フレッド、そして数多くの仲間達……彼らが信じて、ついて来てくれた事が無駄にならないよう……私は今後、伊織くんと共に生命戦維の研究を平和のために続けるよ。聖龍隊、君達にはきっと、また別の任務があるのだろう……君達が再び戦火にその身を投じても……誰が我々、新世代型二次元人の未来に平和を齎した英雄なのか……皆、忘れる事はないだろう……本当にありがとう、聖龍隊」

 いずれ別の戦闘にも赴く事になろうとも、聖龍隊が功労者である事を新世代型二次元人は忘れないだろうと説く美木杉の言葉には、微塵の迷いも無かった。

 

「終わりましたね、聖龍隊の皆さん……もう、転送の必要もないんですね。戦いに行く皆さんの背中を見送る事ができなくなるのは嬉しい事ですが……何だか、寂しい気もします……」

 いつもは強気な態度を示している犬牟田宝火だが、今後は聖龍隊の支援はもちろん一緒に旅路に着く事もない事実を噛み締めて、少し寂しい余韻に浸っていた。

 

「世話になったな聖龍隊。これからは私達だけで大丈夫だ。皆、君達の恩に報いようと異世界各地で復興作業を行おうって決議が出たんだ。君達と別れるのは寂しいが……また会える日を、楽しみにしているよ!」

 当初は不在だった美木杉愛九朗に代わって統括指揮を執っていた新世代型の的場甚三郎は嬉しそうに顔を緩めて笑顔で聖龍隊の面々に挨拶を交わしていった。

 

「俺たち警備班も、これで一安心だよ。長い戦いも終わり、俺たち新世代型二次元人に平和が戻った! どうか地球に戻っても、共に平和を守っていこうではないか!」

 今までセントラルエリアの警備を任されていた新世代型の山田ライゾウは、これからは自由に生きていける日々を待ち遠しく思いながら聖龍隊の面々と握手を交わしていった。

 

「君達の活躍を無駄にしないよう、今後私達は新世代型二次元人の人権活動に専念するよ」

 新世代型のエルエルフは、今後は自分の様なマギウスだけでなく、新世代型二次元人の人権活動にも専念しようかと意気込みを語る。

「俺もエルエルフ同様、マギウスだけでなく新世代型の事について、無事に帰れたら色々と考えてみるよ……」

「そうね。今となっては、マギウスと言う点からじゃなく、新世代型という事で世間の圧制は厳しいからね」

「………………私も少しは考えてみるわ。マギウスの事……そして新世代型二次元人の未来とやらに」

 新世党の研究過程で、暴走したD-ワクチンの幼生たちに襲撃されて捕食されてしまった父親達の最後の姿を目撃して、自分達にも何かマギウスを含む新世代型二次元人の未来に対して力になれる事はないかと、各々の考えを纏め上げようとする時縞ハルト/指南ショーコ/北島イオリの三名。

 

「最終決戦で負傷した方々は、現在治療中だ。もう少しすれば、みんな元気な顔を見せてくれると思うよ」

「聖龍隊がいなかったら全滅していたかもしれないわ……これまで本当にありがとう! これからも、戦い続けるんでしょうけど気をつけてね!」

 夫婦で揃って、負傷した面子の治療を専念している満艦飾薔薇蔵と妻の育代は今まで激しい戦火に身を投じてきた聖龍隊や赤塚組に激励を飛ばす。

 

「まだまだ戦いの傷は癒えていないし、すぐに昔の生活に戻れる訳はないでしょうけど……でも、聖龍隊なら大丈夫ですね。だって、皆さんもう元気満々なんですもの。私達が此処まで無事だったのは、みんなあなた達のお陰よ! ありがとう、聖龍隊!」

 一般の二次元人である新世代型の松本頼子からの激励にも、聖龍隊や赤塚組は素直に喜び、笑顔を見せる。

 

「仲間を代表して礼を言うぜ……俺たちへの協力、感謝する! まぁ、今度の戦いはあんた等にとって、伝説の1ページにしか過ぎないが俺たちは一生忘れないぜ!」

 犬塚キューマはこう聖龍隊の勇士たちに告げていくと、最後に「まだ会える日を、楽しみにしているよ」と笑顔で言った。

 

「みんな、これから自分達の世界の復興作業で活躍しようと張り切っているわ。別れの挨拶は、なしだって……次に聖龍隊が来る時までに見違える位、復興させるんだって張り切ってるの」

 これから新世代型二次元人による復興作業に自らも大いに活躍しようと躍起になっている新世代型のエイミーは、他の皆々同様、聖龍隊への別れは無しだと笑顔で伝えてきた。

 

「さてっと、私も頑張らなきゃ! みんなには、負けていられないわ!」

「もう、こんな武器を手入れしたり使ったりする必要は、ないんですね! あなた達が新世党を倒してくれましたから!! 本当にありがとう!」

「あなた達も、お疲れ様! これからは平和の時代が始まるのよ!!」

「よう! お疲れさん! あんた達の活躍で、戦いが終わったよ! これから、俺は心を入れ替えて働くって決めたぜ! あんた達も、元の仕事に戻るんだろうけど、この先も頑張ってくれよな」

 流木野サキ/櫻井アイナ/野火マリエ/霊屋ユウスケ達からも激励の言葉を受け取り、聖龍隊は歯痒い気持ちで赤面した。

 

「この戦いを終わらせてくれた、あなた達の事……絶対に忘れないわ!」

「ぃやったぁぁ~~~~~~! 俺たちは自由だぁ~~~~! 最高だよ! 夢を見ているような気分ってのは、こういう気分なんだろうな!」

「本当にあんた達は命の恩人だ! 今までありがとう!」

「これは現実なのかななで? まさかこんな日が、また来るなんて! 新世党がいなくなった……って事は、もう戦争は終わりだなで! やったぞ、自由だなでぇ~~!」

「俺たち自由だぁ~! 聖龍隊のみんなのお陰だよ!」

 新世党との戦いを終結に導いた聖龍隊の行為に、キャサリン・ルース/レイジ・アスナ/磯谷ゲンドウ/浅野匠/真田幸介は子供らしく喜び合う微笑ましい姿が。

 

「宇宙の夜空を、こんなにも綺麗だと感じたのは初めてかもしれないわ……それもこれも、聖龍隊が頑張ってくれたお陰ね」

 スペースポートから眺められる綺麗な宇宙の夜空を景観するラケージは、全ては聖龍隊が一緒になって奮闘してくれたお陰だと礼を言う。

「あら、英雄さん達! もう本国に帰ってしまうそうね。新世党を倒してくれた事……みんな感謝してるわ、また会えると良いわね」

「あっ、聖龍隊……もう本国に戻られるんですよね。せっかく会えたのに別れてしまうのは少し寂しいです」

 そんな宇宙空間を眺めているラケージの側近、パラエムとパリヌリの二名も聖龍隊との別れを惜しんでいた。

 

「ほっほっほっ、あんたらも大変じゃったのう。ワシらの為に戦ってくれて本当にありがとうよ。ワシも祈っておる。この平和が永く続くようにの……」

 新世党に拉致されて連行されてきた新世代型の薙切仙左衛門は、この平和が永く続くようにと祈願していた。

 

「最初、宇宙なんて突拍子もねえ処に連れて来られた時は、とんっでもなく驚いちまったが……それも地球に帰れば昔の事。そうだ、創真。また父ちゃんと一緒に新作の料理、創ってみないか?」

「ふざけないでくれッ! アンタのゲテモノ料理にはもうウンザリっ」

 新世党に連行されてきた新世代型の幸平創真とその父、城一郎の親子話に周囲の面々は朗らかな笑顔を浮かべる。そんな幸平親子の仲睦まじい様子を見て、どこか寂しげな雰囲気を漂わせる薙切えりな。

 

 しかし多くの者が、戦いが終結した喜びや、聖龍隊や赤塚組との別れを惜しむムードの中、新世代型の斉木楠雄だけは懸念を募らせいた。

「確かに新世党は壊滅したが、これで終わりじゃない。まだ僕達を誘拐して色々と研究していたキャップ・ド・レッドが拘束されていない。まさか宇宙空間を宇宙服無しで逃げ去ったなんて考えられないし……そうだとすれば、まだB.S.Lに潜伏している可能性が高い。だが、もしB.S.Lにも潜伏していなかったら……キャップ・ド・レッドは本当に何処に?」

 総帥や総統の名目で呼ばれていた新世党の首謀者キャップ・ド・レッドの行方について真剣に考える斉木楠雄は、念のため自らの超能力も駆使してバイオロジック宇宙研究所内を隅々まで念視する。が、皆がいるVIPエリア以外のセクターやデッキには生存者の反応は見られなかった。

 そんな斉木に、親友の燃堂力が声をかけてきた。

「斉木、斉木! 俺たち、遂にアニメタウンに帰れるってよ! ドレフ将校が送ってくれるって!」

「あ、ああ、そうだな燃堂……これで僕達、無事に帰れるね」

「ああ! ……ん? なんだ斉木? お前、嬉しくないのか……?」

「い、いいやっ。もちろん嬉しいとも……」

「ふーん……」この時、燃堂は斉木の内情を勝手に推測してしまう。

(斉木、何だか様子が可笑しいなぁ……あ、そっか! 斉木も聖龍隊と別れると思うと、寂しくて辛いんだ! 俺も正直、寂しいなぁ。聖龍隊の人達との旅って、何気に楽しい事が多かったしなぁ)

 燃堂が勝手に自分の解釈を無い頭で考え出している頃、斉木本人は全く別の事を考え込んでいた。

(それに聖龍HEAD……彼らは一体どこに消えてしまったんでしょう? ミラールの話だと、何だか爆発に巻き込まれたんじゃないかって物騒な事を言い出す始末……いや、それよりも他の新世代型二次元人たちと別れる前に、どうにか全員の記憶からタイミングを見計らって僕が超能力者だという事実を修正しておかないと……)

 斉木楠雄は、他の新世代型には察知されない高レベルの超能力で、内心で機会を見計らい自分が超能力者である事実を記憶修正で隠蔽しようと目論んでいた。

 

「本当にお疲れ様。みんな幸せな生活が送れる筈よ。どれほど言っても言い足りないけれど……本当にありがとう」

「私達は私達で頑張るわ。みんなも頑張ってね」

「やぁ! 聖龍隊の皆さん、お疲れ様!! もうすぐみんな、それぞれの世界や国に帰るみたいですね! どうぞ、ゆっくり休んでくださいよ!」

「これからは俺たちが頑張る番だ。あなた達は、ゆっくり休んでください」

 別れの挨拶を述べてくれる【プリティーリズム・レインボーライブ】の面々からの励みの言葉を承っていく聖龍隊と赤塚組に、黒川冷と蓮城寺べるが最後に話を付け加えた。

「なんとか、カタがついたな……聖龍隊、俺達は正直争いに巻き込まれたくはなかった。だが、逃げ回るだけでは解決しない事もあるのを、今回の件で知ったよ……仁の奴もインペルダウンで改心してくれる事を祈るよ」

「聖龍隊の皆さん……どうやら、これでお別れですね。この先、新世党の様な人達がまた現れない事を祈りつつ、私達なりに頑張ってみます!」

 

 そしてほぼ全ての新世代型二次元人からの激励の言葉を賜った聖龍隊の面々は、これで長きに渡る任務の終了を肌身で感じ取った。

「へへ、ミッション終了! ま~だ色々と片がついていない一件が溜まっているけど、どうせ私たちはこの後コントロールブリッジで推進エンジンを起動させて、B.S.Lの軌道を太陽に直してから、おさらばしないとね。ドレフ将校にも話したけど、解ってくれたわ。さすが神のドレフだわ♪」

 B.S.L内部のXを全滅させる為にも、コントロールブリッジで軌道を変更させて太陽に衝突させる計画を囁き話で語るミラール。

 

 そんな聖龍隊の計画を周知している新世代型。その内の一人の栗山未来が改めて聖龍隊に礼を述べてきた。

「聖龍隊、ありがとう……あなた達が一緒に戦ってくれたから私達は此処まで来られたんです。……さあ、お別れです! 勝利を胸に、笑顔でサヨナラ、です!」

 普段は余り見せない満面の笑顔で聖龍隊に別れの挨拶を述べる栗山未来の言葉を受けて、聖龍隊も彼女に笑顔で返す。

 

「お別れっすね、聖龍隊。それなりに面白かったよ。次に会う時は、正式に聖龍隊の先輩・後輩って関係かな? そん時はよろしくっス!」

 一ノ瀬はじめたちガッチャマンクラウズも、次に会う時こそ聖龍隊の新参者として面倒をお願いと、笑顔で言う始末。

 

 しかし、そんな新世代型二次元人たちとは裏腹に、今回の戦いで自分達を大いに助けてくれた戦友フレッドを慈しむミスティーハニーの悲痛な姿が確認された。

「終わったわね、みんな……みんなとは、何度かチームを組ませてもらった事があるけど……今度の戦いは特別だったわ…………仲間、ね。元悪役、敵役の私たちにとっては慣れない言葉だけど、今回の戦いでは身に沁みたわ」

 本来は元敵役の元悪役というメンバーで構成されているチーム故に、仲間と言う馴染みの無い言葉を痛感させられたマン・ヒールズの面々。彼女達は今後、決してフレッドの事を忘れないだろう。

「さあて、そろそろ引き上げね。皆に別れは済ませたかしら?」

 ミスティーハニーが皆に告げる中、全員がスペースポートで搭乗しようと集合してきた。

 

 だが、そんな折。聖龍隊と赤塚組によって手酷く痛め付けられ、後ろでに電子機器の拘束具を嵌められて身動きが取れない新世党の連中に一部の新世代型たちが言い寄っていた。

「セレディ、正直に話すんだ! 今さらジタバタしても遅いんだ!」

「母さん、一体全体アッコさんのコンパクトで何がしたかったんだ? 今でも訳分からねえよ」

 瀬名アラタと纏流子は、自分達とは因縁深いセレディ・クライスラーと鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)を問い詰めていた。

「な、何度も言っているだろ。瀬名アラタ……ボクたちの行動は、全てキャップ・ド・レッド総帥の命令の下で動いていただけに過ぎない……何故、総帥がボクたち新世代型にも作用しなかったセイント・コンパクトを奪うよう命じたのか……ボクたちの知る由ではない」

「そ、そうじゃ……! 正直、今となっては妾たちは騙されていただけかもしれん……あのキャップ・ド・レッドに」

「口だけなら何度だって言えますぞ、母上!」

 羅暁の発言に長女の皐月が物申す。

 しかしそれでも二人は、あろう事か別件の事までも語り始めた。

「そ、それに……君たちは最初、このB.S.Lに先行部隊が派遣されたと言うが、実際にこのB.S.Lに先行してきたのは君達が最初で最後の筈……」

「それにじゃ……妾たちが先んじてお前達を待ち受ける部隊を配置できたのも、キャップ・ド・レッドが独自に入手した情報を元手に妾たちに伝えてくれただけなのじゃ。妾たちの方からは、ほとんど何も手を下してはいない」

「どうも話が見えねえ……ドレフ将校の話じゃ、俺達より先に先行部隊を派遣したって言ってたしな」

「ええ、それに前々から気になっていたけれど……新世党がヤケに私達の情報を掴んでいたってのも気がかりよね」

 セレディと羅暁の話を聞いて、赤塚組の大将とミズキも考えさせられる。

 

 と、その時。

「来たわよ!」

 ミラールが頭上に向かって指を差した。彼女の指差す頭上には、クジラ型の戦艦が優雅に着陸態勢に入ろうとしているのが目に見えた。

「さあ、スペースポートで待っていましょう。ちょうど迎えが来た」

 スペースポートに聖龍隊と赤塚組以外の二次元人たちを搭乗させる為の戦艦が到着した頃合を見て、美木杉愛九朗が皆に言う。

 

 聖龍隊や赤塚組が美木杉愛九朗と共に前進し、スペースポートに巨大クジラ型戦艦が着地するのを見届けていたその時。新世代型で今までの長い旅路を一緒にしてきた新世代型の琴浦春香たち【琴浦さん】の面々が聖龍隊に一声かけてきた。

「また会える日を信じてます……」

 この言葉に聖龍隊や赤塚組も朗らかな笑顔を浮かべるのだった。

 

 

[降りかかる災難]

 

 と、美木杉愛九朗が相方である黄長瀬紬と共に手旗信号で巨大クジラ型戦艦の着陸に合図を送っていた、まさにその時。

 クジラ型戦艦の船艇から突如として二つの砲口が内部より直列に突出し、真下に向かって砲身を曝け出したのだ。

 皆が突然船艇から出てきた砲身に唖然としていた、その時だった。

 砲身から砲撃が放たれ、スペースポートで信号を送っていた美木杉愛九朗目掛けて砲撃が直射された。

「美木杉!」

 黄長瀬紬が逸早く声をかけたのが幸いと成ったのか、辛うじて直撃だけは免れたが、砲撃が地面に直撃した際の衝撃で美木杉は重傷を負ってしまった。

 しかも砲撃はその一発に留まらず、なんと最初に搭乗させられる予定だった筈の新世党の面々に連射していく砲撃の標準が逸れていき、今度は新世党の面々に船艇からの砲撃が直射される。

「うわあッ!」「ぎゃあっ!」

 今度は一発の外しも無く、砲撃によるライフル弾の形状をした細長い砲弾は無慈悲にも新世党の面々の肉体を貫通していく。

 腹部に直径5cmはあろうかという弾痕を撃ち抜かれ、大量の出血を滝の様に吹き出させる惨状。

 小野崎功は上半身から下半身にかけて銃弾の雨を浴びて、弾痕からだけでなく口からも大量の血を吹き出して前のめりに倒れる。

「きゃあああ……っ!」

 高宮/勝沢/山崎の三名は銃撃のレベルを超えた砲撃による範囲の広い銃撃戦を頭上から浴びせられ、逃げる暇も無く卒倒していく。

 三枝一族は、各々が周りの同族の事はすっかり他人事で、中には押し退けて自分だけで逃げ果せようとするものの、逢えなく全員が銃弾の雨で血の海へと沈む。

 戦術に長けている筈の風陣カイトに、伊丹キョウジ/有馬トオル/シャーロット・レイン/甲本ダイゴ/ブルース・ブラドーの六名も、逃げ出す暇も無いまま銃弾の雨を頭上から浴びせられる。

 逸早く逃げ出そうとする針目縫も、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)を死守しようと動き出した鳳凰丸礼の二人も、その前に銃撃で撃ち抜かれて瀕死の重傷の身体に陥る。

 叡山枝津也/美作昴/マシタ/ベイカー/ナイン・バルトの五名は五人とも、みっともなく泣き喚きながら逃げようと駆け足を急かすが、頭上からの雨の様な銃撃からは逃げ切れる事は無く、呆気なく無数の銃弾で身体を貫かれて瀕死に。

「ぐはああああああ……っ」

 そして逃げ遅れた法月仁は、全身に銃弾を大量に撃ち込まれ、体中を穴だらけにされてしまい、眼鏡も銃撃で吹き飛んだまま銃弾の雨で粉々に撃ち抜かれてしまう。

 そしてあろう事か、マギウスで不死の肉体を持つ筈のアマデウス・K・ドルシアとその側近、カイン・ドレッセルとジェフリー・アンダーソンも銃弾の雨に撃ち抜かれ、三人とも血の海に沈んだ。

 そして最後にセレディ・クライスラーも、他の新世党メンバー同様、頭上からの集中射撃による銃弾の雨に曝された事で、全身を撃ち抜かれ、瞬く間に血の海にその体を沈めてしまった。

「……ぐほっ」

 上半身を穴だらけにされた法月仁は、息苦しそうに口から大量の血を吹き出して力尽きるようにその場に倒れ込む。

 

 この惨状を目の当たりにした一同は愕然とし、その惨たらしい光景を見た者の中には発狂寸前まで陥るほど絶叫する者までも現れた。

「……い、いやぁーーーーーー……っ!!」

 目の前に広がる夥しいほどの血の海、その中で倒れ込み動かなくなる新世党の面々。その惨状は正しく地獄絵図そのものだった。

 すると皆が戦艦からの集中砲火に驚愕と焦燥、そして動揺を隠しきれない中、再び船艇の砲身からの集中射撃が始まろうとしていた。

 更に其処へ戦力増加と言わんばかしに、クジラ型戦艦の口の部分から何十台もの戦闘マシンが投下され、スペースポートへ解き放たれた。

「な、何がどうなってるんだ!」

 突然の戦闘マシンの来襲に激しく動揺し慌てふためく大将。だが、そんな彼らを差し置いて戦闘マシンは続々とスペースポートに投下される。

「ど、どういう事だい!?」

「分からない、どっちにしても応戦開始! 戦闘マシンを近付けないで!」

 どういう状況が呑み込めない佐倉杏子に対して上官のミラールが戦闘マシンを此方側へ近付けさせない様に応戦開始を命じる。

 遂に聖龍隊と赤塚組の二組が、投下される戦闘マシンの迎撃に着目すると、その後方では戦闘マシンの急襲からひ弱な市民や子供達を避難させようと大人たちが奮闘していた。

「急いで! 早く建物の中に……!」「みんな隠れるんだ!」

 新世代型の美都玲奈に猿田学が誘導する中、子供やお年寄りなどの民間人は建物の奥や物陰に急いで退避し、身を伏せる。

 すると、そんな避難する市民達に例のクジラ型戦艦が再び船艇の砲身から直径5cmもある銃弾を射撃し出して、民間人を上空から襲撃し始めた。

「うわあっ!」「きゃあっ!」

 凄まじい銃撃の雨に、怒号に悲鳴が絶叫する中を民間人は逃げ惑う。

 しかしこの上空からの急襲に対して、聖龍隊も赤塚組も前方から突撃してくる戦闘マシンで手一杯であった為、クジラ型戦艦からの射撃に民間人は無防備に曝されてしまう。

 聖龍隊や赤塚組だけでなく、民間人への無差別攻撃が続く中、聖龍隊と赤塚組は懸命に応戦を続けた。

「なんで……なんで、こんな事に!」

「分からねぇよ! 俺だって、こんな、まさか……!」

 突然のドレフ将校が搭乗して来たクジラ型戦艦からの急襲に、事態が呑み込めず今にも泣き出しそうな顔で困惑する海野なる同様、大将も戦艦からの無差別攻撃に頭を悩ませていた。

 だが戦艦からの無差別攻撃はやむ事が無く、投下される戦闘マシンも無尽蔵に戦前で猛威を振るい、聖龍隊や赤塚組の労力を消費し、民間人の恐怖と絶望を一層引き立てる。

「ううぅっ、うわぁーーっ……」

 無差別攻撃に曝される宮内れんげや小野崎綾香は幼いながらに恐怖で泣き崩れ、そんな二人を琴浦久美子や善三が抱き寄せて必死に護り続けてた。

「このッ」

 と、ここで赤塚組のミズキが、右腕をレーザー砲に変形させてクジラ型戦艦の船艇に備え付けられている図太い銃弾を砲撃する砲身を狙撃した。

 ミズキが放った光線は、船艇の砲身に直撃。砲身は爆発して吹き飛び、どうにか上空からの集中砲撃は阻止できた。

 が、クジラ型戦艦から投下される戦闘マシンは減る様子は無く、続々と投下され続けていた。

「クソッ、砲身は破壊できたが、投下される戦闘マシンは増える一方だ!」

「このままじゃ、数で押し切られちゃうよ……!」

 赤塚組のアツシに山崎貴史は、仲間達と共に所持している重火器で戦闘マシンを確固撃破していく中で、マシンの数が増加する戦況に圧迫されかけていた。

 そんな強力な重火器で応戦していく赤塚組同様、聖龍隊スター・ルーキーズの総部隊長ミラールは先陣を切ってマシンに向けてミラージュガンを連射、迎撃していく傍らで、同じルーキーズの巴マミや鹿目まどかも銃撃と射撃の総力を挙げて突撃してくる戦闘マシンの迎撃に勤しむ。

「キリが無いぞ!」

「コッチは下手すれば、弾が先に尽きるわ!」

 赤塚組のテツと共に戦闘マシンに銃撃を仕掛けていく聖龍隊の暁美ほむらの両名は、次第に自分達の弾薬が減少していく様に愕然と蒼褪めていく。

 

 このままではいづれ戦力が底を尽き、戦闘マシンの餌食になってしまう戦況に皆が悲愴な面持ちを浮かべていた、その時。

 その戦闘マシンを投下し続けていたクジラ型戦艦が突如として一筋の閃光を受けた途端に大爆発し、撃墜されたのだ。

 撃墜されたクジラ型戦艦の瓦礫は、スペースポートに落下して辺り一帯を爆煙が突風となって襲い掛かる。その突風に呑み込まれ、そして落下した戦艦の瓦礫に押し潰されて多くの戦闘マシンが壊れて稼動停止した。

 そんな中、皆が顔を腕で隠し、突風から身を守っていたその最中、爆煙の中から大小合わせて39体の人影が姿を現した。

 39体の人影は燃え盛る爆煙の中から姿を現して、戦闘マシンと戦艦の瓦礫の中を突き進んできた。

 そして皆の目の前に、その39体の人影が鮮明にその姿を露にした。

「あ………………アッコ!」

 39体の人影の中から先陣を切って現れたのは、ミラーガールこと加賀美あつこであった。彼女を視認して大将は涙目で大いに喜んだ。

 そして他の人影は、言わずとも知れた聖龍HEADの一団だった。

「へ、HEAD!」「無事だったのね、おねえちゃん達!」

 聖龍HEADの姿を目視して喜び合う面々の中には、先ほどVIPエリアを襲った爆発に巻き込まれて生死不明だったHEADを心配してたミラールの姿も。

 そんな皆との再会を喜ぶ間もなく、HEADは全員険しい面持ちで毅然としていた。

 そして戦前で戦闘マシンと迎撃を展開していたミラールや巴マミたちの前まで歩み寄った聖龍HEADは、忽然と後ろを振り返り、スペースポート一帯を呑み込む爆煙に目を向ける。

 すると爆炎の中から、三メートル級のしっかりとした体躯を誇る人影がのっそりと姿を現した。

 その人影は、銀河連邦の許可なしに独断専行してまで駆けつけて来てくれたドレフ将校その人であった。ドレフ将校は、なぜか口元を怪しく微笑ませた異様な笑みを浮かべていた。

 ドレフ将校の姿を視認した瞬間、新世代型の多くの人物達がドレフ将校に話し掛ける。

「ど、ドレフ将校さん! これは一体なんなの!? 突然、戦艦が私たちを襲ってきたし……」

「どういう事ですか、ドレフ将校! この事態……まさか、貴方が引き連れてきた隊員の中に新世党の残党が紛れ込んでいた訳じゃないですよね……」

「ああ、全く持って残念だよ…………もうすぐで全員を始末できたと思ったのだがね」

 満艦飾マコと星原ヒカルの言葉に対して、不敵な笑みを浮かべて言い返すドレフ将校の言動に衝撃を受ける一同。

 皆が様子が一変したドレフ将校の突然の登場と言動に驚愕していると、メタルバードがドレフ将校に睨みを利かせて言った。

「ドレフ将校、悪いな……戦艦はオレとちせで破壊させてもらったよ」

 先ほど戦艦を襲った閃光はちせと自分のモノであると説き明かすメタルバードに対して、ドレフ将校は目前の聖龍HEADを不敵な睨みで見据えながら言い返した。

「ほう、聖龍HEAD! 素晴らしい、生きていたのか」

「おあいにく様。貴方の仕掛けた爆弾程度では死なないわ」

「ば、爆弾ですって!?」

 ドレフ将校の反論に言い返すキューティーハニーの言葉を聞いて一驚する夏秋子。

 すると事態が呑み込めていない皆にも解りやすい様にメタルバードが説き始めた。

「オレ達がキャップ・ド・レッドの部屋に踏み込んだとき、部屋のベッド下に仕掛けられていた爆弾のタイマーが発動する仕組みになっていたんだよ。それでオレ達は全員揃って爆発に巻き込まれちまったが、寸でのところで下の階層に穴を開けて逃げ込んだから助かった訳だ。爆発の衝撃ってのは、上と横にしか行かないのが常識だからな」

「で、でも……なんでキャップ・ド・レッドの話にドレフ将校が出てくるんだ?」

 メタルバードの話を聞いて大将が難しい顔を浮かべていると、ドレフ将校の足元に先ほど銃撃の雨を受けて瀕死の重態に陥っている新世党の法月仁が救いを求めようと手を伸ばしてきた。

「た、たずけで……ッ」

 だが、手を伸ばしてきた法月仁に対して、ドレフ将校は無慈悲にも伸ばしてきた彼の手を巨大な足で踏み付けて、手の骨を踏み砕いて罵声を浴びせた。

「ぐは……ッ!」「汚い手で触るな……うじ虫が」

 この無慈悲なドレフ将校の行為を目の前にした聖龍隊や赤塚組そして新世代型たちは愕然としていたが、HEADだけは表情を変えず、メタルバードが法月仁の手を踏んだままのドレフ将校に話し掛ける。

「おいおい、お前の仲間だろ? そんな無慈悲にする事ないんじゃないのか?」

「仲間……いや、違うね。こいつ等は君たち聖龍隊と赤塚組さらに一般の新世代型を皆殺しにした残虐非道な新世党の一人に過ぎん……」

「な、なんですって!? 私たちが殺されたですって! ジョーダンはやめてください、ドレフ将校!」

 メタルバードに対するドレフ将校の発言を聞いて、血相を変えて反論する新世代型の大門ジョセフィーヌに対し、ドレフ将校は一喝返した。

「シャラップ! これは既に決定事項なのだよ、諸君。君たちは私が駆け付ける前に新世党の面々に皆殺しに遭い、全滅していたのが私が書いた筋書きなのだ」

「そ、そんな……!」

 今まで紳士的な立ち振る舞いをしていたドレフ将校からは想像もできない言動の数々に驚きと困惑を隠せない瀬名アラタ。

 そんな自分が描いた筋書きを公表するドレフ将校の言動を前にして、メタルバードが語り始める。

「それがアンタの描いたシナリオか…………キャップ・ド・レッド!」

「え!」「キャップ・ド・レッド!?」

 メタルバードの発した一言に一驚する大将や真鍋義久、そしてそれを聞いた瀕死の新世党は愕然とした。

「私がキャップ・ド・レッドだと……何処にそんな証拠があるというのかね?」

 ドレフ将校が自分が新世党総帥だという証拠があるのかとメタルバードに説き返すと、メタルバードは徐に一足の靴を取り出してドレフ将校の前に放り出して語った。

「これはキャップ・ド・レッドの部屋から見つけた奴の靴だ。サイズはアンタと同じ、30cmはゆうに超えているだけじゃない……特注の品として、靴の裏には独特の模様が彫っている! そして、この靴と同じ特注品で同じ模様がある靴をドレフ将校! あんたがジャッジ・ザ・シティで履いているのをオレ達は目にしているんだぜ!」

 確かにメタルバードの言うとおり、靴をよくよく見てみれば、キャップ・ド・レッドとドレフ将校がジャッジ・ザ・シティで履いていた靴のサイズと靴底の模様は、特注品なために完全に一致していた。

 この事実を突きつけられて、ドレフ将校は不敵な笑みを発し始めた。

「はは……はーはっはっ。いやいや、参ったな……まさか靴の、靴底の模様でバレてしまうとはな」

「ドレフ将校、そんな……」

 自身とキャップ・ド・レッドが同一人物である事を明らかにされて失笑してしまうドレフ将校に反し、彼の誠実で紳士的な振る舞いを心底信じきっていた琴浦春香たち新世代型二次元人の多くが絶望してしまう。

