現政奉還記 未来都市&宇宙編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 ドレフ将校より貸し与えられたフリーパスを各々と使ってジャッジ・ザ・シティを探索する二次元人たち。だがそんな彼らの前に続々と阻む凶悪な異常者たち。だが、彼らは果たして本物だったのだろうか? その疑問だけが最後に残る一同だった……。



現政奉還記 ジャッジ・ザ・シティ編 犯罪界のエンターテイナー

[明らかになる真実]

 

 一連の事件からジャッジ・ザ・シティの聖龍隊支部に召集される一般の二次元人達。

 Mrフェイクを始めとする名立たる犯罪者たちの事件に巻き込まれた彼らだが、その反面犯罪者たちの通常ではあり得ない局面と終止符に不安の胸中は募る一方。

「……なるほど、あなた達も僕らと同じ新世代型でしたか。いやはや、大変な事件に巻き込まれてしまいましたね」

「は、はい……まさか有名なアルモタヘルに捕まってしまうなんて思いもよりませんでした……」

「………………………………」

 一連の事件の一つに巻き込まれて困惑しているエイミーに彼女たちと同じ新世代型の室戸大智が話し掛ける。が、エイミーの横ではヨドが不愛想な面構えで直立していた。

 その一方で、ジャッジ・ザ・シティに偽の招待状でヨドたち同様に招かれた事で事件に絡まれてしまった琴浦善三と久美子の両者は揃って不機嫌になっていた。元から仲の悪い親子である善三と久美子は、未だ孫で娘の春香に対しての事情で揉めていた経緯からお互いに早く離れていたかった。だが事情聴取の後の重要参考人という事で、未だジャッジ・ザ・シティの聖龍隊支部で足止めを喰らっていた。

「……あの小母さん、琴浦さんのお母さんなんだよな……」

「共有感知で知ったけど、娘の能力に対して軽蔑しているんだよな。なんだかな……」

「琴浦さんはかわいそうだけど、確かに身内に能力者がいると何かと事情が複雑化するからね……」

 琴浦春香の実母の久美子との経緯を、共有感知で周知した瀬名アラタ/出雲ハルキ/細野サクヤら新世代型二次元人たちは複雑な心境を抱いていた。

 すると此処で思わぬ発言が。

「……フッ、何処の世界でも一人や二人は能力者に対して差別的になる奴はいるもんだ」と、事情を知らない筈のヨドが、如何にも事情を知っているかの如く鼻で笑いながら言った。

 このヨドの発言に、真鍋義久がヨドに言葉を投げ掛ける。

「お、おいアンタ……なんで知っているみたいな事を言いやがる…………っ!」

 するとその時、自然に真鍋の脳裏に声が入ってきた。

(それは……アレ、なんでだろう? 自然とあの親子の事情が頭ん中に入っている……)

 この現象を間近で感じた真鍋義久は思わず言い放った。

「ま、まさか……アンタにも共有感知が!?」

「キョウユウカンチ……? なんだ、それ?」

 すると真鍋とヨドが言い合っていると、突然琴浦久美子が癇癪を起した。

「あーー、もう! うるさい、うるさい、うるさい! 全員うるさいわよ!!」

 突然怒り出す琴浦久美子に、その場の皆が困惑していると一般二次元人達の様子を見守っていたバーンズが見守ると同時に彼らの心境をテレパシーで観察して分かった経緯を説いた。

 

「うーーむ、どうやら……善三と久美子の親子、そしてヨドとエイミーにも共有感知の影響が出ているらしいな」

 

 このバーンズの発言に全員が騒然となり、初めて共有感知の言葉を聞いた善三と久美子そしてヨドとエイミーはきょとんとした。

 バーンズは四人にも解りやすいように説明した。

 共有感知とは。かつて初期の新世代型二次元人に常備されていた特殊能力で、全員がテレパシーで互いの思想を分け合うという能力。現在の新世代型二次元人には、その能力は封印されていた筈なのだが、この現政奉還の混乱の中、誰もがテレパシー能力者に成り得てしまう現象が新世代型二次元人の間で発生してしまったのだ。

 この経緯をバーンズは新しく加わった四人にも言い伝え、互いの思想の一部を相手と共感されてしまう現象を伝えるが、これにテレパシー能力に対して敏感に毛嫌いしている琴浦久美子が猛反発した。

「ちょっとフザケないでよ! こんな能力、欲しくもなんとないわ! 気持ち悪い……!」

「あ、あんた、またそんな事言いやがって……!」

「やめて、真鍋くん!」

 特殊能力の事を気味悪がる久美子の発言に、前々から久美子に不満を抱いていた真鍋が衝突しかかるが、それを娘の春香が制止する。

 そんな三人の面子を見て、バーンズは複雑な親子事情を知ってか衝突しかかる真鍋と久美子の間に割り込む。

「まあまあ、お前さん方の複雑な事情はオレも周知してるよ……だが、未だに共有感知を抑制する術は発見されていない。やむを得ないが、しばらく四人、いや絢香も含めて五人とも此処の新世代型たちと共にオレら聖龍隊の保護下に入ってもらう」

「それって……要するに監視じゃない!」

 バーンズの提案に久美子は猛反発。只でさえ新世代型という理由だけで常に目を張られている現状も相まって嫌気が差していたからだ。

「あの久美子って女性……私たちの様な術者にすら軽蔑の目を向けているみたいね」

「仕方ないよ美月。普通の人間ってのは、栗山さんはもちろん俺たちみたいな高等な術者にすら蔑視を向けたがるもんだからね」

 琴浦久美子の能力者を異端視する傾向に、名瀬美月らが軽蔑を向き返す中、兄の博臣が美月に語り掛ける。

 

 

 そんな場の空気が最悪な中、その現場に聖龍隊参謀総長ジュニアが駆け込んできた。

「やっぱりだ!」ジュニアが何やら資料を持って急ぎ足でバーンズに近寄る。

 そしてバーンズの傍らの机に持ってきた資料を叩きつける勢いで置くと、ジュニアの口から思わぬ言葉が出た。

 

「全員、ニセモノだ!」

 

 ジュニアの発言に多大な衝撃を受ける二次元人達。一方でジュニアが持ってきた資料を手に取り黙読していくバーンズに、ジュニアが更に話した。

「あの後、確認してみたら全員搬送中に発作を起こして救急治療室に運び込まれている! そして全員が心不全で急死した……!」

「心不全……」資料を読み耽るバーンズにジュニアは話し続ける。

「死因は謎の化学薬品の過剰摂取……おまけにDNAを調べてみたら、全員が本物の犯罪者ではなかった事が判明した……!」

「本物じゃない?」

「ああ……ブラックホワイト、ゴールデンボマー、ナイトメア、アルモタヘル、そしてMrフェイクと……全員が遺伝子結果の末、本人でない事が判明したんだ!」

 なんと前回、事件を起こした多くの犯罪者の全員が本人ではなく別人である事が遺伝子結果の末に判明したという。

 この衝撃の展開に、二次元人達はもちろんバーンズすら驚愕する。

「だが、全員の報告じゃ見た目も……」

「ああ、見た目は完全に本物をコピーされているが、化学薬品などの強引な方法で本物と瓜二つに……しかも人格までも反映されていたらしい」

「見た目だけでなく、中身までも……」

「遺伝子だけは変える事はできなかったみたいだけどね。それに強引な方法で変身していたから、全員の心臓に負荷がかかって心不全を引き起こしたらしい……!」

「なんてこった……ジャクソンも、肥田裕久も……全員がニセモノだったとは……」

 この二人の切羽詰った会話を立ち聞きしていたヨドが、バーンズに歩み寄り質問する。

「つまり……俺やエイミーを丸焼きにしようとしていた狂信者の爺さんも含んだ、一日の内に事件を起こした異常者(ヒール)はみんな偽物だったって事か?」

「そういう事だ。しかも資料を読んで判ったんだが、その全員が驚いた事に…………揃って三次元人なんだよ」

「さ、三次元人!?」

 バーンズの話に琴浦春香たちヨド以外の二次元人達は一驚した。変身能力を持っていない三次元人が、他者変身する事など思えなかったからだ。

 皆が一驚している最中、新世代型の星原ヒカルが自分達が抱く疑問をバーンズにぶつけた。

「さ、三次元人が他者変身したって事ですか!?」

「そういう事になるな。だが、薬で強引に他者変身したために寿命が削られ、最終的には心不全で死んじまったみたいだけどな」

 薬の力で強引に他者変身した三次元人達を聞かされ、二次元人達に衝撃が走る。

 すると此処でバーンズは資料を持って報告しに来たジュニアに言い付けた。

「ジュニア! 有名犯罪者に化けていた奴らの体から検出された薬品に、なにか共通点は無かったか?」

「安心して、ちゃんと調べておいたよ。君が睨んだ通り、全員の死体から検出された薬品には共通の薬が幾つか見つかっている」

「そうか! そこから……例えば、この薬を調合した奴の本拠地は判明できたか!?」

「それも既に……ジャッジ・ザ・シティの廃工場で、かつてこの薬品が使用された経緯があるのを調べがついた。人体にとても悪影響だったらしく、工場跡には未だにその薬品が放置されたままだという」

「そこだ! 犯人が根城にしている場所は……!」

「ああ、そうだろうね。そして、こんなフザけた犯罪を犯すのは一人しかいない」

「そう……」次の瞬間、バーンズとジュニアは揃って一人の人物名を発した。

 

「「Mrフェイク!」」

 

 バーンズとジュニアが睨んだのは、この無名の三次元人を著名な犯罪者に仕立て上げたのは他ならぬMrフェイクだと判断した。

 

