魔法少女まどか☆マギカ -Kaleidoscope- 実績「時をかける魔女」獲得実況プレイ 作:Hotpepper_N
はい、というわけで。
身バレからの正体CO、予定通り完了です。
いやぁ……分かってはいましたが、クッソ重いイベントでしたね。
特に最後のお願い。終わったら一思いに殺してくれと。
ほむほむの覚悟がガンギマリすぎてもう……
ともかく、杏子とさやかは、ほぼ確実に協力してくれるでしょう。
あの場では返事をしていませんが、ここまで聞いて「じゃあ知らね」と帰れるような二人ではありませんからね。
まどかも当然来るでしょうし、これでワルプル戦へ向けたメンバーが揃います。
魔女ルートにおけるワルプルについて、少し解説しておきましょう。
実はこいつ、通常ルートとは仕様が異なりまして。
魔女ルートの場合、あいつの強さはほむほむのステータスと連動してます。
要するにこちらが強くなればなるほど、あちらも比例して強化されるわけです。
なので、ほむほむ単騎での撃破はひじょーーーに困難。
まどか以外の魔法少女を全員参戦させる必要があったんですね。
まあ、まどかが契約しちゃえば楽勝なんですけどね。
でもそれじゃあちょっとつまらないんで、今回はまどかを契約させずにクリアしたいと思います。
それでは翌日までスキップしましょう。
>ロケーション:ほむらの家
こちらは既に準備を整えて待機しています。
ん?いつの間にかティーセットとお菓子まで用意されてますね。
マミさんが調達したんでしょうか。
\ピンポーン/
お、そうこうしてるうちに、さっそく来たようです。
>玄関のドアが開く。
>さやか、まどか、そして杏子が姿を現した。
はい、無事に全員集合です。
昨日のいきさつがいきさつなんで、来ないパターンもワンチャンあるかと思ってたんですが……杞憂でしたね。
>リビングに三人を通す。
ちなみに、ほむホームは絶賛アップデート中です。
マミさんがやってきてからというもの、以前とは比べものにならないくらい生活感が増しました。
>リビングの中央には、ソファとローテーブル。
>テーブルの上には、ティーセットと、こんもり盛られた菓子。
そう、いつの間にかティーセットやらお菓子やらが常備されるようになったんですよね。
無機質だったあの部屋が、今やちょっとした応接間です。
マミさん、こういうとこ本当にマメ。
>まどかたちを席に案内する。
さて。 それじゃ、いよいよ作戦会議といきましょう。
ここからは等速で、じっくりどうぞ。
玄関のドアが開いても、三人はすぐには入ってこようとしなかった。
先頭に立っていたさやかは、敷居の手前で一度足を止める。
その後ろでは、まどかが不安げに視線を落としていた。
そして最後尾の杏子は、腕を組んだまま、あからさまな警戒の色を隠そうともしていない。
しばしの沈黙の後。杏子が、誰にともなく呟いた。
「昨日の今日でよ。 頭ぁおかしくなりそうだぜ」
「……それは、あたしも同感」
さやかが、硬い声で応じる。
そう言いながらも、二人の足は、確かに敷居をまたいでいた。
来ないという選択肢も、あったはずだ。
それでも三人がここに立っているのは――昨夜、ほむらが語った言葉が、どうしても嘘には聞こえなかったからだ。
「いらっしゃい。 よく来てくれたわね」
奥から現れたのは、マミだった。
昨夜と同じ魔法少女の姿ではない。 柔らかな色合いの私服に、エプロンを重ねている。
あまりにも日常的な姿に、杏子の眉がぴくりと動いた。
「……なんだよ、その格好」
「あら。お客さんを迎えるのに、戦闘服がドレスコードというわけじゃないでしょう?」
マミは穏やかに微笑む。
だがその微笑みの奥に、昨夜見せた氷のような何かが、まだ薄く残っている。
杏子はそれを敏感に感じ取ったのか、それ以上は何も言わず、口を噤む。
「まあ、立ち話もなんだから。 座って」
促されるまま、三人はリビングへ足を踏み入れた。
さやかとまどかが並んでソファに腰を下ろし、杏子は少し離れた一人掛けの椅子へ、浅く腰かける。
完全には背を預けず、いつでも立ち上がれるようにした独特の座り方。
そこには、彼女なりの警戒がありありと滲んでいた。
