魔法少女まどか☆マギカ -Kaleidoscope- 実績「時をかける魔女」獲得実況プレイ 作:Hotpepper_N
※本話には一部『ワルプルギスの廻天』要素が含まれます。未視聴の方はご注意ください。
いやあ……胃がキューッとなりましたね。
内容が内容なんで、ここで衝突が起こるのは必然でしたが、想像以上のガチ喧嘩でした。
そしてマミパイセンさすがっす。
あそこでどっちが正しいとか言い出さず「一緒に傷を負う方法を探しましょう」に着地させるの、頼もしさが違いますね。こういうマミさんが見たかったんだよ……!
ともかく。紆余曲折はありましたが、これで作戦の骨子だけは決まりました。
・五人のソウルジェムは、臨界へ到達させてアンカーを正常終了
・魔女化後は即座に討伐し、グリーフシードを回収
・まどかは本体ではなく分身で現地入り、ほむほむも同行
では、改めて作戦を詰めていきましょう。
あ、その前に。あかりちゃん、時間まだ余裕ありそう?
>「問題ないよ。これから詰めていくだけの余裕は十分にある」
よしOK。
まずは千景が提案した「ソウルジェムを濁らせても、結局は魔獣になるだけ」とあいつらに思わせる方法からです。
順当に考えれば、被験体と同じ数の"証拠"が必要になるわけですが……
>「単純に考えるなら、同じ数の魔獣をあそこへ誘導すればいいんじゃないの?」
>「却下ね。五体もの魔獣を、都合よく臨界のタイミングに合わせて連れて行くの? できたとしても、途中で何が起きるか分からないわ」
>「そうだね。ただでさえ魔女五体を相手にすることになるんでしょ? そこに魔獣まで追加は、さすがに事故要因が増えすぎると思う」
>縁の案をほむらが即座に却下し、さやかもそれに続いた。
まあそうなりますよね。
魔獣を探してきて誘導すること自体はできます。問題は、こちらの台本どおりに動いてくれる保証がないってことでして。
>「わざわざ連れてくるぐらいなら、グリーフキューブを用意しておく方がいいわ。……あかり、たしか研究用にストックしていたものがあったわよね?」
>「うん。今使えるのは六個あるから、そっちに回せるね」
>「助かるわ。であれば、グリーフシードを回収次第、チェンバーのところへ配置して――」
さすがあかりちゃん、わざわざ魔獣を呼ぶよりはだいぶ現実的な方向になりそうです。
これで偽装に使う“証拠品”は確保できましたが、まだ問題はいくつか。
>「でも、ただ置いただけでインキュベーターは信じるの? 何かしらの手段で被験体由来と判断させた方がいいんじゃないかしら」
>愛理が疑問を挟む。
せっかく現場を隠したところで、出所不明のグリーフキューブを五個ぽんと置くだけでは、すり替えを疑われかねません。
そこで、本物だと思わせるための工作をするわけですね。
>「あ、たしかに。そうなると……あかりちゃん、キュゥべえがあの子たちの識別に使ってるデータって取れてる?」
>「取れてるよ。魔力波形、ソウルジェムの反応特性、それとアンカー側で付与してる個体識別タグ。だいたいこの辺を組み合わせて照合してるみたい」
>「じゃあ、それをキューブに……?」
>「うん。対象の記憶や因果まで再現する必要はないはず。向こうが通常の照合で読む特徴を、それぞれの被験体に合うように偽装する」
>まどかの確認に、あかりは淀みなく答える。
>「ログも残ってるから、五人それぞれの特徴に合わせるのは難しくないと思う。偵察でこれを採取できたのは僥倖だったよ」
>「それなら、少なくとも五人それぞれに由来するキューブが残ったようには見せられるわね」
隠して、倒して、キューブにすり替えて偽装。
となれば、次の問題は――どうすれば、その結果へ自然に辿り着いたように見せられるかです。
周囲の監視網まで潰す以上、そこにもそれらしい理由が必要ですからね。
>「もうひとつ必要なのは……“なぜ魔獣そのものではなく、キューブだけが残っているのか”を説明する筋書きね」
>「こういうのはどうかしら。“円環らしき存在が介入したものの、アクシデントが起きて救済には失敗した”――そう見せるの」
