現政奉還記 未来都市&宇宙編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[研究機関への道]
能力を持った二次元人と、その作品キャラクター達が捕らえられていると思われるセクター2、通称熱帯セクターに潜入する以前に、一堂に集められた聖龍HEADと赤塚組、そして新世代型二次元人たちを前に、新世代型の伊織糸郎が皆にある提案を議題に持ち出す。
「美木杉愛九朗、彼をぜひ仲間に引き入れたいと思います」
生命戦維の研究の第一人者、美木杉愛九朗の救出も同時進行しようと持ち掛ける伊織は、計画を立てながら犬牟田宝火に声をかける。
「犬牟田くん、頼みます」
「はい。美木杉氏は以前、ここB.S.Lのセクター2に置かれている新世党の研究機関に身柄を拘束されていると思われます」
この犬牟田の報告にフレッドが問い掛ける。
「現在もか……?」
「はい。しかも、新世党は外部のものが簡単には出入りできないよう、研究機関に防衛線を張っているみたいです」
「と、すると……侵入者よけに、がっちりガードされた研究所に忍び込む事になるか」
犬牟田の返答にフレッドが小難しい顔を浮かべる中、伊織糸郎は皆に強く主張する。
「ええ、ですが美木杉さんの協力があれば我々の装備を強化して、新世党との戦いに備える事が出来るでしょう!」
この伊織と犬牟田の話を聞き入れて、ミラーガールは強く言い放った。
「なんとしても、新世党の手から美木杉愛九朗さんを助け出しましょう……そして、セクター2で改造されているという流子ちゃんを。他の能力者である二次元人も救い出しましょう!」
「僭越ながら、この鬼龍院皐月もお供します! ミラーガール……!」
力強いミラーガールの主張に、鬼龍院皐月も力強く賛同するのだった。
戦前で活躍する者同士で繰り広げられた会議を終えて、ミラーガールは元腕利きのハッカーであった犬牟田宝火に話し掛ける。
「セントラルエリアの機能もだいぶ回復してきた。ミラーガールのお役に立てるよう、いつでも万全の状態を整えていますよ」
拠点となるセントラルエリアの機能の回復と調子の良さに、犬牟田はミラーガールに常に万全の状態を保持していると伝える。
次にミラーガールは的場甚三郎に話し掛けた。
「それにしても、伊織糸郎だけでなく犬牟田宝火や揃三蔵も戻ってこられて良かった……彼らの協力があれば、セントラルエリアの機能は万全だ。後は私の様な政務官ではない、本物の司令塔とも呼べる美木杉愛九朗氏が戻ってこられれば大丈夫なんだが……。転送装置を使いたい場合は、犬牟田くんに声をかけるといい」
生命戦維を取り扱える伊織糸郎やコンピューターに精通している犬牟田宝火、そして周りを常に確認する万能執事の揃三蔵の帰還に、的場甚三郎は自分の様な政務官ではない本物の司令塔である美木杉愛九朗の帰還を心待ちにしている様子。
ミラーガールは転送装置のある部屋を出て、すぐ目の前の出入り口の前に突っ立っているフレッドにも話し掛ける。
「新世党の研究機関ねえ……奴らが何かヤバい物を作っていたら……こっちにいただく、ってのも悪くねぇ」
事もあろうにフレッドは、新世党が何か良からぬモノを作っていたら此方が奪い取ってそれを使用してしまえば良いのではないかと、トンデモない発言をする。
そんなフレッドに呆れながらも、ミラーガールは次に妹の事を心配し続ける鬼龍院皐月に声をかける。
「流子……流子は本当に無事なのだろうか……私の妹……いや、母上に反旗を起こす為とはいえ、その母上と同じ行為をしてきた私に、果たして姉を名乗る資格はあるのだろうか……? ……いや、もう悩んでいる時は過ぎ去った。私は、強くなる! もっと強くなって妹を…‥流子を取り戻す!」
決意を新たに鬼龍院皐月の闘志は燃え滾るのだった。
皐月の決断を目の当たりにしたミラーガールは、次に先のシルバー・ホーンドに負傷させられた新世代型達の怪我を治療しているナースエンジェル達に声をかけた。
「私も呼び掛けに応じて、なるべく出撃できるよう体制を整えておくけど、その前に運び込まれた怪我人の治療に専念させてもらうわ。白衣の天女ナースエンジェルが、怪我した人を放っておく訳にはいかないもの。ミラーガールも、こんな仕事している以上、危険な目に首を突っ込まなければいけないのは解るけど程々にしてね」
怪我人の治療を施しながら受け答えしてくれるナースエンジェルから話を聞いたミラーガールに、ナースエンジェルの傍らで怪我人の治療を手伝う男性と旧友も話し出した。
「私は正規の医者ではない、いわゆる闇医者だが、やれるだけの事はしていくつもりだ。流子ちゃんが帰ってきた後も、万全の状態を保持しておかないとね」
「私もりりかの……ナースエンジェルの手伝いを主に活動していきたいわ。こう見えても、赤塚組では看護班を受け持っているんだから!」
闇医者の満艦飾薔薇蔵と、ナースエンジェルの旧友である水原花林の頼もしい発言を受けて、ミラーガールは今後の負傷した人々のケアは彼女らに任せても大丈夫だと思うのだった。
ミラーガールは新世党に反旗を発起するレジスタンスのメンバーにも話を伺った。
「いやはや、やっと基地らしくなってきたなぁ~~、スグ上に新世党がいるのに、こんなのんびりしてていいもんかね? 後はどんどん仲間を増やして新世党なんてチョロイチョロイ!」
何とも、のんびりな意見を申す【革命機ヴァルヴレイヴ】の犬塚キューマの発言に、ミラーガールも「あららっ」と軽く動揺してしまう。
そんな犬塚キューマに続いて、時縞ハルトにも声をかける。
「レジスタンスには俺だけでなく、たくさんの市民が協力しているんだ。一刻も早く、平穏な日常に戻りたいからな……ミラーガールも頑張って!」
時縞ハルトからの応援を受け付けて、ミラーガールは俄然とやる気が湧いてきた。
だが、そんなレジスタンスに新たに協力してくれる事と相成った新世代型二次元人の中に、衝撃的な話をしている者達がいた。
「新世党に捕まっている間に聞いたんだけど……どうも、このB.S.Lに潜入しているのはミラーガールだけじゃないみたい。何だか五人組の、そう……不思議なコスチュームを着た5人組が目撃されたんですって!」
なんと【きんいろモザイク】の大宮忍からの情報では、自分たち聖龍隊一派以外にもB.S.Lに潜入している輩がいると新世党が話しているのを聞いたという。
セントラルエリアを奔走中、ミラーガールは拠点に身を置く新世代型にある疑念が流れている事実を耳にする。
「……俺たち咲森学園の生徒の中に、不死性を持ったマギウスに対して不吉な考えが流れているんです。あの鬼龍院羅暁やセレディ・クライスラーの様な肉体を持つ新世代型を懸念してしまってて……お互いを疑い合っている状態なんです……」
咲森学園の生徒からの悲しい事実を聞かされ、ミラーガールは咲森学園の生徒たちにこう言い伝えた。
「確かに普通ではない事は、とても恐ろしく感じることかもしれない。だけど、それでも互いを支え合える大切な存在には違いない。まずは差別する心を見詰め直しましょう」
このミラーガールの熱弁を聞いて、咲森学園の生徒達は考えさせられた。
不死性を持つマギウスに対しての考えは、ミラーガールも長年、二次元界を見てきて目撃してきた情景だったからである。
と、ここでメタルバードがミラーガールに話し掛けてきた。
「ミラーガール、もうそろそろセクター2に向かおうぜ。待機させているカァチェンが不安がる」
この言葉を受けてミラーガールは出撃の決意を固める。
咲森学園の生徒達に、差別に関する考えの改め方を唱えたミラーガールは、最初の転送装置が置かれている場所まで戻っていく。
「転送装置をセクター2の出入り口に設定しました。向かいますか?」
犬牟田宝火からの言葉を受けて、ミラーガールは力強く頷く。
そしてパーティを自分、メタルバード、鬼龍院皐月、そしてフレッドの4人に合わせて、転送先のシバ・カァチェンも含めて計5人のパーティに仕上げて出立する。
「研究所にはトラップが多く設置されているみたいですし、気をつけてください」
出発前に、パーティ一行を見送る伊織糸郎から言伝をされて、ミラーガール達はセクター2に捕らえられている能力を持った二次元人と、その作品キャラ達を救出するべく転送装置に搭乗した。
[新世党の研究機関]
セクター2、熱帯雨林を再現したこのセクターに転送されたミラーガール達は、ここで待機していたシバ・カァチェンと顔を合わせる。
「おお……、これはお久しぶりでございます! ミラーガール殿」
「ええ、カァチェン。久しぶり」
カァチェンはジャッジ・ザ・シティで離別したミラーガールとの再会に嬉々となる。
そんなカァチェンは、同じく久方ぶりに会う鬼龍院皐月とフレッドにも話をかける。
「お久しぶりでございます、鬼龍院皐月殿。このシバ・カァチェン、あの時は何も出来ず申し訳ありませんでした……」
「もうよいのだ、カァチェン! 共に闘ってくれ!」
ジャッジ・ザ・シティで救い出せなかった雪辱を悔やむカァチェンに、皐月は笑顔で返答してくれた。
「……賞金稼ぎ殿。貴方がまさか、新世党の輩に雇われてこの宇宙ステーションにいるとは思いもよりませんでした……」
「は、ははは……まあ、あの時は悪かったな。でも、今後はお互い一緒になって戦おうぜ、カァチェン! なんせ、敵対している相手は共通なんだからよ」
以前に新世代型二次元人を身売りしようと彼女らを掻っ攫おうとしたフレッドに、淡い警戒心を抱くカァチェンに、ミラーガールは「まあまあ、二人とも」と言って宥めていく。
そんなこんなでカァチェンとも合流し、一行はセクター2に進入していこうとする。
が、その矢先に門番である屈強なメカニロイドが一行の行く手を阻んだ。
「ダレダ! ココから先は通さん!」
「チッ、こんなバカでかいメカニロイドを配置しているとは……やはり、この先の研究機関には何かがあるらしいな」
屈強なメカニロイドを前にして、フレッドは余程、新世党が進行を望んでいないと睨む。
そしてパーティは、メカニロイドと戦闘に突入。鬼龍院皐月も、共有感知で鮮血の声を聞けている為に連携性が保て、上手くミラーガールやメタルバードと共闘する事ができていた。
更にフレッド、カァチェンの追撃も相まって、メカニロイドはホンの数分で片付いてしまった。