 このバーンズの判断に、ジュニアが声を上げる。

「それじゃ、早速聖龍隊の隊士に伝言するよ……Mrフェイクの確保に向けて迅速に動く様にと……!」

「ああ! それと出動するのはスター・ルーキーズの新人達に加えてオレ達HEADも出動する! ……あのMrフェイクの事だ、何かしらの準備をしているだろう」

「そうだろうね……IQ280は伊達じゃない。Mrフェイクも僕らが嗅ぎつけて、やってくるのを見越して何かしらの策を講じていると考えていても可笑しくない」

 Mrフェイクが何かしらの策を講じて、侵入者を待ち受けているのは目に見えていると論ずるジュニアにバーンズも頷く。

 そしてバーンズとジュニアが出払おうとする矢先、バーンズは一般の二次元人達に告げた。

「オレ達が帰ってくるまで、みんなは聖龍隊支部に留まってくれ!」

「な、なんでよ!?」

 久美子がまた文句を言う。が、そんな久美子の反論に動じずバーンズは答えた。

「なに、大将たちは船場に着けさせている百鬼命義の具合を看に出払っちまっているし、お前達はこの支部で大人しくしてくれ。いやホントに申し訳ねぇが、お前さん達は事件の被害者でもある重要参考人ってことを忘れないでくれッ」

 そういうとバーンズは、颯爽とメタルバードへと変身して同じくジュピターキッドに変身したジュニアと共に出動していってしまう。

 

 

 

[何故か現る明星]

 

 メタルバードとジュピターキッドが揃って聖龍隊士を引き連れてMrフェイクの検挙に向かった中、残された面々を取り巻く空気が最悪のままだった。

「…………………………………………」

「はぁ、何だか気まずい空気になっちゃったな……」

「そうだな。能力といっても、賛否両論あるのが現状だからな……」

 余りにも気まずい空気に、瀬名アラタと出雲ハルキは能力の賛否両論を説く。

 ただ只管に無言の現況だけが過ぎ去る中、琴浦春香は自分の腹違いの妹である小野崎絢香と戯れていた。

 絢香にも共有感知の影響はあったが、絢香は純粋故にあまり気にも留めておらず、直向きに姉に当たる春香と戯れていた。

 そんな春香と絢香の姉妹を見て、新たに巻き込まれてしまったエイミーが春香に話し掛ける。

「仲が良いんですね」

「あ、はい。前々から、絢香とは顔馴染みで……」

 敢えて相手の口から真実を聞き、親睦を深めようとするエイミーの心意気に共有感知を通して皆も周知した。

「私にもベベルっていう弟がいるの。病気で寝たきりの生活を送っているけど……本当だったらベベルもジャッジ・ザ・シティに連れてきたかった。どんな種族も人も、仲良く共生できる理想都市って聞いていたし……」

「そうなんですか……私も、ジャッジ・ザ・シティは平等の町だって聞いて少し浮かれてはいましたけど……あの犯罪者ブラックホワイトや貴女たちを襲ったアルモタヘルみたいな犯罪者がのさばっている現状を観てみると、まだまだ平和な都市には程遠いんだなって思っちゃいました」

「確かに……本当の平和が訪れる日は、いつ来るんだろうね……」

 いつ本当の平和が訪れるのか。エイミーの言葉に話し合っている琴浦春香もその他の一同も全員が不穏になる。

 すると琴浦春香とエイミーが話し合っていると、新たに会得した共有感知の能力で周知した情報についてヨドが自分たち一般二次元人を保守する役目を担わされているシバ・カァチェンに訊ねかける。

「……あんた、三次元界での台湾国将軍みたいだが……何だか殺気というか戦意みたいなのが全く感じられないな」

「は、はぁ……私如きが国の軍事を任される将軍では、何かと不満を抱かれています……」

「それだよ! 自分ではダメだと思い込む、その態度……その態度と姿勢を変えない限り、あんたは一生かかってでも今のままだ」

「しかし……一度、自分の型に嵌ってしまった私が、他の皆様方の様に心強く生きていけるのか……不安でいっぱいです」

「もっと効率的に働いた方がいい! 自分の為にも……俺は、生まれた時から戦士として戦い続けているが、戦いで戦意を喪失しては死に直面するだけだ」

「効率的に、ですか……今の私には、難しい事を言い迫るのですね。貴方は……」

 ヨドからもっと効率的に働いた方が自分の為にもなると説かれ、カァチェンは今の自分では難しいと弱々しく答え返す。

 そんな気弱なカァチェンに今度はエイミーの方が話し掛けた。

「あなたがカァチェンさんですね」

「そういえば……まだ名乗っておりませんでしたね。私は……」

「あ、大丈夫です。共有感知っていう奴で、既にお名前は知っていますので……」

「ああ、そうでしたね……これは失礼いたしました……それにしても、共有感知という能力は実に羨ましい限りです……」

 このカァチェンの発言に、共有感知という能力に悪感を抱いている琴浦久美子が怒鳴り散らす。

「ちょっと! この能力の何処が羨ましいっていうのよ! 単に気味悪いだけじゃないっ」

「こら久美子! 相手は腐っても台湾の国将軍じゃぞ! そんな暴言はよさんかっ!」

「なに言っているのよ父さん! こいつは自分一人じゃ何も決められないダメ将軍なのは……言いたかないけど、共有感知で解っているでしょ!」

 思わず実父の善三と喧嘩腰になる久美子。そんな母と祖父を前に、琴浦春香が申し訳なさそうにカァチェンに言う。

「ご、ごめんなさいカァチェン……うちの家庭って、色々と複雑なの……」

 悲しげな表情で謝る琴浦春香を前に、カァチェンは面と向かって琴浦に言い返した。

「いいえ、どの家庭にも何かと事情があるのは私自身、よく解っております」

「え?」カァチェンの言葉に琴浦春香もその他の一同も面を喰らった。

 そしてカァチェンは己の身辺事情を語り始めた。

 

「私自身、物心ついた頃から家庭というものを持った事がありません。そんな私は幼い頃から施設で育ち、私自身の周りには虐待や捨て子という事情で施設に入られた同期も少なくありません……私は、そんな周りとどう付き合えば良いか解らず、今日まで至るという訳です……」

 

 カァチェンの衝撃の出生を知って、言葉を失くす一同。

 しかし共有感知が芽生えた事で苛立っている琴浦久美子が此処でカァチェンに難癖を付ける。

「だ、だからって……私たちの苦境を羨ましいだなんて、空気が読めないにも程があるわよ!」

「ご、ごめんなさい、カァチェン……お母さんは今、色々と混乱してて……」

「大丈夫です、毛ほどにも感じておりませぬ故……琴浦春香殿、貴方のお母様の仰るとおり……私は周りの空気が読めず、他人を冷やかしてしまう悪癖があるのですから……」

 自分たちの混乱の元凶である共有感知を羨ましがるカァチェンに空気が読めないと文句を言う久美子に対し、娘の春香は代わってカァチェンに謝罪。だがカァチェンは自らが周りの空気を読めない人間であると自覚している故に、気にしてはいないと琴浦春香に申し開く。

 更にカァチェンは、何ゆえ新世代型の共有感知を望ましく思っているかを語り明かした。

「……私自身、相手の気持ちや想いを理解できず、ただただ周りを振り回してばかりの日々を過ごしていました……そんな私にとって、相手と自分の気持ちを共有できる皆様方の能力は、非常に有能に思えてしまいまして……」

 互いの気持ちを共有できる能力を有能だと言い伝えるカァチェンの言葉に、新世代型二次元人たちは困惑してしまう。

 すると、そんな場の空気が微妙になる中、琴浦春香とは親しくしている間柄の黒鳥千代子、通称チョコが笑顔で言った。

「……うん、そうかもしれない! 相手と気持ちを共感できるのって素敵な事かもしれないかも!」

「そんな……! 自分の考えている事が全て露見されてしまうのよ!」

 チョコの考えに対して真っ向から反発する意見を述べる久美子に対し、娘の春香もチョコに言う。

「そ、そうだよチョコちゃん。テレパシーって、そんなに気持ちのいい能力じゃないのよ」

 すると琴浦春香に続いて斉木楠雄も傍らで呆然と突っ立っている親友の燃堂力を気にしながらチョコに語った。

「その通りだ。常に周囲の人間の気持ちを悟ってしまう能力というのは、普通に考えれば気が狂ってしまう程の影響が自身に出るものだ」

 斉木は傍らで皆が何を話しているのか理解していない燃堂を横目で視認しながらチョコに言う。

 と、チョコは琴浦や斉木の話を聴いた上で皆に述べた。

 

「確かに不都合な事はたくさんあるかもしれません……ですけど、その能力で私は琴浦さんに助けられましたし、今はみんな私のようなプロト世代には想像もつかない領域まで気持ちを共有できているのは、ある意味すごいと思います! 何より、その能力があるからこそ皆さんは普通以上にお互いの気持ちを分かり合えるんじゃないんですか?」

「分かり合える、か……確かに、言われてみればそうかもしれない」

「確かに!」

 

 チョコの話を聞いて、ヨドやエイミーは少しばかし納得させられた。

 他人の気持ちを理解してしまうからこそ関係が複雑化してしまう事も多々ある。だが、お互いの気持ちを理解しているからこそ分かり合え、平和的に過ごせる可能性もある。

 チョコに説かれて新世代型二次元人たちは改めて自分たちの共有感知を考えさせられた。

 そんな中、考えを改めさせられて、琴浦春香の祖父善三は娘の久美子に突っかかった。

「久美子! これでお前さんも、春香の苦しみが少しは理解できるじゃろ! それに、そのチョコちゃんの言葉をしっかり胸に刻む事じゃな」

「っ…………」

 実父に指摘されて、琴浦久美子は嫌味混じりの父の言葉に思わず顔を背けてしまう。

 そんな久美子の反応に周りも思わず微笑んでしまう。

 

 