 当然ながら、新世代型だけでなく、キャップ・ド・レッドの正体がドレフ将校だと知って衝撃を受ける聖龍隊と赤塚組も困惑する。

「そんな……ドレフ将校、貴方がキャップ・ド・レッドだなんて……!」

「つまり、新世党を影で操っていた張本人は……ドレフ将校だったってこと?」

「マジかよ……! クソ、俺たちを騙していたという訳か!」

 ミスティーハニー/ミラール/大将ら聖龍隊や赤塚組の面々は、怒りを通り越して愕然としてしまってた。

 そんな面々に対して、ドレフ将校は一切悪びれる様子も無いまま、皆に背を向けた状態で語り始めた。

「それにしても手間取らせてくれたものだよ……まあ、ここまで私を苦労させた君たちには、それなりの評価を与えるべきだろうな」

「何を言ってるの、あなた何様のつもり!?」

 ドレフ将校の態度に対して怒り心頭なミスティーハニーが問い詰めると、ドレフ将校は答えた。

「私が何か? そうだな……神……かな。全二次元人の頂点に立つ存在だ」

「なっ!?」

 自らを神だと自称するドレフ将校の言動に愕然とするミスティーハニーたち。

 皆がドレフ将校の発言に愕然としていると、アッコがドレフ将校に再び問い詰める。

「説明してほしいわ。私達は、貴方の命令でこのB.S.Lに潜入した。新世党を倒し反乱を防いだ。それも全てワナだったというの?」

「そうだな。此処まで君達が活躍したのには驚かされたが、その甲斐あって私は目的を果たせた訳だし、礼を言わねばな」

「答えて! 何を企んでいるの!!」

「言ったろう? 私は神になると!」

 この神を自称する態度に、メタルバードが「ふざけるな!」と怒りを吐き散らす。

 そんなメタルバードの一言を受けて、ドレフ将校は不敵な面構えで問い掛けてきた。

「勇ましいな、聖龍メンバーズの諸君。私をどうしようと言うのだね?」

 これに対し、アッコが力強くドレフ将校……いや、敵であったドレフに言い放った。

「ドレフ! 貴方は……貴方は……異常者(ヒール)よ!」

 

 

[神と自称する二次元人]

 

 アッコに異常者(ヒール)だと告げられたドレフは、ヒールと言う名称が持つもう一つの意味合いで聖龍隊に言い付けた。

 

敗北者(ヒール)の烙印を押されたまま死ぬが良い!」

 

 異常者の他に敗北者の意味も込められている言葉を吐いたドレフは、臨戦態勢に入った。

 己を神だと自称するドレフは、背中に背負っている二刀のサーベルスティックを一瞬で抜き放ち、熟練の剣術で聖龍隊と剣戟を仕掛け合う。

「このッ」

 ドレフの剣術を剣に変形させた両腕で受け止めるメタルバードは、ドレフと激しい鍔迫り合いでぶつかり合った。

 と、そこにジュピターキッドが茨の鞭でドレフに向かって攻撃を仕掛けるが、ドレフは寸でのところで後ろへと退いて攻撃を回避する。

 するとドレフの正体を知って戦闘隊形に入っている聖龍HEADを目の当たりにし、他の聖龍隊士や赤塚組も怒りの猛攻撃を開始し始めた。

「よくも……よくも騙してくれたな!」

 怒りの銃撃をドレフに浴びせようとする大将たち赤塚組の銃撃を、ドレフはサーベルスティックから放つ衝撃波を繰り出して、弾幕を全て弾き落としてみせる。

 そして自分に攻撃してきた赤塚組を急襲するドレフ。だが、そこに美樹さやかと佐倉杏子のコンビが立ちはだかり、ドレフに奇襲を仕掛ける。しかし、そんな二人をドレフは衝撃波で弾き飛ばして返り討ちにする。

「君たちを野放しにしておく訳にはいかん! このB.S.Lを太陽に衝突させる前に、貴様らを葬らねば……!」

 ドレフは巧みに二対のサーベルスティックを振り回して、近隣の聖龍隊や赤塚組に斬撃を放っていく。

 すると聖龍隊の新参者キリトがドレフに斬りこんで行った。ドレフと激しい剣戟を仕掛け合うキリトは、どうにかチート級の実力でドレフと渡り合っていた。

 が、ドレフが此処でキリトに厳しい一撃をお見舞いして言い放った。

「出来損ないのプロト世代め……邪魔だ!」

 ドレフの一撃で後方に弾き飛ばされてしまうキリト。だがそれ以上に衝撃的だったのはドレフの発した言葉だった。自分たちプロト世代を「出来損ない」と見下す言動を取るドレフに、キリトは再び鍔迫り合いながら問い詰めた。

「お前、まさか……!」

 キリトが鋭い眼光で睨み付けると、ドレフは不敵な面構えでキリトの疑問に答えた。

「ああ、その通りだよ、漆黒の剣士よ………………私も新世代型二次元人の一人だ!」

 ドレフの告発に、鍔迫り合いをしているキリトだけでなく周囲の皆々も愕然としてしまった。ドレフもまた、新世党や多くの民間人と同じく新世代型二次元人だったのだ。

 そしてドレフはキリトを弾き押して、彼に鋭い一撃を浴びせてキリトを朦朧とさせる。

 と、そのキリトの危機にシリカやエギルたちSAO組の面々がドレフに押しかけようとするが、ドレフは凄まじい衝撃波をサーベルスティックから抜き放ち、一歩も近寄らせはしなかった。

 今度はアスナが単身ドレフに特攻するが、ドレフは彼女が振り下ろす剣戟を全て容易くかわしてみせると、サーベルを握ったままの手でアスナの顔を殴り付け、地面へと叩き付けてしまう。

「ひ、酷い!」

 戦いを傍観していた琴浦春香たち新世代型の女子達は、このドレフの非情な行いに愕然とするが、ドレフは何の躊躇する事も無く地面に叩き付けたアスナを斬り付けようとサーベルを振るった。が、アスナは地面で体を横に転がして回避して難を逃れた。

 体勢を立て直すアスナ同様、ドレフを取り囲む面々も体制を立て直して再度挑みかかろうと睨みを利かせる。そんな一団を目で追いながら、ドレフは下種な笑みを浮かべる。

 すると其処に、遠距離からミラールに続いて巴マミや鹿目まどかたち射撃部隊がドレフに向かって銃弾や弓矢を発射して狙撃する。しかしドレフは自らに浴びせられる矢や銃弾などの弾幕を全て両刀のサーベルで弾き落としてみると、俊足な移動速度でミラールたち射撃部隊の目前まで迫ると鋭い一太刀を浴びせて吹き飛ばしてしまう。

「うっ!」

 強烈な一太刀を浴びせられて後方に吹き飛んでしまうミラールたちは悶絶してしまう。

 すると此処で一騎当千の戦いを見せていたドレフが、ある戦法を披露した。

「ふふふ、君たちに神の力を見せてあげよう……」

 下種な目付きで周囲の聖龍隊や赤塚組を見下すかのような素振りで物言うドレフは、右手を頭上より高く掲げて言い放った。

「コールレッド!」

 するとドレフの周囲に散らばっていたクジラ型戦艦から投下されてきた戦闘マシン、その残骸でまだ使用可能なパーツが一点二点に集まり出し、元の戦闘マシンへと組み上がってしまったのだ。

「なっ! こ、こいつは……!」

 ドレフに向けて銃撃で応戦を展開していた赤塚組の大将たちが目を丸くして驚いていると、ドレフが自慢げに語り明かした。

「私にも少しばかしの超能力……エスパーは使えるのだよ。そう、斉木楠雄や琴浦春香の様にね……!」

 下賎な物言いで得意げに語り明かすドレフの詳言を聞いて、愕然となる斉木楠雄や琴浦春香当人。

 するとドレフは超能力で復元した戦闘マシンを己の両脇に配置させると更に言い放った。

「私には、この場に居る新世代型二次元人の大半の特殊能力が使えるよう肉体機能が活動しているのだよ!」

 そうドレフが言い放った瞬間、戦闘マシンから超火力の銃火器が連射され、戦前に立っている聖龍隊や赤塚組に発砲してきた。

「うわあっ!」

 強力な機関銃を連射され、退くしかない戦前の勇士達。

 この戦況にメタルバードが言った。

「戦闘マシンを破壊しろ! これじゃ、ドレフにダメージを与える暇が無ぇ!」

 メタルバードの指示通り、木之元桜はショット(撃)を使って戦闘マシンを迎撃し、破壊する。

 されどドレフの猛攻は治まる事はなかった。

「喰らいたまえ……神の業火を!」

 そういった瞬間、ドレフの前方を中心に戦場である辺り一帯が炎に包まれ、全体が火の海に曝されてしまう。

「バイオレンスアサルト!」

 ドレフがそういうと、更に業火の威力は増して聖龍HEADや赤塚組が炎に曝された。

 だが、このバイオレンスアサルトを逆手に取り、まずは木之元桜がファイアリー(炎)で辺り一帯の炎を吸収させ、その炎を耐性のあるセーラーマーズに纏わせて、マーズは紅蓮の美脚でドレフに強烈な後ろ回し蹴りを喰らわして悶絶させる。

「うぐっ、うがあ……!」

 セーラーマーズの強烈な炎の蹴りを喰らって苦しむが、スグに体勢を整えて聖龍隊に攻撃を仕掛けてきた。

「今まで騙してくれたお返しよ……!」「えいっ」

 自分たちを欺き続けてくれた礼だとして、ブルーローズが仲間のファイヤーエンブレムと共にドレフに攻撃。だがドレフはブルーローズが発射する氷の閃光をサーベルスティックを回転させて難なく防ぐと、それと同じ要領でファイヤーエンブレムの炎も防いでしまった。

 全ての攻撃を防ぎ切ってみせたドレフは、攻撃を仕掛けてきたブルーローズとファイヤーエンブレムに急速接近して強烈な一太刀を彼女達に浴びせようとする。しかし其処に聖龍HEADのローゼンメイデン達が立ちはだかり、ブルーローズたちを守ると同時にドレフに手痛い一撃を浴びせようとする。

 しかしローゼンメイデン達の攻撃を受けたドレフは、微動だにせず真紅たちローゼンメイデンたちに言った。

「たかが人形風情が……神へと進化する私に逆らえると思ってか!」

 次の瞬間、ドレフは両刀のサーベルを抜刀して彼女達の攻撃を全て弾きながら反撃した。

 ドレフの反撃に押され、吹き飛んでしまう真紅たちローゼンメイデンたち。すると其処にドレフは足元に点在して転がっている銃撃を受けて苦しんでいる新世党の面々の体を蹴り飛ばしてローゼンメイデンたちに直撃させる。

「きゃあっ」

 血塗れの瀕死状態で蹴り飛ばされる新世党の人間を直撃させられて悲鳴を上げる真紅たち。そんな彼女達と自分が蹴り飛ばした新世党のメンバーを見て、ドレフが更なる無情な言葉を吐く。

「さっきから目障りなのだから、こうして私に使われるが良い!」

 なんとドレフは自らの手で抹殺しようとした瀕死状態の新世党を、戦いの道具にまで格下げしていたのだ。

 と、今度は東京ミュウミュウズとマーメイドメロディーズが連携技をドレフに打ち込もうと飛びかかって来た。二組の合体連携技にドレフは一瞬躊躇うが、即座に俊敏な動きで攻撃を回避すると速攻で彼女達の死角に入り込んで斬撃を打ち放つ。

 その間、他の聖龍隊士や赤塚組が助太刀に入ろうとしていたが、ドレフが復元した戦闘マシンの猛攻とその破壊で手一杯だった。

 そして全ての戦闘マシンを破壊し終わったメタルバードは、やっとドレフ本人に攻撃を仕掛ける事が叶った。メタルバードの砲撃とジュピターキッドの鞭捌きがドレフに襲い掛かるが、ドレフはその二種類の攻撃を弾き返した上にかわした末に、メタルバードとキッドの両名を返り討ちにしてしまう。

 ドレフに返り討ちに遭った二人は地面に叩き付けられてしまい、ドレフに狙いを付けられる。

 だが其処に、聖龍隊全員の水属性のエネルギーを集結させたウォーターフェアリーが、巨大な水のエネルギーをドレフに向けて投げ放った。

「みんな! 私に力を……!」

 現場の皆の水属性のエネルギーを一身に受けて、その集中させたエネルギーをドレフにぶつけて大打撃を与えようとするウォーターフェアリー。

 だがドレフは、彼女達が丹精込めて集中させた水のエネルギー弾をサーベルスティックで一刀両断してしまうと、速攻でウォーターフェアリーに接近して斬りかかった。

「きゃあっ」「アプリ!」

「うははは! 死に底無いの妖精姫が! この場にて神である私が直々に印籠を渡してやろう!」

 頭部から一直線に斬り付けられたウォーターフェアリーを見て、愕然と彼女の本名を叫ぶ婚約者のジュピターキッド。そんな彼女を見下すドレフの言動は実に聞き難いものだった。

 と、全員がドレフから手痛い深手を負っているのを目視した聖龍HEADのナースエンジェルが急いで必殺の回復技を発動させる。

「お願い、みんなを……!」

 皆を救いたい、その一心で願った彼女の体から煌きが放たれて、全員の傷が回復されそうになったその時。非情なまでにドレフは皆を回復させようとするナースエンジェルに無情の攻撃を浴びせて、彼女の回復技を中断させた。

「悪いが、ここで雑魚どもを回復させられるのは困るのだよ……全員このまま嬲り殺さないといけないのでね」

 下種な嘲笑で攻撃を浴びせたナースエンジェルに吐き付けるドレフ。そんなドレフの無情な攻撃を目撃してマン・ヒールズのデューイが怒り付けた。

「こ、コイツ……ッ!」

 非情なまでのドレフの攻撃に怒りを覚えたデューイは、ドレフの背後から奇襲を仕掛けようとするが、ドレフは一瞬で引っ込めていたサーベルスティックを抜刀して背後のデューイと鍔迫り合いで対峙する。

 そしてドレフは一瞬でデューイを弾き飛ばして、彼を押し退けてしまう。

 そんなデューイに続けと、お次はキューティーハニーとミスティーハニーのハニー姉妹がドレフに挑みかかる。姉妹の息の揃った連携攻撃でドレフを撹乱させつつ、一気に距離をつめてドレフに鋭い斬撃を浴びせてみせる。

「ぐは……ッ」姉妹の連携攻撃を受けて悶絶するドレフ。

 だがドレフを倒すのには、まだまだ時間も労力も懸かりそうであった。

 

 

 

[騎士が遺した真意]

 

 真の黒幕であったドレフを倒そうと、躍起になって戦い続ける聖龍隊と赤塚組。

 しかしドレフの実力は彼らが団結しても並々ならぬものであり、簡単には倒せなかった。

「うはははは……どうしたのだ、諸君? これでもう、終わりかな?」

 実力の差を実感しながら聖龍隊や赤塚組を嘲笑するドレフ。このままでは勝ち目が無い事は、聖龍隊はもちろん赤塚組も周知していた。

「ど、どう致します、メタルバード……このままでは、我々はこの宇宙にて……」

「解ってる。オレも今、考えているところだ……」

 満身創痍になりながらもメタルバードにこの先の展開について訊ねるシバ・カァチェンに、メタルバード当人も策を講じている最中だと答える。

 しかしカァチェンだけでなく、二次元人である聖龍隊や赤塚組の面々は、そのほとんどがドレフの猛攻によって打ちひしがれていた。

 誰もが満身創痍になる中、ドレフが再び前へと足を踏み出して戦前の聖龍隊に向かって凄まじい斬撃を打ち込もうとしたその時。

「い、痛いよ……た、たすけ……」

「意識が……意識が遠のく……」

「頼む……慈悲を……!」

 と、新世党の風陣カイトや鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)、それにアマデウス・K・ドルシアまでも誰彼構わず救いの手を嘆願する。

 しかし、そんな苦痛に喘ぐ新世党を見下ろして、ドレフは血塗れで倒れている彼らを、まるで道脇の小石を蹴飛ばす感じで蹴飛ばして蔑ろにする。

「さっきからウルサイぞ! このゴミ虫どもが……ッ」

 まるで蝿や子虫を見下すかのような下種な面差しで、あちら此方に転がる新世党の面々を見下していくドレフの言動に、いくら悪劣非道な行いをしてきた彼らとは言え同情を傾けてしまう大将がドレフに物言った。

「おい、こらテメェ! 今まで自分が命じてきた部下だった奴らだろう! 少しぐらいの情ぐらい残っちゃいねえのか!!」

 今までキャップ・ド・レッドとして裏から糸を引いて操ってきた新世党の面々に少しぐらい情けは無いのかと問い詰める大将に対して、ドレフは見下した強面で言い返した。

「こいつ等は私が単にセイント・コンパクトを奪うためだけに脱獄させてやった手駒だ。それ以上でもそれ以下でもない。今やコンパクトが我が手中に納まった時から……こいつ等の価値など微塵の欠片もないよ」

「な、なんて野郎だ……!」

 目的の品を手に入れた今となっては全ての配下は只の価値無き手駒としてしか見ていないドレフの思想に愕然となる大将。その全てを己の手駒としか捉えない思想は、かつての台湾将軍モウ・チェイファンを髣髴とさせていた。

 そんなドレフに、鋼の肉体を持っている事から聖龍隊でも割かしダメージを負っていないメタルバードがドレフに言い寄る。

「ドレフ……! アッコのコンパクトを……ミラーガールのセイントコンパクトを返すんだ!」

 メタルバードは前回シバ・カァチェンが無意識のうちに手渡してしまったコンパクトを返すよう訴える。だがドレフは懐にカァチェンから手渡されたコンパクトをしっかり携えたまま反論した。

「ふっ、笑わせてくれる……そもそも進化の意思無きミラーガールに……いいや、無気力な加賀美あつこにコンパクトなど宝の持ち腐れ! このコンパクトは私が神へと進化するための貴重なアイテムなのだ……!」

「勝手な事を……!」

 自分たちを騙して、奪い取ったセイントコンパクトを独占しようとするドレフにジュピターキッドが怒りの表情で反発する。

 すると、そんな怒りの感情を露にする聖龍隊や赤塚組を前にして、ドレフはアッコに問い詰めてきた。

「加賀美アッコよ……貴様はこのコンパクトの本当の価値を……使い道を理解していない!」

「何ですって……?」

「良いか、このセイントコンパクトは……かつて、君が当初使っていた魔法のコンパクトではない。三次元人、小田原修司がこの二次元界に介入したとき突発的に生まれた産物なのだ。今までのコンパクト以上に、このコンパクトで心から願えば……ロボットや人魚、そう、有機物から無機物までありとあらゆる存在・物体に体を自由自在に変化させられる代物だ。このコンパクトを、セイントコンパクトを上手く使いこなせば……君は文字通り、神や悪魔にだって自由に変身できる、この世の支配者にもなれた筈だった……それが今ではなんだ。下らぬ平和だとか正義論を信じ続け、何もせず、手を拱いているばかり……そんな君に、このコンパクトを持つ権利などありはしないのだよ!!」

「……私は、別に神だとか悪魔になるために変身している訳じゃない! 弱い人々を少しでも助けるため……みんなの笑顔を護り抜くため……私はコンパクトで変身しつつ戦い続けてきたのよ!」

 ドレフの言い分に対して力強い眼で反論を力説するアッコの言葉に、その場にいた誰もが生唾を飲み込んだ。

 しかしドレフだけは、そんなアッコの主張を腐った性根から笑い飛ばした。

「くははははっ……それが、それが君の主張、実に下らない理想とやらか! 笑う以外の感情が見当たらないよ! わははは……っ」

「笑われたって結構よ! どんなに嘲笑えようとも、どんなにバカにされたとしても……私は、私は……聖龍隊のみんながして来たように、自分の信念は曲げないって決めたの! そして、その信念を貫く為にも戦い続けると覚悟を決めてこの場にいる! ……もう私は逃げない。現実からは目を逸らさない!」

「アッコ……」「アッコさん……」

 アッコの信念と力強い意志を目の当たりにして、大将も新世代型たちも茫然としてしまう。

「……だから、だから私は退かない! ……ドレフ! 私のコンパクトを返してちょうだい。今ならまだ、猶予と言うものがあるわ」

 そういってアッコはドレフに手を差し伸べた。

 だがドレフがそう簡単に改心してコンパクトを返す訳も無かった。

「ふふ、ふはーーはっは! それが敵である私に対する覚悟か? 実に見下げた行いだな、加賀美アッコ! 軍人たるもの……いや、戦士たるものが敵に情けをかける様では君らHEADは実に恥知らずの屑以下な連中だと言う事がよく理解できる!」

 アッコの必死の嘆願を見下げた行いだと愚弄するドレフは、アッコと同じ聖龍HEADの面々までも愚弄する言葉を吐き散らす。

 そしてアッコの嘆願を拒絶したドレフは、俊足で一気にアッコへと間合いを詰めて彼女へと斬りかかろうとする。

「その無残で滑稽な死に様を、私が直々に曝して進ぜようッ!」

 そしてアッコとドレフの距離が零へとなった瞬間、誰もが新世代型たちの前に歩み出して交渉していたアッコにドレフの鋭い剣術が飛んでくるのを想像した。

「アッコーーッ!」

 アッコがドレフによって斬り捨てられるのかと思われたその瞬間、ドレフがアッコに向けてサーベルスティックを抜刀して斬りかかった瞬間の出来事だった。

 思わず目を閉じてしまったアッコが覚悟を決めて、そっと瞼を開いて視界を開けてみると彼女の眼前には信じられない光景が飛び込んできた。

「………………っ! あ、貴方は……!」

 アッコが目を見開いてみると、彼女の目の前にはドレフが抜刀したサーベルスティックを我が身を盾にして防ぎ切ったあの新世党の幹部スカーフェイスが両腕を開いてアッコを死守していたのだ。

「す、スカーフェイス!? あなた……!」

「ぅぐ……! け、怪我は無かったか? ミラーガール……」

 目の前で自分の身を守ってくれたスカーフェイスを捉えて愕然とするアッコに対して、スカーフェイスはドレフの斬撃を全身を使って受け止めた状態で怪我は無いかと問い返す。

 そんな突然の再登場を果たしたスカーフェイスを目視して、ドレフが鋭い眼光で問答し合った。

「……何故だ? スカーフェイスよ。総帥であった私に逆らうとでも言うのか?」

「黙れ! この裏切り者め……よくも我ら新世党を欺いてくれたな」

「何をおかしな事を……私が総帥であって、彼らは単なる手駒だ。総帥の私が生き延びれていれば、それで結構な事ではないか」

「確かに……! だが、それも総帥が我々、二次元人の未来を考えた上での行動を取って下さっていれば間違いはなかった筈……! 覚えていますか、総帥……我々、新世代型が無事に進化を果たせたときは、その時こそ二次元人全体の未来が光り輝くのだと……!」

「………………………………………………………………」

「されど、総帥の真の目的はなんですか! 新世党の同志を嬲り殺しただけでなく、聖龍隊や赤塚組どころか私達まで騙し続けていたとは! 全て……全て、そのセイントコンパクトを独占する為だったのですか!!」

「……ああ、その通りだよ、スカーフェイス。新世党メンバーの脱走の手引きだけではない。ジャッジ・ザ・シティの爆弾テロも、このB.S.Lにお前達はもちろん聖龍隊や赤塚組を引き込んだのも……回りくどかったが、全ては二次元人の進化の根源セイントコンパクトを我が手中に納める為だけの計画だったのだよ。中々骨が折れたよ。なんせ、ミラーガールは簡単にコンパクトを奪わせてくれる隙を見せてくれなかったのでね。そこで脱走させたりして数合わせをした新世党のゴミ共を、働かせたと言うわけさ」

「か、数合わせのゴミ……! 同じ二次元人に対して、そのような言い方をなさるとは……!!」

「同じではない……私は神になる存在なのだよ」

 この全く罪悪感の欠片も見せない言動を示すドレフの言い様に、スカーフェイスも堪忍袋の緒が切れた。

「ゆ、許さんぞ!」

 スカーフェイスは得物を振り上げてドレフに攻撃した。だがスカーフェイスの攻撃は意図も簡単にドレフに弾かれてしまい、スカーフェイスは忽ち追い詰められてしまう。

「スカーフェイス! 大丈夫……? っ! 貴方、その傷は……!?」

 アッコが急いでスカーフェイスに駆け寄って見ると、彼の腹部には深い切り傷から出血が見られてた。

「さ、さっき不覚にも総帥からドレフ将校へと姿を戻している……変装を解いているドレフを目撃してね……その時、奴に斬られたんだ」

「そ、その傷で此処まで!? 早く手当てしないと……」

「大丈夫だ、加賀美アッコ! ……私は許せない、皆の信頼を……ちっぽけだが抱いていた皆の希望を打ち砕いて、己の野望の為だけにコンパクトを悪用しようとするドレフが! そしてそれ以上に……奴の戯言に謀れて思い通りに動いていた自分が、許せない……!」

「スカーフェイス……」

 己の騎士道から自責の念に駆られるスカーフェイスを目の当たりにして、胸が締め付けられてしまうアッコ。

 そしてスカーフェイスは、前回キャップ・ド・レッドから変装を解いて元の姿に戻ったドレフに斬り付けられた傷口を手で押さえ込むと、一時目前のドレフを睨み付けた次にはその周囲で転々と血溜まりの中でもがき苦しみ続ける新世党の面々を凝視して哀れみの目を浮かべた。

 するとスカーフェイスは徐に、懐から輝く宝石を取り出して天高く掲げた。

「す、スカーフェイス! それは……」

「ああ! 私の生命エネルギーを糧に周囲の怪我人や病人を全て回復できるヒーリングジュエルだ!」

 大事なヒーリングジュエルを迷う事無く使い込もうとするスカーフェイスの行動に、アッコは一驚してしまう。

 と、そこへドレフが衝撃的な事実を告発した。

「スカーフェイスよ、本気か!? その深手した肉体でヒーリングジュエルなんか使ってみろ! お前の現在の生命力では足りず、お前の肉体そのものをジュエルがエネルギーとして使い果たしてしまう!」

 このドレフの告発に、その場の全員が驚愕した。ジュエルを使えば、深手を負っているスカーフェイスは消滅してしまうと言うのだ。

 だが、自身が消滅すると解っていても、スカーフェイスはそれでもジュエルを酷使して周辺の怪我人、聖龍隊や赤塚組そして瀕死状態の新世党を救おうと奮闘した。

「解っている! だが、例えこの身が滅びようとも……私の意志は、少なくとも二次元人の未来を思い描く人々の理想は途絶えはせん!」

 己が身が消滅しようとも、己の意志や未来への理想は潰えないと豪語するスカーフェイスは、一人自分を心配そうに見詰めるアッコに向かって語り明かした。

「加賀美アッコよ、私は決して自分のしてる行動には後悔などしていない。私たち新世代型は、どうやら一人の三次元人をモデルに生み出された種族らしい。その三次元人はこの世の誰よりも二次元人の可能性を信じ、そして心より惹かれていったと言われている。私も、こんな騙され続けてきた私も……そんな三次元人に近付けられたかな」

 優しい瞳でアッコを見詰めるスカーフェイスの面差しを目にした途端、アッコはある人物の面影をスカーフェイスに重ねていた。

 そしてスカーフェイスが命を張って解き放ったヒーリングジュエルの輝きは、辺り一帯に広がり、傷だらけの満身創痍に陥った聖龍隊や赤塚組を完治させた。

「これは……!」

 ドレフの妨害から自身の治癒能力を発揮できなかったナースエンジェルは、これで全員の傷が完治するのを目の当たりにし胸を撫で下ろす。

 更にスカーフェイスが放ったジュエルの輝きは、最初ドレフの欺きでクジラ型戦艦から銃撃を浴びた新世党の瀕死の肉体をも完全に治して見せた。

「す、スゲェ……! 傷が綺麗さっぱり消えてやがる!」

 初めてスカーフェイスしか扱えないヒーリングジュエルの効力を目の当たりにして、新世党の伊丹キョウジは驚き慄く。

 だが最後の力を振り絞ってジュエルの効力を引き出したスカーフェイスは消滅寸前であった。そんな彼は腕を高々と天に向かって掲げると、己の信念を言い放った。

 

「二次元人に……栄光あれ!」

 

 そういい終わるとスカーフェイスは跡形も無く光の粉のように消滅してしまった。

 遺された彼の赤いスカーフが、直枝理樹たち新世代型たちの足元に飛んできた。

「スカーフェイスさん……」

「あの野郎、敵にしとくには、ちぃっと惜しい奴だったな」

 満身創痍になった聖龍隊や赤塚組だけでなく、騙されて銃撃の雨を浴びた為に瀕死状態に陥った新世党を助けるため、自らの命を投げ打ったスカーフェイスの勇気に、新世代型の栗山未来や纏流子はその表情に寂しさを浮かべる。

 そんな己の騎士道精神に則り、同じ騙された側の敵味方を全て治療するため己が命を投げ打ったスカーフェイスに対して、ドレフは冷たい言葉を発した。

「スカーフェイスよ、貴様のその忠誠心、誠に感服したものを感じていた……だが! その忠誠心も全て無駄となる! いくら傷が完治したとはいえ、この神のドレフの前に立ちはだかる者は全て返り討ちになろうぞ!!」

 あろう事かスカーフェイスの忠誠心までも冷遇する発言を述べるドレフ。

 この言動に聖龍HEADの獅堂光が物言った。

「そんな事はない! スカーフェイスは確かに間違った方向に信念を……忠誠心を傾けちゃったけど、それでも……私たち二次元人の未来を想い続けたのは貴方以上よ!」

 すると光に続いて龍咲海と鳳凰寺風の二人もドレフに物言った。

「光の言うとおり……! 彼は、私達とは道を違えてしまったけど、それでも真剣に未来を切り開く術を探していた。貴方の様に……自分の欲望の為だけに人を手駒として使い捨てる輩とは違うわ!」

「その通りです。キャップ・ド・レッド、いいえ、ドレフ将校。今まで他人を欺き続けた上に、利用するしか考え付かなかった貴方には到底理解できないでしょうが……人が持つ意志の強さ、尊さの偉大さは貴方の謀略をも遥かに凌ぐものです!」

 魔法騎士の三人に告げられ、ドレフは口元を歪ませるもののスグに不敵な笑みを浮かべて物議を返した。

「つくづく愚かな連中だな。人の意志がなんだ? 理想とは、未来とは? そんな下らないモノに今まで時間を浪費してきた聖龍隊、貴様らの戯言など耳に入れてたら、それこそ耳が腐ってしまうよ」

「だったら……腐るほど私たちのお説教聞かせてあげましょうかッ……!」

 魔法騎士三人の言葉に対しても、その下賎な物言いを変えないドレフの言動に腹が立ったミラールは、ドレフに向けてミラージュガンを発射した。

 しかしドレフは、そんなミラールが放った銃弾を容易くサーベルスティックで弾いてみせると、またしても俊足な動きでミラールとの距離を詰めて頭から一刀両断にしようと襲い掛かった。

 ミラールがドレフに一刀両断されかけたその時だった。そのミラールに急接近してきたドレフに突然銃弾が撃ち込まれた。

 ドレフは何事かと辺りを見渡して銃器を発砲した輩を捜し求めた。射線の向きから、赤塚組や暁美ほむらなどの聖龍隊が撃った訳では無かった。

 そしてドレフの目に飛び込んできたのは、先ほどスカーフェイスのヒーリングジュエルで瀕死状態のところから完全復活した新世党の一人、伊丹キョウジが銃口を向けている様だった。

「ほほぅ、伊丹キョウジよ。スカーフェイスに続いて貴様までも、総帥であった私に歯向かうというのか」

「ウルセェ! よくも俺を騙して……コケにしてくれたな! ドレフさんよぉ!!」

 完全に怒り心頭で殺気満々のキョウジに対して、ドレフは微動だにせず嘲笑うかの様な下種な笑みを浮かべる。

 すると驚いた事に、ドレフに銃火器の銃口を向けているのはキョウジだけではなかった。

 先ほどのスカーフェイスの回復宝石の効力で、立ち上がれるまでに肉体が回復した新世党の面々が全員、辺りに転がっていた銃火器を拾ったり、はたまた自分の得物を再び手に取り上げると、各々が銃口を向けたり刃を向けたりして完全にドレフに敵意を示していた。

「お、お前ら……!」

 驚くメタルバード達に、新世党が一人、小野崎功がハッキリと銃を構えたまま言う。

「ここで少しでも抵抗しないと、地球には帰れないからな」

 小野崎功に続いて高宮たちや三枝一族も言った。

「殺される前に……殺してやる!」

 さらに風陣カイトたち元LBXプレイヤーの面々も口々に言う。

「一時休戦だ……此処は生き残る為にも、聖龍隊と赤塚組に協力するぞ!」

 かく言うセレディ・クライスラーは。

「ボクは純粋に……純粋に、争いの無い世界を実現しようと画策していたに過ぎない! ドレフ! ボク達を欺いた事、後悔させてやるぞ!」

 不死の肉体を持つ筈の、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)は。

「妾を騙し、利用していたのは万死に値する! ドレフ、貴様を地獄に送って進ぜよう!」

 そして同じく不死性の肉体を持つマギウスの筈が、先ほどまで瀕死の重態を負っていたマギウスたちも。

「し、真実を……世界の真実……マギウスの、そして新世代型二次元人の隠された真実を探し出す為にも……ドレフ、貴様を殺す!」

 そんな支離滅裂な言葉も吐いていく新世党の面々を前にしたドレフは、高々と嘲笑を上げながら言い放った。

「ふは……ふはははははっ! 流石はゴミ虫、生命力がゴキブリ並みに高いと来たか。それならば銃撃の雨で曝す様な真似ではなく、私の二対のサーベルスティックの錆にしてくれるわっ!」

