現政奉還記 未来都市&宇宙編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[潜入する英雄たち]
国連軍腕利きの兵士シャドウの裏切りにより、ミラーガールは戦前を離脱・逃亡してしまう。
この惨状を目の当たりにした二次元人達の多くが絶望視する中、完全武装した新世党に強制的に運搬船へと搭乗させられ、一行はそのまま連行されてしまった。船内には一匹の虫が紛れ込んでいるのに誰も気付かない中……。
二次元人達が強制的に新世党に連行されていた頃、地上ではシャドウの裏切りの砲撃により深手を負ってしまったマン・ヒールズとシバ・カァチェンが病院に搬送されていた。
「イクト! イクト……!」「聖羅! しっかりして……」
幸いにもシバ・カァチェンの傷はそれほど深くなかったものの、マン・ヒールズの方は最大火力の砲撃を浴びてしまったのか意識不明の重体に陥っていた。
このシャドウの裏切りに、聖龍隊は怒りを露にしていた。
「ま、誠に申し訳ありませぬ……私がもっと、しっかりしていれば……」
「カァチェン、自分を責めるんじゃない! 責められるのは……」
「私だ。本当に済まなかった」
自分の不手際だと自責の念に駆られるカァチェンにバーンズが激励しようとしていると、そこにドレフ将校がやって来て聖龍隊の面々に深々と謝罪した。
「いや、済まない……! まさかシャドウが新世党と密通していたとは……全ては私のミスだ、本当に済まない!」
深々と頭を下げるドレフ将校に、バーンズが言った。
「アンタが悪い訳じゃ無い。頭を上げてくれ、ドレフ将校……」
バーンズたちはドレフ将校の真剣な謝罪を前に、彼を責める気は起きなかった。
しかしドレフ将校の気は済まず、何度も平謝りを繰り返す。
「以前から奴ら新世党の動きは掴んでいたのだが……まさか軍内部に密通者がいたとは夢にも思わなかった。本当に済まない事をした」
「それは良い。それよりも今は連れていかれた二次元人達の所在を知らなければ……」
「おおっ、私の不手際だと言うのに、君たち自らが動いてくれるのかね……!」
「オレ達はオレ達の目的のために動くだけさ。新世党にも色々と借りがあるしな」
するとバーンズたち聖龍HEADに続いて、一連の騒動を聞き付けて駆け付けてきた赤塚組の面々もドレフ将校に言った。
「俺たちも若い二次元人の野郎共を助けるのに一役買うぜ! 新世代型だけの世界なんて、クソみたいな思想を抱いている輩には一発ガツンと拳を入れねえと気が済まねえッ」
「あ、ありがとう……本当に、ありがとう……」
大将率いる赤塚組の加盟を前に、ドレフ将校は心から感謝を述べた。
そしてドレフ将校の自室にて。怪我の治療が終えたシバ・カァチェンも加わって話は進められた。
「……それで、本当に行ってくれるのかね? 奴らが拠点にしているのは、巨大宇宙ステーションすなわち地球外の場所なのだよ……!」
「へっ、それがどうした! 若い連中を助けるためなら、例え地の果てだろうと……宇宙の果てだろうと行っちまうのが赤塚組よ!」
「私も……少し不安ではありますが、こんな私と親睦を深めてくれた二次元人の方々を救い出す為ならば、潔く出陣する手前……!」
ドレフ将校の疑問に、赤塚大作とカァチェンは力強く返答する。
そんな二人の言葉を受けて、ドレフ将校は今回の作戦について説明し出した。
「今回の任務は巨大宇宙ステーション、バイオロジック宇宙生物研究所、通称B.S.Lに潜入し、キャップ・ド・レッド率いる反乱組織、新世党の活動を阻止する事だ。既に諸君らより先に上陸させた部隊があったのだが、未だに連絡が取れない。おそらくは既に全滅したと考えられる……」
「………………………………」
「君達が最後の希望だ。この作戦に失敗すれば、我々はB.S.L全土への無差別攻撃という非常手段をとらざるをえないと……上層部から通達されている」
先行部隊が既に全滅させられている事実と、今回の作戦が失敗すれば民間人も搭乗しているB.S.Lへの総攻撃を行う事実を伝えられ、緊張感が張り詰める一同。
そんな一同にドレフ将校は口を酸っぱくして言った。
「残念ながら、B.S.Lにキャップ・ド・レッドも滞在しているかどうかは不明だ。しかし……行ってもらわなければ、民間人を救出する事も叶わない」
こうして一同はバイオロジック宇宙生物研究所 通称B.S.Lへとメタルバードの愛機シルバー・ウィングを巨大運搬機に変形させて出発した。
巨大宇宙ステーションであるB.S.Lは、ステーションの各セクター内部にはあらゆる生物に適した様々な自然環境が再現されており、地球で発見された未知の生命体も研究されているという。
しかし此処で新たな問題が発生。脅威となるのは新世党だけではなかった。
なんと先行部隊からの最後の通達によれば、B.S.L内部で大規模なバイオハザードが発生しており、部隊の大部分もそれによって全滅したらしい。
この事態に、聖龍隊と赤塚組は手をこまねいてしまうが、唯一の対処法が発見された。B.S.L内部に蔓延る驚異的生命体を除去できるワクチンがD-ワクチンから作り出せるというのだ。
D-ワクチン投与者、小田原修司の細胞を国連や銀河連邦が保管していたらしい。スグにワクチンが作られ、各々へと投与された。
この事実を噛み締めながら、聖龍HEADや赤塚組は思った。小田原修司は、再び自分達の命を救ってくれたのだと……。
と、そんな事実を噛み締めている矢先、HEADと赤塚組が搭乗するシルバー・ウィングからアナウンスが伝えられた。
「まもなく「B.S.L」に到着する。すみやかに着陸体勢に移れ」
シルバー・ウィングに搭載された人工知能のコンピューターが通称「B.S.L」、「BIOLOGIC宇宙生物研究所」への接近を告げた。
先行部隊が全滅させられたバイオハザード内で如何にして新世党の面々が活動しているのか未だに謎が多い中、一行は言い知れぬ不安ばかりに襲われていた面々は状況調査も含めて「B.S.L」へと向かっていた。
この「B.S.L」における、一行の行動は全てこの人工知能が管理するようだ。この無愛想な司令官と新世党対策委員長に任命されたドレフ将校の二つの司令塔に従う事を条件に、国連も銀河連邦も今回の作戦に全面的に協力してくれるのだった。
メタルバード率いる聖龍HEADはミラーガール行方不明のまま出立した事に憤りを感じていたが、一刻も早く二次元人達を救出しなければならない使命感からミラーガールの補欠要員としてシバ・カァチェンも同行させた。
同じく赤塚大作こと大将も幹部衆を率いて出発したが、ミラーガールの事を気がかりに思った大将は百鬼命義に実弟の将吉を置いて慣れない宇宙へと出立した。
そしてこの時、シルバー・ウィングはレーダーを掻い潜れる状態に変化していたため、B.S.Lを拠点にする新世党に気付かれる事なく内部へと潜入できた。
B.S.Lのドッキングベイに着陸した一行は、まず人工知能が表示するメインデッキの地図を示され、説明を受けた。
