現政奉還記 未来都市&宇宙編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 Mrフェイクの策略により、戦闘情景を隠しカメラでネットに配信された新世代型二次元人達は翌朝からマスコミの騒動に頭を悩ませられる。そんな中、早朝から聖龍隊支部を出て日頃からお世話になっているバーンズやアッコに感謝の気持ちを伝えようと贈り物を探しに出ていった【リトルバスターズ!】の面々が異常者ブラック・マンの一味に捕縛され、彼ら特製の巨大爆弾で街ごと爆破されそうになる。しかし其処に聖龍隊特殊部隊マン・ヒールズが駆け付け、無事にブラック・マンたちを確保して直枝理樹たちを保護する事に成功。しかし突然心肺停止したブラック・マン達を搬送した病院で、突如ブラック・マンの体内思想が暴走し異形の怪物に変貌。更に運悪く理樹たちだけが院内に取り残され、閉じ込められてしまう。この危機を現場に駆け付けた琴浦春香のテレパシーで知ったミラーガールは単身、院内へと突入。そして理樹たちの前から怪物と化したブラック・マンであるトリプル・ヘッドを遠ざける事に成功。その後、ミラーガールは病院屋上に退出し、あとを愛機シルバー・ウィングに搭乗したメタルバードに任せてハトに変身して脱出。メタルバードは心を鬼にしてトリプル・ヘッドを砲撃、その後さらにアメリカ空軍までも出撃してトリプル・ヘッドを撃破して見せた。だが事態はこれで終わらず、三次元政府はブラック・マン達が出展している【しゅごキャラ!】のキャラクター達にも白羽の矢を立てて危険視。彼らを異常者でないかどうか確認するため理不尽な精密検査を受けさせる。その様子をバーンズとカァチェンはただただ静かに見守るしかできなかった。



現政奉還記 ジャッジ・ザ・シティ編 新世党、動く

[動き出す影]

 

 月詠イクトたち【しゅごキャラ!】のキャラクター達が精密検査を受けていたその頃、聖龍隊支部の前には病院での騒動に巻き込まれながらも無事に帰ってこられた【リトルバスターズ!】の面々を同じ新世代型たちが出迎えていた。

「理樹、みんな! 全員、無事だったみたいだな」

「え、ええ、ミラーガールさんが助けに来てくれたから、なんとか無事だったよ……」

 プロト世代のギュービッドに出迎えられ、理樹たちは何とか生還できた事実を伝え返す。

「まったく、朝早くから聖龍隊支部を出るから、こんな目に遭うんですのよ」

「はは、まあ、そこはバーンズさんにも注意されたわ。聖龍隊士に無断で支部から出るんじゃないって……」

 薙切えりなからの指摘に、神北小毬は苦笑いで返す。

 現にバーンズは、自分たち聖龍HEADに感謝の気持ちを伝える為の贈り物を探しに出ていったのは嬉しがったものの、新世代型である彼らが無断で聖龍隊支部を出ていったのは厳重に注意していた。

 すると二次元人達と同席を共にしているシバ・カァチェンが唐突に話し出した。

「申し訳ありませぬ。手前がもう少し機転を利かせて過ごせれば、理樹殿たちに危険が及ぶことは無かった筈……」

「ああっ、もういいってカァチェンさん! そんなに自分を責めないで……」

 直枝理樹たちに危険が及んでしまったのは自分の不手際だと自身を追い詰めるカァチェンに、理樹は自責しないよう説き掛ける。

 こんな状況のシバ・カァチェンに斉木楠雄が半ば呆れた様子で言葉を掛けた。

「カァチェンさん……また貴方の悪い癖ですよ。自分を責めてしまって……バーンズさんも仰ってましたが、もう少し気を緩めて……」

「は、はぁ、誠に申し訳ありません……」

「だから、それがいけないんですって。謝ってばかりで……」

 ただただ謝罪ばかりするカァチェンに呆れ果ててしまう斉木楠雄たち二次元人ら。

 だが、そんなカァチェンを庇護する言葉をプロト世代のチョコが訴え掛ける。

「まあまあ、みんな。理樹さん達も、ようやく解放された訳ですし、結果オーライじゃないですか。ど、どうです? またジャッジ・ザ・シティを探索するのは……」

「もう懲り懲りよ! この街、一見平和そうに見えても凶悪な犯罪者がウロウロしてるし、堪ったもんじゃないわ」

「!」

「お、おい! 巨乳のねえちゃん、そんなにチョコを怒鳴る事ねえじゃねえかよ!」

 何とか場を和ませようとジャッジ・ザ・シティへの探索をまた行おうと提案するチョコに思わずカッとなって怒鳴り散らしてしまう薙切えりなに身を縮ませてしまうチョコ。そんなえりなにギュービッドが怒鳴るんじゃないと文句を言う。

 

 と、新世代型を中心とした一同が会談している処に、一人の青年がやって来た。

「よっ、あんた達……」

「貴方は……確か、ドレフ将校の……!」

「そう、シャドウだ。ジャッジ・ザ・シティに来て以来、色々と厄介事に巻き込まれているみたいだな、おたく……」

 話し掛けてきた金色のアーマーを装備した青年を見てプロト世代のチョコが笑顔を浮かべる。

 彼はシャドウ、ジャッジ・ザ・シティの軍備を統括しているドレフ将校の配下にいる軍人で、皆と同じ新世代型二次元人なのだ。

 余裕ある様子で話し掛けてきたシャドウの言葉に、皆は耳を傾ける。

「やっぱりまだ聖龍隊支部に居たか……ちょうど良かった、みんなをイイところに案内してやるぜ」

「いいところ……?」

「おっと、大丈夫。いかがわしい場所じゃない、このジャッジ・ザ・シティが見渡せる絶景ポイントに連れて行ってやるって事よ」

「ホントか!? やったぁ!」

 シャドウの提案に烏丸さくらが首を傾げる中、燃堂力は大いに喜んだ。だがこれに斉木楠雄がシャドウに問い掛けた。

「良いんですか? 職務を放棄しては……」

「ハッ、大丈夫さ。ジャッジ・ザ・シティの警備配置は既に万全なんだ、何より俺が配備した軍隊が簡単に突破される訳がないだろ?」

 シャドウは自分が配置につかせた軍隊による防壁が簡単に突破される訳がないと斉木に主張。

 ここでシャドウは二次元人達に改めて提案を切り出した。

「……ところで行くか、行かないか。どっちにする? このジャッジ・ザ・シティが見渡せる絶景なんて早々にない……おススメするが、強制はしないぜ」

「……うん、せっかくシャドウさんが言ってくれている事だし、私達は行ってみましょう!」

「あ! 俺も俺も!」

「しょうがないわね……まあ、せっかくの御好意を断るのも無難だし、行ってみるのも悪くないかもね」

 シャドウの提案に三舟百合子や燃堂力が賛同した事で、薙切アリスら他の二次元人達も渋々ながら絶景ポイントまでの案内をシャドウに委ねる。

「私たちも折角、同じ新世代型の人たちと交流できたんだし、付き合ってみない、ヨド」

「……そうだな。折角ジャッジ・ザ・シティにまで来て、観光の一つもしないと割に合わないしな」

 ジャッジ・ザ・シティに来て早々、事件に巻き込まれて観光どころではな無かった所以から提案するエイミーに、ヨドも素直に同意する。

 

 こうして一同は、シャドウの案内の元、ジャッジ・ザ・シティが見渡せる絶景地点まで行くのだった。

 

 

 

[荒れ狂う街]

 

 シャドウに案内されて、一同が連れていかれたのは文字通りジャッジ・ザ・シティが見渡せるほどの絶景地点。それも一般人が立ち入る事が許されていない地点だった。

「わあ……! ジャッジ・ザ・シティが本当に全部、見渡せる……!」

 輝かしいほどの発展を遂げたジャッジ・ザ・シティを見渡して、感激のあまり目を潤わせる新世代型の瀬名アラタ。

 そんなアラタたち一部の二次元人たちがやって来ているのは、ジャッジ・ザ・シティの中央に健在しているセントラルタワーの上層部だ。普段は一般人は立ち入る事ができないのだが、何故かシャドウの案内の元、彼らはセントラルタワーの上層部からジャッジ・ザ・シティを一望できた。

「どうだ? ここからの景色は格別だろ」

「ああ、本当に素晴らしい絶景だ! 感謝するぞ、シャドウ殿」

 笑みを浮かべて得意げに語るシャドウに、鬼龍院皐月が心の底から礼を述べる。

 と、皆が心の底からジャッジ・ザ・シティを観望していた、まさにその時。

 街の一角が突如として爆発し、猛烈な爆炎と煙が舞い上がった。

「うわっ!」「な、何なの一体……!?」

 新世代型のアリス・カータレットに一条蛍は突然の爆発に一驚してしまう。

 だが、彼女たちを驚かせた爆発は一発だけでなく、その後も連鎖的に街の至る所から爆発が舞い上がった。

「な、何なんだよ、一体……」

 楽しく観望していたのが一転、地上を赤く染める爆発の炎に激しく戸惑い始めるギュービッドたち二次元人。

 そんな二次元人達の傍らで、シャドウが無線で通信を傍受していた。

「なにッ? 異常者(ヒール)の暴動だと!?」

 このシャドウの発言に、現場の二次元人達は騒然となった。

 そして無線通信を終えたシャドウに、新世代型たちが問い詰める。

「ひ、異常者(ヒール)の暴動って……!」

「俺が配置した警備を潜り抜けて、異常者(ヒール)の連中が街中に爆弾を仕掛けやがったみたいだ……」

 瀬名アラタの問い掛けにシャドウは険しい面差しで答え返した。

 そんなシャドウは険しい表情のまま、現場の皆々に言い放った。

「全員、この場から動かないでくれ! 暴動は地上だけで引き起こされているらしいから、多分上層の此処まで爆発の影響はないと思われる。良いか、みんなの安全のためだ……決して、この場から動くんじゃないぞ!」

 シャドウは皆に現場から動かぬよう釘を刺すと、事件現場である地上へと単身で突き進んでいった。

「ま、また大変なことになっちゃったね、流子ちゃん……」

「ああ、それにしても……なんでアタイらは此処から動いちゃいけないんだ?」

 満艦飾マコと話す纏流子は、何ゆえシャドウは避難をさせずに自分らを現場に留めさせているのか疑問に思うばかりだった。

 

