魔法少女まどか☆マギカ -Kaleidoscope- 実績「時をかける魔女」獲得実況プレイ 作:Hotpepper_N
はい、杏子初エンカでした。
この時期の彼女、スレてるのもあって見ててちょっと痛々しいといいますか……
こう、我々の学生時代の黒歴史を思い出させる感じがあるというか……ウゴゴゴゴ……
……古傷を抉るのはこれぐらいにして。
結界が晴れたので、今日はこのまま解散……の前に。
さっき頼んでおいた物資が近くに届いているはずです。 確認してみましょう。
>……箱が壊されている。 中身はほぼ抜き取られているようだ。
……あの野郎、ネコババしやがったな。
まぁ、予想通りといえば予想通り。
彼女からしてみれば、勝手に置いてあったから取ったってだけでしょう。
>「……アイツ、やっぱりぶちのめした方がよくない?」
>さやかがあからさまに殺気立っている。
どうどう。
後々、彼女を仲間に引き入れれば解消するので問題ないです。
>「………………」
>まどかは無表情のまま壊された箱を見つめている……
ヒェッ……まどかがカンカンでいらっしゃる。
これはさっさと杏子コミュ進めた方が良さそうですね。
というわけで翌日。
さっそく杏子コミュを進めたいので、放課後に一人で会いに行きます。
>「待ちなって! 昨日、引き受けるって言ってたけどさぁ!?」
>「そんな、一人でなんて危ないよ……!?」
>さやかとまどかが、揃って制止してくる。
二人とも、杏子を完全に危険人物認定してますね。
まぁ、そんな心配すんなって。
ここはうまーく言いくるめます。
そもそも、杏子ごときに遅れを取るほどヤワじゃないです。
>むしろ複数で行動した方がリスクが高いこと、危険と判断した場合は即座に撤退するつもりであること。 そのあたりを丁寧に説明する。
>二人は渋々ながらも、最終的には了承してくれたようだ。
これでよし。 さっそく向かいましょう。
杏子の居場所はいくつかの固定ポイントからランダムですが、エンカ率が一番高いのはだいたいゲーセンです。
>ロケーション:ゲームセンター
>店内を見回すと、ほどなくしてダンスゲームに興じる杏子の姿を見つけた。
一発ツモ。 引きがいいですね。
頃合いを見て話しかけましょう。
「よっ、ほっ!」
リズムよく足を運び、杏子は最後の矢印を踏み抜く。
派手なエフェクトとともに、プレイ終了の音が鳴った。
ちょうどそのタイミングで、ほむらは彼女の背後から歩み寄った。
「あん? ……昨日の黒いのじゃねえか。 今度は決闘でもしに来たのか?」
振り返りざまに投げられた言葉には、あからさまな侮りが滲んでいる。
だが、ほむらは眉一つ動かさない。
「いいえ。 今日は、話をしに来たわ」
「……へぇ?」 杏子は口の端を吊り上げる。
「この街、アタシにくれる気にでもなった?」
ほむらはわずかに目を細める。
「……その話も含めて、ね」
「立ち話もなんだし、場所を移しましょう」
一瞬、杏子は怪訝そうにほむらを見つめたが、やがて肩をすくめる。
「いい度胸じゃん。 まあ、ヒマだし付き合ってやるよ」
二人は施設奥の休憩スペースへと移動した。
ほむらは自販機の前で立ち止まり、二本の飲み物を選び。
缶を一本、杏子に差し出す。
「おっ、気が利くねぇ」
杏子は受け取った缶を迷いなく開け、喉を鳴らして中身を流し込んだ。
「ふぃー……で? 話ってのは?」
一息ついてから、今度は値踏みするようにほむらを見上げる。
「……“縄張り”の話よ」
ほむらは視線を逸らさず、淡々と切り出す。
「この街を、あなたに渡すかどうか」
「その件について、私個人としては――それも“致し方ない”と判断しているわ」