 そういうとドレフは臨戦態勢に入ってか、背中からサーベルスティックを抜き放ち、抜刀しては身構えた。

 そんなドレフの臨戦態勢を前にして、一瞬の躊躇いを覚える新世党の面々に対して、彼らの横に敵である筈の面子が足踏みを揃えて行進してきた。

「お、お前ら……!」

「ふぅ、此処まで来たら、私もご協力させてもらいますよ。キョウジ君」

 伊丹キョウジの横に歩み寄ってきたのは、栗山未来であった。

「母さん、此処はアタイらも戦うよ。愚痴なら後から言ってくれればそれでいい、今は強敵であるドレフを倒すのが先決だ!」

「り、流子……!」

「母上、今ここでどんな行いをしようと、私や母上のしてきた罪は一生消えません! ですが、共に罪を背負って生き抜く事はできる筈。ここは癪ですが、ドレフは強い……共闘戦前と行こうじゃないですか」

「皐月、主まで……」

 今まで強い敵対関係を強いてきた親子、羅暁とその娘、流子と皐月の二人の発言に、羅暁も唖然としてしまう。

「セレディ・クライスラー! ボクらはこう見えて、ほとんどが訳ありの能力者で、思い通りに能力を使って戦えないんだけど、身のこなしは先輩譲り。まあ、そんなトコで宜しくっす」

「あ、ああ……」

 セレディ・クライスラーの元には、同じ新世代型であり先代ガッチャマンの意志を受け継いだ新世ガッチャマンクラウズの七人が連なる。

「……貴方達がしてきた事は、到底許されるものではありませんが……此処は互いに生き延びる為、一時休戦の末、共闘戦前を強いて行きましょうか」

「ッ、超能力者か。厄介だな」

 そしてマギウスのアマデウスたちの元には、今まで目立つ事を極力避けていた新世代型の超能力者、斉木楠雄が彼らのお目付け役も兼ねて参上した。

 

 そんな夢にも思わなかった敵との共闘を前に、ドレフは嘲笑を浮かべて小ばかにする。

「うははは……君らがまさか団結するとは夢にも思って無かったね。だが、所詮はウジ虫どもの集まりに過ぎん……この私が全員揃って成敗してくれるッ!」

 かくして敵であった新世党の面々と共闘する羽目になった聖龍隊側は、新たに戦闘タイプの新世代型も引き連れてドレフに挑みかかった。

 

 

 

[意外な共闘]

 

「虫けらが……いい加減、果ててしまえ!」

 

 自分に逆らうもの全てを虫けらと称して戦いを再び仕掛けてくるドレフ。

 そんなドレフに一致団結した聖龍隊と赤塚組、そして新世党の面々。

 しかしドレフはその場凌ぎの団結と高を括って、一直線に攻撃を仕掛ける。

 と、ドレフの二刀のサーベルスティックから放たれるクロス状の衝撃波がミラールに襲い掛かる。ミラールはこれを受け止めつつも、即座に反撃に転ずる。しかしミラールが放った銃撃は意図も容易くドレフにかわされてしまう。

 銃撃で応戦するミラールを援護射撃しようと、新世党の面々が銃火器を発砲するがドレフは全ての弾幕をサーベルスティックで弾き返して防いでしまう。

 だが、そのドレフに死角から一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズが能力を抑えた状態で飛び掛るものの、ドレフは洗練された剣術で彼女達を斬り付けて吹き飛ばしてしまった。

 先ほどからドレフに対して大したダメージを与えられない現状に、栗山未来と纏流子が同時にドレフに挑みかかる。が、ドレフは二人の剣戟を相手に一歩も退く事は無く対処できてしまい、二人は苦戦を強いられる。と、其処に今度は鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の親子タッグが未来と流子の助太刀と言わんばかりにドレフに斬撃を与える。4対1という不利な戦況に追い詰められながらも、その顔には余裕の下種な笑みを浮かべ続けるドレフ。

 と、其処にメタルバードが一声を掛ける。

「離れろッ」

 メタルバードの一声に気付いて、5人が顔を向けるとその視線の先には右腕を砲口に変形させたメタルバードとちせ、そしてフィロ・フィナーレを展開する巴マミの姿があった。三人はそれぞれ砲身にエネルギーを充填すると、一気にドレフ目掛けて発射。ドレフと剣戟をし合っていた4人は即座に離れ、ドレフ自身も離れようとするが何故か身動きが取れない。

「!?」

 不思議に思ったドレフが視線を向けてみると、その先には超能力でドレフの行動を封じている斉木楠雄の姿が確認された。

 ドレフはここで斉木による超能力が自分の動きを制御している事に気付いたが、メタルバード達が放った砲撃から逃れることは出来ず、直撃を喰らってしまった。

 強力な砲撃を受けたドレフ。しかし彼の肉体は、多少の焦げを生じただけで殆どが無傷であった。この驚異の肉体にその場の誰もが騒然となった。

 するとドレフは嘲笑を浮かべると、再び自身の超能力で足元に転がっている部品をかき集めて戦闘マシンを復元して見せると、一気にその戦闘マシンを操って機関銃を連射させた。

「このッ」

 しかし全ての弾幕を、意外なことに新世党のアマデウスが不死性のある自身の肉体を盾にして、赤塚組や聖龍隊を死守したのだ。

「こ、ここは一時休戦……そういう事だろ、聖龍隊」

 共通の敵であるドレフを倒す為に結んだ協定に従い、己の肉体を盾として差し出したアマデウスの行為に敬意を評す聖龍隊。

 すると此処でメタルバードが新たなる指示を仲間に告げた。

「属性攻撃で一気に畳み掛けるぞ! 各々、各自自分の属性能力にあった仲間と共闘しろ!」

 メタルバードの指示で一気に動き回る聖龍隊は、各自自分が扱える能力の属性同士の隊士と共闘戦前を張った。

 まずは水属性の攻撃として、ウォーターフェアリーを戦前に背後にはマーメイドメローディーズを携えたチームが、七海るちあ達を筆頭にしたマーメイドたちの歌声で水属性の能力を向上増幅させて、ウォーターフェアリーが水属性のエネルギーを一気に高める。すると其処にセーラーマーキュリーや龍咲海、ミュウレタスが自身の能力を組み合わせて技を合体させて発動、更に其処に付け加えて美樹さやかが無数の水属性の剣を展開すると、彼女達は一気に強力なまでに合体した技を解き放った。

「ぐあああ……っ」強力な水属性の合体技を受けて、悶絶するドレフ。

 続けて今度は炎の隊士。セーラーマーズを筆頭に、獅堂光やファイヤーエンブレムが炎のエネルギーを集結させて、そのエネルギーを同じ炎属性の佐倉杏子とミュウザクロに纏わせると、杏子とミュウザクロの二人はそれぞれ槍と鞭でドレフに攻撃。

「ぐおおお……っ」

 紅蓮の灼熱の炎の力を纏った杏子とミュウザクロの攻撃には踏ん張りが利かず、吹き飛ばされてしまうドレフ。

 更に聖龍HEADの木之元桜が残り少なくなった魔力を振り絞り、多くの隊士たちの手助けに入ろうとカードを発動。まずはブルーローズに向けてアイス(氷)のカードを使用して彼女のNEXTパワーを増幅させて援護。ブルーローズはさくらに感謝を感じつつ、強化された自身の氷の能力でドレフを攻撃。一瞬でドレフを凍て付かせてしまう。

 ドレフが凍て付いた瞬間を狙って、さくらは更にカードを使用。サンダー(雷)のカードでドラゴンキッドとセーラージュピターの電撃を最高火力まで上昇させると、今度はファイト(闘)とパワー(力)のカードを使用してミュウイチゴや蒼の騎士だけでなく、ミュウプリンやワイルドタイガー、バーナビーに鏑木楓の筋力を向上させる。それぞれ能力や格闘術が向上した面々は、一斉に凍り付いたドレフに襲い掛かって強烈な電撃と打撃の嵐をお見舞いする。

「ぐふっ」

 強烈な電撃を浴びただけでなく、打撃もお見舞いされたドレフは再度悶絶。

 すると其処に新世党に加盟させられ、影から自分達に指示を飛ばしていたにも関わらず簡単に切り捨てたドレフに向かって伊丹キョウジが怒りの銃撃をお見舞いする。

「おらおらドレフ! 俺たちを利用してた借りだ! 喰らいやがれッ」

 そんなキョウジの横で、大将たち赤塚組もドレフに銃撃を浴びせていく。

「おやおや、まあ血気盛んなボウズだな。それに銃器の扱いも上手いし……敵として会ってなけりゃ、赤塚組に引き込んでいたところだ」

「へっ、俺さまを雇いたけりゃ、報酬はそれなりに高いぜ」

「おーー、怖」

 大将は血気盛んで銃器の扱いにも長けているキョウジに、敵として会っていなければ赤塚組に勧誘していたと告げると、それに対してキョウジは傭兵としての報酬は高いと突っぱねる。

 その最中、ドレフは弾幕の中を掻い潜り、聖龍隊の鳳凰寺風に斬りかかる。風はドレフの剣戟を何とか己の剣で防いでいたが、熟練したドレフの剣術には防戦一方だった。そんな風の危機をスカイハイが脱してあげた。彼は自身の飛行能力でドレフに体当たりを仕掛けようと突撃するが、それは偽りの攻撃で本当は激しい鍔迫り合いに入っていた風を救う算段だったのだ。そして風を助けたスカイハイは、彼女と共に強烈な旋風を巻き起こしてドレフをけん制。ドレフは激しい突風にさらわれない様に踏ん張るしかできなかった。するとその突風の中で、何かを思い付いたシバ・カァチェンがドレフを取り囲む旋風に向けて自らの逆刃薙(さかばなぎ)を振り起こして発生させた鎌鼬(かまいたち)を放った。するとつむじ風の中でカァチェンの鎌鼬は威力とその数を増して、ドレフに襲い掛かる。

「ぐはあ……っ」

 全身を細切れにされるかの勢いで襲ってくる鎌鼬の猛威に、流石のドレフも躊躇する。

 しかし攻撃を受けてばかりのドレフは、ここで反撃に転じた。

「もうすぐで私は……何者も到達できぬ高みに昇るのだ! 邪魔はさせん」

 そういうとドレフは再び戦闘マシンを起動させて、機関銃を連射させようと試みるが、その戦闘マシンに鹿目まどかと暁美ほむらの弓矢と銃弾が直撃して大破。戦闘マシンは動かなくなってしまう。

 戦闘マシンを再度破壊されたドレフが口元を歪ませていると、そこに聖龍隊のキリトやシルバー・クロウが斬り込んできてドレフと激しい剣戟を仕掛け合う。

 だがドレフの卓越した剣術の前に、簡単に斬り入れられないでいるキリトとシルバー・クロウ。すると其処に剣を手にしたアマデウスが駆け付けて二人の助太刀に入る。

「どうしたのだプロト世代! 貴様らの腕前はこの程度か!」

「へっ、冗談じゃない!」

「ここまで培ってきた経験は、伊達じゃありません!」

 アマデウスから渇を入れられたキリトとシルバー・クロウは再び得物を持ち構えて、ドレフに挑もうと立ち続ける。

 そんなアマデウスの助太刀で、戦闘を阻害されたドレフの元に、またも栗山未来が纏流子と共に斬りかかって来た。

 執拗に斬り込んで来る二人の少女を前に両刀のサーベルで応戦するドレフ。するとこの時、未来が振り翳す刃の切っ先が突然散り散りになり、結晶化していた血がドレフの顔に付着して目晦ましになってしまった。実は、これこそ未来が狙っていた戦術だった。

 そして生じた隙を突いて、未来と流子はドレフに斬り込んで深手を負わせることに成功。続いて皐月と羅暁の親子がドレフに斬り込む。

「ぐはっ……」

 4人からの強烈な斬撃を浴びたドレフは朦朧となったが、未だ倒れる様子は無かった。

 するとそんなドレフに、今度は流子と皐月のハサミ姉妹が斬りかかった。

「これが貴様か!」

 ドレフに、今まで自分達に偽りの姿を曝していた事実を突きつけながら、鋭い太刀筋を喰らわせる皐月と流子。

 しかしドレフは朦朧としながらも、まだ倒れる事無く、直立しようと体勢を立て直そうとした。すると今度こそはと言う思いで、其処にアスナとブラック・ロータス、美樹さやかと佐倉杏子の二組がドレフに突っ込んできた。

 両者はそれぞれドレフの視点から、斜め向かい側からのクロス状の射線で突っ込んできた為、ドレフは対処に遅れてサーベルスティックを抜き放つのが一歩遅れた。

 そしてアスナとブラック・ロータス、さやかと杏子のクロスコンボからの痛烈な攻撃がドレフに直撃。

 4人の美少女からの攻撃を受けて、ドレフは満身創痍となり、戦闘不能に陥った。

「……全て……全てが、無駄に終わるのだよ……!」

 倒れ掛かるドレフは、戦前で自分に歯向かった者たちに全てが無駄なのだと説きながら崩れ落ちた。

 

 

 

[残酷な真実]

 

 聖龍隊、そして赤塚組に加わって参戦した新世党と新世代型たちの努力の甲斐あって、どうにか苦戦の末ドレフを倒すことが出来た一同。

「うぅ……」

 深手を負い、満身創痍に成り果てたドレフを直視して聖龍隊スター・ルーキーズ総部隊長ミラールが驚きに満ちた言葉を発する。

「まさか、ドレフ将校が異常者(ヒール)だったなんて!」

 紳士的かつ温厚なにより実直な人格だと思われていた国連軍本部将校のドレフが、敵であった事実に未だ驚きが癒えないミラール。

 しかし皆はそれ以上に、今までそのドレフに騙されて戦い続けてきた自分達の活動が何だったのか悲愴に打ちひしがれた。

「ちくしょう! 俺達は何のために戦ってきたんだ!?」

 聖龍隊マン・ヒールズの門脇将人が剣を握り締めたままドレフと対峙しながら嘆くと、満身創痍のドレフは嘲笑を浮かべながら目前の一同に言い放った。

「すべて私のためさ、聖龍隊の諸君。新しい神のため……」

 全ては己の自己満足の為だと説くドレフの主張に、一同の憤りは感極まった。

「くそっ、こんな奴の為にフレッドは死んだというの……!」

 ミスティーハニーはかつて自分達のために死んだフレッドを嘆きながら答えを求めてない質問を説く。

 すると其処に、聖龍隊の新人でもあり、そのフレッドに淡い恋心を抱いていた百江なぎさが武器を手にしてドレフに迫り来る。

「フレッドは……フレッドは、みんなの他に……私たちの為に死んだのです! 私は許さない……たとえ、みんなが許しても私は絶対許さないです!」

 恋仲とは行かなかったが、親しい間柄にまで発展したフレッドの死を嘆き悲しむなぎさの涙を浮かべた訴えに、皆の意見も同じだった。

「なぎさちゃん、君だけじゃない……俺らだって怒りマックスだ!」

「そうだ! フレッドは……俺達の仲間の仇を討たせてもらうぞ!」

 ワイルドタイガーに新世代型の真鍋義久らはドレフに向けて激しい怒りの念をぶつけるが、聖龍HEADの方は怒りを静寂化させた状態で落ち着いたまま新世党に言い切った。

「そういった意味では、お前達も同罪だ!」

 メタルバードに同罪だと告げられ、新世党の面々も返す言葉が見当たらず、下を向いてしまう。

 しかし、そんな立腹する聖龍隊や赤塚組、さらに新世代型たちを前に、ドレフは嘲笑った

「わーーはっはっはっは……フレッドか!」

 するといきなりドレフの体が蒼く光り出し、ドレフは蒼の光に包まれてしまう。

 そして蒼い光が納まった瞬間、目撃した一同は愕然とした。

「ウソでしょ、あなたは……!」

 余りの衝撃的な光景にミスティーハニーは絶句してしまう。

 聖龍HEADも赤塚組も新世党も新世代型も全員が茫然となり、そしてドレフに銃を向けていた百江なぎさは目の前の光景が信じられず絶望した表情を浮かべた。

 何故なら彼らの目の前に立っている人物は、ドレフでは無くなってたからだ。

 その人物とは………………

 

「フレッドってのは、俺のことかい?」

 

 そう、紛れも無い死んだ筈のフレッド本人だったからだ。

「まさか……!?」

 絶望に満ちた顔を浮かべて言葉を失う百江なぎさに、フレッドに変身したドレフが例の4連式リボルバー銃を構えて冷酷に告げた。

「その通り、正真正銘の俺さ!」

 言い切った瞬間、フレッドに変身したドレフは百江なぎさに向けて4連式リボルバー銃を発射し、単一電池と同型の爆薬弾を無情にも撃った。

「危ないッ」

 と、なぎさに銃弾が直撃する寸前で赤塚組のアツシが彼女を押し退けて身代わりになった。が、弾丸がアツシに直撃した時の爆風で、なぎさまでも吹き飛ばされて転倒してしまう。

「きゃあっ、アツシ!」

「アツシ、しっかりしろ!」

 弾丸に吹き飛ばされてしまうアツシとなぎさを目の前に、急いで赤塚組で伴侶であるアケミと仲間であるテツが駆け付けて、銃弾に直撃したアツシの具合を診る。

 アツシとなぎさの両名をフレッドが使用していた4連式リボルバー銃で吹き飛ばしたフレッド、いや変身しているドレフは変身を解きながら愚痴を零した。

「まったく、お前達の友情ごっこに付き合うのは」変身を解除して「反吐が出そうだったが」と、続けてドレフは自慢げに語り明かした。

「我が目的のため、セイント・コンパクトのためだ! 中々の名演技だったろう?」

「その能力は、私やアッコおねえちゃんに折紙と同じ……」

 ドレフがフレッドに変身していたのを間近で見たミラールは、その能力が自分やアッコそして仲間の折紙サイクロンの擬態能力に通じている変身能力である事を察して愕然となる。

 そう、ドレフはフレッドなる人物に変身して、最初は新世党を内部から裏切り者が出ないか見張る為にワイルド・ジャンゴーに与していたが、流れ的にレジスタンスの動きを探る為に適当に話を合わせて彼らと合流。そして機会を見て自爆したように見せかけながら離脱していたに過ぎなかった。あの新世党を裏切ったポロック・三枝を人知れず殺害していたのも、変身能力で自由に行動できたフレッド、いやフレッドに変身したドレフだったのだ。

「う、ウソだろ変身能力!? アッコさんと同じ能力が使えてたのかよ!」

 衝撃的な事実を目の当たりにした新世代型の燃堂力が吃驚していると、ドレフは何も知らない彼、いや多くの新世代型に語ってあげた。

「はははは、何も知らないとはお目出度い連中だよ君たちは! いや、それ以上に聖龍隊が実に残酷なのかが伺えるよ。未だ新世代型二次元人に真実を明かしてないのだからね」

「し、真実だと!?」

 ドレフの言い分に赤塚組の大将が反論すると、ドレフは不敵な笑みを浮かべて大将と言い合った。

「君らも既に知っていて、聖龍HEADと口論しただろ? 私たち新世代型二次元人の遺伝子構造が、君らもよく知るあの小田原修司と酷似していると……」

「な、何でおめえ、そんな事を……!」

 大将は何ゆえドレフが自分たち赤塚組と聖龍HEADが新世代型二次元人の遺伝子構造で口論していたのかを知っているのか疑問視すると、ドレフは冷徹な面差しを向けたまま語り続けた。

「そんな事はどうでもいいだろ、赤塚組……君らも気になっていた筈だ。何ゆえ我ら新世代型二次元人の遺伝子が小田原修司の遺伝子と酷似しているのかを……」

 ドレフの語りに生唾を呑み込む大将に反して、ドレフの一言一句に気が緩まない聖龍隊。そんな一同を前にして、ドレフは挑発するかのようにHEADに話し掛ける。

「本当に何も語らないとは……実に残酷で冷徹な輩なのだな、HEADよ!」

「………………………………………………………………」

 ドレフの問い掛けに対して何も答えられず黙り込んでしまうHEADたちを視認して、赤塚組大将がドレフに再度問い詰める。

「おいコラ! 自分だけ知ったかぶりしたような素振りしてんじゃねえ! 話が見えねえじゃねえかッ」

「相も変わらず強引な……まあ、聖龍隊が真実を話さない様なら、私が代わって熱弁してあげるとしますか……」

 と、その時「待って! あの話は……」とミラールがドレフを制止する。が、これで話の矛先がミラールたちに向けられてしまう。

「み、ミラールさん! なにか知っているんですか?」

「何か知ってるの、ミラール!」

 鹿目まどかや暁美ほむらに問い詰められて、口を硬く閉ざしてしまうミラール。

 すると今度はワイルドタイガーたちNEXTヒーロー達にキリトやシルバー・クロウや【SAO】と【AW】の面々が問い詰め始めた。

「ど、どういう事だよタイガー!」

「僕達はまだ聖龍隊に加盟して間もないからよく知らないけど……皆さんも新世代型二次元人について何か知っているんですか!?」

 キリトやシルバー・クロウに問い詰められて、ワイルドタイガーたちはミラール同様口を閉ざしてしまう。

 そんな話が延々と続く中、痺れを切らしたドレフが聖龍HEADやスター・ルーキーズそしてマン・ヒールズが知っていながらも隠し通している秘密を語り出した。

「喧嘩なら後にしたまえ……いや、あの遺伝子を基に生み出された私たちは、所詮争いの中でしか芽吹かない種なのかもしれないな……」

「あの遺伝子をモトに!? どういう事か説明しろ!」

 同じく痺れを切らした鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が問い詰めると、ドレフは語り続ける。

「我々新世代型には、本来の二次元人とは全く異なる遺伝子構造を持ち、これによりウィルス感染はもちろん異常者(ヒール)にならないとまで言われている。しかし、その実態は他者のDNAデータを複製できる遺伝子だったという訳なのだよ」

「ええッ!? そんじゃつまり、俺もアッコさんたちみたいに自由に変身できてたって事なのか!?」

「その通りだよ、燃堂力くん。しかし変身能力を持つ初期の新世代型は、例のルミネの反乱以降全て処分されてしまったから、残っているのは私だけとなる。これが私を神へと近付けさせる根拠なのだよ」

「………………………………」

「……話が逸れてしまったね。その誰にでも変身できる能力を秘めた二次元人こそ、我ら新世代型だった。しかしだ、その異様な遺伝子構造のモデルとなっているのが、あの鬼神小田原修司なのだ! それ故に我々は旧世代型や三次元人の様にD-ワクチンに対する免疫を生まれ付き持っていたため、D-ワクチンでの筋肉細胞が強化作用しなくなった訳だよ。無論、そのD-ワクチンから製造・強化されたウィルスにも免疫を持っているため君たちは、かのアジアでのバイオハザードの中、感染しなかった訳だよ」

 そしてドレフは最も残酷な真実を新世代型二次元人たちに打ち明けた。

 

「まあ、直訳すれば我々、新世代型二次元人は……小田原修司のクローンに近い種族とも言える。いや、小田原修司のクローンそのものだと言っても過言ではない!」

『!!』

 ドレフから告げられた残酷な真実を耳にして、新世代型二次元人である一般の民間人たちも英雄たちも、そして新世党の面々も全員が絶望した。

 さらにドレフは彼らを更なる絶望に突き落とす実情を語り明かした。

「全ては三次元政府が、国連より身柄を解放された小田原修司に代わる人材……そう、戦力を補う為に生み出した代用品……それが我々なのだ!」

 絶対的な戦争抑制力として国連に長い間、身柄を人間兵器として置いていた小田原修司。その小田原修司に代わる戦力や人材を補う為に生み出されたのが新世代型二次元人であると告げたドレフの言葉に、新世代型二次元人たちは愕然となった。

 

 自分達は生まれた時から小田原修司の代用品という宿命があったのか。疑問に駆られる新世代型二次元人たちは頭の中が一瞬で真っ白になった。

 そして非常に混乱してしまう。

「うわあ、ウソだッ! 僕たちがクローンだなんて……しかも、障がい持ちのキチガイ野郎の小田原修司のクローンだなんて!!」

 悲観の余りドレフの言った事が全て受け入れられない新世党の法月仁は混乱に喘いでしまう。

「そんな……ボク達が、ボク達が……単なるクローン。小田原修司の代用品として生み出されただけの二次元人……」

 余りの絶望に、セレディ・クライスラーは蒼褪める。

「そんな、ウソでしょ……琴浦さん達が……!」

「あの残酷で、躊躇いなく人を殺傷できちまう鬼神、小田原修司のクローンだって……!?」

 真実を聞かされ、プロト世代のチョコとギュービッドは愕然と親友の琴浦春香たちを直視してしまう。

「鬼神の、クローン……皆様方が……!」

 新世代型が小田原修司のクローンに通ずる種族だと知って、思わず後ずさりしてしまうカァチェン。

 そんな状況で大将が事の真相を確かめようとメタルバード達に問い詰めた。

「ば、バーンズ! ウソだよな……新世代型の連中が、修司の代わり……クローンとして生み出されたなんてウソだよな!」

 必死の形相でメタルバード達に問い詰める大将。するとメタルバードが重い口を開いて、震える唇で答え返した。

「……いや、本当だ……」「!!」

 メタルバードの返答に衝撃を受ける大将たち赤塚組。そして聖龍隊の新人達。

 そんな衝撃に染まる一同を前に、ドレフは更に語り続けた。

「だが、我々の遺伝子は極端に三次元人に……創造主たる三次元人の遺伝子構造を基に生み出されたのか、通常より陰湿で凶悪な異常者(ヒール)に成り下がる危険性も孕んでいるという……」

「ふ、ふざけるな! それじゃ、あんただって異常者(ヒール)だっていう証拠みたいじゃないか!」

 ドレフの発言にすかさずキリトが言い返すと、ドレフは真顔でキリトたちプロト世代に語り明かした。

「ふふ、何をおかしな事を……我々のプロトタイプとして生み出された貴様らプロト世代には、小田原修司ではないがテストとして三次元人の遺伝子構造を基に生み出されているのだよ! そう、三次元人の遺伝子構造を基に生み出されているという意味では、私たちは同じだという事だ」

「な、何だと!」

 自分たちプロト世代も、小田原修司ではないものの三次元人の遺伝子構造を基に生み出された二次元人だと聞かされ、驚愕するキリト。

 

 そんな自分たちの出生の秘密を知って絶望視する新世代型二次元人たちを尻目に、ドレフは徐に懐から強奪したセイントコンパクトを取り出して言った。

「お前らマヌケ共には分からんと思うが、我ら新世代型二次元人が持つ変身能力とセイント・コンパクトの力を組み合わせれば……」

 そう語りながらドレフは、服の下に備え付けていた装置にコンパクトを填め込んで言い切った。

「私は最高のものに……何者も達し得ない頂点に昇ることが出来るのだ!」

 

 

 

[吸収された新世党]

 

 そしてセイントコンパクトを胸部の装置にはめ込んだドレフは、愕然とする一同の前に立ちはだかった。

「もうお喋りも終わりにしよう……君たちも真の役割を知って満足しただろ? だが、私は満足せん! 小田原修司のクローンとして……代用品としてしか価値の無い存在では終わらない! 私は神に……崇高な唯一無二の存在へと変わるのだ……!」

「さっきから神だ神だなんて……! 神様気取りもいい加減にして!」

 依然として自らを神だと自称するドレフの言動に、暁美ほむらが強く反論するとドレフは神妙な顔付きで言い切った。

「暁美ほむらよ、私は神様を気取っているのではない……文字通り正真正銘の、神となるのだ!」

 次の瞬間、ドレフが自ら羽織っていた軍服を脱ぎ捨てると、その軍服の下からはコンパクトをはめ込んだ神々しく輝く装置を着衣したドレフの全貌が露になった。

 ドレフは胸部にはめ込んだコンパクトを中心に、着衣している装置を輝かせながら不敵に問い掛けてくる。

「神の御前だぞ、ひざまづいたらどうだ?」

 すると更に次の瞬間、ドレフが着衣している装置から無数の光る触手が伸びてきて、目前の新世党の面々を捕まえ始めた。

「うわあっ!」

 突然前触れも無く自分たちを捕捉していく触手に捕まり、慌てふためく新世党。

「な、何を!」

 アッコが問うと、ドレフは悠々とした面差しで言った。

「なあに、これからちょっとした趣向を……暇を持て余した神による奇跡を目撃させてやるのだ」

 ドレフがそう言った次の瞬間、新世党の面々を捕らえていた触手が更に光り出し、同時に捕まっている新世党の面々に異変が起こった。

「うあ、ぐはあ……っ!」

 普段は弱音など一切吐かない伊丹キョウジが苦しそうに悶え始めたのを観て、自分たち新世代型の真実を知って愕然となっていた瀬名アラタたちが反応する。

「きょ、キョウジ!?」「カイト!」

 かつての旧敵であるキョウジや仲間だった風陣カイトの苦しそうな表情を見て困惑する一同。

 すると此処で彼らを触手に捕らえているドレフが予想だにしなかった事を語り始めた。

「ふっふっふ……彼らは以前、そう、このB.S.Lに潜入させる前に飲ませた私の遺伝子と同質の液体を薬と称して飲ませていてね。その結果、今まさに私の肉体の一部へと変わるところだよ」

「な、なんだと!」

「お、お前……あの時の薬が、まさか……!」

 ドレフの説明を聞いて、再び怒り出す瀬名アラタたちに反して、B.S.Lに潜入する直前に「対ウィルス用」と称されて飲まされた薬が罠だったと気付く伊丹キョウジ。

 そして尚、ドレフは残酷な事実を新世党に語り続ける。

「新世党よ、君らは最後の最後で実に光栄だろう。この私の肉体の一部へと変えられるのだからな」

「………………!」

「驚くな、これは神である私が運命付けた顛末。君たちに私の遺伝子物質を飲ませ、予め私の肉体に吸収されやすい体にしておいたのだから。まあ、要するに君たちは神である私の……部品(イケニエ)だよ……!」

 この衝撃の事実を聞かされ、神の部品、生贄として扱われる新世党の面々は一気に絶望した。

『……っ…………うわああああああああああああ……っ!!』

 絶望の断末魔が響く中、ドレフは新世党の面々を吸収しようと動き出す。

「す、好き勝手にさせるな! みんな、ドレフの身体から新世党の連中をはぎ取れ!」

 メタルバードの指示を受けて、聖龍隊と赤塚組は分担して触手に捕まっている新世党の面々を救出しようとする。すると其処に、今まで衝撃の余り呆然としていた新世代型の面々も加勢に入ってくれた。

「お、お前ら!」

「そうこなくっちゃ! このままドレフの思惑通りにさせるのなんかシャクに触る!」

 加勢に加わってくれた新世代型を見て、一驚する大将に反して彼らの加勢に喜々とするギュービッドは共に新世党の面々の救出に乗り出す。

 そして力いっぱい、触手から引き摺り下ろそうと引っ張っていると、ようやく有馬トオルを解放する事に成功する。これを機に続々と救出しようと躍起になる面々だが、ここで救出した有馬トオルに変化が。

「うわ、体が……うわあーーーーっ!!」

 なんと有馬トオルの肉体が光に包み込まれながら消滅してしまった。

 これを見た一同が愕然としていると、メタルバードが残酷な現実を突きつけた。

「そ、そうか! こいつ等は触手に捕まった時点で、既にドレフの肉体の一部に変化しちまったんだ! 肉体から身体の一部をはぎ取れば、その部分は壊死して細胞が死滅してしまう……新世党の連中は、もうドレフにとっては細胞の一つにしか過ぎないんだ!」

「そ、それじゃ! もうドレフに捕まった人たちは……!」

 メタルバードの説き明かした話を聞いて新世代型の出雲ハルキが問い質すと、メタルバードは首を横に振って絶望視を意味させた。

「そ、そんな!」

 既に救出は不可能だという事実をメタルバードの素振りで知った琴浦春香たち新世代型たちは絶望した。

 

