魔法少女まどか☆マギカ -Kaleidoscope- 実績「時をかける魔女」獲得実況プレイ 作:Hotpepper_N
というわけでマミさんを味方につけることに成功しました。
あとはこのまま登校して、コミュを進めるフェーズに入りますが……
その前に、ちょっと追加処置をば。
>スキル使用:《V.V.V.F.》
>スキル使用:《封印術・遠神能看可給》《急急如律令》
>《護符:通仙散》
ある程度治療が進むまでは、マミさんの肉体は意識を閉じた状態にしておきます。
意識が戻ると、痛みで穢れが増加する可能性があるので。
これは電気による神経干渉の魔法式を札に固定化して、遠隔でも継続発動できるようにしたものです。
え? 痛覚遮断があるだろって?
あれは本人がやらないと意味がないんですよ。
それに、魔力リソースは回復に全振りした方が効率がいいです。
>札を中心に薄い魔力の膜が広がり、マミの全身を包んだ。
よし完了。
あとは、ほむほむのお顔にちょっとした"細工"をして登校するだけです。
それじゃマミさん、烏くん付けとくんでお留守番よろしく。
魔女移動中……
>ロケーション:見滝原中学校、正門前
>「……あっ、おはよう、ほむらちゃん……」
>さやかと並んで歩くまどかを見つけた。
>二人の表情は、明らかに沈んでいる。
お、二人ともちゃんと登校してましたね。
まあ無理もないですね、あんなショッキングなこと立て続けに経験すれば。
さて。
今のこの状態を利用して、ここで杏子を釣るための最初の仕込みをやります。
詳しくは、次のシーンで。
「……あっ、おはよう、ほむらちゃん……」
登校中、校門に差しかかるところで、ほむらは並んで歩く二人の姿を見つけた。
それに気づいたまどかが、控えめに声をかけてくる。
「……ええ、おはよう」
(……無理もないわね)
暗い表情を隠しきれない二人を前に、ほむらは胸の内でそう呟いた。
「……その、大丈夫……? あんまり、眠れてないの……?」
まどかは、ほむらの目元に薄く刻まれた隈に気づくと、
一瞬だけ視線を彷徨わせてからそう問いかけた。
(よし、食いついた)
「……心配かけて、ごめんなさい」
「マミさんの治療に、ずっとかかりっきりで……」
そう答えたほむらは、わざと力の抜けた、乾いた笑みを浮かべた。
「……無理はしない方が――」「っ、マミさんは、どうなの……?」
まどかが言い切る前に、さやかが言葉を挟む。
ほむらは一度視線を落とし、ほんの少し躊躇する素振りを見せる。
「助かるわ。……助かるはずよ」
「ただ……今は、思っていたよりも、容態が悪い」
「「っ……!」」
「今は、魔法で状態を固定しているけれど……」
「……最悪の、可能性も……いえ、ごめんなさい」
「……助かるって、言ったのに……」
「こんな弱気じゃ、マミさんに申し訳ないわ……」
今にも泣き出しそうな表情を作り、わざと弱音を零した。
「っ、学校なんて来てる場合じゃ……!」
思わず食ってかかるさやかに対して、ほむらはあらかじめ用意していた答えを淀みなく紡ぐ。
「……その点については、問題ないわ」
「私の魔法で、さっき言った状態の固定の他に、遠隔での監視もしているの」
「もしマミさんに変化があれば、いつでも駆けつけられる」
「……でも、それは――」
“学校に来なければならない理由”にはならない。
さやかの口には出されなかった問いを、ほむらは正確に汲み取る。
「……これは、あなた達のためよ」
「もう、あなた達は魔法少女の世界に足を踏み入れてしまっている」
「結界も、巻き込まれる一般人も……放ってはおけないはず」
「だからといって、安易な選択を取ってほしくはない」
「……だからこそ、こうして私が、守ってあげなくちゃいけないの」
「……うん。 わかった」
「でも、無理はしないでね。 今のほむらちゃん、すっごく辛そうだから……」
まどかは心から心配そうに、ほむらを気遣う言葉を零した。