「……ほぅ?」
杏子の眉が、わずかにつり上がる。
意外そうな、そしてどこか楽しげな色を帯びた反応だった。
「理由は、いくつかあるわ」
ほむらは言葉を続ける。
「まず一つ。 私たちの実力と、この街の規模が釣り合っていないこと」
「この街は、他の地域と比べても広い」
「“前任”は、相当な実力者だった。 だからこそ、あの体制でも成立していた」
「……でも、今は違う。 あなたの推測通り、私たちでは彼女の穴を埋められていないのが現状よ」
「だろうな。 お前はともかく、新人も筋は悪かねぇが……考え方が甘い。 あれじゃ、長くは保たねぇだろ」
杏子はそう言うと、ベンチに深く背中を預けた。
後頭部に両手を組み、天井を仰ぐ。
辛辣な評価に、しかしほむらは淡々と続ける。
「……そして、二つ目」
「今あなたが言った通り、私たちのスタンスと、魔法少女の実態が乖離していること」
杏子がちらりと視線だけを向ける。
「……魔法少女の使命は、罪なき人を魔女の脅威から守ること。 “前任”も、私たちも、そう信じてきた」
一瞬、言葉を選ぶように間を置き。
「……けれど、現実は違う」
「全てを救うことはできない。 取捨選択を迫られる場面もある」
「……で? アタシのやり方が正しいって言いたいのか?」
杏子が口角を吊り上げる。
「……あなたのやり方に、合理的な側面があるのは認める。 魔法少女として生き延びることだけを考えるならば、ね」
「……賛同は、しかねるけれど」
「……ハッ。 認めてるようなもんじゃねえか」
杏子は短く鼻で笑った。
「弱っちいなりに、理解力はあるみてぇだな。 じゃなきゃ、とっくに死んでる」
「………………」
ほむらはわざと表情に影を落とす。
理想と現実の板挟みに苦しんでいる――そう見せるために。
「……ええ。 だからこそ」
「“現状をどう改善するか”という話になると、あなたの存在は無視できない」
「ほう?」
杏子の視線が、僅かに鋭くなる。
「今の戦力では、この街をあなたに任せた方が、トータルの被害は少なく済む可能性が高い」
「……私情を排して考えるなら、そう判断したわ」
杏子は、じっとほむらを見据えたまま、ゆっくりと笑った。
「……なるほどな。 そこまで分かった上で来たってわけか」
缶を軽く振り、最後の一口を飲み干す。
「だが、それだけじゃねぇんだろ?」
空き缶を指先で弄びながら、射抜くような視線をほむらに向ける。
「街を渡すだけなら、お前らが黙って消えりゃいい。 お前なら、新人を言いくるめるくらい朝飯前だろ」
「じゃなきゃ、わざわざアタシのところまで来る必要なんてないからな」
ほむらはその言葉を否定せず、短く頷く。
「ええ。 ……一つ、条件があるわ」
「……条件、ね。 言ってみな」
杏子は興味深そうに眉を上げる。
「"ワルプルギスの夜"という魔女は知っているかしら」
「……名前ぐらいはな。 それがどうした?」
「およそ二週間後、それが街にやって来る」
それを聞いた杏子は、怪訝な表情を隠そうともしない。
「……にわかには信じ難ぇな。 仮に本当だとして、なんでお前がそれを知ってる?」
「……私は、別の街から来た」
「その時、行動を共にしていた魔法少女がいたわ。 彼女は、予知能力を持っていた」
「予知、ねぇ。 胡散臭ぇ話だな」
「……でも」
杏子が鼻を鳴らす中、ほむらは続ける。
「彼女の予知は、一度も外れたことがなかった。 小さな事件から、大きな惨事まで」
「私が生き延びてこられたのは、ほとんど彼女のおかげよ」
「だから私は、その予知を信じて、その結果としてここにいる」
「待ちな。 なんでそれが、お前がここに来た理由に繋がる?」