>「どういうこと?」
>「こちらの介入でフィールドの隠蔽と監視網が一時的に不安定になり、その隙に外部から強力な魔獣が一体入り込んだ、という体にするのよ」
>千景は、芝居の筋書きを組み立てるように指を立てる。
>「《朽木》で観測が途切れる前に、その魔獣が入り込んだところを見せるの」
>「そして、すべてが終わった後に現場へ残るのは、戦闘の痕跡と六つのキューブだけ」
>「それなら彼らは、“魔獣になった五人の被験体と外から侵入した一体が、乱戦の中で相討ちになった”と考えるでしょう?」
さすが元女優、作戦全体の“見せ方”を一瞬で組み立ててくれました。
要するに「円環らしき存在が監視を機能不全にさせるところまでは成功した。しかし肝心の救済は、乱入してきた謎の魔獣に邪魔されてご破算」という嘘を見せるわけですな。
>「もちろん、これで二度と実験しないとまでは言い切れないわ」
>ほむらが付け加える。
>「でも、手間をかけて得られるのが既知の魔獣と変わらない結果なら、同じ実験を繰り返す優先度は下げられる。未知の利益を期待させないことが大切よ」
じゃあ、その魔獣をどうやって工面するん? という話ですが――
>「ここに適役が居るでしょう? 私の魔法なら、魔獣を演じることぐらい造作もないわ」
>「……たしかに。でも、強力さも演出するとなると――」
>「それなら、シンデレラにも一役買ってもらいましょう。
>「……しんでれら??」
>千景に指名されたホムラは、なぜか本気で分からないといった顔をしている。
いやお前その見た目で元ネタ知らないんかい。戦前生まれだから無理もないけど。
ともかく、千景+ホムラの二人で一体の強力な魔獣を演じる算段ですね。
千景が外見と観測上の特徴を整えて、火力はホムラ担当。これなら強敵感も十分に出せます。
>「となると、二人は魔女形態で現場に?」
>「そうなるわね。私と緋鞠さんが密着した状態で同時に形態変化すれば、外見も魔力反応も一体の魔獣としてまとめられるはずよ」
>「そんなの、ぶっつけ本番でできるもんなのかい?」
>「たしかに、リハーサルは必要ね。会議のあと、少し練習しましょうか」
魔女化して大丈夫なん?って思うかもしれませんが、そこはご安心を。
詳しくは明かされてないんですが、どうやら円環内で確立した自己像を一時的に魔女の姿へ戻しているようなものらしいです。人格や理性まで持っていかれるわけではありません。
イメージとしては封神演義ですね。あれでいう妖怪仙人の原型形態に近いでしょうか。
……わからない人はググってください。
それはそうと、偽魔獣が乱入するにしても、それっぽい導線があったほうがいいですよね。
何の前触れもなくスポーンしたら、それはそれで不自然です。
>「そうなれば……魔獣が入り込む理由付けも必要ね。たとえば――無関係な魔法少女がその魔獣に追われて、逃げ込んできたように見せる、とか」
>「素晴らしいわ。それでこそ私のファム・ファタール。名監督にふさわしい」
>うっとりとした表情で見つめられたほむらは、どこか居心地が悪そうだ。
>「……ともかく。逃げ惑う役も必要になるわね。となれば――」
魔法少女を追っていた強力な魔獣がそのままフィールドへ凸→逃げ込んできた少女達と魔獣によって現場は大混乱。
そのドサクサに紛れて、現地の淫獣と監視網をしれっと潰す。
んで、《朽木》が展開された後は外から見えなくなるので、乱入した少女達がその後どうなったかまでは分からない、と。
うん、これならだいぶ筋が通りますね。問題は誰にその役をやってもらうかですが。
>「縁、愛理、奏、それから……なぎさ。頼めるかしら」
>「要は、全力で逃げ回りながら壊せばいいんだな?」
>「監視網に近づくように逃げればいいのでしょう? あとは、錯乱したふりで魔法を乱発するとか」
>「えっ、私も!? ちょ、待って、演技とかやったことない――」
>「ばっちこいなのです」
配役はこれで決まり。千景ちゃん、演技指導頼めるかい?