「……抜ける時は、口裏合わせとくよ」
納得しきれない表情を隠そうともせず、さやかはぶっきらぼうに呟く。
「……ありがとう。 恩に着るわ」
ほむらは乾いた笑みを浮かべ、ただ一言だけ頷いた。
というわけで最初の仕込み完了。
実はほむほむ、わざと魔法で目に隈を作ってます。
これで「夜通し看病したけど経過が悪い、つらたん」という言い訳が自然に成立するわけですね。
で、これをやっている理由ですが――
マミさんが生きていることを、杏子に誤魔化すためです。
杏子は勘が鋭いタイプなので、マミさんが生きていると察した瞬間、風見野に帰ってしまう可能性があります。
なので、あらかじめまどか達に「マミさんは助からないかもしれない」と認識させておきます。
そうすると、杏子に安否を聞かれても、二人は即答できず言葉を濁します。
結果として、杏子は「あ、死んだな」と勘違いする、という寸法です。
お次は、仁美を使ってさやかの契約フラグを立たせます。
一旦昼休みまでスキップ。
>昼休み。
>「……あの、大丈夫ですか……?」
>仁美が話しかけてきた。
>目元の隈を見て、心配している様子。
よし、仁美に話しかけられました。
好感度が一定以上あると、何らかのきっかけで、こうして自発的に話しかけてきます。
ここでやることは二つ。
・魔法少女関連の匂わせ
・仁美がさやかより先に恭介の見舞いに行くよう誘導
先述の通り、さやかの闇堕ちを回避するには、仁美に「さやかが魔法少女であること」を事前に認識してもらう必要があります。
ここでは、あえてそれっぽいワードを散りばめてそれとなく匂わせます。
後で正式にCO(さやか本人にやらせます)した時の信憑性を底上げするための布石ですね。
もう一つは、さやかを契約させる動機づくりです。
今はマミさんが死にかけ+憔悴してるほむほむ(演技)という状況なので、さやかの中にはすでに「自分がなんとかしないとダメなんじゃ……?」という思考が芽生えているはずです。
さらにこちらの工作で、仁美が恋のライバルだという自覚も持っている。
となると、「契約して腕を治せば、もしかしたら……」という打算が混ざってきて、契約をかなり真剣に迷っている状態になります。
要は、仁美を利用してさやかを焚きつけて、契約へと誘導するわけですね。
「……あの、大丈夫ですか……? あまり、眠れていないとか……?」
昼休み。
ほむらが脳内でこれからの作戦を組み立てていると、仁美が声をかけてきた。
目元の“隈”を見て、心配しているのだろう。
これを好機と見たほむらは、彼女を誘導するため、慎重に言葉を選ぶ。
「……すみません。心配をかけてしまって」
「いえ、いいんです。ただ、何かあったのかな、と」
「……お二人も、何やら思い悩んでいるご様子なので……」
仁美はそう言って、いつもより口数の少ないまどかとさやかに、ちらりと視線を向けた。
その問いに、ほむらはあえて言葉を濁す。
「……そう、ですね」
「……昨日は、色んなことがありすぎました……」
「……差し支えなければ、何があったのか、伺っても……?」
「……昨日、ちょっと……普通じゃない出来事に巻き込まれて……」
「それで、私達が仲良くしている人に、大変なことがあって」
「普通じゃないこと……?」
「その……なんと説明したらいいのか……」
ほむらはそこで一度言葉を切り、考え込むように視線を落とす。
そして、わざと聞こえるか聞こえないかほどの声量で、ぼそぼそと呟く。
「結界……魔女……いえ、これは言わない方が……」
「……ま、魔……?」
「……あっ、ごめんなさい」
仁美がわずかに反応したことを確認し、はっとしたように顔を上げる。
「えっと……絵本というか……おとぎ話、みたいな」
「……あまりにも現実的じゃなくて」
一度、言葉を探すように間を置く。
「昨日まで当たり前だと思っていたものが、一気に崩れてしまった、というか……」