「……端的に言えば、私たちだけの問題じゃないからよ」
杏子が口にしたもっともな疑問に、ほむらは淀みなく用意された答えを述べた。
そして反応を確かめるように、言葉を続ける。
「……ワルプルギスは規格外の存在。 放っておけば、きっと被害は見滝原だけでは済まない」
杏子の表情がわずかに険しくなる。
「……そうなれば、縄張りも、ルールも。 全部が形骸化する」
「私たちが、長年“暗黙の了解”で成り立たせてきた、魔法少女としての在り方そのものが、崩れかねない」
ほむらは杏子を真正面から見据える。
「つまり、このままあなたがこの街を手に入れたとしても」
「“アレ”をどうにかしない限り、あなたのやり方は、成立しなくなる可能性が高い」
「……チッ、つまりアタシも無関係じゃねぇって言いたいわけか」
杏子が忌々しげに舌打ちした。
「だから協力しろってことか?」
「ええ」
ほむらは即座に肯定した。
「奴を倒すまでの間だけでいい。 一時的に協力体勢を組んでもらいたいの」
「それが終われば、私はこの街から出ていく。 これは約束するわ」
杏子の眉が、わずかに動く。
「私は今の実力に見合った場所へ移る。 あなたは見滝原という絶好の縄張りを、安全な形で手に入れられる」
「……お互いに、悪い話ではないと思うけれど」
杏子はしばらく黙り込み、指先で空き缶を転がした。
「……ふん」
やがて、低く息を吐く。
「……お前の言い分はわかった。 だがな」
おもむろにソウルジェムを取り出し、小さな槍を具現化させる。
切っ先は、迷いなくほむらへと向けられた。
「――信じるかどうかは、話が別だ」
一瞬で、空気が張り詰める。
意図的に放たれた殺気が、肌を刺した。
「口だけなら、何とでも言える」
「予知だの、ワルプルギスだの。 本当だって保証は、どこにもねぇ」
「それに、アタシは嘘が嫌いなタチでね」
「もし、その予言とやらが外れたら……お前、どうするつもりだ?」
ほむらは一歩も引かなかった。
視線を逸らさず、静かに答える。
「もし、"奴"が現れなかったら……」
「――その時は、私を殺していいわ」
それは、脅しでも覚悟を誇示するでもなく。
あたかも、事実だけを淡々と並べているような声色だった。
「私一人が居なくなったところで、誰も困りはしないわ」
「さやかも、弱い私より、強いあなたと組んだ方が、彼女のためになる」
一拍、間を置く。
「彼女が、これからも魔法少女として生きていくなら」
「なおさら、ね」
杏子は、一瞬だけ目を丸くした。
「……イカれてやがるぜ」
呆れたように、しかしどこか楽しげに呟き。
カチリ、と音を立ててソウルジェムを引っ込める。
「いいぜ。 気に入った、お前」
「その条件、飲んでやってもいい」
そう言って、杏子は振り返りもせず、空き缶をゴミ箱へと放り投げた。
「たかが口約束ごときに、本気で命差し出せる奴なんざ、そうそう居るもんじゃねえ」
「お前の話も、全部が全部、嘘っぱちってわけじゃねぇんだろうさ」
後頭部に両手を組み、ほむらを見据える。
「ま、嘘でも、そんときゃそん時だ。 アタシは何も困らねえ。 お前が死ぬだけだからな」
「……そうね」
(これで同意は取り付けた。 あとは……)
「とりあえず、それまではお前らにちょっかい出さなきゃいいわけだな?」
杏子の確認するような問いに、ほむらは小さく頷く。
「ええ、その通りよ。 必ずしも行動を共にする必要はない」
「それに、その条件を守ってくれるならば、"物資"の供給もこちらで保証するわ」
「物資ぃ?」
「そう。 私たちには民間の協力者がいる。 補給物資を継続的に支援してくれている人よ」