「へへっ、楽勝楽勝♪」
メタルバードは楽々とメカニロイドを突破した戦歴に満足の御様子。
そして門番を突破した一行は、そのままセクター2を進行するのだった。
「やれやれ、宇宙にまで来て熱帯のジャングルみたいな環境下での任務とは……まあ、オレとミラーガールだけならデート気分でウキウキ気分だっただろうけどよ」
熱帯の気候内での任務に、メタルバードはミラーガールとのデート気分が味わえないかと愚痴を零す。
「そ、それは……私達が邪魔だという事なのでしょうか……?」
メタルバードの冗談交じりの愚痴を聞いて、カァチェンが軽く失意に駆られる。
そんなカァチェンにミラーガールは「大丈夫よ、カァチェン。冗談だから」と慰めをかける。
更にメタルバードは同行している鬼龍院皐月からも言われてしまう。
「メタルバード殿! もう少し真面目に進軍してください! 此処は敵の拠点の一つなのですぞ!」
「は、ははは……おお、怖い怖い。分かったから、そんなに怒らないの皐月ちゃん。可愛い顔が台無しだぞ」
しかし皐月からの訴えも、不真面目なメタルバードには蛙の面に水であった。
そのまま歩いて進行する一行。だが、後ろから彼らの後を付いていく人影が。
「?」
最後尾のカァチェンが、その人影たちの気配に気づいて、思わず後ろを振り返り立ち止まる。だが後ろには誰もいなかった。
「どうしたの、カァチェン?」
「今、誰かが私達の後ろに、いませんでしたか?」
ミラーガールに訊ねられたカァチェンの返答を聞いて、メタルバードたちが言った。
「誰もいないぞ?」
「気のせいじゃないのか?」
「さあ、グズグズしてる暇は無い。早々に進まなければ……」
メタルバード/フレッド/鬼龍院皐月の言葉を受けて、一行は再び進攻を再開。
だが、この時のカァチェンが察した気配は本物であった。
「ふう……お陰で、何とか上手く潜り込めたようだね。警備を倒してくれて満足ッス」
スーツにツインテール姿の一人の少女が、仲間を携えてミラーガールたち一行の後から忍び込んでいたのだ。
「さて、任務開始と行きますか!」
そう少女がいうと、7人組は颯爽とミラーガール達とは別ルートで研究所内を進んでいった。
そんな7人組の存在に気付かないまま、ミラーガール達が進行していくと目の前の小部屋でとある老人と二枚目な男性の、二人の二次元人が言い争っているのが視認された。
「あれは!?」
ミラーガールはその内の若い男性の顔に見覚えが。それは新世党に捕らえられていると聞かされていた美木杉愛九朗本人だった。
「美木杉よ、手間を取らせてくれるな。昔のよしみで、下出に出てやればつけあがりおって。だが今日こそは、我らが新世党に必ずや引き入れてみせる。切札も掴んだ事だしな」
「うぅ……」
美木杉愛九朗は新世党から拷問を受けて、無理やり勧誘を推奨されるのを拒み続けている様子。そんな美木杉に老人は言い迫る。
「もはや貴様には有効手段はないのだぞ。例の纏流子は……この私、Dr.サイケの手によって完璧な戦闘マシーンへと生まれ変わったのだ!」
「な、なに……!!」
この老人Dr.サイケの発言を受けて、鬼龍院皐月は表情を強張らせる。
すると同じく表情を険しくさせたミラーガールは、我慢できずDr.サイケの前へと飛び出した。
「そうはいかないわよ! 新世党!」
「む、お前はミラーガール? 見張りの兵は何をしておったのだ!?」
身構えるミラーガールを目前にDr.サイケは目を丸くして驚く。配置させていた門番兵が倒された事を知らなかったからだ。
するとDr.サイケは同行させている新世党の兵士たちに告げた。
「ええい、お前達! そいつらを行かせるな!」
Dr.サイケの命令を聞いて、動き出す新世党兵士たち。
「愚か者共を蹴散らしてやるのだ!」
その間、Dr.サイケは満身創痍状態の美木杉愛九朗を引きずって、部屋から一人脱出する。
「あ! 待ちなさいっ」
ミラーガールがDr.サイケを呼び止めようとするが、その前に敵兵達がミラーガール達に向けて発砲。
この銃撃戦に鬼龍院皐月やフレッドといった戦意満々の面子は揃って戦前に飛び出る。
「さあってと……おっぱじめますか」
「我らが戦力……思い知らせてやりましょう!」
フレッドと皐月は武器を手に、新世党の兵士と戦いを始めてしまう。
そんな激しい銃撃戦の中、その銃撃戦による激しい銃声を聞いてミラーガール達の戦況を傍観する者たちの姿があった。
「派手にドンパチやってるみたいっすね」
それは先ほどの7人組だった。
「さあて、こっちは人質人質……」
しかし少し戦況を傍観していた7人組は、即座にその場から離別してしまうのだった。
[対話! 新世党の真実]
その頃、新世党の研究機関その一角に捕らえられている新世代型【琴浦さん】【ダンボール戦記ウォーズ】【斉木楠雄のΨ難】そしてプロト世代の【黒魔女さんが通る】のキャラクター達の前には新世党のセレディ・クライスラー率いる一部の新世党メンバーが顔を揃えて捕えている新世代型の同胞たちに訴え続けていた。
「……瀬名アラタ。ボク達の……いいや、キャップ・ド・レッド総帥の考えには賛同してくれないのかい?」
「当り前だ、セレディ! ジャッジ・ザ・シティでの、あんな爆破テロを前にして新世党に加わろうなんて考え、俺たちは思いもしない!」
セレディに新世党への加入を促されるものの、ジャッジ・ザ・シティでの陰湿な爆破テロを前にして瀬名アラタたち新世代型の考えは変わらなかった。
「ククッ、アラタ……貴様らもウザイほど頑固だな。オレはテメェらの様な弱っちい連中を仲間に加えるのは癪に障るが……あのキャップ・ド・レッドが仲間に加えようと言ってくれているから、こうして生かしてやっているのによ」
「っ、あなたも変わったわね。キャップ・ド・レッドがそんなに偉いの!?」
「さあな! だが、オレ達を解放し、自由を与えたと同時に力も授けてくれたキャップ・ド・レッドに感謝しているのは間違いない!」
不敵な笑みを浮かべる伊丹キョウジの言動にキャサリン・ルースが言うと、キョウジは自分達を脱獄させてくれたキャップ・ド・レッドに感謝はしていると強く述べる。
「な、なあ! 新世党の考えって、よく解らないけど……どっちにしろ、争い事じゃ何も生まれないぞ!」
「無駄だよ、燃堂……こいつら、革命とか何とか言って争う事ばかりしか眼中にない」
新世党の考えに物申す燃堂力に対して、親友の斉木楠雄が指摘する。
「カイト! なんで新世党なんかに加わったんだ! ……約束しただろ、またLBXをしようって……なのに……!」
「………………」
新世党に加盟してしまっている風陣カイトに、かつて約束を誓った嵐山ブンタが訴えるものの、カイトは何も言わず黙然とするばかり。
「功! なんで、こんな奴らの元で働いているのじゃ……! 実の娘の春香に綾香が余計に不憫じゃぞ」
「………………」
琴浦善三の訴えに対して、元養子息子である小野崎功は気まずい顔を背けてしまう。
すると此処でセレディが再び牢獄の中の二次元人たちに熱弁する。
「瀬名アラタ、前にも話したと思うけど……ボクたち新世代型二次元人の潜在能力である共有感知。これを活用すれば互いの思考のみに非ず、特殊能力までも共有できると言われている。ボクや君のオーバーロードはもちろん、琴浦春香や斉木楠雄の様な超能力者の能力も同じ新世代型同士で共有できる筈なんだ。君たちがもう少し、ボクの……いや、キャップ・ド・レッドの研究に協力的になってくれればスグにでも解放してあげるんだけど……」
「それってつまり……誰でも、何にでもなれるって事か?」
「察しが良いね、アラタ……そう、ボクら新世代型はどんな存在にも成り得る逸材なんだよ。それを三次元人が強制的に制限しているから、ボクらの可能性は潰されてしまっているんだよ」
瀬名アラタの質問に対し率直に返答するセレディの話を聞いて、波野リンコはしかめっ面でセレディに言った。
「つまり……同時に
「フフ、これまた察しが良い……」
リンコの質問に不敵な笑みで答え返すセレディだが、そんなセレディは不敵な笑みのままで語り続ける。
「だけど、それはあくまで三次元人が見定めた基準での判定だ。ボク達の可能性を三次元人が踏み躙っているこの現状で、ボクたち新世代型が協力し合えなければ本当の未来は勝ち得られないんだよ」
このセレディ・クライスラーの論弁に便乗するかのように、寡黙に浸っていた風陣カイトが口を開いた。
「その通りだ……行動しなければ、何も世界を変える事はできない。まして、僕たち新世代型二次元人の未来は閉ざされたままだ」
「カイト! お前まだセレディの言いなりになっているのかよ!」
風陣カイトの発言にまたしても嵐山ブンタが反発するが、そんなブンタ達かつての旧友たちにカイトは黙然と手袋を嵌めた両手の手首を弄りながら主張した。
「違う! 今の僕たちは全員、誰もが誰かに従っている訳ではない……自分の意志でキャップ・ド・レッド総帥の思想に魅了されて行動しているだけに過ぎない! 君達は何も分かってない、
すると驚くべきことが牢獄内の二次元人たちの目に飛び込んできた。
それは何と、風陣カイトの両手がポロリと外れたのだ。
「!!」「! か、カイト……それは……!?」
皆が驚愕する中、嵐山ブンタが動揺しながらカイトに訊ねると、カイトは難しい顔で両手の事情を語り明かした。
「……これは海底監獄インペルダウンでの拷問で失ったものの一つだよ。僕ら
「………………」
「……これで、もうLBXをプレイするのも叶わなくなった」
両腕を失った事で、もうLBXをプレイするのが叶わなくなった現実を話すカイトの言葉を聞いて、嵐山ブンタ達は言葉を失ってしまう。
大好きなLBXができなくなった風陣カイトの現状を目の当たりにして、愕然とする【ダンボール戦記ウォーズ】の面々を前に、続いて小野崎功がそんな風陣カイトを庇護するかのように
「カイト君だけではない……! 私たち他の新世代型も海底監獄に放り込まれて、度重なる拷問や雪辱を受けてきた……! そんな我々を救ってくれたのがキャップ・ド・レッド総帥なのだ! 私達は総帥の思想に感銘を受けて、共に世界を変えるべく……ゆくゆくは我々新世代型による理想の未来を実現するべく、活動しているのだ!」