 と、皆の空気が朗らかになっていったその時、その場に意外な人物が仲間を引き連れてやって来た。

「……みんな……」「……! じゅ、ジュンさん!?」

 その人物とは他でもない、村田順一と彼が引き連れるスター・コマンドーの面々だった。

 聖龍隊を離反したスター・コマンドーの登場に一同が動揺する中、黒鳥千代子が順一に駆け寄って話し掛けた。

「じゅ、順一さん……なんで此処に……!?」

「はは、いやね。ジャッジ・ザ・シティでみんなが色んな事件に巻き込まれて大変だったと聞いて、慌てて駆け付けたんだ。こんな時に仲違いをしている暇はないからね」

「そ、そうですか……」村田順一の意外な返答にチョコは唖然としてしまう。

 そんなチョコだけでなく全員が離反して普通は聖龍隊支部にいない筈のスター・コマンドーを前に唖然としている中、順一は皆に告げた。

「みんな! 早速だが、みんなにはこの場から移動してほしい! 詳しい経緯は後々語るが、これは皆の安否を確固たるものにする為の策なんだ!」

 速急に移動してほしいという村田順一の発案に、その場の一同は戸惑ったものの、信頼がおける村田順一からの提案に反対意見を出す者は一人もいなかった。

 そんな順一の指示で動いていく二次元人達を前に、唯一三次元人のカァチェンは順一たちスター・コマンドーに声をかける。

「あ、あの……順一殿、私は……」

「ああ、貴方か……貴方も是非、一緒に来てほしい!」

 順一から同行を求められるカァチェンは、順一には順一なりの考えがあるのだと考察し、皆と同様言われるがままに順一の指示に従った。

 

 

[偽りの在所]

 

 ところ変わって、此処は聖龍HEADが隊士たちと突入した廃工場。

 ここでMrフェイクは三次元人ですら他者変身できる薬品を調合しているかのように思われたのだが、実際は……

「チクショーー! ダミーか!」

 なんと突入した廃工場はもぬけの殻で、廃棄されている筈の危険薬品も綺麗に何処かへと持ち去られていた。

 ダミー、すなわち偽物の拠点に突入して、無駄な時間を潰してしまったメタルバードは心底悔しがった。

「……ふぅ、冷静になれオレ。こんな時こそ頭を使わねえと……」

 メタルバードは息を落ち着かせて、冷静に考えた。Mrフェイクは何処で薬を調合しているのか……何処で三次元人でもある一般人を変身させているのか。

 自分が聖龍隊総長を修司から引き継いでから、実績を思うように上げられない経緯からメタルバードは少し苛立っていた。

 そんな中、考え込むメタルバードに通信が入った。

「総長!」

「ん……どうした?」

「いえ、先ほどおかしな事がありまして……」

「何があったって言うんだ? 緊急でなければ、もう切るぞ」

「い、いいえ! それが……先ほど村田順一氏が緊急事態という事で聖龍隊支部を訪れまして……」

「なに!? ジュンが……?」

 驚くメタルバードに聖龍隊支部の通信士は更に話し続けた。

「はい、ジャッジ・ザ・シティで新世代型二次元人が事件に巻き込まれた経緯を知って、仲違いしている暇はないと申しまして……」

「! そいつは可笑しいぞ……今日の一連の事件は、まだジャッジ・ザ・シティの外部には報道されてない筈だ……! それに一連といっても、一部の事件は報道すらされてないのが現状だぞ」

「はい、それで可笑しいなと思い総長に確認の連絡を……」

 通信士から連絡を受けたメタルバードは、一抹の不安が脳裏に過ぎった。

「……! おい! 支部で待機させていた一般の二次元人たちはどうした!?」

「そ、それが……スター・コマンドーが完全に安全な場所まで移送させると言って、全員が護送車で移動されたんです」

「なんてこった!」

 メタルバードは怒号を切る勢いで通信士に言い放った。

「おいっ! その二次元人たちを乗せた護送車ってのは其方から認識できるか!」

「は、はい! 現在、はっきりとレーダーに捕捉されてますが……」

 メタルバードの啖呵にオドオドしてしまう通信士に、メタルバードは衝撃の言葉をぶつけた。

「そのジュン達は偽物だ! おそらく、また強引に他者変身させられた奴か、はたまたロボットか……どっちにしろ護送車の動きを常に見張っておけ!」

「えええっ!? は、はい! 了解しましたっ」

 通信士は驚いた様子で通信を切った。

 そして通信を聞いたメタルバードは、近くで同じく通信を聞いていたジュピターキッドに歩み寄り語り合い始める。

「今の通話は聞いたな!」

「ああ、しっかりと!」

「決意の固いジュンがわざわざ離反した聖龍隊に戻ってくるのはどう考えても可笑しい! それに新世代型たちを護送したって言うのも気がかりだ……!」

「一連の騒動からして、Mrフェイクが一枚絡んでいるのは見え見えだ! だけどなんで新世代型を……」

「おそらくはオレ達を釣る為の餌として……そう、多分面白がって連れて行ったんだろう! 本気で誘拐するなら、支部のレーダーで護送車の位置を特定されるような真似は奴なら絶対にしない!」

「僕達を自分の拠点に誘導させる為に新世代型……いいや、一般の二次元人たちを拉致したって訳か。相変わらず、嫌な趣向してるよ」

 敢えて護送車の位置を特定させているMrフェイクの趣向に、メタルバードもジュピターキッドも嫌気が差していた。

 

 

 一方、ジャッジ・ザ・シティの聖龍隊支部を訪れた村田順一に言われるがまま護送車に乗せられた一行。

 その先頭車両では、琴浦春香が一緒に同乗している村田順一がいつもと違う様子である事を逸早く察する。

「……じ、順一さん……?」

 琴浦春香が声をかけるが、順一は何も答えず無表情のまま虚ろな瞳で正面を直視するだけ。

 この只ならぬ村田順一の様子、いやスター・コマンドーの様子に新世代型は共有感知を用いて何かが可笑しいと共感した。

「じゅ、ジュン! いったい、どうしたんだ……」

「オトナシクスワッテルンダ」「!」

 只ならぬ様子に真鍋義久が思わず立ち上がって順一に物申そうとすると、順一は目を紅く光らせて片言で言った。これには一同驚愕した。

「じゅ、ジュン! いや、あんたは……」

 驚いた真鍋が声をかけるものの、同時に彼ら新世代型二次元人の脳裏にある情報が。それは他の護送車に同乗しているスター・コマンドーの面々も順一と同じく目を紅く光らせて片言で応答し始めたとの事。

 この情報が脳裏に入った瞬間、真鍋たち新世代型たちは自分たちと同乗しているスター・コマンドーが本人ではない事実に気付く。

 だが護送車のドアは硬く閉ざされており、内部から開錠する事は不可能だった。

 謎の片言言葉を語り出す偽のスター・コマンドーに連れられ、二次元人たちを乗せた護送車は闇夜の道を突き進むのだった。

 

 

 一般二次元人たちが同行しているスター・コマンドーが偽物だと気付いてから一時間ほど経過した後。

 護送車をレーダーで追尾していた聖龍隊支部からメタルバードたちに連絡が入った。

 護送車は建設中の遊園地前で停車し、それっきり動きを示していないらしい。

 メタルバード率いる聖龍隊は、急ぎ建設中の遊園地まで駆け付けた。

「……この護送車、普通の車を改造して造られた偽物だな」

 現場に駆け付けたメタルバードが乗り捨てられている護送車を視て呟く。

 すると建設途中の遊園地周辺を飛行して見回ったちせが地上に降り立ち、メタルバードに告げる。

「遊園地内の建物から微かに熱反応が……おそらく連れていかれた二次元人達でしょう」

「熱反応までオレ達に曝け出すか……こりゃ、本格的にオレ達を誘っているな」

 上空から熱反応を探知したちせの報告を受けて、メタルバードは完全に自分たち聖龍隊を中へ誘っているのだと確信する。

 そして聖龍隊は各々分散し、各自で熱反応が感知された遊園地内の建物入り口へと踏み込む手筈を整えた。

 現政奉還の煽りで隊士が少ない現状の中、聖龍HEADは分散し、スター・ルーキーズは協力して配置についた。

 そして突入の合図をメタルバードが無線で伝える。

「突入!」

 その一言で全員が一斉に建物の各出入り口の戸を打ち破り、中へと突入した。

 各自、建物の隅々まで踏み込むが、連れて行かれた二次元人達の姿すら視認する事はできなかった。

「どうなってんだ……」

 もぬけの空の建物に困惑するメタルバードは、ここで自らの聴覚を最大限まで引き上げて声で人物の居場所を特定しようと試みる。

 すると彼の耳に聞き覚えのある声が入ってきた。

「赤を少し足して……青もちょぴっと入れてみて……ああ、そうだ。緑も少し足してみよう。もっと面白い反応が見られるよ♪」

 と、何やら楽しげに独り言を呟いている声がハッきりとメタルバードの耳に伝わってきた。

「声は………………この下だ!」

 最大限にまで引き上げた聴覚からメタルバードは声が自分たちが踏み込んだ建物の真下から聞こえてくる事を言い放った。

 と、その瞬間。メタルバードたちが踏み込んだ建物がガクッと揺れたと思いきや、突如として建物の屋内が丸ごと真下へと降下し始めたのだ。

「ッ! まさか……建物ごとエレベーターに!?」

 そう、踏み込んだ建物は丸ごと入り口で、屋内の部屋そのものがエレベーターに改造されていた事実にメタルバードは愕然とする。

 そして真っ暗闇の中、エレベーターである部屋はピタリと止まり、その瞬間にスポットライトがメタルバードたちに照射される。

「っ!」照明の眩しさにメタルバードたちは思わず顔を背けてしまう。

 そんな照明に照らされた聖龍HEADとミラール率いるスター・ルーキーズの新人達を目視してか、ある人物が愉快そうに語り掛けてきた。

 

「やあやあやあやあっ、久しぶりだね……聖龍隊のみんな!」

「! ……Mrフェイク……!」

 

 楽しげに話しかけてきたMrフェイクにメタルバードが睨みを利かせる。

 すると次の瞬間、自分たちとMrフェイクを照らす照明以外にも多数の照明がパッと点灯し、広い空間が見渡せるようになった。

 まるでサーカス小屋の中を連想させるような、テレビのバラエティー番組の舞台セットの様な造りには、何処か狂気染みている雰囲気が醸し出されていた。

 

 

 

[狂気のエンターテイメント]

 

 建設途中の遊園地の地下に、密かに建造していた空間で聖龍隊を待ち伏せしていたMrフェイク。

 そのMrフェイクと対面し、彼に睨みを利かせる聖龍HEADとミラール。

 だが新人であり、Mrフェイクと初対面の面々は半ば困惑してしまってた。

 そんな新人達に気付いてか、Mrフェイクは彼らを和ませるかのように語り掛けてきた。

 