 一方、地上では連鎖的に引き起こされた爆破テロの被害で、数多くの市民が犠牲になっていた。

「痛い、イタイよーーっ!」

「足が……俺の足が、吹き飛んじまったぁ……」

「目が……目がぁ……」

「熱い! 熱いよぉ……!」

 爆発により足が吹き飛ばされた者、目に破片が突き刺さり失明してしまった者、そして爆発の炎に包まれて悶え苦しむ者。数多くの市民が爆発の衝撃で被害を被っている惨状だった。

「ッ……酷い! ここまで大規模な爆破テロは今まで見た事がない……!」

 爆発現場に駆け付けた聖龍隊スター・ルーキーズのミラールは、見るに堪えがたい惨状を前に愕然としていた。

 しかしミラールはスグに気を取り戻して、先ほどの自分と同じく愕然としている新人達に指示を告げる。

「ルーキーズ! まずは現場の鎮火、そして爆発に巻き込まれた市民の救出に専念するのよ! かかりなさいッ」

 ミラールの指揮の元、ルーキーズは活発に動き出して人命救助に乗り出していった。

 

 と、各々が爆破現場での人命救助に乗り出している最中、聖龍隊支部より連絡が入った。

「こちら聖龍隊支部! 現在、サイバー空間で異質なプログラムを発見、異常者(ヒール)の可能性が大。至急、サイバー空間にダイブして調査せよ!」

 この支部からの通信を聞いて、ミラールは聖龍隊の【SAO】組と【AW】組に通達した。

「現場の人命救助および誘導は私達で何とかする! キリト、それに春雪たちはサイバー空間の調査を実行して!」

「了解……!」

 ミラールからの指示に、キリトはもちろんシルバー・クロウこと有田春雪も異論を唱えず実行に移す。

 そして付近の建物からサイバー空間にダイブできるプラグを見つけ様と硝煙舞い上がる近隣を駆け回っていると、キリト達の前に二人の人影が現れた。

「! 君達は……」

 その人物たちを見てアスナは目を丸くした。

 すると二人の人物も、聖龍隊が新人SAO組とAW組を見て反応する。

「これは……聖龍隊の新人さん!」

「貴方達もアニメタウンからやって来たの?」

 新人達を見て驚くのは、今や高校生に進学した【ロックマンエグゼ】の光熱斗と桜井メイルの二人であった。キリト達は熱斗とメイルの二人に訊ねる。

「き、君達こそ、なんでジャッジ・ザ・シティに……?」

「ちょっと野暮用があって来ていたんだけど……さっきの爆破テロで逃げ道を塞がれて……」

「それでネット空間にロックマンとロールをインストールしようとしてたんです……」

 キリト達とは違い、聖龍隊ではないもののネット空間などのサイバー空間での揉め事に慣れている熱斗とメイルの言い分を聞いてブラック・ロータスが話し返した。

「事情は分かったわ。あとは私達に任せて、あなた達も早く避難を……これから私達は、そこのプラグからサイバー空間にダイブするの」

「そ、それならオレ達も手伝うよ!」

「ネットでの戦闘なら、ロックマンとロールの力を借りれば私達も助けになれます……!」

 熱斗とメイル、両者の嘆願を聞いて、エギルは渋々二人の協力を呑んだ。

「仕方がねえな……でも無理はするなよ。まっ、俺たちも聖龍隊では新人だけど、お互いに無理は禁物だぜ」

「はい! ありがとうございます、おじさん!」

「ガクッ、お、おじさんかよ……」

 熱斗のおじさん発言にエギルは複雑な心境を抱えるのだった。

 

 

 

[夢の共闘]

 

 聖龍隊士新人であるキリトやシルバー・クロウ達は、たまたまジャッジ・ザ・シティに訪れていた高校生の光熱斗と桜木メイルと共にネット空間にダイブした。

「……ここが現場か。なるほど、現実世界での爆破テロだけでなく、ウィルスによるサイバー攻撃も同時に侵攻されてるみたいだな」

 現場であるネット空間にダイブしたキリトは、様々なウィルスが蔓延る現状を見渡して現実世界での爆破テロと同時にネット空間へのサイバー攻撃も同時進行している現状を把握する。

 するとキリトやシルバー・クロウたち聖龍隊の電子戦士と共にネット空間に潜入したネットナビのロックマンとロールがキリト達に伝えた。

「此処からはボク達が先導します!」

「仮想空間の方ではあなた達の方が有利でしょうが、ネット空間では私たちの方が手馴れています! このまま一緒に進攻しましょう」

「そうね、道案内頼んだわよ、二人とも……」

 ロックマンとロールの助言にブラック・ロータスは同意し、二人に道先案内人を任せた。

 そして一行がネット空間を進攻しようとした矢先、案の定ウイルスが一行に襲い掛かって来た。

「このヤロッ」

 襲い掛かるネットウイルスにキリトが一刀両断して斬り捨てる。

 しかしそれを皮切りに、降って湧いた様に続々とネットウイルスが一行を襲撃する。

「か、数が多すぎる!」

 余りの大群にシルバー・クロウが焦り始めた、その時。ロックマンがソードのバトルチップでウイルスの大群を一部とはいえ一掃してみせる。

「焦らないで! 落ち着いて対処していけば、必ず勝機が見えてくるはず!」

「さ、流石はオレたち以上にネット空間で戦ってきただけの事はあるな……」

 ロックマンの冷静な状況分析に、年配者のエギルは驚きつつも納得させられる。

 それからもSAOとAWの面々はネットナビのロックマンとロールの共闘で進撃を続けるのであった。

 

 

 一方、現実世界では……

「卍解!」

 突如として来襲してきた異常者(ヒール)の軍勢に、シャドウが配備した国連軍の軍勢は忽ち突破され、それを黒崎一護たち聖龍隊士が食い止めていた。

「まったく、ジャッジ・ザ・シティまでも異常者(ヒール)の輩共が湧いてくるとはな……」

「文句を言うな一護。……これもまた、二次元人として、そして聖龍隊の隊士としての責務だ……」

「へっ、そうだったなルキア……同じ二次元人とはいえ、辛ェが責務ってところだな!」

 赤塚組の統治している島と同様に異常者(ヒール)の軍勢と対峙しなければならない現状に愚痴をこぼす黒崎一護に対し、仲間の朽木ルキアが責務と説く。これに一護も同意し、同じ二次元人相手でも手を抜かず戦い続ける。

 すると一護とルキアの二人が戦前に立っていると、ビルの屋上から破槍に飛び乗って異常者(ヒール)の軍勢に奇襲を仕掛けてきた厳つい男が出現する。

「よっ、一護のあんちゃん、それにルキアの嬢ちゃん! 手助けが必要かい?」

「赤塚大作……!」

「貴殿もまた、駆け付けて来てくれたのですか……!」

 突然の赤塚大作こと大将の登場に驚く一護とルキアの二人に、大将は意気揚々とした笑顔で言い放った。

「当ったり前よ! この赤塚大作、黙ってダチ公が痛め付けられているのを見ているほど沁みったれた男じゃねえやい! 少なからず、この赤塚組も加勢するぜ! 出てこい、野郎ども!!」

「おうッ、大将!」

 大将の掛け声と共に、現場に多勢の赤塚組の子分達が雪崩れ込んできた。

 さらにそんな子分達を従えて現場に馳せ参じたのは、赤塚組幹部のギョロ/ゴマ/チカ子/海野なる/海野ぐりお/水原かりん/秋夏子/山崎貴史/山崎千春/市川一太郎/市川レイコ/テツ/ふゆみ/アケミ/アツシ/そして最高戦力のミズキの強豪たちだった。

「テメェら! 聖龍隊の奴らとの共闘だ! 相手は異常者(ヒール)……惜しみなく全力で畳み掛けろッ!」

「おうッ!」

 大将の号令に赤塚組一同は威勢よく返答し、一気に異常者(ヒール)の軍勢に向かって雪崩の様に進撃していく。

 この数での圧倒的な戦力差に、異常者(ヒール)の軍勢はたちどころに士気が低下してしまう。

 この勝機を聖龍隊は見逃さなかった。

「今こそ勝機……赤塚組と共に、異常者(ヒール)の軍勢を押し返しましょうぞ!」

 聖龍隊上官兵の言葉を聞いて、ルキアも一護に言う。

「一護! 我々も進軍するぞ」

「分かってらぁ、ルキア。……進撃すっぞみんなぁ!!」

 黒崎一護は仲間である【BLEACH】の面々と共に進撃していった。

「きゃあっ」

「無理はしないで! 焦らず各個撃破、敵方に反撃を許さないで!」

 敵の銃撃を掠め怯む巴マミに対し、聖龍隊士のブルーローズが先輩風を吹かせる。

 そんな先輩風を吹かせるブルーローズに反し、此方では本物の突風を起こして異常者(ヒール)の軍勢を舞い上げるスカイハイ。

 そのスカイハイの突風を利用して、弓矢の射程を引き延ばして敵方と応戦を繰り広げる鹿目まどか。

 そのまどかの傍らには、暁美ほむらが弾幕を展開して侵攻してくる異常者(ヒール)の軍勢をハチの巣にしていく。

 

 本来ならば出会う事さえ無かった者同士。

 だが今では運命のいたずらか、はたまた宿命か。出会った者同士は互いに手を取り合い、共に目の前の脅威と対峙する。

 まさに夢の共闘が此処に爆誕していたのだった。

 

 

 

[背負う覚悟]

 

 その頃、三次元政府による異常者(ヒール)識別機関では。

 何とか全ての検査を終えた【しゅごキャラ!】の面々が無事に解放されていた。

 

「……検査には異常なし、か。……ま、それが普通だけどな」

 検査を無事に終えた一同に、バーンズが出迎え、月詠イクトに彼らの検査結果の報告書を手渡す。

 その報告書を不満そうな面構えで見据えるイクトはバーンズに言った。

「毎度の事だが……一度、傲慢な性格や厳しい性分を見せた二次元人には手厳しいな、三次元人は」

「そうだな……だが、それこそ反面教師。三次元人は自分達の悪いところを見ている気分でお前らを厳しく見ている面も多々ある事を忘れるな」

「フッ、分かってますよ、新総長」

「おちょくるなって……」

 イクトの新総長という、おちょくりに苦笑いを浮かべるバーンズ。

 すると其処に、検査を終えたばかりのイクト達を出迎えるバーンズに聖龍隊士から報告が入った。

「総長!」

「何事だ?」

「はい! 現在、ジャッジ・ザ・シティで大規模な爆破テロが敢行されました! 同時に所属不明の異常者(ヒール)の軍勢がジャッジ・ザ・シティに雪崩れ込んできています!」