「へっ、何を言ってやがるんだオッサン! テメェみたいに使えねえ奴が、いくらいたって総帥の思想を実現するまでには至らねえよ! 全ては力……力こそ全てなんだよ!」
小野崎功を見下しながら伊丹キョウジが全ては力なのだと説き伏せる。
すると小野崎功は、牢獄の中に閉じ込めている二次元人【黒魔女さんが通る】のギュービッドを見詰めて声をかける。
「……君がギュービッド、エクソノーム殿が申していた通りの子だね」
「! あんた、エクソノーム様を知っているのか……?」
いきなり初恋の相手であるエクソノームの名を発した小野崎功にギュービッドは思わず問い質した。すると功はギュービッド達に語り明かしてくれた、エクソノームの事を。
小野崎功とエクソノームが出会ったのは、他でもない海底監獄インペルダウンであった。
二人は同じ囚人として出会い、監獄の中で色々と語り合った。自分が収容された経緯から、身内の事まで。
そして海底監獄を急襲したキャップ・ド・レッド率いる軍隊によって牢屋から解放された時のこと。
「エクソノームさん、此処にいては危ない! 下手をすれば容赦なく殺されてしまう……私達と共に脱獄しましょう!」
このまま海底監獄に居れば容赦の無い拷問で殺されてしまう故に、共に脱獄しようとエクソノームに訴えかける功。
だがエクソノームは、そんな脱獄を推奨する功に対してこう述べた。
「功さん、折角だが私はこのままインペルダウンに留まる……約束したんだ、私の愛弟子と……ギュービッドの為に罪をしっかり償って彼女の前に立とうと決めたんだ! だから私は脱獄しない……したくないんだ……!」
エクソノームの決意は固かった。愛弟子であり、自分を最後まで愛してくれるギュービッドの想いに答えようとする彼の決意を前に、小野崎功はエクソノームを脱獄させるのを躊躇ったという。
この話を聞かされたギュービッドは、涙顔で目をウルウルさせて泣きじゃくった。
「うぅ……エクソノーム様が其処までアタイの事を想ってくれてたなんて……!」
涙声で大粒の涙をポロポロと流すギュービッドに、弟子や後輩であるチョコや桃花らは途方に暮れる。
そんな三人のプロト世代に、伊丹キョウジが脅し文句をぶつけてくる。
「何を過去の余韻に浸ってやがるんだ、テメェら! テメェらは精々、俺たち新世党の実験台として使ってやるから有難く思いやがれッ!」
「きゃっ」
鉄格子を蹴り飛ばして脅しにかかるキョウジの脅迫に脅え切るチョコたちプロト世代の女子たち。
「やめるんだ! 女の子を脅すなんて、最低なマネだぞ!」
チョコや桃花たちを脅えさせる伊丹キョウジの言動に対し、【ダンボール戦記ウォーズ】で唯一のプロト世代である海道ジンがキョウジに言う。
そんな言い争いに発展しそうな空気に、セレディがキョウジを宥めると再び牢屋の中の二次元人たちに話し出す。
「ふふ、キョウジ、そんなにカッカしない。彼女達は有益な黒魔女という事で捕えているだけなんだ。……それに、確かにボクらは新世代型の繁栄を目指しているが、その下で働く人材の保有にも尽力を尽くさないと。プロト世代は、ちょうどボクら新世代型と旧世代の間に生み出された二次元人なんだ。一体、ボクら新世代型とどう違うか念入りに調べてボクらの共有感知の開花に向けて物事を勧めないと……」
「チッ、セレディ……その共有感知とやらだが、本当に俺たちにも身に着くもんなんだろうな。テレパシー系統の能力っていうから、琴浦春香や斉木楠雄を作品キャラごと連れてきたが、俺たちにも共有感知が現れる兆候は見られないぞ」
「確かに……テレパシー系統の新世代型を経由して、思考が共有されると聞いて連れてきたが何の兆候もボクらには現れない……一体なにがいけないんだ?」
新世代型同士には現れている共有感知の現象が、新世党のメンバーには現れていない現況をキョウジに問われてセレディは物思いに耽る。
すると共有感知の影響を全く受けないプロト世代の海道ジンがセレディに申し告げた。
「それはだ、セレディ……これは僕の仮説だが、君ら新世党の企みに他の新世代型が納得していないからだと思う。互いに何処か、心で拒絶してしまっている者同士では共有感知も受け付けないと僕は思う!」
この海道ジンの意見を聞いて、セレディは静かに語り始めた。
「なるほど……それも一理ありますね。それなら尚の事、ボクたち新世党の思想に理解を深めてもらわなければ……共有感知こそ、新たなる二次元人の進化を促す切っ掛けなのだから」
「新たなる、進化……?」
セレディの話に、瀬名アラタたちは動揺を浮かべる。
すると其処に、力欲しさに新世党に寝返ったシャドウがやってきた。
「どうだ? 捕虜にした能力者と、その他の腰巾着共は」
「誰が腰巾着だ!」
シャドウの脇役への告げ口に新世代型の真鍋義久が文句を返す。
そんな現場にやって来たシャドウに、プロト世代の海道ジンが訊ねる。
「シャドウ……なんで貴方までも新世党に加わったんですか! 聞いているが、貴方はジャッジ・ザ・シティでも指折りの軍人だった筈……なのに」
「へっ、そんなの決まってるだろう。出来損ないのプロト世代……俺たち新世代型には隠された能力が山の様にある……その能力を目覚めさせ、更なる飛躍を求めるのが新世党の目論見なんだ。俺は純粋に力が欲しい……その望みを叶えてくれるのが、新世党って事だけなのさ」
「な、なんて奴だ! その為に新世党に加担して、ジャッジ・ザ・シティで罪もない人々を……!」
ジンの質問に対して不敵な笑みで返答するシャドウの話を聞いて、瀬名アラタは更に怒りを込み上げる。
そんな怒りを露にする牢屋の中の新世代型とプロト世代を前に、シャドウは淡々と語り続けた。
「どうとでも言え……いづれ俺たち新世党は三次元政府にも劣らない新境地を……新天地を切り拓き、その王座へと君臨する! 全ては力だ、力のみが正論なんだよ……!」
全ては力のみと豪語するシャドウの言葉と不敵な笑みに檻の中の二次元人たちは憤りを感じずにはいられなかった。
と、シャドウが不敵な笑みを浮かべ続け、その周りではセレディたちがシャドウの熱弁に耳を傾けていたその時。
「ッ!?」
何者かの気配をシャドウは感じ取った瞬間、目にも止まらない素早い動きを見せる何かがシャドウたちの周りを駆け巡った。
「うっ、うぅ……!」
目にも止まらぬ速さで首筋を叩かれた面々は、その場に次々と倒れ込んでしまう。
「な、何が起こったんだ!?」
目の前でシャドウやセレディ達が倒れたのを目の当たりにした真鍋義久は非常に戸惑ってしまう。
そんな彼ら、牢屋の中に閉じ込められてる二次元人たちの前に、7人の若者が姿を現した。
全員が不思議なコスチュームを着こなした、謎の7人組。
最初は、その7人組に警戒を張り詰める牢屋内の人々だったが、その7人組から一人の少女が前に一歩踏み出して申し渡した。
「大丈夫っす! こいつらは気絶させただけっす!」
「あ、あなた達は……?」
セレディたちを気絶させただけと説く少女に、牢屋内の琴浦春香が訊ねると少女たちは格好良くポーズを取りながら名乗る。
「ボク達はガッチャマンクラウズ! 先代のガッチャマンからの任務で、君らを助けに来たっス!」
この【ガッチャマンクラウズ】と名乗る少女たちの登場に、海道ジンが落ち着いた物言いで語り始めた。
「ガッチャマンクラウズ……確か聞いたことがある。先代の科学忍者隊ガッチャマンより襲名を受けた、新たなヒーローチーム……」
「はいっ! そんで、ボクらも一応は新世代型っす!」
海道ジンの説明を受けて自分達も新世代型だと告げる少女に対し、斉木楠雄が不愛想な表情で言った。
「一ノ瀬はじめ……文房具好きの少女か。てっきり一人称で男かとばっか思ってたよ」
「は、はわわ……正体明かすのは無難ですって! ……まあ、この場にいる新世代型は共有感知っていう能力で、全員がテレパシー持ちみたいだってのは耳にしていますが……どっちにしろ、早く此処から逃げちゃいましょう。鍵は既に入手済みっす」
こうして本名、一ノ瀬はじめの手助けにより、牢屋内の二次元人たちは解放されていった。
[洗脳された流子]
ミラーガール達がDr.サイケが引き連れた敵兵と交戦中、そしてガッチャマンクラウズにより牢屋内の囚人達が開放されていた、ちょうどその頃。
「何度責められようが、私は研究を争いに使うお前達とは手を組まない!」
「美木杉……キャップ・ド・レッド様の考えはそんな小さなものじゃない! 我々の理想には必ずお前も共感してくれる筈だ」
「くどいぞ! サイケ!」
互いの主張や意見を捻じ曲げない美木杉愛九朗とDr.サイケの論争は終わって無かった。
美木杉愛九朗も画期的な技術を争いに使おうとするDr.サイケら新世党の目論見には賛同したくなかった。
すると此処でDr.サイケが美木杉愛九朗に不敵な面構えで告げた。
「美木杉、私は知っているぞ。お前が遂に、生命戦維の強化開発および……どの二次元人にも着衣できる戦維を開発したのをな!」
「な、なに!?」
「この技術を用いれば……我らが新世党の兵力を格段にまで向上させる事が出来る」
なんとDr.サイケは美木杉愛九朗が生命戦維の強化及び【キルラキル】キャラクター以外の着衣に成功した事実を周知しており、それを告げられた美木杉は激しく動揺する。
そんなDr.サイケは己の傍らに、自らが鬼龍院羅暁と共に新たに開発した純潔を着衣させた纏流子を呼び寄せて告げる。
「既に貴様が鬼龍院羅暁への対抗策として打開した鮮血は、纏流子からはぎ取った。代わりに、我ら新世党の為に活躍できるよう全く以て新しい純潔を流子に着衣させた。オマケに貴様を含む周囲のキャラクターとの記憶は削除し、羅暁に対して従順なシモベとして働くよう洗脳させてもらったよ」
「な、なんて事を……! ……っ?」
美木杉愛九朗は鮮血を託した纏流子が、純潔を着衣された上に洗脳された経緯を知って愕然となるが、同時にDr.サイケの背後にある監視カメラの映像に気を取られた。
「美木杉! お前が我々に協力すると言えば、誰も手荒なマネなど……」
Dr.サイケが語る中、美木杉は背後のカメラ映像に映る5人組と捕まっている筈の二次元人たちが移動しているのを無言で見詰めていた。
「どうした? ショックのあまり声も出ないか」
無言で監視カメラの映像に釘付けになる美木杉愛九朗に、Dr.サイケは冷やかす。