「オーー、君達は! 聖龍隊のニューホープ、キリトBoyにMissアスナ! それにカッコいいスーツに身を包んでいるのはシルバー・クロウに黒くて可憐なブラック・ロータス! そしてそして、鹿目まどかちゃんに暁美ほむらちゃん達じゃないか! ようこそ! このMrフェイク最大のエンターテイナーショーに!!」

 

 嬉々として熱弁するMrフェイクに話し掛けられ、警戒心を最大にする新人達。そんな彼らの険しい表情を見て、Mrフェイクは自身が被っているシルクハットを片手でクルクルと回しながら更に語りかける。

「そんな怖い顔しないでよ! せっかくみんなで楽しめるショーをサプライズしようって、頑張って遊園地の地下に秘密基地を建造しちゃったんだからさっ」

 凛々と語り続けるMrフェイクに、ミラーガールが問い詰める。

「Mrフェイク! 二次元人たちを何処にやったの!?」

「おやおや? 可笑しい事を言うね、ミラーガール。二次元人なら僕の目の前にいるじゃないか……君達って言う夢の結晶体が」

「そうじゃないわ! あなたが私たちの支部から偽のスター・コマンドーを使って連れて行った一般の二次元人たちの事よ!」

 ミラーガールの鬼気迫る言伝に、Mrフェイクは少しおどけた様子で答え返した。

「ああ、彼らの事かい? 安心してくれたまえ、ミラーガール……今宵のショーのゲストに手荒な真似をするほど僕は落ちぶれちゃいない」

「ゲストですって!?」

 Mrフェイクの発言に目の色を変えて発言するコレクターユイ。

 するとMrフェイクは手元から手品の様にリモコンを取り出すと、それをポチッと押してある方向を指差した。

 其処にはなんと、檻の中に入れられた一般の二次元人たちの姿が。その檻の周りには偽のスター・コマンドーの姿までもあった。

「お、お前ら!」「バーンズさん、助けてくれぇ!」

 目が飛び出るほど驚愕するメタルバードに檻の中から必死に助けを乞う真鍋義久。

 檻の中に閉じ込められている二次元人達を見て、セーラーヴィーナスがMrフェイクに問い詰める。

「彼らをどうする気なの!?」

「これはこれはヴィーナス嬢、折角の笑顔が台無しですぞ。貴殿はあくまでもネオ・クイーン・セレニティの影武者なんですからね……そうですね、彼らを使って全く新しいエンターテイメントを模索するのも良し、変身薬の実験として動画にアップしたりするのも良いかもしれませんね」

「変身薬だと!?」

 ジュピターキッドが一驚すると、Mrフェイクは喋り続けた。

「そう! この僕が二次元人の遺伝子を元に生み出した全く新しい商品! 有名著名な犯罪者の遺伝子データから薬を調合して、その二次元人はもちろん三次元人まで……ありとあらゆる人間に他者変身できちゃうっていう夢の商品! ……まっ、心臓に悪いのがたまにキズだけどね」

「なんて事を……!」

 Mrフェイクの悪行にミラーガールが悲観するが、そんな彼女にMrフェイクは平然と言い返した。

「何をそんなに悲観しちゃってるの、ミラーガール? 他者変身なら君の得意分野だろ? 君ばっかりが、そんな面白楽しい能力を使いたがっている訳じゃないんだよっ。誰だって一度は人々の注目を浴びたいっていう願望が一つや二つはあるじゃない……そんな彼らの願望を叶えてあげようと、僕はわざわざオーディションをしてから人材を見繕って、変身薬で有名著名な異常者(ヒール)に引き立ててあげたんじゃないか」

 するとMrフェイクは再び手に持っているリモコンのボタンを押した。実は、Mrフェイクが持つこのリモコンに何かしらの起爆スイッチもあるのではないかと踏んだメタルバードたちHEADは迂闊にMrフェイクに迫れなかった。

 そしてリモコンのボタンが押されると、大空間の壁一面にモニターが現れ、そこに映像が映し出された。

 映し出された映像には、全て昼間の事件の報道や隠しカメラを用いて撮影した事件当時の映像が鮮明に映し出された。

「ハハッ、見てごらんよ、彼らの生き生きとした表情を! 僕が変身薬を渡す前は、みんな意気消沈してたっていうのに、悪名高い犯罪者になった途端、みんな嬉々として生きている! 彼らに生きる活力を与えたのは他でもない……この僕さっ!」

 まるで自分のやった事を悪行とも思わないMrフェイクの言動に、新人達も二次元人たちも蒼ざめ始めた。

 そんな彼らを嘲るかのようにMrフェイクは淡々と熱弁する。

「人は誰しも夢を思い描くもの……ああ成りたい、こう成りたい。夢というのは、自分が成りたいものに成れてこそ初めて叶うもの! 此処は夢と理想が実現するジャッジ・ザ・シティ! 誰もが注目を浴びたい願望を持つこのご時勢、僕はそんなみんなの夢を叶えてあげただけさ!」

 そして終いにMrフェイクはこんな事を言い始めた。

「今宵はそんなサプライズショーのフィナーレだ! みんなをハッピーにしたこの僕Mrフェイクと、みんなを幸せにしなきゃならない聖龍隊とのチームバトル! 観客は新しく生誕された新世代型二次元人の皆々様と四名のプロト世代の方々! さあお立会い、狂気のエンターテイメントを……!」

 と、自分のやった犯罪をサプライズやエンターテイメントと自称するMrフェイクは、狂気のエンターテイメントと称して聖龍隊と戦い合おうと言い出した。

 これに呆れながらメタルバードがMrフェイクに言った。

「ふぅ、Mrフェイク。チーム戦と言いながら、あんたにはお仲間がいないだろ?」

 仲間もいないのにチーム戦をやるのは不可能だと説くメタルバードの提言に、Mrフェイクは真面目な顔で答えた。

「ふふふふ、大丈夫さメタルバードっ! 今宵のサプライズにピッタリの特別ゲストを招いているんだからね!」

「特別ゲスト?」

 Mrフェイクの言葉の意図を掴めないメタルバードたちを前に、Mrフェイクはそのゲストを紹介し始めた。

「ご紹介しましょう! かつて中国共産党によって育成された狂気の傭兵……グー・ビンシー!」

 すると大部屋を覆う布がめくれて、一人の屈強な赤と金色のツートンカラーのボディスーツを着用した仮面の男が現れた。

「チャオ!?」

「フッ、今はその名で呼ぶな。コードネームのグービンシーと呼べ!」

 思わず本名で呼んでしまうメタルバードたちに、グービンシーはコードネームで呼ぶようにと強く主張しながら戦前へと飛び出ては背中に背負っている日本刀で聖龍隊に切り込んでいく。

 更にMrフェイクの紹介はまだまだ終わらない。

「続いてご登場するのは……灼熱の炎と凍て付く冷気を操る怪人! 元革命軍士の幹部、アイスフレイム!」

「ウオォーーーー!!」

 紹介と同時に雄たけびを上げながら颯爽と登場したアイスフレイムは、グービンシーと同じく戦前に飛び込んで聖龍隊と格闘を始める。

「お、お前もいたのか! スミス!」

「フッ、もうその名は捨てた……今のオレはジョン・スミスではない。アイスフレイムだ!」

 かつての自分の名を捨てたと言い切るアイスフレイムの右側からの冷気攻撃と左側からの火炎攻撃を瞬時に回避するメタルバードたち。

 そしてMrフェイク最後の紹介が始まった。

「そしてそして……最後にご紹介させていただくは、スター・コマンドーが絶対可憐チルドレンやスコーピオン同盟によって完全に居場所を失ってしまった悲しきエスパー……九具津隆ことドール・マスター!」

「余計な事まで紹介しなくていい、Mrフェイク! ……さて、今夜は誰が僕の操り人形になってくれるかな?」

 過去の嫌な思い出までも紹介されたドール・マスターは、全身をマネキンの様な特殊なパワード・スーツに包んで出陣し、今夜の獲物を品定めするかのように目を皿の様にして自らが操るロボット達を解き放ち、聖龍隊にぶつける。

 グービンシー、アイスフレイムに続いてドール・マスターが解き放つ数多の機械人形を前に途端に窮地に立たされてしまう聖龍隊は苦戦と解りつつも迫ってくる無数の敵たちに挑んでいく。

 まずグービンシーが長い棍棒を巧みに操り、聖龍隊の新人達と渡り合う。巧みな棒術の前に新人達はグービンシーに悉く叩きのめされてしまう。

 続いてアイスフレイム。彼は半身ごとに異なる能力を使い分けられる異能力者であり、右半身からは冷気を操って相手を凍らせようとすれば、左半身からは燃え盛る炎の玉を投げ付けて爆撃を仕掛けてくる。

 そして最も厄介なのは、数で攻めてくるドール・マスターの人形達。ドール・マスターが操る人形達は全て機械仕掛けの、それも戦闘用に強化されている骨格に仕立て上げられていた。

 ドール・マスターの人形達を破壊しながら、アイスフレイムの異なる二つの能力による攻撃を避けつつ、グービンシーの猛攻を掻い潜る聖龍隊。

 そんな激戦の中、メタルバードは思い切ってこの激戦を面白半分に観戦しているMrフェイクに向かって飛び掛った。だが、その直前にグービンシーがメタルバードに飛び掛り、Mrフェイクへの攻撃を阻む。

「チッ……チャオ、お前さんともあろう者が、こんな茶番劇に加勢するとはな」

「フッ、確かに茶番劇だが……既に金は貰っているんでね。プロとしてお前さん達を殺さないといけない……!」

 Mrフェイクが用意した戦いの場を茶番と評するメタルバードに対してグービンシーも同意するが、既に依頼金を受け取っている経緯からプロの殺し屋として聖龍隊と戦わなければならないと説き返す。

 