「バイオハザードが発生する前、確認されたのは特別保管庫の爆発だ。其処に、保管されていたものは……調査隊が地球で捕獲した未確認生物が入れられた、いくつかのカプセルと……実験用に持ち込んだ小田原修司の特殊環境内での遺伝子だ。なぜ爆発が起きたのか、非常に不可解だ。まず被害状況を把握する必要がある。特別保管庫は此処だ、すみやかに移動せよ。ただし……ここは既に新世党の根城になっている事実を忘れるな。下手をすれば先行部隊同様、君達も全滅させられてしまう可能性がある」
更に人工知能は現場である特別保管後に向かい一行に告げた。
「現場に向かう途中に、「ナビゲーションルーム」という部屋がある。そこから、わたしへのアクセスが可能だ。到着次第、アクセスしたまえ」
人工知能からの指示を受け取り、メタルバードと大将ら一行は機内から出てB.S.L内部を探索し始める。
段差を駆け上り、高低差のある壁を伝って突き進んでいく一行は、ようやくナビゲーションルームへと辿り着いてアクセスを試みる。
「特別保管庫は、この先だ。保管庫で、生体反応が確認された。注意せよ」
メタルバードたちは細心の注意を払って特別保管庫まで移動していく。
そして遂に特別保管庫に到着した一行は、不思議な生命体を確認する。
躊躇わず銃撃して謎の生命体を射殺する赤塚組。だがしかし、生命体はゲル状の生命体へと変化を遂げ、赤塚組を襲う。が、謎の生命体は赤塚組にそのゲル状の肉体を触れた途端、ドロドロに溶けて消滅してしまった。
謎の生命体との交戦、そして溶けた末路を気にしながら、一行は来た道を戻ってナビゲーションルームへと戻る。
早速ナビゲーションルームへと戻った一行は、自分達が調査した経緯を人工知能に伝えようとするが、それより前に人工知能から衝撃的な話が告げられた。
「今、判明した事だが……調査隊が持ち帰ったのは『X』という一種の擬態生命体という事が判った。この『X』は小田原修司の遺伝子とD-ワクチンが異常結合した際の突然変異で生まれた生命体らしい。先の爆発の際、カプセルから逃げ出した『X』の姿を、モニターカメラが捉えていた」
更に人工知能は『X』なる生命体について説明し出した。
「ゲル状の生命体『X』は、他の生物の体内に侵入し……寄生して増殖し、その生物に大きなダメージを与え、最終的に死亡させる。そして、その際に得たDNA情報などを元に『擬態』するようだ。しかし突然変異の影響なのか、このXは旧タイプのD-ワクチンには非常に弱い性質を持っている。君達にXの影響が現れないのは、その為だ。ここに来る前にD-ワクチンを投与したために影響が現れない肉体へと変化したのだろう。いわば、D-ワクチンはXの天敵とも呼べるだろう。ワクチンが効果的だった理由は、ここにある。変化した君たちの体質はXに寄生されないだろう」
と、ここで人工知能は話をB.S.Lの内部へと戻す。
「このステーションでは、様々な生物が飼育されている。中には凶暴なものもいる。飼育エリアにXを侵入させてはならない。なんとしても阻止しなければならない。まずは、この状況下で生存している研究者とその家族の安否を確認しよう。君たちはこれから居住区エリアに向かい、生存者がいないかどうか確認してくれ。ただし研究関係者でも極一部の幹部クラスの居住区エリア、すなわち最上層エリアは既に新世党が制圧してしまっている。彼らの事も気がかりだが、今はXの侵入を阻止する方法を見付けなければならない。人質救出も、そのあとだ。では細心の注意を払え。任務完了まで、君たちは倒れてはいけないのだ」
非常事態ゆえに、人質救出も新世党の事も後回しにする人工知能の思想に一行は多少の苛立ちを覚えた。
「では行動に移れ。レベル0のハッチのロックは解除しておく。点滅しているハッチがそれだ」
そう言い終わると、人工知能は再び一方的に通信を切断してしまう。
こうして一行は再び人工知能の言われるがままに移動する羽目になる。
しかし目的地に向かう道中、一行はある事を思い浮かべさせられていた。
あの人工知能コンピューターの口調は、彼らにある人物を連想させた。
他でもない小田原修司である。聖龍隊で優秀な司令官を務めた彼の下で、HEADや赤塚組は馴染みがあった。冷徹なまでに任務に忠実な修司の判断は、常に素早く、そして正しかった。やや冷徹になりすぎて周りの空気を嫌悪させる場面も多かったが……一行は大いなる敬意と、ささやかな皮肉を込め、人工知能を「修司」と俗称する事にした。
[動き出す聖女]
その頃、新世党が居住区にしている最重要上層エリアでは。
「……まったく、困ったもんだよ、あの連中」
「俺たちと付き合えば、キャップ・ド・レッドの導きで新世代型二次元人だけの世界を創造できるっていうのによ」
新世党の兵士が喋っているのを聴いていたいのは、一匹の小さな虫であった。この虫は地球から遥々、連行されていった二次元人達と共に、このB.S.Lに辿り着いたのだ。
そして新世党の兵士の姿が見えなくなったのを皮切りに、その虫は人気のないところに着地して呟いた。
「ラミパス」
すると小さな虫は蒼く光り輝き、その光の中から蒼い衣を着た女性が現れた。
そう、小さな虫の正体は、変身していたミラーガールだったのだ。
虫から元の姿へと変身を解除したミラーガールは、力強い面魂で誓いを立てた。
「待っててね、みんな。必ず、助け出すから……!」
ミラーガールは地球のジャッジ・ザ・シティで助ける事ができなかった二次元人達を今度こそは救おうと胸に刻み込んだ。
まずミラーガールは隠れながら新世党の兵士の服装を細部まで確認する。
敵兵は全員、肩や腰にアーマーの様な機械を装着したレオタードの様な独特な戦闘コスチュームだった。しかも御大層に全員がヘルメットを着用していたのであった。
これにミラーガールは内心で喜々とし、左腕に装着しているコンパクトを見詰めて呪文を唱える。
「テクマクマヤコン」
するとミラーガールの容姿が一変し、新世党の兵士の姿に変身した。
変身を終えたミラーガールは、そのまま新世党の兵士の姿で彼らが拠点としている最上層エリアの探索に突入した。
最上層部で探索を続けるミラーガールは、兵士の姿でとあるコンピューター室へと入室した。
すると其処は偶然にも誰も居らず、ミラーガールは早速部屋にあったコンピューターを弄り出した。
自分と共に地球から連れて来られた二次元人達が現在、何処にいるのか調べるために。
しかしミラーガールが入った部屋のコンピューターでは二次元人達の現在地は判明できなかった。が、代わりに衝撃的な事実が判明した。
(えっと……そ、そんな! 【革命機ヴァルヴレイヴ】に【アウトブレイク・カンパニー】の面々まで連れて来られているの……!」
ミラーガールは新たに、新世党によって連行されてきた新世代型二次元人が所在している事実を把握する。
大人数の新世代型を一か所に集めて、一体キャップ・ド・レッドは何を目論んでいるのか疑念に駆られるミラーガール。