だが、余にも一点を凝視する美木杉の様子に、ようやくDr.サイケも背後の監視カメラの映像に気が付いた。
「だ、誰なのだ、あの7人組!? そもそもなんで牢屋に閉じ込めている筈の二次元人共が出ているんだ……! ええい、セレディの奴ら、ロクに監視もせずに怠っていたな!」
ようやくガッチャマンクラウズ達によって、二次元人たちが開放されている事に気付いたDr.サイケは目前の美木杉愛九朗を蹴り飛ばして行動に移った。
「おのれ! このまま逃がしてなるものか……こい、流子! パワーアップした貴様の力を見せ付けてやるのだ!」
「はい……」
Dr.サイケからの指示に、纏流子は虚ろな目で返答。そのまま二人は満身創痍な美木杉愛九朗を置いて、脱出に急ぐガッチャマンクラウズと二次元人たちの元に駆け付ける。
それから数分後、美木杉愛九朗が置いていかれたモニター室にミラーガール達が駆け付けてきた。
「美木杉博士? 一体……?」
満身創痍状態の美木杉愛九朗にミラーガールが訊ねると、美木杉は苦しそうに言い放った。
「りゅ、流子君が……サイケの奴め……流子君を洗脳するとは!」
「な、なに! 流子が……どういう事なのだ!?」
妹の流子が洗脳されたと聞いて目の色を変えて傷だらけの美木杉を問い詰める鬼龍院皐月を、ミラーガールが宥める。
すると動揺する皐月に、その皐月に問い詰められている美木杉に同行しているフレッドも宥めに入りながら訊ねる。
「お二人とも、そう落ち着きなって。サイケとか洗脳とかって、何の事だ? 新世党のことかい?」
フレッドからの言葉に冷静さを取り戻した皐月。と、その皐月に問い詰められてた美木杉は、見慣れぬ蒼い衣を纏った女性を目にして皐月に問い返した。
「き、鬼龍院くん。彼女は……」
「彼女はミラーガール。私達の味方です」
皐月から同行してくれている女性がミラーガールだと聞いた美木杉愛九朗は、改めてミラーガールに自己紹介した。
「そうか、君達が……なら話は早い。私は……美木杉愛九朗。既に知っているかもしれないが、新世党への抵抗組織ヌーディスト・ビーチのリーダーを務めてもらっている。まあ、設立したのは亡き纏一身ではあるが、今は僕が恥ずかしながらリーダーを務めさせてもらっている……」
「ま、それは置いといて……今、何か大変なことになってんじゃないの?」
美木杉愛九朗の自己紹介を聞いたフレッドが、現状についての報告を美木杉に訊ねると彼は思い出したかのように答えた。
「ッ! そうだ……流子くん! 流子くんがサイケに……新世党の一員に洗脳されてしまった……!」
「詳しく話を聞かせてもらえないですか、博士」
「力になれると思うぜ!」
非常に動揺する美木杉に、ミラーガールとメタルバードが力説すると、フレッドも続けて申した。
「別に恩着せようなんて考えちゃいないよ。俺達は目の前で新世党の連中にチョロチョロされるのが我慢できないんだ」
三人の力説と、妹の事を心配そうに思い詰める皐月の眼差しを受けて、美木杉愛九朗は語り明かした。
「新世党のDr.サイケが流子くんを洗脳してしまったんだ! 流子くんは今や完全な戦闘マシーン、しかもあの鬼龍院羅暁に絶対忠誠を誓うまでに至ってしまった。早く正気を取り戻さないと……!」
「流子が……! おのれ、Dr.サイケ! ……母上……!」
「なんと、流子殿が洗脳されてしまったのですか……! 果たして、彼女の真意を取り戻すことはできるのでしょうか……」
怒りを露にする皐月に反して、空虚な眼差しで物事を捉えるカァチェンを尻目に、メタルバードは美木杉に問い詰めた。
「それで美木杉愛九朗! その洗脳された流子と、Dr.サイケは今どこにいる!?」
「そ、そこの監視カメラのモニターに……見知らぬ7人組の男女が、捕まっていた二次元人たちと共に施設内を徘徊しているのが映し出されて……サイケは流子くんと共に彼らの方へと向かってしまった……!」
「分かった! まずはアンタの怪我の治療が先決だ。ミラーガール! お前の治癒能力で治療してやってくれ」
「分かったわ!」
美木杉愛九朗からの報告を受けて、まずは怪我の治療が先だと判断するメタルバードの指示でミラーガールは満身創痍に美木杉愛九朗に治療を施した。
一方その頃、監視カメラのモニターで施設内を移動していたガッチャマンクラウズと二次元人たちの前にDr.サイケが純潔を着衣させて洗脳した纏流子を携えて立ちはだかっていた。
サイケは改良した純潔でパワーアップした流子に戦わせ、ガッチャマンクラウズ7人を徹底的に痛め付けていた。
「フンッ、どこのネズミかしらぬが……我ら新世党が拠点にしているB.S.Lに潜入して人質を救出しようとは生ぬるい! このDr.サイケを出し抜こうなどと!」
「うぅ……新世党が……」
洗脳された流子に痛め付けられて、満身創痍のガッチャマンクラウズたち。
そんな7人組を前に、Dr.サイケは不満そうに呟いた。
「へっ、見た所、お前達も我々と同じ新世代型だが、敵対しているなら話は別だ…‥やれ」
またも流子に指示を出して、ガッチャマンクラウズの7人組を嬲り始めるサイケの猛攻に、解放された二次元人たちは思わず目を塞いでしまう。
「へっ、そうだ! 新世代型二次元人が所有する全ての技術は……我ら新世党が所有するに相応しい!」
徹底的にガッチャマンクラウズを嬲り付けたサイケは満足そうに語る。
「ガッチャマン! ガッチャマン、しっかり……!」
洗脳された流子に痛め付けられ、満身創痍で気を失ってしまうガッチャマンたちに駆け寄り、必死に声をかけるチョコや琴浦春香たち。
そんな悲愴な面持ちで目前で英雄たちが痛め付けられる様を見せ付けられた二次元人たちにサイケは告げた。
「ヒッヒ、これで分かったじゃろう。我ら新世党に歯向かう者は全て、こうなる運命なのじゃ……解ったなら、全員牢屋に向かって戻るのじゃ!」
しかし命じられるままに動きたくない二次元人たち。であったが、彼らの目前に武器を手にした洗脳状態の纏流子が立ちはだかり、無理やり彼らを再び牢屋へと連行するのだった。
[次世代の英雄と遭遇]
その頃ミラーガール達は。
モニタールームに残った三木杉愛九郎の指示でセクター2を移動し、謎の7人組と解放された二次元人達の方へと急きょ駆け抜けていた。
「そ、それにしても謎の7人組って誰なんだろうな? まさかオレ達以外にもB.S.Lに潜入してる輩がいるなんて事は……」
「考えるのは後回しにしましょう! 今は一刻も早く、彼らと合流を……!」
謎の7人組に対して未だ周知していないメタルバードが懸念を差す中、ミラーガールは捕虜となっていた二次元人だけでなく洗脳されたという纏流子の身を案じる余り切羽詰っていた。
セクター2に徘徊する不気味な宇宙生物に擬態したXを撃破しながら、ミラーガール達は進攻を続ける。
すると、そんなミラーガール達の前に、例の7人組が満身創痍の状態で倒れているのが視認された。
「あ、あれは……!! 見た事ない二次元人だけど、何か知っているかも!」
ミラーガール達は急ぎ7人組の許へと駆け寄り、心拍数を計測する。
「どうだ? ミラーガール」「大丈夫……息はあるわ」
気絶している7人組は命に別状はないと診断するミラーガールの言葉を聞いたメタルバード。
そしてミラーガールは即座に7人組に自身の治癒能力を使って回復させる。
ミラーガールの治癒能力を浴びた7人組は、深く閉ざしていた瞼を開いて目を覚ます。
「ほう、眠れる美女たちのお目覚めだ」
ミラーガールの治癒能力で目覚めた7人組を目視して、フレッドが7人組のうち大半が女性である事からこう呟いた。
早速ミラーガールは、目覚めた7人組に訊ねた。
「あなた達は……? ここで何を?」「……あ、あなた達は?」
ミラーガールの質問に答える少女に、フレッドが自分達の経緯を語る。
「俺達は、新世党のサイケって奴を追っている」
「サイケ! じゃあ、あなた達はサイケって科学者を倒しに行こうってんだね?」
サイケの名を聞いて、少女たちは目の色を変えて飛び起きた。そして少女はミラーガール達に自己紹介を始めた。
「ボクは一ノ瀬はじめ……今は新生ガッチャマンとして戦う、通称ガッチャマンクラウズの一員っす!」
「新生ガッチャマン……! それじゃ、あなた達も私達と同じヒーローの……」
「そゆ事」
ガッチャマンクラウズと名乗る少女、一ノ瀬はじめの発言を受けて、ミラーガールが自分達と同じ英雄であると言うと7人組のうちの少年が一言返す。
そしてミラーガールと同じく、ガッチャマンクラウズの名を聞いてメタルバードが物思いに耽る。
「ガッチャマンクラウズ……かつて名を馳せた科学忍者隊ガッチャマンの意志を受け継いだという、新生ヒーロー……でも、それがなんで此処に?」
昔、名を馳せたヒーロー科学忍者隊ガッチャマンの意向を受け継ぐ組織が何ゆえ宇宙ステーションであるB.S.Lにいるのか疑問視するメタルバードに、これまた皆を代表して一ノ瀬はじめが答えた。
「はい! 私達、先輩……ああ、先代のガッチャマン達の指令を受けて新世党の動きを探ってたっす! そしたら、連中が世界各地から新世代型二次元人を掻き集めて、このB.S.Lを拠点に活動している事を突き止めて、仲間と一緒に乗り込んだって訳っす! ……と、同時に捕虜として連行されてきた新世代型二次元人を解放した訳なんっすが……」
「……新世党のサイケに。いや、正確には洗脳された纏流子にボコボコにされたって訳だな」
一ノ瀬はじめの話を聞いて、フレッドは粗方の事情を察する。
すると一通りの話を終えた一ノ瀬はじめは、ミラーガール達に嘆願した。
「ねえ、あなた達、サイケって奴を追っているんならボク達も連れて行って!」
「え!?」
手酷くやられたばかりなのに、また立ち向かおうとする意志を見せるはじめ達を目の当たりに驚くミラーガール。そんな彼女たちに、はじめは申した。
「弱い者を守るのがヒーローってんなら、ボク達も協力するのが常道っす」
自らの英雄道を、信念を言い渡す一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズの意志にミラーガールは感化された。
「……分かったわ。あなた達も一緒に協力して……新世党に利用されている人も、捕らえられている人々も助け出し……新世党を止めましょう!」