マミは何も言わず、手際よく紅茶を注いでいく。
湯気の立つカップが、それぞれの前に置かれた。
「……毒でも盛ってんじゃねぇだろうな」
「盛るなら、もっと分からないようにするわ」
マミがさらりと物騒な言葉を返した。
杏子は一瞬言葉に詰まり、それから、ふん、と鼻を鳴らしてカップに口をつけた。
「……ちっ。 うまいのが、余計に腹立つな」
「あらそう。褒め言葉として受け取っておくわね」
そのやり取りに、さやかの肩からほんの少しだけ力が抜けた。
まどかは、カップを両手で包んだまま、俯いていた。
その視線の先には、湯気に揺れる自分の顔が、頼りなく映っている。
そして――部屋の奥。
モニターの前に立つほむらへと、まどかの視線がそっと向けられた。
「……ほむらちゃん」
か細い声だった。
昨夜、初めて見た涙。
仮面の下に隠されていた、あまりにも長い時間の重み。
それを知ってしまった今、まどかはもう、以前と同じ目で彼女を見ることができない。
ほむらは、その視線に気づいていながら――あえて、応えなかった。
「……全員、揃ったわね」
代わりに、彼女は淡々と切り出した。
まるで、昨夜のことなど何もなかったかのように。
「時間は有限よ。 早速、本題に入らせてもらうわ」
パチン、と指を鳴らす。
壁際に並ぶ画面へ、一斉に明かりが灯った。
はい、というわけで作戦会議スタートです。
ここからは、ほむほむがプレゼン形式で説明していく流れになります。
モニターと資料をフル活用した、超本格的なやつですね。
……いやほんと、コミュ障だった頃のほむほむからは考えられない成長ですよ。 三十余周のループは伊達じゃない。
>モニターに、一体の魔女の姿が表示される。
>巨大な逆さまのシルエットに、歯車のような意匠。
まず最初のスライドは、こいつ。
今回のラスボス、みなさんご存じ「ワルプルギスの夜」です。
今、ゲーム画面ではほむほむが詳しく説明していますが、こちらでは要点だけかいつまんでいきましょう。
こいつはそこらの魔女とは格が違います。
というか、一体の魔女ですらない。 複数の魔女が混ざり合って生まれた、極めて特殊な個体です。
その気になれば街一つ更地にするくらいの力を持ってます。
まさに、台風とか地震とか、そういうカテゴリーの化け物です。
>「これが、数日後にこの街を襲う」
>ほむらの言葉に、三人の表情が強張る。
で、ここでさやかが当然の疑問を投げかけます。
>「……ほんとに、こんなヤバいのが来るの?」
いい質問ですね。
>「ええ、断言するわ」
>「x月x日、xx時xx分――私が経験したすべてのループで、寸分違わずこの日時に出現している」
昨日全部ゲロったおかげで、今回は予知だの統計だの、変に取り繕った説明をしなくて済みます。
包み隠さず話せるって、楽でいいですね。
さて。 ここからが本題。
「なぜ、全員の力が必要なのか」という話です。
「――前回の時」
ほむらは、モニターを操作しながら続けた。
画面が切り替わり、淀んだ空を映した記録映像が表示される。
「詳しい経緯については割愛するけれど、その時私は、奴とは戦わなかった」
「戦わなかった……?」
さやかが眉をひそめる。
「ええ。 戦う理由がなかった、というのもある」
「そして何より、私一人では倒しきれないと判断したから」
ほむらの指が、操作盤の上を滑る。
「その代わり、奴の行動を観察したわ」
「奴は出現後、大量の使い魔を呼び出していた」
ほむらの指が、止まる。
画面いっぱいに、その光景が広がった。
「……っ」
まどかが、小さく息を呑む。
夜空を埋め尽くしていたのは――無数の影だった。
歯車。 剣。 楽器。 意味をなさない無数の断片が、形を持った悪夢のように蠢いている。
それらは空を覆い、地を這い、街へ向かって押し寄せていた。
「使い魔よ」
ほむらが、静かに告げる。
「本体が引き連れている、使い魔の群れ。 その数――およそ、数千」
「……は?」
聞き間違いを疑うような声だった。
だが、ほむらは振り返ることなく続ける。
「一体一体は、大した脅威じゃない。 でも、数千となれば話は別よ」
画面の中で、影の群れが、まるで津波のように押し寄せていく。
