現政奉還記 未来都市&宇宙編   作:セイントドラゴン・レジェンド

7 / 14
 前回、バイオロジック宇宙生物研究所、通称B.S.Lへと潜入した聖龍隊と赤塚組一行。カァチェンも非力ながら不在のミラーガールに成り変わり、HEADと共に潜入。しかし何故か研究所では「X」と呼ばれる寄生生命体が蔓延るというバイオハザードが発生してしまってた。この事実を前もって周知していた銀河連邦は、D-ワクチンから特別なワクチン剤を生成し、HEADや赤塚組に投与。だが調査の末、何故か三次元人と新世代型には寄生しない事実が判明する。一方で行方を晦ましていたミラーガールは変身能力で敵味方問わず惑わして、単身でB.S.Lへと潜入していた。そんなミラーガールが遭遇したのは、新世党への抵抗組織「ヌーディスト・ビーチ」の一員である黄長瀬紬と合流し、更にはレジスタンスを強いている多くの連行されてきた新世代型二次元人と対面する。そんな中、賞金稼ぎのフレッドの意外な協力により、セントラルエリアを統括していたワイルド・ジャンゴーを撃破。一堂にいる皆はセントラルエリアの奪還に成功するのであった。



現政奉還記 宇宙編 増殖と救出

[発端]

 

 ミラーガールたちが無事に強敵ワイルド・ジャンゴーを撃破したその頃。

 B.S.L全体を襲っていた停電が収束し、潜入していた聖龍HEADと赤塚組、そしてシバ・カァチェンは活動を開始し始めた。

 無論、この時は誰もがミラーガールたち黄長瀬紬らの行為によってB.S.Lが停電した事は周知していない。

 その停電が回復し、再びメインデッキにも電灯が灯った矢先、皆が待機しているナビゲーションルームから人工知能、俗称「修司」から通達が入った。

「HEAD、赤塚組、恐れていた事が現実となった。飼育エリアにXが侵入してしまったようだ。我々がB.S.Lの大停電の際に立ち往生している間の事らしい。セクター1で、異常事態が確認された。ただちに現場へ向かってくれ。セクター1とは……限りなく地球に近い環境を、忠実に再現したセクターだ。セクター1に向かうには……まず、メインエレベーターで中継エリアへ移動し、そこの1番のエレベーターで下降するんだ」

 更にコンピュータはこう告げた。

「目的地入り口にもナビゲーションルームがある。到着次第、アクセスしてくれ。まだ不明だが、何者かがXの侵入を促した可能性が高い。最初の爆発も、そいつの手によるものだろう。新世党が関わっている可能性も高い、十分に注意するように」

 人工知能コンピュータの指示により、HEADと赤塚組一行は急ぎセクター1へ向かうべくメインエレベーターに急いだ。

 

 道中、幾つもの急な段差がある高低差では、まずミズキとちせが鋼鉄製のワイヤーを引き上げ、それに他の者が捕まって上まで登っていくと言う難儀な動作を繰り返すばかり。

 

 そして難儀な道を通って、一行はメインエレベーターに到着して全員でセクターエリアへと通じる中継エリアまで下降していった。

 だが、そんな彼らが中継エリアに降りていった矢先、メインエレベーターの壁を突き破って何者かが現れた。

 その容姿は何と、緑色の肌に死んだ魚の様な眼球、生気のない瞳をしている以外は、小田原修司と同じ姿。

 その謎の人物は、メインエレベーターを跳躍すると眼前のハッチをエネルギー弾で強引に破壊して突き進んでいった。

 この爆発の衝撃は、メインエレベーターに搭乗して下降するHEADと赤塚組にも伝わった。そして中継エリアに到達した際にメインエレベーターは何故か停止してしまわれた。

 しかし立ち止まる事も出来ない一行は、すぐさま中継エリアからセクター1に下降するエレベーターに搭乗する。

 そしてセクター1に到達してスグ、彼らはナビゲーションルームで人工知能にアクセスした。

 するとセクター1の地図が表示される中、人工知能は一行に通告した。

「中継エリアに通じるメインエレベーターがダメージを受けたため、緊急停止装置が作動した。結果、メインエレベーターは現在使用不能だ。そのダメージの原因だが……これもやはり何者かによるものだ、事故ではない。被害状況から見て、この犯人は……かなりの破壊力を持っているようだ。ただの人間とは考えにくい。正体が分かり次第報告する。注意して行動するんだ。それと先ほど我々を襲った大停電なのだが……どうも幹部クラスしか滞在を許されていない最上層部と下層部を繋げるセントラルエリアで何者かが電気系統にダメージを与えたのかと思われる。新世党による仲間割れか……どちらにしろ、この件も改めて調査しておく。それでは本題に入ろう。セクター1に侵入したXが「空調システム」を停止させているようだ。目的は、自分達に適した環境を得る為だろう。既にセクター内のXは、急速に増殖し始めている。セクター内の空調システムは全てで5基だ。全てを見つけ出し、状況改善に全力を尽くせ。直ちに行動に移れ」

 まさか問題の大停電を引き起こした一件に、ミラーガールが関与しているとは夢にも思わない一行は、セクター1の環境を整える作業に移行していく。

 

 この時、赤塚組が着用しているのは政府が特別に見繕ったバイオスーツであり、ある程度の環境下なら耐え得る耐久性と柔軟性を兼ね揃えている。

 そんなバイオスーツに身を包み込んだ赤塚組の幹部達と、HEAD一行は各小部屋ごとの空調システムを改善するべく進攻する。

 部屋に着いた一行を待ち受けていたのは、Xが擬態した生物だった。一行は容赦なく擬態したXに攻撃し、始末すると即座に空調システムに目を向けた。

 すると空調システムはXが内部にまで侵入して温度や湿度を自分達に適した環境に落ち着かせていた。これを対処するには空調システムにミサイルを撃ち込んで内部のXを抹殺するしか手立てがない。

 赤塚組は持ち込んできたミサイルをバズーカ砲で発射して空調システムのXを駆逐。

 

 その後も次々と各空調システムに寄生したXを駆逐して行く。

 

 次々と空調システムを回復させていく一行であったが、不満も少なからず生じていた。

「タクッ、よりにもよって寄生生命体の駆除とはね」

「文句を言わない! 放置しておけば、それこそ宇宙的な被害に繋がるのよ!」

 不満を零す大将に赤塚組幹部のミズキが言い放つ。

「それにしても……D-ワクチンを投与されてなければ寄生されてしまうとは……しかも相手の寄生生物もまたD-ワクチンから派生した生命体。何かしらの因果を感じられずにはいられません……」

「そう言うな、カァチェン。オレだって駆逐作業は疲れちまったよ。けど最上層部にいる連中の為にも少しでも喰い止めねえと……」

「だけど心配だわ。新世代型の人達、無事だと良いんだけど……」

 何かしらの因果を感じられずにはいられないカァチェンにメタルバードが告げていくが、その傍らでコレクターユイが新世党によって連行されてしまった新世代型二次元人たちを心配する。

 

 