すると其処にミラーガールの通信機に電波が傍受された。
「ミラーガール……聞こえるか……」
「ドレフ将校……! シャドウが裏切りました」
「ふむ……それは既に此方も知っている」
「私たちの動きは、全て新世党に筒抜けでした……カァチェンも、やられて……」
「ミラーガール……君は、無事なのか……それだけでも、よか……今、HEADと……赤塚組が……そちらに…………」
「……ドレフ将校? ……やっぱり通信はアテにはできないわね」
途切れ途切れの通信を傍受して、ミラーガールはB.S.L内部でも通信機器は使えないと判断した。B.S.L内部にも妨害電波が発生させられているからだろうと。
するとB.S.L内の警報が鳴り響き、拡声器からセレディ・クライスラーの声が発せられた。
「B.S.L内部に、国連関係者が不法に侵入。繰り返す、不法侵入者あり。該当する二次元人を発見次第、すみやかに通達または……排除する様に」
ミラーガールは(しまった、見付かったようね……!)と内心焦った。先ほどのドレフ将校との会話を新世党も傍受して、現在地を割り出されてしまったのだろう。
するとたちどころにミラーガールは新世党の兵士たちに見付かってしまう。
「ミラーガールだ!」「こっちだ、こっちにいるぞ!」
ミラーガールを発見した敵兵達はすかさず彼女に向けて銃撃を仕掛けていき、ミラーガールは急いでその場から撤退する。
「わわわ……っ、急いで逃げなきゃ!」
急ぎ現場から撤退するミラーガールは、慌てたためか変身が自然と解除してしまう。
しかし辺りは見慣れぬ建物ばかりで、思うように退避する事ができず困惑してしまう。
右に左と逃げ惑うミラーガールだが、次第に逃げ道を塞がれてしまい、逃げ道を失ってしまう。
もうダメかと思われた、その時。
「こっちだ、ミラーガール!」
「!? あなたは……!」
「説明は後だ、早くこっちに来い!」
傭兵の様な服装にトサカの様な赤髪と筋肉隆々の肉体に、口にはタバコをふかしている男に導かれ、ミラーガールは廊下足元の通風孔へと逃げ込んだ。
人一人がようやく入れる通風孔の中に逃げ込んだミラーガールの真上では、突如として姿を消したミラーガールを探し回る兵士が逆に困惑してしまう。
「ど、どこ行った!?」「探せ、探し出すんだ!」
兵士達はミラーガールの姿を探し求めるが、その間にもミラーガールは筋肉隆々の男に導かれて安全な地帯へと撤退する事が出来た。
「此処なら、もう安全だろう」
「ふう、ありがとう、助けてくれて。ところで貴方は……?」
「名乗るのが遅れた、俺は黄長瀬紬。新世党と戦う抵抗組織ヌーディスト・ビーチの一員だ。あんたが聖龍隊副長のミラーガールだな」
「ええ、そうよ」
「あんたに二つ、良い事を教えてやろう。一つはあんた以外の聖龍HEADに赤塚組の幹部がB.S.Lに駆け付けて来てくれている」
「え! ホントなの?」
「ああ、本当だ。そしてもう一つ……あんたが助けたいと思っている俺と同じ新世代型を含んだ一般の二次元人達は今のところ全員無事だ」
「み、みんな無事なのね! 良かった……」
黄長瀬紬からの話を聞いてミラーガールは心より安堵する。だが同時にミラーガールは新世党内部に流通している黄長瀬紬に疑念を抱いた。
「と、ところで……なんで貴方はそんなに詳しい事を知っているの?」
「ああ、それは新世党に俺たちの内通者を潜り込ませているからだ。ある執事なんだが、情報を此方に流してくれている。その人の情報から、一般の二次元人達が拉致られている事を知った訳さ。もう一つ、あんた以外の聖龍HEADと赤塚組がB.S.Lにやって来たって事は俺の別の仲間が知らせてくれたのさ。新世党に立ち向かう勢力に加わってくれれば、此方としても大いに助かる」
「も、もちろん……協力してくれるなら私も大賛成よ! よろしくね、黄長さん」
「此方こそ、共に新世党を打倒しよう! ミラーガール!!」
黄長瀬紬と名乗る屈強な仲間の登場に、ミラーガールは心から打ち解けた。
すると黄長は大変言いにくそうにミラーガールに言い出した。
「ところでミラーガール、折り入ってお願いがあるんだが……」
「なに、言って。私たち、仲間じゃない」
「そ、そうか……実は、俺たちヌーディスト・ビーチの中心人物である美木杉愛九朗って人が、新世党のボスの一人に捕まっているんだ。美木杉博士だけじゃない、他の同士も今や俺を除いて殆どが新世党に捕まっている……」
「………………………………」
「む、無論……一般の二次元人達も助けようとは思っているが、それでも博士や仲間が居ない限り新世党に太刀打ちするには戦力が少なすぎる。そこで悪いが、一緒に新世党に捕まっている仲間達を解放してほしいんだ。もちろん、同時に助けられる一般の二次元人達がいれば一緒に助けてやるつもりだ」
「……分かったわ。今の私も、仲間と合流できてない以上、戦力が欲しいのが切実。その美木杉って人達を助けてあげましょう!」
「あ、ありがとう……! 恩に着るぜ、ミラーガール!」
黄長瀬紬は心よりミラーガールに感謝の意を述べた。
此処でミラーガールは、黄長瀬紬の言動から、彼が三木杉愛九郎に並々ならぬ感情を抱いている事を察し、思わず訊ねてみた。
「貴方は、その美木杉って人や仲間を助けるために、わざわざ此処まで……?」
「ああ、だが敵さんの守りも硬くて、思うように進めなかったんだ。そこに、追われていたあんたを見つけて……」
「そうだったの……」
「ッ……実をいうと、美木杉って人は、俺の義理のアニキになる予定だった人なんだ」
「予定、だった?」
「ああ、だがそれは叶わなかった。俺の姉貴、絹江っていうんだが……それがとある実験で犠牲になって死んじまって……その姉貴と婚約を交わしていたのが美木杉博士なんだ。俺は死んだ姉貴が愛した人を救いたい、そして共に新世党を……鬼龍院羅暁を倒したいんだ!」
姉の話を聞かされたミラーガールは、黄長瀬紬に似た胸中に駆られた。何故なら彼女にも、死別した姉がいたからだ。
「貴方の気持ち、凄く解るわ。私にも姉がいて……」
「ああ、その件は既に小説を読んでいるから知っている。確かあんたの場合、生後三日で亡くなった未熟児の姉貴だったな」
「そうよ……貴方も修司が出した自伝小説を読んでいたなんて……やっぱり……」
「やっぱり……?」
「あ、ああ! 何でもないのよ。さあ、早くその美木杉って人を助けに向かいましょう!」
「お、おう、そうだな……」
ミラーガールの言動に若干の違和感を覚えた黄長瀬紬だったが、今は美木杉愛九朗を助け出す事だけに専念しようと考えを改めた。
[開始! 救出作戦]
新世党に抵抗する組織「ヌーディスト・ビーチ」の一員である黄長瀬紬と合流を果たしたミラーガールは、黄長の作戦に便乗してみた。
「……まずは電気系統を阻害して敵の混乱を狙おう。上手くいけば、此処より一つ下の階層セントラルエリアを奪還できるかもしれない。セントラルエリアには少なからず閉じ込められている仲間も少人数だがいる筈だ」