「私一人では、本体にたどり着くことすら難しいと判断したわ」
ほむらの声に、わずかな苦みが滲んだ。
「……だから、アタシらか」
杏子が、忌々しげに舌打ちする。
「頭数が要るってわけだ。 壁を突破するための」
「そういうことよ。役割を分担して、互いに援護しながら使い魔を処理する」
「そうすれば、本体へ接近できる可能性は高くなるわ」
「可能性、ね……」
さやかが低く呟く。ほむらはあえて否定しなかった。
全員で挑んだとしても、生き残れる保証はない。
その事実が、言葉にされずとも伝わってくる。
しん、と部屋が静まり返った。
数千。
その数字の重みが、今になってようやく、それぞれの胸へ沈んでいく。
画面には今も、街を覆い尽くさんばかりの使い魔の群れが映り続けていた。
「……作戦は、三段階に分けて考えているわ」
ほむらは、再びモニターへ向き直る。
画面が切り替わり、三つの項目が並んだ作戦概要が表示された。
「順番に、説明する。 ――よく聞いて」
はい、ここからが作戦のキモ、フェーズ解説です。
ちゃんとメモ取ってくださいね、テストに出ますよ(出ません)。
>作戦ボード表示:【対ワルプルギス 殲滅作戦】
まずは全体の配置から。
今回のパーティは、ほむほむ・マミさん・さやか・杏子の四人。
それでは、フェーズごとに見ていきましょう。
>【第一段階:使い魔の殲滅】
第一段階は、さっき説明した数千体の使い魔をどう処理するか、というフェーズです。
>役割:
>・佐倉杏子/美樹さやか ……前衛。 陽動役
>・暁美ほむら ……空爆
>・巴マミ ……掃討・戦線維持
流れはこうです。
まず、杏子とさやかが前に出て、派手に暴れて使い魔の注意を惹きつけます。
陽動役ですね。 二人とも近接タイプなんで、これは適任。
で、使い魔の意識がそっちに向いた瞬間――
ほむほむが空から《Hölle Rache》をブチ込みます。
おなじみ、炎の絨毯爆撃ですね。 密集した群れに撃ち込めば、一掃できます。
で、爆撃を免れた個体や群れから外れた個体、前衛へ接近しすぎた個体。
そういった撃ち漏らしを、マミさんが後方から狙撃して処理します。
同時に、二人が崩されないよう援護しつつ、安全地帯を広げていく。
これを繰り返しながら、少しずつ戦線を前へ押し上げるわけですね。
ざっくり言うと、「二人で釣って、上から焼いて、こぼれた分を撃ち落とす」。
これを延々繰り返して、使い魔の壁を削っていくわけですね。
やってること自体はシンプルですが堅実。
四人の長所も噛み合っていますし、一番事故が起きにくい形ですね。
「――質問だ」
杏子が、手を挙げるでもなく口を挟んだ。
「アタシとさやかが、ずっと前で釣り続けるんだろ? 数千もいる中で」
「そんなもん、いつか押し潰されて終わりじゃねぇのか」
その問いに、さやかも僅かに表情を強張らせる。
自分たちが担う役割の危険性を、改めて突きつけられたのだろう。
「その懸念はもっともよ」
「だから、あなたたちには“下がる余裕”を持たせる」
杏子が、訝しげに眉を寄せる。
その視線を受けながら、ほむらは操作盤へ手を伸ばした。
画面が切り替わる。
使い魔の群れを示していた図が消え、本体を中心とした新たな戦況図が表示された。
「――第二段階の説明に移るわ」
ほむらはモニターを見据えたまま続ける。
「使い魔をある程度まで削ったところで、本体が直接攻撃へ移る」
「……分かるのか?」
杏子の問いに、ほむらは頷いた。
「これまでのループで、何度か同じ状況を確認しているわ」
「使い魔を一定数以上失うか、本体へ直接接近されると――奴は手駒だけでは対処できないと判断するのか、自ら攻撃を始める」
「どうやって?」
さやかが問う。
「少なくとも、私が確認した限りでは――大規模な炎の魔法よ」
ほむらは画面を切り替える。
そこに映し出されたのは、上空を覆うほどの火炎だった。
地上へ向かって膨れ上がる、巨大な灼熱の奔流。
「もちろん、今回もまったく同じ動きをする保証はない」
「でも、最も警戒すべき攻撃として想定しておく価値はあるわ」
「一撃で、この辺り一帯を焼き払うほどの規模よ」
「まともに受ければ、命はない」