>「心配ご無用。大根役者だろうと、一幕限りなら名脇役に仕上げてみせるわ」
頼もしいですね。これで導線はバッチリ。
お、まもりちゃんが手を挙げてます。ちょっと聞いてみましょう。
>「あ、あの……その、み、みなさんが監視網を壊して回るとして……さっき言ってた、サブの監視? は起動しないんでしょうか……?」
いい質問ですねえ。あかりちゃん解説よろしく。
>「そこは大丈夫。あれは施設全体の非常監視じゃなくて、アンカーに紐づいた独立系統だから。起動条件は“実験対象へ直接手を加えられた可能性がある時”に絞られてる」
>「外の監視網が壊されただけじゃ、起きないってことですか?」
>「うん。外の監視網にもサブモード自体は組み込まれてるけど、起動トリガーはアンカーの異常終了。外周ノードが何基か落ちただけでは切り替わらないよ」
つまり淫獣側の装置は、監視網の破損だけでは実験対象への干渉と判定しないわけですね。
アンカーに異常が出て、実験そのものへ手を加えられた可能性が生じた時だけ、本格的な非常監視へ切り替わるわけです。なおかつ――
>「なぜかというと、解析した限り、サブモードは通常監視よりかなり重いんだよね。局所的な因果変動とか空間干渉まで追うから、エネルギー消費も処理量も桁違い。外周ノードが壊れるたびに起動してたら、下手したらフィールド隠蔽に割くリソースまで食われる」
>「……なるほどな。守ってんのは実験結果そのものってわけか」
>縁が納得したように腕を組む。
>「そういうこと。だから外側は壊していい。でも、アンカーだけは絶対に触っちゃ駄目。五人が臨界に達して、あっちが“正常終了”と判断するまではね」
はい、ここテストに出ます(出ません)。
壊していいのは“目”。触っちゃいけないのは“実験そのもの”。
>「逃げる経路と、撃っていい方向は先に決めておくわ。チェンバーとアンカーを巻き込む攻撃は禁止。錯乱したふりであって、本当に手当たり次第に壊すわけではないから」
>「了解。そこも含めて稽古をつけるわ」
>「それから、侵入直後の映像は現地の記録に残すよ。四人が一体の魔獣に追われてきた証拠になるから」
>あかりが監視ノードの表示を切り替える。
>「その後、戦闘予定区域を見られる通常監視は確実に止める。外周に壊し残しがあっても、内部の本番までは記録させない」
見せたいところまでは見せて、その先は見せない。カメラを壊すにも順番があるんですね。
これで演出チームの役割と動きはほぼ決まりました。となれば、次はそのバックアップとなる外周監視です。
>「外の監視は、さっきとあんまり変わらないってことでいいの?」
>「ええ、そのつもりよ。クラッキングで隠蔽が揺らぐ以上、その間はあなたの烏でフィールド周辺を哨戒してもらう。万が一第三者が近づいたら、あすみに精神操作で人払いをしてもらう想定よ」
>「……あのさぁ、フィールドめっちゃ広いじゃん。誰か近づいてきたら、あたしがいちいち走っていけって? まったく人使いが荒いねえ、おほむさん」
>あすかが問い、あすみは心底面倒くさそうに肩をすくめる。
あすみんの指摘はごもっとも。
何しろ市街地丸々ひとつレベルの広さですからね。端から端まで毎回ダッシュさせてたら、本人の負担はともかく人払いが間に合わない可能性もあります。
そこで、マミさんの力を借りましょう。
>「だったら、私の《グイダート》が使えるわ。あすかさんにもあらかじめマーカーを付けておいて、あすみさんにも同じものを刻んでおくの。どこかで人を見つけたら、一番近い烏のところまで一気に引き寄せればいい」
>「あー、その手があったか。便利だよなあれ」
>マミの提案に、杏子が感心したように頷いた。
そう、本編でマミさんが編み出した《ナストロ・グイダート》。
あれから地味に改良が進んでまして、今では術者本人を経由しなくても、あらかじめマーキングされた対象同士なら直接リンクできるようになってます。
刻んだ後はあすか・あすみ側で作動させられるので、マミさんが《朽木》の内側へ入っても外周の移動には支障なし。
今回は、あすかの烏を外周各所に散らして移動ビーコン化。何かあったら、あすみを最寄りの烏までズバッと引っ張る。
監視役と人払い役を、広大なフィールド外周全域で即座に連携させるわけですね。
ただ、そのマーカーを付ける方法が少々特殊でして――
>「でも、マーカーは私が直接対象に刻む必要があるの。いくつか方法はあるんだけど、一番手っ取り早いのは――」
>そう言って、マミは席を立った。そのまま向かった先は、あすみの席。
>何かを察したのか、あすみの表情が引きつる。
>「今回は時間も限られてるから、ここでやっちゃうわね」「は? 何するの??」
>逃げようとするあすみの肩を、マミがしっかりと掴む。もう片方の手を顎へ添え、くい、と顔を上向かせた。
>「――“刻む”わ。動かないでね?」「え、ちょ――」
ズ キ ュ ウ ウ ウ ン
「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」
ファーーーーーwwwwww
やだ、マミさんったら大胆……!! ちょっとみんなの反応見てみましょう。
>「ふぇぇぇ!!??」
>まどかは両手で顔を覆っているが、指の隙間はバッチリ開いている。
>「んなぁぁぁぁ!?!?」
>さやかは耳まで真っ赤にし、思わず椅子から立ち上がった。
ムッツリですねお二方。んで杏子爆笑してて草。
ほむほむは……苦笑いを通り越して引き攣ってます。
>「…………」
ちょっとまもりちゃん? 目ぇ開きすぎじゃない?