 HEAD一行と赤塚組幹部一行がXの駆逐に全力を注いでいたその頃。

 最上層階の下部、セントラルエリアでは奪還に成功したミラーガールたちが論議を醸し出していた。

「どうにかセントラルエリアは奪還したが……」

「いわゆる拠点、基地ってところだが……確かに立派なもんだけど、俺達だけじゃ宝の持ち腐れって奴じゃねぇの?」

 奪還に成功したものの、自分たちだけでは心もとない以前に上手くエリアを活用できないと的場甚三郎に指摘するフレッド。

 すると此処で黄長瀬紬が提案を持ちかけた。

「その通りだ。そこで提案がある。此処の最下層……飼育エリアに新世党に反抗した二次元人達が閉じ込められている。そこに美木杉愛九朗も捕らえられている筈だ」

「いわゆる捕虜収容所ね。そこで捕まっている二次元人達を助け出して、仲間に加えようっていうのね……」

「特に助け出して欲しいのは彼……伊織糸郎だ。彼は俺たちヌーディスト・ビーチに情報提供している鬼龍院羅暁の執事、揃三蔵の甥にあたる少年だ。彼は生命戦維で作られた極制服に詳しく、服のパワーアップもできると言われている。コンピューターにも精通しているため、このセントラルエリアの機能を復活させられるかもしれない……!」

 黄長の提案を聞いて納得するミラーガール。この黄長の提案に的場も同意する。

「上手くいけば、このセントラルエリアの通信機からB.S.L内部の仲間達と連絡が取れるかも……!」

「その通りだな。少なくとも、今現在B.S.Lに潜入してくれている聖龍隊と赤塚組に連絡が取れる様になるかもしれない」

 ミラーガールの話を聞いて、的場も意見を合わせた。

 そして議論が終わった後、一時的に解散した一同にミラーガールは話を聞いてみた。

「今はどうにか捕虜収容所に転送装置の行き先を変える事はできたんだが……オペレーターともいえる主要人物がいない限り変更はできない。まずは伊織糸郎たちを救い出す必要がある」

 的場甚三郎の言うとおり、まずは機材を上手く扱えるスタッフ的な人材が必要。ミラーガールはスグにでも出立しようと思ったが、その前にフレッドの姿が見当たらなかった。

 フレッドの姿を探し回るミラーガール。するといつの間にかフレッドの姿が見つかった。

「ようミラーガール……ようやく本腰を上げられそうだな。あんたが基地から出る時、出撃する時は、俺も必ず一緒に行くからな」

 いつでも一緒に行動すると申し出てくれるフレッドの言葉に、ミラーガールは期待が高まった。

 そしてフレッドと合流を果たして、早速転送装置で最下層の飼育エリアに向かおうとすると、休憩室で黄長瀬紬と多くの新世代型の仲間達が休息を取っていた。

「ミラーガール、あんたの活躍でセントラルエリアを取り戻すことができた。しかし、今も捕まったままの仲間達がたくさんいる。全員、新世党に協力を強制させられて困っているだろうに……。今回は、その新世代型の仲間達を救出するんだ! 頼んだぜ、ミラーガール」

 フレッドに続いて黄長瀬紬と合流を果たしたミラーガールは、これから向かう捕虜収容所になっている飼育エリアについて、休憩所の新世代型に話を聞いてみた。

「捕虜収容所になっているのは、新世党が特に進出していると言われているセクター6通称「暗黒セクター」とも呼ばれているジメジメしたエリアらしい。決して簡単な任務ではないだろうけど、君達なら大丈夫だろう。宜しく頼むぜ!」

 加納慎一から、これから向かう捕虜収容所に改造されたセクター6について聞いたミラーガールは他の面々にも話を聞いてみる事に。

「君達のお陰で我々は解放された、礼を言う! このエリアの警備は僕たちに任せてもらいたい。伝説の英雄ミラーガールに見習い、人々を守るため……この命をかけて、戦わせてもらおう!」

 力強い【革命機ヴァルヴレイヴ】のエルエルフの言葉を受けて、ミラーガールは次の人に話し掛ける。

「あなた達の任務には多くのレジスタンスの命がかかっているわ。プレッシャーをかけるつもりはないけど……頑張ってちょうだい!」

 指南ショーコの期待に応えるべく、ミラーガールは内心で強く意気込む。

 するとミラーガールは咲森学園の生徒たちに、自分達もレジスタンスなのか訊ねてみた。すると……

「僕たちはレジスタンスって訳じゃありません。一応、一般市民って事になっています。ですけど、新世党に連行されて逃亡している処をヌーディスト・ビーチに助けてもらって以降、協力を申し出てお手伝いさせてもらっています」

 次にミラーガールが注目したのは、看護に徹した姿に扮した咲森学園の生徒。

「やっとセントラルエリアを取り戻して、これからが本当の戦いになるのね……今度の戦いでも多くの兵士が傷付いた……私の様に元気な二次元人は傷ついたみんなの分まで一生懸命働かなくっちゃ!」

 こんなにも心強い皆々を前に、ミラーガールの闘志はより気高く己の戦意を高めるのだった。

 

 その後、ミラーガールはフレッドと黄長瀬紬の両名を携えて転送装置へと足を向かわせた。

 

 

[再会]

 

 転送装置でセクター6「暗黒エリア」に到達したミラーガールたち。

 三人という少ない戦力で進攻する手前、フレッドが愚痴をこぼした。

「的場のおっさんに咲森学園の連中、命令だけして俺達をこき使うつもりだぜ。それもタダで」

 このフレッドの不満にミラーガールが事情を説明する。

「彼は政治家タイプの二次元人だからね。それに咲森学園の生徒の一部はロボットに搭乗して戦うタイプの二次元人。実戦は私達の方が得意でしょ?」

 このミラーガールの意見に黄長瀬紬も「その通り!」と賛同する。

 二人の意見を前にフレッドは複雑な面持ちで零した。

「ま、分かってるって。俺も、でかい目的があるんだし、精々働かせてもらうさ」

「でかい、目的?」

 フレッドの目的とやらに関心が向くミラーガールと黄長。これにフレッドは動揺しながらも答えた。

「あ、ああ……もちろん、新世党をぶっ倒すって目的さ。ちんけな賞金稼ぎじゃなくってな。さっ、行こうぜ」

 

 こうしてセクター6を突き進む事となったミラーガールたち。

 セクター6は洞窟などの光が届かない環境を再現されており、実際に薄暗く遠視するのも難しかった。

 そしてミラーガールたちが転送装置で辿り着いた捕虜収容所は、洞窟をくり貫いたような天然の収容所へと改造されていた。

「こんなジメジメしたところに閉じ込められているなんて……」

「ああ、早く捕らえられている皆を救出しよう」

 先行をフレッドに任せるミラーガールと黄長は、一刻も早く一般の新世代型二次元人の救出を急いだ。

 

 そしてしばらく進行していると、洞窟の奥で二組の男女がさ迷っているのが目視された。

「おい、お前ら」「うわっ!」

 フレッドが声をかけると、その四人は一驚し、思わず跳ね上がってしまった。

 そして落ち着きを取り戻した四人が声をかけてきたフレッドと顔を見合わせると、なんと彼らは顔見知りであった。

「あ、あなたは……私達を誘拐しようとした……!」

「お前さんは……あん時の赤眼鏡の嬢ちゃんか」

 フレッドに話し掛けてきたのは、新世代型の栗山未来たち【境界の彼方】の四人組みだった。

 なぜ以前、自分たちを捕らえて身売りしようとしたフレッドが目の前にいるのか疑心暗鬼に駆られる四人に、ミラーガールがフレッドの後ろから前に出て訳を話す。

「安心して。フレッドは今、この黄長瀬紬さんと私とでレジスタンス活動中なの」

「ミラーガール!」「アッコさん!」

 久しぶりに顔を見合わせるミラーガールを前に、名瀬博臣は驚嘆の余り涙目になり、妹も美月も喜びの余りミラーガールに抱きつく。

「よかった、みんな無事?」「は、はい。なんとか……」

 四人の安否を気遣うミラーガールに、栗山未来が返答する。

 すると此処で、先ほどミラーガールが発した言葉に博臣が気付いた。

「れ、レジスタンス!? 逃げてくる途中、新世党の奴らが話してた抵抗組織の……!」

「そうだ。俺たちは打倒、新世党を掲げて活動中のレジスタンス! 俺はその同盟相手であるヌーディスト・ビーチの一員、黄長瀬紬だ! 以後、よろしく」

 驚く博臣に、黄長は威勢よく自己紹介する。

 と、ここでミラーガールは未来たちに問い質した。

「ところで未来ちゃん! 他のみんなは……」

「はい、それが能力を持っていない者と持っている者に分けられて、別のエリアに移送されてしまって……私たちも能力者という事で移送されかけていたのを隙を見て逃げ出したんですが……」