その言葉に、部屋の空気がさらに張り詰める。
まどかが無意識にカップを握る指へ力を込め、さやかもさらに緊張を滲ませている。
杏子だけは黙ったまま画面を睨んでいたが、その表情から余裕は消えていた。
「だから、そのタイミングで――私が、全員に盾を張る」
ほむらが片手を持ち上げる。
淡い緑色の光が、その掌へ集まり始めた。
光は幾重にも重なり、やがて半透明な盾の形を取ってほむらの眼前へ展開された。
「でも……一枚につき、あの炎を防げるのは一度きりよ」
「何度か張り直すことはできる。ただし、消耗は大きいわ」
「……お前が、全員分? そんな器用な真似できんのかよ」
「できるわ。 一瞬だけならね」
ほむらは迷いなく答える。
そして、そのまま視線をマミへと向けた。
「そして、ここでマミさんの出番よ」
呼ばれたマミが、静かに頷く。
その左手の薬指で、金色の指輪がちらりと光った。
「先日、この作戦のために、ほむらさんと新しい魔法を開発したの」
そう言って、マミはテーブルの上へ二つの指輪を差し出す。
金色のリボンを細く編み込んだような、繊細な意匠。
一目では、魔法の道具とは分からないほど自然な造りだった。
「佐倉さん、さやかさん。 これを着けてもらえる?」
「……なんだこりゃ」
杏子が、いかにも胡散臭そうな顔で指輪をつまみ上げる。
指先で軽く回し、裏返し、何か仕掛けでもないかと確かめるように眺めた。
「マーキングよ。それを着けていれば――私が、あなたたちを一瞬で手元まで引き寄せられるの」
「引き寄せる……?」
さやかが指輪とマミの顔を交互に見る。
「ええ」
マミは自分の左手を持ち上げる。
薬指の指輪から、細い金色の光が伸びた。
それは瞬時に、テーブルの上に置かれた二つの指輪へと接続された。
「たとえば、炎が迫ってきた時、あなたたちが自力では避けきれない位置にいたとしても――」
マミが、指を軽く引く。
それに呼応するように、二つの指輪がわずかに浮き上がった。
「私が即座に引っ張り込むわ」
杏子の目が、少しだけ細くなる。
「強制的に、か?」
「ええ。発動すれば、本人の意思に関係なく引き寄せるわ」
「緊急時に確認を取っている暇はないもの」
「……なるほど。 緊急脱出装置ってわけね」
さやかが、指輪を見つめながら要点を整理する。
「そういうこと。 呑み込みが早いわね」
マミが優しく目を細める。
その表情には、かつての"頼れる先輩"の面影が、確かに宿っていた。
さやかは、手のひらに置かれた指輪を見つめる。
ほんの少しだけ迷った後、意を決したように、薬指へとはめた。
杏子はというと、しばらくのあいだ指輪を手のひらの上で転がしていたが。
「……ちっ。 まあ、保険にはなるか」
ぶっきらぼうに呟き、自分の指へ無理やりねじ込んだ。
マミは二人が指輪を着けたことを確認すると、満足そうに頷く。
「基本的には、マミさんが二人を引き戻す」
「私の盾は、その回収が間に合わなかった場合の保険よ」
「それと――引き寄せを行うマミさん自身を守るためでもある」
ほむらが話をまとめるように言った。
「誰も欠けることなく、さらに戦線を本体の目の前まで押し上げる」
モニター上で、前衛の二人を示す光点が後退し。
代わりに、四人を囲う防御陣が表示される。
そのまま作戦図は更新され、ワルプルギスとの距離が一気に縮まる。
部屋の空気が、再び引き締まる。
ここまでが、使い魔の群れを突破するための手順。
そして残るは、本体そのもの。
ほむらは操作盤へ手を伸ばし、次の画面を呼び出す。
「そして――最終段階よ」
ではいよいよ大詰め、第三段階です。
ここが決まれば、勝ち。 いわゆるフィニッシュブロウのフェーズですね。
>【第三段階:本体撃破】
流れはこうです。
まず、マミさんが本体の正面に出て、思いっきり派手に暴れます。
囮ですね。 ド派手に立ち回って、本体の視線を全部持っていく。
同時に、杏子とさやかが左右から本体にちょっかいを出して、注意をさらに散らします。
これで本体の意識は、完全に三人に釘付け。
そして、その隙に――
ノーマークのほむほむが、本体の真上を取ります。
ここで三人へ離脱の合図。
杏子とさやかは左右へ全力で退避。
