魔法少女まどか☆マギカ -Kaleidoscope- 実績「時をかける魔女」獲得実況プレイ 作:Hotpepper_N
後日談がようやく形になってきたので、書きあがり次第投稿していきます。
本編の続きでほむほむが最初から円環側にいたら、というIFになります。
※かなり独自解釈・設定が多めです。ご注意ください。
盤石の物語 -OPERATION BITTERSWEET- ①
それはひとつの街を丸ごと覆い隠せるほどの、巨大な障壁だった。
しかし、人の目にも、機械の目にも、その姿を捉えることはできない。
そこにあるという事実そのものが、認識から抜け落ちるよう細工されているのだ。
その内側には、外界から隔絶された広大な空間が広がっていた。
色を失った市街地のような風景。
意味をなさない構造物が、無秩序に立ち並んでいる。
その片隅に、ひっそりと造られた施設があった。
白い壁面には無数の得体のしれない装置が並び、規則正しく明滅する光が薄暗い内部を照らしている。
その中を、五つの黒い物体がゆっくりと運ばれていた。
金属とも黒曜石ともつかない、人の丈ほどの無機質な長方形。
表面には、ただ一箇所だけ色があった。くすんだ宝石にも似た、鈍い輝き――ソウルジェム。
それらが無機質な床を滑るように運ばれ、やがて施設の中央へと並べられていく。
規則的に、等間隔に。上から見れば、五角形を描くように。
ガコン……
最後のひとつが所定の位置へ収まった瞬間、低い駆動音が響く。床面から固定具がせり上がると、黒い物体の側面を挟み込んだ。
鈍い音が、ひとつ、またひとつと響く。
そうして五基すべてが、床へと固定されていった。
ゴウン……
それが終わると、五角形の中央で床が円形に開いた。
暗い穴の底から、ひとつの装置がゆっくりとせり上がってくる。
黒い球体。その周囲を取り囲むように、幾重もの細い環が宙に浮かんでいる。互いに異なる角度でゆっくりと回転し、その表面を文字とも目盛りともつかない光が絶え間なく走っていた。
天球儀にも似ている。
だが、それが何を観測するためのものなのか、外見から推し量ることはできない。
やがて、五つの黒い物体にも変化が起きた。
表面に露出したソウルジェムの周囲が音もなく開き、内部から無数の細い線が伸びてくる。赤い紐のように見えるそれらは、ソウルジェムの表面へ何重にも絡みついていった。
シュルルル……
宝石を覆った細線はやがてひとつの束となり、中央に浮かぶ球体へ向かって伸びていく。五方向から延びたそれは、どこか巨大な生物の血管を思わせた。
やがて、すべての接続が完了する。
しばしの静寂の後、ひとつのソウルジェムが淡く光った。
続いて隣のひとつ、そのまた隣へと、順番に脈を打つように五つの宝石が微かな明滅を繰り返す。そのたび、絡みついた細線の内部を細い光が走り、中央の球体へと吸い込まれていった。
五つの黒い棺。五つのソウルジェム。
そのすべてが、中央に浮かぶひとつの装置へと繋がれている。
巨大な機械に、五つの心臓が取り付けられたかのようだった。
「起動シーケンス、異常なし」
静寂の中に、平坦な声が響いた。
一体のQBが中央の球体を見上げる。その傍らでは、別の個体が何らかの情報を読み取るように、淡々とホログラムで構成されたパネルへ視線を向けていた。
「データリンク開始」
「対象個体、魔力反応安定」
「観測アンカー、全基正常」
「対象個体、生命活動および感情反応テスト実施――反応、データ疎通ともに問題なし」
そこに感情らしいものはない。
ただ、予定された手順を確認するように。
「監視システム、オールグリーン」
「実証フェーズ、Run。観測開始までマイナス300秒」
はい、よーいスタート。
円環少女たちが紡ぎ出す
視聴者の皆さまおはこんばんちは、ゆっくりです。
えー、今回はですね、『魔法少女まどか☆マギカ -Kaleidoscope-』円環編となります。
先日完走したほむほむ魔女ルートなんですけども、この続きが見たいとのリクエストを多数いただきまして。
それにお応えして、ちょこっとだけその後のほむほむ達をお見せしたいと思います。
前回でエンディング自体は迎えているんですが……このセーブデータをロードすると、フリープレイ形式で円環に導かれた後の世界をそのまま遊べます。
いわゆる“クリア後の世界”ってやつですね。
ちなみにこういう要素って別にこのルートだけじゃなくて、違うキャラ・シナリオでもルート次第では解放されます。
願いを不老にしてボンバディルごっこしたり、マギウス側についてドッペル世界ルート行ったり。やったことある人もいるんじゃないでしょうか。
まぁ、それはそれとして。さっそくプレイ始めましょう。セーブデータを選んでロードします。
ちなみに、本編直後から少しだけプレイしてまして、ある程度時間が経過してます。
>Now Loading...