「何だと!?」「!」

 隊士からの報告を受けて、バーンズだけでなく傍らにいたイクト達も驚愕する。

「被害は!?」

「それが、現在もなお爆破テロは敢行され続けて、正確な数値は判明してはいないのですが……軽く見積もっても既に300万人近い市民が犠牲に……」

「酷いな、そりゃ……」

 大方の数値を聞かされ、バーンズもイクト達も居た堪れない心境に駆り立てられる。

「分かった、すぐにオレ様も出撃する!」

「総長、ここは俺も行きます」

「イクト……!」

 バーンズが出撃の意志を示した矢先、イクトもバーンズ同様に出撃すると宣言。これにはバーンズもあむ達も一驚する。

 そんなバーンズ同様に自ら出撃の意志を示したイクトは、バーンズに現在の状況を報告しに来た隊士に訊ねた。

「現在、出払っている聖龍隊の部隊は!?」

「はい! 既に大方の部隊が異常者(ヒール)討伐に向けて出陣しています!」

「その中にマン・ヒールズはいるか!?」

「はい、既に出撃されています!」

「よし、分かった。それなら俺も加勢しに行こう」

 イクトはあくまでマン・ヒールズの一員として出撃しようと意気込んでいた。

 そんなイクトに、あむ達は心細そうに言葉を掛ける。

「イクト……」

「……大丈夫だ。皆で協力し合えば、すぐに片が付くだろう」

「で、でも……」

 あむに続いて辺里唯世も心配そうな面差しで問い掛けるが、イクトは強張った表情で皆に語った。

「……俺には俺の罪が、責任が覆い被さっている。それはみんなだけでない、多くの罪なき二次元人までも恐れられてしまっている程まで膨れ上がっている……そんな膨張した恐怖心を少しでも緩和できれば、それで良いんだ」

 この時イクトは、自分の右手を摩りながら皆に語った。

 そして強張った表情のまま、イクトはバーンズに言った。

「大丈夫……俺には俺なりの責任が圧し掛かっているのは重々承知しています。まあ、小田原修司(あのひと)ほど罪を背負いきれはしませんが、やり遂げてみせますよ」

 そう表情を硬くしながら、イクトはバーンズたちにそう言い残して急ぎ現場へと駆け付ける。

 そんなイクトの言動に、イクトに淡い恋心を抱いている日奈森あむは心配そうな顔を浮かべ、イクトの妹であるほしな歌唄とかつて恋敵であった辺里唯世は複雑な面持ちでイクトを見送るのだった。

 すると日奈森あむたち同様にイクトを見送るバーンズが口を開いて、あむ達に語り始めた。

「……世の中ってのは、どうにもこうにも綺麗事ばかりじゃ動かない様になっちまっている。誰かが汚れ役、薄汚ぇ仕事を負わなきゃならねえ……イクトたちマン・ヒールズもそうだ。過去の柵を振り解こうとせず、罪としてその柵を背負い続けながら修羅の道をただ只管に突き進んでいくだけ……それでもアイツらは戦い続ける。本当の平和が……本当の平穏が人々に訪れる、その日までな……」

「………………………………………………………………」

「……まあ、オレはそんなアイツらの奮闘振りも気に入っているがな。世の中、綺麗な仕事だけじゃない、汚い仕事もあるって事を奴らは身をもって感じているんだ。オレは、そんなアイツらの事を尊敬したい……」

 バーンズの熱弁を聞いて、日奈森あむ達は茫然とバーンズの言葉に耳を傾けるのだった。

「さあってと……オレ様も急いで出撃しないとな。お前らはこのままアニメタウンまで帰っていいぞ。お前達にはお前達の職分が、オレ達にはオレ達の職務があるからな!」

 そう最後に元気よく話したバーンズは、一瞬でメタルバードへと変身してイクト同様にジャッジ・ザ・シティの爆破テロを鎮圧しに出撃する。

 

 

 

[出現する異常者]

 

 一方、ネット空間でロックマンとロールと共闘の末に、被害の中枢であるネット空間まで辿り着いたキリトやシルバー・ロウたち。

「ここか、有事が起こっている中心地点は……!」

 キリトはネット空間で起こっているサイバー攻撃が繰り広げられている中枢まで辿り着き、サイバー攻撃を行っている輩を探し回った。

 すると、そんなキリトやロックマンたちに向かって謎の声が届いた。

「ぐははは……こんなところに旧世代のポンコツどもがやってきやがったとは……」

「お、お前は!」

 目の前に現れた巨体にキリトたち一行は驚愕した。

 それは巨大なサイの獣人型二次元人だった。

「き、君もネットナビ……?」

「ハッ、違うな。俺はDr.サイケの手助けによって、ネット空間にダイブできる新世代型二次元人……その名も、シルバー・ホーンド様よ! ぐははは……っ」

 ロックマンから自分と同じネットナビかと尋ねられたシルバー・ホーンドは、自ら新世代型二次元人だと自称する。

 後に判明したが、彼はトリケラトプスをモデルにされた超重量装甲砲撃型の、戦闘タイプの新世代型二次元人だった。

「こんなところまで政府の犬、聖龍隊がやって来るとはな……まあ、目的は達成したから十分だろうがな」

「目的だと!?」

「なにが目的なんだ?」

 シルバー・ホーンドの発言にキリトとシルバークロウが問い詰めるが、シルバー・ホーンドは嘲笑いしながら言い包めた。

「うははっ、ちっぽけな虫けら如きが……おれ達に挑もうなんて百年早いぜ」

「お、おれ達だと!?」

「まだ仲間がいるんですか?」

 シルバー・ホーンドが零した言葉に、クラインとシアン・パイルが問い詰めるがそれでもシルバー・ホーンドは余裕溢れる不敵な笑みで言い返す。

「ふんっ、貴様ら如き弱小もんに教えて堪るか!」

 するとシルバー・ホーンドは巨大な津波を引き起こして、キリトやロックマンたちを大水で襲った。

「うわあっ!」

「あ、あいつ……意外にも水属性の二次元人よ!」

 大波に襲われ、悲鳴を上げるロールに対し、冷静にシルバー・ホーンドが水属性の敵であると認識するブラック・ロータス。

 するとシルバー・ホーンドは厳つい形相で目前の面々に向かって言った。

「ふんっ、このサイバー空間じゃ狭すぎる……ちょっくら現実世界に行って貴様らのオペレーターを踏み潰してくれるわ」

 そういうとシルバー・ホーンドの姿は一瞬で消えてしまった。

 皆が慌ててシルバー・ホーンドの姿を探し回るが、丁度その時現実世界で異変が起こっていた。

「な、なんだっ?」

 突然の地震に光熱斗が桜木メイルと共に驚いていると、現実世界での異変を瞬時に察してネット空間からキリトやシルバー・クロウたちが戻ってきた。

 そんな彼らの前に、ネット空間へとトランスしていたプラグが設置されていた建物の陰から、巨大な全貌を露わにしたシルバー・ホーンドが姿を現した。

「わあっ! こ、こんなにデカかったのか、本体は!?」

 余りの巨大さに光熱斗と桜木メイルは互いに抱き合うほどに驚愕してしまう。

 一方で、ネット空間から戻ってきたキリト達は、先に現実空間に出戻ってきたシルバー・ホーンドに刃を向けて威嚇する。

 しかしシルバー・ホーンドは自分よりも小柄な体格のキリト達を前に余裕感じさせる笑みを浮かべる。

 

 

 

 その頃、地上の異変を静観していた二次元人の面々は、セントラルタワーの屋上でシャドウに言われるがままに待機していた。

「はわわ……街が、あんな目に……」

「酷いですわ、多くの人が傷だらけに……」

 地上で繰り広げられる爆破テロの惨状に、共有感知によるテレパシーで地上の人々の苦痛と恐怖を身を持って知る新世代型の相川千穂に岡野圭たち。

 すると、この非常事態に黙っていられない鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が皆に言った。

「このままこの場に留まっても埒が明かない……取りあえず、此処も爆破の標的になるかもしれぬし、我々も早々に避難するぞ!」

「だ、だけどよ! シャドウさんに言われたじゃないか、動かない様にって……それに、地上に降りようにもさっきからエレベーターの電源が落ちて下には降りられないし、そもそも地上に降りた途端に爆破テロに巻き込まれてたら……」

「なにを悠長な事を言っているのだ、纏流子! それはこの場に留まっても同じ事では無いか……!」

 

 と、纏流子と皐月が思わず言い争いになろうとしていた、その時。

「うふふ、姉妹揃って喧嘩とは……仕方のない子たちね、そなた達は」

「! そ、その声は……!」「?」

 突然、辺りに響く様な声に反応した皐月に反して、謎の声による言葉の意味を理解し切れていない纏流子は首を傾げる。

 と、皆が謎の声に立ち往生していた時だった。突如としてセントラルタワー周辺に軍事用のヘリコプターが何台も出現し、そのヘリから特殊装備に身を包む兵士が投下され、瞬く間に二次元人達を取り囲んでしまう。

「な、なんだ、コイツら!」

 辺りに展開する兵士達を一見して磯谷ゲンドウが声を上げる。

 すると今まで緊急装置の影響で動かなくなっていたエレベーターが開いて、中から一人の蒼い髪の青年が姿を現した。

「久しぶりだね、瀬名アラタ……そして多くの同胞たちよ」

「お、お前……セレディ……!?」

 青年の顔を見て、瀬名アラタは我が目を疑った。

 何故なら青年は、今ではすっかり元の老人の姿に戻ってしまっては刑務所暮らししている筈のセレディ・クライスラーだったからだ。

 更にセレディの登場に【ダンボール戦機ウォーズ】の面々が一驚していると、今度は上空から一人の女性がヘリから舞い降りてきた。

「同胞の新世代型と行動を共にして、少しは性格が丸くなったようじゃな、皐月……」

「は、母上……!」

 なんと最初に声をかけ、皆の前に舞い降りてきた女性は鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の実母、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)だった。