 そんな絶望的な状況の中、コンパクトを奪われたアッコはドレフに問い掛けた。

「ドレフ……貴方は、私のセイント・コンパクトを奪う為だけに、こんな手の込んだ芝居を……私や、新世党の人達を利用したのね」

 アッコから問い掛けられたドレフは、新世党の面々の吸収を中断して答えた。

「そうだ。新世党のクズ共に奪わせた後に、君たち優秀な聖龍隊諸君に働いてもらったのだ」

 このドレフの発言を聞いて、聖龍隊の面々は衝撃を受ける。

 するとこのドレフの言動に、アッコは力強い口調で言い切った。

「確かに、新世党の人達は異常者(ヒール)だった。それは否定しないわ!」

「え……!」「み、ミラーガール……」

 アッコの意外な発言に、触手に捕らえられている新世党の高宮や小野崎功は愕然となるが、アッコは更にこうドレフに付け足した。

「だけど……だけど、あなたの様に最初っから異常者(ヒール)だった訳じゃない!」

 新世党は最初から悪人だった訳ではないと主張するアッコは、最後にドレフにハッキリと告げた。

「ドレフ、あなたは狂ってる!」

 するとアッコの言動を受けて、ドレフは不敵な笑みを浮かべて彼女に反論した。

「ふははははは……その新世党の幹部が一人、スカーフェイスは君に言わなかったかな? 異常者(ヒール)かどうかは、歴史だけが決められる事だと」

 善悪の決定は歴史のみが決められる事だと反論するドレフは、更に主張した。

「二次元人が、より高い能力を求め進化する。それは自然なことだ、違うか?」

 このドレフの主張に反論できないでいると、ドレフはアッコたち目前の一同に言い放った。

「私はこの宇宙にて、究極のシンカを遂げるのだ!」

「シンカ!?」

 アッコ達が驚愕していると、皆が勢揃いしているB.S.Lのスペースポートが突然揺れ始めた

「驚く事はない、まだこれからだ。君達は神の奇跡を目にする、初めての者となるのだ」

 ドレフはそういうと不敵に「フハハハハハ……」と高笑いをする。

 そしてドレフの触手に捕まった新世党メンバーが続々と、触手が伸びてきているコンパクトが填められた胸部へと吸収されていった。

「うわあっ……」「きゃあっ」

 高宮に続いて勝沢、山崎そして三枝一族が。

「た、助けてくれ……うわぁっ!」

「お父さん!」

 娘、春香の嘆願も空しく吸収されてしまう小野崎功。

「カイトーーーーっ!」

 友であった風陣カイトが吸収されていくのを、黙って見ているしかできなかった嵐山ブンタ。

「ぼ、ボクはただ……争いの無い、平和な世界を望んでた……望んでたん、だ……」

 平和への飽くなき想いを最後まで訴え続けたセレディ・クライスラー。

「わ、妾は求める……! 生命戦維による完全なる人類支配化計画……そ、それが、こんな形で、終わる、とは……」

 抵抗空しくドレフに吸収されてしまう鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)

「い、嫌だ……嫌だぁーーっ!!」

「うわあっ!」「ひぃっ!」

 絶叫を上げながら吸収されていくマシタ/ベイカー/ナイン・バルトの三名。

 それからも続々と、コンパクトと一体化したドレフに吸収されていく新世党の面々。彼らをただ見届けるしかできない他の一同は、ただただ愕然と眺めるばかり。

 そして眩い光が辺りを照らして、皆がそっと目を開けてみた先に捉えたのは……

 

 禍々しくも神々しい、異形で巨大な風貌へと変化を遂げたドレフ、いや、ゴッド・ドレフが皆の目の前に聳え立っていた。

 

 

[シンカした二次元人]

 

 禍々しくも神々しい、神へと神化(シンカ)したゴッド・ドレフは目前で唖然と突っ立っている聖龍隊や赤塚組に奇襲した。

 

「私は全てを支配する者。すなわち、神である……!」

 

 ゴッド・ドレフは巨大な手を振り上げて、痛烈なダメージを戦前の者たちに浴びせる。

 聖龍隊の面々が巨大な手で弾き飛ばされたのを目の当たりにした赤塚組は、急いで応戦の準備に取り掛かる。

「こ、攻撃! 攻撃しろ!」

 大将は慌てて同胞の赤塚組に攻撃を指示。赤塚組は銃撃戦を展開した。

 しかし赤塚組の銃撃は、ゴッド・ドレフの強靭な肉体に弾かれて全くの無傷に終わってしまう。

「だ、ダメだ大将……銃じゃ歯が立たない」

 愕然と大将に報せるアツシ。そんな愕然となる皆を目前に、大将は新たなる指示を告げた。

「ミズキ! お前の出番だ、最高火力の技をお見舞いしてやれ!」

「解ったわ!」

 最終兵器試作機であったミズキに攻撃の許可を与える大将。ミズキは指示された通りにゴッド・ドレフに向かって強力な光線を直射する。だが、この攻撃もゴッド・ドレフの前では余り意味を成さなかった。

「ミズキでもダメか……!」

 赤塚組幹部衆の中でも、最も攻撃火力の高いミズキの攻撃すらも耐えうるゴッド・ドレフの驚異に唖然と立ち尽くす大将。

 すると此処でメタルバード率いる聖龍隊が反撃に転ずる。

「聖龍隊! 有りっ丈の能力と技をドレフに向けて集中砲火! 少しでもダメージを蓄積させるんだ!」

 メタルバードの指示で、聖龍隊はゴッド・ドレフに向けて一斉砲火。集中的に攻撃を浴びせた。

 だが鉄壁の防御力を誇るゴッド・ドレフに聖龍隊の攻撃もまるで効果なし。焦燥に駆られる皆を前に、ゴッド・ドレフは更なる絶望を聖龍隊や赤塚組に見せ付けた。

「この程度か。神である私に歯向かえるとでも思うな」

 そういうとゴッド・ドレフは額に埋め込まれたミラーガールのセイントコンパクトを輝かせる。するとゴッド・ドレフにようやく付けられた傷の数々が瞬く間に消え去ってしまったのだ。

「な、なに!」

 驚異的な再生能力で傷を完治させたゴッド・ドレフを目の当たりにして騒然となる一同。

 すると、この鉄壁の防御力と驚異的な再生能力を兼ね備えるゴッド・ドレフの方から更なる攻撃が。

「神の力を見ろ……!」

 ゴッド・ドレフは念力にも近い特殊能力で付近の瓦礫や隕石を引き寄せて戦闘している聖龍隊めがけて落下させた。

「うわっ!」「わあっ!」

 キング・エンディミオンや堂本海人は、この隕石群による猛攻を浴びて辛うじて生き延びられた。

 すると聖龍隊は再度、ゴッド・ドレフに向けて攻撃を開始。木之元桜のショット(撃)を筆頭に、巴マミのフィロ・フィナーレや美樹さやかの無数の剣飛ばし、そしてミラールのミラージュガンによる砲撃がゴッド・ドレフに命中。しかしゴッド・ドレフに大した傷を負わせる事は叶わず、さらにゴッド・ドレフは例の如く驚異的な再生能力を額のコンパクトから発動させて傷を完治させてしまう。

「ドレフへの直接攻撃は一旦やめ! まずはアッコのセイントコンパクトを奪還するのが先だ! 全員、ドレフの額に埋め込まれたコンパクト目掛けて攻撃開始!」

 メタルバードがゴッド・ドレフの防御力と再生能力を封じる為に、まずはコンパクトの奪還が先決だとしてゴッド・ドレフの額に向けて攻撃を集中するよう指示を飛ばす。

 全員が巨大・奇形化したゴッド・ドレフの額に目掛けて攻撃を集中させる。しかし攻撃はコンパクトから自動で発生される光の壁で全て防がれてしまい、コンパクトはもちろんゴッド・ドレフにも攻撃が直撃する事はなかった。

「う、ウソだろ……聖龍隊の攻撃が全く効かないだなんて……!」

 種族、魔法、技量、能力……ありとあらゆる戦術を兼ね備えた屈指の組織、聖龍隊の攻撃が全て防御されてしまい全く効果を表さない現状に愕然と顔を蒼褪めさせる赤塚組の山崎貴史。

 聖龍隊が全くの無力と感じてしまう状況を目の当たりにして、誰もが目の前の光景に信じられない心境に至っていたその時、更なる絶望が皆を襲う。

「神罰を受けろ……神の前にひざまずくがいい!」

 ゴッド・ドレフは全く自分に損傷が浴びせられないのを良い事に、巨大な腕で手当たり次第に聖龍隊を攻撃し始めたのだ。この猛攻には聖龍隊もお手上げ状態だった。

「きゃあ!」「か、楓!」

 娘の楓がゴッド・ドレフの巨大な手に押し潰されそうになるのを見て声を上げるワイルドタイガー。すると其処にHEADの木之元桜が皆を守ろうとシールド(盾)のカードを発動させて押し潰されそうになる楓の前に立ち、揃って光の壁で覆った。しかしゴッド・ドレフが力を込めると、シールド(盾)のカードは意図も簡単に打ち破れてしまい、さくらと楓の二人は巨大な手に弾かれて吹き飛ばされてしまう。

「か、楓ーーッ!」

 娘の楓が気に掛かり、咄嗟に飛び出してしまうワイルドタイガーは何も考えずにゴッド・ドレフに飛び掛る。

「うおりゃーーッ!」

 ハンドレッドパワーで10倍になった筋力でゴッド・ドレフに殴りかかるタイガー。しかしゴッド・ドレフは平然とタイガーの打撃を受け切ってみせると、腕を思いっきり振ってワイルドタイガーを振り飛ばしてしまう。

「おじさん!」「タイガー!」

 軽々と振り飛ばされてしまうワイルドタイガーを見て、彼の名を呼びながら目で追うバーナビーとブルーローズ。

 ゴッド・ドレフは更に、自分の腕が届かない場所で足を留めている面々にも攻撃を仕掛けようと、額からレーザー光線を発射して手の届かない面々の目前の地面に直射。すると光線が直射された箇所が爆発して、その前線にいたキリトやアスナたちを吹き飛ばしてしまう。

「うわっ」「きゃっ」

 爆発で吹き飛ばされてしまうキリトにアスナたち。

「み、みんな……」

 ゴッド・ドレフの猛攻で満身創痍になるメタルバードが立ち上がって皆の名を呼ぼうとすると、ゴッド・ドレフは非情にも立ち上がろうとする者たちを上から拳で殴り付けてトドメを刺していく。

 さらに、まるでテーブルの上のゴミを薙ぎ払うかのように、目前の皆々を巨大な腕で薙ぎ払い、弾いてしまう。

 その光景はまるで、幼い子供が玩具を叩き付けたりして遊んでいるような身も凍る光景であった。

 幼い子供が無邪気に遊びまわるかのように、今度は両手を大きく開いて目の前のセーラー戦士達一同を叩き潰した。

「ぐはっ」

 まるで蚊を叩き潰す要領でセーラー戦士達を戦闘不能に陥れたゴッド・ドレフは満足げな様子で言った。

「素晴らしい……これがミラーガールの、聖女が持つコンパクトの力か! ふははは……」

 完全にコンパクトの力に酔い痴れているゴッド・ドレフは、更なる強襲を仕掛け続ける。

「うわあッ!」「くそ……!」

 巨大化したドレフの猛攻に苦しむ者、苦痛に喘ぐ者、苦渋に耐え忍ぶ者。様々な情景を見せ付ける目の前の戦場を傍観して言葉を失くす新世代型たち。

 そして遂にゴッド・ドレフはHEAD、マン・ヒールズ、ルーキーズ、そして赤塚組という戦前で戦う勇士達を全て叩きのめしてしまった。

 全ての戦士、英雄たちは完膚なきまでにゴッド・ドレフに痛め付けられ、もはや立ち上がる事すら困難であった。

「フハハハハハ……なんと貧弱なことか! 分かるか? これが究極の力……神の力だ!」

 己の力に心酔するゴッド・ドレフは目前で満身創痍に至った聖龍隊と赤塚組を見て嘲笑う。

「見よ。我が手には、この宇宙すらちっぽけだ! 私は世界を統べる神となったのだ」

 そして遂には、この宇宙すら神である自分には小さいとまで説き出す始末。

 このゴッド・ドレフの言動に、マン・ヒールズの門脇将人が腸を煮え滾らせて憤怒する。

「お前の好きになどさせるものか!」

 将人が立ち上がろうとするが、そんな彼にゴッド・ドレフは手から光線を発射して将人の顔面に直撃。将人を吹き飛ばしてしまう。

「大人しく、ひれ伏しておれ!」

 完全に神様に成り上がった積もりでいるゴッド・ドレフの言動に憤りを感じない者はいなかったが、誰もがその絶対的な強さに朦朧とするばかり。

 

 すると此処で異変が。なんと宇宙の夜空、その果てから銀河連邦の艦隊がやって来たのだ。

「く、クソ……銀河連邦の部隊め、こんな時にやって来ちまったか」

 満身創痍になっているメタルバードが呟くと、続いてゴッド・ドレフも艦隊の存在に気付く。

「フッ、弱小な銀河連邦の部隊め……SO-Xを捕らえる前に神である私が遊んでやるか……」

 不敵な目付きを浮かべるゴッド・ドレフ。

 しかしそんなゴッド・ドレフより先に銀河連邦の艦隊が動き出した。

 艦隊の艦内では、先陣指揮を任されていた艦長が目的地であるB.S.Lのスペースポートに鎮座する巨大で異形なゴッド・ドレフの存在を中央画面で捉えていた。

「な、なんだ!? あの異様なまでの怪物は……アレがSO-Xか?」

「しかし艦長、本部より伝達されたデータには、あの小田原修司のコピーがSO-Xだとの事ですが……」

 艦内所員から報告された艦長は、腕を組んでまるまる考えた。スペースポートに陣取っている巨大な神の存在に……。

 そして艦長は衝撃的な命令を下した。

「うむ! あの怪物をのさばらしておけば、今後の調査や捕獲にも影響が出る! 総員、直ちにあの怪物の排除に専念しろ!」

『イエッサーーッ!』

 艦長からの指示を受けて、総員は直ちに行動に移った。

 そして艦隊はあろう事か、ゴッド・ドレフに向けて遠距離砲撃を開始した。

「撃てーーッ! 撃て撃て撃てーーッ」

 上官の指示がこだまする中、所員は砲撃を連射する。

 しかしゴッド・ドレフには艦隊の砲撃すらも微動だに傷がつかず、それどころかそのゴッド・ドレフの間近にいる満身創痍の聖龍隊に砲撃の余韻が響いてきた。

「あ、あの艦隊……バカな真似を。死ぬぞ……!」

 メタルバードは砲撃を続ける艦隊を制止する為、機械化している自らの身体にある通信機で直接艦隊に訴えた。

「あーー、此方此方、銀河連邦の艦隊じゃが」

「こ、此方、聖龍隊……メタルバード……艦長、急いでその場から逃げろ……」

「む!? 聖龍隊か! 悪いが君らの指示は受け付けるなと上層部からも厳しく言われている。先ほど人工知能から通達が入っている筈じゃが……君たちは民間人を引き連れて、大人しく撤退するようにと……」

「ち、違うんだ、聞いてくれ……! 今、あんたらが攻撃しているのはミラーガールのコンパクトでパワーアップしちまった二次元人で、敵だ……! オレたち聖龍隊が、HEADが総力を挙げて排除しようとしたが、まったく歯が立たなかった……あんた等じゃ死んじまう……は、早く撤退しろ、命が惜しければ……!」

「な、なに!! ミラーガールのコンパクトでパワーアップした二次元人じゃと!? ……!」

 と、メタルバードと艦長が通信で話し合っていると、その時、艦隊が激しく揺れた。

 そう、ゴッド・ドレフが自分に向かって砲撃してくる艦隊に向けて反撃に移ったのだ。

 ゴッド・ドレフは両手と額にエネルギーを集中させて、強力な光線を解き放とうとしていた。

『や、やめろーーーーっ!!』

 そのゴッド・ドレフの暴挙を目の当たりにして、新世代型二次元人たちが抑制するが時既に遅し。

 ゴッド・ドレフは強力な光線を両手と額の三箇所から同時発射して、艦隊を右から左へ砲撃した。

 艦内は忽ち炎に包まれ、爆発寸前にまで至る。

「くぅ……! こ、これが……加賀美あっこの、二次元人の始祖たる力、か……」

 燃え盛る艦内で艦長は、コンパクトの力を身に沁みて痛感しながら果てた。

 そして艦隊は大爆発を引き起こし、跡形も無く宇宙の塵と化した。

「見ろ! 虫けらの命も、最後は花火の様に散ってくれる……!」

 ゴッド・ドレフは艦隊で多くの命が散っていく様を見て、まるで花火の様に美しいと人の死を面白おかしく捉えていた。

 そんなゴッド・ドレフの暴挙に、遂に我慢できなくなった二次元人が暴言を吐いた。

 

 

[絶望する新世代型]

 

「ふ、ふざけんじゃないよ! 人の命をなんだと思ってやがるんだい……!」

「ぎ、ギュービッド様……」「おねえちゃん……」

 ギュービッドの突然の発言に、チョコや桃花たちは騒然となる。

 しかしゴッド・ドレフは自分に対して無礼な発言をするギュービッドを睨み付けながら言い返した。

「ふざけるな、だと……? フン、出来損ないのプロト世代……いや、高等な小田原修司の遺伝子が組み込まれていないプロト世代がよくもまあ言えたもんだ」

「出来損ないで悪かったね! アンタみたいに……アンタみたいに、人の命を何とも思わない偽の神様に言われたって、何とも思わないよ!」

「私が……偽物、だと?」

「あったりまえだ! アッコさんのコンパクトを奪って、その力で自分と同じ新世代型の体を吸収して成り上がっただけのバケモノに過ぎないじゃないか! アンタなんか!」

 ギュービッドは、余りにも人命を軽視するゴッド・ドレフの振る舞いに逆上していた。

 すると、このギュービッドの発言を気に入らないゴッド・ドレフは彼女に向かって手から光線を発射して仕留めようとする。

「あ、危ない!」

 その瞬間、鉄壁の防御を兼ね備えた極制服を着衣している蟇郡苛(がまごおりいら)がギュービッドを押し退けて彼女を光線から庇う。ゴッド・ドレフが放った光線に直撃して軽々と吹き飛ばされてしまう蟇郡。

「ぐはぁッ!」

「が、蟇郡……!」「蟇郡先輩!」「蟇郡、しっかりしろッ」

 ゴッド・ドレフに吹き飛ばされて朦朧とする蟇郡苛(がまごおりいら)に愕然となるギュービッドを前に、彼を心配して満艦飾マコや鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)達が彼に駆け寄る。

 そんなギュービッドを庇って負傷する蟇郡苛(がまごおりいら)を見下ろして、ゴッド・ドレフは嘲笑する。

「愚かな奴だ、神である私の攻撃をマトモに喰らうとは……まあ、流石は私と同じで小田原修司の血筋を受け継いでいるだけの事はあるな。体の頑丈さだけは褒めて遣わそう……クッハッハッハッハ……」

 すると他人を庇って負傷した蟇郡苛(がまごおりいら)を嘲笑したゴッド・ドレフに、今度はプロト世代のチョコが涙をこらえて訴えた。

「……血筋って何ですか。琴浦さん達は……みんなは……誰も望んで、あなたの様な血筋を得た訳じゃない!」

「ちょ、チョコちゃん……!」

 親友である琴浦春香たち多くの新世代型たちは誰もが望んで忌まわしき血筋を得た訳ではないと訴えるチョコに、琴浦春香は戸惑った。

 しかしゴッド・ドレフはそんなチョコの訴えを嘲笑うかの様に悲しき現実を吐き続けた。

「望んでいても、いなくとも……我ら新世代型の血には色濃く、小田原修司という争いの元凶が……純粋な戦いの血が受け継がれている! その事実は変えられないのだよ、お嬢さん……」

 ゴッド・ドレフの話に絶望に打ちひしがれる新世代型たち。チョコはどうにか反論しようとするが、返す言葉が見つからず声を呑み込んでしまう。

 そんな一同に追い討ちをかけるかの如く、ゴッド・ドレフは更に話し続けた。

「君たちも既にタイの製薬企業の地下研究所で知っている筈だ。小田原修司は、D-ワクチンによって高い身体能力と凄まじい回復能力、そして何よりも殆どのウィルスに対抗する細胞を得た。その身体的特徴を受け継がせて、生み出されたのが……他でもない、私たち新世代型だよ。小田原修司の飽くなき力への欲求、そしてそれが伴った争いの系譜は……全て、私たち新世代型二次元人に受け継がれたのだ! 私は、その因果を断ち切るために、自ら進化を欲して神へとなったのだ! この気持ち、どうせ君たちには理解できまい」

「う、ウッセェ! 解ってたまるか!!」

 ゴッド・ドレフの言論に新世代型の真鍋義久が反論するが、ゴッド・ドレフはそんな面々を見下しながら問い返した。

「つくづく愚かな連中だ……だからこそ、君たちは変われないのだ。今までどおりの生活、日常で満足してしまい……生物として最も高等な成長、進化を発揮する事が出来ないでいる。そんな君たちに、後世の歴史を築ける力があるのかね?」

「ッ……!」問い詰められて真鍋は返す言葉を見失ってしまう。

 そしてゴッド・ドレフはそんな言葉を失くす新世代型たちを更に問い詰めた。

「【琴浦さん】のキャラクター達よ。君らは差別ある世界で生きていて本当に満足なのか? エスパーだの、虐待者だのと周りから見下げられ、そんな世界で本当に幸せが掴めるのかね?」

『………………………………………………………………』

「【リトルバスターズ!】の諸君! 正義だの悪だのと抜かしながら、弱小な力だけの君たちが本当に正義を語れられるのかね? 正義とは所詮、力あるものしか唱えられない言葉なのだよ!」

『………………………………』

「斉木楠雄よ。君は自分を偽っていて本当に満足なのか? 無二の親友にも真実を隠し通し続ける友情が、果たして本当の友情だとでも言うのかね?」

「………………………………」

「かつての小田原修司と同じく争いの中でしか進化・成長できないでいる【ダンボール戦機ウォーズ】の諸君! 君らはあのセレディ同様、所詮は争いの中でしか自分を見出せないでいる哀れな劣等種に過ぎないのだよ! 偽りの平和、それを保持するしかできないでいた小田原修司と何ら変わりはない!!」

『………………………………』

「纏流子、いや【キルラキル】の諸君……君たちは生まれ持った時点から、自ら人を捨て、異形のバケモノへと堕ちた小田原修司と同族なのだ!」

『………………………………』

「【食戟のソーマ】の諸君、食を彩るといいながら……その反面、食という平和的な文化を下らぬ言い争いや論争で穢しているのは他でもない自分達自身である事に何故気付かない!」

『………………………………』

「ありふれた日常を延々と過ごすだけが、人生の糧、歩みに繋がると思っているのかね? 【ゆゆ式】のレディー達」

『………………………………』

「例え、どんなに争いの悲劇を語り継こうが、自分達こそ争いの元凶……力の象徴であり、力で全てをねじ伏せる小田原修司の後継者だという事にまだ気付かぬか、【ガンダムビルドファイターズ】の諸君よ……」

『………………………………』

「どんなに夢や希望を望もうと……その夢や希望をも一瞬で破壊してしまう鬼神の末裔である事実に酔い痴れないか? 【ジュエルペットハッピネス】の子供達……」

『………………………………』

「いくら輝きを放とうと、過去に自分達が犯した過ち……罪という穢れからは逃れぬことは出来ぬ! そう、あの法月仁の様にな……! 【プリティーリズム・レインボーライフ】の諸君」

『………………………………』

「どんなに人間面、いや二次元人面していても、その内面ですこぶる鬼神の破壊性と残忍性からは逃れられぬのだよ。【境界の彼方】の4人よ」

『………………………………』

「平和な日常を送っていても、その血筋に眠る戦いの本能……残忍な破壊性は隠し通せぬのだ! 【のんのんびより】の子らよ」

『………………………………』

「競い合う種目が……方法が違うだけで、争い続ける闘争本能までは抑え切れないであろう! 【弱虫ペダル】の青年たち!」

『………………………………』

「既に非日常的な文化を……交流を求めている時点で、かつて二次元界という異界を求め続けた小田原修司と同じなのだよ、【きんいろモザイク】の少女たち」

『………………………………』

「異文化交流……? フッ、そんなもの……全てを破壊し尽くす鬼神の血筋の前では無意味なのだよ! 【彗星のガルガンティア】の諸君!」

『………………………………』

「マギウスの様に、ヴァンパイアをモデルに生み出された以前から……私たちは吸血鬼よりも末恐ろしい鬼神の血を色濃く反映させられているのだよ! 【革命機ヴァルヴレイヴ】の諸君!」

『………………………………』

「未知なる文化、未知なる世界……それを求める探究心、それこそ! 何を隠そう、鬼神小田原修司の本筋なのだよ【アウトブレイク・カンパニー】の諸君!」

『………………………………』

「誰もがヒーローになれる世界? フッ、そんなものは夢物語だ。ヒーローというのは所詮、悪という立場がいてこそ成り立つ象徴の様なもの……そして破壊の化身たる小田原修司は今の私同様、善も悪も超越した絶対的なる存在! まあ、君たちはそんな存在にも成り上がれないだろうがな、【ガッチャマンクラウズ】という二世ヒーローの諸君」

『………………………………』

 目前の新世代型二次元人たちに暴言を吐き続けるゴッド・ドレフだが、そんなゴッド・ドレフの言い分に新世代型たちは何も反論する事で出来なかった。

 そして最後にゴッド・ドレフは新世代型達に向けて、こう告げた。

「進化とは、犠牲の上に成り立ってこその進化! いや、それ以前に我々は二次元界を思い通りにしようとした小田原修司……奴が仕掛けた奪い合い、殺し合う為のゲームの駒なのだよ!」

 

 自分達はあの小田原修司のクローン、代用品でしかないのか。

 偽りの平和のために自ら争いの道具へと成り果てた人間兵器、小田原修司。

 そんな小田原修司と同じなのかと自問自答を繰り返し、頭の中を真っ白にする新世代型たちを励ませる言葉は見付からなかった。

 

「……それじゃ…………私たちの戦いは……物語は……いったい……何のために……!

 親友である琴浦春香たちを励ます言葉が見当たらず、困惑し続けるプロト世代のチョコたち三人が悲しく焦燥していた。

 その時。

「それは違うわ!」

 一人の気高い女性の声が現場に響いた。

 皆が声のする方へ顔を向けると、其処にいたのは先ほどのゴッド・ドレフの戦闘に巻き込まれてボロボロに成り果ててしまっている加賀美あつこだった。

「アッコさん……?!」

 満身創痍になりながらも、必死に立ち上がり歩み寄ってくるアッコの姿を目撃して困惑する琴浦春香。

 そしてアッコは傷だらけになりながらも、懸命に皆の前まで歩み寄っていくと必死に訴えた。

「それは違うわ、みんな……! 確かに私たち、HEADは……いいえ、聖龍隊の戦前で活躍する隊士たちは、あなたたち新世代型二次元人が修司の遺伝子を反映されて生み出されたクローンに近い生命体だって事を隠していたわ。でも、それは……みんなが、いいえ、世間が修司に対して誤解していたからなのよ!」

「誤解、だって……?!」

 アッコの訴えに疑問視する真鍋義久の言葉に、アッコは力を振り絞って熱弁した。

「確かに修司は戦う為の力を欲して……弱い自分を心から嫌ってしまった為に力を、D-ワクチンという異形の力を得てしまった。それからはその力を盾に国連所有の兵器に身を落としたり、戦争抑制力という皮肉な大義名分を背負わされたりしたわ。でも、それは全て修司が心から平和を望んでいたからなのよ!」

 アッコは更に語り続ける。

「修司は単に力を欲しただけじゃない。みんなを……私たちを守れる力が純粋に欲しかっただけなの! 自分を鬼神と恐れられる存在に見せ付けたりして、周りと距離を置くように仕向けたのも、全部修司の作戦だったのよ! ドレフの言うように……修司は冷酷非情な……ただの鬼じゃないの!」

「アッコさん…………」

 アッコの必死の訴えを聞いて、瀬名アラタたち新世代型たちは息を呑み込んだ。

 と、その時。巨大なゴッド・ドレフの手がアッコに襲い掛かった。

「きゃあっ!」「アッコさん!」

 ゴッド・ドレフの巨大な手に弾かれてしまうアッコを見て、直枝理樹が声をあげる。

「何しやがるんだい!」

 と、ここで黙っていられなかった纏流子がゴッド・ドレフに斬りかかるが、ゴッド・ドレフは片太刀バサミでの斬撃を喰らいながらも瞬く間に傷口が塞がってしまう。

「…………フ、素晴らしい力だ……」

 自らが手に入れた驚異的な再生能力に惚れ惚れするゴッド・ドレフは、自分に斬りかかった纏流子を初めとする同等の新世代型二次元人たちに言った。

「無駄だ無駄だ、やめたまえ……神の前ではあまりにも非力すぎる」

 戦力的にも絶望的な差を見せ付けるゴッド・ドレフの驚異に尻込みする新世代型二次元人の皆々。

 誰もが絶望的状況に愕然とし、ゴッド・ドレフの意のままに全てが運ぶと思われたその時。一人の少女がゴッド・ドレフに向かって言った。

 

 

[二次元人の未来]

 

「……私は信じる……」

「え?」「ちょ、チョコちゃん……?」

 突然何を言い出すのかと、ギュービッドや琴浦春香たちがチョコに視線を送ると、チョコは力強い眼差しでゴッド・ドレフに言い放った。

「私は信じる、いえ、信じたい! アッコさんや聖龍隊の人たちを……どんなに傷つこうと、どんなに私たちを欺こうと……最後は私たちを明るい未来へ誘ってくれる事に……!」

 皆がチョコの言動に唖然としている中、チョコは語り続けた。

「今まで、アッコさんや聖龍隊の人たちが語ってくれた小田原修司の武勇伝……いえ、真実は確かに悲劇的な経歴もあった。私たち二次元人を守るため人間兵器にまで成り下がった過去もある。……だけど、聖龍隊の色んなヒーロー、ヒロイン達……セーラームーンにキューティーハニー、木之元桜さん……魔法騎士にコレクターズ、ナースエンジェル、ちせさん……そしてメタルバードにジュピターキッド、ウォーターフェアリー……何よりミラーガール! その人たちが心から信頼できた小田原修司が決して間違った人だなんて私には思えない!」

「……それが、どうした……」

 厳つい形相でチョコを見下ろすゴッド・ドレフからの問い掛けにも動じず、チョコは力強くも輝かしい瞳で答えた。

「……! 聖龍隊の……多くのヒーロー、ヒロイン達が信じてきた小田原修司がしてきた事が……果たして本当に正義だったのか、良心があったのかは子供の私にはまだ理解できない! けれど、彼には信念があった……未来を想い描く力強い意志があった……そんな小田原修司から生み出されたという新世代型を、私は恐れない……少なくとも、ここにいる多くの新世代型は……ドレフ! あなたの様な卑劣な二次元人じゃないわ!」

「チョコちゃん……」「チョコ……」

 チョコの言葉一言一句に淡い感動を覚える三舟百合子に真鍋義久。

「いえ、それ以前に……! 私は、私だけでも新世代型の人たちの味方になる! たとえ、鬼神の申し子と呼ばれて蔑まれようとも……鬼の遺伝子を兼ね備えている二次元人だろうと……私には、みんな……掛け替えのないお友達だから!」

「ちょ、チョコちゃん……っ!」

 更にゴッド・ドレフに強く語り掛けるチョコの話を聞いて、琴浦春香は嬉しさの余り涙を流して絶句した。

 すると、そんな一人でいきり立っているチョコの熱弁を聞いて、二人の二次元人がチョコの両脇に歩み寄って彼女の肩を軽く叩くと笑顔で言った。

「私だけでも、だって……? な~に自分一人でカッコ付けちゃっているんだい、まだまだ半人前の黒魔女のくせにさっ」

「ぎゅ。ギュービッドさま……」

「おねえちゃん! 自分だけだなんて水臭い。私たちも一緒なの忘れないでよっ」

「桃花ちゃん……っ」

 チョコだけでなく、自分達も新世代型の味方につくと優しくも力強く声をかけてきたギュービッドと桃花・ブロッサムの台詞に、チョコは静かに感銘を受け、淡い笑顔を浮かべた。

 すると、そんな三人と同等のプロト世代も前に歩み出して言い切った。

「君たちだけじゃない、この僕がいる事を忘れないでくれ。アラタたちの……いいや、この場にいる全ての新世代型たちには危険性どころか、未来への可能性が無限に存在しているんだ! ……ドレフ将校! あなたみたいに私利私欲に溺れた、神を名乗る異常者と彼らは違うのだよ!」

「じ、ジンさん……!」「ジン……!」

 チョコたちと同等のプロト世代である海道ジンの賛同に、瀬名アラタや美都玲奈たち【ダンボール戦機ウォーズ】の面々は感激した。

 更にチョコたち4人のプロト世代からの激励を受けた新世代型達に、メタルバードがテレパシーで自分たち聖龍HEADの励ましを頭の中に直接訴えた。

(……あきらめないで)

(お前達の戦いは、まだ終わってはいない)

「!? …………」

 ジュピターキッド、メタルバードの心への直接の訴えに悲壮感の中で動揺する琴浦春香たち新世代型。

(私たちは、決してあなた達を復習者や破壊の権化にするために、今まで力を貸していた訳ではないの……)

(怒りに身を任せて、相手を殴って終わりなんて子供のケンカをやっている訳じゃないのよ)

(アツくなっちゃダメ……力任せに泳いでも、水を濁すだけよ)

(例え闇の中にあろうと、目指すべき光を見失ってはいけないの……)

 セーラームーン/キューティーハニー/七海るちあ/ちせの4人のHEADからの台詞に、新世代型達は次第に我を取り戻していった。

(君達の力は、破壊の……まして憎しみの力なんかじゃない……)

(本当の力……本当の勇気は……まだ……あなた達の中にある……!)