で、ちょっと長いロードが始まるので、その間にさっきのイベントと今回の目標についてざっくり説明しておきましょう。
もうすでに察してる人もいるでしょうが、淫獣がなにやら怪しい実験を始めました。
内容は――ソウルジェムが限界まで濁ると何が起こるのか。
叛逆でほむほむがやられたこととほぼ同じですね。
今回はほむほむ達が円環側にいるので、代わりにそこらへんの野良魔法少女が被験体にされてます。
というのも、原作だとほむほむが余計なことを喋ったせいであの実験に巻き込まれるわけですが――別にほむほむがいなくても、こいつら最終的には同じこと思いつくんですよ。なにせ宇宙の延命に命かけてる効率厨なので。
ソウルジェムが限界まで濁ったら、毎回よく分からん何かに持っていかれる。
だったら「持っていかれない状況を作って、その先を観測してみたい」ってなるわけですね。好奇心旺盛ですこと。
で、今回は叛逆でまどか達がやってたように、こちらから介入して実験を食い止めるわけですが……
単純にこいつらをぶっ潰して、まどかが出張って救済しておしまい――ってのはつまらないんで、ちょっと趣向を変えます。
こいつら、普通に止めたところでまた同じことを繰り返すんですよ。
むしろ次は、そう簡単に介入できないように規模を拡大したり、隠蔽を強化したりするでしょうし。
下手すれば、こちらが介入した痕跡を足掛かりにして、
一応、こいつらの本体を直接殴りに行って、実力行使で黙らせることもできなくはないんですが……それはそれで面倒なことになるんで。
というわけで今回は、なるべく穏便に。なおかつ、こいつらの合理主義を逆手に取ります。
要は「こんなことやっても意味がない」って向こうに思わせてやるんですよ。
>――宇宙の外、円環の領域。
お、ちょうどロードが終わったようです。
具体的なチャートについては、プレイしながら解説していきましょうか。
それでは、最初のイベントシーンからどうぞ。
――宇宙の外、円環の領域。
そこは、巨大なプラネタリウムにも似た空間だった。
果ての見えない暗闇の中に、無数の光点が浮かんでいる。
ひとつひとつは星のように瞬き、ときおり淡い軌跡を引きながら、静かに明滅を繰り返していた。
それらは、世界。時間軸。無数に枝分かれした可能性、そのひとつひとつ。
その中心でまどかは静かに、星読みのように空間を見上げていた。
円環の理、その主としての使命を全うするため。
絶望に呑まれようとしている、まだ見ぬ少女を救い上げるため。
彼女は今、幾重にも重なり合う世界を観測していた。
そして、その傍らにはもう一人。
かつて彼女に導かれ、今はその観測を支える黒髪の少女――暁美ほむらがいた。
ほむらは座禅を組み、静かに目を閉じていた。
精神を集中させ、まどかが観測した世界をひとつずつ辿っていく。
見落としはないか。異変はないか。救いを求める声がどこかに取り残されてはいないか。
まどか一人にすべてを背負わせないために。
それが、今のほむらに与えられた役目だった。
(…………?)