「でも私たち……みんなも助け出したいんです! なのに、私達だけ逃げ出せちゃって……」

 未来に続いて美月も苦しい胸のうちを打ち明ける。そんな二人にミラーガールも自身の胸中を曝け出してくれた。

「それは私も同じよ。あの時は私だけ姿を晦ましてごめんなさい」

「良いんですよ。こうして、ちゃんと助けに来てくれましたし」

 ミラーガールの謝罪に神原秋人は笑顔で返した。

 すると此処でミラーガールが提案を持ちかける。

「そうだわ……あなた達も能力や術が使えた筈よね!? だったら、申し訳ないけど一緒に戦ってくれるかしら? 戦力は今の処、私達だけなのよ」

「よ、喜んで!」

「此処まで好き勝手にしてくれた新世党に一発、お見舞いしてやらあ!」

 ミラーガールの提案に、未来や博臣たちは喜んで引き受けてくれた。

 こうしてパーティに栗山未来たちが加わった。

 

「……まずは下降まで降りて行きましょう。此処より下が、囚人を捕まえておく収容施設に改造されているんです」

「え、ええ、そうですね……まずは、この収容所に捕まっている人たちを助け出しましょう」

 名瀬美月と栗山未来の言葉を受けて、ミラーガールは邁進していく。

 すると一行の前に、巡回中の偵察機が。紅いレーザーに触れれば忽ち通報されてしまう。

「ちっ、見るからにイヤな奴が出て来たぜ。ミラーガール……お前さんの能力で奴の視界に入らないよう注意して進ませてくれよ。面倒はごめんだぜ」

 巡回中の偵察機を目視したフレッドは、ミラーガールに彼女の鏡の魔法で偵察機の目を誤魔化すように促す。

 ミラーガールは言われたままに、ミラー・シールドから虹色の光を放出して、自分達の周りを透明な半球状の囲いで覆った。

「みんな私から離れないでね。一定距離までしか、この透明バリアーは張れないの……!」

 ミラーガールはシールドを頭上より高く上げながら皆に説明する。

 そして歩みだすと、ミラーガールが張ってくれたバリアーの効果で、外側からは彼女達の姿は機械はおろか人間の目すら遮ってくれた。

 ミラー・バリアーで自分達の姿を隠して慎重に進んで行くミラーガール達。

 どうにか全ての偵察機から逃れた一行は、リフトで下の階層へと下降する。

 するとリフトで降りた先に、二体のゴリラ型警備ロボと一体のオオカミ型警備ロボが待機していた。

「ア……ダレダ? ダレガキタ……」

「貴様らはレジスタンスか!? 囚人は渡さん! かかれ!」

「テキ、テキ……タオス、タオス……グフォォォ……!!」

 片言のパワータイプのゴリラ型ロボに、速攻性を重視されたオオカミ型警備ロボとの戦闘に突入した一行。

 まずは司令等に徹しているオオカミ型を排除するべく、フレッドが特製の「フレッドリボルバー」を発射。驚異的な爆発でオオカミ型ロボを一撃粉砕。

 そして残ったパワーと耐久性を兼ね備えたゴリラ型二体を相手に、ミラーガールたちは奮闘し、どうにかゴリラ型も突破。

 

 合計で三体の警備ロボを片付けた一行は、再び前進する。

「話では、この先にみんなが……みんな、無事かしら……」

 新世党の警備兵から話を盗み聞いていた未来の不安そうな顔を目に、フレッドが言葉をかけてきた。

「あんた達のその顔……よっぽど仲良くなれたお友達らしいな」

「ま、まあ……此処まで遠路遥々、一緒に旅してきた人たちだもの。少しは感情が移るのは当然よ」

 照れ臭そうに語る美月の話を聞いて、フレッドは「まあ、それは中に入ってみれば分かる事だ」と吐き捨てる。

 すると此処でミラーガールは新世代型に起きている現象について訊ねた。

「そうね……ところで、あなた達の共有感知でみんなの居場所は特定できない?」

「それが……何か特別な装置が働いていてテレパシーが制限されているって話を斉木くんから聞いています。……共有感知の能力の調査だと言われて、斉木くんや琴浦春香といったテレパシー能力者が連れていかれてしまったんですが……!」

「それは一大事ね……どちらにしても、中にいる二次元人達から情報を聞き出せるかもしれないわ。まずは中に入って皆の安全を確保しましょう」

 神原秋人が申すとおり、共有感知の調査だと言われて別所に連れて行かれた一部の新世代型を捜索するべく、まずはこのエリアに捕らえられている新世代型の解放に向かった。

 

 こうしてミラーガールたちは制御端末を操作し、牢屋の中に閉じ込められている新世代型を次々と開放して行った。

 すると【のんのんびより】や【きんいろモザイク】などのキャラクター達が捕らえられている牢屋の奥に、見知らぬ新世代型が。

 ミラーガールは歩み寄って声をかけると、その新世代型は顔色を一変させてミラーガールに奇襲を仕掛けてきた。

「ひゃははっ、解放してくれてありがとよ? オレ様を偽者とは知らずに……ここで返り討ちにしてくれるわっ!」

 なんと人質達の中に偽者の、新世党の回し者が紛れ込んでいた。

 しかしミラーガールは咄嗟に、反射的に新世党兵士の腕を掴み上げ、そのまま一本背負いで投げ飛ばしてしまう。

 目を回してしまう新世党兵士に、同行していた黄長瀬紬と捕らえられていた面々が睨み付ける中、新世党の兵士は堪らず降伏した。

「わ……悪かったよ、もう降参だ。秘密を話すから勘弁してくれ。つい最近、俺たち新世党が研究している技術の一つ、生命戦維とやらに凄く優秀な輩が連れて来られてな。何処かで働かせているみたいだぜ」

 この話を聞いて、ミラーガールたちはスグにその人物が伊織糸朗である事実に気付かされる。

 ミラーガールは即座に新世党の兵士の首筋に空手チョップを打ち込んで気絶させると伊織糸朗の探索に入った。

 

 その頃、捕虜収容所に改造されているセクター6のコンピューターには、一人の少年が拘束されていた。

 この少年こそミラーガールたちが捜し求めている伊織糸朗。だが彼は強引にコンピューターに拘束され、無理やり新世党に働かされていた。

「異常はなしか?」「はい、ホーンド所長……」

 そんな伊織に声をかけたのは、ジャッジ・ザ・シティでも暴れ回った暴漢シルバー・ホーンド。

「分かってるとは思うが、おかしなマネをしやがったら見せしめに捕虜共をぶっ殺していくからな。例えキャップ・ド・レッドが必要だと自認している新世代型の同士であってもな……!」