(自分を……信じろ!)

 そして再度ジュピターキッドが、そしてウォーターフェアリーにメタルバードが新世代型に呼び掛ける。

 

 すると、そんなチョコたちや満身創痍で倒れている聖龍HEADの激励を受けて失意のどん底にいた新世代型たちに変化が現れた。

「……そうよ、私はもう怖くない! 確かに私は、自分の心を読む能力で一人で苦しんできた。だけど、今はその能力を知っても友達でいてくれる掛け替えのない人たちが周りにいる!……私はもう、独りじゃない。だから何も恐れず生きていけるの! この先も、その友達と一緒に……鬼神の申し子だとか何だとか後ろ指を刺されて生きてしまっても……私は行き続ける!友達と生き続けて見せるわ!」

「私も……今さら、こんな事言えた義理も権利もないのは重々承知してるわ。だけど最後かもだからハッキリと言わせてもらうわ! ……私は娘を、周りの迫害から守ってあげられず、周りに合わせて自分も娘を迫害するように至ってしまった毒親。こんな私に未来を生き抜く権利なんて、そうそう無いのかもしれないけど……もし共に生きてくれると娘が、その周りの人たちが許してくれるなら……! 私は贖罪のためだけにこれから生き続けていくわ!」

 琴浦春香と琴浦久美子の今まで蓄積された想い。それを全て吐き出した親子の間に、もはや亀裂など存在しなかった。

「僕達も……聖龍隊と一緒にいて、本当の正義や悪が何なのか、ホンの少しだけど学べた気がしました! これからは自分達の未来のために……少しずつですけど、自分の意志で未来を切り拓いてみせる!」

 直枝理樹たち【リトルバスターズ!】は今まで聖龍隊から聞き入れた話から少しばかりの教養を身につけ、たとえ鬼神の申し子と呼ばれようとも自分達の意志で未来を切り拓く覚悟を唱えた。

「僕も、親友の燃堂にはもちろん、周囲に自分の事を隠しながら孤独に生きてきた! でも、これからは違う! 同じ境遇、同じ鬼神の子として生まれてしまった新世代型の二次元人たちと少しずつ……少しずつ、本当の意味で解り合いながら前に向かって歩んでいこうと心に決めた! これからは親友の燃堂にも少しずつ語り明かしていくつもりだ」

「お、俺もさ……正直、またアンタの……ドレフさんの言っていることにも、周りの事もまだ上手く把握できていねえ状態だけどよ……でも! こんなバカな俺でも解る事は一つ! ドレフ、あんたが悪人だって事さ!」

 力強く己の半生を語り明かす斉木楠雄に、知能の低い自分でもドレフが完全に悪人だと理解したと力説する燃堂力。

「オレ達は確かに争いの……世界の紛争を疑似体験する代理戦争を今までずっとやってきた! その戦争も、オレ達が新世代型という人間兵器だった小田原修司のクローンに近いからプレイさせられていたのかもしれない……だけど、自分達の未来まで他人に決められる筋合いはない! ドレフ、あんたのクソッタレな野望は、きっと聖龍隊の、本物のヒーロー達が討ち滅ぼしてくれる筈ッ!」

 黒鳥千代子が自分達に唱えた言葉通り、自分達もまた聖龍隊の戦士達を信じようと頑なに決心する瀬名アラタたち【ダンボール戦機ウォーズ】の面々。

「アタイも……結局は鬼神から生み出された異形の怪物だって事か……でもなぁドレフ! 同じ新世代型でも徹底的に違う所が、アタイらとアンタにはある! ……アタイらは神様を気取ってクソ生意気にこの世の全てを支配するだなんてイカれたキチガイ野郎みたいには成らねえ! それが進化だっていうなら、コッチからお断りだあ!!」

 物凄い剣幕と怒号でゴッド・ドレフに叫び付ける纏流子だけでなく、【キルラキル】の一同はゴッド・ドレフを睨み付けていた。

「ドレフ! 確かにアンタの言うとおり、俺たちは過去に食の事について色々と揉めたり、中には卑劣な真似をして食戟そのものを穢した過去が山のようにある……けれどな! その果てにある創られし食への欲求までは……神様になったアンタでも消せはしねえぜ!!」

 研ぎ澄まされた包丁の如き鋭い眼光でゴッド・ドレフに啖呵を切る幸平創真の熱々とした台詞を聞いて、【食戟のソーマ】のキャラ達は誰もが力強い面魂をゴッド・ドレフに向ける。

「私たちだって……もう十分すぎるほど非日常的な思いはしました!」

「だけど、その中でも新しい友情が芽生えたり、出会いがあったり冒険があったり……楽しい毎日を送れました」

「此処にいるみんなとの巡り会わせが、たとえ鬼神小田原修司から繋がっていようとも……私たちは、この出会いを大事にしたい!」

 巡り合い、出会い、新しい友情やまだ見ぬ世界への冒険を、目を輝かせながら次々と説く【ゆゆ式】の野々原(ののはら)ゆずこ/櫟井唯(いちいゆい)/日向縁(ひなたゆかり)の三人。

「ドレフ将校……たとえ、僕達がいくら争いの悲劇をガンダムを通して語り継ごうとしても……僕達自身が争いの象徴であった小田原修司さんと同じ血を授かった以上、争いの悲劇を語り継ぐ事はできないのかもしれません……ですけど、それでも! 僕は信じたい、ガンダムという存在から人々が少しでも争いの悲劇や理不尽な現実があること……そして、戦争がなんで起こってしまうのかを、僕達なりに少しずつ後世に遺していきたい!」

 ガンダムという、美しい機体を持ちながらも戦争の道具として使われる代物から戦争の悲劇などを少しでも後世に語り継いで遺していきたいと力強く唱えるイオリ・セイたち

【ガンダムビルドファイターズ】の面々。

「夢を追いかけること、それが同時に茨の道に足を踏み込む事だってことは、もう解っています! でも、どんなに茨の道を突き進んでも、その先には必ず光差す未来が待っているんだと、私は信じています……」

 月影ちありからの熱くも優しい訴えに、他の【ジュエルペットハッピネス】の子供達も息を呑む。

「私たちは確かに過去に多くの過ちを犯しました……時には、人の、大切な人の心を深く傷つけてしまった事もありました。だけど! みんな、それぞれの過去の贖罪を背負いながら今を一生懸命に生きている! その意志まで否定する権利は……ドレフ! あなたにはないわ!」

 彩瀬なるの力弁に、他の【プリティーリズム・レインボーライフ】の面々は衝撃を受けながらもなるの意見に賛同する。

「私は鬼神の子供だと知る前から、自分を異端……普通じゃないと感じて生きてきました。けれど、今はもう、鬼の血も怖くない。だって私には……自分を孤独の殻から救い出してくれた掛け替えのない友達がいるんだから!」

 栗山未来の熱弁を聞いて、他の【境界の彼方】の三人は未来の言葉に頷いた。

「私たちだってみんなと同じ気持ちです! ドレフ将校、あなたが言うように私たちの中には鬼神の残忍な血が流れているのかもしれないわ! だけど、それでも私たちを信じてくれる人が一人でもいてくれるのなら……私は、いえ、私たちは前を向いて生きていけます!」

 思いの丈を全て吐き出すように唱えた一条蛍の優しい言葉に【のんのんびより】の面々は自然と笑みを零した。

「僕たちの身体能力は争う為のものじゃない! 此処にいるみんなと僕らは同じ……僕は、僕達はこの足で、身体で、頂上まで駆け上ろうと皆で決心したんだ! 争いの血筋じゃない、自分達の闘争本能が、僕たちにペダルを漕げと訴えているんだ!」

 白熱した眼差しでゴッド・ドレフに言い寄る小野田坂道の力強い言動を目の当たりにして、他の【弱虫ペダル】の面々も坂道の台詞に愕然とさせられるものの同意する。

「ワタシたちも同じデース! 他国、異世界との交流の先に新しい出会いが! そしてフレンドがいると心から信じられマース。ミスタードレフ、あなたの戯言はもうみーんな聞き飽きてしまっているんですヨっ」

 アリス・カータレットからの指摘に対して表情を強張らせるゴッド・ドレフの反応を見た【きんいろモザイク】の面々は少し微笑してしまった。

「俺は以前から非生産性のない行為はそれこそ無駄だと思っていた。だが、今では皮肉ながらも同じ鬼神の血を引いた新世代型の連中から学べた……生産的ではない行為もまた、人のな流れを、流通を育んでいる人間性のある行為だという事を。それを学ばせてくれた新世代型と俺が同じなら……まあ、別に気にしない程度の問題だろう」

 非生産的な人の行為に対して色々と学べたと説く【彗星のガルガンディア】のヨドの言葉に、他の一同も納得する。

「俺たちはマギウスとして生を受ける前から、すでに吸血鬼ではない鬼神の遺伝子が組み込まれているのか……だが、それでも俺たちは歩みを止めない! マギウス、鬼神、両方の鬼の血を背負って、みんなと共に生き抜いてやるぜ!」

 全ての宿命を背負って、友と共に生き抜いていこうと決断する時縞ハルトの言動に、他の【革命機ヴァルヴレイヴ】の面々は励まされた。

「異文化交流ならコッチだってやってみせらぁ! 鬼神だろうが、鬼婆だろうが、そんな宿命みんなで背負えば怖くはないぜ!」

 この加納慎一からの台詞に、【アウトブレイク・カンパニー】の面々は激励された。

「ボク達は、確かに二世ヒーロー……先代のガッチャマンの人気から肖っているだけのヒーロー、それは否定しないっす。だけどねドレフさーーん……ボクたちが紛れもないヒーローだって事実はどうなるのかな? ヒーローの本分、それは悪党を……あんたみたいな気の狂った神様気取りの悪役を排除するって事っす!」

 一ノ瀬はじめは身体の各所から隠し武器である文房具にも似た武器を取り出すと、ゴッド・ドレフに臨戦態勢をとった。このはじめの行動に、他の【ガッチャマンクラウズ】の面々も同じく臨戦態勢に入る。

 そして最後に、新世代型の二次元人たちはゴッド・ドレフに向かってこう言い放った。

 

『神様になんか……成らなくなったって良い!』

 

 そんな各々の未来への想いを説き明かした新世代型たちを前に、ゴッド・ドレフは嘲笑しながら吐き曝した。

「……フ……フハハハハハ! 何をほざくと思えば……所詮、変身能力……進化の力を封じられた、哀れで欠点だらけの劣化種の分際で……」

『………………………………』

「所詮貴様らは高等な能力、変身能力を封じられただけの忌まわしき欠陥品……! そんなお前達が神である私の目の前に存在しているだけでもヘドが出るわッ!」 

 すると次の瞬間、ゴッド・ドレフは巨大な腕を高々と振り上げて新世代型たちに言い放った。

「消え失せろッ! 欠陥品ども!」

 新世代型二次元人たちがゴッド・ドレフの巨大な手に押し潰されそうになる、その瞬間。

 先ほどゴッド・ドレフに弾かれてしまったアッコが、新世代型たちの前に颯爽と飛び出して、身を挺して彼らを庇い立てする。

「あ、アッコさん!」「無茶だ、その傷じゃ……!」

 目の前で自らの体を盾代わりにしようとするアッコに、彼女の満身創痍な状態を目の当たりにした棗鈴や井ノ原真人(いのはらまさと)が呼び掛けるが、アッコは彼らの前から微動だにしなかった。

「クックック……加賀美あつこよ、貴様はコンパクトの力を失っても、未だに弱者を庇うのだな」

「そうよ、ドレフ……私は、私には戦意というものが余り存在していない。だから、こうして未来への架け橋たる若者達を守るのが、私の選んだ信念……!」

「クハハハハハハ……愚かだな、加賀美アッコよ……! せっかく君は私のように神にも成れる力を持っていたのに、それを活用しないどころか、弱者ばかりを守る道を選ぶとは……だから君は進化できなかっただけでなく、力が弱いくせに全てを守りきろうと兵器にまで堕ちた小田原修司を救えなかったのだよ……!」

「……そうよ、その通りよ! 修司が狂気に走ったのも、彼が破壊と暴力のみに捕らわれ続けたのも……全てはそんな修司を救えなかった私の責任! だから、そんな修司の血を望まずとも受け継いでしまった新世代型二次元人を守るのも、私の責務……!」

『………………………………』

「クハハハハ! そうか、小田原修司が狂気に堕ちたのも、全ては自分の責任と捉えている訳か、加賀美あつこ……それならこの私、そこで君が庇っている無力な欠陥品ではない、高等な神である私の方を守るのが必然だと思わないのかい? そんな変身能力も奪われた欠陥だらけの連中より、遣り甲斐があると思うぞ……」

「……あなたは、まったく大事な事を解っていない!」

「ッ?!」

「この子達には可能性がある、未来を変える事が出来るかもしれない無限の可能性が……! 可能性がある限り、未来は変えることが出来るのよ。私は、可能性ある未来を潰させる訳にはいかない……例えそれが、どんな相手であろうと、立ち止まる訳にはいかないの! 新世代型の人たちには、これから出生や理不尽な現実でたくさん苦しむ事があるのは私にだって目に見えている……それでも、大事なのは過去じゃない、未来なの。未来を育み、今を懸命に生きている人にこそ、現実(いま)を生きる権利があるのだと私は思う……!」

 アッコの台詞の数々を聞き、微笑を浮かべるゴッド・ドレフに対して黙然と聞き入る新世代型たち。

 すると俄然と新世代型たちの前から一歩も動こうとしないアッコを前に、ゴッド・ドレフは振り上げた手を動かしていった。

「ならば望み通り死ね! 力を失った哀れな始祖よ……!」

 ゴッド・ドレフが力を失ったアッコ共々、自分とは違い変身能力を失った新世代型二次元人たちを総攻撃しようと巨大な手を叩き付けようとした。

 

 

[形勢逆転]

 

 が、その時。

「ぐおおおッ?!」

 突然、ゴッド・ドレフの額が砕け散ったのだ。そこはミラーガールのセイントコンパクトが埋め込まれている箇所だった。

 この突然の事態に、アッコも、そのアッコに庇い立てされそうになっていた新世代型たち、更に先ほどゴッド・ドレフに痛め付けられ満身創痍になりながらも朦朧としていた聖龍隊と赤塚組の面々も突然の事態に目を見開いて愕然とした。

 ゴッド・ドレフの額を覆ってた水晶の様な膜が砕け散り、その中から一人の恰幅のいい男の影が薄らと視界に捉えられた。

 その男は、巨大な道具と共に宇宙空間から落下してきて、道具でゴッド・ドレフの額を叩き割ったみたいだ。

 そして叩き割った額から、ドレフが取り込んだセイントコンパクトを持って颯爽と地面へと下りて、皆の前にその全貌を現した。

「……ヨッ、みんな! 久しぶりだな」

 その厳ついスキンヘッドという風貌を見せ付ける、その男を前にして赤塚組の特に大将が驚いた。

「し……しょ…………将吉!?」

「へっへ、あんちゃん、久しぶりだな」

 宇宙空間から巨大ハンマーを携えて落下してきた上に、ゴッド・ドレフの水晶の額に埋め込まれたアッコのコンパクトを取り返してくれたのは、他でもない地球に滞在させている赤塚組の本隊の統括を任されている筈の大将の弟、赤塚将吉であったのだ。

「し、小将……あなた、なんで此処に??」

 アッコが目を見開いた丸い目で訊ねると、小将は真面目な血相で訳を語った。

「はっは! 嫌ね、赤塚組の百鬼命義で荷積みのチェックをしていた所によ……謎の怪文がパソコンに送られてきたんだ。拝読してみっと、それは今現在、あんちゃん達を指揮している筈の人工知能からだったんだ。そこには今、B.S.Lで起きている全てが記されていて、聖龍隊と赤塚組のピンチだって報せだったもんだから、おいら慌てちまって……まあ、それで早速宇宙への助け舟を捜し求めている所を、あのガキに助けられたって訳さ」

「?? あのガキ、だって……?」

 小将の言い分に実兄の大将は訳が分からず困惑するばかり。

 すると宇宙の果てから、先ほど小将を降ろした飛翔体が高速でUターンして帰ってきた。

「よっ、少年! 赤塚組からの荷物、全部下ろしてくれッ」

「オッケイ!」

 小将が声をかけて機体から顔を乗り上げて返事したのは【超速変形ジャイロゼッター】の轟駆流であった。

「あの小僧と鉢合わせして、そんで説明してくれたら乗せてってくれたのよ。信じられねえが、未来から帰って来たんだと」

 小将は少年轟駆流が未来からの帰りに、偶然にも小将と鉢合わせした事からB.S.Lにまで乗せてくれたらしいという。

 そして小将は、降ろされた荷物を辺りに転がすと、実兄である大将たち赤塚組の幹部衆に声をかけた。

「さあ、あんちゃん達! 弾薬は新しく持ってきてやったぜ! これでいっちょ派手に暴れてやろうじゃないか!」

「しょ、小将……」

 自分達を励まそうとしているのか、満身創痍の自分達に言葉を掛けてくる小将の気持ちに応えたいが、傷だらけの疲労が蓄積された身体では思う様に身動きが取れずにいる大将たち。

 そんな中、小将は此処まで自分を運んでくれた轟少年に向かって笑顔で声をかけた。

「ありがとなーー、少年!」

「ああ! ゼツボー的に、決まったぜ!」

 小将の掛け声に、轟少年は決め台詞を残して、その場から去っていった。

「しょ、小将……」

「あんちゃん、それにみんな! 話すのは後回しだ! 今は、あのバカでかい怪物を倒すのが先だろ?」

 何の事情も知らない小将に、詳しい経緯を語ろうとする大将。だが小将は話を後回しにして、まずは目の前のゴッド・ドレフを倒すのが先決だと返す。

「ふぅ、さてと。どういう事が起きているのか、まったく分からねえが……アッコねえちゃん、ほら、コンパクト」

「あっ……」

 小将は突撃の際にゴッド・ドレフから取り返したコンパクトをアッコに手渡した。唖然としてしまうアッコに小将は笑顔で言った。

「やっぱ、アッコねえちゃんにはコンパクトがなくっちゃな!」

「小将……!」

 アッコは小将の言葉に感銘を受け、そして力強い面差しを浮かべると手渡されたコンパクトを左腕に装着した。

「今だ! 今なら奴のパワーも弱体化してるかもしれねぇ……倒すなら今だ!」

 コンパクトの力を失ったゴッド・ドレフを目の当たりに、メタルバードが能力が弱体化したゴッド・ドレフに反撃を試みようと提案する。

 そしてアッコは、取り戻したコンパクトの力で瞬く間にミラーガールに変身すると、力強い面魂をゴッド・ドレフに向けて言い放つ。

「ドレフ!」

 

 吸収したセイントコンパクトの力を失ったゴッド・ドレフは、苛立ちを感じていた。

「小ざかしい奴らだ……! 神の力を思い知るが良い……!!」

 ゴッド・ドレフはコンパクトを奪われた事で、鉄壁の防御力と驚異の再生能力を失いつつも、奇襲攻撃を仕掛けようと手の平から光線を発射してきた。

 満身創痍の聖龍隊に光線が直撃する寸前、ミラーガールが盾に変化させたコンパクトから巨大な光の壁を発生させ、光線をはね返した。

「ぐぬぬ……ッ」

「此処からが本当の勝負よ、ドレフ……!」

 焦燥するゴッド・ドレフに対し、ミラーガールはミラー・シールドを身構えて真剣な顔付きを浮かべる。

 そしてミラーガールは、自身を中心に五芒星の魔法陣を形成した。

「ほほう……それがミラーガールとしての力か……それで? その魔法陣で私に何をする気かね?」

 ゴッド・ドレフの問い掛けに、ミラーガールは力強く返答した。

「私の能力は基本的に、戦いの為の力じゃない……! みんなを守る、みんなを支える……最強の支援能力! それが私の、セイント・コンパクトの力!」

 そう唱えるとミラーガールはミラー・シールドを前に構えて、強く想いを念じるとシールドが光り出した。そして一つの淡く蒼い光が飛び立つと、それが満身創痍のナースエンジェルの元へと飛び立った。

「……思い通りにはさせんぞ……!」

 と、ここでゴッド・ドレフがミラーガールの思惑通りに事を運ばせぬよう、蒼い光を受けるナースエンジェルに攻撃を仕掛け、無防備な彼女を葬ろうとする。

 しかしゴッド・ドレフの攻撃はミラーガールが解き放った光の壁で防がれてしまい、ナースエンジェルに損傷を与える事はできなかった。

「なにッ?!」

「言ったはずよ。私の能力は完璧な支援……サポートが主な能力だって。サポートを受ける仲間の身も守れないようじゃ、意味がないわ」

 動揺するゴッド・ドレフにミラーガールは自信に溢れた表情で説く。

 そして一方の、ミラーガールの蒼い希望の光を受け取ったナースエンジェルは、その姿を一変させた。

「ナースエンジェル ピュアホワイト ……天よりの誓い!」

 ナースエンジェルは伝説のピュアホワイトへと姿を変えて、完全な状態で復活していた。

「こ、これが……アッコさんの……いや、ミラーガールの力!」

 満身創痍のヒロインを、伝説のヒロインへと姿を変えさせるミラーガールの能力を目撃して、新世代型たちは一驚する。

 そしてミラーガールの想いを受け取り、姿を変えたナースエンジェルピュアホワイトは、己の力を最大限にまで上昇させて祈りの力を天に向かって放った。すると、彼女の祈りの想いが光のシャワーとして戦前に降り注ぎ、満身創痍で傷つき倒れている多くの聖龍隊や赤塚組の仲間達の傷を回復させた。

「き、傷が……傷が完全に消えている!」

「わあ! りりか、ありがとう!」

「これだ! これが、ナースエンジェルの本領だ!」

 全身の傷が完治した状況に大喜びするアツシと親友のナースエンジェル/りりかに感謝を述べる水原花林。そしてこれこそナースエンジェルの本領だと舞い上がる大将。彼らや回復した仲間達を見て、ナースエンジェルピュアホワイトは喜びの笑顔を浮かべた。

 と、そんな喜々とする戦前の皆々に、ゴッド・ドレフは巨大な手で払い除けて攻撃を仕掛けようとしてきた。

「させないよッ!」

 だが、そこに新世代型の蛇崩乃音がミサイルで迎撃してゴッド・ドレフの攻撃を未然に防いだ。

 気がつくと、蛇崩だけでなく、多くの戦闘タイプの新世代型が戦前に飛び出していた。

「お、お前ら……!」

 危険だから離れるようにと言いたかったメタルバードだが、その前に新世代型への罪悪感から掛けてやる言葉が見当たらずに一瞬戸惑う。

 だが、メタルバードは意を決して彼らに言葉を掛けた。

「お前ら、危険だ! ここはオレ達に任せて退くんだッ」

 すると、これに鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)がメタルバードに反論した。

「できません!」「! ………………」

「メタルバード殿、貴殿ら聖龍隊が隠蔽してきた秘密を知った以上、我々は此処で退く訳にはいきませぬ……! 確かに母上や多くの新世党の思想は間違っていました……ですが誰も、あのような怪物を望んではいなかった! 我々が鬼神小田原修司の申し子という血縁は後々語り合えばいい……今はまず、この神を気取ったキチガイ野郎を成敗せねば!!」

 威風堂々とした皐月の物言いに何の反論も返す事ができないメタルバード。

 すると皐月に続いて、他の新世代型たちもメタルバード達に唱えた。

「アタイや未来……それに、他の新世代型も結局は生まれ付き人間じゃなかったって真実は驚かされた。けど、今はそんな難しい事を考えている暇はねえ! このムカつく野郎を叩きのめしてやらねえと……!」

「私たち、今は悩んでいる暇がないのだけは解っています! 後で色々と聞かせてもらいたいですが、今はとにかく、ドレフを倒してみんなで地球に帰りましょう!」

 纏流子と栗山未来に続き、斉木楠雄と一ノ瀬はじめも唱え始めた。

「僕も色々と聞かせてもらいたい……僕や燃堂、そして他の多くの新世代型たちが鬼の血を引いてしまった、その因果。でも今は、みんなで早々に帰る為にもゴッド・ドレフを倒すのが先決です……!」

「色々とみんな、思うところはあると思うっすけど……今は考えるより、行動あるのみっす! みんなで笑顔で地球に帰る……これが大事っす!」

 こんな新世代型二次元人たちの力説を聞いて、愕然となるメタルバードだが、同時に彼らの勇気にも感化された。

「お前達……!」

 すると此処で、しばし状況を傍観していたゴッド・ドレフが不敵な笑みを浮かべて言った。

「フ……無駄な事を」

 このゴッド・ドレフの言動に、聖龍隊に赤塚組そして新世代型たちは覚悟を決めた。

「聖龍隊……赤塚組と新世代型と協力して、ゴッド・ドレフを倒すぞ!」

 メタルバードの意志がこもった台詞に、戦前の皆々も力強く頷いた。

 

 

[神との決着]

 

 ゴッド・ドレフに奇襲の突撃を仕掛けた小将によってセイント・コンパクトを奪還したアッコは、即座に変身した後に聖なる力で満身創痍のナースエンジェルをナースエンジェルピュアホワイトに変身させて、他の満身創痍な仲間達を回復してもらった。

 怪我が完治した一同は、自分達が小田原修司のクローンに近い種族だと知ったにも関わらず、決意を新たにした新世代型たちと共にゴッド・ドレフへと最後の戦いに挑んだ。

 

「みんな! 私に任せて……!」

 するとミラーガールは、背中に水晶の様な透明な羽を生やして空中に浮かぶと、更にコンパクトであるミラー・シールドに祈りを捧げた。

「おのれ……! 神の力を見ろ……!」

 再び躍起になる戦前の勇士達を見て、ゴッド・ドレフは重力を操作して全員を闇へと引きずりこむ「カルペ ディエム」を発動した。この技に呑み込まれそうになる皆を、ミラーガールは聖なる祈りで技の効果を中和、皆が闇に呑み込まれないようにした。

 悔しがるゴッド・ドレフを前に、ミラーガールは仕掛けていった。

「セーラー戦士! お願いっ」

 ミラーガールが祈ると、セーラー戦士達の姿が一変。セーラームーンはネオ・クイーン・セレニティの姿へ、その他のセーラー戦士達は全員スーパー状態へと変化してセレニティの周囲に集結する。そしてパワーアップしたセーラー戦士達は、キング・エンディミオンの補助効果も相まって強力な連携合体必殺技をゴッド・ドレフに浴びせた。

「?! なにッ?」

 セーラー戦士達の攻撃を受けて、大ダメージを受けざるを得ないゴッド・ドレフ。

 するとこのセーラー戦士達の攻撃を受けて怯むゴッド・ドレフを見て、メタルバードが皆に呼び掛けた。

「今だ! 今のうちに強力な技を叩き込め!」

 メタルバードの指示を受けて、聖龍隊は一気にゴッド・ドレフを畳み掛け様と体制を維持した。

「ミスティーハニー、行くわよ!」「ええ、分かってる!」

 ミラーガールの効果を受け継ぎ、キューティーハニーとミスティーハニーの二人が連携合体技をゴッド・ドレフに打ち込んだ。

「なッ! にィ……!」

 二人のハニー姉妹の連携技を受けて、悶絶するゴッド・ドレフ。

「アッコちゃんの想い……そして新世代型二次元人の覚悟、無駄にはしない!」

 獅堂光が力強い表情で唱えると、彼女が前へと突き出す剣に海/風の二人も自分達の剣を重ねて思いを同調させる。そして三人は一気に炎/水/風の魔法を解き放った合体技をゴッド・ドレフに向けて発射した。

「ぐおお……っ!」

 三人の魔法騎士の合体技を受けたゴッド・ドレフは朦朧としてしまう。

「私だって……みんなを守れる力があるもん……!」

 木之元桜はミラーガールの祈りの力の加護を受けて、全てのカードを同時に発動。そして全てのカードたちにゴッド・ドレフへ攻撃するよう指示した。

「うぎゃあああ……!」

 大量のカードたちの攻撃を総じて全て受けたゴッド・ドレフは目を回して崩れ落ちてしまう。が、スグに体勢を立て直して構える。

 すると此処でゴッド・ドレフが反撃に。宇宙に漂う瓦礫や隕石を一斉に叩きつけて行く「デウス エクス マーキナ」を発動。戦前のコレクターズに瓦礫の山を激突させようとした。だが、この時もミラーガールの能力が作用し、自身が身に付けているハイテクスーツの効果を高めたコレクターユイたち三人のコレクターズは、自らの力で降り注がれる瓦礫の山から自らを防御した。

「なッ!」

 自ら全ての瓦礫や隕石を防ぎ切ったコレクターユイたちを見て愕然とするゴッド・ドレフ。

 すると此処でミラーガールの祈りを受け取ったコレクターユイが、必殺のファイナルエレメントスーツに変身。コレクターハルナとコレクターアイの力を借りてゴッド・ドレフに攻撃した。

「ぐおおおおお……っ!」

 今までにない激痛に苦しみ出すゴッド・ドレフ。

「聖龍隊にだけいいカッコさせるな! 俺たちも出来る限りの攻撃で、ドレフにダメージを与えるんでい!!」

 江戸っ子口調で仲間の赤塚組に攻撃の指示を投げ飛ばす大将は、仲間と共に銃火器でゴッド・ドレフに出来る限りの損傷を与えていく。

 すると、そんな大将たちの頑張りを目撃してか、ミラーガールは此処で何かを思いついた。

「よし、そうだ! ここで一つ、趣向を変えてみますか……」

 自信満々でいつものお調子癖が出てきたミラーガールは、コンパクトであるミラー・シールドに想いを込め始める。

 するとミラーガールを中心に展開されていた五芒星の魔法陣が突如として更に輝きを増した。

「な、何をする気だ……!?」

 ゴッド・ドレフが突然の事態に問い掛けると、ミラーガールは自信に溢れた微笑みで答え返した。

「私の力は皆の力を引き出すだけじゃない……みんなの想いを形にする事もできるのよ!」

 そう説明するとミラーガールはミラー・シールドを前に突き出して更に祈りを込めた。

 すると七海るちあたちマーメイドメロディーズの衣装がガラリとバージョンアップし、見栄えがよくなった。

「こ、これは……!?」

 突然の状況に、るちあ達が戸惑っているとミラーガールが彼女達に言った。

「るちあちゃーん! あなた達の歌でみんなを元気にさせてっ」

「えっ?」「げ、元気にって……」

 ミラーガールからの要望に洞院リナと宝生波音が困惑していると、ミラーガールは彼女達に向けてウィンクを飛ばした。この合図にも近いウィンクをされた、るちあは咄嗟に閃いた。

「あ! そっか、そういう事ですね、アッコさん!」

 るちあはマーメイドメロディーズの皆に訴えた。

「みんな! アッコさんを信じて歌おう! いつもの様に、明るく元気に!」

 このるちあからの言葉に、他のマーメイドメロディーズの面々もミラーガールを信じて歌い出した。

「よ、よし! 俺も歌うぞ!」

 るちあ達ばかりに任せていられないと、堂本海人もるちあ達と共に歌い出す。

 彼女達の歌声が奏でる「希望の歌」は、戦場に響き渡り、皆の心を和ませた。

「ク……クハハ! そんな歌で私を倒せると思っているのかい? あいにく私は邪悪な魔物などではない高等な神……! そんなちっぽけな歌声では跪かせる事も不可能だぞ……」

「いいえ! この歌はあなたなんかを、ひれ伏させる為に歌っている訳じゃないわ! ……今この時を懸命に生きている、この場にいるみんなに捧げている歌なのよ!」

 嘲笑するゴッド・ドレフにミラーガールは倒す為に歌っている訳ではないと説き返す。彼女が本当に狙っていたのは、マーメイドメロディーズの歌声で現場にいる皆の士気と能力が向上する事だった。

「ち、力が……力が漲ってくる!」

「これが……これが、マーメイドメロディーズの歌の力か!」

 突然自分の力が漲るのを感じ取った斉木楠雄に名瀬博臣は驚かされた。

 するとミラーガールは今度は、自身の想いの力を驚いている斉木楠雄に託した。

「斉木くん! あなたの本気も見せてちょうだい!」

 ミラーガールが唱えると、斉木楠雄は次の瞬間、赤味のピンクだった髪色が一変、金髪に変わって毛を逆立てした。

「うわっ! 斉木すっげぇな! まるでスーパーサイヤ人だよ!」

「もう何でもアリだな、アッコさんの能力は……!」

 一変した斉木の姿を目の当たりにして親友の燃堂力は目を丸くして驚くが、その反面ミラーガールの能力の広さに唖然としてしまうギュービッド。

「みんなやるな!」「私たちも負けてはいられないわ!」

 これらの戦況を観ていたガイトや沙羅たちは俄然とやる気が漲り、それを見たミスティーハニーが自分が指揮するマン・ヒールズの面々に言い付ける。

「みんな! 私たちも一気に勝負をつけましょう!」

 ミスティーハニーがそう言った次の瞬間、マン・ヒールズの面々は本気の戦闘着に自らの衣装をバージョンアップした。

「手塚先生、見ていてください……!」

 二次元界の神、手塚治虫の息子にして、二次元人人権運動家の手塚マコト氏から託されたスーツを一瞬で着衣したマン・ヒールズは、スーツを着衣した事で向上した戦闘力でゴッド・ドレフに集中攻撃を浴びせた。

「うがっ……!」

 マン・ヒールズの集中攻撃を受けて、ゴッド・ドレフは忽ち体勢を崩してしまう。

 更にミラーガールは戦況を打開する為、自らの力を今度はコレクターハルナと暁美ほむらに向けた。

 ミラーガールの祈りを託された二人のヒロインは、それぞれ漆黒の衣服に衣を変えて、衣装をガラリと変えた。その姿はまるで悪魔の様であった。

「二次元人は神にも悪魔にもなれる存在……そう修司くんから教えられた。でも、あなたの様に他人を踏み躙る神なんて、私たちは認めない!」

 エビルハルナの格言を聞いて、彼女と悪魔ほむらはゴッド・ドレフに忌まわしき悪魔の力を解放して攻撃。神を気取っているゴッド・ドレフに大打撃を与える事に成功。

 

 と、ここでミラーガールは更に戦況に光を灯すため、今度は懸命にゴッド・ドレフと立ち回っている纏流子に言葉を掛けた。

「流子ちゃん! あなたの力を貸して!」

「え、アタイの力……?」

 流子が唖然としていると、ミラーガールはミラー・シールドに更なる祈りの気持ちを託しながら強く訴えた。

「生命戦維を着ているみんな! 流子ちゃんに力を注いで! お願い……!」

 このミラーガールの強い願いを聞いた【キルラキル】の面々は、流子に向けて力を込めて祈りを捧げた。

「心得ました、ミラーガール殿! みんな、流子に……我が妹、流子に向けて力を解放せよ!」

『はいっ!』

 皐月の指示に多くの者たちが賛同する。そして皆がミラーガールの言うとおり、流子に向けて祈りを捧げるとミラーガールが言った。

「流子ちゃん! それに鮮血! あなた達の本当の力、私が解放するわ!」

 ミラーガールがそういうと、流子に向けて祈りを捧げていた多くの生命戦維を着衣している者の極制服が光り輝きだし、そして生命戦維だけが解れる様に光の糸となって流子に向かっていった。

「力が……力が漲ってきやがる……! みんなの想いが、アタイに集まってくる……!!」

(本当だ! 俺様も力が漲っているのがビンビンに感じられるぜ! これがミラーガールの聖なる力か!)