その最中、ふと、ほむらは何か引っかかるような感覚を覚えた。
まどかの契約によって改変された世界。
かつて自分達が生き、そして円環へと導かれた、その世界の一角。
そこに、認識できない空間が存在している。
(……おかしい)
意識を向けるが、捉えられない。
そこを観測しようとするたび、
まるで、その場所だけがこちらからの認識を拒んでいるかのようだった。
周囲に大きな雲や地形的な障害も、観測を妨げるような自然現象も見当たらない。
それなのに、そこだけが不自然に抜け落ちている。
(…………)
ほむらはゆっくりと目を開き、傍らのまどかへ視線を向けた。
彼女は変わらず、無数の世界へ意識を巡らせている。
どうやらまだ、この異常には気づいていない。
(……明らかに、自然現象ではない)
(なら、魔法少女か、あるいは魔獣――)
(……いえ。いくらなんでも、私たちの観測を欺くほどの魔法なんて、存在するとは思えない)
(仮にそれほどの魔法なら、兆候が必ずあるはず。でも、因果が揺らいだ痕跡もない……)
いくつもの考えがほむらの頭をよぎっては消え、やがて一つの推察へと収束していく。
(私たちに兆候すら掴ませることなく、これほど高度に隠蔽を施す)
(……私の知る限り、こんな芸当ができるのは)
(――
ほむらはそう判断すると、座禅を解き、すぐに立ち上がった。
「――まどか、少しいいかしら」
呼びかけに、まどかが振り返る。
「うん? どうしたの、ほむらちゃん」
「確認してほしい場所があるの」
ほむらはそう言って、眼前に広がる無数の光のひとつへ意識を向けた。それに応じるように、暗闇の中へ一つの光景が浮かび上がる。
眼下に広がる街並み。さらに視点が引き、周囲一帯を俯瞰するような映像へと切り替わった。
「ここよ」
まどかは言われた場所へ意識を集中させる。しかし、これといった異常は見つけられない。
「……特に、変なところはないと思うけど」
やはり。
ほむらの表情がわずかに険しくなる。
「その場所そのものを見ようとしないで、周囲から順番に辿ってみて」
「周囲から……?」
「そう。街路、建物、地形……ひとつずつ位置を確認して」
まどかは言われるまま、再び観測へ意識を向ける。
「……あれ?」
小さく声が漏れる。
「ここ……何もない、はずなのに……」「違うわ」
ほむらは静かに首を横へ振った。
「何もないんじゃない。そこに何があるのかを、認識できないのよ」
「……どういうこと?」
「私にもまだ分からない。ただ、自然に起きた現象とは考えにくいわ」
ほむらは再び、その空白へ意識を向ける。
見ようとすれば、意識が逸れる。存在を確かめようとすれば、その思考そのものが意識の外へ滑り落ちていく。
「気づけない」ことに気づけなければ、異常を認識できない。
「しかも、私たちの観測にまで干渉している。普通の魔法少女や魔獣にできるとは思えない」
「そんなこと……」
ほむらはわずかに目を細めた。
「……インキュベーターが関わっている可能性が高いわ」
「キュゥべえが……?」
「断定はまだできない。でも、放置するには不自然すぎる」
ほむらは腕を組み、しばし考える。
正体が分からない以上、迂闊にこちらから触れるべきではない。もし本当にQBの仕業なら、こちらが観測していること自体を悟られる可能性もある。
「まず、詳しく調べる必要があるわね」
「だったら、わたしが――」「待って」
即座に遮られ、まどかが目を瞬かせる。
「あなた一人で触るのはやめておきなさい。何があるか分からない」「でも……」
「まずは専門家の意見を聞きましょう」
ほむらはそう言って、ひとつの名前を口にした。
「――あかりを呼ぶわ」
はい、というわけでほむほむが淫獣が下ろした帳に気付いたようです。
このルートの円環だと、普段はこんな感じでまどかが各世界を観測→必要に応じて世界側へ意識を分霊みたいな感じで飛ばして救済、という定常業務(?)があります。
で、それをほむほむが横でバックアップする形ですね。まどほむてぇてぇ。
それはそれとして、まずはほむほむの言う通り、あの謎空間が何なのか分析する必要があります。
さっき知らない名前が出てきましたが、その子がこういうの得意なので呼び出しましょう。
ボンッ!