というか鼻血。鼻血出てるって。そういや姫女子だったわこの子。
……全員分拾いたいところですがここらへんで。もう一人やらないといけないので。
そして我らがマミパイセン、周囲の阿鼻叫喚などどこ吹く風。
>「あすかさん、あなたも」
>煙を吹いているあすみをよそに、そのままあすかのもとへ歩み寄る。
>「ちょ、待って、心の準備が――」
ズ キ ュ ウ ウ ウ ン
>煙を吹く少女が、もう一人増えた。
>「ふぅ。これで完了……あら? どうしたのみんな?」
>マミは集中していたのか、周囲の様子が目に入っていなかったらしい。
マミさん自分が何やらかしたのかまったく自覚なくて草。後が楽しみですね。
ちなみに、あすかちゃん本人にマーカーを刻んでおけば、その特性は使い魔である烏にも伝播します。
なので、外周各所へ散らした烏を移動用の中継点として使えるわけです。便利。
……さて。ひとしきり騒いだところで、会議もそろそろ本筋へ戻りましょう。
外周監視と人払いはこれで目処が立ちました。
次は、被験体周辺――つまり実験区域内部での戦闘と、その支援役についてです。
>ぱん、と乾いた音が響いた。
>ほむらが両手を合わせるように一度叩き、散っていた皆の注意を引き戻す。
>「……本題に戻りましょう。次は、実験区域内部での戦闘についてよ。順番に整理していくわね」
>円卓の中央に浮かんでいたホログラムが切り替わる。実験区域の俯瞰図の中へ、被験体を収容した五基のチェンバー、監視ノード、外周経路が次々と重ねて表示された。
お、作戦マップですね。にしても演出が凝ってるなぁ。
>「まず、演出チームが戦闘予定区域を見ている監視網を潰した段階で、演出に参加した六人がその区域へ移動する」
>ほむらが地図の一点を指す。そこへ赤いマーカーが灯った。
>「五基のチェンバーの手前にある、この開けた場所を迎撃地点にする。便宜上、ここを“X地点”と呼びましょう」
>「縁たち四人は、自然な形でここへ逃げ込む。千景と緋鞠さんも、それを追う形で合流」
「傍から見れば、追いかけっこの末に六人が同じ地点へ流れ込んだように見えるはずよ」
んで、演出チームが集まったタイミングで、神楽ちゃんの出番です。お空からダイナミックエントリーしてもらいます。
>「この案では、神楽だけは戦闘班に先行して現地入りしてもらう」
>「インキュベーター本体側からの遠隔観測はクラッキングで止めてあるし、現地の監視網もほとんど機能していない。単独なら、上空から一気に突入しても捕捉される可能性は低いはずよ」
>「そのまま内部に突入、《朽木》を展開。内部にいる全員を包み込み、区域そのものを外界から切り離す」
>「……厳密には、些か異なりまする」
おっと、神楽先生から訂正入りました。
>「《朽木》とは、現世との境を閉ざす術にあらず。その場が“現世に属する”という在り方そのものを、朧げにするものにございます」
>「ゆえに、外から内を窺うことは能わず、内から外へ
……むっず。森鴎外か何か?