「……ああ、だめですね……すみません、うまく言葉にできなくて……」
そう言って、ほむらは頭を抱える仕草を見せた。
その様子を見て、仁美はそっと、ほむらの背に手を添える。
「……問題ありませんわ」
「きっと、あなたも……ご自分の中で、まだ整理がついていないのでしょう」
「お話は、落ち着いてからで結構です。 気が向いた時に、聞かせてくださいませ」
「私にできることがありましたら、いつでも協力いたしますわ」
「……ありがとうございます」
ほむらは力ない笑みを貼り付ける。
そして独り言のように、仁美にのみ聞き取れる声で、ぽつりと呟く。
「……さやかさんにも、悪いことしちゃったな……」
「恭介さんに、プレゼントするんだって、張り切ってたのに……」
「……プレゼント……?」
ぴくりと、仁美の肩が小さく揺れた。
「……あっ」
ほむらは"しまった"という表情で目を泳がせ、慌てたふりをして取り繕う。
「えっと、その、さやかさんが、恭介さんに元気になってほしいって」
「前から準備していて……あっ、すみません、今のは聞かなかったことに……」
わざと墓穴を掘り、最低限の情報を撒く。
「……少し、落ち着きましょう。 まずは、心身を休めることが先決だと思いますわ」
「お話は……また、落ち着いた時にでも」
仁美は、ほむらが漏らした言葉の内容には触れず、
あくまで冷静に、彼女を落ち着かせるように語りかけた。
しかし、その表情に浮かんだほんのわずかな焦りと迷いに、本人はまだ気づいていなかった。
いい感じに誘導できたと思います。
これで、仁美AIのお見舞い優先度が大幅に上昇するはずです。
お、こっそり誰かと電話してますね。
たぶん家の人に車を手配してもらって、終礼後にそのまま病院へ直行といったところでしょう。
この動きなら、どうやってもさやかは後手に回ります。
要するに、仁美が見舞いを終えた直後に、これから向かうさやかとかち合うように誘導しているわけです。
詳しくは後述。
さて、一通りの仕込みは終わったので、あとは終礼までスキップ。
というわけで放課後。
狙い通り、仁美はそのまま病院に向かったようです。
さやかもこのあと向かいますが、ここは同行せず、マミさんの看病を理由に一旦ほむホームに直帰。
三人の動向は烏くんで監視だけしておきます。
魔女移動中……
帰宅しました。 まずマミさんの様子はっと。
>マミの様子を確認。
>ソウルジェムが濁ってきている。
穢れはグリーフシードで吸い取りましょう。
肉体は少しずつ回復してますね、今はおへそのやや上ぐらいまで戻ってきてます。
このペースなら、ワルプル出現の数日前までには完全に戻るでしょう。
>情報:仁美が見舞いを終え、病室からエントランスに移動を開始。
お、烏くんからいいタイミングで情報が。
ちょっと中継見てみましょう。
>《視界ジャック》
>仁美の足取りは重く、表情はひどく曇っている。
あー、これはあれですね。
恭介の腕の状態を聞かされたんでしょう。
具体的には「もう二度と楽器を演奏できない」って感じで。
お気持ちは察しますが、ここまでの流れはすべて想定通りです。
そろそろさやかも来るはずですが……
>情報:さやかが病院に到着。
お、きたきた。
ここで二人がエンカウントすると、仁美から事前に恭介の状態が共有される流れになります。
続けて会話見てみましょう。
病院に着いたさやかは、面会の手続きを済ませるため、足早に窓口へ向かった。
その途中、反対方向から、見慣れた緑色の髪が視界に入る。
「……仁美?」
「あっ……さやか、さん……」
立ち止まった仁美の表情は、一目で分かるほどひどく沈んでいた。
その様子を見た瞬間、さやかの胸を、言いようのない嫌な予感が掠める。
「……恭介の、見舞いに?」
「……ええ。 ちょうど今、終えてきたところです」
その予感が、外れていてほしいと祈りながら。
さやかは、喉の奥を締めつけられるような感覚をこらえ、おそるおそる尋ねた。