マミさんはギリギリまで正面で注意を惹きつけたあと、グイダートで一気に二人ごと射程外へ離脱します。
全員が爆心地から離れたのを確認したところで、《Hölle Rache》の最大出力版――Feuerkernを投下。
爆風だけでも杏子とさやかが吹っ飛ばされかねないレベルの威力なんで、タイミングをミスれば普通に乙ります。
で、爆発の音と光で本体が一瞬眩んだ隙に、畳みかけます。
《カテーナ・レガーメ》でまずは拘束。 鎖で本体をがっちり縛り上げます。
ただ、相手が相手なんで、そんなに持ちません。
ダメ押しで《V.V.V.F.》を流して鈍らせるとはいえ、引きちぎられるのは時間の問題。
なので、間髪入れずに次へ移行。
《封印術・遠神能看可給》の範囲版を叩き込みます。
これで本体は身動きも、魔法も一切封じられます。
そして、その間に魔力を溜めていたマミさんが最大技《ボンバル・ダメント》を動けない本体に叩き込む。
満身創痍になったところで、最後はほむほむがとどめを刺す。
これでワルプルギス撃破、作戦完了というわけです。
……とまあ、口で言うのは簡単なんですけどね。
正直、めちゃくちゃシビアなプランです。
特に、MP管理。
シールド、空爆、拘束、封印、全部ほむほむ持ちですからね。
一つひとつの消費も重いですし、MPが減りすぎると暴走リスクがあります。
当然、《Hölle Rache》を好き放題撃てるわけではありません。
第一段階で使える回数には、あらかじめ上限を想定済み。
使い魔が十分に密集した時だけ撃ち込んで、一定の回数に達した時点でそれ以降の空爆は打ち切ります。
何より優先するのは、最終段階で使う拘束・封印・とどめ用のMPを残すこと。
どの技をどの時点で何回使うか、そこまで含めてしっかりチャートを組んでます。
まあ、そこはこっちも何十周もやってきたベテランなんで。
計算はバッチリ……のはずです。
そこ、フラグとか言わない。
ほむらが説明を終える。
長い沈黙が、部屋に落ちた。
最初にそれを破ったのは、杏子だった。
「……ふん」
腕を組み、背もたれに深く体を預ける。
「絵に描いたような作戦だな。 綺麗すぎて、逆に信用ならねぇ」
「机上の空論だと?」
「そうは言ってねぇ」
杏子は面倒くさそうに天井を仰いだ。
「筋は通ってる。 むしろ、通りすぎてて気持ち悪ぃくらいだ」
「こんだけの盤面を組めるやつぁ、そういねぇよ」
それから、ちらりとほむらへ視線を向ける。
「……何十回だか何百回だか知らねぇが。 だてに繰り返してねぇってことか」
その言葉に込められていたのは、侮蔑ではなかった。
警戒も、疑念も、まだ消えてはいない。
それでも、何度も死地を潜り抜けてきた者として、ほむらの積み重ねを認めた。
「……ま、いいぜ」
杏子は、ぐっと伸びをして立ち上がる。
「乗ってやるよ、その作戦。 どうせ、街ごと吹っ飛ばされちゃ元も子もねぇしな」
「……あたしも」
続いて、さやかが口を開く。
膝の上で握っていた拳に、さらに力がこもった。
「正直……まだ、全然整理できてない」
「身体がどうなるのかは、分かったうえで
「でも……魔女があたしたちの成れの果てなんてこと、昨日聞かされてさ」
さやかは握り締めた手へ視線を落とす。
「もし最初から全部知ってたら、それでも契約したのかって聞かれたら……」
「……今は、分かんない」
少しだけ声が詰まる。 強がる余裕は、今の彼女には残されていなかった。
「正直、怖くてしょうがないよ。 いつ自分がそうなっちゃうんだろうって」
「……でもさ」
やがて、顔を上げる。
「もう、今さら元の人間に戻れるわけじゃないでしょ?」
「だったら、魔女になるとか、その先どうするとか……うだうだ考えたってしょうがないかなって」
モニターに映し出されたワルプルギスの夜を見る。
「まず、こいつを何とかしなきゃ」
「街ごと吹っ飛ばされたら、その先のこと悩む暇すらないじゃん」
そして今度は、ほむらをまっすぐに見る。
「それに……昨日の話まで聞いて、まだあんたを疑う気にもなれないよ」
「――だから、やる。 やってやるよ」
言い切ると、さやかは強く頷いた。
ほむらは、二人を順に見つめる。