この子の説明、毎回難しいんですよ。超意訳します。
《朽木》は、対象空間を囲って見えなくするタイプの結界ではありません。
「ここは現実世界のこの場所です」という座標の確定度そのものを下げる魔法です。
その結果として、「外から認識できない」「内部の情報が外へ出ていかない」といった現象が起きるらしいです。
ヒューム値みたいなもんですかね。……ん? 違うかも?
……これ以上説明すんのやめとくわ、確信がないわ(syamu)
>「ただし、内にあるもの同士の繋がりまで断つわけではございませぬ。被験体とあんかあの接続は、そのままに保たれます」
>「だから装置の内部では通常の観測が続く。区域を隠すだけでは、アンカーの異常終了にはならないんだ」
>あかりが補足する。
外から見えなくすることと、中の機械を止めることは別。だからこそ、アンカーには触れちゃ駄目なんですね。
で、重要なのはここから。
>「境界が曖昧になるということは、逆に言えば――別の領域との境目も薄くできる、ということよ」
>ほむらが地図の上へ新たな線を引く。X地点と、円環側を結ぶ一本の光路が浮かび上がった。
>「今回はその性質を利用して、内部と
>「そして、そのゲートを通して戦闘班とまもりを直接区域内へ投入。同時に、偽装済みのキューブも持ち込む」
要するに《朽木》は、隠蔽フィールドであると同時に、円環へ繋ぐための
外から見えなくした瞬間、その裏側でこっちから戦力を追加投入する、と。
え? 円環と接続できるんならまどか本人もそのまま来られるんじゃないかって?
(そこまで便利じゃ)ないです。
《朽木》ができるのは、あくまで現世と円環の“境目を薄くする”ところまで。
円環にいる戦士達やまどかの分身程度なら、その薄くなった境界を足場にして行き来できます。
でも、
>「わたし自身がそこを通るのは……うん、やめたほうがいいよね。なんでもない」
そう。境界を押し広げるなりすればできないわけではありません。
ただし、それをやると
それを隠すためにこんな面倒な作戦立ててるのに、本人が正面玄関ぶち抜いて入ってきたら本末転倒です。
さて、《朽木》を展開すれば、外からの観測は大きく制限できます。
となれば次に決めるのは、その中で誰が何をするか。いよいよ戦闘班の編成です。
>「まず、正面戦力」
>ほむらがホログラムを操作する。X地点の周囲に、五つのマーカーが灯った。
>「私、まどか、マミさん、さやか、杏子。基本的にはこの五人を中心に戦うわ」
はい、おなじみクインテットですね。
なんだかんだ言って、この面子が一番連携取れてますから。
>「それから、縁、愛理は演出フェーズが完了次第私に合流。陽光は戦闘班と一緒に私についてきて」
>「仰せのままに」
>「ウチらも前に出るのか?」
>「ええ。ただし直接戦闘ではなく私の補助。“影空間”に入ってもらうわ」
お、ここで三人をほむほむ付きにする理由が出てきましたね。
今さらっと"影空間"とかいうワードが出ましたが、ここで軽く説明しておきましょう。別画面出しますね。
☆スキルツリー/パッシブスキル
Selected:《シャスール・ノワール》
▽スキル説明
・対象:自分自身
・効果:自身の影をゲートとして、独立した別空間を構成する。仲間が空間内へ入っている間、その人物が保有する戦闘スキルを一時的にラーニングした状態となる。収容可能人数は術者/仲間のステータスに依存。
・特殊:発動中に魔女形態へ移行した場合、影空間は術者の体内へ移行する。
▽備考
命名者:巴マミ
見てもらうとだいたいわかると思いますが、これまでの《魔女喰いLv.2》が円環入りしてから変化したものです。
以前は文字通り、魔女を自分の中へ取り込むことで能力を獲得していましたが、今はその機能だけを切り離して独立した別空間として再構成した感じです。
必要な時だけ仲間に中へ入ってもらい、能力を一時的に間借りする。
もちろん中に入った本人は普通に意識がありますし、自由に出入り可能。
外へ出ればラーニング状態は解除。
ただし、何度も使って学習を重ねた能力なら、本人がいなくてもほむほむ自身の魔力だけで劣化コピーを再現できる――という隠し効果もあります。テキストに書いてないやつ。