「っ……その……どうだった……?」
「………………」
仁美はさらに表情を曇らせ、俯いたまま言葉を失う。
しばしの沈黙のあと、覚悟を決めたように、重く言葉を絞り出した。
「…………腕の状態は……かなり、良くないそうです」
「具体的には……“もう、楽器を弾くのは難しいだろう”と……」
「……ッッッ!!!」
さやかが一度は頭をよぎり、そして最も聞きたくなかった言葉だった。
「そんな……うそ、だよね……?」
縋るように向けられた視線に、仁美は力なく首を横に振る。
「……恭介さんから、直接、聞いたことです」
「看護師の方も……否定は、していませんでした……」
「………………っ!」
さやかは言葉を失ったまま、拳を強く握りしめる。
運命の残酷さと、何もできない自身の無力さを呪いながら。
その隣で、仁美が震える声で呟いた。
「……恭介さんに、どんな言葉をかけてあげるべきなのか」
「私には……分かりませんでした」
堪えきれない悲しみと焦燥が、仁美の目元に滲む。
「さやかさん……」
「私は、どうすれば……いいのでしょうか……っ」
「何も……わからないんですっ……」
あーかわいそう!(サークライ並感)
今まで仕込んできた諸々に加えて、事前に恭介の状態を知ったうえで、さやかが本人と面会する。
これでさやかは「願いの代償を理解したうえで」契約を決意する流れに入ります。
わざわざ手綱を握ってるのは、不確定要素を少しでも減らすためですね。
ただでさえ、今回は予定になかったオリチャーを進行中なので。
どうせ契約するなら、こちらの都合に合わせて動いてもらう、そういう算段です。
というわけで、このあとさやかの面会シーンに入ります。
ちょっと見てみましょう。
仁美と別れたさやかは、胸の奥で渦巻く焦りを必死に押し殺し、病室の前に立った。
一度、小さく息を整えてから。
平静を装い、静かにドアを開く。
「……やっ、恭介。元気?」
「………………」
ベッドに横たわる恭介は、虚ろな目のまま。
ほんのわずかにさやかの方へ視線を向けただけで、何も答えなかった。
その沈黙に耐えきれず、さやかは無理に明るい声を作り、口を開く。
「……あ、そうそう。 今日はちょっと渡したいものが――」
そう言って、用意していた
ふと、先日のほむらの言葉が、脳裏を掠める。
《いきなり渡すのは、良くないと思います》
《私がその立場だったら、"馬鹿にしてるのか"って思ってしまうかもしれません》
《ですから、渡すとしても……本人の精神が少し持ち直すまで待ったほうがいいと思います》
「っ……」
さやかははっと息を詰め、思い直したように手を止めた。
咄嗟に、苦し紛れな言い訳を紡ぐ。
「……あー、ごめん、忘れちゃったみたい。 あたしとしたことが……」
「また今度、渡すね」
「…………?」
恭介はわずかに首を傾げる。
さやかは、こほん、と小さく咳払いをして。
気を損ねないように、当たり障りのない話題から入ろうとした。
「ここ数日、来れなくてごめんね」
「でも、面白い話、いっぱいあるんだよ。 転校生が入ってきたり――」
しかし、今の恭介にとってそれらは、慰めでも気遣いでもなく、ただの耳障りなノイズでしかなかった。
「――人の気も知らないで、のんきに世間話?」
「っ……!」
さやかは思わず言葉を詰まらせる。
それを気にも留めず、恭介は吐き出すように言葉を投げつける。
「僕の手はね、もう動かないんだ」
「諦めろって、言われたんだ。 もう、演奏は諦めろってさ」
「先生から、直々にね。 今の医療じゃ、治す手立てがないって」
「一生、このままなんだ。 動かない、感覚も戻らない」
「もう、ただの障碍者なんだよ、僕は」
「……っ、そんな、こと――」
さやかが、彼を慮る言葉を投げかけようとするが。
恭介はそれを遮り、なおも言葉を重ねた。
自分の声に、熱が帯びていくことにも気づかないまま。
「"そんなこと"?」