「その人に依頼すれば、食糧も、日用品も、わざわざ盗む必要はなくなる」
さりげない口調だったが、先日の件に触れていることは明らかだった。
もっとも、杏子は、その含みなど気にも留めていない。
ただ、目の色がはっきりと変わった。
「おいおい、それを先に言ってくれりゃよかったんじゃねぇのか?」
杏子は笑みを浮かべ、肩をすくめる。
「いちいち、魔法で人の目を誤魔化すのも面倒でさ」
「タダで貰えるってんなら、それに越したことはねぇ」
にやついた、悪戯っぽい笑み。
「でもな。 それでお前らの取り分が減っても、恨みっこなしだからな?」
「構わないわ。 それも最初から織り込み済みよ」
ほむらは間髪入れずに答えた。
「ククッ……」
杏子は喉を鳴らして笑う。
「いいねぇ、ますます気に入ったぜ」
「お前、悪い奴じゃねぇな。 イカれてるけど」
「………………」
(……どうかしらね。 まともじゃないのは確かだけれど)
「とりあえず、話はわかった」
「当分の間、食い物さえくれるんなら、お前らに手は出さねぇ」
「……助かるわ」
(交渉は成立。 上出来ね)
そうして二人は、休憩所を後にする。
そして、それぞれの帰路につく直前。
杏子はふと思い出したように足を止め、振り返った。
「そういや、名前を聞いてなかったな」
「……暁美ほむら」
「ほむら、ね。 ……佐倉杏子だ」
杏子、参戦!(スマブラ並感)
以上、交渉人ほむほむお送りしました。
いやもうね、モノで釣った瞬間の目の色の変わり方よ。 チョロい(確信)
ともかく、これで杏子はワルプルが現れるまでの間、一時的に味方状態になります。
これにより、マミさんを除いて、主要戦力がようやく出揃った形になりますね。
いやー、長かった。
んで、翌日。
まずは、まどかとさやかに昨日のいきさつを共有しておきましょう。
>「「大丈夫だった!?」」
>登校中、二人は私を見るなり詰め寄ってきた。
もちつけ。
見ての通り、生きてるし元気だから。
>重要な部分は伏せつつ、昨日の顛末をかいつまんで説明する。
>こちらに手を出さない代わりに、支援物資を分けることで話はついた、と。
>「……また前みたいに、全部持ってかれたらどうすんのさ?」
>さやかは渋い顔をしている。
うん、言いたいことはわかる。
前科持ちだからね、あの赤いの。
でも、勝手に盗られるより、条件付きで管理下に置く方が遥かにマシです。
それに、仁美は実家極太のお大尽なので、一人増えた程度では痛くも痒くもありません。
ルートによっては、マザーベースばりのクソデカ拠点作っちゃうレベルですから。
ちなみに、情報を一部ぼかしているのは理由があります。
ワルプルの件は、まだ伏せておきたい。
さやかはともかく、まどかが知った場合、暴走する可能性があるので。
あと、杏子の口が軽い心配は(ほぼ)ないです。
ああ見えて、彼女は割と義理堅いですし、何よりさやかにシンパシー持ってます。
余計な不安を持ち込まないよう、彼女なりに配慮するはず。
というかそうするように誘導してます。
さて、昼休み。
ここでスポンサー様にご報告です。
>新たに魔法少女が一人、条件付きで合流することを伝える。
>「問題ありませんわ。 皆さんの負担が少しでも軽くなるのなら、喜んで協力いたします」
>「……なんか、ごめんね。 色々協力してもらっちゃって」
>「さやかさん、気負う必要はありませんわ。 これは私の善意ですから」
さすが仁美ママ、器のデカさが違うぜ。
というわけで、補給ラインは安泰。
あとは、彼女から大事なお知らせがあるはず。
>ふと、仁美が思い出したように、さやかへ向き直る。