「そうね、まずは少しずつ解放できるだけの二次元人達を救出しましょう」
「そうだな……それと、何とかして俺たちと同じくB.S.Lに潜入した聖龍HEADたちにあんたや俺たちの事を伝えておかないと……」
「そうだったわ。私、黙ってみんなの前から姿を消しちゃったから、みんな心配している事だろうし……」
「はは、だが、それも全ては捕らえられた二次元人達を救出する為に……潜入する為に変身能力を応用していたんだろ?」
「ええ、まあ……でも、相手に潜入を気付かれたんじゃ意味ないわね」
「そんなことは無い……さてと、長話は此処までだ。今から電気系統をショートさせる。一時的にB.S.Lの全電気系統が止まるが、仲間達を救出するためだ。致し方ない」
「そうね……今はセントラルエリアの奪還を最優先しましょう。あそこは全てのエリアに向かえる転送装置も完備されている筈だったし……」
「ミラーガール、知っていたのか……!」
「ええ、ちょっと新世党の兵士に変身していた間に、情報収集はしていたから」
「頼りになるな、あんたの能力は……さてと、ブレーカーをショートさせて電源を断つとしますか」
ミラーガールとの話を終えた黄長瀬紬は、電気系統に特殊な金属を打ち込んでわざと電線をショートさせた。
すると目論み通り、B.S.L内部の電気系統は全て遮断されてしまい、即座に予備電源へと切り替わった。
同じ頃、人工知能「修司」の指示で研究所員とその家族が生活していた居住区エリアを調べていたHEADと赤塚組とカァチェン一行も突然の停電に困惑する。
「ど、どうしたのでしょうか……?」
「分からん。癪だが、またあの人工知能に聞いてみる他ない」
突然の暗闇に困惑するカァチェンを尻目に、メタルバードは再度ナビゲーションルームで人工知能に問い詰めるしか手立てがない現状に嫌気が差す。
そしてナビゲーションルームで一行は人工知能から告げられた。
「電気系統の故障だ。予備電源に切り替わったようだが、こことメインデッキを繋ぐエレベーターが停止した。これはXか、はたまた新世党が絡んでいるのか……私は、原因の究明と改善に努める。君達には非常に申し訳ないのだが、その場で待機してくれ。もし何か掴めたら、折り入って連絡する」
まさか新世党に抗う組織の一員による、ミラーガールも加わった騒動だとは、この時誰も想像していなかった。
一方、ミラーガールと黄長瀬紬の二人は、暗闇に閉ざされた活路を邁進していた。
「オラオラッ、退け退け!」
黄長瀬紬はミシンの様な銃器で特殊な針を連続で発射しながら突進していく。
「す、凄い迫力ね……」
「へへっ、ゲリラ戦法は得意中の得意でね」
迫力ある猛進で敵兵を近付けさせない黄長瀬紬の猛攻を前に圧倒されるミラーガール。
しかし戦力の差は圧倒的で、次第にミラーガールと黄長瀬紬は追い詰められてしまう。
「っ……戦力の差があり過ぎるわ……!」
「チッ、仕方がねえ……ここは俺が食い止める! ミラーガールは先に、仲間達の処へ……」
「で、でも! それじゃ、貴方は……」
一人残って戦い続けるが故に先へと進攻するように言う黄長瀬紬の言葉に戸惑うミラーガール。
すると黄長瀬紬はミラーガールにある物を手渡した。
「これで……セントラルエリアのメインフロアに通じる道へと出られる筈だ」
「このカードキーは……」
「メインフロアに出られる筈のカードキーだ!」
最後にそう言い残すと、黄長瀬紬はミラーガールを押し退けて彼女を強引に扉の向こうへ突き飛ばした。
「わっ!」
驚くミラーガールを前に、扉は固く閉ざされてしまう。そんなミラーガールに黄長瀬紬は扉越しで言い放った。
「どうか……どうか、美木杉愛九郎を頼んだぞ! ミラーガールッ!!」
「分かったわ。でも、約束して……貴方も決して死なないで!」
ミラーガールは最後に黄長瀬紬に死なないよう言伝すると、先を急いだ。
すると突然、激しい爆発の衝撃がミラーガールの体に響いた。振り返ってみると、先ほど自分が突き飛ばされた扉が衝撃で変形してしまってた。
ミラーガールは黄長瀬紬の安否を気にしつつも、先を急いだ。
その頃、セントラルエリアのメインフロアを陣取っている新世党のボス、「高機動山猫型二次元人」ワイルド・ジャンゴーがカメラ越しにミラーガールの進攻を眺めていた。
「ふん! こざかしい。だが、流石は鬼神が惚れ込んだ伝説のヒロイン、ミラーガールだニャ」
語尾にニャを付ける独特の口調で語るジャンゴーの背後から、謎の声が。
「一般兵士ぐらいじゃ荷が重いか?」「ニャア!?」
ジャンゴーが振り向くと其処には一人の青年が。
「フレッド! お前なら、奴を倒せると言うのか?」
ジャンゴーの背後で待機していたのは、ジャッジ・ザ・シティで新世代型二次元人を誘拐しようとした賞金稼ぎのフレッドだった。
フレッドは雇い主である新世党そのボスであるジャンゴーにぼそりと訊ねた。
「……報酬は?」
「はっ! 金の話か!? 良かろう! 貴様がミラーガールを止められたなら、欲しいだけくれてやろう。いずれ、我ら新世党は二次元人の天下を取る! そうなれば金など好きなようにできるわ!」
報酬は好きなだけ出してもらえると言い付けられたフレッドは、愛想のない顔で呟いた。
「あんたらの天下に興味はないが、欲しいだけ貰えるってのは悪くないな」
そして迫りくる数多の敵兵や、戦力として用いられているメカニロイドを突破しながらミラーガールはセントラルエリアに通ずる扉の前まで辿り着いた。
此処でミラーガールは、命を張って黄長瀬紬が手渡してくれたカードキーを使おうと、扉の横の装置に手を差しのばした。
が、その瞬間。ミラーガールの足もとに一発の砲撃が。ミラーガールはこれに直撃しなかったものの、砲撃を放った方向へと顔を向けた。其処にいたのは……
「大したご活躍だな、ミラーガール。おかげで、いい稼ぎになりそうだ!」
「貴方は……賞金稼ぎの……!」
「フレッドって呼んでくれ。さ、いくぜ」
進攻を遮るフレッドの出現に、ミラーガールは戦闘を余儀なくされた。
だが、既にミラーガールの動きを全て見切っていたフレッドは意図も簡単に彼女を倒してしまう。
「残念ながら、あんたの動きは既に見切っているんだよ」
「っ……!」
フレッドの台詞を聞きながら表情を強張らせるミラーガール。
するとフレッドは、自分の足もとに落ちているカードキーに気が付いた。
「このカードキーは……?」
フレッドがカードキーに手を伸ばそうとした、その時。フレッドの手をミラーガールの砲撃が弾いた。
「それに触らないで! フレッド!」
ミラーガールはフレッドを睨み付けながら威勢よく語り始めた。
「それは、貴方みたいな汚い賞金稼ぎが触れて良いものじゃない! それは己の信念に命をかけた、二次元人の尊い意志よ」
「死んだ……のか……?」
「それは分からない……だけど……私は彼が、黄長瀬紬が生きている事を信じているわ」
ミラーガールは最後の余力を振り絞ってフレッドに言い放ち続けた。