これたぶん、時間魔法が使えなくなった分の救済措置ですかね。
今のほむほむ、単体性能だけなら本編より弱体化してますし。その分、仲間がいれば手札が増える方向に調整された、と。
今回は縁、愛理、陽光の三人に中で待機してもらい、状況に応じて必要な能力を引っ張り出す算段です。
ちなみに命名者はマミさん。本人いわく、フランス語で“黒い戦闘機”って意味らしいです。
Chasseurって狩人って意味ですが、軍事用語だと戦闘機を指すんだそう。
なお、ほむほむ本人はこの名前で呼ぶことがほとんどありません。マミさんがちょっと残念がってました。
とまあ、おニューのほむほむ解説はこれくらいにして、本題に戻りましょう。
前線組が決まったところで――次に考えないといけないのが神楽ちゃんです。
>「私は《朽木》を保つさなか、領域の中心より動くこと叶いませぬ」
>「そうなるわね。だから、まもり」「は、はいっ」
>「神楽の護衛をお願い。あなたには戦闘中ずっと、彼女を中心に全周防御を維持してもらう」
そう、《朽木》は一定範囲とはいえ、世界の因果そのものへ干渉するとんでもない魔法です。
いかに彼女といえど、発動中は維持に専念しなければなりません。
なので、万が一に備えて護衛を付けるわけですが……今回はまもりちゃんに、もう一役買ってもらいます。
>円卓中央の表示が切り替わる。X地点の少し後方に、半透明の球状フィールドが浮かび上がった。
>「神楽の位置はここ。ここを中心にすれば、実験区域をまとめて覆えるわ」
>「神楽だけじゃないわ。その内側を、今回の安全地帯にする」
>「安全地帯……?」
>「なぎさ、奏もそこに入って。外の状況を見ながら、万が一まもりの防御だけでは処理しきれないものが来た場合のバックアップをお願い」
>「了解なのです」「わ……わかった……」
区域内で任務に就く面々には、戦闘を主目的としない子もいますからね。
役目を終えた演出チームも、ここへ退避してもらいましょう。
>「千景と緋鞠さんも、偽魔獣役を終えたらそこへ退避して」
>「あら、私は最後まで舞台に立っていたいのだけれど?」
>「駄目よ。二人とも、そこまででかなり消耗しているはずだもの」
>「……ま、妥当さね。アタシの
というわけで、ここが作戦中のセーフハウスになります。
神楽ちゃんは《朽木》の維持。なぎさ&奏は予備戦力。
千景&ホムラは偽装任務後の回復待ち兼、非常時のピンチヒッターという形。
そして――その全員をまとめて守護らねばならぬのが、まもりちゃん。
>「……わ、私が……みんなを……」
>ほむらは、まもりへ小さく微笑んだ。
>「――あなたが頼りよ。きっとできると信じているわ」
>「……はいっ……!」
>まもりは緊張した面持ちのまま、それでもしっかりと頷いた。
出た、必殺ほむほむスマイル。
たいていの女の子はイチコロです。見てくださいまもりちゃんの赤ら顔。
……何人かジト目でこっち見てるんですが。俺なんかやっちゃいました?
それはそうと、次に進みましょう。戦闘準備フェーズです。
>「ここまで配置が完了したら、あとは待機」
>ほむらが五基のチェンバーを指す。
>「私たちからは、絶対にアンカーへ触れない。五人のソウルジェムが自然に臨界へ達して、アンカーが正常終了するまで待つ」
>円卓の空気が、ほんの少しだけ重くなった。
まあ……そこは、もう決めましたからね。
>「アンカーが外れたことを確認した瞬間、戦闘開始よ」
>「ただし――ここから先については、完全な手順までは決められない」
>「どうして?」
>「魔女になることまでは分かっても、“どんな魔女になるか”までは分からないからよ」
ですよねえ。能力も、形状も、使い魔も未知。
そもそも五人がそれぞれ独立して出てくるのか、それすら確証はありません。
>「だから、基本方針だけ決める。最優先は神楽たちの防衛。その次に、出現した魔女を可能な限り短時間で無力化すること」
>「マミさんは全体を見ながら射撃と支援。さやかと杏子は前衛。まどかは後方の安全圏から討ち漏らしの掃討と、討伐後のグリーフシード回収」
>「私は遊撃。状況に応じて三人の力を借りながら、手が足りない場所へ入るわ」