>「……申し訳ありません、大事なことをお伝えしておりませんでした。 本日、恭介さんが退院されるそうです」
>「……! え、ほんと!? 学校は……いつから?」
>「お体に問題がなければ、明日からでも復学なさるご予定だとか」
よし、ちゃんと言ってくれました。
原作だと、さやかがお見舞い行ったらもぬけの殻、職員から退院済みって伝えられてショック受けますが……
仁美の魔法少女認知フラグが立っていて、かつお互いの好感度が一定以上の場合は、こうやって伝えてくれるようになります。
これもさやかの闇堕ちを防ぐための布石です。
そして、今日はもう一つイベントがあります。
皆さんご存知、「食うかい?」のアレです。
一旦、三人で今後の方針を軽くすり合わせつつ下校します。
この流れだとさやかは高確率で、恭介の家に寄ろうとするはず。
>「……ごめん、ちょっと寄り道していいかな」
>帰り道、さやかがふと漏らした。 恭介の様子が気になるらしい。
近くまで来たところで、まどかと一旦待機します。
>ロケーション:恭介の自宅
>恭介の部屋の窓から、バイオリンの音が聞こえる。 今までのブランクを取り戻そうと、懸命に練習を重ねているようだ。
>「……っ」
>インターホンを押すさやかの手が止まる。 今は邪魔をしないでおこう、といった表情で、静かに踵を返した。
健気やなぁ。
さて、このタイミングで赤いのがやってくるはず。
>「会いもしないで帰るのかい?」
よしきた。 ここから会話イベントに入るので、自然に割り込みます。
「会いもしないで帰るのかい?」
二人のもとへ戻ろうとした、その時。
聞き覚えのある声が、夕暮れの路地に落ちた。
さやかがはっと振り向く。
そこに立っていたのは、見覚えのある赤い少女――私服姿の杏子だった。
「……あんた、あの時の」
反射的に、さやかの指が懐へ滑り込む。 ソウルジェムを確かめる仕草。
「おいおい。 別に、取って食おうってわけじゃねぇよ」
肩をすくめ、杏子は苦笑する。
「せっかく一時的とはいえ“仲間”になるんだ。 挨拶くらいはしとこうと思ってな」
“仲間”という言葉を、わざとらしく強調する。
さやかの眉が、ぴくりと動く。
「……まだ、あたしはあんたを認めたわけじゃない」
「つれないねぇ。 せっかく親睦を深めようと思って来てやったんだが」
軽口を叩く杏子に、さやかの表情が険しくなる。
「あんた、この前自分でやったこと忘れたの? こっちを一方的に襲っといてさ」
「あー、悪かった悪かった」
杏子は手をひらひらと振った。
「あん時は事情を知らなかったもんでな。 ほむらから色々聞いてさ、アタシも心を入れ替えたってわけだ」
どう見ても本気の言葉には聞こえない。
さやかの眉間の皺が、さらに深くなる。
そんなことは気にも留めず、杏子は続けた。
「んで、今日は挨拶がてらだ。 “先輩”から、ひとつアドバイスをくれてやろうと思ってな」
「別にそんなの――」
いらない、と言い切る前に、杏子が割り込んだ。
「この家のお坊っちゃんなんだろ? アンタが契約した理由は」
「っ!?」
さやかの息が詰まる。
その反応を見て、杏子の口元がわずかに歪んだ。
「やっぱりな。 街を守るだなんだって綺麗ごと並べてるが……結局、本音はそんなもんだ」
「……だから何?」
声にあからさまな苛立ちを滲ませ、さやかが睨みつける。
「自分に素直になれって言ってんだよ」
少しだけ身を乗り出す。
「そんなくだらねぇ言い訳してねぇでさ。 ウジウジしてる暇があったら、さっさと行動に移せ」
「あいつを自分のものにしたいんだったら……例えば、手足を潰して動けなくするとかさぁ」
「……は?」