「はいっす!」
(語尾に、「っす」を付けるタイプの二次元人なんだな)
一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズの意向を組んで、彼女たちの信念を尊重したミラーガールの発言に一ノ瀬はじめも強く同意。と、同時にメタルバードは一ノ瀬はじめの口癖に気が付くのだった。
同行メンバーにガッチャマンクラウズの7名も加わり、一行はDr.サイケに連れて行かれてしまった能力者とその作品キャラ、そして洗脳された纏流子の奪還を図るため再び進攻した。
しかし彼らが突き進もうとした矢先、突如として施設内で爆発の衝撃が走った。
ミラーガール一行がその爆発が起こった現場に直行してみると、其処はサイケ達が通ったと思われる通路のハッチが何者かによって爆破、塞がれてしまっていた。
「は、ハッチが!」
「どうすんだ? これじゃ、先に進めねえぜ……」
皐月やフレッドが動揺する中、ミラーガールとメタルバードは冷静に爆発の状況を調べてみた。
「誰かが……サイケ達が追手である私たちに気付いて、ハッチを爆発で塞いだのかしら……?」
「いいや、この爆発は外側からじゃなく内側から……要するにオレ達側から爆破されている。つまりハッチを爆破した犯人は……」
「犯人は、私達側にまだ健在している。と、いう事ですか……」
メタルバードの推測を聞いて、カァチェンはハッチを爆破させた犯人は自分達側の区分にまだ居る現状を察する。
この現状に、メタルバードは皆に注意を呼びかける。
「お前達、気を付けろ。ハッチを塞いだ犯人は強力な火力を持っている。しかもオレ達側にまだ現存している……誰だか分からねえが、いつソイツと鉢合わせするか分からねえし、十分に気を付けるこった」
メタルバードからの注意を聞いて、一同は細心の警戒を張りつめる。
ミラーガールとメタルバード達は、目を凝らしてどうにか抜け道を見付ける。
そこは狭い路地であったが、他に進む道もない事から一行はその路地を進むことに。
狭い路地を突き進んで、何とか道を模索しながら突き進んでいく一行。
そして狭い路地を突き進み、何とか広い道へと出た途端、メタルバードが何者かの気配を感じ取った。
「! 誰か来る! 隠れろッ」
メタルバードは皆を通路の死角へと押し込むと、自らも体を壁へと擬態させて強引に死角へと押し込んで、身を潜める。
そして、そこに現れたのは……なんと肌が緑色で目が死んだ魚の様な瞳の小田原修司だった。
不気味な容姿の小田原修司を前にして、隙間からこっそり覗き込むミラーガール達は一驚し、言葉を失う。
そして、その不気味な容姿の小田原修司は辺りを見渡しながら、その場を行ったり来たりと徘徊する。
「し、しゅ……!」
思わず修司の名を発しそうになるミラーガールだったが、自制心で何とか言葉を発せずにいられた。
そして他の一同が思わず叫びそうになるのを、メタルバードが自身の肉体を軟体化させて言葉を発しそうになる皆の口を慌てて塞いだ。
慌てて皆の口を塞いだメタルバードは、自らのテレパシー能力で現場の皆の脳内に直接訴えかける。
(みんな、落ち着いて聞け! あれが例のSO-Xだ! 見つかったら速攻で殺されちまうし、此処は息を殺してやり過ごせ!!)
メタルバードの言われたとおりに、皆は息を殺してSO-Xがその場から離れるのを待ち続けた。
そしてSO-Xは辺りに人影がいないと判断したのか、そのまま傍らのハッチを開けて別のフロアへと姿を返した。
「……いったみたいだな」
SO-Xが去っていたのを確認したメタルバードは、擬態を解いて元の姿へと戻った。そして同時に死角に押し込めた一同も解放され、安堵する。
「さ、さっきのがSO-X……!」
「ぶ、不気味だぜ……あんなのが同じ研究所内を徘徊しているとは……!」
「ね、ねえ! さっきのアレは何なんっすか! 見た感じ、小田原修司とクリソツだったっすけど……!」
初めて自身の目で目撃したSO-Xに恐怖を感じずにはいられないミラーガールにフレッドたち。その一方でSO-Xに対して無知な一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズは初見のSO-Xに異様なまでに驚愕していた。
ここでメタルバード達は、一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズにSO-Xについて語った。
今、このB.S.Lバイオロジック宇宙生物研究所で生態区域を徐々に広げている寄生生命体X。そのXには新世代型二次元人と三次元人だけには寄生しない事実がああるが、それと同時にXの中でも特に注意しなければならないのが、Xの突然変異元である小田原修司の遺伝子データを最初にコピーして擬態した通称SO-Xである。このSO-Xには特殊能力の大半が封じられ、更には強大な破壊力を秘めた
この事実をメタルバードはガッチャマンクラウズにも伝え、彼らにも細心の注意を払ってSO-Xの襲来には十分に気を付ける様にと言い伝えたのだった。
ガッチャマンクラウズは、メタルバード達から聞かされたSO-Xの脅威に脅えながらも、皆で一丸となってサイケ達の元へと急ぐのだった。
[純潔流子との戦闘]
次世代の英雄であるガッチャマンクラウズとの合流に、SO-Xとの遭遇を経験したミラーガール一行は、駆け足でセクター2を移動する。
そして一行は遂にDr.サイケの元へと到達した。
「サイケ!」
「なっ! 死にぞこないの新米ヒーローに、ミラーガールか!」
追い付めたサイケにミラーガールや、先ほど洗脳状態の纏流子に痛め付けられたガッチャマンクラウズが立ちはだかる。
「みんな! もう大丈夫だ、オレ達がいま助けてやるぞ!」
「め、メタルバード……!」
「ん? あのにいちゃん……確か賞金稼ぎの……」
そんなサイケや同行する纏流子に連行される二次元人達にメタルバードが声をかけると、新世代型の瀬名アラタや燃堂力がメタルバードや賞金稼ぎのフレッドに気付く。
そんな中、ミラーガールはサイケに向かって言い放った。
「Dr.サイケ! これ以上……あなた達、新世党の好きにはさせない!」
このミラーガールの強気な態度に、サイケは興奮しながら答え返した。
「ムムムっ! この旧世代のポンコツ二次元人め……! 良いだろう、また……この純潔を身にまとった纏流子の餌食にしてくれるわッ」
そうサイケが叫ぶと、傍らで二次元人達の連行を手助けしていた純潔流子がミラーガール達の前に立ちはだかる。
「りゅ、流子! 私だ、皐月だ……分からないのか!?」
「キキッ、お母様に逆らう逆徒共め……このアタイがこてんぱんに倒してやるよ!」
「ダメだこりゃ。完全に洗脳されちまっているよ……」
実姉である皐月の問い掛けにも答えず、それどころか悪逆非道な行いをしてきた羅暁に忠誠の意を示す流子を前に、メタルバードは完全に流子が洗脳されているのを認識して呆然としてしまう始末。
「サイケ! よくも流子ちゃんを……彼女や他の二次元人達を解放しなさい!」
洗脳された純潔流子を目前に、ミラーガールはサイケに彼女を含む二次元人達の解放を交渉する。
しかしサイケは不敵な笑みでミラーガールに話し返した。
「ヒヒヒッ、何を言っておるのじゃミラーガール! その姿こそ、纏流子の本当の姿……実母、羅暁に忠誠を誓う絶対の戦力……それが纏流子の本当の姿なのじゃ」
「な、何を……! 流子は、妹は母上の道具ではない!!」
「実の子供を実験台だけでなく戦いの道具にまで……許さないわよ、新世党!」
だが、そんな彼女たちの心中も察しず、純潔流子はミラーガール達に襲い掛かって来た。
「りゅ、流子ちゃん!」
咄嗟に流子の攻撃をミラー・シールドで防いだミラーガールに、捕虜の一人である斉木楠雄が自身のテレパシーで感じ取った情報をミラーガール達に伝えた。
「ミラーガール! 今の纏流子に何を言っても無駄だ! 戦って止めない限り、彼女の洗脳を解く事はできない……!」
「そ、そんな……!」
戦いでしか流子の洗脳を解けないと知って、ミラーガールは驚嘆する。
しかし、そんなミラーガールに反して、流子の実姉である皐月は勢いよく妹へと刃を交えさせた。
「ミラーガール! 私は覚悟している……妹を、流子を助けるためには戦いもやむを得ない事を! だから貴殿も戦ってくれ! ……正直、私だけで流子の正気を取り戻せるか自信が無い!!」
「さ、皐月ちゃん……」
幾度となく纏流子と刃を交えさせる皐月の言動を目前に、ミラーガールは皐月の覚悟と決意に奮い立たせられる。
「ボク達も行くっす!」
と、ここで一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズも、先ほどの敗北を帳消しにする勢いで純潔流子へと戦いを仕掛ける。
様々な特殊能力に加え、先代のガッチャマン達から受け継いだ身のこなしを視認して、メタルバードは彼女たちの戦いぶりを素直に称賛する。
「やるなあ、流石は先代の意志を受け継いだだけの事はある……だが、まだまだ経験が浅い。迂闊に接近すれば……」
すると「きゃあっ」メタルバードが予見していた通り、純潔流子に接近したガッチャマンクラウズは流子に弾かれ転倒してしまう。
「やっぱりなあ、読みが甘すぎるってお前ら。ちょっくら先輩ヒーローの活躍を見てみなさいって」
そうガッチャマンクラウズ達に言い渡すと、メタルバードは自身の両腕を刃に変形させて純潔流子の片太刀バサミへと激突する。
両者の刃と刃が激しくぶつかり合い、物凄い衝撃波が辺りに響いた。
そしてメタルバードと純潔流子は互いに向き合い、相手の姿勢を確認する。
と、その時だった。純潔流子と向き合うメタルバードに、鮮血を着ている皐月が言い寄った。
「め、メタルバード殿! ここは私を戦前に出させてください……! 流子と、妹と話がしたい!」
これを聞いたメタルバードは、上手くいけば純潔流子の洗脳を解けるかもしれないと踏んで敢えて皐月の提案に乗った。
「……分かった、だが無理は済んじゃねえぞ」
「はい!」
メタルバードからの承諾を受けて、鮮血皐月は純潔流子へと突進していった。
「流子、私だ! 目を覚ましてくれ……!!」
(流子オレだ、鮮血だ! 声が聞こえているなら返事をしてくれ……!)