>「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!っと」
>ほむらが念じて彼女を呼び出すと、ほどなくして空間の床の一部がひとりでに開いた。
>その中から白衣のような衣装をまとった少女が、昇降台らしきものに乗ってスモークとともに飛び出した。
>……いつの間にこんなギミックを仕込んでいたのだろうか。
この子が先ほど名前の出てきたあかりちゃんです。元、電気の魔女だった子ですね。
かつてほむほむに喰われた魔女sのひとりですが、今はこうして技術屋ポジとして協力してくれてます。
悪い子じゃないっすよ、めちゃくちゃ頭いいけどちょっと好奇心旺盛でいたずらっ子なだけで。
さっそく、彼女に先ほど起きたことと観測データを共有しましょう。
ここからちょっと面白いんで会話テキスト見てみましょうか。
>あかりは受け取ったデータへ目を通すと、眼前にいくつものホログラムパネルを展開した。両手を滑らせるように動かし、凄まじい速度で文字列を入力していく。
>「なるほどねぇ……これ、単純に光学的に隠してるんじゃないね。通常の観測系から対象そのものを弾いてるっぽい」
>新たなウィンドウがいくつも開き、複雑な波形と数式らしきものが次々と表示される。
>「観測側から飛ばした参照信号を、認識座標へ到達する前に別の位相へ迂回させてる……? いや、それだけじゃないな。因果参照まで薄く切ってる。女神サマでも初見じゃ気づかないって、どんな技術使ってるんだか……」
>「えっと……つまり、観測する側とされる側の位相を意図的にずらしてるってこと?」
>まどかが首を傾げながら問いかける。
>「近い近い。ただ、正確には位相そのものをずらすってより、観測要求が対象を参照する直前に――」
>あかりはさらに別のパネルを開き、何やら図形を描き始めた。
>「――ここで認識経路を分岐させて、存在座標へのリンクをダミー側へ……いや待って、これ多層化されてるじゃん。うわ、性格悪っ」
>「じゃあ、いつもの手順でペネトレーションかけるのは――」「たぶんダメ。表層抜いた時点で向こうに――」
……えー、理解できた人、挙手。私にはさっぱりでした。
しかもまどかが普通についていけてるの草。
>……またか。この二人の会話には、相変わらずついていけそうにない。
>極めて高度な認識阻害らしい、ということだけはなんとなく把握できるが……
ほむほむもわけわかめなようで。
それでも最低限は理解してるあたり、さすがと言うべきでしょうか。
こんな感じで、円環に来てからまどかが徐々にエンジニアっぽくなってます。
円環の運用やら淫獣対策やらのために、ほむほむの勧めで、あかりちゃんからセキュリティやネットワーク周りの知識を叩き込まれた結果ですね。
まぁ、まどかも全部感覚でやるよりは、最低限でも知識は持っといたほうが後々いいとは思いますね。
まさかここまで成長(?)するとは思いませんでしたが。
ひとまず、このままだと技術者談義が終わらないんで、いったん三人ですり合わせ。
彼女たち自身で、淫獣のたくらみに気付かせるようにします。
>こほん、とほむらの咳払いが響く。
>「本題に戻りましょう。ひとまず、これはインキュベーターの仕業である可能性が高い、でいいかしら」
>「まず間違いないと思うよ。こんな手の込んだ隠蔽、あいつら以外に"やる理由がない"もん」
淫獣の仕業っぽいことまではわかりましたね。じゃあ目的は何か。
>「キュゥべえがやったなら……なんでわざわざ、わたし達から見えない空間を作ったんだろう?」
>「中で何かやってるんじゃない? あいつらがやりそうで、なおかつあたし達に見せたくないこととなれば……」
>「……実験、かしら。それも、魔法少女に関連した」
>「だろうね。ソウルジェムの状態変化とか、こっちで救う直前の挙動とか……あいつらが興味持ちそうなネタはいくらでもある」
>「……わざと、濁らせるとか?」
>まどかの言葉に、三人の間にわずかな沈黙が落ちた。
だいたい絞り込めましたね。じゃあ、その仮説が本当かどうかきちんと裏取りしましょう。
【偵察を提案する】を選択。
>「まずは、あの空間を調べる必要があるわ。内部の情報を得る手段はあるかしら」