 そしてあっという間に兵士達に囲まれて身動きが取れなくなった二次元人達を前に、セレディ・クライスラーと鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)は肩を並べて対峙するのだった。

 

 

 

[新世党、現る]

 

 セントラルタワーの屋上に、颯爽と出没し、有無も言わせない速さで二次元人達を取り囲んだ軍隊に驚きを隠せない一同。

 そんな軍隊を指揮しているかのように見られるセレディ・クライスラーと鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)の二人を眼前に、二人とは因縁深い瀬名アラタと皐月が問い詰めた。

「セレディ! また世界を巻き込んだテロを引き起こそうとしているのか!」

「ふ、瀬名アラタ。人は変わるものだよ、ボクはもう疑似戦争での偽りだらけのウォータイムには興味の欠片もない」

「母上……一体全体、これはどういう事ですか?」

「ふふ、皐月……これは新たなる進化、その段階の手順に過ぎぬ」

 両者ともに言っている事が意味不明なため、理解に苦しむ二次元人達。

「お、おいおい……何がなんだか分からなくなっちまってきているぞ。キャストが多い、この物語で余計に登場人物が増えちゃ更に読者が困るぞ、おい……」

「ぎゅ、ギュービッド様、話がメタいですって……」

 ギュービッドのメタ発言にプロト世代のチョコは冷や汗をかく。

 すると共有感知でセレディ・クライスラーと鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)の実情を周知した新世代型二次元人たちは、二人に対して物凄い敵意を感じた。

「あ、貴方がアラタ君たちを巻き込んで危険なウォータイムを展開したセレディ・クライスラー……」

「そして、自分の目的の為なら実の娘を……そこの皐月って女の子の妹まで実験体にして最後は捨てたREVOCSのCEO、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)……!」

 瀬名アラタたち【ダンボール戦機ウォーズ】の面々と、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の思想を読み取って二人の過去の悪行を知ったイオリ・セイと琴浦久美子は物凄い敵視を向ける。

 するとそんな新世代型二次元人たちを前に、セレディは不敵な笑みを浮かべて語り始めた。

「フフ、流石は既に共有感知を発動させているだけの事はありますね。ボクらの事を理解しているとは……ですが、まだまだですね」

「! テメェ、なんで共有感知の事を知っていやがるんだ!?」

 セレディの発言に、新世代型の真鍋義久が一驚する。

 すると其処に一人の人物が姿を現して申し渡した。

「それは私が答えてあげよう」

『ハッ、キャップ・ド・レッド!』

「きゃ、キャップ・ド・レッド?」

 

 姿を見せた全身を紅い血で染め上げたような軍服に身を包んだ大男は三メートルはあろうかという巨体で、赤い帽子に素顔は紅いサンバイザーで隠されていた。

 そんなキャップ・ド・レッドにセレディを始めとする鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)や周囲を取り囲む兵士達は敬礼の姿勢を構える。

 この時、瀬名アラタや皐月は、あのセレディや鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)がキャップ・ド・レッドに敬礼をする光景を前に、驚愕してしまう。

 そしてキャップ・ド・レッドはセレディに代わって代弁し始めた。

 

「君たち聖龍隊に世界各地を連れ回された新世代型の事は、既に調べがついている。ようこそ、我ら新世党に……!」

「し、新世党ですって?」

 キャップ・ド・レッドの発言に新世代型の室戸大智が言葉を発すると、キャップ・ド・レッドは新世党が何なのか丁寧に教えといた。

「我々は新世代型による新たな世界の創造のため、日夜活躍している組織だ。我々の目的はただ一つ、新世代型による新世代型の為だけの世界を創造する事……ゆえに、君達にも協力をしてもらいたいのだよ」

「よ、要するに新世代型二次元人が世界の支配者になるって事かい!? バカバカしくて話にもなりゃしないよ」

「フフ、所詮は出来底ないのプロト世代……我らの理想には追いつけないか」

 キャップ・ド・レッドの熱弁を聞いてプロト世代のギュービッドは呆れ果てるが、それにキャップ・ド・レッドはプロト世代ゆえに自分達の理想を理解できない哀れな種族なのだなと淡い哀れみの目をギュービッドに向ける。

 すると此処でキャップ・ド・レッドは二次元人たちの周りを銃火器で取り囲む兵士の一人に告げた。

「ところで小野崎功、国連軍本部はもちろん、聖龍隊支部との通信を妨害する電波装置は設置し終えているだろうな」

「は、はい……! 無論であります、総帥閣下!」

 この名前を聞いて、琴浦春香や久美子、善三親子三代は驚いた。

「お……お父さん!?」

「あなた!?」

「功! お前なのか……!?」

 琴浦春香/琴浦久美子/琴浦善三らが問い詰めると、キャップ・ド・レッドの指示を受けていた兵士は静かに頭に被っていたヘルメットを外して素顔を晒した。

 それは以前、かつて国連軍に属していたシバ・カァチェンらが軍隊の一行に連行されていた囚人の一人、小野崎功だと一目見てスグに分かった。

「功……! これはどういう事じゃ……!?」

「お、お父さん、なんで……?」

 琴浦善三と春香の祖父孫は驚き、かつての義理の息子と実父の関係を持つ功に目を丸くして問い詰める。

 するとそんな驚愕する琴浦親子たちにキャップ・ド・レッドが落ち着いた物言いで代弁した。

「小野崎功、彼もまた我々新世党の為に働いてくれている大事な同胞だ。ジャッジ・ザ・シティの至る所に爆弾を置いてくれて、助かっている」

「そ、そんな……!」

 元夫が街に爆弾を設置した事実を聞かされ、一驚する久美子。

 そんな過去に国連軍により異常者(ヒール)認定された事で連行されていった筈の小野崎功の素顔を見て、同じく新世代型の出雲ハルキが声を発した。

「な、なんで国連軍に連行された筈の二次元人が此処に……!?」

 このハルキの疑問にまたしてもキャップ・ド・レッドが返答した。

「それはだ、出雲ハルキ……私が同胞として多くの貴重な、そして優秀な遺伝子を持つ新世代型の二次元人を解放したからだ。そう、我ら優れた種族、新世代型を異端視する三次元人の魔の手からな……!」

 キャップ・ド・レッドの話を聞いて、出雲ハルキら二次元人達は率直にキャップ・ド・レッドが国連軍は元より三次元人により捕縛された新世代型を脱獄させた経緯を悟る。

 と、キャップ・ド・レッドが捕らえられた新世代型を脱獄させた事を悟った二次元人達を前に、小野崎功以外の新世党兵士も語り始めた。

「その通りだ、瀬名アラタ! 今度は仮想空間でのウォータイムじゃなくて、本物の戦争で貴様らに格の違いを見せてやる!」

「! そ、その声は……!」

 一人の兵士の声を聴いて、瀬名アラタに衝撃が走る。

 そして次の瞬間、その兵士を始めとする多くの兵士が一斉に素顔を隠していたヘルメットを脱ぎ捨て、素顔を晒し出した。

「そ、そんな……! 伊丹キョウジ!」

 瀬名アラタ達に話し掛けてきたのは、過去にアラタ達と死闘を繰り広げた末に国連軍によって連行されていった伊丹キョウジであった。しかもキョウジだけでなく、彼の傍らには各々の事情で国連軍に連行されていった風陣カイトに有馬トオル、シャーロット・レイン、甲本ダイゴ、ブルース・ブラドー達の姿までも視認できた。

「か、カイト! そんな、お前まで……!」

 顔や耳に酷い傷跡が見受けられる風陣カイトまでも新世党に所属していた事実を目の当たりにして、かつて仲間だった嵐山ブンタは絶句してしまう。

 そんなブンタ達かつての仲間の驚く様子にも動じず、風陣カイトは厳つい表情を浮かべ続けるばかり。

 更に見渡してみれば、かつて国連軍により連行されていった【リトルバスターズ!】の高宮/勝沢/山崎の三人の女子たちに陰湿極まる三枝一族までも見受けられた。

 それに同じく連行されていった様子を見届けた【ガンダムビルドファイターズ】のマシタにベイカー、そしてナイン・ベルトの三人の姿も確認された。

 そして連行さえていった者たちの中で最後に確認されたのは【プリティーリズム・レインボーライブ】の法月仁の姿が。

「み、美作……テメェまで、こんなフザケタ連中と一緒なのか!」

「叡山枝津也……貴方までも新世党に加わっていたとは……!」

 かつては同じ学園関係者であった美作昴と叡山枝津也の姿までも目視した幸平創真と薙切えりなは顔を厳つくさせる。

 そんな多くの新世党の兵士が素顔を晒し終わった処に、キャップ・ド・レッドはなぜ彼らがこの場にいるのか説き始めた。

「彼らは全員、三次元人によって不運にも捕縛され……自由を奪われた新世代型の同胞だ。私が苦労の末、全員を海底監獄インペルダウンから解放してやったのだ」

「そういう事だ! オレ達はキャップ・ド・レッドによって自由を取り戻すんだ!」

「ふふ、彼のお陰でボクも無事に若返る事ができたしね……何より、彼の思想に深く興味を注がれたんだ。だからこそ協力してる間柄なのさ」

 

 キャップ・ド・レッドが同じ新世代型の同胞として囚われていた各新世代型二次元人を新世党に加えた経緯を語ると、それに伊丹キョウジとセレディ・クライスラーも語り出す。

 

 

 

[新世党の作戦]

 

 すると正体を明かした新世党の面々は、キャップ・ド・レッドに言われるがままに何かの準備をし始めた。

「な、何する気だ、アイツら……」

「アレは……て、テレビカメラ!?」

 心配そうな面持ちで凝視する真鍋義久と斉木楠雄は、準備されているのがテレビ中継の機材である事に気がつく。

 そしてテレビカメラの撮影スイッチが入り、爆破テロに喘ぐジャッジ・ザ・シティの至る所に設置されている大型モニターにキャップ・ド・レッドの姿が映し出された。

 巨大モニターに映る一際目立つ紅い軍服を着込んだキャップ・ド・レッドに、先ほどシルバー・ホーンドと死闘を展開して満身創痍になっているSAO組とAW組の面々に、押し寄せてきた異常者(ヒール)の軍勢をどうにか撤退させる事に成功した聖龍隊の隊士たちもモニターに釘付けになる。