何とか目を覚ましてほしいと必死に流子に訴えかける皐月と鮮血。だが純潔流子は洗脳からか、二人の呼びかけには全く反応せず、狂気染みた面構えで斬りかかってくる。
そんな姉妹の辛い戦況を目の当たりにしている二次元人達。だが、その時新世代型の燃堂力が純潔流子に向かって強く呼びかけた。
「や……やめろーーっ! もう姉妹同士で戦わないでくれーーッ」
「燃堂……!」
新世代型の中で唯一、共有感知に対して鈍感だった燃堂力が発した強い願いを目の当たりにし、斉木楠雄たち他の二次元人達も纏流子に呼びかけた。
「そ、そうだ止まるんだ! 貴女は操られているだけなんだ!」
「正気を取り戻せ、纏流子! アンタはそんな柔な女じゃないって事ぐらい、もう知っている!」
洗脳されて正気を失っている纏流子に必死に呼びかける細野サクヤとバネッサ・ガラ。
すると皆の声が届いたのか、徐々に純潔流子の動きが鈍り始めた。
「うぅ……!」「りゅ、流子!」
頭を押さえ付け、苦しみ出す純潔流子を前に鮮血皐月は攻撃を躊躇う。
「ムッ、何をしているのだ、纏流子! 敵を前に怖気づいたか! 早く、その小虫をやっつけるのだ!」
しかし皆の声で洗脳が解けかかっている流子に、サイケは再度強く純潔流子に攻撃を指示する。
すると此処でサイケの小言に嫌気が差していたフレッドが、サイケに向けてリボルバーを発射。
「爺さんはちょっと黙ってな」
フレッドが発射した弾丸は、粘り気が強いトリモチの銃弾であり、そのトリモチ弾はサイケの口を見事に封じた。
「フガッ、フガフガッ」
口を封じられ、思う様に喋れなくなったサイケを尻目に、今度は今の今まで親友の燃堂力の前では超能力を誇示しなかった斉木楠雄が同じ捕虜にされている二次元人達に言った。
「みんな! 今までの纏流子との思い出を僕に集中させるんだ! 僕がテレパシーで纏流子に思念を送る……上手くいけば、彼女は昔の事を思い出して、正気を取り戻してくれるかもしれない!」
「へっ? さ、斉木? どういうこった??」
「良いからっ。アンタも今までの事を思い返しながら、斉木に念を送るんだ!」
斉木楠雄の言っている意味を理解し切れてない燃堂力に、プロト世代のギュービッドが斉木に念を送るよう指示を飛ばす。
そして【ダンボール戦機ウォーズ】の面々に、琴浦春香たち、そしてプロト世代のチョコたちタイのバイオハザードの一件から一緒だった二次元人達は斉木楠雄に念を送り出した。タイの地下研究施設から今まで見てきた纏流子の勇姿と友を思う姿を。
皆の思念を受け取った斉木楠雄は、その思念を一気に純潔流子へと送った。皆の思想は、今まで纏流子が皆を守り抜きながら懸命に戦い続けた勇姿で溢れ返っていた。
誰の意志でもない、自分の意志で戦い続けてきた纏流子。彼女の勇姿を思い返しながら、皆は、そして斉木楠雄は思念を纏流子に送り続けた。
すると純潔流子は自分の頭の中に流し込まれる数々の記憶……タイでの生物驚異との戦いや、アジアの名立たる武将達との合戦を徐々に思い出す。
「ううう……!!」
強烈な思想が頭の中に強制的に送り込まれ、纏流子は更に苦しみ出し、混迷していった。
(今だ! 今なら流子から純潔を剥ぎ取れるかもしれねえぞ!)
「そうだな、鮮血! ……流子よ、必ず貴様を母上から取り戻す!!」
過去の記憶を思念として送り込まれて苦しみ出す純潔流子を前に、鮮血と皐月は好機と踏んで行動に移った。
「流子! 私との因縁を思い出せ! そして忘れるな! 決して運命から逃げてはならぬと……!!」
(流子! またオレを着てくれ! オレはまだまだ流子と一緒にいたいんだ!)
皐月と鮮血の強い想いがこもった一撃は、純潔流子の急所に直撃。
攻撃が純潔流子の急所に直撃した矢先、苦しむ純潔流子に再度、鮮血と皐月が呼びかける。
(流子! 思い出せ……オレとの……いいや、オレ達との思い出の数々を……!)
「流子、今は私を姉だと無理に呼ばなくてもいい……前の様に、いがみ合いながらも共にアジアの混乱を乗り越え、数々の戦歴を持つ武将達と組手を交えた纏流子に戻ってくれ!」
鮮血と皐月は、今まで共にアジアを旅してきた日々を思い返す様に純潔流子へと訴える。数多くの武将、そして聖龍隊の武勇伝を聞かされた日々。
そんな今生までの思い出を振り返りつつある纏流子に、ミラーガールが決めの一手とも言える言葉を流子に投げかける。
「流子ちゃん……思い出して! 今までの貴女を……自分を取り戻して!!」
このミラーガールの最後の一言が決め手となり、純潔流子は自らを大切に思ってくれる満艦飾一家やライバルであった皐月たち四天王,それに鮮血。そして多くの新世代型二次元人達との思い出を、そして自我を取り戻した。
そして「……死んでも……死んでも……」纏流子は呟き始めると、次の瞬間、彼女は自らが装着している純潔を自らの手で剥ぎ取った。
「死んでも脱がなきゃいけねぇんだよ!! でなきゃ、また『鮮血』を着られないだろうが!」
自ら裸体を晒しながらも、自らを操り制御する純潔を剥ぎ取った流子は、力尽きる様にその場に倒れた。
「流子ちゃん!」「流子!」
ミラーガールと鮮血皐月は、その場に倒れる流子に慌てて駆け寄る。
そして皐月は流子を抱き寄せると、流子は静かに瞼を開いて自分を抱き寄せる皐月に言った。
「さ、さつ…………ねえ、ちゃ……」
「無理はするな! ……もう、もう我々がいがみ合う理由はないのだ! 少しずつでいい……少しずつ、お互いの時間を取り戻そう。私達、姉妹が失った時間を……!」
皐月は無理に流子に姉だと呼ばせず、少しずつ時間をかけて、かつて失った時間を取り戻す感覚で姉妹としての時を取り戻していこうと流子に涙ながらに打ち明かす。
その光景を前にして、感化されたミラーガールも、共有感知で姉妹の心境を感じ取った新世代型たちも思わず貰い涙を目から零すのだった。
[悪賢い高速演算処理型二次元人]
そんな流子の自我が戻ったのを、同じく目の当たりにした高速演算処理型二次元人のDr.サイケは此処でようやく自身の口を塞いでいたトリモチを取り除いて、自我を取り戻した流子を前にして怒り心頭となった。
「ぐぬう、小虫どもめ。お前達には、我ら新世党が、どれほど二次元人の技術を進歩させ得るか分からぬと言うのか!」
このサイケの発言に、ミラーガールが間髪入れずに説き伏せた。
「サイケ! 争いの為の技術なんて……私は認めない!」
進展する科学技術を争い事にしか使用しない新世党の考えに異議を言い放つミラーガールの発言を聞いて、サイケは強く言い返した。
「お前達と話しても時間の無駄だ。この場で滅してくれる……私自身の手でな!」
そしてそのままDr.サイケはミラーガール達と戦闘に突入した。
「ちょうどよい、実験材料にしてやる」
二次元人を実験材料にしてやると言い出すサイケは、自身の周辺のサモンニードルズというトゲ状の物体を展開する。
そして突如として現れたサモンニードルズに戸惑うミラーガール達を前に、サイケはシャワーニードルズでサモンニードルズを戦前のミラーガール達に浴びせた。
するとミラーガール達の身体に異変が。なんと身体が状態異常を引き起こし、皆のステータスが各々変化してしまった。
「ぐひひひ、私が開発したサモンニードルズの効力はどうかね? ひょっほっほっ」
怪しい笑みを浮かべながら、サイケは自慢げに己の開発した技を披露する。
「ここは私に任せて……ミラー・ヒーリング・フラッシュ!」
ミラーガールは此処で、状態異常を回復させるミラー・ヒーリング・フラッシュを発動させ、皆の状態異常を全快させる。
この状景を見てサイケは躍起になった。
「ぐぬぬ……! 旧世代の古ぼけた二次元人の癖に、アジな真似をしてくれるな……! もう一度喰らえ!」
躍起になったサイケは再び戦前のミラーガール達にサモンニードルズを浴びせようと仕掛けようとする。
が、その前に「そうはさせるか!」と、フレッドがリボルバー銃を発射し、サモンニードルズを一掃してしまう。
「な、なぬ……っ!」
全てのサモンニードルズを玉砕されたサイケは激しく動揺。
その隙にメタルバードがサイケに向けて電撃砲撃を仕掛けようと、右腕を変形させる。
「一気に行くぞ……!」
右腕を砲身に変形させたメタルバードは、エネルギーを充填してサイケに向けて砲撃を放った。
「どわっ!」
砲撃を受けたサイケは堪らず後方へと転倒してしまう。
メタルバードの活躍に続けと、ミラーガールもサイケに向けて攻撃を仕掛けた。
「一気に行くわよ!」
ミラーガールは近接戦闘向けの、黄金のアーマーに変身して、メタルバード同様エネルギーを充填させる。
そして充填したエネルギーを放射するため、ミラーガールは一気にサイケと距離を縮め、接近してからの強力な砲撃をサイケの間近で放った。
「砕けなさい!」「うぎゃぎゃぎゃぎゃッ」
ミラーガールの渾身の砲撃が連続でサイケに直撃。ミラーガールはサイケに大打撃を与える事に成功。
だがサイケも此処で反撃。イービルブラスターという怪光線で戦前のミラーガール達を一掃しようと企んだ。
しかし、これがサイケの失敗だった。ミラーガールはサイケの攻撃を逸早く察し、サイケが放つ光線をミラー・バリアーで弾き返し、サイケに撥ね返したのだった。
自身が放った怪光線を浴びたサイケは、その場に倒れる。だが……
「ひょひょっ、科学者を甘く見るなよ……!」
不敵な笑みを浮かべて倒れるサイケ。
するとサイケの背後から謎の巨大な機械が壁を打ち破って出現。皆は驚愕する。
そしてサイケは咄嗟に、背後に現れた巨大機械の中に搭乗して再びミラーガール達の前に立ちはだかる。