「分かっています、所長……」

「それでいい。お前はもう、我々の傘下。新世党の一員である事を忘れるでないぞ」

 捕虜収容所の所長に襲名されているシルバー・ホーンドの命令に、伊織は反抗できなかった。

 すると此処でシルバー・ホーンドの通信に連絡が入った。

「おれだ……なに? 分かった、こっちに連れてきてくれ」

 通信を切ったシルバー・ホーンドは伊織の方を睨み付けると彼に言った。

「へへ、待ってろよ。お前に合わせたい奴がいる……お前にとっちゃ、懐かしい顔だけどな」

 そう言うとシルバー・ホーンドはその場から去って行った。

 

 それから数分後、収容施設のセキュリティを制御しているコンピュータ室にミラーガールたちが駆け込み、ようやく伊織とご対面できた。

「貴方が、本能字学園裁縫部部長の伊織糸郎くんね? 私はミラーガール、あなた達を助けに来たの」

「待ってろ。今、外してやる」

 黄長によって拘束具を外された伊織は、ここでようやく皐月ら本能字学園の仲間達や満艦飾一家と再会する事ができた。

 そして束の間の再会を喜んだ伊織は、ミラーガールに打ち明けた。

「皆さんが侵入してきた事、そして其処にいる栗山未来さん方が脱走したのが分かったので……システムに細工をして警報が鳴らないようにしていました」

「そうだったの、ホントにありがとう」

 ミラーガールの満面の笑顔を前に、少し照れてしまう伊織は続けて胸の内をミラーガールに打ち明ける。

「僕、脅されて……協力しないと、捕虜の人達を殺すって……それで……」

「分かってるわ、もう大丈夫。私達がみんなを助けてあげる」

 ミラーガールが伊織に激励すると、フレッドも続けて激励した。

「さぁ、この伊織や捕まえた新世代型を苦しめている親玉を倒しに行こうぜ」

 意気込むフレッド。だがその前に伊織がミラーガールに向かって発言した。

「僕は此処に残って、皆さんをサポートします」

「伊織、くん……?」

「……許せないんです。僕も、皆さんの手助けをさせてください」

 伊織の決意を認識したミラーガールは、現場の皆々に言い放った。

「分かったわ。伊織くんは新世党について調べてちょうだい。他の非戦闘型の二次元人はこの場に待機して! この先、危ないかもしれないわ」

 現場であるコンピュータ室に皆を待機させるよう言い渡すミラーガールは、再度伊織に話し掛ける。

「僕は、この場に残って情報収集を行います。このコンピューターなら……新世党について情報を得る事が出来るかもしれません。その間、ミラーガールは皆さんを……連行されてきた新世代型を救出してください!」

 伊織の決意に心強くなったミラーガールは、改めてパーティを組み替えた。

「俺は一緒に行くぜ。レディーだけに戦わせるのは無難だろ?」

「私も一緒に行きます! まだ捕らえれている二次元人がいるなら助けてあげないと……気が済まないんです」

 フレッドと栗山未来の申し出に、ミラーガールは引き続き二人も同行させる事を承諾した。

「俺は此処に残って警護にあたる。ミラーガールは他の新世代型と共に、他の同士を救い出してくれ」

 黄長は現場に踏み止まって残留する新世代型二次元人の警護にあたると一礼する。

「犬牟田、貴様はこの場に留まって伊織の補助に回ってくれ。元腕利きのハッカーなら、伊織よりコンピューターには精通しているだろ」

「心得ました、皐月様!」

 皐月からの指示に、犬牟田宝火も現場に留まる事に。

 ミラーガールは考えに考え、パーティをフレッド/栗山未来/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)の合計7名で進軍する考えを示した。

 

 

[7人の精鋭]

 

 フレッド/栗山未来/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)、そしてミラーガール。

 7人の精鋭で邁進するミラーガールたちは、その他にも捕らえられている新世代型を救出しに駆け続ける。

「ッ……ミラーガール、本当に申し訳ない。私の母が、まさか此処までの悪事に手を染めてしまったとは……昔から悪逆非道な面が目立っていたが、まさか新世党とかいうフザけた連中に手を貸すまでに落ちぶれてしまったとは……!」

「………………」

「そ、それに……貴女にはまだ知らせていませんでしたが、実は……」

「皐月ちゃん」「っ!」

「今は進軍に集中しましょう。話なら、いつでも……ゆっくり聞かせてもらうわ」

「は、はい……!」

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の複雑な事情を察したミラーガールは、優しく彼女に話し返す。これに皐月はハッきりと返事をした。

 すると進軍中、ミラーガールたちが入り込んだのは不思議なパネルが二つ、床に配置された部屋。その部屋には扉があったが、ロックされていた。

 と、その時、伊織から通信が入った。

「ミラーガール、僕の声が聞こえますか? そこから先の施設について情報を入手しました。良く聞いてください……」

 すると伊織に続いて犬牟田もミラーガールに告げる。

「ミラーガール、その部屋の中央に赤と青のパネルがある筈だ。そのパネルを正しい順番で踏むと扉のロックが解除されて先に進める様になる。間違うと警報装置が作動して、警備兵がやってくるから気をつけろッ」

 犬牟田の説明が終わると、伊織が再び話を始めた。

「その部屋の正解はこれです。よく聞いてください」

 すると床のパネルが音を発しながら順番に点滅した。これを見たフレッドは素っ気無く返答した。

「まぁ、要するに……光った通りに踏めって事だろ? 答えどおりに踏むだけなら簡単だな」

 するとフレッドは前にしゃしゃり出て、勝手にパネルを踏み始める。しかし彼は順序良く踏んだ為、警報装置は発動せず、警備兵も駆け付けなかった。

 これを機にミラーガールたちは一気に前進する。

 

 前進して行くミラーガールたち。だが目の前には硬く閉ざされた扉が行く手を阻む。

「おいおい……ここから先に進めそうにないぜ。伊織、ここの扉どうにかできねえか?」

「その扉は遠隔操作で開けられますので、今からシステムを復旧させます。ですが……起動まで、もう少し時間がかかりそうです……」

「分かったわ、焦らないで確実にお願いね」

 伊織からの返答を受けて、ミラーガールは焦らないようにと言付けする。

 

 そして数分後、巨大な扉が開いて一行が中へと進入してみると、其処には見慣れた学ランが。

「こ、これは……! 流子ちゃんの神衣、鮮血!」

 そこには頑丈で透明な箱の中に納められた上に、鎖で雁字搦めに拘束されている鮮血が展示物の様に閉じ込められていた。

(う、うぅ……ミラーガールか。ジャッジ・ザ・シティではトンだ目に遭わせちまって済まねぇ……た、頼む、ここから出してくれ……流子が、危ない……)

「! 流子が!?」

 鮮血の声を聞いた鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は、目の色を一変させた。

 そして皐月はミラーガールに嘆願する。

「み、ミラーガール! この鮮血を急いで解放しましょう……お願いします!」

「え、ええ、構わないけど……」

 ミラーガールは快く鮮血の解放に承諾した。

 そしてミラーガールは魔力で一時的に切れ味を倍増させたミラー・ソードで鮮血を封じ込めている鎖を断ち切った。

 解放された鮮血を手に、皐月は鮮血を問い詰めた。

「せ、鮮血とやら! お前は……流子が今どこにいるのか知っているのか!?」

(す、済まねえ、それはオレにも分からねぇ……ここに連れて来られた時に、強引に流子の身体から引き剥がされちまって……オレも流子も別々の場所に移されちまったんだ……)