さやかの口から、間の抜けた声が漏れる。
理解できない。 そんな表情だった。
「魔法ってのはな、自分の望みを叶えるための力だ。 他人のために使ったって、ロクなことにならねぇ」
そして、吐き捨てるように言った。
「――マミはそんなことも教えなかったのか?」
「っ! この――」
その一言で、さやかの頭に一気に血が上る。
杏子へ向かって、反射的に距離を詰めようとした、その瞬間――
「――その辺にしておきなさい」
静かな声が、空気を断ち切った。
ぴたりと動きが止まり、二人の視線が同時に向く。
いつの間にか、すぐ背後にほむらが立っていた。
「ほむら……!?」
驚くさやかをよそに、ほむらは視線を逸らさず杏子を見据える。
「杏子。 また先日のように、不和を持ち込むつもり?」
淡々とした声音の奥には、「約束を反故にするな」という明確な圧が込められていた。
「……チッ、わかってるって」
杏子が舌打ち混じりに視線を逸らす。
「ただ、こいつの考え方が危なっかしくてな。 ちょっと“矯正”してやろうと思っただけだ」
悪びれる様子はほとんどない。
ほむらは、わずかにため息をついた。
「言い方というものがあるでしょう?」
「あなたの考え方は否定しないわ。 けれど、今あなたがやっているのはただの思想の押し付け」
「こちらに協力してもらう以上――」「何度も言ってるだろ」
杏子がほむらの言葉を遮る。
「アタシ達は正義の味方なんかじゃねえ。
「
「言い方? ハイリョ? そんなもんただの誤魔化しだ。 死にたくないんなら、考え方を変えろってことさ」
「っ、でも――」
「“でも”じゃねぇ」
食い気味に遮る。
「今言ったことは、少なくともほむらは理解してるぜ」
ちらり、と視線を横に流す。
「………………」
ほむらはわずかに目を伏せる。
その沈黙が、肯定のように場に落ちた。
さやかの言葉が止まる。
「……さやか、だったか」
杏子は視線を戻す。
「さっきも言ったが、自分に素直になれよ。 お前が魔法少女として生きるってんなら、なおさらな」
軽く肩をすくめる。
「それに、何をそんなに躊躇ってんだか。 付き合うくらい、どうってことねぇだろ」
「は……?」
さやかが睨み返す。
「魔法少女なんてさ、結局は人間と大して変わらねえ。 ちょっと傷の治りが早いだけだ」
ほむらは伏せていた目を上げ、さやかを一瞥する。
そして、言い返そうとしたその動きを手でそっと制した。
「……これは、先に伝えておいた方がいいかもしれないわね」
「あん?」
杏子が眉をひそめる。
「一つ、あなたは誤解している。 ――魔法少女の肉体について」
その言葉を起点に、ほむらは淡々と説明を重ねていく。
問いを挟み、確認させ、少しずつ絞り込む。 彼女自身で辿り着かせるために。
やがて、杏子の表情が目に見えて険しくなっていった。
「……ちょっと待て。 つまり、アタシ達はゾンビってことかよ……!?」
「ええ。 おおよそ、その認識で間違いないわ」
ほむらは迷いなく頷いた。
沈黙。
杏子の顔から、余裕が消える。
「……ふざけんなよ」
そして、苛立たしげに咥えていた飴を噛み砕いた。
「はいそうですか、って納得できるわけねぇだろ、そんなの……!!」
ほむらはそれを受け止めるように、静かに言った。
「そう思うのも無理はないわね。……場所を移しましょう。ついてきて」
ほむらはそう言うと、踵を返す。
連れて行かれたのは、人通りのない歩道橋。
人気はなく、周囲の音がやけに遠い。
三人を振り返り、ほむらはゆっくりと口を開いた。
「……さやか。 今からあなたに、少し酷なことをお願いするわ」
「えっ……?」
さやかは戸惑いを隠せない。