 

 そしてキャップ・ド・レッドはカメラの前で堂々と公言をし始めた。

「我々は新世党! 虐げられし、新世代型二次元人……その頂点に立つ者たちだ! 我々の目的はただ一つ……同士である現政奉還を起こした足正義輝の世界情勢混乱を機に、私達は新世代型二次元人による全く新しい世界を創造する事である! この世界は三次元人が二次元人を支配するのではない、ましてその逆でもない……より優れた二次元人、すなわち我ら新世代型二次元人が未来のため先導する世の中だ!」

 キャップ・ド・レッドの熱弁によれば、要するに新世代型二次元人が支配する全く新しい世の中を創造する事が新世党の目的だというのだ。

 このキャップ・ド・レッドの弁論を傍聴していた二次元人たちは猛反発する。

「な、何をバカな事を……! 我々、二次元人が世界を支配するだなんて夢物語だ!」

「フッ、その夢物語を達成できる可能性を……我々新世代型は秘めているのだよ、猿田学教官殿」

 二次元人が世界を支配するなぞ夢物語と説く猿田学に、キャップ・ド・レッドはそれを実現できる可能性を自分たち新世代型は秘めているのだと説き返す。

 更にキャップ・ド・レッドは厳つい眼差しで新世代型二次元人の面々に説き掛ける。

「それ以前に……我々は君たちを助けたいだけなんだよ」

「た、助けたいだけって、どういう事だ!?」

 キャップ・ド・レッドの言葉に棗恭介が反論すると、キャップ・ド・レッドは真面目な顔付きで答えた。

「今生の二次元人の多くは、異端とされて迫害を受けている日々。そんな二次元人の中でも我々新世代型は特殊な肉体構造ゆえに更なる迫害を受けている……私は、そんな現実を変えたいのだ。最も優れた種である新世代型二次元人が完全に統治した世界こそ、我々が夢見る理想なのだよ」

「理想って……そんな理想があるもんか!」

 キャップ・ド・レッドの返答にプロト世代のギュービッドが文句を言うが、キャップ・ド・レッドは不適な微笑を浮かべて嘲り返す。

「これは長きに渡り虐げられてきた新世代型の同胞を救う為でもある……ほら、君らの周りにいる我らと同族の新世代型の身体を見たまえ。全員がインペルダウンで酷い拷問を受けた為に傷だらけとなっている」

 言われてみれば、確かに法月仁の顔には継ぎ接ぎの傷が酷く目立っており、他の新世党の面々も顔などに生々しい傷跡が見受けられた。

 すると新世党が兵士達の現状を理解した二次元人たちに、セレディが再び語り出した。

「ボクは事件の後、肉体が一気に老化したからある程度温和な刑務所に入れられたから大事なかったけど……見てごらん。他の兵士たちはインペルダウンで拷問を受けて一生消えない傷跡を身体に残されたんだ」

 インペルダウンでの非人道的拷問により迫害に近い体罰を与えられた新世代型二次元人の痛々しい現状を語るセレディの言葉に、二次元人達は胸を締め付けられる。

 すると其処に二人の人物が颯爽と現れ、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)に言い寄った。

「羅暁さま、お言いつけ通りジャッジ・ザ・シティの各所に妨害電波を発生させる特殊装置を設置しました」

「これで政府の犬……聖龍隊も手が出せないよ!」

「ふふ、ご苦労……鳳凰丸、縫」

 鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)に言い寄った二名は、彼女の配下である鳳凰丸礼と針目縫であった。二人はキャップ・ド・レッドの命令を受けた鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)の指示でジャッジ・ザ・シティの各所に妨害電波を発生させる装置を備え付けたという。

 その頃、聖龍隊は元より国連軍でさえも、針目縫たちが仕掛けた妨害電波による電波障害に見舞われ、無線通信が使用不能に陥っていた。

「ククク、これで聖龍隊も国連軍も、同時に二つの敵の情報交換を封じる事が出来た。あとは……」

 キャップ・ド・レッドは静かに鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)の方へと顔を向ける。

 すると鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)は鳳凰丸礼と針目縫に目で合図を送ると、二人は颯爽と動いて取り囲んでいる二次元人の内の一人である纏流子を押さえ付けた。

「な、何しやがるんだい!」

「纏!」「流子ちゃん!」

 突然、二人かがりでしかも強靭な力で押さえ付けられて堪らず纏流子が振り解こうとするが、礼と縫の二人の力は何故か強靭で、簡単には振り解けない。そんな流子を見て、鬼龍院皐月と満艦飾マコは気が気でない。

 すると配下の二人に押さえ付けさせた纏流子に鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)が歩み寄り、強引に流子の顔を自分に向けさせると怪しい微笑みを浮かべて語り出す。

「ふふふ、なるほど……あの時の失敗作がここまで成長していたとは……」

「な、何言ってやがる……!? ッ! こ、これは……」

 鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)に話し掛けられたその時、纏流子の脳内に痺れるほどの感覚が駆け巡った。そしてそれは囚われの身になっている新世代型二次元人達にも伝わった。

 かつて鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)が夫と共に生命戦維の研究の段階で、実験に用いた第二子の娘。だが実験は失敗し、心肺停止に陥った娘を廃棄した羅暁だったが、その非人道的実験に前々から反発していた鬼龍院装一郎が秘かに廃棄された娘を拾い上げ、名を纏一身と改めて親子として生活していたのを羅暁が刺客を放って葬った経緯が流子や新世代型二次元人たちの脳内に流れ込んできた。

 この事実を知って、纏流子は混乱した。

「そんな、親父は……皐月は……アタイのおふくろ……それに、アタイは……」

 自分を育て上げた纏一身の死の真相、ライバルであった鬼龍院皐月との関係、そして実母であった羅暁の存在を知って流子は衝撃を受け入れられずにいた。

「そ、それでは……昔、母上に破棄された私の妹は……!」

 鬼龍院皐月も共有感知を通して、今まで何かとライバル意識を燃やしていた纏流子との関係を知って愕然となった。

 今まで実の妹を実験体にして破棄した実母への復讐に燃えていた鬼龍院皐月はすっかり呆然としてしまう。

 そして鬼龍院羅暁の胸の内をすっかり共有感知によるテレパシーで熟読した新世代型たちは怒り心頭になった。

「な、なんて奴だ……自分の娘を実験体に……」「酷すぎる……!」

 真鍋義久と琴浦春香は鬼龍院羅暁の人間性を疑った。

「自分の娘たちを実験体に……なんて人!」

 そして琴浦久美子の発言を聞いて、キャップ・ド・レッドが事実に気付く。

「……なるほどな。羅暁、貴様の心理を、この同胞たちは共有感知で知ってしまったらしいぞ」

「ふふ、ご心配無用。もう隠し通す必要もない故……」

 キャップ・ド・レッドからの言葉に羅暁は不敵な笑みを浮かべて話し返す。

 そして羅暁は再び目前の、そして呆然としている纏流子に話し掛ける。

「……話す手間が省けて返って楽というもの。共有感知とは便利な能力じゃな、我が娘、流子」

「あ……あ…………」

「ふふふ、どうやらボクが纏一身を殺めた事も気付いちゃったみたいだねっ」

 言葉を失い呆然となる流子を見て、鬼龍院羅暁と流子の実父を殺めた針目縫は怪しい笑みを浮かべる。

 そんな実母の過去の企みを、共有感知で初めて知った鬼龍院皐月は怒りを露に実母羅暁に言い放った。

「母上! まさか父上まで……私と、流子の父親までも殺めさせていたというのですか……!!」

「ふふ、全ては一身が悪いのじゃ。妾の計画を阻止しようとは、実に浅はかじゃったわ」

 娘皐月の言い分に対し、羅暁は悪びれる様子も一切なく、過去の自分の行いに悪意すら感じていない様子。

 そんな周りの混乱の中、鬼龍院羅暁は鳳凰丸礼と針目縫によって拘束されている纏流子に、新世党特製の純潔を着衣させようとした、その時。

「うわあああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 突如として流子が絶叫を上げ、怒りで自我を失ってしまう。

 この流子の咆哮に周囲の二次元人達は一様に戸惑う。

 すると流子が着衣していた鮮血の声が、共有感知で精神が繋がっている新世代型二次元人達の脳内に伝わってきた。

(や、ヤバい! 流子が完全にブチぎれやがった……このままじゃ、俺も自分を保てねえ……!!)

 苦しそうに悶え始める鮮血の声に皆が耳を傾けている最中にも、怒りと混乱で自我を保持できなくなり発狂した纏流子の姿が見る見るうちに変貌していった。

 そして遂に纏流子と彼女が着衣している鮮血の姿が一変してしまう。

「なっ、何あれ!?」

 新世代型の烏丸さくらが一驚して声を発する。

 彼女達の目の前に立っていた纏流子の姿、それは首が左肩から生え、むき出しの目と牙をギラつかせている常に全身から血を染み出させている、おぞましい容貌と化していた。更に流子が愛用する片太刀バサミも右腕と一体化。

 そんな容貌を一変させた纏流子は、鳳凰丸礼と針目縫の制止を振り切り、全身から滲み出ている血をすべる様に高速移動してジャッジ・ザ・シティの街並みの中を突っ切っていった。

「りゅ、流子ちゃん!!」

 全身を変貌させて暴走してしまう親友の纏流子を目の前に、満艦飾マコは悲し気な表情で名を呼ぶが空しくも声は届かない。

 一方で過去に母の実験体として破棄されていたと思われた妹が、まさか生き延びており、それがライバルであった纏流子であった事。そして母が針目縫に命じて自分達の実父である一身を暗殺した事を知って鬼龍院皐月は愕然と固まってしまってた。

 そんな場の混乱の中でも、キャップ・ド・レッドは落ち着いた様子で暴走し出す纏流子を見届けて口を開く。

「ふふふふ、最初の計画と違っているが……まあ、これはこれで良いだろう。最初は我ら新世党が作った神衣で纏流子を手中に収める算段だったが、結果的に彼女は勝手に暴走して街を破壊し尽くしてくれる……これで、我ら新世代型二次元人の脅威を世界に示せるだろう」

 キャップ・ド・レッドは当初の目論見とは違えど、自分たち新世代型二次元人の脅威を世界に示せる結果には違いないと首を縦に振る。

 