「そ、そんな……!」

 鮮血の話し声を、共有感知を通して周知する現場の新世代型二次元人。しかし旧世代のミラーガールには何を話しているのかまでは理解できなかった。

 すると此処で皐月は鮮血に申し出る。

「……鮮血、少しばかり私の力になってくれないか?」

(へっ? 力に……)

「流子が戻ってくるまでで良い。私に神衣である貴殿を着させてくれないか?」

(ええっ!? で、でも、オレ様を着ていいのは流子だけって決めているんだけどな)

「頼む! 貴殿も共有感知を通して知っているだろう、私と流子の関係……そして因果を」

(………………)

「私は、その因果を全て断ち切るために今まで奮闘してきた! そしてようやく巡り会えたのが……! 頼む! 少しばかりの猶予で良い、私に力を貸してくれ!」

 神衣である純潔を奪われてしまった今、頼りになる神衣は鮮血以外にいないのが現状。

 この事実を突きつけられ、更に共有感知で以前、皐月と流子の関係を知った鮮血は迷いに迷った末に、皐月の提案に承諾した。

(う~~ん…………分かった! お前さんに協力してやるぜ! 一緒に流子を助けようぜ!)

「あ、ありがとう……鮮血!」

 鮮血と皐月、二人の対話が終わったのを何となく察したミラーガールは二人に話し掛ける。

「さあ、急ぎましょう。伊織くん達が待ってるわ」

「え、ええ……!」

 ミラーガールの問いかけに、皐月はスグに鮮血を着衣して万全の状態へと身を整える。

 

 そして一行が捕らわれていたヨドやエイミーたち【彗星のガルガンティア】のキャラクター達を解放し終えた、その時。

「うわぁぁぁぁ~~!!」「ひぃ~~っ!」

 突然、絹を裂くような悲鳴が洞窟内に響いてきた。

「今のは……伊織の声だぜ!? 左の方から聞こえて来たぞ!」

「それに同じく悲鳴をあげたのは、伊織の叔父にあたる私の執事、揃三蔵の声だ!」

 悲鳴の声を聞いて、声の主が伊織であると告げるフレッドに対し、皐月はもう一方の悲鳴は伊織の叔父である揃三蔵であると皐月が叫んだ。

 二人の悲鳴を聞いて、ミラーガールは慌て返した。

「伊織くんに……揃さんに何かあったのよ! 行ってみましょう!」

 

 一行が悲鳴が聞こえてきた方向に向かって走って行くと、その先は水流が激しく流れ込む飼育エリア内。

 そこでの惨状は目を見張るものばかりだった。なんと伊織たちと共に残留していた【ガンダムビルドファイターズ】や【プリティーリズム・レインボーライフ】等の面々が満身創痍で壁や床に転がっていた。

「ひ、酷い……!」

(ウソだろ!? 満艦飾の一家までフルボッコじゃねえか……!)

 目の前の惨状に衝撃が走るミラーガールに一驚する鮮血。

 すると彼らの目前には、床に倒れる伊織と揃三蔵の姿が確認された。

「あれは……!? 伊織くん!」「揃!」

 ミラーガールと皐月たちが急いで駆け寄ろうとした矢先、そんな床に倒れる満身創痍の二人を踏み付ける巨大な足の主シルバー・ホーンドが皆の前に立ちはだかった。

「貴様らか、おれ様の収容所で、こそこそしてやがったのは……!?」

 シルバー・ホーンドは伊織と三蔵を踏み付けながら、眼前のミラーガールたちに語り出した。

「ふん、バカな奴らだ。我々、新世党にたてつくとはな」

 この立ち振る舞いにフレッドは怒りを露にしながら言い返した。

「あんたが此処の親玉か。伊織と爺さんを……みんなをどうした?」

 フレッドの問い掛けに、シルバー・ホーンドは不敵な笑みを浮かべる。

「この小僧は余計な真似をしやがったから、お仕置きだよ。ついでにこそこそと情報を流していやがった、このジジィも始末してやる」

 そう言いながら、シルバー・ホーンドは伊織と揃を踏み付ける足に力を込める。

「やめて!」

 人一人軽く踏み付けられる巨大な足で伊織たちを痛め付けるシルバー・ホーンドの惨さにミラーガールが待ったをかける。

 すると二人を踏みつけながらシルバー・ホーンドは得意げに語り始めた。

「弱っちい奴らは力のある者に従ってりゃいいのさ。おれ様には……新世党にはその力がある! ちっぽけなゴミムシどもは、ぐふふ……このパワーの前にひれ伏すのだ!」

 弱者は強者に従っていればいいと吐き捨てるシルバー・ホーンドの暴言に、ミラーガールたちの怒りは徐々に込みあがって行く。

 すると此処で、シルバー・ホーンドは鮮血を着た皐月を見て口を滑らせた。

「……ん? お前は、纏流子? いや、違ったか……あの弱っちい纏流子なら、今セクター2の研究所で改造されていると聞いているからな」

「なに! 流子が……!」

 シルバー・ホーンドの口から流子の現状を耳に入れた皐月は、目を見開いてシルバー・ホーンドに問うた。

「貴様……なんと言った? 流子が、弱い……だと?」

 するとシルバー・ホーンドは更に踏み付ける足に力を込めて自慢げに話し出した。

「弱い弱い、話にならんよ。己の出生の秘密を知った途端、暴走しちまいやがったバカな小娘は、高度の再生蘇生能力があった。だからおれ様が、見せしめにこの手で身体をぷちぷちと引きちぎってやったよ。ぷちぷちとな……グワハハッ」

 弱者を人とは思わないこのシルバー・ホーンドの暴言に、ミラーガールたちの怒りは限界を迎えていた。

 と、その時。「ぐおっ」シルバー・ホーンドに皐月が不意打ちを喰らわした。

 シルバー・ホーンドが皐月の不意打ちを喰らった瞬間、ミラーガールはハッと気がついて周囲のホーンドに叩きのめされた新世代型たちを助け出し、慌てて室外へと退出させる。

 一方の皐月は、怒り心頭でシルバー・ホーンドに言い放った。

「流子が弱い? 私のたった一人の妹、流子が弱いだとぉ!? ……ふざけるなあ!」

 今まで見せた事のない表情で怒り狂う皐月は、シルバー・ホーンドと戦闘を開始してしまう。

 

 

[水の要塞]

 