「ひょひょっ、私が造り出した最高傑作「マッドノーチラス」と合体し、進化した私に勝てると思うか!?」
そう唱えるサイケは、自身の「最高傑作」と称する強固な装甲が施されたオウムガイ型巨大メカニロイドアーマー「マッドノーチラス」と合体して、猛攻を仕掛けてきた。
「そ~~れッ」「うわっ!」
マッドノーチラスから放たれる数々のレーザー攻撃に、一気に苦境に立たされるミラーガール達。
そんな眼前で苦しむ面々を見て、搭乗しているサイケは得意げに攻撃を続ける。
「ひょひょっ、史上最高の頭脳を持つ私に勝てる筈がないのだ!」
このサイケの、いやサイケが搭乗するマッドノーチラスの猛攻を前に、先ほど実妹である流子を取り戻した皐月が跳躍してマッドノーチラスに一太刀浴びせようと跳びかかる。
「これ以上、貴様らの好き勝手にさせてなるものか!!」
皐月の縛斬がマッドノーチラスの装甲に直撃した瞬間、眩い閃光が光った。だが、それはマッドノーチラスの重装甲に縛斬が耐えられず、衝撃で光った閃光だった。
そして事もあろうに皐月の縛斬がマッドノーチラスの重装甲に敗れ、真っ二つに折れてしまった。
「な、何……!?」
自慢の縛斬が折れてしまった現状に一驚する皐月に、マッドノーチラスと合体搭乗したサイケは動揺する皐月に言い放つ。
「進化した私に勝てると思うのか!」
そしてサイケはマッドノーチラスを操り、皐月に強烈な光線を浴びせようと発射。
と、其処にミラーガールが間一髪のところで間に入り、皐月を光線から守る。
ミラー・バリアーで辛うじて光線を撥ね返したミラーガール。だが撥ね返した光線は再び、光線を発射したマッドノーチラスへと跳ね返るのだが、マッドノーチラスの重装甲には罅一つ入れる事はなかった。
「な、なんて頑丈なの……!」
驚異の耐久性に驚きを隠せないミラーガール達。
すると此処で、レーダー化した眼球でマッドノーチラスの構造を識別したメタルバードが指示を出した。
「マッドノーチラスは重装甲に守られている! 弱点は装甲内部のコアしかないが、装甲に守られてて迂闊に手が出せない……弱点が出現するタイミングを狙って攻撃しろ!」
「し、出現するタイミングって?」
メタルバードの指示にミラーガールが問い返すと、メタルバードは率直に返答した。
「あの装甲は分厚いが為に、大量の熱が内部にこもっちまってる。コアの放熱が開始されると同時に、装甲も開くはずだから、それを狙って攻撃するんだ!」
しかしメタルバードが説明している間にも、マッドノーチラスは触腕から二重の光線を発射してカァチェンを狙撃しようとする。
だが、そのマッドノーチラスの攻撃をミラーガールが再びミラー・バリアーで防いで事なきを得る。
弱点であるコアの放熱が見られるまで、皆を強力な光線から守り続けるミラーガールは、次第に体力を消耗していった。
すると此処でメタルバードがミラーガールに提案を繰り出す。
「ミラーガール! マッドノーチラスの放熱を早めるには、こっちから炎属性の攻撃を仕掛けるのが得策だ!」
「そ、そうか……! こっちから熱を与えてやれば、放熱も早まる訳ね!」
メタルバードの提案を即座に理解したミラーガールは、すぐさま行動に移った。
「変身!」
ミラーガールは反射的に魔法騎士の獅堂光へと変身。そして強烈な炎魔法をマッドノーチラスにぶつけた。
「うぎょっ」
強力な火炎攻撃を受けて、内部の熱エネルギーが膨張し出すマッドノーチラス。そしてその内部の熱に苦しむ搭乗しているサイケ。
ミラーガールは続け様に、様々な炎属性のキャラクターに変身して、マッドノーチラスに火炎攻撃をお見舞いしていく。
そして遂に内部の熱エネルギーに耐え切れなくなったサイケは、マッドエネルギーをマッドノーチラスの角部先端に注入。それと同時にコアの放熱も開始。
「ま~だま~~だ!」
そしてサイケは重装甲を解放し、コアを露出させると同時に今まで以上に強力な光線を発射。ミラーガールに向けて放った。
「きゃあっ」
光線を受けたミラーガールは辛うじてセイント・コンパクトの自動防衛システムによって守られたが、同時に床へと落下してしまう。
このミラーガールの危機に、先ほど急な攻撃で縛斬を折ってしまった皐月が再び解放されたコアに向かって跳躍し、攻撃を仕掛けた。
「今度こそ!」
実の妹を洗脳し、争いの道具に仕立て上げたサイケや実母羅暁に一矢報いる想いから、皐月は折れた縛斬を解放されたコアに突き刺した。
「な、なぬ……ッ!」
自慢の最高傑作のコアに刃物を突き刺されてサイケは非常に動揺する。
すると、この皐月の一撃を見たメタルバードが戦前の皆に向かって言い放った。
「今だ! コアの亀裂……あの縛斬に向かって集中砲火!」
マッドノーチラスのコアに亀裂を入れた、突き刺さる縛斬に向かって攻撃を指示する。
「チャンスだ! ファイナルストライク!」
一斉にマッドノーチラスに向けて総攻撃を仕掛けるメタルバード達。
「なっ、ななな……これほどまでとは……!」
総攻撃を受ける中、マッドノーチラスに搭乗しているサイケは予想を遥かに上回る攻撃力に驚愕する一方。
そして総攻撃を受けたサイケ、そしてマッドノーチラスは光に包まれて消滅した。
「わ、私の最高傑作が……」
最後の最後まで抗い続けたサイケは、弱点であるコアを総攻撃されてご自慢のマッドノーチラスごと消え失せたのだった。
[姉妹の決意]
苦戦の末、どうにかDr.サイケが操るマッドノーチラスを破壊する事に成功したミラーガール一行は、サイケたち新世党に洗脳されていた纏流子や、新世党に捕虜として捕らえられていた多くの二次元人達と共に元来た道を戻り、美木杉愛九郎が待つ監視モニター室へと帰還する。
「み、美木杉……」
美木杉と再会を果たした流子、そんな疲れ切った纏流子を見て美木杉はミラーガールに礼を述べた
「ミラーガール……本当に礼を言う。よくぞ流子くんを取り戻してくれたね」
このお礼に対して、ミラーガールは笑顔で美木杉に話し返した。
「いいえ、美木杉さん。私は何も……強いて言うなら、強い姉妹愛が流子ちゃんを元に戻した……それだけですよ」
「そうか、姉妹の愛か。いい響きだ……」
ミラーガールが発した姉妹愛の響きに、美木杉も感銘を受ける。
そして美木杉は研究機関内で遭遇したガッチャマンクラウズの面々も含んだ、大勢のヒーローがB.S.Lに集結している事実を前に話し出した。
「しかし……此処まで凄腕のヒーローたちが揃っているとなると、流子くん達は無理して戦わなくても良いんじゃないかな」
「え!?」「………………」
美木杉の発言に目を丸くして驚く流子に、黙然とした面持ちで立ち尽くす皐月。
そんな二人を含む、その場の一同に美木杉は語った。
「知っての通り、僕は今は亡き纏一身博士の意志を受け継いで生命戦維の研究に取り掛かり、ヌーディスト・ビーチの司令塔にもなっている。だけど、その博士の忘れ形見である流子くんと鬼龍院皐月くんまでも新世党の争いに巻き込んでしまうのは少し気が引けるんだ……」
今は亡き流子と皐月の実父である纏一身の意向を受け継いで、新世党に対抗する組織の司令塔を務めている美木杉は、多くの英雄たちが現存している現況で、纏一身の娘達までも戦いに身を投じる必要性はないと判断した。
しかし、この美木杉の判断に流子は強く言い返した。
「せ、先生! アタイ、ミラーガール達と一緒に最後まで戦うぜ!」
「なッ!? りゅ、流子くん……」
突然の流子の告白に驚かされる美木杉。すると流子に続いて姉の皐月も美木杉に主張した。
「私達は何も、戦力に加算されるために戦っている訳ではない! 己が意志で……己の非運を断ち切るために抗っているにすぎん!」
皐月の主張に続いて、再び流子が強い面魂で美木杉に訴えた。
「だから先生、アタイはアタイなりに考えたんだ。サイケや母さんみたいな……新世党の連中を……放っておいちゃいけないんだって! そのためにアタイ……親父から貰ったこの力を役立てたいんだ!」
「そうか、流子くん。君は……」
纏流子に皐月の姉妹の決意を噛み締めて、美木杉は感動してしまう。
そんな感銘を受ける美木杉に、ミラーガールが改めて声をかけた。
「改めて美木杉先生、私達と一緒に来てもらえませんか? 此処には危険なSO-Xという危険生物が潜んでいます。急いで離れましょう……!」
危険な寄生生命体SO-Xの脅威もある事から、早々にこの場から離れてセントラルエリアへ向かおうと提案するミラーガールに、美木杉は皐月と流子の姉妹が続けて戦前に出る事を呑んで素直に同意する。
「ああ、そうだなミラーガール。Dr.サイケは、あれでも優秀な科学者だった。そんな彼を狂わせてしまうような新世党は……放っておいては、いけないだろう」
「ありがとう! 美木杉先生……! これで心強い仲間が、また一人……」
と、このミラーガールの発言に、解放されたプロト世代のギュービッドとチョコが言った。
「一人? 違うだろ、もっと沢山いるじゃないか?」
「ガッチャマン達も一緒に戦ってくれますよね!」
チョコの想いに反応する様に、一ノ瀬はじめは率直な思いで返答した。
「そうだね……ボク達も先輩に言われて潜入してきた事だし、最後まで付き合うっす」
新世党への対抗力として自分達も最後まで戦い抜くと宣言してくれる一ノ瀬はじめ達ガッチャマンクラウズの7人組に対して、ミラーガールは笑顔で手を差し伸べた。
「ええ、よろしくね……ガッチャマンクラウズ」
ミラーガールは一人一人に握手を交わして、親睦を深めた。
……その頃、ガッチャマンクラウズの不意打ちにより気絶させられてしまったセレディ/小野崎功/風陣カイト/伊丹キョウジ/そしてシャドウの5人は急ぎセクター2から移動しようとしていた。