>「その程度なら問題ないよ。さっきので仕組みはだいたい掴めたし、女神サマとあたしが組めば、短時間なら気づかれないように観測経路を通せるはず」
>「決まりね。さっそくだけど頼めるかしら」
>「もちろん。でも、ここでやるよりあたしのラボを使った方がいいな。機材も揃ってるし。二人ともついてきて」
というわけで。
ここからは、まどか&あかりの技術者コンビによる華麗(?)なハッキングシーンをご覧ください。
あかりの私室を兼ねたラボは、円環にあるとは思えないほど雑然としていた。
壁際には大小さまざまな端末が積み上げられ、その合間には用途不明のケーブルや透明な結晶、魔法陣の刻まれた基板のようなものが無造作に転がっている。
電子機器なのか、魔道具なのか、ほむらは一瞥しただけでは判別がつかない。
その一角、半円形に並んだ複数のホログラムモニター。その中央には、二人分の座席を備えたコクピットのような操作卓が据えられていた。
まどかはその片方へ腰を下ろし、あかりから手渡された小さな装置を頭部へ装着する。白いフレームから伸びた細い端子が、髪飾りのようにこめかみ付近へ沿って固定された。
「痛くない?」「うん、大丈夫」
隣の席へ滑り込んだあかりが、素早く操作卓へ指を走らせる。
無数のウィンドウが空中へ展開され、数式、波形、座標情報らしきものが猛烈な速度で書き換わっていった。
「……うわ。やっぱりかなり厄介だね、これ」
あかりの表情から、先ほどまでの軽さが消える。
「表層だけでも隠蔽が多重化されてる。そのうえ認識阻害、魔力波形の偽装、観測経路の暗号化まで別々に掛けてある。しかも観測端末にバインドされた冗長ルートが無数に走ってるときた」
「つまり、ひとつ抜けても別のところで止められるってこと?」
「そういうこと。ただ――」
あかりが一つの波形を拡大する。
「信号発振に使ってるノードが、全部同じチャンネル帯に寄ってる。ここは設計思想が統一されすぎてるんだよね」
「じゃあ……どこかに侵入できるスキマがあるの?」
「ある」
即答だった。そのままあかりは表示を切り替える。
「魔力帯域を監視してるチャンネルが固定されてるのが救い。そこにリダイレクト式のトンネルを掘って、こっちの観測信号をノイズに擬態させる。遮断側が異常と認識する前に抜けられるはず」
「わかった。じゃあ、魔力構文を変換して……ジャミングと干渉しない軌道に転移式を置けばいいんだね」
「うん、それで――」
ほむらは少し離れた場所から、二人のやり取りを無言で眺めていた。
そんな彼女を置き去りにして、作業はさらに加速していく。
「回線構成、擬似ログイン成功。カバレージは限定的だけど、短時間なら観測されずに走れる」
「セキュリティ位相、ずらすね。感情干渉波をフィールド側の背景ノイズに溶かして……」
「バイパス開通。ログ接続開始。最終ノードにプロキシ設置――」
あかりの指が止まる。一瞬だけ、室内が静まり返った。
「……よし。どのルートにも検知反応なし。こっちは捕捉されてない。行けるよ」
「魔力チャネルを第四層まで降ろして……リンク確立」
まどかが目を閉じる。
髪飾り型のインターフェースから淡い光が走り、周囲のモニターへ次々と新しい情報が流れ込んでくる。
「観測ノード、正常。キュゥべえ側の端末に動きなし。アクティブトレースはなし。――アクセス、成功」
まどかが、ゆっくりと目を開いた。
「OK。セッション維持できてる」
あかりが小さく拳を握る。
「まずは地形スキャンからいこう。マッピングツール走らせるよ」
操作と同時に、中央のモニターへ巨大な立体映像が展開された。
「……出た」
あかりが目を細める。
「市街地に見えるけど、建物に似せた構造物が並んでるだけみたい……その一角に、分かりづらいけど妙に通信が集中してる場所があるね」
「……よく見たら、その地点に繋がる通信経路が多いね。あそこで何かやってるんじゃないかな」
「だろうね。じゃ、まずはトラフィックログから――」
あかりの指が再び走る。いくつものウィンドウが開き、膨大なデータが流れていく。
「……ビンゴ」
「何かわかった?」
「この施設、外から見える以上に中身がデカい。観測端末、監視系、……それと、定期的に同じ形式のデータを吐いてるポイントが五つ」