 皆の力が自分に集結しているのを感じ取る流子と鮮血。そして流子に向けて力を解放した極制服を着ている者たちは、全員一気にその場に崩れた。

「ッ、はぁ、はぁ……す、全ての力を出し切ったぞ……」

「な、なんて事だ……! 僕達が着衣していた極制服から、生命戦維の力だけが抜き取られてタダの制服になっている……これが、ミラーガールの力……」

 全力を出し切ったと膝の力が抜ける皐月たちとは裏腹に、自分達が着衣していた極制服が普通の衣服に変わってしまった現状に驚きを隠せない伊織糸朗。

 その一方で、皆の力と思いを受け取った流子の姿は一変していた。彼女が着衣している鮮血が、全ての生命戦維を吸収した事で「鮮血更衣」としてパワーアップしていたのだ。

「これがみんなの力……確かに受け取ったぜ!」

 鮮血更衣を着服して、一体化した流子は巨大化した片太刀バサミでゴッド・ドレフを切り裂いた。

「うおおッ」

 先ほどまで鉄壁の防御力を備えていたゴッド・ドレフの肉体には巨大な切り傷が付き、驚異的な再生能力を失っている今となっては完治できなかった。

「今だ! あの傷に向かって集中砲火! ……ちせ! ミズキ!」

「了解!」「一気に決めてあげましょう!」

 ここでメタルバードは、ちせとミズキを呼び掛けながら半身を巨大な砲身へと変形させて二人の元最終兵器と共にゴッド・ドレフに強烈な砲撃を浴びせた。

「ッ、なに……ッ!」

 強烈な砲撃を受けて、激痛に悶え苦しむゴッド・ドレフ。

「俺たちも先輩達に負けていられねえぜ!」

 と、ここでキリトたち聖龍隊の新人達も動き出す。

 するとゴッド・ドレフに突撃しようとした矢先、キリトたちの武器に変化が。それはミラーガールの力が作用して、武器が強化されたのだ。

「こ、これならイケるぞ! ありがとう、アッコさん……!」

 ミラーガールに感謝するキリトたちは、その強化された自身の武器でゴッド・ドレフに挑みかかろうとする。

「神に逆らう愚か者どもよ……抹殺してやろう」

 と、自身に向かってくるキリトたちを見て、返り討ちにしてやろうと両手から光線を発射しようとするゴッド・ドレフ。しかし、そんなゴッド・ドレフに迎撃の妨害をする者たちが。それは東京ミュウミュウズとガッチャマンクラウズの面々だった。

「先輩!」「クラウズの皆さん……!」

 聖龍隊の先輩である東京ミュウミュウズと、先代ヒーローの意志を継いだガッチャマンクラウズの援護によってゴッド・ドレフの迎撃を未然に免れたキリトとアスナが喜々と一驚すると、ミュウイチゴと一ノ瀬はじめが二人に言った。

「後は任せてニャンっ」「あなた達はドレフを宜しくっす!」

 二人の英雄から託されて、キリトたち【SAO】の面々はゴッド・ドレフに斬りかかる。

 物凄い剣幕で斬り続けるキリトとアスナたち。するとそんな【SAO】の活躍を見て、シルバー・クロウ達も奮い立った。

「僕達も今のうちに攻撃を!」「そうね。キリト達に加勢しましょう!」

 シルバー・クロウとブラック・ロータスの言葉に反応し、【AW】の面々もキリト達に加勢する。

 そして二組の強烈な攻撃を全身に浴びたゴッド・ドレフは、その巨大な風貌で立ち眩みしてしまう。

「うぅ……!」

「攻撃の手を緩めるな! 続行しろ!」

 動きが止まったゴッド・ドレフに対してメタルバードは攻撃を続行するように皆に指示を飛ばす。

 

 一気に追い詰められたゴッド・ドレフは、自身を追い詰めた元凶ミラーガールに向けて睨み付けた。

「善と悪……私はその様な概念をも超越した存在なのだ」

 するとミラーガールはゴッド・ドレフに強気で言い返した。

「だったら私たちも超えて見なさい!」

 ミラーガールは此処で最大必殺技を皆が放てるように祈りの力を最大まで上げた。

 と、するとゴッド・ドレフは両腕を上げて、己の頭上に巨大なエネルギーの塊を形成し出した。

「あ、アレは……!」

 大将たち赤塚組の面々が巨大なエネルギーの塊を直視して蒼然となっていると、メタルバードが言ってしまう。

「あ、アレは流石にマトモに受けたらタダじゃ済まないかも……!」

 直撃を喰らえば一溜まりもないと断言するメタルバードの一言に、その場の一同が愕然とした。

「私を……倒せるとでも……思っているのか?」

 満身創痍状態のゴッド・ドレフは、最後の力を振り絞って目の前で自分に歯向かう者たちを一掃しようと巨大なエネルギーの塊を形成したのだ。

 そして巨大なエネルギーの塊を形成したゴッド・ドレフは、それを一気に目前の一同目掛けて投げ付けた。

「お、おおい、アッコ! お前の鏡魔法ではね返せないのか!?」

「わ、私にも……アレほど巨大なエネルギーの塊、はね返せるか分かんない!」

 大将の問い掛けに対し、ミラーガールも慌てながら答え返す。

 巨大なエネルギーの塊を目前に、皆が危機に曝された、次の瞬間。

 なんと巨大なシャルロッテに変身した百江なぎさが、エネルギーの塊を一口で呑み込んだのだ。

「な、なぎさちゃん!?」

 一瞬でシャルロッテに変身するなぎさを前にして、驚いてしまう巴マミ。

 すると巨大なエネルギーの塊を呑み込んだシャルロッテは、一時苦しそうに悶えてしまうが、スグに体内に取り込んだエネルギーを口からシャボン玉として大量に吐き出した。

「な、なんだ、これは……?」

 その大量に吐かれるシャボン玉を見て、ゴッド・ドレフは唖然とする。そんなゴッド・ドレフに続いてシャボン玉を覗き込んだ仲間達は騒然となった。

「こ、コイツは……!!」

 シャボン玉を覗き込んでメタルバードが愕然とした。

 シャボン玉に映し出されている光景、それはなぎさがフレッドと共に過ごした思い出の数々だった。初めてなぎさが恋した異性フレッド。だが、そのフレッドが実はドレフのもう一つの借りの姿であった事実に百江なぎさは人一倍、いやそれ以上に心を深く傷付けられたなぎさの悲しみは尋常でなかった。

「……信じてたのに……」

 シャルロッテに変身しているなぎさの瞳からは、一滴の涙が流れていた。

 そんな純情な乙女心が抱く傷を知って、聖龍隊一同は一斉に本気の戦闘状態でゴッド・ドレフに異常なまでの敵愾心を向けた。

 純情な乙女の恋心を傷つけた偽りの英雄フレッドに変身していたドレフ、そしてそのドレフが変身したゴッド・ドレフに怒りの矛先を向ける聖龍隊は一斉攻撃を仕掛けようとする。

 すると一斉攻撃の直前、ミラーガールとメタルバードが攻撃の矛先を向けたまま、ゴッド・ドレフに言い切った。

「ゴッド・ドレフ……私はこれまでに色んな神様に会ってきたけど、あなたはトップ10にすら入ってないわ」

「ドレフ! テメェが神だろうが何だろうが……オレらから見たら、アンタはただの(ヒール)だよ……ッ!!」

 聖龍隊総長と副長の言葉を合図に、聖龍隊はゴッド・ドレフに向けて集中攻撃。ゴッド・ドレフは硝煙に包み込まれた。

 

 

[抗う神と荒ぶる聖女]

 

 シャルロッテ/百江なぎさの悲恋の思いを目の当たりにし、聖龍隊はゴッド・ドレフに怒りの集中攻撃を浴びせる。

 聖龍隊からの集中攻撃に曝されたゴッド・ドレフは遂にその巨体を、まるで山を崩すかのように沈めた。

 誰もがゴッド・ドレフの敗北を確信した、その矢先、ゴッド・ドレフの様子が一変した。

 

「……うお……うおおおおおお……っ」

 突然ゴッド・ドレフが咆哮の様な雄叫びを上げ始めたのだ。

 皆が何事かと目を凝らして見てみると、ゴッド・ドレフの胸部に薄らと苦悶の表情の様な顔が浮かび上がった。

 その顔を見た途端、新世代型二次元人たちは蒼然となった。

「お……お父さん!?」

「カイト!? セレディ……!?」

「か、母さん……!」「母上……!?」

 なんとゴッド・ドレフの胸部に、ドレフが神に変身する前に吸収した小野崎功や風陣カイト、セレディ・クライスラーや鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)の顔が苦悶の表情として浮かび上がったのだ。これには顔馴染みである琴浦春香や瀬名アラタ、纏流子に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は愕然とした。

 そんな先だって吸収した新世党の面々の顔が胸部に浮かび上がるゴッド・ドレフをしばし視ていたメタルバードが、ある衝撃的な事実を語った。

「な、なんて野郎だ……! さっき吸収した新世党の連中の生体エネルギーを自分のモノとして吸収し始めている! 吸収した生体エネルギーで傷ついた自分の体を回復させてやがるんだ!」

「えっ! そ、それじゃ……さっき吸収されたセレディ達は、もう完全に……」

 メタルバードの後語りを聞いて、瀬名アラタたちはこれで吸収された新世党の面々が完全に消失してしまった事実を把握して絶望する。

 そして、そんな新世党の生体エネルギーを糧として自らを再生したゴッド・ドレフは目前の勇士達を前に言い放った。

「クハハハ……さあ、これで勝負は最初からだ! 戦力が消耗した貴様らと、完全復活した私とでは天と地ほどの差! お前達に勝ち目はない!」

「て、テメェ……!」

 何の躊躇もなく、取り込んだ人々の生体エネルギーを吸収して自らを再生したゴッド・ドレフの暴挙に、腸が煮えくり返るほど激昂する大将は怒りで自我が吹き飛びそうだった。

 だが、大将が怒り狂う前に、皆の足元に広がっていた五芒星の魔法陣が消え去り、辺りが凄然となった。

 皆が魔法陣を展開していたミラーガールに顔を向けてみると、彼女の様子が今までとは格段に違っていた。

「?」「……?」

 ゴッド・ドレフも、他の皆もただ静かに立ち尽くすミラーガールを直視して不思議がる。

「…………ミラー……ガール……?」

「………………」

 顔を俯かせるミラーガールに、メタルバード達が声をかけてみると、ミラーガールは咄嗟に顔を上げた。

 すると驚いた事に、ミラーガールの顔がいつもの慈愛に満ちた優しい面差しから一変、激しくも静かな怒りに満ちた険しい面差しへと変貌していた。

「み、ミラーガール……!」「アッコ……!」

 激しく表情を険しく一変させたミラーガールの顔を見て、新世代型の猿田学や赤塚組の大将たち一同は騒然となる。

 そしてそのミラーガールの険しい面差しを見たメタルバードは昔を思い出していた。

「! (あの時と……同じ顔……)」

 それは殺戮陽動プログラムという催眠暗示で狂気に駆り立てられていた小田原修司とミラーガールが対峙した時の、彼女の険しい表情だった。

 かつて愛する人と死闘を展開した時の険しい顔付きでドレフに歩み寄っていくミラーガール。するとそんな彼女を目視したゴッド・ドレフはミラーガールから感じられる反応を感じ取って微笑みながら言った。

「……ク……クク……素晴らしい反応だ。これが……これこそがまさに魔鏡聖女という事か……」

 すると次の瞬間、ミラーガールはゴッド・ドレフに無言で斬りかかった。だが、その前にゴッド・ドレフの巨大な手の平が彼女に襲い掛かってきた。

「! アッコーー!!」

 ゴッド・ドレフの直接攻撃をマトモに受けそうになるミラーガールを見て、声を荒げる大将。

 しかし次の瞬間、ミラーガールを払い除けようとするゴッド・ドレフの片手は、一瞬で細切れに切断されてしまった。

「ぐあああ……っ!」

 片手を細切れにされ、大量の血を吹き出すゴッド・ドレフは痛みにもがき苦しむ。

 そして激痛を何とか耐えるゴッド・ドレフとその他の一同が目を向けてみると、硝煙の中から現れたミラーガールの姿が今までとは一線をしくほど激変していた。

 着衣していた衣装は、まるで和服の様に変化しており、動きやすい構造に変化。そして彼女が持つミラー・ソードも一変し、薙刀に近い巨大な得物へと変化を遂げていた。

「そ、その姿は……!!」

 ゴッド・ドレフが驚愕する中、新たに変身したミラーガールは力強い面魂でゴッド・ドレフを睨み付けて物申した。

「ミラーガール……大和撫子スタイル……!」

「やっ、ヤマトナデシコ、だと……!!」

 自らが遂げた変身スタイルを大和撫子スタイルと自称するミラーガールの発言に、またしても驚愕してしまうゴッド・ドレフ。

 すると新たなる変身を遂げたミラーガールは、ゴッド・ドレフに向かって特攻した。

「お、おのれ……ッ!」

 片手を細切れにされたゴッド・ドレフはこれ以上ミラーガールの思惑通りにさせまいと、反対の手で彼女を押し潰して捕まえようとする。しかしミラーガールは薙刀を器用に回転させながら前進し、ゴッド・ドレフの手から颯爽と逃げ回り、追撃を回避していく。

「……ッ!」

 常人離れした身のこなしに、ゴッド・ドレフだけでなく他の一同も愕然とした。

 そしてゴッド・ドレフの目前まで迫ったミラーガールは、薙刀を振るい付けてゴッド・ドレフを斬り付ける。何度も何度も斬り付けて行く最中、ゴッド・ドレフの片手がミラーガールに迫る。そして彼女を捕まえようと巨大な手が押し迫った次の瞬間、ミラーガールは軽々と跳躍して手から逃れた。

 ミラーガールを捕まえようと躍起になるゴッド・ドレフであったが、次の瞬間ミラーガールはゴッド・ドレフの腕に飛び乗って腕の上を駆け上った。

 ゴッド・ドレフは自分の腕を駆け上るミラーガールを仕留めようと、手から光線を発射して彼女を迎撃しようと企む。しかしゴッド・ドレフが放った光線をミラーガールは難なくかわしてゴッド・ドレフの眼前まで迫った。

 そして顔面の手前まで駆け上るとミラーガールはゴッド・ドレフの顔面目掛け何発も斬り付けた。

「キサマ……!!」

 ミラーガールの顔面への斬撃を喰らい、痛みに苦しむゴッド・ドレフは此処で攻撃に集中しすぎていたミラーガールをどうにか捕まえる事に成功してしまう。

「……おのれェ……くだけろおオオオ!!」

「………………!!」

 ミラーガールを握り締め、握り潰そうとするゴッド・ドレフに抵抗するミラーガール。

「アッコ……!」

 と、ここでミラーガールの窮地と判断した赤塚組の大将は、ミラーガールを握り潰そうとしているゴッド・ドレフの手に銃撃を浴びせようと構えた。

 するとそこに、メタルバードが無言の制止を大将に促した。

 と、その時。ミラーガールを握り潰そうとしていたゴッド・ドレフの拳が内側から激しく粉砕した。辺りに血の海が広がる中、その返り血を浴びてミラーガールが武器を捨てて再びゴッド・ドレフの腕に飛び乗って駆け上った。

 両手を失ったゴッド・ドレフ、その腕に飛び乗って駆け上る武器を捨て防御の構えも捨て去ったミラーガール。

 両者がにらみ合う中、ミラーガールは怒りの鉄拳をゴッド・ドレフの顔面に殴り付けた。

「はあぁッ!」

 顔面に今まで募った怒りを全て込めた拳を殴りつけたミラーガールは、そのまま後方へと着地。そして殴り飛ばされたゴッド・ドレフはそのまま山のように巨大な体を硝煙の中へと埋めていった。

 圧倒的な大きさがありながらも、一発の拳だけで巨大なゴッド・ドレフを沈めたミラーガールを前にして、一同は恐怖で蒼褪めた。

 そして硝煙の中から姿を現したゴッド・ドレフはミラーガールの攻撃に耐えかねて苦しみ出した。

「み、認めぬ……認めぬぞぉおおお……!!」

 神の力を全て出し切ったにも関わらず、敗北した状況に愕然となるゴッド・ドレフ。

「ど、どわあっ……私が……! 神の力がっ! う、嘘だ! 私が、私が負けるなど……」

 そしてそのままゴッド・ドレフはもがき苦しみながら、元のドレフへと姿を戻していった。

 

 と、その時。ゴッド・ドレフが倒れたのを視認したミラーガールは元の姿へと戻り、怒りで爆発していた感情が一気に冷めた事で血の気が下がり倒れそうになってしまう。

 するとその瞬間、メタルバードが駆け寄って倒れそうになるミラーガールを受け止めた。

「っ……と!」

 そしてミラーガールを受け止めたメタルバードは、呆れながら彼女に言った。

「……全く、一度怒り出したら手ェ付けられねえよなあ。お前も修司も……」

 これに対してミラーガールは笑顔で言い渡した。

「でも……みんなが無事で良かったわ……」

 ミラーガールは辺りを見渡して心から安堵した。大切な仲間や親友達が無事に生きていてくれている事に。

 だが、そんな彼女の台詞を聞いて、神から姿が戻ったドレフは不敵な笑みを浮かべる。

「クク……そうか……そういう事だったな……」

 次の瞬間、ドレフは最後の余力を振り絞って変身した。淡く蒼い光に包まれながら、ドレフが変身した姿を見てミラーガール達は愕然とした。

「!」

 何故なら、そのドレフが変身したのは紛れもない、あのフレッドの姿だった。

「あ? どうしたミラーガール……」

 ふてぶてしく言葉を投げかけるフレッド、いやフレッドに変身したドレフにメタルバードたちがトドメの攻撃を刺そうと敵意を向ける。

「てめェ!! 何様のつもりだ!」

 しかし此処でミラーガールが何故か皆の怒りを制止してしまう。

「……バーンズ! みんな待って!」

「?! アッコ! なんでだ? あいつはドレフなんだぞ?!」

 目の前にいるのは自分達が信頼し切っていた仲間ではなく、実は敵であったドレフなのだと説くメタルバード。

 だが彼だけでなく、他の一同も一度は信じ切っていたフレッドに姿を変えたドレフに複雑な心境を傾けて、攻撃することが出来なかった。

「オイオイ、さっきまでの威勢はどうしたんだよ?」

 姿を変えただけで攻撃できないでいる一同を前に、フレッドに変身しているドレフは目前の一同に対して吐き捨てた。

「まったくジョーダンキツイぜ。信じていた仲間に裏切られてもまだ執着残すとは……俺にしちゃ、そんなお前等の方がよっぽど頭のイカれた異常者(ヒール)だぜ」

 自分を偽り続けてまで命を繋ぎ止めようとするドレフの言動に、ミラーガールは次第に怒りが込み上げてきた。

 するとフレッドに変身していたドレフが再び姿を変えて目前の一同に唱えた。

「わ、私の様な非力な二次元人を……居場所のなくなった二次元人をいたぶって満足なのか?」

「! ……お、お父さん……!」

 自分の父親である小野崎功に変身するドレフを見て絶句する琴浦春香。

「ボク達はただ、自分の主張を認めて欲しかった。ただそれだけなのに君たち政府の手先は平然とボク達を殺すのかい?」

「せ、セレディ……!」

 かつての旧敵であるセレディ・クライスラーになって熱弁するドレフに動揺する瀬名アラタ。

「我ら優れた新世代型二次元人を葬り去ることが、本当に正しい行いなのか……分かっているのか?」

「か、母さん……!」「母上にまで……!」

 実母鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)に変身してまで生き残ろうと画策するドレフを目の当たりにして怒りが込み上げる流子と皐月姉妹。

「優れた存在こそが、新時代の神となる権利を得ている……! 優秀な遺伝子こそが生き残る権利を得る正当な義務……! その自然の摂理を壊してまで守る君たちの世界に何の価値があるんだ?」

 最終的に法月仁にまで変身して力説するドレフの所業に、皆の怒りも最高潮に上っていた。正にその時。

 一発の砲撃が、蒼い光の球が解き放たれ、変身を遂げていたドレフの腹部に直撃。ドレフの腹部は貫通して、巨大な穴がぽっかりと開いていた。

 皆が砲撃が放たれた方へと目を向けてみると、そこにはミラー・シールドを構えたミラーガールの姿が。静かに直立している彼女が、ミラー・シールドにエネルギーを充填して強力な砲撃を撃ち込んだのだ。

 強力な砲撃を撃ち込んだミラーガールは、自らの手でトドメを刺したドレフに向かって力強くも悲しげに言った。

「もう茶番は終わりにしましょう………………ドレフ!」

 そう言い放つ彼女の瞳は、涙で濡れていた。

 

 そしてミラーガールの砲撃で腹部を貫かれたドレフは、よろめくと同時に自分が取り込んだ新世党の面々の姿に変わり続けながら、最後は本来の姿で後ろめりに倒れて力尽きた。

 

 

[神が遺した言葉]

 

 腹部を光の球で貫かれ、息も絶え絶えになるドレフに歩み寄る一同。そんな一同を見て、ドレフは弱々しくなった口調で訊ねた。

「満足か、二次元人たちよ……同じ、二次元人の可能性を踏み躙って……満足か……?」

 可能性を潰したと豪語するドレフの言葉を聞いて騒然となる一同に反して、彼にトドメの一撃を放ったミラーガールが死に掛けのドレフに訊ねる。

「ドレフ……何が、あなたを異常者(ヒール)にさせたの?」

 するとドレフは如何にも真面目な顔付きでミラーガールの質問に答えた。

異常者(ヒール)か……友情ごっこに浸り、変わろうとしないお前達の方が余程……私には、異常者(ヒール)に思えて、しょうがないね」

 このドレフの発言に、ミスティーハニーが怒りを露にした。

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ! 異常者(ヒール)の分際で!」

 ミスティーハニーの激昂を受けても尚、ドレフは態度を改める事はなく、自分を見詰める一同に向かって説き続けた。

「与えられた世界で、みんなで仲良く、いつまでも、これまで通り……それだけが二次元人の未来だとでも思うのか」

 するとドレフは此処で、最後の力を振り絞って自分と同じ新世代型二次元人たちに訴えかけた。

「わ、私と同じ新世代型の諸君……君たちなら、私の思想を理解してくれる筈だ」

『………………………………』

「わ、私たち……小田原修司の複製品として生み出され、代用品としてしか扱われない……我々、新世代型二次元人は……多くの犠牲の上に築き上げられた忌まわしき存在。私たち新世代型は……自らの意志で、未来を奪い合い……殺し合う為に作られた……小田原修司が描いた……ゲームの駒だ……」

『!! ………………………………』

「そうだ……! 君達にも……私同様、あの男の血が流れている……! この混沌とした忌まわしき世界を創造してしまった男の血がな……!」

 ドレフは息も絶え絶えの状態で力を振り絞り、新世代型たちに訴え続ける。

「滅びの運命を変えねばならない……戦いを、終わらせなければ……人々に、心がある限り……憎しみは、生まれ続ける……感情を生み出し、心を持つ君達も、また……真の異常者(ヒール)なのだから……!」

 そして最後にドレフは新世代型二次元人たちに遺言を伝えた。

「私たちが先導に立ち、時代を切り拓き……新たなる世界を創造しなければ……いづれ、二次元人も……三次元人すらも……滅びの道を……辿る……の…………み………………」

 ドレフは新世代型たちに語りながら、息絶えた。

「ちぇッ、言いてぇこと言ってくたばりやがったか!」

 大将は最後まで、詫びの言葉どころか自分の考えを押し付けて来たドレフの最後の台詞に苛立った。

 誰もがドレフが最後に言い残した台詞に対して自然と考えさせられてしまう。

 

 そして一時の猶予が過ぎた。

「……本当なのかよ、みんな!」

「ああ、本当だよ、小将……ドレフが全ての黒幕だったんだ」

 大将たち赤塚組は、途中から駆けつけて参入してくれた小将に事の経緯を全て語り明かした。B.S.Lを拠点にしていた新世党を影で操っていたのが、その新世党の対策委員長を任せられていたドレフ将校であり、そのドレフによって新世党の面々が吸収された上にミラーガールコンパクトを用いて神のドレフへと変貌していた事実。そして更に、新世代型二次元人たちが小田原修司のクローンに近い種族である事実に、小将はスグには信じられなかった。

 その一方で、赤塚組のアツシは百江なぎさに嘆願して彼女がフレッドより受け取った彼の母の形見だと言われている懐中時計を調査してみた。すると案の定、事実は残酷なものだった。

「クソッ、やっぱりだ! ……盗聴器に、発信機まで仕掛けていやがった!」

 アツシは悔しさの余り、盗聴器と発信機が仕掛けられていた懐中時計を足元に叩きつけて大破させた。

 ドレフに続いて仲間だと信じていたフレッドまでも偽りだったと思い知らされる一同は愕然とした。

「フレッドがドレフだったなんて……何処まで欺けば気が済むの!」

 信じていた想いを裏切られ、憤りを感じざるを得ないミスティーハニーたちマン・ヒールズ。

 すると此処でドレフの遺言を聞いてしまった新世代型達はまた暗然と下を向いて落ち込んでしまってた。

「……私達には……あのドレフと同じ血が流れている……」

「私は……私たちの力は……世界を支配する為のものだったというの……?」

 新世代型の琴浦春香や薙切えりなの蒼然となる面差しを下から覗き込んで視認したメタルバードが笑顔で言った。

「……おいおい、さっきドレフと一戦おっぱじめる前に言った誓いの言葉、もう忘れちまったのか?」

 メタルバードに言われ、新世代型達はドレフに反論した各々の想いを思い出した。

「何が何でも生き抜いてみせるって言ったのはウソだったのか?」

 だが、それでも新世代型の心に流れる気分は曇っていた。

「……バーンズさん! でも……俺たちの体に流れる血は……!」

 これを言われてメタルバードも返す言葉を一瞬見失うが、すぐに新世代型達に言い切った。

「ならお前達は、他人に決め付けられた運命に従うつもりなのか?」

 このメタルバードの言葉に、ようやく気落ちしていた新世代型の面々はメタルバードへと顔を向け視線を集中させる中、メタルバードは語り続けた。

「……運命ってのは、誰かから与えられるモンじゃない。文字通り、自分が目指す未来へ、次の命を……想いを運ぶことだ」

 励まし続けるメタルバードの一言一句に耳を傾け始める新世代型達。

「お前達の運命は、お前たちだけが決められる」

「……私達の運命は……私達だけが決められる……」

 メタルバードの台詞に感化され、新世代型のキャサリン・ルースが反応する。

 そんな目前の新世代型達にメタルバードは語り尽くした。

「そうだ。お前達が何者であろうと、そんな細かい事は関係ない。その力と思いは……自分と大切な人たちの未来を掴む力なんだ」

 するとこのメタルバードの格言に、星原ヒカルが先ほどドレフが言っていたことを思い返しながら説き返す。

「……ドレフが言ってました……ボク達の力は、存在は……たくさんの犠牲の上にあるものだって……」

 このヒカルからの台詞を聞いて、メタルバードは頭の後ろを掻きながら唱えた。

「……確かに、修司の今までの所業では数多くの人命が失われている。それは最早、善悪関係なくだ」

「………………」

「でも、それが何だってんだい。例えお前達が、あの修司のクローンだろうと、申し子だろうとオレ達には関係ないだろうがよ。お前達はお前達なんだ。それ以下でもなきゃ、それ以上でもない」

 だが、それでも落ち込む新世代型達にメタルバードは確証をついた。

「それに……受け継いだのは修司の血筋だけか? 今のお前達にはそれ以上の……素晴らしいものを持っているだろうよ」

 メタルバードの台詞を聞き受けて、新世代型達の琴浦春香は思い切って立ち上がり、自分の胸の内を自分の口から皆に伝えた。

「そう……受け継いだのは力だけじゃない……二次元人の未来を守ろうと兵器に身を堕とした初代聖龍隊総長小田原修司……私達を庇ってくれたプロト世代のチョコちゃん……それに、新世代型の多くの友達……この世界をドレフから守ってほしい、守りたいっていう強い気持ちも……私は持つことが出来た!」

 すると此処でメタルバードだけでなく、他の聖龍HEADも歩み寄ってきては新世代型たちに唱えていく。

「バーンズだけじゃない、俺たちHEADが今まで君たちに修司の話を聞かせてやっていたのは、全ては君たちが真実を知る時のための準備だったんだ」

「準備、ですか……?」

 キング・エンディミオンの話に三舟百合子が問い返すと、セーラームーンが答え返した。

「修司君はねっ、とってもとっても不器用な男の子だったんだよ! それがそのまま大人に成長しちゃって、色々と問題起こすようになっちゃったんだけど……でもね、彼の胸の内に隠された優しい気持ちも本物だったの。私たちは、そんな修司くんのクローンとして生まれてしまったアナタたち新世代型二次元人を正しく導きたかったの……そう、修司くんを導けなかった分も含めて……」