わずかに張り詰めていた表情が、緩んだ。
「……ありがとう」
短い言葉だった。
それでも、その声には隠しきれない安堵が滲んでいた。
そして――
「あの」
それまで黙っていたまどかが、静かに手を挙げた。
「わたしは……わたしは、何をすればいいの?」
その問いに、部屋の空気がわずかに変わる。
マミ、杏子、さやかが、それぞれ視線を向けた。
そしてほむらは、まっすぐにまどかを見て。
ゆっくりと、首を横に振った。
「まどか。 あなたは避難しなさい」
「……えっ」
まどかの表情が固まる。
「当日は、私が指定する避難所へ向かって」
「これまでのループで、奴による直接の被害を受けていない場所よ」
「絶対とは言えないけれど、少なくとも私が知る限りでは、最も安全性が高い」
「それに、この街から無理に離れれば……避難経路そのものが混乱に巻き込まれる可能性もある」
一拍置き、言い聞かせるように。
「だから、戦いが終わるまで、そこから動かないで」
「そんな……!」
まどかが勢いよく立ち上がった。
テーブルの上のカップが、かすかに揺れる。
「みんなが命がけで戦うのに、わたしだけ安全な場所にいろっていうの!?」
「そうよ」
ほむらは迷いなく肯定した。
「あなたは契約していない。 戦う力がない。 それが理由の全てよ」
「でも、わたしにだって、何か……!」
「――まどか」
ほむらの声が、わずかに鋭さを帯びる。
「あなたを戦場に近づけないこと。 それが、この作戦の最優先事項なの」
まどかは言葉を失った。
その言葉の裏にある意味を、昨夜聞かされたばかりだったからだ。
自分が契約すれば、この星が滅ぶ。
それを防ぐために、ほむらはすべてを賭けている。
だからこそ、まどかを戦場から遠ざけようとしている。
その理由が分かってしまうから、強く言い返すことができなかった。
「……念のため、あなたには監視をつけておくわ」
ほむらはそっと指を鳴らした。
羽音とともに、どこからともなく一羽の小さな烏が舞い降りる。
烏は部屋の中を一度だけ旋回すると、テーブルの縁へ静かに降り立った。
「この烏が、常にあなたのそばにいる。 何かあれば、すぐに私に伝わるようになっているわ」
「……ほむらちゃん」
まどかは俯き、膝の上で両手をぎゅっと握りしめる。
引き止めたい。 一緒に戦いたい。
でも――自分にできることが何もないことも、分かっていた。
「……分かった」
絞り出すような、声だった。
「わたしは、みんなの帰りを待ってる。 ……ちゃんと、待ってるから」
顔を上げたまどかの目には、涙が滲んでいた。
それでも、その瞳の奥には――何か、静かな決意のようなものが宿り始めていた。
ほむらは、その表情を見つめる。
ほんの一瞬、何かを言いかけるように唇を動かして。
結局、何も言わずに目を伏せた。
「――さて」
その空気を断ち切るように、マミが立ち上がった。
パン、と両手を合わせ、全員を見回す。
「話はまとまったわね」
そして、テーブルの中央に、自分のカップを掲げた。
「難しい作戦だし、危険な戦いになる。 それは間違いないわ」
「でも――私は、こう思うの」
マミの表情が柔らかく緩む。
昨夜見せた氷のような冷たさは、今はもう残っていなかった。
「せっかく、こうして五人が集まったんだもの」
一人ひとりの顔を、順番に見つめる。
杏子を、さやかを、まどかを、そして――ほむらを。
「だから、約束しましょう」
カップを、少しだけ高く掲げる。
「――全員、生きて帰りましょう」
しんと静まり返った部屋に、その言葉が落ちた。
さやかが、はっとしたように自分のカップを手に取る。
「……うん」
まどかも涙を拭い、両手でカップを持ち上げた。
一方杏子は、ふん、と鼻を鳴らすが。
「……ま、死ぬつもりで戦うよりはマシか」
そう呟きながらも、渋々とカップを掲げた。
そして、ほむらは。
ほんの一瞬だけ、指先を止めた。
(……全員、生きて帰る、か)
その言葉が、自分に適用されるとは思っていない。
それでも――今はただ、この温かな輪の中に、身を置いていたかった。
ほむらは、静かにカップを手に取る。
「……ええ」
小さく、そう呟いて。
――カチャン。
五つのカップが、そっと触れ合った。