 混戦状態が続く中、偽のスター・コマンドーに包囲された檻の中からプロト世代のチョコがMrフェイクに物申した。

「な、なんで……なんでこんな事するんですか!」

 強力な犯罪者達を解き放ち、聖龍隊と戦わせるのを楽しそうに観戦するMrフェイクにチョコが問う。するとMrフェイクはチョコたち檻の中の二次元人たちに答えた。

「なんでって……楽しいからに決まっているじゃない! ヒーローヒロインが奮闘するのを見て、楽しむのが僕たち三次元人なんだよっ」

「そ、そんな勝手な……!」

 Mrフェイクの身勝手な言動に新世代型の森園わかなを始めとする二次元人達が不満そうな顔を向けると、Mrフェイクは嬉々とした口調で語り掛け始めた。

「君達だってそうだったじゃない。今は友達でも最初は敵対していがみ合ったり、時には衝突したりして……君らはそうやって僕たち三次元人を楽しませてくれるエンターテイナーじゃないか! 僕はそんな……そんな超一流のエンターテイナーである二次元人、君らに憧れてMrフェイクになったんだよ!?」

 二次元人の存在そのものがエンターテイナーではないかと説くMrフェイクの言葉に、全員が苦虫を噛み潰したような顔立ちでMrフェイクを睨み付ける。

 確かに自分たちは時にはいがみ合ったり傷つけ合ったりした経緯がある。だがそれらの過去を全て喜劇としてしか見ていないMrフェイクの言動に二次元人達は静かな怒りを抱いた。

 

 

 

[乱入する者たち]

 

 と、二次元人たちがMrフェイクの言葉に静かな怒りを覚え始めたその時。

 彼ら二次元人を閉じ込めていた檻が突然、幾何学模様に切断された。

「!!」「な、なんだ!?」

 余りの事に檻の中に閉じ込められていた二次元人達は絶句し、それを見たMrフェイクも何事かと騒ぎ出す。

 すると檻の中に捕らえられていた二次元人達の中から、手に逆刃薙(さかばなぎ)を握り締める人影が前へと歩み出す。

 

「……不愉快極まりない……Mrフェイクとやら。貴方の戯言は私の、そして皆様方の御心を傷付けるものばかりだ……!」

「き、君は……!」「カァチェン!」

 

 不愉快そうな面構えで前へと歩み出したのは、檻を自身の得物である逆刃薙(さかばなぎ)で幾何学模様に細切れにしたシバ・カァチェンだった。このカァチェンの突然の言動に観戦していたMrフェイクも実践しているメタルバードも一驚してしまう。

 そんな二人同様に、カァチェンの突然の行動に戸惑う二次元人達。そんな折、チョコが恐る恐るカァチェンに言葉をかけようとする。

「か、カァチェン……さん?」

 するとカァチェンは声をかけてきたチョコに視線を向けると、静かに口を開いた。

「ご安心を……今の私は聖龍隊が劣兵。ですが、与えられた役目はしっかりと務めるつもり……皆様方の御命、このカァチェンが身を以ってお守りいたします!」

「か、カァチェン……!」

 聖龍隊より二次元人たちの護衛を担わされていたカァチェンは、最初ここに連れて来られた際はオドオドとしていたが、檻に二次元人共々捕らわれた上に目の前で聖龍隊が死闘を繰り広げている現状を前に傍観している暇はないと認識し、確固たる意志で行動に移ったのだ。これにチョコたち一般の二次元人たちは歓喜に沸いた。

 すると行動に移ったカァチェンを目前にし、偽のスター・コマンドーが動き出した。

「カァチェン、それにみんな、檻の中に戻るんだ」

「その命令は聞けませぬ……影法師の如き偽者相手の命を受けよとは、命じられてはおりませぬゆえ……!」

「ははっ、嫌だなぁ、僕らはそんな影法師なんかじゃないよ……ただの、ニンギョウサ……」

 次の瞬間、カァチェンと対話していた村田順一を始めとする偽のスター・コマンドーが一変し、全員が機械人形へと変わり果てた。そう、偽のスター・コマンドーはドール・マスターが操る機械人形だったのだ。

 しかし相手が生きている人間ではなく、ただの機械仕掛けな上に自我のない機械人形だと解ったシバ・カァチェンは颯爽と前へと踏み込んで逆刃薙(さかばなぎ)を振るった。

 するとカァチェンが偽のスター・コマンドーの間を通り抜けた次の瞬間、偽者である機械人形は悉く幾何学模様に細切れにされてしまった。

「あーーーーッ!! 僕の人形ちゃんたちがッ! よくもッ」

 自分が造形した人形を細切れにされたカァチェンの行動にドール・マスターは怒りを露にする。

 だがカァチェンの猛攻はこれに留まらず、彼は颯爽と現場を駆け抜けながら縦横無尽に跋扈する機械人形たちを斬り捨てていった。

「か、カァチェン……!」

 自らの意志で活動し出したカァチェンを前にメタルバードが動揺していると、カァチェンはメタルバードに言葉をかけた。

「バーンズ、いや今はメタルバードでしたな。私は私が思うがままに仕合おうと思う……誰の意志でもない、自らの意志のままに……!」

 このカァチェンの力強い言葉を聞いて、メタルバードは息を呑んだ。

「……ああ、解ったカァチェン! 共にこの場を生き抜こう!」「御意!」

 メタルバードの言葉にカァチェンも静かに返答。そして両者はそのまま周辺に跋扈する機械人形を片付けていく。

「キィ~~! 僕の人形を次々と……!」

 マネキンの様なパワード・スーツに全身を包まれているため表情は確認できないが、ドール・マスターは完全に怒ってしまったようだ。

 そんなドール・マスターが造形した人形達を悉く斬り捨てていくカァチェンを視認した傭兵グービンシーは彼の戦闘能力を高く評価する。

「ほほう、出来損ないの国将軍かと思っていたが……まさかアレほどとは……気に入った!」

 そしてグービンシーはシバ・カァチェンに向かって進撃しようとした、その時。そんなグービンシーをキリトが制止する。

「なにッ?」「お前の相手は俺たちだ!」「邪魔するな、小僧!」

 そのままグービンシーはキリトたち聖龍隊の新人達と戦闘を続行した。

 

 一方、ドール・マスターが直接戦闘に参加せず自らが造った人形達に戦わせ、さらにグービンシーが聖龍隊の新人達と奮闘している傍らでは、アイスフレイムが単身聖龍HEADに戦いを挑み続けてきた。

「アイスフレイム! もう観念しろ! この状況を一人で突破するのは困難だぞ!」

「黙れ! オレはどんな事もでき得る能力を得た超人……アイスフレイムなんだ!」

 キング・エンディミオンの言葉にも耳を傾けず、只管に冷気と火炎玉を放ち続けるアイスフレイム。

 そんな彼に炎や冷気の能力は効かず、まして水の能力など意味を成さない。しかし電撃系の能力だけは効果覿面だった為に、セーラージュピターは電撃を軽めにアイスフレイムに向けて発射。

「うおおッ!」

 電撃を受けたアイスフレイムは軽く感電した程度で雄叫びを上げた。何故ならアイスフレイムは人体を改造されているとはいえ、肉体的強度は普通の人間と対して変わりなかったのだ。だからこそ聖龍隊はアイスフレイムを殺傷しない程度で攻撃を抑えているのだ。

 しかしアイスフレイムは倒れる事無く「フン、フンッ」と荒く鼻息を立てながら冷気の玉と炎の玉を交互に投げ続けて応戦を展開。聖龍隊はこれを回避していくが、その流れ弾が一般に次元人たちの方へと向かってしまった。

「あ! イケナイ!」

 セーラームーンが思わず叫び、カァチェンも「しまった!」と声を発して駆け付けようとするが彼の周りを機械人形たちが取り囲む為に身動きが取れずにいた。

 だが流れ弾は謎の壁に弾かれ、一般の二次元人たちに当たる事はなかった。

 それは名瀬兄妹の「檻」の能力を駆使した壁であり、特殊能力による攻撃を防いだのだ。

「黙ってみていれば、全員が全員そろって好き勝手しちゃってくれちゃっているね」

「私たち、名瀬一族を怒らせたならタダでは済まないわよ」

 博臣と美月の兄妹が睨みを利かせながら好き勝手にする面々を威嚇すると、二人の背後から颯爽と幾つもの影が戦前に飛び出て戦いに乱入してきた。

「うおりゃっ! こりゃまた、面白そうな喧嘩になりそうだぜ」

「面白がるな、纏流子! 全員、聖龍隊に加勢しろッ」

「私もただ黙って見ているなんて、もう嫌です……人の人生を面白半分に操るなんて、不愉快です!」

 戦いを喧嘩と見做して面白がる纏流子に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が物申しながら同時に配下の生徒会四天王に命ずる。そして人の人生を面白半分に操作して楽しむMrフェイクの凶行に嫌気が差した栗山未来も流子たちと共に参戦する意気込みを示した。

 そして彼女達は一気に現場に踏み込んでドール・マスターが操る機械人形を破壊したり、アイスフレイムやグービンシーに戦いを挑み始めた。

「お、お前ら! こいつらは今までの相手とは違う! 無茶すんなって……」

 そんな彼女達の行動を目の当たりにしたメタルバードは、今まで戦ってきたり出くわした犯罪者とは一線を敷く強敵だと仄めかしながら無茶しないようにと言う。

 しかしメタルバードの不安は的中。流子や皐月、未来たちをアイスフレイムやグービンシーが悉く返り討ちにしてしまう。

 叩きのめされ、打ちひしがれる面々にアイスフレイムが炎の玉を直撃させて丸こげにしようと画策。だがアイスフレイムの背後から佐倉杏子が槍で攻撃しようと突っ込むが、アイスフレイムは背後の杏子の気配を察して、瞬時に体勢を入れ替えて杏子が振るう燃え盛る炎の槍を左手で掴む。アイスフレイムの左半身も燃え盛っている為、杏子の炎の槍を掴んでも何ともないのだ。

「グフフフ、これぐらいの攻撃でオレ様を倒せるとでも? お嬢ちゃん……」

 突撃が失敗して悔しがる杏子の顔を、槍ごと片手で軽々と持ち上げるアイスフレイムの言葉に杏子の悔しさは倍増する。

 するとアイスフレイムは掴んでた杏子の槍を投げ込んで、杏子を地面へと叩きつける。そして燃え盛る炎の右足で彼女を踏みつけようと迫った。が、杏子はこれを間一髪でかわす。