 纏流子を愚弄されただけに非ず、伊織糸朗や揃三蔵たち新世代型の同胞を痛め付けた悪逆非道なシルバー・ホーンドに向けて鬼龍院皐月は只ならぬ敵意を示した。

 そんな禍々しく風貌を変化させた皐月を前に、シルバー・ホーンドは戦意満々で挑む。

「ぐはははっ……覚悟しろよ?」

 するとシルバー・ホーンドは全身を水で覆い始める。そこに皐月が斬りかかるが、なんとホーンドを覆う水のコーティングが攻撃を弱体化させてしまう。

 更にシルバー・ホーンドは必殺のタイダルウェーブを仕掛けてきた。大量の洪水が戦前で戦う者に強襲する。

「うわっ」

 強烈な鉄砲水の如き大波に飲み込まれて悪戦苦闘するミラーガール。

 やられっ放しではいけないと、蛇崩乃音や蟇郡苛(がまごおりいら)そして猿投山渦(さなげやまうず)たちがシルバー・ホーンドに向けて攻撃。

 しかしホーンドに覆い被さる水の防壁で防御性能を各段にまで向上させて、あらゆる攻撃を防いでしまう。

「な、なんなのよ、あの水は!」

「全部の攻撃が弱体化しちまっている!」

 乃音や猿投山はあらゆる攻撃を弱体化させるシルバー・ホーンドの能力に圧倒されてしまう。

 すると正しく水の要塞の如きシルバー・ホーンドは、角部からショックゲイザーを発射。眼前まで接近してこようとした猿投山の足元を氷漬けにしてしまった。

「わッ! う、動けない……!」

 足元を凍らされて思う様に身動きが取れない猿投山にシルバー・ホーンドは巨体で迫ろうとする。

 危うし猿投山。だが、そこにミラーガールが駆けつけ、電撃系の技でシルバー・ホーンドを退かせた。

「ぐおっ」

 電撃を浴びて苦しむシルバー・ホーンドを退かせたミラーガールは、速攻で猿投山の足元を凍て付かせる氷をミラー・ソードで打ち砕いた。

 感謝する猿投山がミラーガールを凝視してみると、なんとミラーガールの服装がガラリと変わっており、あのセーラージュピターのコスチュームにへと変化していたのだ。

 ミラーガールは前もって、セーラージュピターの格好に変身して彼女が得意とする電撃系の攻撃技でシルバー・ホーンドを攻撃したのだった。

 

 だがシルバー・ホーンドも黙ってやられてばかりではいなかった。

 水流の水を操り、全身を更に水で包み込んで水属性攻撃能力と、防御性能をアップさせた。

 そして角部から撃ち出すエネルギー弾、アピスプレッシャーで眼前の新世代型二次元人を一掃してしまう。

「うわあっ!」

 吹き飛ばされる蛇崩たち生徒会の面々。しかし皐月のみは吹き飛ばされないよう、しっかりと地に足を踏み付けていた。

 ここでミラーガールが再び変身。

「一気に行くわよ!」

 ミラーガールは近接戦闘に特化した黄金のアーマーを装着。エネルギーを充填して、高エネルギーの砲撃を連続でホーンドに接近発射。大ダメージを与える。

 するとこのミラーガールの活躍を見た新世代型も闘志を燃やした。

「私も行きます……!」

 鬼龍院皐月も鮮血と共にシルバー・ホーンドへ特攻。大ダメージを与えられた。

「さて、勝負だ」

 更にフレッドも負けじと自ら容姿を透明化させ、ホーンドの攻撃を回避する。

 一気に戦況が転覆したシルバー・ホーンドは、最大火力の全体攻撃タイダルウェーブを発動。だがミラーガールがここでミラー・バリアーを展開し、タイダルウェーブをミラー・バリアーで防いだ。

 そしてシルバー・ホーンドに特攻したミラーガールは、ホーンドの体力が残り僅かになっている事を長年の直感で感じ取り、皆に言い放った。

「みんな、一気に行くわよ! ……ファイナルストライク!!」

 チーム全体で攻撃を仕掛けるファイナルストライクでトドメを刺そうと試みるミラーガール。

「ぐおおおおっ、ぐおおおおおおおっ……!!」

 爆撃に斬撃、接近攻撃に遠距離攻撃など数多の攻撃を一身に浴びたシルバー・ホーンドは絶叫。

 そして

「ぎゃあああ~~……!!」

 体内の思想エネルギーが爆発して、シルバー・ホーンドはミラーガール達に倒れたのだった。

 

 粉砕したシルバー・ホーンドを前に、皐月は目に涙を浮かべた。

「纏流子は……私の妹は……貴様の様な輩に……母上の様に、力で全てをねじ伏せる様な輩共の思い通りにはさせない!」

 そして皐月はミラーガールに顔を向けると、突如として語り始めた。

「ミラーガール、聞いてください……纏流子は……彼女は……私の生き別れた妹なんです!」

「え!」初めて真相を聞かされるミラーガールは驚きの余り、目の色を変えてしまう。

 その後も鬼龍院皐月はミラーガールに事の真相を包み隠さず、己が心中を打ち明けるが如く語り続けた。

 

 実は皐月は母の羅暁が生命戦維と融合させる実験台として産み落とした子供。だが、実験開始時、既に一歳半だった彼女では十分な親和性が得られず失敗。

 そのため、翌年生まれた生後間もない妹が生命戦維と融合させられるが、心拍数が途絶えた事から皐月同様失敗と判断され、しかも飽くまでも実験台としか見做されていなかったために救命措置も行われず、ゴミ同然に棄てられた事実の一切を父・鬼龍院装一郎から聞かされた。当時五歳。

 この年端もいかぬ年齢で真実を聞かされた皐月は笑う事をやめ、父の意思を継いで母への叛逆と殺された妹の復讐を誓い、羅暁に牙を突き立てる日を夢見て精進して来た。

 それ故に皐月の今まで行った数々の施策や暴挙、本能字学園による全国学園支配及び全国の十代への生命戦維入りの制服の強制配布の意図は全て生命戦維の打倒を目的とした行為であり、本能字学園は皐月に従属する配下と生命戦維と戦うために鍛え上げられた精鋭を集結させ、羅暁に反旗を翻す為に作った城だった。

 この計略を知っていたのは生徒会四天王と裁縫部部長の伊織糸郎、そして鬼龍院家で唯一信頼を寄せる執事の揃三蔵のみであったという。

 

 ずっと従うふりをしながら生きてきた皐月の辛い胸中を知ったミラーガールは胸を締め付けられる想いで皐月の話を聞き続けた。

「私は……本当は聖龍隊の様な……ミラーガールの様に、弱いものに手を差し伸べる英雄になりたかった。だけど……! それよりも妹の仇を討ちたかった……!!」

 本当は母の様に弱者を虐げる存在ではなく、弱者に手を差し伸べる、それこそミラーガールのような英雄になりたかったと告白する皐月の言葉を聞いて、生徒会四天王と伊織糸朗、そして揃三蔵は涙を流した。

「ミラーガール、私は……!」

 自分は結局、目的の為ならば力尽くで人を支配する羅暁と同じだと述べようとする皐月の心中を、共有感知で感じ取った新世代型たちは皐月の話を断ち切った。

「ま、あれだね。新世党の様な連中がいる限り、極制服を着た戦士が味方になってくれるだけでも有難い話って話。そして何よりも戦い続ける……そうじゃないかい、みんな!」

 どんな過去があろうとも、共闘してくれた彼女の力強い言動に反対の意思はないと主張する名瀬博臣。

「俺は極制服を……生命戦維を断とうと躍起になっていたが、同じ目的を持つ同士をあしらう真似はしたくない。鬼龍院皐月、実母とはいえ残忍極まりない羅暁を倒すため、俺達と協力し合おうではないか!」

 黄長瀬紬も皐月の苦しい胸中を知って、共に戦い合おうと宣言する。

 そして最後にミラーガールが温かい面差しで皐月に問いかけた。

「皐月ちゃん……実のお母さんと戦うのは辛いでしょうが、私達と一緒に戦ってくれる?」

「ッ……覚悟はできています、ミラーガール!!」

 皐月は涙を拭うと、ミラーガールと篤い拍手を交し合った。

 

 

[最悪の敵]

 