「あるに決まってるだろう? 紛れもない事実なんだから」
「励ましなんて要らない。 ありもしない希望なんて持たせないでくれ」
「どいつもこいつも、呼んでもいないのに勝手に来て、適当なことばかり……!」
「もう、うんざりだ!!」
ひと通り言葉を吐き終え、肩で息をする恭介。
視線の先に、涙をこらえきれずにいる
ほどなくして、彼は再び硬い仏頂面に戻っていた。
少し冷静さを取り戻した彼は、さやかに顔を背けたまま呟く。
「……とにかく、僕の手はもう治ることはない。 奇跡か、魔法でもない限りは」
「……だから今は、そっとしておいてくれないか」
「……わかった。 今までごめんね」
「でも……恭介のこと、心配してるってことだけは、分かってほしいな」
涙を乱暴に拭い、さやかは静かに踵を返す。
「……またね、恭介」
そしてドアに手をかける直前。
さやかは一度だけ振り返り、ぽつりと呟いた。
「……これは、独り言だけど」
「――奇跡も、魔法も、あるかもよ」
そう言い残し、彼女はドアを閉め、病室を後にした。
恭介、CD渡してなくてもこの態度なのか……(困惑)
直前に仁美が来てたのもあって、精神的にかなり追い込まれてた感じですかね。
ともかく、これでさやかは契約を"ほぼ"決意しました。
いわゆる、「もう答えは出てるけど、最後の一押しが欲しい」って状態ですね。
そして、これまでの諸々の工作と好感度稼ぎのおかげで、直前にほむほむへ一度相談に来るはずです。
まあ、背中押してほしいだけですね。
>スマホに着信。 発信元はさやか。
早っ。 まだ帰り道でしょさやかちゃん。
出ましょう。 もしもし?
>「……ごめん、ちょっと話せるかな」
>電話口のさやかは神妙な声色だ。 間違いなく、契約のことだろう。
このまま電話でもいいんですが、ここは直接会って話しましょう。
>適当な場所で、待ち合わせを提案する。
>「……わかった。 じゃあ――」
まどかじゃなくてわざわざこっちに相談してくるのは、
現状、ちゃんと話せそうな経験者がほむほむしかいないのと、黙って契約することへの罪悪感でしょう。
魔法少女がどれだけ危険なものかは、嫌というほど理解してるはずなので。
というわけで会話シーンどうぞ。
見滝原に点在する高台。
市内を一望できる隠れスポットだが、平日のこの時間帯では、人の気配はほとんどなかった。
指定された場所へ向かうと、ベンチに腰掛けたまま、街を見下ろしているさやかの姿が目に入る。
「……待たせたわね」
「……ごめんね、わざわざ来てもらっちゃって」
ほむらが声をかけると、さやかは少し申し訳なさそうに返答する。
「……大丈夫よ。 それで……大事な話というのは?」
少し距離を空けて、隣へと腰をかけた。
「…………」
さやかは言葉を探すように視線を泳がせた後、意を決したように口を開く。
「……あたし、契約しようと思っててさ」
(予想通りね)
「!……理由を、聞いてもいい?」
ほむらは少し驚いた演技で、さやかに顔を向ける。
「……さっき、恭介のお見舞いに行ったんだけどさ」
「……腕、もう動かないんだって」
「っ……」
知らないふりをして、息を呑む。
「……奇跡か、魔法でもない限り、今の医療じゃ無理だって」
「恭介から、直接言われた」
「すっごく、落ち込んでてさ。 見てらんないぐらいに」
「それなのに、何もできないのが」
「見てることしかできないのが、ほんとに辛くて」
「…………」
ほむらは無言で続きを促す。
「……前にも言ったと思うけどさ、恭介って、ほんとにバイオリンバカで」
「それこそ、バイオリンを取ったら何も残らないってぐらいに」
さやかは、街を見下ろしたまま続ける。
「……きっと」
「腕が治らない限り、心から笑えることなんて、ないんだと思う」
「うまく理由は言えないんだけど……どうしても、そう思っちゃって」
小さく息を吸ってから、言葉を継いだ。
「……また、笑ってほしい。 もっと、バイオリンを聴きたい」