「でも……! 仲間の為に、己が信念の為に戦いに身を投じる彼の信念は気高いものよ! あなたの様に、金のために汚い仕事をする賞金稼ぎが触れていいものじゃないわ!」
「そうか、それでお前に託したんだな」
ミラーガールの言葉を受け止めつつも、フレッドは黄長瀬紬がミラーガールに託したカードキーを手に取ると監視カメラに向かって言い放った。
「悪いが、この仕事は降りるぜ。ジャンゴ―さんよ!」
フレッドは雇い主であるジャンゴーら新世党と手を切る事を名実ともに宣言した。
このフレッドの突然の行為に、監視カメラで状況を閲覧していたジャンゴーは怒り狂った。
「ニャニャニャ! 賞金稼ぎめ! 勝手な真似を!」
怒り狂ったジャンゴーは、自分の指揮下にある戦闘マシーンを全投入して命じた。
「全警備兵出動! 奴ら二人とも始末しろニャア!」
こうして数多の警備ロボがフレッドとミラーガールの元へと迫ってきた。
迫りくる警備ロボの大群を前に、フレッドはミラーガールに言伝した。
「俺は確かに汚ぇ賞金稼ぎだがね、かつて俺が愛した女の弟その魂に恥じるような仕事はしない」
そしてミラーガールに言伝したフレッドは単身、敵警備ロボの群れへと突入した。
「こっちは帰るついでに掃除して行ってやるから……さっさと美木杉愛九朗を助け出してやんな!」
「待って、どういう事なの?」
一人セントラルエリアの前で取り残されるミラーガールを尻目に、フレッドは次々と敵兵を倒し続けていく。
「……愛した、女?」
フレッドが言い残した台詞に、ミラーガールは考えさせられた。
[新たなる出会い]
謎の賞金稼ぎ、フレッドの手助けにより逸早くセントラルエリアのメインフロアに突入したミラーガール。
すると其処で、新世党の兵士によって連れ回されている一人の青年を見付け、敵兵と戦闘を開始。
難なく敵兵を突破したミラーガールは、救い出した青年に声をかける。
「ひ、ひえっ、助けてくれ! ……って、あんたは新世党の連中じゃないんだな。良く見れば……ミラーガール!? なんでここに? い、いや、それよりもこの先にいる仲間達を助けてほしいんだ。あ、紹介が遅れた。俺はオタク文化を異世界へ輸出する、日本政府主導の商社総支配人の加納慎一だ。異世界にも進攻している新世党を止めてほしいとヌーディスト・ビーチから依頼を受けたんだが、活動する前に仲間達ごとこんな宇宙ステーションに連れて来られちまった。頼む、力を貸してくれ!」
加納慎一の切願を聞き入れ、ミラーガールは彼の案内の元、メインフロアへと突入する。
すると先行した先には、連れてきた新世代型を幽閉する小部屋を見張る三台のメカニロイド兵士が突っ立っていた。
「性懲りもなく、また来たか……こいつらを返す訳にはいかないな。大人しく破壊されるのだ! くらえ!!」
メカニロイド兵士はミラーガールを狙撃しようとするが、返って狙い過ぎた為に容易くミラーガールに射撃を回避される。
そしてミラーガールは反撃とばかしにミラーソードでメカニロイドの一体を斬り付ける。
すると、そのメカニロイドはミラーガールにスタンガンで反撃し、彼女を痺れさせる。
しかし此処でミラーガールは一瞬の隙を突いて、ミラーシールドにエネルギーを貯蓄。それを一気に放って砲撃。結果、全てのメカニロイドを駆逐できた。
「よしっ」
「さ、流石は伝説になった聖龍隊のヒロインなだけの事はあるな……」
勝利を意気込むミラーガールに反して、戦闘の情景を眺めていた加納慎一は唖然としてしまってた。
そして解放した仲間を確認した加納慎一にミラーガールは此処までの経緯を述べた。
「なにっ、黄長瀬紬が……!? そうか、彼が……ヌーディスト・ビーチ結成以来、ずっと本当の兄弟の様に慕っていたからな……。ミラーガール、これを持って行ってくれ。三木杉愛九郎が捕まっていると思われるデータバックアップ室のキーだ」
ミラーガールは加納慎一からキーアイテムを入手した。
「後ろの三人からも色々と所持しているから分けてもらうと良い。ここで装備を整えてくれ」
加納慎一に言われるがまま、ミラーガールは後ろの三人の女性、古賀沼美埜里/ミュセル・フォアラン/ペトラルカ・アン・エルダント三世らからアイテムを補充すると再び進軍する。
「ミラーガール! この先、どんな敵が現れるか分からない! 油断しないで進んでくれ……三木杉愛九郎を……他の仲間達を頼んだぞ!」
加納慎一は最後にミラーガールに言伝すると、三人の女性と共にその場に待機した。
それから進行していくミラーガールは、休息所でとある青年と出会う。
「ありがとう……、流石はS級の
そういって犬塚キューマはミラーガールの怪我の治療をしてくれた。
犬塚キューマに礼を申したミラーガールは、その場に留まらず先へと専行する。
そしてミラーガールはようやく、メインフロアの中央区へと突入した。
「きゃあっ!!」
「安心して、私はミラーガール。あなた達を助けに来たのよ」
中央区には閉じ込められていた咲森学園の生徒達が捕らえられていた。
その中で誰よりも異質な存在を現していた一人の男性にミラーガールは駆け寄った。
「君がミラーガール……そうか……」
「……貴方が美木杉愛九朗さん?」
「いいや、残念ながら違う。彼は既に別のエリアへと連行されてしまった……私は的場甚三郎。内閣府直轄の「極東文化交流推進局」の局長だ」
少し白髪の混じった髪を丁寧に七三分けにし、中肉中背の体身長を枯葉色の背広で包んでいる男性はミラーガールに名乗る。
咲森学園の生徒達と教師、そして的場甚三郎との出逢いをミラーガールは噛み締める中、的場はミラーガールに訊ねた。
「それで……レジスタンスは、ヌーディスト・ビーチは……我々の仲間達は?」
「此処までに囚われていた何名かは救助しましたが、あとは襲撃された際に散り散りになったようです。それに……黄長瀬紬氏が、自分を犠牲に私をここまで導いてくれました」
「黄長!? 彼が……?」
新世党に立ち向かおうと意気込んでいた黄長瀬紬の犠牲を聞いて、一驚する的場たち現場の皆々。
すると其処に、立体映像での通信でメインエリアを統括指揮しているワイルド・ジャンゴーから呼び掛けがあった。
「ふん、我ら新世代型の同胞たちよ。新世党に協力しようという気はないようだニャ」
あくまで立場や心境などを考えず、同じ新世代型として協力を求めてくるジャンゴーの問い掛けに的場甚三郎が皆に代わって代弁する。
「言った筈だぞ。例えこの身が打ち滅ぼうとも、三次元人の夢や希望が詰まった肉片の一つだけでもお前達に抵抗するとな!」
この台詞は美木杉愛九朗からの受け売りであった。これに対しジャンゴーは強気な態度で言い返した。
「いずれ全二次元人を平定する我々に逆らうとは、何処までも愚かな奴らよ、的場甚三郎、咲森学園の者共……そしてミラーガール!」
協力の姿勢を見せない面々を視認して、ジャンゴーは通信越しである映像を見せた。
「ふん、だが、もういい。貴様らと……」
「フレッド!? 黄長さん……!?」