「? ………………」

 セーラームーンの言葉に首を傾げてしまう新世代型。

 すると此処で最後に、ミラーガールとメタルバードの二人が新世代型たちに強く唱えた。

「……新世代型のみんな、私はあなた達の勇気を信じているわ。あなた達が創る未来を……私は信じる」

「運命に立ち向かえ、未来を切り拓け。それがお前達……この世界に生きる者すべての戦いだ」

 ミラーガールとメタルバードから、懸命に未来を生き抜き、未来を切り拓いて創ってみろと唱えられた新世代型二次元人たちは、想いを募らせる。

 

 すると此処で、一人先ほどミラーガールにトドメを刺されて死亡したドレフの亡骸を見下ろしていた聖龍隊スター・ルーキーズの一人スカイハイが、ドレフにトドメを刺した張本人ミラーガールを呼びつけた。

「ミラーガール、ちょっと良いかい?」

「? 何ですか、スカイハイさん……」

 ミラーガールを呼びつけたスカイハイは、何かを思いつめる様ないつもの笑顔の素敵な好青年とは違う表情で、皆の前でミラーガールに問い詰めた。

「……ミラーガール、君はこのドレフがやった事に関してどう思う?」

「え? どう思うって……」

 困惑するミラーガールに、スカイハイは更に言い寄った。

「……僕たち二次元人は、確かに生まれた物語の中では不遇な扱いを受ける事が多い。差別・軋轢・貧困……色んな苦渋の想いを噛み締めながら懸命に生き抜いていこうってのは、流石に少し無謀なんじゃないのかい」

「す、スカイハイ、何もこんな時にそんなこと言わなくったって……」

「こんな時だからこそ言わなきゃならないんだ、タイガー君!」「!」

 いつもの温厚なスカイハイからは創造もできない険しい口調に、声をかけてみたワイルドタイガーは一喝されてしまう。

 そしてスカイハイは話を元に戻して、ミラーガールに問いかけた。

「二次元人の争いの歴史……それを止めるのも大事な僕たち聖龍隊の職務だとは思ってる。けど、争いを争いで解決する……武力を武力で対抗するやり方は、果たして本当に正しいのか……無論、ドレフのやり方は完全に間違っていた、それは僕も認める。けれど、ミラーガール……僕たちの未来はこのままで本当に良いのかな? 誰かが強い意志と力を持って、大勢を導かなければ……本当の未来は創れないんじゃないのかな……」

 どこか悲しそうに語るスカイハイの言葉を胸に刻みこんだミラーガールは、自分の胸に手を当てて力強く主張した。

 

「私達は……戦う為に生まれてきた訳じゃない。戦うその先にある全てを守る為にあれ……それが、私達を信じてくれた三次元人の想いだと…………私は信じたい」

 

 自分たち二次元人を生み出してくれた多くの漫画家や、アッコ自身を強く愛してくれた三次元人の想いを信じたいと強く唱えるミラーガールの言葉を聞いて、スカイハイは微笑を浮かべる。

「……フッ、やはり……始祖様の言う事は違うね」

 このミラーガールとスカイハイのやり取りを目撃して、新世代型の二次元人たちは改めて思う。

(……運命に立ち向かい、未来を切り開く事が……自分たち次世代の二次元人の果て無き戦い……)

 未来を創る、それは今を、現実を懸命に生き抜くことから全てが始まる。そして新世代型たちは、ミラーガールやメタルバードから言われた格言の数々を胸に刻み込んだ。

 

 と、その時。皆がいるスペースポートが突然激しく揺れ出したのだ。

「ど、どうなってやがる!?」

 身体を右へ左へと揺れ動かす赤塚組の大将兄弟が驚いていると、付近を調査したメタルバードが声を荒げて皆に告げた。

「ヤバイぞ! さっきの戦いで、スペースポートがもう持たねえ! 急いで避難するんだッ!」

 このメタルバードの忠告を聞いて、一同は慌てふためいた。

「わっ、わっ! 急いで逃げないと……」

「燃堂、慌てるな。みんな、急いでB.S.L施設内に入るんだ!」

 非常に動揺する親友の燃堂力に、斉木楠雄は彼を含めた大勢を誘導させて皆をB.S.L内部へと入らせる。

 その間も、スペースポートは見る見るうちに崩落していき、急いで避難せねば宇宙の藻屑になってしまう一大事であった。

 そして聖龍隊も赤塚組も、全員がスペースポートから脱出できたその反面、一人の少女だけがスペースポートに残ってドレフの亡骸を悲しそうに見据えていた。

「……フレッド……」

 それはドレフに欺かれ、初恋を踏み躙られた百江なぎさだった。彼女は死に絶えたドレフの元に、フレッドが大好きだったジャンクフードの袋を置いて、それから皆と一緒に避難を開始した。

 なぎさはまだ、フレッドの事が忘れられなかったのだろう。

 

 

[脱出準備]

 

 皆が崩落するスペースポートから脱出して、そのままB.S.L内部の長い通路を駆け抜けていると大将がメタルバードに走りながら問うた。

「と、ところでバーンズ! スペースポートから急いで離れなきゃいけないのは分かったが、俺たちは何処に向かえばいいんだ!?」

「こ、このまま直進していけばコントロールブリッジまで一直線だ! 急いで軌道を調整して、このB.S.Lを太陽に衝突させねえと……」

「で、でもよ……銀河連邦の艦隊はもう全部オシャカになったじゃないか! もう慌てる必要もないと思うけど……」

「いいや! 状況は変わんねえ……! 本部の事だ、すぐに替えの部隊を派遣して向かわせている頃だろう! その部隊が来る前に、急がねえと……」

 と、走りながら語り合うメタルバードと大将の話を聞いて、新世代型たちは自分達は別に走らなくても良いのではと核心に迫ろうとしたその時。

 なんと皆が走り抜けてきた方角から強烈な突風が向かい風として押し流され、一同も思わず吹き飛ばされそうになる。

「うわっ、なんなんじゃ、この風は……!」

 琴浦善三が柱に掴まりながら問い掛けると、メタルバードが皆に言った。

「さっきオレ達が避難してきたスペースポートの崩落が激しくて、外壁までも剥がされちまったんだ! 急いでこの場から離れないと、オレたち全員揃って宇宙に放り出されるぞ……!」

「だ、だからって! どうやってこの状態で前に進めってわけ!?」

 メタルバードの話に、新世代型の真鍋義久は壁や柱に懸命に掴まったままの状態で如何にして前進すればいいのかと打開策を求める。

 すると此処で、コンパクトを取り戻したミラーガールが祈りの力を込めて、力を発動させた。

「……ッ、お願い……!」

 ミラーガールの思いが通じたのか、壁際の手すりや柱にしがみ付く皆の体に黒い幕の様なものが覆い被さった。

「こ、これは……!」

 皆が黒い幕に驚いていると、更に驚かされた事に、この黒い幕を被った人間が全く重力に作用されず、後方に吹き飛んでいく凄まじい風にも耐えられる様になっていた。

「や、やったぞ! 重力を無視するコレがあれば、宇宙に空気ごと放り出される前にこの長い通路を駆け抜けられる!」

 星原ヒカルがミラーガールが発動した能力の凄さに驚いていると、メタルバードが皆に指示を飛ばす。

「今のうちだ! 全速力で駆け抜けろ! 後ろからは宇宙が迫ってきているぞ!」

 メタルバードの言うとおり、皆が駆け抜けてきた道の先は既に宇宙空間に飛ばされてしまい跡形も無くなってしまってた。

「わーーーーッ! 道がなくなっているーーーー!」

「急げ! 急いでみんな先に進むんだ! 亀裂が大きくなって、どんどん放り出される勢いが増してきている!」

 進んで来た道が消失している現状を目の当たりにして真鍋義久が驚愕している横で、猿田学が冷静に皆を誘導していた。

 しかしその間も皆の背後の道は瞬く間に宇宙へと吸い込まれていき、皆の進むべき道と時間は制限されてしまった。

 全員切羽詰って駆け抜ける中、次第に体力が無くなり息が切れてしまう新世代型の姿もチラホラ見えるようになってきた。

「ど、どうするんだいアッコ! 一部の連中は体力が持たなくてスタミナ切れ起こして今にも立ち止まりそうだ!」

 メタルバードに問い掛けられ、悩むミラーガール。このままでは、立ち止まった者から宇宙空間に放り出されてしまう。

 と、そんな状況を打開するべく、ミラーガールは走る皆の間を一生懸命駆け抜けながら、斉木楠雄の元へと駆け寄って話しかけた。

「さ……斉木くん!」

「はぁ、一体なんですか、ミラーガール!」

「お、お願い……またあなたの力を貸してちょうだい!」

「またですか? さっきのスーパーサイヤ人もどきはもう止めてくださいね」

「わ、分かってるって……それじゃ、肩を貸して」

 ミラーガールは斉木の肩に掴まると、彼の体に自身の希望の力を注ぎこんだ。注ぎ込まれた斉木は、蒼い光に包まれながら輝いていた。

「そ、それで……あなたの超能力は格段に上がっている筈よ。お願い、その力でみんなを……全員を瞬間移動させてちょうだい!」

「しゅ、瞬間移動……テレポーテーションですか、なるほど! 貴女の考えがようやく理解できました」

 ミラーガールの思考を理解した斉木楠雄は、ようやく此処でパワーアップした自分の超能力を発動させる。

「瞬間移動……テレポーテーションッッッ!」

 最後は何とも奇声に近い声で唱えた斉木の瞬間移動が発動し、長い通路をひたすら走っていた一同は斉木の超能力で移動して難を逃れた。

 

 そして斉木の瞬間移動で全員が、一瞬で移動し終わってみると斉木は初めの集団移動に大量の汗を流して疲労困憊してしまい、その斉木に力を注いだミラーガールは極度の疲労が溜まっていたのかその場で倒れこんでしまい、変身も解けてしまった。

「アッコ!」

 倒れるミラーガールを心配して彼女に駆け寄る大将たち。

 逸早くミラーガールの元に駆け寄ったミズキが彼女の容態を調べていると、其処に大将が執拗にミズキに言い迫ってきた。

「なあ、ミズキ! アッコは大丈夫なんだろうな? さっきからスッゲェ技や能力使ってばっかで自分を酷使しているみたいだけど無事だよな!? 無事だと言ってくれ、無事だと……」

「だぁッ! さっきからシツコイ!」

 ミズキは思わずミラーガールを心配しすぎる大将を殴り付けてしまう。

 そしてミラーガールを介抱していたミズキの診断によれば……

「……大丈夫、気絶しているだけよ」

 このミズキの発言に、大将もメタルバードも安堵する。

 すると、斉木楠雄の超能力で飛ばされた一同が此処で気づいた。

 今彼らがいる場所、それはB.S.Lの軌道を操作できるコントロールブリッジへの入り口が完備されているエリアだった。一同は無事に目的地へと到着したのだ。

「よ、よし! 今からオレと一部のHEADで軌道を修正しにかかる! 他の奴らは赤塚組先導の元、ドッキングベイに全速力で向かうんだ!」

「よっし、分かった! 新世代型たちは俺たちが責任を持って誘導してくから、軌道修正の方は任せたぜ!」

 コントロールブリッジへ通じるフロアに無事到着して、メタルバードが大将に新世代型たちの先導を一任させる。

 そしてメタルバード率いる聖龍HEADはコントロールブリッジに、赤塚組は新世代型たちを先導して自分達がB.S.Lに乗り込んだ際に搭乗してきたシルバー・ウィングが着陸しているドッキングベイに向かおうと行動を移そうとした。

 が、その矢先の事。突如として皆がいるフロアが激しく振動した。

 皆が何事かと辺りを見渡してみると、なんと何処からともなくSO-Xがフロアに突入してきてたのだ。

「え、SO-X……! 現れやがったか!」

 SO-Xの来襲に愕然とする大将は、メタルバードに顔を向けてこの状況をどうするか訊ねようとした。

 だがメタルバードは無言の相で大将に「早く行けッ」と訴え、大将もメタルバードが伝えたい事を察知して行動に移す。

「は、早くみんな此処から離れるんだ! 早くッ」

 大将に急かされるまま、新世代型の面々は赤塚組の誘導の元、フロアから出てドッキングベイに急行しようと走り出す。

 この間、聖龍隊は現場に留まって襲来してきたSO-Xを取り囲んで動きを制限させた上で、HEADに軌道修正を、赤塚組に新世代型の誘導を行わせようと画策するのだが。

「あ、開かないぞ!」

 なんと赤塚組が先行して直進した扉ハッチが開かず、新世代型の誘導が止まってしまった。

 しかも赤塚組の方だけではなく、コントロールブリッジに向かおうとするHEADも同様にハッチが開かず立ち往生してしまう。

 慌ててメタルバードがコンピューターにアクセスして何故開かないのか調べてみると、トンでもない非常事態が発生していた。

「や、ヤバイぞ……SO-Xがフロアに侵入した事で、非常プログラムが発動してこのフロアそのものを軟禁状態にしちまいやがってる! SO-Xを倒さない限り、扉は開かねえぞ……!」

 メタルバードの告発に誰もが耳を疑った。が、その間もSO-Xは自分を取り囲む聖龍隊の隊士たち相手に戦闘を開始してしまい、手から黒い刃状の物体を派生させるとそれで斬り込んできた。

「うわっ!」

 目にも止まらない抜刀術で斬り込んできたSO-Xに吹き飛ばされてしまうキリトたち。

 すると此処で、ミラールと巴マミによる二重の銃撃がSO-Xを襲い、奴を吹き飛ばして見せた。

 ミラールとマミ二人の砲撃にも近い銃撃を受けて壁に激突するまで吹き飛ばされてしまうSO-X。そして壁に激突したSO-Xはそのまま床に落下して、あろう事か新世代型二次元人たちの群衆の中に落下した。

「わッ!」

 頭上から落下してきたSO-Xに困惑し、慌てて距離を置く新世代型たち。彼らの中には、初めてSO-Xを目撃する者も多く、その容姿が自分達の始祖小田原修司と酷似している事実に改めて驚かされてしまう一同。

 するとSO-Xはスッと何事も無かったかのように立ち上がり、自分の周辺をキョロキョロと見渡した。これに新世代型たちが一驚するが、SO-Xは彼らを見ても攻撃しようとはせず、目の前を素通りして再び聖龍隊と戦闘に発展する。

「ど、どういう事だ……?」

「なんで俺たちには攻撃してこないんだ……?」

 何ゆえ自分達に攻撃の手を向けないのか呆然としながら考え込んでしまう星原ヒカルと出雲ハルキ。

 すると、そんな考え込む同族の新世代型たちを尻目に、何かを察していたのか斉木楠雄と琴浦春香が愕然としていた。

「ど、どうしたんだ、琴浦? なにか判ったのか……」

「さ、斉木……?」

 恋人である真鍋義久と親友である燃堂力が訊くと、琴浦春香は蒼然とした面持ちを浮かべ、斉木楠雄は愕然とした表情で訳を話した。

「なぜSO-Xが僕らを襲ってこないのか、僕と琴浦さんはテレパシーで察したんだよ」

「え! なんで襲ってこないの? 斉木……!」

 斉木の返答に燃堂が問い返すと、斉木は口元を歪ませながら事実を申した。

「あのSO-X……僕たちを仲間だと思い込んでいる……!」「!!」

 なんと斉木と琴浦がテレパシーで読み取って判明したのが、SO-Xは新世代型二次元人を自分達と同種族と捉えていたらしいのだ。

「そ、それでは……! 斉木楠雄よ……あのSO-Xもそうだが、寄生生命体Xが私たち新世代型を襲ってこない理由もまさか……!」

 斉木楠雄の話を聞いて察しの良い鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が問い掛けると、斉木は重々しい表情で誰もが知りたくも無かった事実を突きつけた。

「ああ……その通り。自分達以外の種に寄生するXも、SO-X同様に……いや、その逆でSO-XがX同様に僕たち新世代型二次元人を自分らと同じ生命体や種族として捉えていた。簡単に言えば、僕たちを仲間や同族と認識していたから、寄生はもちろん襲いかかろうともして来なかった訳だ……!」

「な、何と言うことか……! SO-XはもちろんXも小田原修司の遺伝子の突然変異で生まれた生命体である事は知っていたが、まさかそんなおぞましい生物が小田原修司の遺伝子と構造パターンの近い我ら新世代型を同族として捉えていただなんて……!」

 余りの衝撃的な事実に、斉木の話を聞いた皐月は愕然と表情を一変させてしまう。

 

 D-ワクチンで通常の遺伝子とは異なる細胞を持った小田原修司。

 その小田原修司の遺伝子構造を似せて生み出された多くの新世代型二次元人は、小田原修司のクローンに近い種だという。

 そしてその小田原修司の遺伝子から突然変異で生まれてしまった寄生生命体XとSO-X。

 そして今、驚愕の出会いを新世代型とSO-Xは果たしてしまう。

 X達から一方的に同族や仲間と捉えられた新世代型。果たして彼らの運命はどうなるのであろうか。

 

 

[対決 SO-X]

 

 小田原修司のD-ワクチンで変異した遺伝子から突然変異で生まれたXとSO-X。

 そしてD-ワクチンで変異した小田原修司の遺伝子構造をモデルに生み出され、彼のクローンにも近い種、新世代型二次元人。

 このXとSO-Xは新世代型二次元人を自分らと同じ系統の種だと認識していたのだ。それ故に今まで、聖龍隊に属していた新世代型にはXは攻撃もしなければ寄生もしてこず、新世党の面々もSO-Xと偶然に遭遇しても何の追撃もされずに助かっていたのだ。

 自分達が今までXから助かっていた理由が、奴らが自分達を同族や仲間だと認識していた事実だったからだと知って、愕然となる新世代型たち。

 

 だが、新世代型たちがまたしても衝撃と悲愴に暮れている最中、その話題の中心にいるSO-Xが果敢に聖龍隊に攻撃してきていた。

「うわあっ!」

「な、何とか凌ぐわよ……コイツで最後の敵と思っておかないと……」

 SO-Xの刃に弾かれながらよろめき立つアスナを横目に、ミラールが皆にSO-Xを最後の敵だと思って戦闘を展開するようにと指示を飛ばしていく。

 すると少し離れたところから、マン・ヒールズが隊長ミスティーハニーが配下の仲間達と一緒にミラールにも告げた。

「ミラール、この先何があるのか分かんないんだし、まだ余力は残していた方が得策よ」

「で、でも! コイツを倒さなきゃ、コントロールブリッジにも行けやしないのよ! ここは全部の力を出し切って、この前総長モドキをぶっ倒しちゃいましょうよ!」

「……それもそうだけど、まあ、無理はしないでよね」

 ミスティーハニーは最後にミラールの意見に押されて、全戦力を注いで目前のSO-Xに攻撃を集中させた。

 と、其処にコントロールブリッジへの進入が出来ず、立ち往生していたHEADもSO-Xの討伐に乗り出した。

「ミラール! ミスティーハニー! ……二人とも、まずは周りの仲間達の様子を見てみろ! ……みんなさっきのドレフとの戦いで戦意を失っちまうほど疲労が蓄積しちまってるぞ。これじゃ殆ど立ち回れねえぞ」

 メタルバードの指摘に、ミラールもミスティーハニーも周りの仲間達が息を切らして疲労が蓄積されている現状に気付かされた。

 だが、ドレフ戦で疲労が蓄積されているのは実はHEADも同じであった。メタルバードもそうだが、他のHEADも先のドレフとの戦いで力を出し尽くしてしまい、息が上がっていた。

「ッ……コイツはヤバイぞ……俺たちゃ、すっかり草臥れたヨボヨボの爺さんだぜ……」

 両膝に手を着いて、周りの状況を確認していくメタルバードは、明らかにドレフ戦前とは比べ物にならないほど聖龍隊の戦力も士気も低下している現状に途方に暮れた。

 すると此処に、聖龍隊が必死になってSO-Xと応戦している中、赤塚組も銃火器で加勢しに加わってくれる。

「た、大将……!」

「へへっ、さっきのドレフの時はお前さん達にいいカッコさせちまったが、今度はそうはいかねぇぞ。赤塚組の本領を発揮させてやるぜ! その間にテメェらは休みついでに新世代型の護衛を頼んだぜ!」

「お、おう……分かったぜ、大将」

 メタルバードは大将に言われるがままに、他の聖龍隊と共に新世代型二次元人の護衛に就いて、SO-X討伐は大将たちを信じて任せた。

 しかし一任させる前に、メタルバードはSO-Xに向けて一発光線を発射した。

「大将! これはSO-Xに強力なダメージを与えられるようになるワクチンビームだ! これを打ったからには、SO-Xにも普通の銃火器は並みの様に効く筈だぜ」

「おうっ、ありがとなバーンズ!」

 メタルバードの粋な計らいに、大将は威勢よく礼を返す。

 そして赤塚組は、メタルバードが照射したワクチンビームで弱体化したSO-Xに向けて銃撃を再開。

 しかし銃撃を浴びるSO-Xは苦痛を感じながらも、赤塚組に反撃の剣戟や波導弾を発射したりと反撃を続ける。

 赤塚組と激しい抗戦を展開するSO-Xとの戦いを観戦して、聖龍隊は疲労困憊で見届け、新世代型たちは不安な胸中で情景を見守っていた。

 するとその時、SO-Xが放った波導弾が新世代型たちの方へと流れてしまった。流れ弾である波導弾を目の当たりにし、愕然となる新世代型たち。

 もうダメかと思われた瞬間、新世代型たちに自分が放った波導弾が直撃しそうになるのを視認したSO-Xが指を動かして波導弾の向きを遠隔操作して変えた。

 自分たちに直撃しそうになる波導弾を敢えて回避させてくれたSO-Xの行為に愕然となる新世代型たち。だが次の瞬間、変えられた波導弾の向きがなんとプロト世代のチョコとギュービッドたちの方へと向けられていた。

「ちょ、チョコちゃん!」「うわあっ!」

 波導弾が直撃しそうになるチョコ/ギュービッド/桃花・ブロッサムの三人を直視して琴浦春香が思わず叫ぶ。

 しかし三人に波導弾が直撃する寸前、新世代型の纏流子が鮮血更衣でパワーアップした片太刀バサミで波導弾を弾いてチョコたちを助けた。

「大丈夫か!」「あ、ああ……」

 流子から呼びつけられ、ギュービッドは唖然としながらも返事を返した。

「ど、どういうことだ……? なんで僕たちには直撃させず、チョコちゃん達の方に攻撃の矛先を変えたんだろう……」

 何ゆえ波導弾の向きをSO-Xが変えたのか不審がる新世代型のイオリ・セイの疑問に、先ほどテレパシーでSO-Xの思考を読み取った斉木楠雄が険しい表情で代弁した。

「あのSO-Xはもとい、寄生生命体Xは僕たち新世代型を同種類の生物として認識している。だから防衛本能で僕たち新世代型たちを守ろうと、波導弾の向きを変えたに過ぎない……例え、その攻撃の矛先がプロト世代や僕ら以外の二次元人に向こうと構わずにね……」

 斉木楠雄の話を聞いて新世代型二次元人一同は愕然となった。

 寄生生命体Xを防衛する本能を持つSO-Xは、自分たちと同じ種族だと認識している新世代型二次元人にも同等に防衛本能を働かせるというのだ。それも、他の種族、プロト世代や旧世代の二次元人を排除しようともそれは変わらないという。

 XやSO-Xの生態について新たに驚愕の生態を周知した一同。だが、その間もSO-Xは果敢に赤塚組に反撃を展開し、赤塚組はSO-Xと死闘を展開させていた。

 これを黙視できないと、遂に鮮血更衣を着衣した纏流子が戦前に飛び出た。

「アタイ達を味方や同族と思えば勝手に思ってろ! その分、コッチから攻撃してやるぜ!」

 流子は自分たち新世代型を同族と思い込み、手出ししないSO-Xに存分に攻撃してやろうと飛び出して斬りかかった。

 赤塚組の銃撃を受けて、体中銃痕の穴だらけになりながらも、即座に傷口を回復させてしまうSO-Xの背後から、流子は斬り付けた。

 背面を片太刀バサミで斬り付けられたSO-Xは背後にいる纏流子に気付いて首を傾げた。SO-Xにとって、なぜ同種族である新世代型の纏流子が自分に攻撃したのか理解できなかったのだ。

 そんな戸惑う素振りを見せるSO-Xに流子は怒鳴り散らした。

「いい加減にしろよバケモノ! アタイらとアンタら寄生生物が一緒な筈ねえだろうがッ! 勘違いも程々にしやがれッ」

 そう怒鳴り散らすと流子は更に片太刀バサミでSO-Xの頭部を貫き、引き抜くと同時に横へと切り裂いた。

 だが、頭部を貫かれ、其処からそのまま切り裂かれたSO-Xは一瞬千鳥足になるものの、瞬く間に傷口を再生させて元の状態へと戻ってしまう。

「流子、無理するな!」

 と、そこに流子の姉である鬼龍院皐月も飛び出して、得物である二本の脇差を両手で抜刀し、二本ともSO-Xの頭に突き刺した。

 皐月から二本の脇差を刺し貫かれたSO-Xは、またしても千鳥足で戸惑ってしまうが、なんとSO-Xは自分の頭に刺された二本の脇差を自力で引っこ抜くと、その脇差を両手に構えて臨戦態勢を構えた。

「な、なんだと!」

 大将たち赤塚組も、聖龍隊も、そして新世代型たちも驚愕した。だが、赤塚組と聖龍隊が驚愕したのはSO-Xが自分の頭を貫いた脇差で攻撃の態勢をとった事よりも、その構えが脇差の柄を逆手に握りしめている独特の持ち方であった事。これは本物の小田原修司も脇差などの小型の刃物を両刀に使う際に行った持ち方だったからだ。

 そして皐月から奪った二刀の脇差を逆手に持ったSO-Xは、それを巧みに使いこなしながら接近戦を展開し始めた。

 赤塚組の大将は、自分たちが使っている最新式の光線銃でSO-Xからの剣戟を受け止めつつ全て防ぎ切ろうと一生懸命だった。

 そんな大将の危機に、同じ赤塚組のミズキが上空から滞空しつつSO-Xを狙撃。ミズキの照射はSO-Xの頭部から胴体を貫き、急所を捉えることに成功。しかしSO-Xはスグに患部を再生させて周辺の赤塚組と攻防を展開する。

 こんな赤塚組の危機を見て、余計に黙っていられない纏流子は、再びSO-Xに向かって特攻した。

「このヤロッ!」

 心の中では(こんな奴とは違う)(自分たち新世代型は寄生生命体Xとは違うんだ)と強い思いを秘めながらSO-Xに片太刀バサミを突き刺した。

 グサリという鈍い感触が流子の全身に伝わった瞬間、流子は衝撃的な光景を目にした。

「……! な、なんなんだよコレは!!」

 それはなんと、片太刀バサミを突き刺した個所からSO-Xの血がまるで生きているかのように蠢いて、次第に片太刀バサミを呑み込み始めていたのだ。これを見た姉の鬼龍院皐月は慌てて妹の流子に呼び付けた。

「りゅ、流子! SO-Xは従来の寄生生命体Xと同じく、他の生物の細胞を侵蝕して増殖する生命体だ! 今そいつは幾度となく流子に襲われたことで、お前を異常な生物として敵視して侵蝕し始めたのかもしれない! 急いで離れろッ」

「わ、分かった…………って、もう腕まで侵蝕されちまってる!」

 皐月の思いとは裏腹に、時すでに遅くSO-Xは流子の腕を半分まで侵蝕してしまってた。

「りゅ、流子、待ってろ……!」

 皐月は急いで流子の許に駆けつけて助け出そうとするが、それを見て赤塚組のテツが彼女を制止した。

「待つんだ! 迂闊に近寄れば君も侵蝕されてSO-Xに取り込められてしまう……!」

「で、でも、このままでは流子が……!」

 テツの制止に、皐月は今にも泣き出しそうな面構えで救いを求める。

 その間も流子の腕は見る見るうちにSO-Xの細胞に取り込まれていく。それを何とか止めようと赤塚組が発砲して銃撃するが、SO-Xの身体に着弾した傷跡は瞬く間に消失してしまい、動きを止めるまでには至らなかった。

「うっ、クソ……このままじゃ……!」

 粘り気のある血のような細胞に腕から取り囲まれていく鮮血更衣の流子。するとその時、彼女が着衣していた鮮血更衣に変化が。

「な、なんだなんだ!?」

 突如輝き出す鮮血更衣に戸惑う流子。するとこの時、流子の脳内に鮮血の声が。そして共有感知を通して他の新世代型にも鮮血と流子の会話が流れてきた。

(……流子、どうやらお前とは此処でお別れのようだな)

(せ、鮮血? 突然、何を言い出すんだ……?)

(俺がここでSO-Xの侵蝕を阻む。そしてお前を侵蝕から脱出させる……)

(ちょ、ちょっと待ってくれ! それじゃ何か? お前だけがSO-Xに取り囲まれちまうって事じゃないか!)