「五つ……?」
「うん。しかも全部、魔力反応付き」
まどかの表情が曇る。
「……魔法少女?」
「可能性は高いね。ちょっと待って、波形を照合する」
数秒ののち、あかりの手が止まった。
「……確定。五つともソウルジェム。しかもかなり濁ってる」
「……!」
まどかが息を呑む。
「あかりちゃん、残り時間は出せる?」
「やってみる」
再びあかりの指が走り、モニター上へ計算結果が次々と表示されていく。
「……あと■時間ってところかな。ご丁寧に、個体差に合わせてほぼ同時に臨界点へ達するよう調整してるっぽい」
「そんな……」
「それだけじゃない。施設内にキュゥべえの反応も複数。監視系もかなり多いね。やっぱり実験施設で間違いなさそう」
まどかの表情が険しくなる。
「……ソウルジェムが濁りきったらどうなるのか、調べようとしてるんだ」
「たぶんね」
あかりはそう答えながら、さらにいくつかのログを複製していく。
「よし。フィールド構造、施設配置、被験体の数、ソウルジェムの状態、キュゥべえの位置と数……必要そうなのは一通り抜けたかな」
そのさなか、あかりがちらりとモニターの一角へ目をやった。先ほどまで安定していた波形の中に、わずかな乱れが混じり始めている。
「……ノイズがそろそろ危険域か。詳しいところは、データだけ持ち帰って後で解析した方がいいね。今はまだ気づかれてないけど、これ以上はさすがに怪しまれる」
「……わかった。収集データをリダイレクト経由で転送。ジャミング領域に溶かして……」
「確認。ローカル退避も完了。セッション終了準備」
二人の手がほとんど同時に動く。
「退避ルート、安定したよ。干渉フィールドを順番に畳んで……リンク解除準備」
「ログクリーン開始。残留キャッシュも消して――」
「観測経路、切断するね」
一瞬、ホログラム上の波形が大きく揺れた。直後、施設から送られていた大量のデータが途絶える。
「……切断完了」
あかりは最後にいくつかのログを確認し、満足そうに頷いた。
「痕跡なし。向こうのアクティブトレースも反応なし」
「成功だね。さすが女神サマ、ナイスラン」
「ふふっ。ありがとう、あかりちゃん」
……はい、ひとまず裏取りは完了しました。
……なにこれ? 攻殻機動隊か何か?
まどマギってこんなんだったっけ???
なんのゲームやってるのか分からなくなってきましたが、これであいつらの目的はほぼ確定しました。
で、当然こうなると――
>「……わたしが行かないと」
はい出ました。女神サマ、安定の即行動です。
>席を立とうとするまどかの腕を、ほむらが掴んだ。
>「ほむらちゃん……?」
>「情報を覗くのと、あの子たちに直接干渉するのは違うわ。今、あなたが直接出るのは危険よ」
そうなんですよね。
被験体を助けるだけなら、まどかが直接乗り込んで救済すれば話は早いんですが……それだと向こうにこちらの手札を見せることになります。
今回の相手はあの淫獣。一回邪魔された程度で諦めてくれる連中じゃありません。
>「実験そのものを止めるだけじゃ駄目。私たちが介入したことまで悟られれば、次はもっと厄介な方法を考えるはずよ」
>「……でも、このままだとあの子たちが」
>「だから助ける。そのために、まずやり方を考えるの」
というわけで、ここから作戦会議に入ります。
目標は二つ。被験体の魔法少女を救うこと。
そしてできる限り、
さっき言った通り、ただ殴って終わりじゃありません。
あいつら自身に「もうこんな実験やる価値ねぇな」って思わせるところまで持っていきます。
そうと決まれば、メンバー選定です。
せっかくなんで、今回はクインテット+ほむほむが喰った魔女sのオールスター戦と洒落込みます。
え? 理由? そんなん見たいからに決まってるでしょ。
当然、そのためのチャートも考えてあります。
まずはゲーム内でも、参加メンバーを絞り込んでいきましょう。
>「それなら、みんなにも知らせた方がいいんじゃないかな」
>まどかの提案に、ほむらは少し考えてから首を横に振った。
>「……いいえ。今回は、必要な人間だけにしておきましょう」
>「どうして?」