なんとジャンゴーが見せ付けたのは、ジャンゴーの手に落ちた賞金稼ぎのフレッドとヌーディスト・ビーチの黄長瀬紬の二人だった。
「ついでに、この薄汚い裏切り者とタバコ臭い野郎もあわせてメインフロアに毒ガスを散布してやるニャ!」
「毒ガスだとっ!?」
「ふん、肉片そのものを醜く腐らせる新世党特製の毒ガスだニャ! 文字通り、肉片のひとかけらも残さず消えるんだニャ……!」
「なんという事を……!」
ジャンゴーは最後まで抵抗を示すレジスタンスに対して捕らえたフレッドと黄長瀬紬も纏めてメインフロアに毒ガスを散布すると宣言。これに的場甚三郎もミラーガールも愕然となる。
この非常事態にミラーガールは的場甚三郎に訊ねた。
「ま、的場さん! 毒ガスの散布を防ぐ方法はないの?」
「そうだ! ジャンゴーのいたモニタールームへ行けば、装置を止める事が出来る筈! ここから通信でモニタールームへの道順を案内する。装置を止めて来てくれ!」
こうしてミラーガールは、的場甚三郎と咲森学園の生徒たちの協力の元、司令室へと急行する。
「ここから司令室への道順を案内する。司令室に行き、装置を停止してくれ!」
的場甚三郎の言葉を受けて特攻するミラーガール。
しかし進攻するミラーガールの前に、新世党のメカニロイド兵士が立ちはだかった。
「ここだ! ミラーガールがいたぞ!! かかれ!!」
だがミラーガールは毒ガス散布までの時間制限がある事態に、悠長している暇は無かった。
「邪魔!」
ミラーガールは特攻でメカニロイド兵を一刀両断していき、殲滅すると再び進攻を再開する。
「貴様は此処までだ!! 一体ごときで何ができる! 大人しく、やられてしまえ!」
しかし再びミラーガールの行く手をメカニロイドが阻む。これにミラーガールは狭い通路でも小回りの利く武器にミラーソードを変化させて応戦する。
「はぁッ」
勇ましい掛け声と共にミラーガールは敵を一撃粉砕してみせた。
そのまま直行するミラーガールに、ここで時縞ハルトが通達。
「そこの扉はロックされている筈だ。遠隔操作でロックを解除する」
時縞ハルトたち咲森学園の生徒たちの遠隔操作で、ミラーガールはセントラルエリアの司令室スタッフルームに突入した。
しかしスタッフルームを突き抜けて、先へと進もうと扉を開けた矢先、目の前に待ち受けていたメカニロイドが進行を阻む。
「侵入者発見!! 排除開始!!」
人間の指示通りにしか機能しないメカニロイドは、進行するミラーガールを躊躇なく攻撃してくる。
しかしミラーガールも負けじとミラー・シールドを展開して敵の攻撃を防ぎながら全ての銃撃を弾き返し、反撃に移る。
そして全ての敵を排除したミラーガールに再び時縞ハルトが告げた。
「左手の扉の奥が司令室だ。やはり敵がいるようだな……気を付けろ」
時縞ハルトの言葉を噛み締めながら、ミラーガールは司令室へと突入する。
其処には確認された通り、毒ガス発生装置を護る警備兵が陣取っていた。
「レジスタンスか……このガス発生装置は止めさせん。装置が起動するまで、我々はやられんぞ!」
ミラーガールを敵対しているレジスタンスの一員と認識して攻撃を仕掛けてきた。
これにミラーガールは素早く反応し、敵の銃撃を潜り抜けながらも接近してメカニロイド兵を斬り捨てる。
苦戦の末、毒ガス発生装置を死守していたメカニロイドを全て片付け終わったミラーガールは、制御コンピュータの前に急いで駆け付ける。
「停止入力を確認…………装置を停止状態に切り替えます」
発生装置の制御端末を操作して毒ガスの発生を喰い止めたミラーガール。彼女の活躍に的場たちは称賛の嵐。
すると的場の通信からミラーガールに通達があった。
「よくやってくれたミラーガール! こちらでも装置の停止を確認したぞ。ジャンゴーは上層部へと通じるメインシャフトの前で立ち往生している。シャフトへの扉のロックは解除してある。向かってくれ……ジャンゴーに一矢報いてくれ」
通信でジャンゴーは、最重要上層部へ通じるメインシャフトの前で立ち往生している事を伝えられたミラーガールは、ジャンゴーと決着をつける為に急ぎ向かった。
[危険な山猫]
「毒ガス発生装置を止めたニャ!?」
自身が仕掛けた毒ガス発生装置を止められた事実に驚愕するジャンゴー。
「小ざかしい
そんなジャンゴーの背後に、ミラーガールが立ちはだかる。
「ジャンゴー!」
「ニャニャニャ、誰かと思えば……小ざかしいミラーガールかニャ!」
「ジャンゴー! あなた達は間違ってる!」
ミラーガールは迷いのない透き通った目で言い放った。
「私が……倒す!」「ぬるいニャ!」
ミラーガールがジャンゴーに宣戦布告とも取れる言葉を放った次の瞬間、ジャンゴーは両手から電撃の飛び道具を密かに投げつけてミラーガールを押し倒す。
「たかが
ジャンゴーは得意げな様子でミラーガールに歩み寄ろうとするジャンゴー。メインフロアのカメラでこの情景を傍観していた新世党の面々は邪魔者であるミラーガールの死を拝めると高を括り、一方で通信越しでミラーガールの危機を知った的場甚三郎達は非情に焦った。
と、ジャンゴーがミラーガールに歩み寄り、トドメを刺そうとしていたその時。
「ニャ! ……ニャニャニャニャニャ……!」
何者かが歩み寄ろうとするジャンゴーの動きを攻撃で止めた。ジャンゴーもミラーガールも、攻撃が飛んできた方角へ目を向けてみると其処には……
「フレッド! それに黄長瀬紬……!」
なんとつい先刻までジャンゴーに捕らえられていたフレッドと黄長瀬紬の両名が満身創痍ながらも立っていたのだ。
「ジャンゴー、彼女に……彼女に触れないでもらおうか」
「黄長の言うとおりだ……そいつは、あんたらみたいな気の狂った、おかしな奴らが触れていいような女じゃない!」
黄長瀬紬とフレッドはそれぞれ、思いのたけをジャンゴーに叫んだ。
「俺たち……」「俺たち二次元人の……」
「「始祖様に、触れるんじゃねえ!!」」
この二人の登場に、流石のジャンゴーも驚くが、すぐに態勢を立て直す。
「ニャ、ニャンだ、貴様らは! よかろう! まとめて地獄へ送ってくれるニャ!」
ミラーガールの危機に駆け付けた黄長瀬紬とフレッドの二人も参戦し、ワイルド・ジャンゴーとの戦いが展開される。
まずは素早さの高いワイルド・ジャンゴーは電撃のかぎ爪でミラーガールを急襲する。
「うわっ」
電撃の威力も相まって、ミラーガールは思わず怯んでしまう。
しかも同時にジャンゴーは自らの素早さを向上させ、戦闘を有利にさせる能力が備わっていた。
素早さの上がったジャンゴーは、三人の頭上を飛び交いながら電撃の手裏剣を投げ飛ばす。
「よ、避けて!」
ミラーガール咄嗟の判断で、フレッドと黄長瀬紬は手裏剣を回避しようとするが、回避行動も空しく攻撃が当たってしまう。
するとフレッドが何やら仕掛ける御様子。
「さて、勝負といこうじゃないか」
そういうとフレッドは姿を透明化させて、ジャンゴーにリボルバー式の弾丸をお見舞いする。
「ニャニィ!?」