「そのためなら、あたしは、何だってする」
「………………」
ほむらは何も言わず、顎に手を当てて考え込むふりをする。
「……それにさ」
さやかが首だけをほむらに向ける。
「ほむらも、マミさんのことで辛そうだし」
「あたしが戦えるようになれば、少しは助けになれるでしょ?」
「………………」
ここまで黙って耳を傾けていたほむらは、少し間を置いて口を開く。
さやかの本心を、引き出すために。
「……それで、恭介さんの腕が治ったとして」
「あなたは、何を望んでるの?」
「えっ……? だから、治ってさえくれれば、それで……」
予想外の問いに、目を丸くするさやか。
ほむらは目を細め、低く、はっきりとした声色で改めて問う。
「……本当に?」
「……っ」
さやかは言葉に詰まり、視線を逸らした。
ほむらは言い聞かせるように、静かに言葉を重ねる。
「……契約することそのものは、否定するつもりはないわ」
さやかの肩がぴくりと揺れる。
「けれど。 もし本気で、魔法少女として生きていくつもりなら」
「自分に嘘をつくことだけはしないで」
「……なぜなら」
「自分の中にある矛盾に、きちんと落としどころをつけないまま進めば――」
「やがて、身を滅ぼすことになる。 これは、経験者としての忠告よ」
ほむらの紅い瞳が、まっすぐにさやかを射抜く。
「もう一度、聞くわね」
「あなたの望みは、何?」
「………………」
沈黙。
しばらくして、さやかは小さく息を吸い込んだ。
「……ずるいよ、それ」
「そんな言い方されたら、逃げられないじゃん……」
ぽつりと漏れた声は、どこか自嘲気味だった。
「……また、前みたいに、笑いあえたら……」
そう言いかけて、首を振る。
「……ううん、違う」
「助けたい、とか、元気になってほしい、とか」
「そういうのも、嘘じゃないんだけど……」
さやかの両手が握られる。
「……ほんとは」
「恭介に、振り向いてほしい」
「わかってると思うけど、あたし……恭介が、好きなんだ」
「でも、この前、仁美も、同じだって分かって」
「……ずっと、頭が……ぐちゃぐちゃなんだ」
さやかはこめかみを押さえながら、絞り出すように続ける。
「おまけに……」
「仁美って、すっごいお金持ちのお嬢様だし、おしとやかで、何でもできちゃうし」
「あたしにないもの、全部、持ってる」
自嘲気味に、息を吐く。
「勝てるわけ……ないじゃん」
「……こんなこと考えるの、最低だって分かってる」
「分かってるのに……」
より強く、拳を握りしめる。
「腕が治れば……」
「振り向いて、くれるんじゃないかって、思っちゃって」
「恭介を、仁美に、取られたくないっ……」
「あたし、もう、抑えられなくてっ……」
最後の言葉は、ほとんど嗚咽に近かった。
「……それが、あなたの本音なのね」
ほむらが確認するように問いかける。
「……うん」
さやかが目元の涙を拭いながら、短く答える。
そして、生来の正義感からくる、彼女なりの言葉を続けた。
「……本音は、今言ったのが全部」
「でも、あんたの助けになりたいってのも、嘘じゃない」
「前に、マミさんが言ってたよね。 魔法少女は担当区域があるって」
「見滝原って、結構広いんだよ。 ほむら一人で魔女退治もやって、マミさんの治療もやってなんて、正直無理だと思う」
そしてさやかは、ほむらに向き直る。
「……だから、あたしに手伝わせて」
「あんたが苦しんでるのに、見てるだけなのは、なんかモヤモヤするんだ」
(……誘導は成功ね。 次は――)
ほむらは、彼女の良心につけ込むことに呵責を感じない自分に辟易しながらも、算盤を弾く。
「……分かったわ」
「でも、すぐに契約するのはやめたほうがいい。 今日は一旦、気持ちを整理することをおすすめするわ」
「っ……そう、だね」
さやかの焦りに釘を刺すように、ほむらはそれとなく忠告する。
「……明日の放課後、またここに来て。 契約はその時、私が立ち会うわ」