 そしてキャップ・ド・レッドの目論見通り、纏流子は街を破壊していくのだった。

 

 

 

[暴走する少女と暗躍する影]

 

 知りたくも無かった衝撃の事実を知り、混乱する纏流子。

 そんな彼女は実母である鬼龍院羅暁の差し金で針目縫が実父を殺した張本人だとも共有感知を通して知ってしまった事で着衣していた鮮血が自我を保てなくなり暴走。おぞましい怪物に変貌を遂げた纏流子は、ジャッジ・ザ・シティを破壊し始めてしまった。

 そんな暴走する纏流子を確認して、メタルバードがシルバー・ウィングで搭乗したまま暴走する纏流子に接近して必死に呼び掛ける。

「り、流子! 流子だろ!? どうしちまったんだ、その恰好!」

 暴走して街中を破壊していく纏流子を目の当たりにして、メタルバードは拡声器で必死に暴走する彼女を宥めていく。

 しかし流子は、自身が生命戦維の実験体から生まれたバケモノであるという精神的混乱も相まって、メタルバードの声に我を取り戻す事は叶わなかった。

 そして暴走状態の纏流子はメタルバードが搭乗するシルバー・ウィングを片太刀バサミで弾いてしまう。

「うわッ!」

 シルバー・ウィングを片太刀バサミで弾かれて態勢を著しく崩してしまうメタルバードは、そのままシルバー・ウィングごとビルの壁に激突してしまう。

「イテテ……な、何だったんだ? 流子の奴……」

 詳しい経緯を知らないメタルバードは、何ゆえ流子があのような姿で暴走しているのか理解できず、ただただ首を傾げるだけだった。

 一方その頃、事件を聞き付けて聖龍隊が隊士の一人、月詠イクトが新世党がジャッジ・ザ・シティ侵攻の要にしているセントラルタワーに辿り着いた。

「やっと着いたか……公共の交通は全部、爆破テロでおじゃんになっちまっているし、聖龍隊支部との通信も妨害装置で使いモンにならなくなっちまってるし……まあ、今は文句を言っている暇じゃない。先にマン・ヒールズがやって来ている筈なんだが……」

 イクトはセントラルタワーの周辺で、まずは仲間のマン・ヒールズを探し始める。

 するとセントラルタワーの近くで、イクトは思わぬ光景を目撃してしまう。

「ハッ、みんな……!」

 セントラルタワー前まで駆け付けた月詠イクトの眼前に飛び込んできたのは、倒れ込んでいるマン・ヒールズの仲間だった。彼らを見てイクトは愕然とする。

「どうしたんです、ミスティーハニー! 誰がこんな真似を……」

「うぅ……」

 イクトは仲間達を傷付けた相手を知ろうと、部隊長であるミスティーハニーを問い詰める。が、ミスティーハニーもその他のマン・ヒールズも瀕死の重態であった。

 そんな仲間達を前に、イクトが立ち止まっていると後ろから何者かの気配を感じ取った。

「ッ!」

 敵かと思い、後ろを素早く振り返るイクト。だが、相手の顔を見てスグに冷静になる。

「なんだ、あんたか……驚かさないでくれよ」

 イクトの後ろから近づいてきた人物は黄金色のアーマーを輝かせながら右肩の砲身を静かに向けていく。

「それよりも、みんなが何者かにやられた! 聖龍隊支部とも連絡が取れなくなっちまってるし、急いでセントラルタワーの屋上に向かわないと……」

 しかしイクトは砲身の標準が自分に向けられている事に気付かず、急ぎセントラルタワーに登らなければという気持ちで頭がいっぱいだった。

 そして次の瞬間、砲身から放たれた強烈なエネルギーはイクトを直撃した。

「ぐは……ッ」

 強力なエネルギー弾を受けたイクトは堪らず地面に倒れてしまう。

「な、なんで……」

 倒れるイクトを前に、砲撃を浴びせた人物は不敵な笑みを浮かべるばかり。

 

 

 その頃、妨害電波に遭いながらも最後の通信から街中に流された映像の発信源はセントラルタワーの最上部、屋上である事を知ったミラーガールはシバ・カァチェンと共に現場へと急ぎ駆け足で進行していた。

「はぁ、はぁ……」

「しっかりしてカァチェン! もうスグでセントラルタワーに着ける筈だから……」

「は、はい……」

 体力不足のカァチェンにミラーガールは優しく言葉をかけながら、共にセントラルタワーへと駆けていく。

 そしてどうにか無事にセントラルタワーへと到着した二人は、先に駆け付けている筈のマン・ヒールズやシャドウの姿を目視しようと辺りを見渡す。

 するとミラーガールの目に、地面に倒れこむマン・ヒールズの姿が飛び込んできた。

「ッ! みんな!」

 ミラーガールは急いで地面に倒れているマン・ヒールズの元へと駆け寄る。その中には、先ほどまで元気でいたイクトの姿もあった。

「イクト! ミスティーハニー、どうしたの!? しっかりして!」

 意識混迷になってきているマン・ヒールズに声をかけ続けて意識を取り戻させようとする。

 と、その時。懸命に看病しているミラーガールと傍らのシバ・カァチェンの背後から一人の人物が声をかけてきた。

「ミラーガール! どうしたんだ?」

「しゃ、シャドウ! 大変なのよ、みんなが……」

 ミラーガールたちの後から駆け付けてきてくれたのはジャッジ・ザ・シティの警備を統括しているシャドウだった。ミラーガールはシャドウにマン・ヒールズの面々が何者かに強襲を受けて満身創痍である事を伝える。

「そうか、そいつは参っちまったな。俺のところの部隊も全部、ジャッジ・ザ・シティに流れ込んできた異常者(ヒール)の暴動で戦闘不能に陥っちまったし……此処はやむを得ない、俺たち三人だけで行かないか?」

「ええ、それは仕方ないけど……一応、仲間にはマン・ヒールズが重症だって事を伝えておくわね」

 シャドウからの提案を受諾しながらも、ミラーガールは通信で現場に不在の仲間達に通達する。

 そして通達を終えたミラーガールは、シャドウとシバ・カァチェンと共にセントラルタワーに突入した。

 

 

 

[突入! セントラルタワー]

 

 まず三人がセントラルタワーに入ってみると、既に内部は荒らされており、一部の機材などは破壊されていた。

「間違いないわね。彼ら……新世党は此処を通って、屋上に……」

「まだ生きていれば良いが、一般人ども」

「ちょっとシャドウ! 不吉なこと言わないでよ!」

 シャドウのちょっと不適格な言動に怒りの感情をぶつけるミラーガール。

 そんな荒々しい空気の中、シャドウはミラーガールとカァチェンに告げた。

「俺は、あんたらほど優れたハンターでもなきゃ戦士でもないが、ジャッジ・ザ・シティには詳しい。無論、このセントラルタワーの構造にも融通している」

「ええ、案内はお願い、シャドウ」

「よし、さっそく移動しよう」

 ジャッジ・ザ・シティの地図や重要な建物の構造に流通しているシャドウに、ミラーガールは案内を頼む。

 そして三人がその場から移動しようとした、その時。

 突如として謎の閃光が三人が通り過ぎようとしていた柱に直撃し、柱は倒れて三人を分割してしまう。

「二人とも、大丈夫!?」

「はい、大丈夫です!」

「ミラーガールはそっちの階段から上がってこい! 上で合流しよう!」

 ミラーガールは崩れた建物の向こう側からカァチェンとシャドウに問いかける。そしてシャドウはミラーガールに自分たちが駆け上る階段とは正反対の階段から上ってくるように指示を出す。

 これにミラーガールは同意するが、同時に二人にも言伝する。

「罠かもしれないわ、二人とも気をつけて!」

「承知しました! では……」

 先ほど建物を破壊した閃光が敵の罠かもしれないと説くミラーガールの言い分に、カァチェンは力強く返答すると共にシャドウと一緒に階段を駆け上った。

 それからしばらくして、カァチェンとシャドウの通信にミラーガールが出てきた。

「カァチェン、通信妨害で聖龍隊支部との通信は不可能だけれど、私とあなた達の通信は可能みたいよ。この先、何かあったら通信で連絡すわ。気をつけて進んで!」

 カァチェンとシャドウに隊員同士での通信が可能な事を伝えたミラーガールは、とある警備室らしき部屋で光る端末を発見した。

 弄ってみると、モニター画面に次の表示が映し出された。

【セントラルタワーセキュリティ制御端末、ウエストブロック一階のセキュリティを解除しますか?】

 これにミラーガールは率直な勘でセキュリティを解除した。

 その直後、通信を通してシャドウがミラーガールに問いかけて来た。

「ミラーガール、今そっちで何か操作したか?」

「ええ、シャドウ。セキュリティの制御端末らしきものを見つけて解除したわ。何処かのロックが解除されたって表示されたけど、そっちで何かあったの?」

「そうか。ミラーガール、お前さんが解除したロックは俺とカァチェンがいるウエストブロックの扉だ。このセントラルタワーはイーストとウエスト、二つの両サイドの塔からなるタワーで、それぞれ反対側のセキュリティ制御で護られている。つまりウエストはイーストで、イーストはウエストブロックでのみ制御可能って事だ」