>「全員が同じ考えを持っているわけじゃないもの。それに、人数が増えるほど統制が利かなくなる」
そう。円環っていろんな時代、世界から戦士が集まってるわけで、当然ながら考え方も立場もバラバラです。
今回みたいな大規模案件を全体放送するのは、さすがにリスクが高い。
>「今回の目的は、あの子たちを助けるだけじゃない。私たちが何を知っていて、何ができるのか。それを可能な限り悟らせないことも含まれているわ」
>「……そっか」
>「だから、作戦に必要な能力を持っていて、なおかつ信頼できる子だけを呼ぶ。それでいいでしょう?」
>「うん。わかった」
というわけで、今回は完全招待制です。
そしてその“信頼できて必要な能力を持っている人材”が、偶然にもクインテット+ほむほむの魔女sオールスターになるようにチャートを組みました。
ええ、あくまで偶然ですよ。ゲーム内ではね。
ではさっそく、メンバーに招集をかけましょう。
先ほどまでまどか達がいた場所とはまた異なる、天球のような空間。
宇宙を思わせる暗闇の中、淡い星々が静かに瞬いている。その中心には、白く輝く巨大な円卓が浮かんでいた。
円卓を囲むのは、十数人の少女達。
まどか、さやか、杏子、マミ。そして、円環へ導かれた後もほむらと行動を共にしている者達。
その顔ぶれも、纏う雰囲気も、十人十色。
円卓の正面に立ったほむらが、集まった一同を見渡した。
「急な招集に応じてくれてありがとう。さっそくだけれど、本題に入るわ」
ほむらが片手を上げると、その背後に巨大な半透明のスクリーンが浮かび上がった。
映し出されたのは、先ほど観測した世界の地図。その一角が拡大され、広大な市街地と、その中に不自然に空白となった領域が表示される。
「少し前、私とまどかが観測を行っていた際、この領域を発見したわ」
さらに表示が切り替わる。
認識阻害フィールドの推定範囲。内部の地形。観測された施設。複数の
「高度な認識阻害によって、こちら側の観測を避けるように隠蔽されていた。あかりとまどかに調査してもらった結果、インキュベーターが構築した実験区域である可能性が極めて高いことが判明しているわ」
ほむらが視線を向けると、あかりが手元の端末を操作した。
スクリーン上に、五つの波形が並ぶ。
「内部で確認できた被験体は五人。全員、魔法少女よ。ソウルジェムはいずれもかなり濁っていて、現在も一定の速度で穢れが進行している」
ここであかりが補足する。
「進行速度に個体差はあるけど、調整が入ってる。計算上は、全員ほぼ同じタイミングで臨界点に達するはずだよ」
その言葉に、円卓を囲む空気がわずかに張り詰めた。
ほむらは一度言葉を切り、再びスクリーンへ視線を戻す。
「ここから先は推測になるけれど、あいつらの目的はおそらく――ソウルジェムが完全に濁りきった後、何が起きるのかを観測すること」
スクリーン上で、一本の線が臨界値へ向かって伸びていく。
「魔法少女は通常、その直前に
「だから、隠した状態で最後まで濁らせてみようってわけか」
杏子の言葉に、ほむらは頷いた。
「そう考えるのが自然でしょうね。もちろん、このまま放っておくつもりはないわ」
ほむらが画面を切り替えた。
今度は、施設内部を簡略化した立体図が表示される。あちこちに光点が浮かび、監視装置やQBの位置を示していた。
「現時点で考えている案は、まずこの領域と外部――あいつらの本体との通信を遮断する。そのうえであなたたちを現地に派遣し、現地の端末と監視システムを機能不全にする」
いくつかの光点が、順番に赤から灰色へ変わっていく。
「目と耳を潰し、内部を一時的に完全なブラックアウト状態へ持ち込む。その隙に被験体へ接触し、まどかが五人を救済する」
「……今のところは、それが一番手っ取り早いわね」
マミがスクリーンを見ながら呟く。
「ええ。ただし、これはあくまで草案よ」
ほむらはそこで映像を止め、円卓を囲む全員へ向き直った。
「相手はインキュベーター。こちらが見落としている仕掛けがないとは限らないし、作戦そのものにもまだ詰める余地がある」
一人ひとりの顔を、ゆっくりと見渡す。
「だから、ここからは全員で考えたい」
「疑問でも、反対でも、別案でも構わない。気になることがあれば、何でも言ってちょうだい」