(そう言うことだ。お前を……流子を助けるには他に選択肢はないんだ……)

(じょ、ジョーダンじゃねえぞ! そんな勝手な……)

(セーラー服とは、ここで卒業ってことだよ流子。どうかみんなで無事に、地球に帰ってくれよな)

 そう話し終えると、鮮血は自分を着衣している流子を自ら着脱させて、流子を解き放った。

 鮮血から着脱された流子は素っ裸の状態で放り出され、その間にも鮮血更衣はSO-Xに徐々に徐々にと吸収されていくのが流子の目に飛び込んできた。

「せ、鮮血ーーーーッ!!」

 自分を助けるために敢えて鮮血更衣を着脱させて解き放った鮮血の男気を前に、裸体で解放された流子は鮮血の名を叫ぶ。

「せ、鮮血……」「危ないわ!」

 自分を離脱させた鮮血を気にかけ、急いで再び鮮血を吸収したSO-Xに駆け寄ろうとする裸体の流子に、赤塚組のミズキが上空から駆け寄っては自身が羽織っていたジャケットを流子に羽織わせると同時に彼女を制止させる。

 すると其処に、無防備になった纏流子を気にして赤塚組のテツや市川一太郎たちが駆け付けながらSO-Xに発砲していく。

「と、止めないでくれッ。鮮血が、鮮血が……!」

「もう完全に取り込まれてしまった。残念だが、もう手遅れだよ」

 無我夢中でSO-Xに吸収されてしまった鮮血を助け出そうとする流子に、テツは既に手遅れであると釘を刺して流子を制止させる。

 そんな中、赤塚組は鮮血更衣に片太刀バサミを吸収したSO-Xに一斉射撃を展開、無数の風穴を開けさせる。

 一方で、その鮮血を吸収した上に赤塚組から無数の銃撃を浴びたSO-Xに変異が生じ始めていた。

「あ、アレは……!」

 その変異を見て、大将が愕然と一時銃撃をやめる。

 その変異とは、SO-Xが突如として膨張し出し、身体が見る見るうちに膨れ上がったと思いきや見るも無残なグロテスクな四足の巨大な怪物へと変貌したのだ。

「ウソだろ……ッ!」

 その変貌したSO-Xを直視して愕然となる大将たちに、ワクチンビームで少なからず援護射撃をしていたメタルバードが自分なりの解釈を話した。

「クソッ、多分急激なダメージの蓄積と合わさって、鮮血を吸収して取り込んだ事から肉体の構造が変異してあんなバケモノに変わったんだろう……みんな、気を抜くな!」

 急激な損傷と鮮血の吸収による変異から、四足の不気味で巨大な怪物へと変貌を遂げたのだと説明するメタルバードは、その変異したSO-Xに向けて再度ワクチンビームを照射する。

「グギャッ、グギャア……」

 ワクチンビームを受ける度に奇怪な鳴き声を発するようになるSO-X。そんなSO-Xに赤塚組も再度、銃撃を展開した。

 メタルバードのワクチンビーム、そして赤塚組の特殊武器による銃撃を浴びて、次第に弱々しくなるSO-X。

 そして攻撃を浴び続けたSO-Xは、全身を赤黒く変色させていき、最後には身体が崩落していった。

 身体が崩れ始めたSO-Xに、赤塚組は更に銃撃を展開。無数の銃痕を浴びせていき、穴だらけにしてみせた。するとSO-Xは奇声を発しながら全身を崩落させて死滅したかのように見えた。

「や、やったか!」

 赤塚組の山崎貴史が喜ぶが、全身が崩落したSO-Xはまだ死んではいなかった。

 なんと人型で本物の小田原修司から、異形の四足の怪物に変異を遂げた上、さらにSO-Xは強靭な外殻を誇るコアXに変異して一同に赤塚組に襲い掛かってきた。

「こ、今度はコアXかよ!」

 強靭で、通常の方法では損傷を与えられないコアXに変化したSO-Xを前に一驚する大将たちであるが、驚いている暇もなくコアXに変化したSO-Xに攻撃を再開しようとする。

 だが、ここで通常のコアXとは異なる箇所がある事を、赤塚組だけでなく現場の一同が揃って気付いた。

「オギャア、オギャアアァ……」

 なんと通常コアXの核に見られるのは集結したXなのだが、SO-Xが変異したコアXに見られたのはまるで人間の胎児そっくりの赤黒い生物が核に納まっていた。一見すると実に不気味なこの生物であったが、通常の核が弱点である以上、この胎児こそSO-Xの核すなわち弱点であり、言うなれば実体なのかもしれなかった。

 これらの事実を踏まえて、赤塚組は何とかコアXの内部に蹲っている胎児の様な核に銃弾を直撃させようと試みた。

 しかし銃弾は全て案の定、強靭な硬さを誇る外殻に守られて防がれてしまい、ミズキのレーザーも歯が立たなかった。

 すると八方塞な状況下でコアXは強力なビームを目の様な感覚器から発射。赤塚組はこれを回避するが、コアXに対抗する手立てが見出せなかった。

 すると此処で、コアXが発射したビームをミラー・バリアーで防いで新世代型達を護衛したミラーガールが大将に告げた。

「大将! その感覚器官を狙って! ビームを発射する際の目のような感覚器が露出した所を狙って撃てば、外殻を通過して銃撃が当たるわよ!」

 以前にも同じタイプのコアXを対峙したミラーガールからの助言に、大将は険しい面差しで無言の頷きを示すと、コアXに向かって狙いを付け始めた。

 だがコアXはビームを発射すると露出する感覚器をスグに閉ざして、攻撃の隙を晒してはくれない。

 焦燥に駆り出される大将が額に汗を垂らしてジッと耐え忍ぶが、その間もコアXは周囲にビームを発射して猛威を振るい続ける。

 ここで大将は一発勝負に乗り出した。大将はコアXの進路方向先に飛び出して、そのまま横になるとコアXを挑発した。

「コッチだ! 来いッ」

 大将の挑発に乗ったのか、はたまた戦闘本能からか、コアXは大将の方へとジワリジワリと迫って来た。

 皆は大将の真意が分からないまま、戦況を見守っていると、案の定コアXは大将に向けてビームを発車しようと感覚器を露出させた。すると大将はこの時を狙っており、床に寝そべった状態でライフル銃でコアXの露出した感覚器に一発の銃弾を発射。銃弾はコアXの感覚器を貫通して、核である胎児のような生体機関いやSO-Xの実体に直撃した。

「ウギャア、ウギャア、ウギャアッ…………!」

 断末魔の様に泣き叫ぶコアXの中の胎児。するとその胎児を覆っていた強靭な外殻は砕け散り、胎児もまた肉体を崩壊させて肉の塊のような小さな物体へと縮んでいった。

 すると核である実体が縮んだコアXもといSO-Xはそのまま何処ぞへと姿を消してしまわれた。

『……………………………………………………』

「な、何だったんだ、今の赤ん坊は……」

 皆や赤塚組のアツシがコアXの中に存在していた胎児のような物体に唖然と立ち尽くしている最中、床に寝そべってその胎児を狙撃した大将は一仕事終えた感じでため息をつくと立ち上がって額の汗を腕で拭った。

「ふぅ、どうにか片付いたみたいだな」

 そんな大将にメタルバードも言葉をかける。

「お疲れさん」「いいや、それほどでも」

 声をかけられた大将は、それほど労力を使わなかったと意気込んでいた。

 

 こうして大将の起点により、コアXにまで変貌したSO-Xを退かせた赤塚組は安堵に浸る。

 が、皆が揃って安堵している暇は無かった。

「よし、遂にSO-Xを追い払う事はできたな。あのダメージじゃ、当分戦える様子じゃないだろう……今のうちにオレ達はコントロールブリッジでB.S.Lの軌道を修正しておく。大将、お前さん達は新世代型達を引き連れて先にドッキングベイに向かってくれ。オレらも後から必ず向かう」

「ああ……あの修司とそっくりの口調のコンピューターにも言われたが、全員そろって地球に帰るとしようぜ」

「修司そっくり、か……」

 大将の言葉に、メタルバードは思い詰めた表情を浮かべた。

 そしてSO-Xが撤退した事で非常事態プログラムも停止した事でフロアのハッチ全てが開閉できる様に状態が戻っていた。

「それじゃ私達は総力を挙げてB.S.Lの軌道修正に全力を注ぐわ! みんなは非難のために急いでシルバー・ウィングに向かってちょうだい!」

「ええ! 分かったわ……後はお願いね、コレクターユイ」

 聖龍HEADのコレクターユイからの指摘に。親友である市川レイコは笑顔で結に後を任せる。

 そして聖龍HEADはコントロールブリッジで軌道修正に取り掛かり、他の聖龍隊と赤塚組は新世代型達を誘導する役回りに徹した。

 

 

[D-オメガ 来襲]

 

 擬態元の小田原修司から、鮮血を吸収して取り込んだ影響で四つ足のグロテスクな怪物へと変貌を遂げたSO-Xは最終的に強靭な防御力を誇るコアXとして立ち向かってくるものの、赤塚組頭領赤塚大作、通称大将の起点を生かした狙撃で最後を締めくくった。

 だが、まだ彼らの仕事は終わった訳ではなく、コントロールブリッジで軌道を修正してB.S.Lを太陽に向けようと画策する聖龍HEAD。そしてその他の聖龍隊と赤塚組は新世代型二次元人達を護衛しながら誘導させていき、聖龍HEADと赤塚組が強行潜入の際に使ったドッキングベイに停泊させてあるメタルバードの愛機シルバー・ウィングに全員を搭乗させようとB.S.L内を駆け抜けていた。

「さあ、慌てるな慌てるな! まだ軌道は修正されてないんだ、急がず確実にドッキングベイに向かって進むんだ」

 赤塚組のテツが誘導していく中、ある新世代型二次元人が突如として立ち止まっては、思わぬことを言った。

「……僕たち、本当に生きていて良いんでしょうか……」

 この言葉に赤塚組も、同じ新世代型達も愕然となるが、そんな発言を述べる少年にテツは無精ひげを蓄えた顔を近付けさせて言った。

「当り前だろうが! この世に生まれてきて悪い生物なんていやしないんだ! 君達は君達の今まで通りの人生を歩んでいけば良い」

 テツのこの言葉に感化されたのか、すぐに少年は立ち上がり再び皆と共に走り出した。

 その頃、無事にコントロールブリッジに進入できた聖龍HEADたちは総力を挙げて軌道修正に取り組んでいた。

 そしてアッというまにコントロールブリッジからB.S.Lの軌道修正を成功させる。

 

「軌道が変更されました。3分後に太陽に衝突します」

 

 このアナウンスが鳴り響くB.S.L内部では、アナウンスを聞いて聖龍隊と赤塚組そして彼らに誘導されながらドッキングベイに向かう一団は焦り始めた。

「た、大変だ……! 急がないとこのステーション、太陽に衝突しちゃう!」

「慌てるな少年、こう言った時こそ冷静に対処していけば必ずみんな無事でいられるはず……」

 激しく動揺する新世代型の小野田坂道に、教師でもある猿田学が説き伏せていく。

 その頃、起動を修正しに向かったHEADは凄まじい速度で無人のB.S.Lを駆け抜けていた。

「急げ急げッ! あとは全員をシルバー・ウィングに乗り込ませて発進させれば万事解決よ!」

 銀河連邦本部からの目玉など眼中にないメタルバードの気楽な発言に、思わず口元に笑みを浮かべてしまうHEAD女性陣。

 同じころ、HEAD以外の聖龍隊と赤塚組は新世代型達と共に、最後に全力疾走でB.S.L内を駆け抜けていった。

「走れッ、とにかく走るんだ! ……生きる為にも!」

 既に警告アナウンスが鳴り響いた時点から、タイムリミットが迫ってきているのを感じ取っていた赤塚組は何事も生き抜くために駆け抜けようと皆に告げていく。

「走って走って走るんだ! 生きる為にも、走り続けろッ!」

 皆、大将の全力での駆け足に導かれて全員が全力疾走でドッキングベイへと到着した。

 だが、皆が息も絶え絶えでドッキングベイに着くと、そこには信じられない光景は広がっていた。

 ドッキングベイの内装は酷く損傷を浴びており、エリアの奥には巨大な抜け殻が聳え立っていた。だが何よりも皆を絶望的な状況に追い込んだのは、停泊している筈のシルバー・ウィングが影も形も見当たらなかった事である。

「ど……どうなってやがる!」

 余りにも殺伐とした状況で大将も思わず怒号を言い放ってしまう。

 すると其処に、遅れて駆け付けてきた聖龍HEADが到着した。

「大将、みんな、こんなところで何やってやがる。早くシルバー・ウィングに乗り込むんだ……!」

「そ、それがバーンズ……肝心のシルバー・ウィングが無くなっちまっているんだよぉ」

「何だと! そんなバカな……!」

 ドッキングベイに確かに停泊させておいたシルバー・ウィングの姿が影も形も消失している事実に愕然とするメタルバード。

「バーンズ、どうするのよ! これじゃみんな揃って脱出なんてできやしないわ!」

 赤塚組の海野なるの指摘に、メタルバードはその場に座り込んで頭を掻きながら何ゆえシルバー・ウィングが消失しているのか考え込んだ。

 するとその時、ドッキングベイに強烈な地響きしたのだ。突然の揺れに皆が考え込むのをやめて辺りを見渡してみると、ドッキングベイの一番奥手、その壁を突き破って巨大なティラノサウルスのような異形の怪物が姿を露にした。

「こ、この怪物が……この巨大な抜け殻の持ち主か……!」

 赤塚組のテツが、先ほど目撃した巨大な抜け殻を見て、この持ち主がこの怪物なのではないかと直感を働かせる。

 すると、皆の目の前に現れた巨大な恐竜の姿に酷似している異形の怪物を見て、聖龍HEADは血相を変えた。

「あ、あれは……間違いない! D-オメガだ!」

「お、オメガって……確か小さな小エビのような幼生が成長した最終段階か!?」

 ジュピターキッドからの質問に大将は驚愕してしまう。

 すると此処でメタルバードが自分の憶測を皆に述べ始めた。

「人工知能から聞いている。ここB.S.LではD-ワクチンの研究過程で、幼生体から一足飛びに最終形態のオメガにまで成長させる技術が確立してたと。おそらくあの個体は秘密研究所の自爆から逃れた1体がセクター1で急成長した事で此処にいるんだろう……」

「お、おい! それじゃ何か? 俺たちがマゴマゴしている間にシルバー・ウィングはコイツにぶっ壊されちまったっていうのかよ!」

 メタルバードの説明と憶測を聞いて、大将が既に脱出に必要なシルバー・ウィングはD-オメガによって破壊されたのかと難癖を付けた。

 が、その間にもD-オメガは強靭な後ろ足でのそりのそりと皆の方へと歩み寄り、強靭な顎で噛み砕こうと迫って来た。

「グギュルゥゥゥ、グルゥゥ……」

 奇怪な甲高い鳴き声を発しながら、D-オメガは自らが脱ぎ捨てた脱皮を踏み潰して皆の方へのっそりのそりと歩み寄る。

 八つの大小揃った紅い目玉に、四方に広がる巨大な口、まるで宇宙の様な紫色の腹部の組織、強靭な二本の後ろ足、そしてどんな相手でも一振りで軽々と吹き飛ばしてしまう強靭な前腕から派生する爪が怪しく光っていた。

 D-オメガという強敵を前に、メタルバードは全聖龍隊士に命じた。

「聖龍隊! 如何なる攻撃手段でも問わない、D-オメガを撃破しろッ」

 メタルバードの指令を受けて、聖龍隊は挙ってD-オメガに突撃した。

 だが、突撃した瞬間、D-オメガは強靭な前腕の爪を振り翳し、聖龍隊の隊士たちを悉く薙ぎ払ってしまった。

 だがそれだけではなく、なんと薙ぎ払われた聖龍隊の隊士達の変身が解けて、元の姿へと戻ってしまった。

「ど、どういう事なの……姿が戻ってる……」

「まどかだけじゃないわ。私たち全員、元の制服姿に戻ってるわ」

 鹿目まどかや暁美ほむらたち【まどか☆マギカ】の面々は皆揃って魔法が使える前の制服姿へと戻ってしまわれた。

「ど、どういう事だろう。僕の姿も元通りだ……」

「私達もよ……」

 同じくシルバー・クロウこと有田春雪にブラック・ロータスこと黒雪姫は仲間の【AW】の面々だけでなく【SAO】の面々も同じ現象に悩まされている現状を目の当たりにする。

 そしてそれは聖龍HEADも同じであった。メタルバードもバーンズに、ジュピターキッドもジュニアになど、全員の変身が解けていた。

「ッ、どうなってやがるんだ……!」

「それに可笑しいよ……また変身しようとしても、変身できない!」

 バーンズとジュニアが変身できないで困惑していると、そこに今度は新世代型二次元人で、まだ戦える者たちが聖龍隊の危機と直感して各々がD-オメガに向かっていった。

 するとこの時、変身を解除されて自由に使えなくなった状況を考えていたバーンズが新世代型達に向かって叫んだ。

「お、お前らやめろ! オレの考えが正しけりゃ、迂闊に接近するな……!」

 しかしバーンズの制止を聞く前に、既にD-オメガに向かっていく新世代型達。すると最初の聖龍隊と同じく能力が弾かれてしまい、変身してた者は全て変身が解除されてしまった。

「こ、コイツは……どうなってやがるんだ?」

 先ほど鮮血更衣を着脱して失った纏流子は、そんな自分に生命戦維の力を注いで今や普通の学生服を着込んでいるのと差がない仲間達と共に、戦いを見守っていた。

 すると此処でようやくバーンズが驚愕の事実を皆に語り明かした。

「あ、あのD-オメガ。修司の闇の能力も受け継いじまっているんだ……闇の能力で変身能力はもちろん、ありとあらゆる能力も無力化されて封じ込まれちまう」

「お、オイそれじゃ! 今のお前達は完全に変身も能力も使えない生身の人間って事か!?」

「ああ、その通りだよ……」

 バーンズの説明を聞いて思わず問い詰めてしまう大将に、バーンズは涙目で答えた。

 聖龍隊はもちろん、新世代型の変身能力や特殊能力を全て封じ込まれてしまった現状に一同は愕然としながら絶望した。

「あ! そうだ、大将さん達の武器で、なんとか応戦できませんかね!?」

 新世代型の瀬名アラタに問われた赤塚組の大将は、彼の前まで歩むとアラタの目の前で強く主張した。

「それが……………………弾がねえんだよっ!」

「ええぇ!?」

 大将の告発に、アラタ達は愕然としてしまう。

 既に万事尽きた。聖龍隊も新世代型も能力を封じられて戦闘不能。赤塚組も弾薬が底をついて抗戦する事もできない。

 誰もが目の前に歩み寄る巨大なD-オメガに捕食されるのを覚悟した。

 その時だった。威嚇し、接近してくるD-オメガを前にどうする事も出来ずにいた一同の目の前に、先ほどの一戦で大将に痛烈な深手を負わせられたSO-Xが再び姿を現して、有ろう事か目の前のD-オメガを攻撃し始めたのだ。

 SO-Xの攻撃に苦しみ出すD-オメガ。なぜSO-Xは窮地の聖龍隊と赤塚組と新世代型達を助けに来てくれたのだろうか。

 その実態は、天敵のD-ワクチンを倒すという本能に従って、瀕死の聖龍隊や赤塚組を無視して乱入したのが事実だった。

 だが、事実はそれだけでは無かった。

(……りゅ、こ……流子……)

「! この声は……!」

 突然頭の中に直接響いてきた声に反応する纏流子。そして彼女の頭に伝わる声を、共有感知で新世代型たちもしっかりと頭に伝わる。

(流子、俺だ……鮮血だ……)

「せ、鮮血!? お前、無事だったのか?」

 先ほどSO-Xに吸収して絶命してしまったかに思えた鮮血の声を聞いて、喜びの余り涙目になる流子。そんな流子に鮮血はこう伝えた。

(いや、俺の意思は次第に遠のいてきやがる……! て、テメエら新世代型どもと話すのも、これが最後になるかもしれねえ……)

「鮮血……!」

(だ、だが安心しろ! このSO-Xは今、天敵を倒すというだけの本能でD-オメガに挑んでやがる。此処は俺が少しでもダメージを与えていくから、その間に皆は体制を立て直してくれ)

「せ、鮮血……だけど……」

(ウッ……約束しただろ、流子……セーラー服とは卒業する為に着てるもんだとよ。お前は……いいや、此処にいる多くの新世代型はみんな、過去の柵からホンの少し解放されたばかりなんだ……流子、それに多くの新世代型達……自分の出生や生い立ちという柵を脱ぎ捨てて、明日に向かって晴れやかに卒業してくれ……! そして生き抜くんだ……懸命に、自分の宿命と戦いながら……!)

「せ、鮮血?」

(ウゥ、もう時間が来ちまったようだ。最後に流子、お前に伝えたいことが……)

「……?」

(……最初に俺を着てくれたのが、お前で嬉しかったよ……)

 と、鮮血が流子たちに最後の言葉と捉えられる台詞を言い終わった瞬間、その鮮血を体内に取り込んでいるSO-XがD-オメガを壁際まで追いやっていた。

 だが次の瞬間、SO-Xが攻撃の手を一瞬止めた瞬間、D-オメガはSO-Xに向けて強靭な前腕の爪先でSO-Xを切り裂いた。

「せ………………鮮血ッ!!」

 鮮血の意思が僅かに残っていたSO-Xを切り裂かれたのを目視して絶叫する流子。

 そして無残にも切り裂かれたSO-Xは跡形もなく消滅してしまった。

「鮮血ーーーーーーっ!!」

 SO-Xと共に完全消滅してしまった鮮血を目の当たりにして、悲痛の絶叫を上げる流子。

 そんな彼女の悲しみを目の当たりにして、アッコは立ちどころに走り出した。

「あ、アッコ!」

 変身能力も封じられている現状で、戦前に飛び出していくアッコの姿を目視してバーンズが叫び止めようと彼女に手を向ける。

 

 するとアッコは封じられている筈の変身能力で瞬く間に、自らに蒼い光を纏ってその姿を一変させた。

 皆が驚愕しながら見届けていると、床に降り立ったミラーガールは今まで見た事も無いスーツを着衣していた。

「あ、アレは……!」

 皆が姿を一変させ、まるでパワードスーツの様な身なりにへと変身を遂げたミラーガールを見て唖然としていると、変身を終えたミラーガールは身構えて言い放った。

「ミラーガール……スペースパワードスタイル!」

 ミラーガールが変身したのは、宇宙空間でも激しい戦闘に特化した青と白のパワードスーツであった。右腕は強力なビームが発射できる砲身へと形状を変え、左腕には変わらずミラー・シールドという如何なる光線をもはね返す盾が装備されていた。

 そんなスペースパワードスタイルに変身したミラーガールは、速攻で目前のD-オメガに特攻を仕掛ける。

 皆が無謀だと高を括っていると、ミラーガールは軽々と巨大なD-オメガの背面に迂回して飛び乗り、ちょうど首と胴体の付け根あたりにある突起物に向けて砲撃を開始。するとD-オメガは苦しみ出して、暴れ出したのだ。

 この暴れ出すD-オメガにも全く動じず、ミラーガールは主にD-オメガの死角である後頭部や背面を狙って何度も狙撃した。

「な……なんて奴だ、アッコは」

「ああ、今回だけで今まで見た事も無い変身を2パターンもしてみやがった……」

 バーンズと大将は、今回だけでミラーガールが「ヤマトナデシコスタイル」と「スペースパワードスタイル」という全く異なる変身を自力でやり遂げた顛末に愕然としてしまう。

 と、その時。スペースパワードスタイルに変身したミラーガールがD-オメガに痛烈な損傷を与えていく最中、ドッキングベイで待機している皆々が環境の変化に気が付いていた。

「お、おい……何だか、暑くなってきてねえか……?」

 大将が大量の汗を掻きながら問い掛けると、新世代型たちがドッキングベイの発進路から除き込む宇宙空間を見て愕然とする。

「た、大変です! アレは間違いなく…………太陽!」

 新世代型のイオリ・セイが指をさして一驚する。灼熱の星、太陽がすぐそこまでB.S.Lに迫ってきているのが視認できたからだ。この非常事態に皆が騒然と化す。

「あ、アッコ! 大変だ、もうすぐで太陽に接近しちまう……!」

 変身が強制解除されたバーンズがミラーガールに訴えかけるが、ミラーガールは耳を貸す余裕もなく、ただ我武者羅にD-オメガに砲撃を続けていた。

 そしてミラーガールから幾度となく砲撃を受けたD-オメガは、体勢を著しく崩して床に伏せた。するとその瞬間にミラーガールは素早く立ち回り、D-オメガの開口する口内に向けて全身全霊のエネルギーを放射して注ぎ込んだ。

 体内に桁外れのエネルギーを流し込まれて、体内から破裂寸前まで追い込まれるD-オメガ。

 しかし、そのD-オメガはふと新世代型たちの方に視線を向けると、その不気味な瞳から一滴の涙を流して訴え掛けた。

「…………ごめんよ…………」

 生き残りたかったという切実な想いを訴えるD-オメガの心情を、真鍋義久たち新世代型二次元人達は同じ小田原修司の遺伝子から生まれたもの同士、涙を流して同情した。

 そして新世代型二次元人たちが同情する中、D-オメガはミラーガールが放射し続けたエネルギーによって体内から破裂・爆発した。

 爆発すると瞬く間に消滅してしまったD-オメガに想いを寄せながら、新世代型二次元人達はやるせない気持ちで一杯だった。本来、D-オメガも自分達も同じ小田原修司の遺伝子から生み出された存在ゆえに。

 

 

[帰還]

 

 辛くもD-ワクチンの最終形態D-オメガは新たなる変身を遂げたミラーガールの善戦により辛くも撃破できた。

 だが此処で、新たなる問題が浮上する。

「おい……オメガを倒したのは良いが、俺たちはどうやって帰ればいいんだ!?」

 大将が目を丸くして絶叫する。

 そう、軌道を変更した事で太陽に衝突寸前のB.S.Lから脱出する唯一の術、シルバー・ウィングの消失に現場は騒然と化した。

 D-オメガとの戦闘を終えたミラーガールも、この状況に手をこまねいてしまう。

 と、するとドッキングベイの発進路の奥の宇宙空間から銀色の光沢が覗き込んだ。それは紛れもないシルバー・ウィングであった。

 何故か自動操縦に設定していないシルバー・ウィングが何ゆえ、自力で離陸してドッキングベイから離れていたのか不思議に思う暇もなく、一行は急いでシルバー・ウィングへと全員搭乗した。

「急げ急げ! もうすぐで太陽に衝突する!」

 制限時間も残り僅かという瀬戸際で、大将やテツなどの面々が新世代型二次元人達を誘導してシルバー・ウィング機内に手引きする。

 全員が機内に乗り込んだのを確認した操縦者のバーンズは、即座にシルバー・ウィングを発進させた。

 

 全員を乗せたシルバー・ウィングがB.S.Lを発進して間もなく、軌道を太陽に修正されたB.S.L通称バイオロジック宇宙研究所は太陽の引力に引かれて衝突。大爆発を引き起こした。

 こうしてB.S.L内に蔓延る寄生生命体XやSO-Xを全て消滅させることに成功した一行は、宇宙空間を飛行して地球へと進路をとった。

 その道中、機内では満席状態で床に直に座り込む新世代型二次元人達がこれからの行く末に一抹の不安を感じていた。

「…………これから僕たち、どうなっちゃうんだろう……」

 自分達の遺伝子が小田原修司の遺伝子構造をモデルに生み出された、クローンに近い種族だと知って、これからの行く末に不安を抱く新世代型の直枝理樹。

 すると、そんな不安を抱く新世代型たちを見て胸が締め付けられる思いに駆られるプロト世代のチョコたちの後ろから、赤塚組の大将が歩み寄っては新世代型たちに声をかける。

「そんなに心配するな。さっきも言った様に、お前等はお前ら。何者でもない……お前達自身なんだ。胸を張って堂々と生きてゆけばいい」

「だ、だけど……」

 大将の言い分に新世代型の笹瀬川佐々美が反論しようとするが、返す言葉が見当たらなかった。

 するとその時、シルバー・ウィング内のコンピューターから、あの人工知能が新世代型たちに気軽に話し掛けてきた。

「おいおい、そんな心配したって何も解決しねえよ。大将の言った通り、お前達はお前達として、前を向いてしっかりと生きていけばそれでいいんだ。今はまず、ゆっくり休んで今後の事をのんびり考えましょうよ」

 この突然口調がガラリと変わった人工知能に唖然とする大将たち一同に、ミラーガールら聖龍隊が微笑む中、人工知能は語った。

「……ん、どうしたんだ? ああ、俺の口調が変わった事か。それはだ、俺もそこの新世代型同様、自分もまた小田原修司の複製品である事を知ったんでな。口ぶりも自然と変わっちまったんだ」

「え……それって……」

 人工知能の話が理解できない新世代型たちに、人工知能は詳細を語り明かした。

 

 優秀な戦士、小田原修司の頭脳は、その豊富な経験と的確な判断力をかわれ、彼の引退後も平和のために貢献していた。

 優秀な科学者や軍人の頭脳がコンピューターに反映される事が、今日ではさして珍しい事ではないと、ミラーガール達は初めて知ったのだ。

 そして、その修司との奇妙な再会により、全銀河に及んだであろう最悪の事態を回避できたことを、聖龍隊と赤塚組は痛感していた。

 だが、自分達と修司の判断を、銀河連邦はどの様に受け止めるのだろうか。

 連邦当局による無謀な、そして明らかに危険な過ちに、彼らはどんな見解を持っているのだろうか。

 それらを一切省みることも無く、責任を追及しようとばかり、するのだろうかとミラーガールは思った。

 そんな彼女の懸念に、修司はこう答えた。

「アッコ、どうしたんだ、そんな難しい顔をして。なあに、役人連中にも話の判る奴は少なからず居る。そいつらと上手く付き合えば、大丈夫さ」と……。

 修司の言葉を聞き、ミラーガールは思った。人にはそれぞれの立場や事情がある。その柵による過ちを繰り返しながら、人の心は最終的に正しい答えを見出すに違いないと。そう信じてみよう。修司自らがそのことを教えてくれたばかりではないかと……。

 と、ふとミラーガール達の脳裏にある疑問が浮かんだ。このシルバー・ウィングは操縦者であるメタルバードが搭乗または遠隔操作しない限り起動させる事はできない。だが、オメガが現れる前に、シルバー・ウィングは自力で発進していた。修司はいったい、どんなマジックを使ったのだろうかと。

 するとその時、搭乗者の前に備え付けられている画面がついて、人工知能「修司」が話し掛けてきた。

「何を考えているんだ、お前ら。……シルバー・ウィングを起動させた方法を知りたいのか?  簡単な事だよ、よく考えてみろ。あの子達が、手を貸してくれたんだ」

 修司の話を聞いて、新世代型たちが最後尾の後部座席の方に目をやると、そこにはぐっすりと眠る愛らしいエテコーンとダチョラ達の姿があった。

「自分達だけで操縦して疲れたんだろう、ゆっくり寝かせてやろうぜ」

 人工知能の修司の言葉に、皆は自然と顔を頷かせた。

 

 小田原修司から生まれた数々の存在。

 遺伝子構造を模して生み出された小田原修司のクローンに近い新世代型二次元人。

 保存されていた小田原修司の遺伝子から突然変異で生まれた寄生生命体Xと、本物の小田原修司に擬態したSO-X。

 小田原修司が過去に投与した際に体内で生まれた驚異の生命体D-ワクチン。

 多くの存在と事実を知って愕然となる一同は、一路地球へと進路を取る。

 多くの人命が奪われ、失われたB.S.Lが太陽に飲み込まれ、その全貌を跡形もなく消失させている間にも、彼らの活路が失われる事はない。

 かつて小田原修司が言い残した。

「この世には、死よりも残酷な現実がある」と……

 その言葉の通り、新世代型二次元人たちも聖龍隊も赤塚組も、本来の筋書きとは違った筋書きで残酷な現実を突き付けられた。

 誰かの代用品として生み出された、ゲームの駒。

 新世代型二次元人達は、ドレフが言い残した言葉の数々を深々と考えさせられながら帰路に就いた。

 果たして、新世代型二次元人達は今後、世界にとっての希望となるのか。それとも……

 

 

[隠ぺい]

 

 地球に帰還した一行を待ち受けていたのは、やはり銀河連邦からの叱咤であった。

 だがしかし、人工知能の修司の言う通り、理解ある軍人や役員の介入により聖龍隊や赤塚組そして何よりも新世代型たちに直接的な罰則は与えられなかった。

 しかし、その代わり銀河連邦と国際連合は、聖龍隊と赤塚組と新世代型達にある施行を強制させた。

 

 そして皆が地球に帰ってから数日後のこと。

 雨がしんしんと降り注ぐ薄暗い日中で大規模な葬儀が行われた。

 その葬儀には聖龍HEADも参列しているのが目に付いた。

 少し離れた場所からは、赤塚組の幹部衆と共に新世代型二次元人達が葬儀をジッと見据えていた。

「……チッ、胸糞悪い」

 大将は舌打ちをしながら、HEADが参列する葬儀を見据えていた。

 その葬儀には多くの政界の大物や名立たる軍人、そして大勢の民間人も後から付いてきていた。

 誰もが、その葬儀の故人を偲んで口々に名を呟く。

「将校……ドレフ将校……!」

「あんまりだ……ドレフ将校が、こんなにも若くしてお亡くなりになるなんて……」

 多くの人々がドレフ将校の死を労わって、涙ながらに彼の名を口にする。

 なぜドレフ将校の葬儀がこうまでして盛大に行われているのか。真実を知る新世代型達と赤塚組は憤りを感じて思い返していた。

 

「ドレフ将校が首謀者である事実は公言しない様に」

「彼の様な優秀な軍人が異常者(ヒール)になったとなれば、軍の面子が潰れるのは見えている」

「言っておくが、君たち新世代型二次元人が小田原修司の遺伝子を基に生み出された事実も公言しない事」

「君達も解っている筈だ。小田原修司のクローンに近いというだけで、どれほど危険を孕んでいるか……」

「君たち新世代型の件とドレフ将校の一件は此方からも伏せておく……それが、両者すなわち新世代型二次元人の為に有益な筈だ」

「ドレフ将校の新世党への関与は新世代型二次元人の機密事項と同じくトップシークレットとして記録している。だから……決して口がそれても事実を話すな、いいな」

 

 政府から中には脅し文句にも近い口調で言われた数々の台詞を思い出して新世代型二次元人たちは全員やるせない気持ちで一杯だった。

 そんな新世代型たちの胸中を知っても尚、聖龍HEADは立場上ドレフの葬儀に参列して、彼の死体が入っていない空の棺桶の上に花を添えていく。

 すると花を添え終えたバーンズに、軍の上層部の人間が耳打ちで語り掛けた。

「分かっているね。不本意であろうと無かろうと、葬儀は予定通りに……」

「分かってるさ」

「フッ、その演技力……前の総長と段々似てきてるよ」

「………………」

「まあ、立場上、君らがあのクローンもどきを守りたければ、此方の都合通りにこれからも事を運ばせるように……」

 軍の上層部の人間は、そうバーンズに語るとそそくさと自分の席へと戻っていった。

 バーンズたちHEADは、深い憤りを感じながらドレフの葬儀を最後まで務めるのであった。

 

 

 西暦2013年 バイオロジック宇宙生物研究所、通称B.S.Lにおける二次元人の反乱は聖龍隊による強行潜入チームの活躍により解決をみた。

 三次元政府は、当反乱の首謀者を 異常者(ヒール)=ドレフと認定。

 しかし、軍の上層部の軍人でかつ市民からの人望も厚かったドレフの新世党との結託は余りにも衝撃的で、政府は彼が異常者(ヒール)であった事を伏せた。

 ドレフの死を、軍政権は過去の戦闘で受けた「戦傷」が死因であると公表。

 政府は聖龍隊と赤塚組、そして新世代型二次元人に彼らが小田原修司のクローンに近い種族である事実も含めて、ドレフの真実にかん口令を布いた。

 反乱組織 新世党メンバーの異常者(ヒール)認定は、ミラーガールの嘆願により保留とされた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。