ほむらは一拍置いてから続けた。
「ソウルジェムを、貸してもらえる?」
「……えっと、何をするの……?」
警戒と不安が混じった声。
検証よ、と端的に答える。
「ソウルジェムが魂であることを、ここで証明する必要がある」
「……大丈夫。 ほんの短時間よ。 危険がない形で行うわ」
その言葉に、さやかはわずかに迷う。
「……う、うん……」
小さく頷き、ソウルジェムを差し出した。
ほむらはそれを受け取り、静かに指先で確かめる。
そして、まどかの方へと差し出した。
「……まどか」
「う、うん……?」
「これを持って、私が合図するまで、少し離れた場所まで下がってもらえる?」
「えっ……? う、うん……わかった……?」
戸惑いを隠せないまま、まどかはソウルジェムを受け取る。
両手で大事そうに抱え、言われた通り、ゆっくりと距離を取っていく。
「……いったい何をする気だ?」
怪訝さを隠さず、杏子が口を挟む。
「見ていればわかるわ」
短く返し、ほむらは視線をさやかへ向ける。
「……さやか。 横になって」
「えっ、ここで……?」
「ええ。 すぐに終わるわ」
さやかはなおも困惑しながらも、
言われた通り、その場に身を横たえた。
コンクリートの冷たさが、背中に伝わる。
「……これでいいわ」
ほむらは一度、橋の下へ視線を落とす。
――ちょうど歩道橋を降りたまどかが、こちらを見上げていた。
不安げなその視線に、ほむらは小さく頷き、手で合図を送る。
――そのまま、続けて。
まどかが、さらに距離を取る。
「……ん?」
少しして。 さやかが、小さく眉を寄せた。
「……あれ……なんか……眠く……」
呼吸がわずかに浅くなり、視線がぼやける。
さらに、距離が離れる。
さやかの意識が遠ざかっていく。
そして。
「ぁ___」
フッ…………
糸が切れたように、さやかの身体からすべての力が抜け落ちる。
その肉体は、一切の生命活動を示さなくなった。
その事実を確認したほむらは、即座に息を吸い込み、まどかのいる方向に声を放った。
「まどか、そこで止まって!」
弾かれたように、彼女の足が止まる。
「……!!!」
杏子の息を呑む音が、僅かに響く。
「……おい、どういうことだよ……」
「これ……死んでるじゃねぇか……!」
「……ええ、その通りよ」
ほむらは淡々と答えた。
「ソウルジェムは魂そのもの。 それを身体から引き離せば――器は、ただの抜け殻になる」
「――分かってもらえたかしら?」
「………そういう、ことかよ……!!」
絞り出すような声。 困惑、怒り、理解が一度に押し寄せている。
杏子は拳を握りしめたまま、言葉を失った。
ほむらは一瞥だけ向けると、すぐに視線を外した。
「――まどか、戻ってきて!」
「う、うん!」
踵を返し、やや早足で歩道橋へと戻ってくる。
距離が縮まり、そして。
「――はっ!!?」
さやかの胸が大きく跳ねた。
空気を求めるように息を吸い込み、反射的に上体を起こす。
すぐに、ほむらが肩を支えた。
「慌てないで。 ゆっくりでいいわ」
視線を合わせ、落ち着かせるように言う。
呼吸が整うのを待ってから、ゆっくりと立ち上がらせる。
ほむらは一歩下がり、静かに頭を下げた。
「……ごめんなさい。 必要だったとはいえ、こんなことをさせてしまって」
「……あー、うん。 大丈夫。 めっちゃびっくりしたけど」
さやかはぽりぽりと頬をかいた。
「さやかちゃん……!」
その時、階段を駆け上がりまどかが歩道橋に姿を現した。
ちなみに、ほむほむが語った予知云々について、Scene0などはまったく関係ありません。
彼女がそれっぽい説明するための真っ赤な嘘です。