「熱いのが好きか、冷たいのが好きか!」

 お決まりの台詞を吐きながら再び冷気と炎を同時に放射していくアイスフレイムの猛攻に、聖龍隊は苦戦を強いられる。

 戦闘タイプの新世代型も交わり、戦いは更に混戦を極めた。

 だが、そんな混戦中に新たな乱入者が。

「Mrフェイクの茶番劇にしては、やけに時間取られているじゃない」

「か、楓!?」

 突如として暗闇から乱入してはドール・マスターの機械人形の首をへし折って破壊したのは【TIGER&BUNNY】の鏑木楓であった。

 突然乱入してきた鏑木楓に皆が驚愕する中、楓に続いてなんと他のNEXTヒーロー達も現場に駆け付けてきた。

「お、お前達、どうして?」

 続々と姿を現しては、各々の能力で機械人形たちと応戦するヒーロー達にメタルバードが問うと、ワイルドタイガーとバーナビーが機械人形を破壊しながら答えた。

「なに、シュテルンビルトの鎮圧が終わったから、こっちの世界に来てみたら……」

「皆さんがMrフェイクの事件に絡まれていると聞いて、慌てて応援に駆け付けたって訳です!」

 

 戦闘タイプの新世代型二次元人に、シュテルンビルトからわざわざ駆け付けてきてくれたNEXTヒーロー達の乱入が功を奏し、乱闘は更に混戦する。

 

 

 

[形勢逆転]

 

 思わぬNEXTヒーローの応援に、此処から徐々に形勢が逆転する。

 まずは一流の傭兵グービンシー。聖龍隊の新人達がグービンシーに押されているのを見たドラゴンキッドが加勢。卓越したカンフーの格闘術と電撃の能力が相まってグービンシーを徐々に圧倒していく。

 そしてドラゴンキッドの協力で、劣勢気味だった新人達の士気が高まり、キリトら新人らも次第にグービンシーを押していく。

 そしてキリトとシルバー・ロウの剣戟と佐倉杏子の間接槍がグービンシーに直撃。グービンシーは頭を強打し、朦朧とする。

 するとグービンシーの仮面が、打撃の衝撃で外れて床に落ちた。皆が立ち上がるグービンシーの顔を見てみると、その瞬間衝撃が走った。

 なんとグービンシーの素顔、それは顔に真一文字の抉った様な傷跡が見られるだけで、あとは眉や目の形ともに、あの小田原修司と瓜二つだったのだ。

 初めてグービンシーの素顔を目撃した新人達と新世代型二次元人たちにグービンシーは睨みを飛ばす。

「な、なんで……あの男は小田原修司と同じ顔を!?」

 グービンシーの素顔を目撃して愕然としてしまう鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の隣に、スカイハイが着地して彼女の疑問に答えた。

 

「グービンシー、本名インヤン・チャオ……彼はかつて中国共産党で、小田原修司のコピー兵士として整形をされた上で屈強な兵士に育て上げられたんだ……!」

 

 グービンシーの出生を聞いて再度驚く皐月たち新世代型。グービンシーは小田原修司の代用品として顔を整形された三次元人だったのだ。

 だが素顔を晒されたグービンシーの猛攻は留まらず、棍棒による棒術でドラゴンキッドや自分に対して応戦してくる聖龍隊の新人や新世代型たちを殴り付けようとかかる。

 しかしドラゴンキッドがグービンシーが振り下ろした棍棒を受け止め、隙を見付けてグービンシーの腹部に強力な掌底を打ち付けた。

 腹部に掌底打ちを喰らったグービンシーは思わず棍棒を離して怯んでしまい、その隙にドラゴンキッドはグービンシーが使用していた棍棒を真っ二つに足で叩き折る。

 武器を壊されたグービンシーは、背中に装備している日本刀を抜刀し、今度は一撃で相手を葬れる日本刀の刃で斬撃を仕掛けようと身構える。

 中国拳法独特の構えから放たれる強力な太刀筋にキリトやシルバー・クロウそして美樹さやかたち剣で闘う者たちは圧倒されてしまう。

 するとドラゴンキッドだけでなく、今度はスカイハイや折紙サイクロンがグービンシーの前に立ちはだかる。

「チャオ君、もう彼の……小田原修司のフリをする必要はないんだよ?」

「それなのに……まだ無益な戦いを続けるつもりでござるか!」

 スカイハイと折紙サイクロンがグービンシーを宥めようと呼びかけるが、グービンシーは日本刀を振り付けながら二人に斬り込んできた。

「俺はもう小田原修司の複製品なんかではない……この世に存在するたった一人の猛者! グービンシーだ!」

 空を切り裂きながら爽快な音を立てて斬り付けてくるグービンシーに、もはや説得は不可能。

 そんなグービンシーをスカイハイは強風で吹き飛ばす。「うおっ!?」上空に舞い上げられて半ば混乱するグービンシーであったが、直感で冷静になり、体勢を立て直して床へと着地。それと同時に能力を仕掛けてきたスカイハイと折紙サイクロンにグービンシーは同時に斬りかかる。

 二人はグービンシーの攻撃を回避した直後、折紙サイクロンが背中に常備している巨大手裏剣をグービンシーに投げ付けて牽制。グービンシーはこの手裏剣を避けるも、遠方からのドラゴンキッドの電撃を直撃してしまい軽く痺れてしまう。そこをドラゴンキッドが容赦なく追撃していくが、グービンシーは此処で煙幕弾を床に投げつけて姿を晦ました上で距離を取る。

 そして距離を置いたグービンシーは煙幕の中からドラゴンキッドに向かって刃を振り付けてきた。

「うおおおッ!」

 容赦なく剣戟を相手に振り付けるグービンシーに対し、ドラゴンキッドは着用しているスーツの両腕に備えられている対刃物装甲のブレードエッジで剣戟を受け流しながら、反撃の隙を伺う。

 すると其処にドラゴンキッドの危機だと認識した折紙サイクロンがグービンシーを殴りにかかろうとするが、グービンシーはドラゴンキッドを押し退けて殴りにかかってきた折紙サイクロンを肘打ちで迎え撃つ。

 しかしドラゴンキッド、スカイハイも加勢に加わり、三人でグービンシーを追い詰めていく。

 ドラゴンキッドの打撃、スカイハイの遠距離からの牽制、折紙サイクロンのかく乱が効果を見せて、壁際までグービンシーを追い詰める事が叶った。

 三人を前に、幾度となく打撃を喰らって朦朧とするグービンシーの日本刀を奪い取った折紙サイクロンは吐き捨てた。

「君は、君の人生を歩むべきだったな」

「違うな……俺の人生は、今のままだ!」

 追い詰められながらも未だ抵抗の意志を見せるグービンシーを前にしたサイクロンは、奪取した日本刀をグービンシーに投げ付けた。

 投げ付けられた刀はグービンシーの顔の真横を通り過ぎ、グービンシーがその刃に目を奪われている不意を衝いてドラゴンキッドが彼の顔に強烈な拳を打ち付ける。

「ぐはっ…………」

 顔を殴られたグービンシーの頭部は壁に突き刺さった刀の鞘に直撃し、二重の衝撃を受けて遂に気絶してしまう。

 

 

 グービンシーとの一戦が終えたその頃、ブルーローズとファイヤーエンブレムの二重攻撃をアイスフレイムが受け止めていた。

「うははは! お前らの力はこんなもんか!」

 氷と炎の能力を両腕で受け止めながら煽ってくるアイスフレイムに、ブルーローズとファイヤーエンブレムは表情を歪ませる。もっともファイヤーエンブレムの素顔はマスクで隠れているが。

 そこに二人に加勢しようとセーラーマーズとセーラーマーキュリー、さらに木之元桜に獅堂光と龍咲海の聖龍HEADが手を貸してくれた。

「二人とも! 私たちも加勢するわ!」

「いくら強力な炎と氷の複合能力者とはいえ、それ以上に強力な攻撃を受けられるほどアイスフレイムの肉体は強くないわ……!」

 セーラーマーズとセーラーマーキュリーの頼もしい助言を受けて、聖龍HEADの炎と氷の能力者たちはアイスフレイムを撃破しようと一致団結する。

 そして強力な氷と炎の合体技でアイスフレイムを圧倒し始める聖龍隊。アイスフレイムはこの攻撃を何とか耐え凌ごうと必死になる。

 だが自身が放つ強力な炎と冷気の攻撃を遥かに凌駕する火炎と冷気の攻撃に、アイスフレイムは堪らず退いてしまう。

「うおッ!」

 しかもこの時、唯一炎や冷気に晒されていないアイスフレイムの両目に、外部からの熱気と冷気が直射して視界が遮られた。

 そこを聖龍隊は一気に片付けようと迫るが、アイスフレイムは周囲に展開する聖龍隊を蹴散らす様に両腕を振り回す。と、そこに「モオオオォォッ」とけたたましい唸り声を発しながらアイスフレイムに急接近する巨大な影が。

 それは鋼鉄の体を誇るロックバイソンの突進であった。アイスフレイムはロックバイソンの突進をまともに喰らい、弾き飛ばされてしまう。

「ぐお……ッ!」

 宙に舞うアイスフレイムは、差し詰め闘牛で人間が吹き飛ばされたかのよう。

「おおおっ! ロックバイソンの名は伊達じゃないぜ!」

 アイスフレイムに突撃したロックバイソンは誇らしげに咆哮を上げる。

 そしてロックバイソンに弾かれたアイスフレイムは激しく地面に叩き付けられ、悶絶する。

「ッ………………!」

 と、そこに堂本海人と蒼の騎士が二人がかりで意識が朦朧とするアイスフレイムに連続攻撃。二人がかりの猛攻にアイスフレイムの足取りはふら付き始め、そんな朦朧とするアイスフレイムにミュウイチゴがとどめと言わんばかりの一撃を脳天に直撃させて、アイスフレイムは完全にノックダウンされた。

 肉体的には常人と対して強度が変わらないアイスフレイムへの攻防は、呆気なく終わった。

 

 

 そして現場に残っているのは、観戦者のMrフェイクと機械人形を操るドール・マスターの二人だけ。

 ドール・マスターが操る機械人形は、ワイルドタイガー親子やバーナビーが加わって撃破していくが、超能力で遠隔操作しているドール・マスターを倒さなければ無尽蔵に人形は増え続ける一方。