「ち、チクショー―……不意打ちを喰らわせられて気絶させられちまうとは、俺様も不覚だったぜ」
「それはお互い様だ。それよりも、早く最上層階に戻らねえと……キャップ・ド・レッドからの指令だ」
不意打ちとはいえ気絶させられた事を後悔するキョウジに、シャドウは急かす様に言う。
すると、そんな最上層階へ移動するための転送装置に向かって移動していた5人の前に、あの存在が。
「! アレは……!」
その存在を目の当たりにしたセレディは言葉を失った。
それは既に新世党にも伝わっている情報で周知しているSO-Xであった。5人はSO-Xを見て愕然となる。
だが、SO-Xは確かに5人の存在に気付いたものの、何気ない様子でその場を後に去って行ってしまった。
「あ、アレがSO-X……で、でも一体なぜ……」
「ああ、なんでボク達を見ても襲ってこなかったんだろうか……」
小野崎功とセレディは、何ゆえSO-Xが自分達を襲撃しなかったのか不思議に思うばかり。
生態エリアに徘徊する普通のX同様に、SO-Xは新世代型には襲ってこないのだろうか。
5人は突然の遭遇に驚きを隠せないまま、セクター2を移動していった。
そしてミラーガール達とセレディ達、それぞれが別ルートでセクター2の転送装置に向かったため、互いに鉢合わせする事はなかった。
[警戒]
そして最初に転送装置で最上層部へと戻ったセレディ一行は、そこで新世党が総帥キャップ・ド・レッドからの指令を直々に受ける。
と、いっても相手のキャップ・ド・レッドは立体映像で、本人と対面はしなかった。
更にセレディたち以外の、他の新世党の面々が勢揃いして一堂にキャップ・ド・レッドの指示に陶酔していた。
「……以上が我々が行うべき、最優先事項だ。今後、ミラーガール達と施設内で遭遇した際は、何が何でも例のブツを奪還するのだ! 例の品こそ、我ら新世党の未来に光を兆してくれる貴重なアイテムなのだ……!」
「承知しました! キャップ・ド・レッド」
「今後は、更にレジスタンス聖龍隊の動向も伺いつつ行動します……!」
キャップ・ド・レッドからの指令を聞いて、片腕的立場のスカー・フェイスにセレディ・クライスラーは跪き深々と頭を下げる。
「それと……今、私の調査で判明したが、なぜか例の異端なる存在……そう、SO-Xは我ら新世党には攻撃してこない事が判った。これは、他の寄生生命体Xと同等に我らに対しては敵意を示していないという事なのかもしれない……だが、油断はするな! 小さな油断こそ、最大の大敵である事を肝に銘じておけ……」
「心得ております、総帥……!」
キャップ・ド・レッドからの注意事項に忠誠心の厚いスカー・フェイスは率直に同意する。
「……ところで、例の捕虜として世界各地から連行してきた新世代型二次元人のデータの解析は済んだか? せっかく、わざわざ偽の招待状までも拵えてジャッジ・ザ・シティにも招待していたのだが……」
「はッ、現在旧ピッチでデータの解析に取り掛かっています……! 総帥が唱える、我々新世代型にしか内蔵されていなかった特殊能力のプロテクト解除までは、もう少しの辛抱で……」
例のジャッジ・ザ・シティに琴浦久美子やヨドたちを招いた偽の招待状を発行したのは新世党だった。そしてキャップ・ド・レッドの懸念に対し、セレディが説き返すと立体映像のキャップ・ド・レッドは厳格な面立ちで新世党メンバー全員に告げた。
「急ぎデータの解析を進めるのだ。その為に時縞ソウイチやプロト世代の科学者や関係者をも同士として引き入れたのだ。……例の品もアレだが、まずは我々新世代型二次元人の能力の解放が最優先だ。同士諸君、時は待ってはくれない……一刻も早くデータの解析と例の品の奪還を急ぐのだ! もう既に我ら新世党メンバーの主力メンバー……ジャンゴー、ホーンド、そしてDr.サイケをも失ってしまった! 急ぎ、計画を進めなければ……聖龍隊によって計画を阻止されるかもしれん……!」
「総帥! どうかご安心を……このスカー・フェイス、命を賭しても! 聖龍隊の……レジスタンスの好きにはさせません!」
力強い面魂で説き続けるキャップ・ド・レッドに、スカー・フェイスは顔を上げて改めて厚い忠誠心を示し挙げる。
このスカー・フェイスの忠誠に、キャップ・ド・レッドも首を縦に振る。
「うむ、信じているぞスカー・フェイス。そして他の者たちも、スカー・フェイスの指示にしばらく従ってくれ。私は今しばらく、身体のリフレッシュを行うため最上層部のリフレッシュセンターの自室に籠っている」
「御意! キャップ・ド・レッド総帥!」
身体のリフレッシュを行う為に自室に籠っている間スカー・フェイスの指示に従うよう言い残すキャップ・ド・レッドに、新世党一同は跪き頭を下げて指令に従う意思を示す。
そしてキャップ・ド・レッドの立体映像が消えた瞬間、スカー・フェイスは立ち上がると振り返り、目前の皆々に言い渡した。
「同志諸君! 総帥は現在、お身体を悪くしてリフレッシュセンターに籠っている状況だ。だが、こんな時こそ我々が協力して新時代を切り拓く力を身に付けなければならない……!」
このスカー・フェイスの熱弁にセレディも同意する。
「その通りだね……その為にも、データの解析を続けてボクたち新世代型二次元人の遺伝子構造の解明に全力を注がないと……」
このセレディの発言に、伊丹キョウジも続けて言った。
「そうだ、俺達はもっともっと強さを……力を手に入れなければならねえ! その為には、どんな手段だろうが使わねえと……!」
しかし、このキョウジの如何なる犠牲をも辞さない発言にスカー・フェイスが言い付ける。
「それはいかんぞ、キョウジ……! 我々、新世党は確かに新世代型二次元人の為の世界を創造するのが最終目的だが、同時に異端に扱われる二次元人という種族の解放にも徹しなければ……! 無駄な犠牲は避けねばなるまい……」
「チッ、分かったよ……! (この、クソッタレが! そんな甘い事ばっか言っていられるほど、戦況は甘くはないんだよ!)」
無益な犠牲を心の底から嫌うスカー・フェイスの提言に、キョウジは心中では冷酷な態度を示しながらも、舌打ちしながらスカー・フェイスの提言に頷くフリをした。
同じころ、一つ下の階層であるセントラルフロアでは……。
「登れる上にトークも切れる! さらにこの美形! 天はオレに三物を与えた!」
新世党に誘拐・連行された新世代型二次元人【弱虫ペダル】の東堂尽八が、同じ新世代型の女子たちを口説きながらフロアを歩いていた。
と、すると目の前の行止りである通路の奥から、何やら蒼い光が。
尽八たちが注目していると、その通路の奥から一人の青年が姿を現した。
他でもない、賞金稼ぎのフレッドだ。
「あ、ああ、あんたは確か聖龍隊と一緒になって戦ってくれている……」
「お、おうっ、フレッドだよ。どうした、イケメンボーイ。そんな水鉄砲を喰らったような顔をして……」
「い、嫌な。あんた、行止りの所から出て来たから……」
「あ、ああ! そっか……ちょっと俺さまはミラーガール達が例の人工知能と話が終わるのを待っているだけさ。なんせ相手は銀河連邦が仕向けてきた高性能のコンピュータ、俺さまみたいな風来坊なんか相手にしてくれないだろうしな」
思わぬ所から現れたフレッドに、驚いてしまう東堂尽八たち。そんな尽八たちにフレッドは、自分の現状を伝えるのだった。
一方その頃、ミラーガールはフレッドの申していた通り、銀河連邦が派遣した人工知能、聖龍隊や赤塚組からは陰口で俗称「修司」と付けられているコンピュータと話をしていた。
「……なるほど、無事に捕虜として捕らえられていた残りの二次元人たちも奪還できたようだな。オマケに、またしても新手のヒーローの介入とは……忙しい事だ」
多少、皮肉交じりの言動を示す「修司」の台詞に、ミラーガールは絶える事のない笑顔で説き返した。
「あら、結構なことじゃない。彼女達も、先輩である科学忍者隊の指令を受けて施設に潜入した取って置きのヒーローなのよ! これで鬼に金棒ってなければ、何だって言うのよ?」
ミラーガールに続いて、メタルバードも「修司」に話を伝えた。
「それにハサミ姉妹とも言える流子と皐月も揃った上に、ようやく美木杉愛九朗も奪還できたんだ! これで、ようやく本番に入れるって訳なんだし、願ったり叶ったりじゃないか」
ミラーガールとメタルバード、両者の言い分を受けて、人工知能「修司」は話し返すと同時にナビゲーションモニターの前にいる聖龍HEADと赤塚組幹部に言い伝えた。
「……まあ、戦力が増したと考えれば好都合なのかもしれないな。それよりも君達は、ここに潜入した目的が新世党の阻止だけではない事も胸に置いといて欲しい。先にも言った通り、現在このB.S.LはD-ワクチンから突然変異した寄生生命体Xによって徐々に汚染され始めている。奴らの浸食を阻む事も、ミッションの課題である事を忘れない様に……」
「はいはい、分かったよ」
この人工知能「修司」の指摘に、大将は不愛想な面構えで適当に頷いた。
すると大将の不真面目な反応に気付いたか、気付いていないか不明だが、人工知能「修司」は続けて語った。
「……そうか、解ってくれているのであれば反論はない。それよりも、いま君達に伝えなければならない事がある……」
人工知能「修司」は飼育エリアで発生している新たな事案を聖龍HEADと赤塚組幹部衆に伝えた。
果たして、キャップ・ド・レッドたち新世党が狙っている例の品とは?
そして人工知能「修司」が語る新たなXによる問題とは……?