単一電池並みの大きさの弾丸を受けて急所に直撃してしまったジャンゴーは怯んでしまう。
その隙にミラーガールはミラー・シールドを砲口に変化させる黄金のアーマー姿に変身して、ジャンゴーに砲撃を喰らわした。
「ニャ、ニャんだと~~!?」
砲撃を浴びて驚愕するワイルド・ジャンゴー。だが彼はまだ倒れない。
するとトドメとばかしにミラーガールは遠距離からの砲撃に続いて、接近してからの白兵戦で仕留めようとする。
「さ、さっきから好き勝手に……思い通りにさせてたまるかニャ!」
ミラーガールの思い通りにさせまいと、ジャンゴーは頭上へと高く跳躍してミラーガールに高威力の技をお見舞いしようと仕掛けてきた。
ミラーガールもこれに気付くも、反応が若干遅れてしまいジャンゴーの格好の的になってしまう。
しかし、そんな頭上に高々と跳躍したジャンゴーにフレッドと黄長瀬紬の両名が高威力の技と武器で、空中のジャンゴーを弾き落とした。
「ニャ、ニャニ!?」
空中で弾かれてしまったジャンゴーは攻撃を中断させられ、やむなく地上へと着地。そんなジャンゴーにミラーガールが急接近して特大の砲撃を連続で、それも0射程で撃ち込んだ。
このミラーガールの接近してからの連続砲撃を受けたジャンゴーは一気に弱まり、そんなジャンゴーを目視したミラーガールは後ろの黄長瀬紬とフレッドの両名に指示を投げる。
「みんな、今よ!」
ミラーガールの言葉を受けて、彼女の真意を察した黄長瀬紬とフレッドはミラーガールと共にジャンゴーに最終攻撃を打ち込み続けた。
その結果「…………ニャ、ニャ、ニャ~~ッ!!」体内の思想エネルギーが爆発し、ワイルド・ジャンゴーは爆発消滅した。
無事にワイルド・ジャンゴーを討ち破ったミラーガールは嬉々とした顔で共闘してくれた黄長瀬紬とフレッドに礼の言葉をかける。
「ありがとう、黄長瀬紬さん、それにフレッド。おかげで勝てたわ」
「へっ、どうって事ねえよ、ミラーガール」
ミラーガールからの礼を聞き受け、黄長瀬紬は喜々とした顔つきで返答する。
するとミラーガールの通信から、ジャンゴーの生体反応消滅を確認した的場甚三郎の声が。
「ジャンゴーを倒したんだな、ミラーガール!」
「ええ、でも……黄長さんとフレッドの助けがなかったら、危ないところだったわ」
「そうか。フレッドさん、私からも礼を言おう。君は我々の仲間……黄長瀬紬と共に闘ってくれた!」
ミラーガールの返答を聞いて、的場はフレッドにも例の言葉を賜った。
するとフレッドは過去の経緯を皆に語り明かしてくれた。
「黄長……あんたの姉さん……絹江は、俺の初恋の人だったんだよ。その昔、俺は鬼龍院装一郎と黄長絹江と共に生命戦維の研究に取り組んでいた。だが、絹江は既に三木杉と婚約していて……カッコ悪い話だが、それ以降は装一郎博士の巾着袋としてではなく賞金稼ぎに鞍替えしたんだ。でも……一度は愛した女の実弟を……そして愛した女が本気で惚れ込んだ男を死なせる訳にはいかない! ……瀬紬、あんたの姉さんの弔い合戦とまではいかねえかもしれねえが……俺も仲間に加えてくれねえか? さしてがましい事とは思っちゃいるが……」
このフレッドの告白を聞いて、的場甚三郎が言った。
「しかし、そうだな……君がここに居合わせたなんて大した偶然じゃないか」
すると同じくフレッドの告白を聞いたミラーガールも絹江の実弟である黄長瀬紬も語り出した。
「偶然……きっと絹江さんが私達を引き合わせてくれたんじゃないのかな?」
「そうだな……姉さんが俺たちを逢わせてくれたのかもしれないな……」
「絹江が……!?」
二人の言葉にフレッドは少なからず驚いた様子。
そして無事に戦いを乗り越えたミラーガールはフレッドに笑顔で言った。
「これからも、よろしくね。フレッド」
最初の出会いは最悪だったかもしれないミラーガールとフレッド。だが一人の亡き女性の元に、二人は、いや彼らは固い絆で結び付けられた。
[新世党の思惑]
その頃、陣頭指揮を執らせていたワイルド・ジャンゴーの死亡を確認した新世党は。
「ワイルド・ジャンゴーがやられました!」
「どうします? シャフトを……エレベーターを使ってミラーガールが侵攻してくるかもしれません!」
「落ち着きなさい。彼女は攻撃的な二次元人ではない筈です……スグに攻め込む様な真似はしませんよ、きっと……」
慌てふためく新世党の兵士たちに対し、その場の指揮を執っていたアマデウス・K・ドルシアは冷静な態度で落ち着かせる。
その陰で、新世党に降るしか自分達の権限が取り戻せないと踏んだ新世代型二次元人達は口々に文句を言い始めていた。
「まったく、何が総統よ……」
「別世界じゃ総統だが何だか知らないけど、今の私たちのリーダーはキャップ・ド・レッドなのよ」
「それなのに偉そうに……」
自分達がいた世界とは別世界である異世界で、総統にまで上り詰めていたアマデウスの指揮に対して癪に障る【リトルバスターズ!】の高宮、勝沢、山崎の三人。
すると、そんな三人にアマデウスは「聞こえていますよ」と物静かな口調で告げる。これには三人も衝撃が走る。
アマデウスとの会話を尻目に、新世党が一員、伊丹キョウジが苛立ちながら徘徊していた。
「まったく、こんな時に……キャップ・ド・レッドは自室に篭り切ったまま、セレディと羅暁の爺さん婆さんコンビは特別ルームで寛ぎやがって……セントラルエリアを任せていた山猫野郎がヤラレたっていう癖に……」
「そ、そう怒らないで。坊や……」
「オレを坊やなんて呼ぶな!」
「ぶほっ」
苛立つキョウジに同じ新世党の小野崎功が宥めようとするが、かえって逆上させてしまう。
「まったく、なんでキャップ・ド・レッドはアンタみたいな出来の悪い二次元人まで連れてきたんだ? 経営術しか役に立たない……戦場では無力なオッサンの癖に……」
「っ……」
殴り付けられ、地べたに這い蹲る功の髪の毛を掴みながらキョウジは文句を並べる。
そしてキョウジの苛立ちの矛先は、同じく戦闘タイプではない法月仁にも向けられた。
「テメェもテメェだ。なんで寄りによってキャップ・ド・レッドはアンタらみたいなのを……!」
「フッ、それはキャップが選んだ判断……そう、僕たちみたいに淡白な二次元人では想像もつかない思想を彼が抱いているからに過ぎない。彼の思想は、何者にも理解できないレベルまで向上している」
「けっ、それで自分も選ばれた事に初々しく喜んでいるって訳か! おめでたい奴らだな」
法月仁からの返答に、キョウジは掴んでいた功の頭を床に叩き付けるように突き放す。
小野崎功は顔面を強打された痛みで悶絶しながら立ち上がると、今度は法月仁に胸倉を掴まれてしまう。
「っ……!」
「しかし……あなたみたいな劣等な輩も選抜するだなんて、確かにキャップ・ド・レッドは物好きですねぇ」
眼前まで胸倉を掴まれて顔を近付けさせる仁の威圧した態度に功は何も言い返せないでいた。
すると次の瞬間、なんと法月仁の前歯がポロリと抜け落ちてしまった。長きに渡り、インペルダウンで投獄中に受けた拷問から数本の前歯は差し歯になっていたのだ。