 そこで人形繋がりという事で、ローゼンメイデンの真紅たちが操縦者であるドール・マスターを直接叩こうと滑空して接近。だがドール・マスターも背中のホバリングで自由に飛行しながら真紅達の追撃から逃れる。

「ハハハ……君たちローゼン氏が造形した人形も、僕のコレクションに加えさせてもらおうかな」

 自分を追尾してくる真紅達ローゼンメイデンを目視しながらドール・マスターは嘲笑する。

 そんなドール・マスターを打倒しようと必死に追い抜こうとするローゼンメイデン達。

 だがその時、地下室の広間を延々と飛行していたドール・マスターの前にメタルバードが立ち塞がった。

「うわあっ」突然のメタルバードの登場に慌てふためくドール・マスター。

 そしてメタルバードはドール・マスターが着用しているパワードスーツの弱点である回路を切り裂いて断ち切り、駆動が可笑しくなったドール・マスターの両肩を捕まえて床に投げ付けた。

「うおっ!」

 床に叩き付けられたドール・マスターにメタルバードは慈悲を見せず、容赦なく彼のパワードスーツを引きはがす。

「や、やめろッ」

 自慢のパワードスーツを引きはがされ、ドール・マスターこと九具津隆は混乱しながら自身の顔を両腕で隠そうとする。だがメタルバードはそんな自分の素顔を隠そうとしている九具津に容赦ない制裁の拳を打ち込む。

 鋼の拳を顔に打ち込まれ、ドール・マスターは完全に気を失った。しかしこれより前に、ドール・マスターが放った機械人形は全て聖龍隊や新世代型たちによって破壊し尽くされていた。

 

 この卓越した一連の戦闘を目の当たりにした二次元人達は、その凄さに思わず茫然と立ち尽くしてしまうばかり。

 そして三人の刺客を全て返り討ちにした聖龍隊は、最後に残っている観戦者Mrフェイクのみとなった。

 

 

 

[嘲る偽り]

 

 自分が雇った三人の刺客たちを、NEXTヒーローと戦闘タイプの新世代型二次元人の乱入で撃破した聖龍隊を観戦して、Mrフェイクはパチパチと手を叩いて心から祝福する。

「ブラボーー! 流石は聖龍隊だね! 悪人なら容赦なく叩きのめしちゃう、その冷徹さ……そして傲慢さ! いつ見ても心が躍るよ!」

「黙れ! この狂人が……!」

 聖龍隊が新人の一人キリトがMrフェイクの戯言に怒りを露わにすると、Mrフェイクはそんなキリトたちに問答をぶつけてきた。

「いやいや、褒めているんだからそんなに怒らないでよ……それに、君たちは本当に自分達がやっている事が正しいと思っているのかい?」

「???」

「異常な二次元人と見做されただけで世間体から省かれていく可愛そうな二次元人達……人権もなくなれば、出生した証すら消されてしまう哀れな敵役たち……僕は、そんな敵役に救いの手を、時には復讐の手助けを差し伸べているだけだよ。君たち正しいと見做されている二次元人を小田原修司が守ってきた様に、僕は逆側の二次元人や敵役たちを助けてあげているだけだよ。そんな僕を……そして僕が手を差し伸べている敵役たちを正義とか言って平然と抹消しようとする君たちは、果たして正義とか名乗れるのかな?」

「そ、それは……」

 Mrフェイクからの問答に返す言葉が見付からないキリト達は失言してしまう。

 だがMrフェイクの問答は終わる事が無かった。

「人々を魅了する為に正義の味方だとか、英雄だとか名乗ってばかりの偽善者こそ僕以上のフェイクだよ! でも、そんな偽善に満ち溢れた世界だからこそ、世の道理は回っているのを僕は理解している! だから僕はMrフェイクだと名乗っている訳さ! 人々の偽善という思想概念から生まれた、君たち二次元人が僕の様な三次元人を殺せるのかい?」

 世間を欺く偽善で世界は覆われ、その偽善で常道は回っているのだと説いたMrフェイクは、そんな自分を人々の偽善に満ちた心から生まれた二次元人が倒せると挑発。これには聖龍隊の新人達は戦意を削がれてしまう。

 だが、そんな新人達にミラールが言った。

「構う事ないわ! コイツはただの狂人よ!」

 新人達の戦意を呼び起こそうと躍起になるミラール。

 だが、それより前にメタルバードが動き出し、Mrフェイクの前へと飛び上って移動する。

「もうお前の茶番劇は愛想が着いた、Mrフェイク……」

「おやおや? 僕を殺そうって言うのかい? あのジャッジ・ザ・デーモンですら僕を殺せなかったっていうのに……」

 追い詰められても未だ相手を煽るMrフェイクの戯言に、メタルバードは瞬発的に怒り、Mrフェイクの胸倉を掴んで顔をボコボコに殴り付け始めた。

「うはははッ! 世界は偽りで満たされている……そんな世界を守るのが、君たちだというなら偽りを掲げる僕も同時に存在し続ける! 誰も僕を殺す事はできない……君も、デーモンも! 誰も!」

 顔を強打されながらも狂ったように語り続けるMrフェイクにメタルバードの怒りが爆発。メタルバードはMrフェイクを高々と持ち上げると、そのまま床に叩き付けてMrフェイクの意識を奪った。

 床に思いっきり叩き付けられたMrフェイクは完全に気を失い、痣だらけの顔を皆に向ける。

 

 

 それから十数分後、ジャッジ・ザ・シティの聖龍隊支部から一般の隊士たちが現場である建設中の遊園地に駆け付け、満身創痍の犯罪者たちを連行していく。

 自慢のパワードスーツを破壊され、素顔を晒している九具津隆。自ら顔に傷をつけ、小田原修司とは別格だと自称する傭兵グービンシー。意識不明に陥り、気絶した状態で担架に乗せられて移送させられるアイスフレイム。

 そして狂い笑いしながら嬉々として連行されていくIQ280の精神異常犯罪者Mrフェイク。

 そんな四人を見下した面差しで見詰めながら新世代型の琴浦久美子が、同じく連行されていく四人を見送るメタルバードに問い詰める。

「どうして、あんな狂人どもが処分されないの?」

「精神に疾患を負っていると見做された異常者(ヒール)は、人権団体などの圧力で処分を見逃される節が多いんだ」

 久美子からの提示にメタルバードが返答する。

 法律上、精神に何かしらの疾患を負っていると見做された異常者(ヒール)及び犯罪者は処分という名の処刑を免れるケースが多いという。

 そんな中、多くの新世代型二次元人に見送られながらMrフェイクは何やら面白げに彼らの顔を見返しながら、全身を逃亡防止のための拘束具で固定された状態で護送されていった。

「フフ、フフフ…………あれが鬼の子か」

 新世代型たちを見返したMrフェイクは小さく不気味な言葉を呟いた。

 

 

 事件から翌日。

 ジャッジ・ザ・シティの聖龍隊支部。そこの取調室でMrフェイクへの取り調べが行われていた。

「Mrフェイク、いやジャクソン・グレイシスと呼ぶか……ま~~た厄介な事をしてくれたな」

「フフフ、Mrバーンズ。聖龍隊総長になっても、相変わらず軽率なのは変わらないね」

 敢えて本名で呼ぶことで事情聴取を行おうとするバーンズに対し、Mrフェイクは総長に昇格してもなお軽率で相手を軽視するバーンズの軽々しい性格を皮肉る。

 と、ここでバーンズがMrフェイクに確信をつく質問を投げ付けた。

「答えろ! 貴様の事だ……新世代型を利用して何か仕出かそうとしていたんだろ!?」

「はてさて、何でそうなっちゃうのかな……何か根拠でも?」

 白を切るMrフェイクに、バーンズは机の上に証拠保管用のビニール袋に入れられた封筒を見せ付けた。

「……これは?」

「新世代型二次元人あてに送られたジャッジ・ザ・シティへの招待状だ。ご丁寧にオレたち聖龍隊の紋章判まで押されてやがる……」

「ほうほう、これはよくできている偽物だ……で? これがなにか?」

「恍けるのもいい加減にしろ! 貴様が事件に絡ませようと、琴浦善三や久美子親子、さらには異世界からヨドやエイミーを招き入れたんじゃないのか!」

 バーンズは机を叩いてMrフェイクに脅し紛いの聴取を行うが、Mrフェイクは余裕ある素振りと笑みを零してバーンズに言い返した。

「確かに例の新世代型には興味がそそられるよ……彼の遺伝子が組み込まれているんだからね」

「………………………………」

「……だけど、全員を連れてくるほど僕が間の抜けた事をするかい? 演劇だって同じだ、キャストが多ければ多いほど舞台が面白くなるという訳ではない。逆に観客を混乱させてしまうだけだ」

「………………」

「それに……例え琴浦親子やヨドとエイミーのカップルを連れてきたとしても、他の新世代型はどう説明するんだい? 彼らが君たち聖龍隊の護衛付きでアジア各地を回っているのは小耳に入っていたけど、まさかジャッジ・ザ・シティに来ていたのは昨日知ったばかりだよ。まっ、まさか僕が変身してやった連中の事件に巻き込まれるなんて、偶然とはいえ恐ろしいね」

 これを聞いたバーンズはMrフェイクの胸倉を掴んで睨み付けた。

「貴様の変身薬のせいで、どんだけの人間が被害を被ったか、解ってんのか……!」

「おお、ソーリーソーリー、つい口が滑っちゃったよ。でも、より取り見取りの新世代型二次元人達を僕だけの力でジャッジ・ザ・シティに集結させるのは不可能だって」

「……お前の仕業じゃないってのか。この偽の招待状は?」

「違う違う。僕だったら全員を丸ごと誘拐してからバラエティー中に殺して視聴率を狙っちゃうてばよ!」

「……【NARUTO】の口癖、真似すんじゃねえって」

 人気キャラの口癖を真似するMrフェイクにバーンズは睨みを利かせる。

 