「つまり……私達とミラーガール殿で、互いに端末を操作し合えば良いと言う訳ですね」

「そういう事だ。先に進むには協力が必要って事さ。そういう訳で遅れるなよ、ミラーガール!」

 カァチェンにも理解できる内容に、ミラーガールも意気揚々と進攻を再開する。

 が、上へと登っていく最中、道中に数多の国連軍兵士が行き倒れているのが目に付いた。

「あんた達との初任務になると思ってたんだが、これでは先が思いやられるぜ」

 聖龍隊との初任務に若干の期待を寄せていたシャドウだったが、余りにも味方である国連軍兵士の亡骸を目撃して先を思いやられる。

「このままじゃ埒があかない。更に上のフロアに進攻するぜ。こっちの扉は強引に破壊されているからロック解除の必要はない。おそらく新世党の連中が破壊したんだろう」

「ミラーガール殿、そちら側のロックは解除しておきました故、これでお互い先に進める筈です。我々は先に上のフロアに進撃します」

 シャドウとカァチェンの言葉を聴いて、ミラーガールは進攻を再開した。

 しかしそんな矢先、ミラーガールが扉を開けた途端、扉の向こうから新世党の兵士と鉢合わせしてしまう。

「政府の犬、聖龍隊を発見! 排除行動開始!!」

 すると同時に通信からシャドウの声が聞こえてきた。

「ミラーガール! さっきの端末操作で俺たちの存在が敵にバレちまってるぞ! 新世党の兵士らしき敵と交戦を開始した、お前さんも気をつけろ!」

 どうも先ほどの端末操作で三人のセントラルタワー突入が発覚してしまい、敵兵が徘徊するようになってしまたらしい。

 そんな戦況の中、ミラーガールは自分と対峙する新世党の兵士に容赦なく斬りかかった。

「あなたに構っているほど、暇じゃないの!」

 そして一刀のみで斬り捨て、意図も簡単に突破してみせる。

 と、そこにカァチェンからの通信が入った。

「敵兵を撃破しました! 敵は見慣れない二次元人でした。この調子では上の新世代型二次元人の方々が心配です……進攻を再開します!」

 見慣れない二次元人を撃破したと報告するカァチェンは、さらにミラーガールに言伝する。

「私達は先に中央フロアに到着しました。ここには特に何もありません。ここで合流ができそうですし、私は待機しております」

 この報告を聞いて、ミラーガールは急ぎセントラルタワーの中央フロア広場まで駆け付けていった。

 そしてセントラルタワー中央フロア広場では、先に到着していたカァチェンがミラーガールを待ち望んでいた。

「カァチェン! 無事で何よりだわ」

「ミラーガール殿も御無事の様で……」

 再会を喜び合う二人。だが悠長な事はしてられない。

 急ぎ、屋上へと向かい、捕虜にされているであろう二次元人たちの元へと向かおうとした、その瞬間。

 広場の壁が突然吹き飛び、外部から強行突入してきた一体の人影がミラーガールとシバ・カァチェンに立ちはだかる。

「こ、この御姿は……まさか!」「り、流子ちゃん!?」

 突如として来襲してきた人影は、容姿が一変していたものの纏流子である事がスグに分かった。

 暴走状態の纏流子を前に、ミラーガールとシバ・カァチェンは戦闘を余儀なくされた。

「仕方ないわ……どういう状況かは分からないけど、私たち二人で流子ちゃんを止めるしかないみたい」

「心得ました。私も、友となった者と戦うのは心地が悪いですが……やむを得ません」

 

 こうしてミラーガールとカァチェンは、暴走状態の纏流子と戦闘に突入した。

 

 

 

[激突! 暴走流子]

 

 セントラルタワー中央フロアにて、暴走流子と対峙してしまうミラーガールとカァチェン。

 しかし自我を失い、暴走した流子を止めるのは至難の業だった。

「きゃっ!」「ッ!」

 ミラーガールもカァチェンも、暴走流子の攻撃を受け止めるだけで精一杯だった。

 そんな戦況でも暴走流子は攻撃の手を緩めず、絶えずミラーガールとシバ・カァチェンに攻撃を仕掛けて行く。

「こ、このままでは私達の方が敗北してしまいます、ミラーガール。力の差は必然……!」

「今、考えているわ! ……流子ちゃん、一体全体、どうしちゃったのよ……!」

 圧倒的な力の差に既に気力で負かされているカァチェンにミラーガールは激励するかのように言い放つ。

 しかし暴走流子は全身から染み出た血をすべる様に高速移動して、素早い動きでミラーガールとカァチェンに応戦する。

 更に二人を蒼然とさせたのは、着地時に暴走流子はグチャッという不気味な音と共に血が飛散する情景。

 全身から血を染み出させる纏流子を見て、ミラーガールは焦燥した。

「いけない……! このままじゃ流子ちゃん、出血多量で死んじゃうかも!」

 そんな異形の怪物へと変貌した纏流子を心配するミラーガールにシバ・カァチェンは不思議そうな険相で訊ねる。

「……聖女よ。貴女は、あのような異形の物ノ怪へと変貌した纏流子殿を心配しているのですか……?」

「っ……そりゃ見た目は変わっちゃったけど、大切な友達には変わりないでしょ。何より私は今まで二次元界で色んな二次元人を見てきたのよ。あの程度の変身なんて見慣れているわ」

「は、はぁ、そうですか……」

 ミラーガールの平然とした物言いにカァチェンは唖然としてしまうばかり。

 そんな会話をする二人に、暴走流子は再び突撃してきた。

「く、来るわよ!」「!」

 ミラーガールとカァチェンは臨戦態勢に身構え、暴走流子の攻撃に対応する。

 しかし暴走流子は、右腕と一体化している片太刀バサミで意図も容易くミラーガールやカァチェンを弾き飛ばしてしまう。

 あのメタルバードの愛機、シルバー・ウィングを弾き飛ばした程の怪力にミラーガールとカァチェンは苦戦を強いられる。

「こうなれば……力尽くで……」

「ダメよ、カァチェン! 流子ちゃんを殺めるような真似はしないで!」

 本気で殺し合おうとするカァチェンの言動に対してミラーガールが待ったをかける。

 しかし相手の暴走流子は本気でミラーガールたちを仕留め様と刃を振りかざす。

 暴走流子の斬撃をミラーガールは盾で、カァチェンは逆刃薙(さかばなぎ)で受け止めつつ、暴走流子を宥め続けた。

「流子ちゃん、私よ! ミラーガール、分からないの!?」

 しかしミラーガールの必死の呼び掛けにも纏流子は応答せず、ただただ本気で斬りつけて来るばかり。

 と、ここで暴走流子がミラーガールに向けて片太刀バサミを突き立てて突撃してきた。

 この暴走流子の片太刀バサミでの突撃に、ミラーガールはミラーシールドで辛うじて攻撃を防いだが、同時に後方へと吹き飛ばされてしまう。

「っ!」「ミラーガール……!」

 壁に叩き付けられるミラーガールを目視してスグにでも駆け寄りたかったカァチェンであったが、暴走流子がそれを阻む。

 一方で壁まで吹き飛ばされ、叩き付けられたミラーガールは痛みに悶絶しながら思う。

(こ、このままじゃ本当に危ない……! り、流子ちゃんを早く止めないと……)

 自分達の生死の危機よりも、暴走する纏流子の身の安否を気にするミラーガールは必死に立ち上がろうとする。

 だが、そうはさせまいと暴走流子は立ち上がろうとするミラーガールに追撃を仕掛けようと彼女に急接近。ミラーガール危うしと思われたその瞬間、二人の間にシバ・カァチェンが割り込んで暴走流子の斬撃を逆刃薙(さかばなぎ)で防ぎ止めた。

 そしてカァチェンは暴走流子の攻撃を防ぎ止めながら、ミラーガールに物申した。

「加賀美殿、ここで本気で戦わなければ、いづれ我々の方が流子殿に敗れてしまいます……! ここは御覚悟を決めてくだされ……」

 このカァチェンの力強い説得にミラーガールの決心も固まった。

 まずは自分達が纏流子を負かさなければ全ては治まらないのだと言う事実。力尽くでも流子を倒さなければ彼女を救えない事実を。

 平和をこよなく愛するミラーガールは、ここで決心を固めた。本気の力で纏流子を、暴走流子を倒そうと。

「……カァチェン、ありがとう! お陰で久方ぶりに目が覚めたわ!」

 覚悟を決めたミラーガールは、左手首に装着しているコンパクトに手を当てて叫んだ。

「一気に行くわよッ!」

 するとミラーガールの姿は一変し、黄金色のアーマー姿へと変身。同時にミラーガールの左手のコンパクトすなわちミラーシールドは砲口へと変わり、ミラーガールは身構える。

 そして身構えたミラーガールの砲口にはエネルギーが充填されていき、そのエネルギーが完全に充填されると一気にミラーガールは行動に移した。

「えいっ!」

 エネルギーを完全充填したミラーガールは暴走流子に急接近し、充填した砲口を纏流子に直射して大打撃を与える。

「う、ウウゥ……」

 フルエネルギーの砲口を間近で直射された暴走流子は堪らず体勢を崩す。

 そんな暴走流子にシバ・カァチェンが駆け寄る。

「流子殿! 目を覚ましてくださいっ」

 カァチェンの呼び掛けに続いて、ミラーガールも再度砲撃を仕掛けながら暴走流子を宥めて行く。

「流子ちゃん!」

 ミラーガールの砲撃とシバ・カァチェンとの呼び掛けに、次第に纏流子は自我を取り戻して行った。

「み、ミラーガール……カァチェン……」

 自我を取り戻した纏流子は、そのまま気を失ってしまう。

「流子ちゃん!」

 その場に倒れる纏流子を前に、ミラーガールとシバ・カァチェンは急いで彼女に駆け寄り、流子の様子を探る。

「……良かった、気絶しているだけだわ」

 纏流子の脈を計ったミラーガールの安堵感にカァチェンもホッと胸を撫で下ろす。

「まさか……纏流子殿まで変わってしまうとは……何かがありますね、上の方に」

 詳しい経緯までは周知していないものの、纏流子が異形の怪物に変貌するに至った事態が上の階で起こっている事を察してカァチェンは多大な危機感を感じずにはいられなかった。

「ミラーガール、ウエストブロックの上のフロアから屋上に通じる扉がありました。先にシャドウ殿が先行して二次元人の方々の救出に向かっております。私達も急いで合流しなければ……」

「ええ、そうね……流子ちゃんをこのまま残して行くのは、また暴走する危険性があるから放って置けないわ。カァチェン、悪いけど流子ちゃんを運んでくれる?」

「承知しました……」

 

 ミラーガールの判断で、一時は暴走した纏流子をこのまま残して行くのは心配である事から、カァチェンは気を失った纏流子を肩で担いでミラーガール共々上の階へと移動を再開した。

 

 

 

[裏切りの影]

 