 セントラルエリアに帰還したミラーガールたちは、まずシルバー・ホーンドの拷問で痛め付けられた二次元人たちを看護し始める。

 そんな中、ミラーガールは無事に保護した新世代型たちに訊ね回った。

「ねえ、全員無事なの? 見当たらない子も結構、いるけど……」

 心配そうに訊ね回るミラーガールに、新世代型のイオリ・リン子が答えた。

「み、ミラーガール……それが、斉木くんたちにチョコちゃん、そして春香ちゃんたちが別のセクターに連れて行かれたみたいなの……」

「ほ、ホントですか!? それで、イオリさん、チョコちゃん達は何処のセクターに……?」

「それが……私にも詳しくは。能力者とその作品関係者ごとに移送されたって話は、看守達から聞いていたんだけど……」

「そ、そうですか……教えてくださって、ありがとうございます」

 ミラーガールはイオリ・リン子に礼を述べると、そのまま通路を進もうと前進しようとした。

 が、その矢先、ミラーガールを呼び止める声が。

「ミラーガール!」

「……犬牟田くん?」

「ミラーガール、あいにく外部との通信は新世党の妨害電波で阻害されてしまっているが、内部との通信は全快した! これで同じB.S.L内部にいる筈の聖龍HEADや赤塚組の幹部達と連絡ができるぞ!」

「そ、そうなの!? ありがとう、犬牟田くん!」

 ミラーガールに内部通信が可能だと伝えた犬牟田。彼にミラーガールは心からの礼を申し述べると犬牟田は顔を真っ赤にして照れ臭がった。

 

 

 その頃、メタルバードと大将が率いる一行は、無事に全空調システムを回復させ、任務を終了させた。

 全ての空調システムを回復させた一行は、セクター1の出入り口にあるナビゲーションルームに帰還する。

 そしてナビゲーションルームへと戻ったメタルバード達はアクセスした。

「空調システム5基は、全て正常に作動し始めた。しかし、このセクターで増殖したXは既に……他のセクターにも、侵入してしまったようだ。そのセクターとは……セクター2、熱帯環境を再現したセクターだ。今回の侵入経路も、何者かが手引きしたようだ。そいつは今、セクター2を移動中の様だ。HEAD、赤塚組、ただちにセクター2へ向かえ。トラブルの元を断つチャンスかもしれない。では行動に移れ。詳しい経緯はセクター2のナビゲーションルームで伝える」

 

 人工知能との会話を終え、一行はエレベーターでセクター2へと移動する。

 だが、エレベーター上昇中にHEADはまた小田原修司の事を思い出していた。実際の修司はHEADのよき理解者だった。彼らもまた修司を信頼していた。

「同志諸君、武運を祈る」指令などの最後に、修司が口癖のように付け加えた言葉。皆が必ず同意すると承知の上で修司が発したこの言葉は、彼らの信頼関係の象徴だった。

 この修司の様な人工知能とHEADは、どのような関係を築いていくことになるのだろうか。

 

 そして一行は中継エリアから乗り継いで、セクター2へと移動を終えてナビゲーションルームで再び「修司」にアクセスしようとしていた。

 と、その時。今まで未接続だった聖龍隊の通信機から着信音が鳴り響いた。

「! こちらメタルバード……」

「バーンズ、私よ」

「アッコ! ミラーガール、無事だったか」

 思わず通信機を取り、受け答えするメタルバードは通信の相手が今まで行方知れずになっていたミラーガールだと知って大いに喜ぶ。そしてミラーガールは現在の自分の状況と、メタルバード達に向かってほしい場所を示した。

「私は今、新世党に連行されてきた二次元人たちといるわ。全員じゃないけど、ほとんどの一般二次元人は解放できたわ。今、私達はB.S.L上層部のセントラルエリアに滞在して、拠点にしているの。此方で転送装置を使える様にしたから、みんなもこっちきて戦略を練りましょう!」

「そうか、それは大変だったろうな……だけど全員は無理だ。こっちには三次元人のカァチェンがいるんだ、三次元人を転送装置に乗せる訳にはいかねえ」

「それもそうね……今、こっちのコンピューターで把握しているけど、メインエレベーターが停止しちゃっている今、カァチェンに自力で来てもらう訳にはいかないし……」

 未知の科学技術で作られた転送装置に三次元人のカァチェンを乗せる訳にはいかないと言い出すメタルバードの発言に、ミラーガールも困惑してしまう。

 このミラーガールとメタルバードの物議に、問題視されているシバ・カァチェンが話に入ってきた。

「あの、皆様方……Xは三次元人の私にも寄生しないといわれております故、私だけセクター2に残っても大丈夫ですが……」

「だ、だけどな、カァチェン……」

「ミラーガール殿がご無事だと分かっただけでも安心しました。私はナビゲーションルームで待機していますので、皆様方は転送装置でミラーガール殿の元に……私はメインエレベーターが機能を回復した後に、会いに行きますので……」

「そ、そうか……そりゃ、悪いな」

 メタルバードは申し訳なさそうにカァチェンに言うと、二次元人の仲間を引き連れて出入り口近くに設置されている転送装置でミラーガール達がいるセントラルエリアへと出立した。

 

 転送装置で無事にセントラルエリアに辿り着いたメタルバードや大将たちを、新世代型たちは温かく迎え入れた。

「バーンズ!」「メタルバード! よく来てくれた!」

 英雄集団である聖龍隊の登場に、新世代型たちは大いに活気盛んだ。

「貴方が赤塚組を指揮している頭領の赤塚大作ね。私はレジスタンスに協力しているラケージ海賊団が船長のラケージだ。一緒に新世党を倒しましょうよ!」

「おうっ、こりゃまた豪くベッピンな女だな! そう、俺は泣く子も黙る赤塚大作! 宜しくな!」

 互いに腕を組み合う大将とラケージは意気が合いそうだ。

 と、見知った顔馴染みが勢ぞろいしたのを視認したミラーガールは、通信で最下層に残っているカァチェンに言い伝えた。

「カァチェン、そっちのコンピューターにアクセスしたいから、そっちからコンピューターを起動させてくれない? 銀河連邦から派遣されたっていう人工知能と話したいのよ」

「はい、承知しました……」

 カァチェンはか細い声で応答すると、一人ナビゲーションルームに入ってコンピューターにアクセスし、メタルバードたちと共にやって来た人工知能と対話を試みる。

「此方ミラーガール、貴方が銀河連邦が派遣した人工知能なの?」

 すると人工知能はミラーガールに応答した。

「その通りだ。ミラーガール、君もこのB.S.Lに潜入していたのか」

「ええ、まあね。変身能力ほど、潜入活動に打ってつけの能力はそうそうないわ」

「なるほど、言われてみればその通りだな。そして君だけで捕虜として捕らえられていた新世代型を解放した訳か」

「私だけじゃないわ、こっちはこっちで仲間がいたから、みんなを助け出せたのよ」

「そうか……ではもしや、先ほどB.S.L全体を襲った停電は、君たちの仕業か?」

「は、ははは……やっぱり迷惑かけちゃいました?」

 苦笑するミラーガールに対し、人工知能は愛想のない応答で返事した。

「やはりそうだったか。新世党による内輪もめならまだしも、あの停電は予想していなかった。言っておこう、私は銀河連邦の名の元にB.S.Lにおける全ての権限を委ねられている。今後は勝手な行動は慎むように……」