 それから間もなく、再びMrフェイクは聖龍隊支部の留置所へと叩き込まれた。

 それでも尚、喜々凛凛と笑顔を絶やさないMrフェイクの狂気染みた雰囲気に誰もが絶句する。

 その留置所の檻の外に、三人の人物がプロト世代の海道ジンと共にやって来た。

「おやおや? 君は確か海道ジン君に、あとは……Mr鏑木にバーナビーくん、そして楓ちゃんじゃないか」

 檻の内側からMrフェイクが海道ジンと共にやって来た虎徹とバーナビー、そして三人の中でも一際険しい表情の鏑木楓に目を付ける。

 海道ジンは事件に巻き込まれた二次元人達の代表として、そして何かあった時の為に鏑木親子とバーナビーが護衛と監視に付いていた。

「やあ、海道ジンくん、君だけで訪れるとは……他の新世代型二次元人は共有感知で情報を交換できるから外で待機してるって感じなのかな?」

「! 貴様、何故それを……!」

 Mrフェイクの言葉に海道ジンは一驚し、その海道ジンの心中をテレパシーで感知していた別所の斉木楠雄と彼からの共有感知でジンが聞いた情報を共有した新世代型二次元人は愕然とした。

 そんな一驚する海道ジンたちにMrフェイクは詳細を述べた。

「はははっ、簡単な事さ。僕は国連軍や合衆国のデータバンクを自由に閲覧できるほどハッキングに長けているからね。君の教え子や同僚である新世代型二次元人の共有感知は既にお見通しって訳さ」

「それを承知で……みんなを事件に巻き込ませたのか!?」

 いつもは冷静沈着な海道ジンが珍しく怒りをMrフェイクにぶちまけると、そんなジンをおちょくるかの様にMrフェイクは言った。

「ハハッ、君がそんなに怒るなんて珍しいね……義理のお父さんの本性に似てきちゃったんじゃないのかい?」

「ッ!!」

「ハハッ、そう表情を微弱ながらに歪めない。家庭が辛かったってのは僕にも理解できる……「漫画など軍人が読むものではない」と、僕も父親から鞭で叩かれながら教育されたからね。まあ、今でも一部の三次元人が君ら二次元人は教育に悪いって風潮を立てているけどね…………だから僕はそんな連中に本当の道徳心を教えるべく痛め付けちゃっているけどね。時々、死んじゃうし。ハハッ」

「…………そんな貴方が、なんで僕たちを巻き込んだんだ」

 冷静な面持ちに気を取り直して海道ジンが訊ねると、Mrフェイクは楽しそうに答えた。

「それこそ君たち二次元人に本職を与えているからじゃないか! 君たちは僕ら三次元人を楽しませてくれるエンターテイナーそのものなんだから! アクシデントで僕らを楽しませるのは道理じゃないか」

「僕たちは好きでアクシデントに巻き込まれている訳じゃない。貴方の様な犯罪者がいるから、みんなは平穏な時を過ごせないんだ」

「その平穏な日々は、果たして世界に意味を成しているのかな?」

「っ……どういう事だ……?」

 Mrフェイクの疑問に海道ジンが目付きを鋭くさせると、Mrフェイクは自分が思い込んでいる道理を説き始めた。

「平穏な日々、平和な時代は果たして人々に教養を与えているのか……平和の中で人々は、ただイタズラに時を過ごす事しか考えなくなり、遂には何も考えなくなる……君だってLBXの様々な事件がなければ真剣に平和に対する考えを持たなかったじゃないか、それと同じだよ。平和の中では人々は本当の豊かさ、幸せを感じる事無く一生をつまらなく終えてしまうだけさ」

「………………………………」

「そもそも平和ってのは、それこそ人々の偽善が積み重なってできただけの絵空事さ。世間はそれを隠蔽する為に……そしてそれを指摘されない為に排除法を作って、人々の視線が世界の疑念に向かない様に仕立て上げているだけなんだよ」

「……つまり、世界は貴方以上に偽りに満ちている、と……」

「そういう事さ、海道boy」

 Mrフェイクの説く道理に耳を傾ける海道ジン、そしてジンの思想を高度のテレパシーで読み解いてしまったが為に斉木楠雄を始めとする新世代型二次元人は思考に追い詰められる。

 そんな二次元人たちの思想を嘲るかのようにMrフェイクはジンに対してこう指摘もした。

「平和と言う概念の元で、果たして人は本当に幸せだと……寂しさを感じないのか? 誰もが人々の脚光を浴びたい、幸せに感じたいと願うから、寂しさと言う概念が生まれてしまう。僕は、そんな三次元人たちに幸せを……脚光を浴びる切っ掛けを与えたに過ぎない。そう、君たち二次元人が僕ら平穏を願う三次元人を危機的状況に追い込む様にね……」

 薄らと嘲笑を浮かべるMrフェイクの言葉に、海道ジンも共有感知で彼の思考を読み取った新世代型二次元人たちも騒然となった。

 するとMrフェイクの話を同じく聞いたジンの傍らに付き添いで立っていた鏑木楓が話し返した。

「……それでもMrフェイク、貴方が思っているほど世界は偽りに満たされていないわ」

「ハハッ、Miss楓! 君もミラーガールに影響されてしまったのかい? あの何もかも綺麗事だと信じている聖女の思想に……!」

「……世界はそれでも周り続け、動き続けているの。貴方一人の思想では決して止められないほど、世界は脈動し続けている」

「ほう、それはそれは……それじゃ、そんな僕の思想を止めた上で、何度も捕まえた君らの方が優秀って訳なのかい? 君たち二次元人を創造した僕の様な三次元人よりも賢いって訳?」

「いいえ、私は……私たちは貴方以上に賢くないわ」

「ほうほう、それじゃ何で僕は捕まっちゃったのかな?」

 次の瞬間、鏑木楓は険しい面差しでMrフェイクに言い切った。

「それはもちろん………………アナタが狂人だからよ」

 この鏑木楓の返答を聞いた途端、Mrフェイクの様子が一変した。

「クック、フハーーハッハ……! いやいやいや、Mrタイガー! 君の娘さんは君以上に賢いと見えたよ! ワーーハッハッ!」

「そりゃ、俺の娘だからな。Mrフェイク……!」

 高々と嘲笑するMrフェイクの狂った言動に、鏑木親子とバーナビー、そして海道ジンと彼の思想を共有感知で読み取った新世代型二次元人達は険しい顔色を浮かべた。

 

 そして聖龍隊支部とは別の留置所に連行されるMrフェイクだったが、聖龍隊支部の出入り口を前に彼は新世代型二次元人達に話し掛けてきた。

「ハハハハッ、琴浦春香! そして斉木楠雄! 僕の思想は読み取れるかい? 君たち新世代型に僕の思考が読み取れるかい……? そりゃ無理だろうね! だって僕ちゃんの頭は狂っているから! 狂っているから誰も僕の行動が理解できない、先読みができない! これって凄くない?」

 自分の狂人度を誇らしげに語り続けるMrフェイクの言動に、新世代型もチョコ達プロト世代も蒼然となる。

 さらにMrフェイクは、聖龍隊支部を去る手前で新世代型二次元達に言い残していった。

 

「君たちが信じている真実は、果たして本当に真実なのか? それを疑問に思った方がいいよ……」

 

 世界中の情報をハッキングしてありとあらゆる真実を周知しているMrフェイクの言動は、まるで新世代型二次元人が何なのかを悟っているかのような発言だった。

 新世代型二次元人達は自分達が信じ感じ取っている感覚が果たして本物なのか。そして知っている事実が果たして真実なのか疑心暗鬼に駆り立てられた。

 

 

 

[オリジナル&アレンジヴィラン]

 

グービンシー(鬼=グゥイ+兵士=ビンシー)中国語読み

本名:陰陽薇 インヤン・チャオ

 かつて中国で行われていた悪政「一人っ子政策」によって両親に捨てられたチャオは浮浪児として盗みを働きながら生き延びていた。そこを共産党の諜報員に腕を見込まれ、一流の暗殺術と格闘術を教え込まれた上で、小田原修司と恰幅や年恰好が似ているという理由から、整形手術で小田原修司そっくりへと顔を整形される。以降、共産党の指示で暗躍する一流の殺し屋として、また小田原修司の代用品として戦いに身を投じてきた。しかし中国共産党崩壊後は、自分が自分である証明として共産党とはスッパリ縁を切り、自らの顔に真一文字の傷を抉る様に傷つけて、小田原修司との差別化を図る。それ以降は世界中で暗躍する殺し屋または傭兵として活動。幾度となく逮捕・起訴されるが政府の圧力で釈放される事が多い。

 

 

ドール・マスター(本名:九具津隆)

 元B.A.B.E.Lの人間にして元P.A.N.D.R.Aのスパイ。私怨からP.A.N.D.R.Aに情報を横流していたスパイだったが、P.A.N.D.R.Aがスコーピオン同盟の傘下に降った事で組織を離反。その後、革命軍士に加わり、そこで自らの複合超能力を強化するパワードスーツを与えられ、人形使いドール・マスターへと変貌する。革命軍士崩壊後も病的に犯罪を犯す様になった異常者(ヒール)

 

 

アイスフレイム(本名:ジョン・スミス)

 宝石を専門に強盗を繰り返していたジョン・スミスはある晩、ジャッジ・ザ・デーモンの追撃から逃れるべく、とある研究施設に逃げ込んだ。其処は人体を冷凍保存する技術を専門に行う部署で、そこでのデーモンとの逃走劇の最中、スミスは液体窒素を始めとする化合薬品を右半身に被ってしまった。その後、意識低迷の中、目覚めたスミスは右半身が凍て付く中、左半身に異常なまでの熱さを感じて発火し、右半身を冷気で覆われた冷凍人間と左半身を炎で覆われた火炎人間を足して2で割った特殊人間へと変貌。さらに革命軍士で肉体を強化改造された事で究極の火炎冷気人間アイスフレイム(アイスは氷、フレイムは炎を意味する)に変わった。以降、組織内で活躍する中、その多大な能力と戦果で幹部にまで上り詰めたが、その経過中にも悪癖である宝石強盗はやめられなかったと言う。そして革命軍士組織壊滅後は再び宝石強盗へと身を落とし、悪事の限りを尽くす。

 

 

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