 一方、上の階すなわち屋上では

 シャドウと新世党による攻防が展開されていた。

「こなくそっ」「が、頑張れシャドウさん!」

 戦前で活躍するシャドウに、新世代型の燃堂力が応援する。

 すると其処にミラーガールが、纏流子を担いできたシバ・カァチェンと共に駆け付けてきた。

「シャドウ! 無事!?」「ああ……それより……」

 新世党と軽く腕慣らしをしていたシャドウの目線を追ってミラーガールは敵方の集団から歩み出てきた人物に注目する。

「! あなたは……!」

「如何にも……新世党が総帥、キャップ・ド・レッドだ」

 セントラルタワーの屋上にて、ミラーガールはキャップ・ド・レッド率いる新世党と初めて会談したのだった。

 暴走した纏流子を止めたミラーガールは、遂にセントラルタワー屋上にて新世党をシバ・カァチェン/シャドウと共に追い詰めた。

「観念しなさい! 新世党……そしてキャップ・ド・レッド!」

 厳つい表情でミラーガールを睨み付ける新世党の面々に対し、そんな彼らを従える謎の紅い衣の男キャップ・ド・レッドは余裕染みた表情でミラーガール達を見詰め続ける。

「ほほう、予想以上の力だな、ミラーガールよ。その様子では、暴走した纏流子と一戦したみたいだが……なるほど、まさかほぼ無傷の状態で纏流子を止めたとは大した力だ。出迎えよう、このキャップ・ド・レッドがな」

「その総統様が、わざわざ私達をお出迎えしてくれると言うのですか……?」

 ミラーガールの戦いぶりに称賛するかのごとく振る舞うキャップ・ド・レッドに対し、カァチェンは異様な空気を感じ取っていた。

 そんなミラーガール達三人を前に、新世党は数多くの二次元人達を人質にしている中、再びキャップ・ド・レッドがミラーガール達に話し掛けてきた。

「君達の事は、よく聞いている。異常者(ヒール)ハンターの諸君。ミラーガール、そして台湾が新国将軍シバ・カァチェン……ミラーガール、君は優秀な二次元人だ。どうだ、我々の理想のため、共に戦う気はないかね?」

 このキャップ・ド・レッドの発言に、ミラーガールは威勢よく啖呵を切った。

「ふざけないで! どんな自信があるのか知った事じゃないけど……私とカァチェン、それにシャドウという三人の戦士を前に挑むのは、ちょっと無謀じゃないの?」

「ふむ、そうか?」

 ミラーガールの返答を聞いて、キャップ・ド・レッドが笑みを浮かべた、その瞬間。

「うわあッ!」「カァチェン!」

 突如カァチェンが背後から狙撃されて倒れてしまう。地に倒れるカァチェンは必死に立ち上がろうとするが、力及ばずそのまま気を失ってしまう

 さらにカァチェンが肩を担いでいた気絶している纏流子も吹き飛ばされてしまい、即座に新世党の兵士達に取り押さえられてしまう。

「シャドウ!? まさか……!」

 ミラーガールは背後から奇襲を仕掛けたシャドウに振り向くと、その瞬間にシャドウは左手の巨大なレーザーサーベルをミラーガールに突き向けて怪しく笑む。

 そんな突然のシャドウの行動にミラーガールだけでなく、人質にされている二次元人達が困惑する中、キャップ・ド・レッドが静かに口を開いた。

「うむ、そうだ。シャドウは既に我々の理想を理解してくれている」

 そう、シャドウは既に新世党の一員として活動していたのだ。

「クックック、ミラーガール……この優秀な俺様が配置した軍隊が、そう簡単にテロを防げないとでも思ったか? ……さっきまでの戦いも、全ては其処にいる俺たちが同胞、新世代型たちを欺き、お前やカァチェンをも欺く為の一手だったのさ。さあ、どうする? マン・ヒールズ同様に、この俺が葬ってやっても構わないんだが……総帥は貴様に多大な興味がお有りらしいんだ」

 怪しく微笑みながら得意げに語るシャドウの言葉を聞いてミラーガールは気が付いた。

 新世党の爆破テロを誘導したのは、他でもないシャドウが手引きしていたという事を。マン・ヒールズを奇襲して全滅させたのも彼であった事を。全てが自分たちを欺く為の演技であった事を。

 だが真実に気が付いたミラーガールに、新世党が総帥キャップ・ド・レッドは今一度ミラーガールに訊ねる。

「今一度たずねよう。君はどうする? 非力な二次元人達を放置して逃げ出すか? それとも大人しく我々の傘下に降ってもらうか……さあ、どうする!?」

 迷うミラーガール。このまま人質にされた二次元人達を見捨てるか。それとも不利な状況下で戦うか。

 そんな迷いに迷うミラーガールに、キャップ・ド・レッドは言い放った。

「仲間になれ、ミラーガール……いいや、加賀美あつこ」

 だが、このキャップ・ド・レッドの提言にミラーガールは力強い面差しで返答した。

「どんな理想を掲げようと、あなた達が異常者(ヒール)である事に変わりはないわ」

「な、何だと……!」

 最後の最後まで自分達を異常者(ヒール)呼ばわりするミラーガールに、新世党の小野崎功は表情に怒りを込み上げる。

 しかしミラーガールの決意は揺らぐ事無く、固い信念のもと言い放った。

「……そして、私は誇りある聖龍隊が副長、ミラーガールよ!」

 己の信念を強く主張したミラーガールは、最後に自分に刃を向ける裏切り者のシャドウを睨み付けて言った。

「シャドウ……私は貴方を決して許しはしないわ」

「ウヒヒヒヒヒヒ……」

 そんなシャドウはギザ歯を浮かべて、怪しく微笑み続ける。

 するとミラーガールは足元に一個の物を転がし落とした。

 皆がその物体に目を向けると、その瞬間その物体が強烈なまでの光を放った。

「っ!」

 その強烈な発光に鬼龍院羅暁やセレディ・クライスラーたち新世党の面々は目を晦まされる。

 ミラーガールが足元に転がしたのは閃光手榴弾だったのだ。

 そして強烈な光が収まったその時には、ミラーガールの姿は何処にも見当たらなかった。

「ど、どこ行った!?」

「探せ! 探し出すんだ!」

 上官に当たる鬼龍院羅暁やセレディ・クライスラーがミラーガールを探し出すよう指示を出していくが、そんな彼らにキャップ・ド・レッドが告げる。

「かまわん、放っておけ。いづれ彼女の方から我々に接近してくる……」

 ミラーガールを追尾しようとする配下の新世党を前に、キャップ・ド・レッドは行く行く彼女から自分達に接近してくると配下に言い付ける。

「うははっ! お前ら、ミラーガールに見捨てられたな……ははははっ!」

 ミラーガールに見捨てられたと高笑いしながら人質になっている二次元人達に吐き捨てる新世党の法月仁。

 しかし法月仁の言い分に、二次元人達は何も言い返す事が出来なかった。何故なら現状的に、仁の言うとおりだからだ。

 そして静観する現場で、キャップ・ド・レッドは同胞の新世党の面々に言い放った。

 

「諸君! 時は来た。我ら新世党の理想を世界に示す時だ……!」

 赤いサンバイザーを光らせて、キャップ・ド・レッドは自分たち新世党の野望を高々と掲げた。

 

 

 

[新世党]

 

 新世代型二次元人による新世代型二次元人だけのテロリスト集団。

 自分達の主張を世に根強く示す為に、ジャッジ・ザ・シティで大規模なテロ活動を起こした。

 

キャップ・ド・レッド

 新世党が総帥。堂々とした姿勢を崩さず、常に寡黙。相手を圧倒する威圧感と高いカリスマ性を兼ね備えており、部下の信望も厚い。ミラーガールの力を認めて新世党へと勧誘する場面は、彼の器の大きさと、目的のためには手段を選ばないという意思の現れを見受けられる。

 全身を血で染め上げた様な真紅の衣を纏い、顔には紅いサンバイザーで素顔を隠している。

 

 

 

新世党メンバー

 

小野崎 功(おのざき いさお)

 本編では社長の座から追放された後に実子である絢香に対する虐待を行い、その間に春香が入り虐待を止める。そしてその直後、政府の軍事警察がやって来て彼を幼児虐待の罪で現行犯に近い形で捕縛。

 その後は刑務所への輸送中にアジアで琴浦たちと再会するが国連兵からの陰湿な暴力の標的にされ、徹底的に痛めつけられる。

 更に後、刑務所からキャップ・ド・レッドの手引きで無事に脱獄し新世党の一員として働くものの、経営術しか取り得の無い彼は逆に周囲の手間ばかり増やす為に同胞の新世党の面々からもあしらわれる。

 

高宮(たかみや)、勝沢(かつさわ)、山崎(やまざき)

三枝一族

 名士であったが、永くに渡る陰湿な行為が三次元政府によって異常者と認定され、一部を除いて一族全員が人権剥奪および財産没収として連行される。

 後にキャップ・ド・レッドの手により刑務所から脱獄した後は新世党に加わり、世界的テロを引き起こそうと躍起になる。

 

風陣カイト

 刑務所内での異常者扱いされる人権を奪われた生活を送る度に再び性格が捻じ曲がっていく。

 そしてセレディを含む刑務所に投獄された者たちをキャップ・ド・レッドが脱獄させたのを気に新世党に加わる。

 

伊丹キョウジ

有馬トオル

シャーロット・レイン

甲本ダイゴ

ブルース・ブラドー

 

セレディ・クライスラー

 一気に老化したのを皮切りに、他の囚人とは違い扱いが比較的に温和な収容所に投獄される。

 しかしキャップ・ド・レッドの手引きで収容所から脱獄した際には、彼の計らいで再び元の少年の姿に戻る事に成功する。

 新世党では幹部の扱いを受けている。

 

鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)

 REVOCSコーポレーションのCEOであった鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)異常者(ヒール)認定を受けてはいなかったが、生命繊維による全人類の支配と言う目的の達成を叶えるべく、キャップ・ド・レッドが持ち掛けた新世党の計画に賛同し、配下の針目縫と鳳凰丸礼と共に新世党に協力する。新世党ではセレディ同様、珍しく幹部扱いを受けている。

 

叡山枝津也

美作昴

 

マシタ

ベイカー

ナイン・バルト

 

法月仁

 エーデルローズ主宰職を解任された直後、仁を異常者認定した軍事警察が仁を連行。そのままインベルダウンに投獄され、苦汁の地獄を味わい続ける。

 しかしキャップ・ド・レッドによってインペルダウンから脱獄した後、新世党の一員としてジャッジ・ザ・シティで何百人をも巻き込む爆破テロを行う。

 

 

 新世党メンバーの共通点としては、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)一派とセレディ以外は全員海底監獄インペルダウンで度重なる拷問を受けている為、性格が捻じ曲がっている者が多い。

 

 

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