この前歯が一つ抜け落ちた仁の間抜け面を目の当たりに、小野崎功は思わず吹いてしまった。
「プッ……」「ッ……わ、笑うなぁ!!」
前歯をペンチで強引に抜歯されるという拷問を受けた経緯で気にしていた歯を笑われた仁は頭に血の気が上り、小野崎功をボコボコに殴りつける。
「ぷはっ」
顔面が変形するまで殴打された小野崎功は、顔面血まみれの青あざだらけの状態で再び床に叩き付けられてしまう。
一方その頃、セレディ・クライスラーと鬼龍院羅暁は最上層階のVIPルームで二人だけで寛いでいた。
「ふふ、それにしても……ボクらと違って
「ふふ、もはや地上での地位など興味の欠片もない」
両者は互いに相手のグラスにワインを酌み交わして、今後の健闘を称え合おうとしていた。
セレディはグラスに注がれたワインの香りを堪能しながら羅暁に訊ねる。
「……ところで、貴女が過去より研究している生命戦維とはどんなものです?」
「うむ、地球外の物質らしいが詳しい事までは把握しておらぬ。私は生命戦維の研究で、娘の皐月と流子を用いたのだが、どちらも上手くいかなくてのう……まあ、研究の段取りはキャップ・ド・レッドが用意してくれた科学者共に任せておくわ」
そういうと羅暁はワインを豪快に一気飲みした。
「ふふ、そうですね。今のボク達は共有感知の解明と、その能力の共有に専念する事ですからね」
豪快に一気飲みする羅暁を前に、セレディは冷淡と対話すると手元の機械を操作して映像通信を始めた。
「時縞ソウイチ、そちらの研究は無事に着々と進んでいますか?」
「あ、ああ、セレディ閣下……はぁ、何とか進んでおります」
「期待してるよ。キャップ・ド・レッドの狙い通り、B.S.L内部には銀河連邦が秘密裏に研究した例のブツがごまんと揃っている。そのデータの収集にかき集めてくれ。迅速にね」
「は、はい……了解しました……」
時縞ソウイチとの通信を終えると、セレディは再び羅暁と対話を始める。
「しかし……ボク達が此処を拠点としてから嫌な事ばかり起きますね。謎の生命体Xによるバイオハザード、反乱組織ヌーディスト・ビーチ率いるレジスタンスとミラーガールの潜入……それ以前にキャップ・ド・レッドが自室に篭りっきりで、最上級の司令官に信頼の置ける人物を据えたまま姿を見せないとは……」
「まあ、それはそれで良いじゃろう。我らは我らの自由に、思惑を発展させれば……」
と、セレディ・クライスラーと
「いかんぞ、その様な体たらくでは!」
「こ、これは……!」「何じゃ、スカー・フェイスではないか」
二人の前に現れたのは、新世党が幹部の一人にして、キャップ・ド・レッドから絶大な信頼を得て右腕的存在となって、現在キャップ・ド・レッドの不在から新世党を総括しているスカー・フェイス。左目を除く顔面全体を黒いマスクで覆ったプラズマ・エネルギーすなわち電撃使いの駆動騎士型二次元人であった。彼は本来、鬼龍院羅暁の配下である鳳凰丸礼と針目縫を携えて、新世党全体の様子を確認してきたのだ。
スカー・フェイスの登場に、セレディ・クライスラーと鬼龍院羅暁は驚く中、スカー・フェイスは冷静な物言いで二人に熱弁した。
「総統は日夜、部屋にこもって我ら新世党の未来を考えてくれているのだ! 我らの様に手足の如く働く輩とは違うのだ!」
「そいつは失礼な……ボクだってちゃんと考えているつもりですよ。……ボクら新世代型二次元人の未来をね」
不敵な笑みを浮かべて語り返すセレディに対し、スカー・フェイスは改まって述べ始める。
「それなら結構……私も、総統に全新世党の指揮を任された身の上。お互い、新世党の……二次元人の未来のために奮闘しようではないか!」
「心得ておるとも。全てを掌握した我ら新世代型二次元人こそが、世界を安寧へと導ける唯一無二の存在なのじゃかのう……」
スカー・フェイスの健闘に対し、鬼龍院羅暁はほくそ笑みながら話し返す。
と、ここでスカー・フェイスが二人に報告を告げた。
「しかし戦況は少し此方が不利な方だ。ヌーディスト・ビーチ率いるレジスタンスの介入だけでなく、ミラーガールの潜入までも許してしまった。更に下層のメインデッキ付近で聖龍隊と赤塚組が確認された。これは一大事だぞ」
「それなら大丈夫ですよ、スカー・フェイス」
「ジャンゴーがやられたとはいえ、セントラルエリアはナビゲーターなどコンピューターに深く精通している者でない限り上手く扱えん。最下層の環境エリアに直通する転送装置も使えん以上、聖龍隊一行とミラーガールが遭遇する事は難しいじゃろう」
スカー・フェイスの報告を受けたセレディと羅暁は得意げに語ると、それにスカー・フェイスも同意する。
「……そうだな。それに、なぜかメインデッキから増殖を開始しているXなる寄生生命体は我々、新世代型二次元人には寄生しないと総統から報告が入っている」
「不思議ですね……普通の二次元人や三次元人には寄生する筈のXがボクたち新世代型には寄生しないとは……」
「ふふ、それだけ我々は高等な遺伝子を持ち合わさっておるという事じゃよ」
スカー・フェイスが告げた事実に、さほど驚く様子も見せずセレディ・クライスラーも鬼龍院羅暁も呆気なく納得してしまう。
すると此処でセレディ・クライスラーがスカー・フェイスに訊ねてきた。
「……ところでスカー・フェイス。例の話は本当かい?」
「例のと、仰ると……」
「今、捕縛している新世代型に通じている共有感知を更に向上させれば、思考だけでなく能力までも共有できるという総統の発言は。例えば斉木楠雄の様な高レベルのエスパーの能力や、纏流子や鬼龍院皐月の戦闘力……それらも共有できるというのは、本当なのか疑問でね」
「総統の仰ることは絶対だ! 間違いないだろう……」
なんと今現在、新世代型に発生している共有感知を更に高めれば、思考だけでなく特殊能力などの戦闘力も共有できるのかと疑問をぶつけるセレディに、スカー・フェイスは総統の発言は絶対だと信じ切っている御様子。
するとスカー・フェイスは啖呵を切って、こう切り出した。
「とにもかくにも、今は総統を信じて動くのみ! 我々は新世代型二次元人の共有感知を調査して、今後我らにもその能力が使える様に研究するのみ!」
スカー・フェイスに続いて、鬼龍院羅暁の配下である鳳凰丸礼が羅暁に報告した。
「今現在、纏流子の神衣、鮮血を剥がして特製の純潔を着衣させ、洗脳しているところです」
鳳凰丸礼に続いて針目縫も喜々としながら喋り出す。
「目を覚ました頃には、ワタシたちの仲間だよっ!」
この二人の報告を聞いて、鬼龍院羅暁は満足気な表情で言った。
「うむ、それはご苦労」
鬼龍院羅暁たちの会話を前にして、スカー・フェイスは何処か複雑な心境の中、熱弁した。
「どちらんしても我が同胞たちよ! 時は満ちた……我々、新世党が世界に名乗りを挙げる時はもうスグだ……!!」
総統であるキャップ・ド・レッド不在の中、総括を一任されているスカー・フェイスは勇ましく熱弁していくのだった。