「は、はい……」

 人工知能に注意されたミラーガールは、小さく頷く。

 そんな人工知能の言動に、新世代型たちは「ちぇっ、偉そうに……」と愚痴を零す者まで現れた。

 しかもこの時、メタルバードは遂うっかり言葉を零してしまう。

「……ホントに修司そっくりだ」「え?」

 コンピューターに向かいながら人工知能と対話するミラーガールの傍らで突っ立っていたメタルバードの言葉を耳に入れて、ミラーガールが反応するとメタルバードは耳打ちで彼女に伝えた。

「このコンピューターの言動、まんま修司そっくりなんだよ。だから俺たちは俗称で修司って呼んでいるんだ」

「へぇ……」

 婚約者である小田原修司と言動が瓜二つの人工知能に俗称をつけていた事を初めて知らされるミラーガール。

 すると人工知能は「こら、話を聞きたまえ」と注意を促す。これにメタルバードもミラーガールもビクッとなる。

 

 そして再び話を始めた人工知能、俗称「修司」は信じられない通達をセントラルエリアに移動したメタルバードや滞在していたミラーガール、そして単身セクター2に残留しているカァチェンに伝えた。

 セクター2の地図が表示される中、俄かには信じ難い内容だった。

「トラブルを引き起こしている犯人が判明した。そいつの正体は……諸君、あの小田原修司に擬態したXだ。以降、この敵を小田原修司のイニシャルからとって「SO-X」と呼事にする」

 そう、B.S.L内部で寄生生命体Xを手引きしていたのは、小田原修司に擬態しているX、通称SO-Xであったのだ。

 この事態に人工知能「修司」はこう推測した。

「恐らく突然変異で生まれたXは、元の遺伝子主である小田原修司のDNAを最初にコピーしたのだろう。そして……闇の心(ダーク・ソウル)の能力で爆発を起こし、外に出たのだ。特別保管後の爆発は、まさにこれが原因だ。この爆発によって、保管庫内のカプセルは全て破損し、中にいたXは残らず脱走してしまった。そして数々のトラブルを引き起こしているのだ。しかし最も厄介なのは、やはりSO-Xだ。SO-Xはベストコンディションの小田原修司に擬態している。今の君たちに全く勝ち目はない。もしSO-Xに出会ってしまったら、とにかく逃げろ。決して戦おうなどと考えるな。何故なら……君達の特殊能力は全て小田原修司の闇の心(ダーク・ソウル)によって無力化されてしまっている。このSO-Xに対処するには、D-ワクチンから作り出されたワクチンビームが効果的だろうが……ワクチンからビームを生成するのは技術的に難しいようだ。どちらにしろ、SO-Xには十分注意して行動せよ」

 人工知能は更に新世党に立ち向かうレジスタンスとヌーディスト・ビーチに告げた。

「君達の協力は非常に嬉しい限りだが……B.S.Lに不法侵入したのは新世党とは変わりない。その点は胸に留めておいてくれたまえ」

 頭ごなしから告げていく人工知能に多少の苛立ちを感じ始める新世代型達。

「どちらにしろ、今後は私の指示に従ってもらう。新世党の妨害電波で外部との連絡が取れない以上、私の指示は絶対だと自負しておくように。ではミラーガール、新たに戦力に加わったメンバーを従えて活動せよ。此処にいる面々と相談して、誰がセクター2に向かうべきか考える事。以上」

 そう語り終えると人工知能は勝手に通信を切ってしまう。

 この人工知能の独壇場に、現場の皆々は困惑するばかり。

 

 

[懸念]

 

 人工知能との対話が一方的に切断された現状に、戸惑い困惑し、更に淡い苛立ちを覚える中、ミラーガールは険しい顔付きで的場甚三郎に訊ねる。

「……ところで的場甚三郎さん、セクター6の捕虜収容所には例の美木杉愛九朗さんはいなかったんだけど……」

「ああ、ミラーガール、それが困った事態だ。美木杉博士がいないと何も始まらない。彼が今、何処にいるのかだけでも判明すれば良いのだが……」

 肝心の美木杉愛九朗の不在に、ミラーガールも的場甚三郎も困り果ててしまう。

 すると此処で、セントラルエリアのコンピューターで新世党について調べていた犬牟田宝火が朗報を運んできた。

「ミラーガール! 今、判明したんだが……セクター2で新世党が何らかの研究を行っているという事を突き止めた! 研究と言えば、もしかして……」

「ええ! 美木杉愛九朗さんが其処にいるかもしれない……!」

「も、もしかすると……流子もそこにいるのでは……!」

 犬牟田からの朗報を聞いて、ミラーガールと鬼龍院皐月は美木杉愛九朗だけでなく纏流子ら他の新世代型二次元人がいるのではないかと憶測する。

「ちょうどいい! オレ達もセクター2に移動していたところなんだ! SO-Xに会うのは怖いが、まだ救出していない新世代型達がいる可能性があるなら、行ってみるのも悪くないかもな」

 メタルバードもSO-Xに若干の恐怖心を抱いているが、未だ捕らえられている新世代型を救出するために動き出そうと閃く。

 そしてミラーガール達は作戦会議に移行し、誰がセクター2に向かうべきか議論が醸し出された。

 

 

 丁度その頃、ミラーガール達がいるセントラルエリアの一つ上の階層、幹部クラスしか立ち入れない最上層部では軽い揉め事が勃発していた。

「おい! どういう事だ? 敵は目前まで迫っているのに、手を出さねえとは……」

「ホントだよ! ボク早く聖龍隊と戦いたいのに……」

 物凄い剣幕で総統キャップ・ド・レッドに成り代わって現場を指揮するスカー・フェイスに言い寄る伊丹キョウジと針目縫。

 そんな面々を前に、スカー・フェイスは冷静な物言いで皆を落ち着かせる。

「総統のご命令だ。ミラーガールと合流を果たす前であろうと後だろうと、彼女達には手を出さないと」

「ちょっと、それどういう事!? ボクちゃん本物の戦士だっていう聖龍隊を殺る気満々だって言うのに……!」

 聖龍隊に殺意を燃やす針目縫の言動を前に、スカー・フェイスは動じず眼前でいつ聖龍HEADが総力を挙げて攻めてくるか脅える新世党の面々に説いた。

「そうダダをこねるな。案ずるな、総統には総統なりの目論見がある……彼らを働かせればいいのだ」

「働かす?」

 スカー・フェイスの一言に反応したセレディ・クライスラー。するとスカー・フェイスは胸を張って新世党の同士に熱弁した。

「その通りだ! 確かに現状、寄生生命体Xは何故か我々、新世代型には寄生しない事実が確認されている。しかしいつ何時、我々にとって有害な行為を働くか分からぬ。其処でだ……政府の命で動いている奴らを自由にしておけば、このB.S.L内部でのX騒動を自然と片付けてくれる筈だ。ゆえに大事は起きない筈だと、総統は模索しているのだ」

「なるほどな……Xの後片付けを奴らが勝手にやってくれれば、此方は此方で自由に活動できるという訳じゃな」

 スカー・フェイスの説明を聞いて、鬼龍院羅暁も納得する。

 自分の話を聞いて落ち着きを取り戻す新世党が同士を前に、スカー・フェイスは威勢よく言った。

「その通りだ! それともう一つ、我々にはやらなければならない事がある……」

「やらなきゃ、ならない事……?」

 伊丹キョウジらが注目する中、スカー・フェイスは語り明かしていく。

「うむ、それは…………」

 

 

 果たしてスカー・フェイスが語る、ある事とは何なのか。それはまた、後のお話にて。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。