敵がどう出てくるか読めない以上、ガチガチに陣形を決めるより、役割だけざっくり決めといて臨機応変に動く方がいいですよね。
そして、ここでもうひとつ。
>「ただし、想定以上に強力な魔女だった場合。あるいは、神楽たちの防衛にまで影響が及ぶと判断した場合は、プランBへ移行する」
>「プランB?」
>「ええ。通常戦力での制圧を諦めて、こちらも切り札を使う」
>ほむらはマミ・杏子・さやかへ視線を向けた。
>「その時は――“あれ”を使ってもらうわ」
お。三人とも、何か察した顔をしましたね。
>「……たしか、実戦ではまだ使っていなかったわよね」
>「ぶっつけ本番かぁ……」
>「ま、そんときゃそん時だ」
“あれ”が何なのかは……本番をお楽しみに。
隔離~戦闘のフローが決まったところで、最後は後始末と撤収です。
>「魔女を討伐したら、まずグリーフシードを回収。ここは予定通り、まどかにお願いするわ」
>「うん。わたしがやる」
ここはさっき散々話しましたからね。今さら蒸し返すことでもありません。
>「その後、私たちで偽装したキューブを配置する。被験体五人分、それと
>「適当に置くだけでは不自然じゃない?」
>愛理がここで疑問を挟んだ。
>「もちろん。戦闘痕と位置関係を見ながら置いていくわ。どこで誰が倒れたように見せるかまで合わせないと、不自然になるから」
キューブだけポン置きだと、偽装を疑われますからね。
破壊痕、焦げ跡、瓦礫の飛び方。そこから逆算して、“ここで一体倒れた”と見える位置へ配置していく、と。
となれば、“偶然迷い込んだ”少女達が乱戦の中でどうなったのかも、ある程度演出しておいた方がよさそうです。
>「縁たち四人は、事前に区域外の監視網にも映るでしょう? なら、“戦闘に巻き込まれて相応の被害を受けた”ように見せるのはどうかしら」
>「焦げた衣装の一部、武器の破片……そういうフェイクを現場へ散らしておくの。血糊なんかも使えるわね」
>「いいわね。それなら、観測が途切れた後にも四人がそこで戦っていたように見える」
>「……血だけは本物にしない? 今のうちに採血しとく?」
さすが千景助監督、ディテールの演出もぬかりなし。
あかりちゃん、発想は分かるんだけどそこまでやらんでもいい。お相手は科捜研じゃないんすよ。
>「偽装が終わったら、戦闘班と演出班は順次ゲートを通って円環へ戻る」
>「まもりは最後まで神楽の護衛。全員の退避を確認したら、あなたも先に戻って」
>「は、はい」
>「最後に神楽が《朽木》を解除。空間が現世へ戻ったことを確認してからフィールドを離脱し、外周にいるあすか、あすみと合流。そのまま撤退する」
>「……以上が、作戦後半のフローよ」
>ほむらが説明を終える。円卓の上には、侵入から撤退までのロードマップが表示されていた。
よし。これで作戦開始から撤収まで一通り繋がりましたね。
>「確認していいか?」
>杏子が手を挙げる。
>「キューブ置いて帰る時、戦闘の痕跡はいじらねえんだよな?」
>「ええ。むしろ可能な限りそのまま残すわ。消すのは、こちらの正体に直接繋がるものだけ」
>「なるほど。派手にやった方が都合がいいってわけか」
そういうことです。
証拠そのものは残して、その“意味”だけをすり替える作戦ですからね。
>「私たちは、神楽さんが戻ってくるまで外で待っていればいいの?」
>あすかが尋ねる。
>「ええ。あなたとあすみは最後まで監視を継続。神楽が《朽木》を解除して離脱したら、そのまま三人で撤退して」
>「了解」
おっ、奏ちゃんどしたの?
>「……じゃあ、現地で予想外のことが起きた場合は?」
>今度は、奏がおずおずと手を挙げた。
>「現場の指揮は私が執る。あかりには観測状況と接続の管理を任せるわ。通信が途切れた場合も、私の指示に従って」
>「端末には、あらかじめ相手を固定した細い連絡路を持たせておく。《朽木》を張る時にその繋がりだけ残してもらえば、現場の映像と音声はやり取りできるよ」
>「外へ情報を出して大丈夫なの?」
>「周囲に信号を放送する方式じゃないし、登録した端末以外からは接続できない。境界への負荷も小さいよ。ただし、人や物を通したり、大きな魔力を逃がしたりする用途には使えないね」
あかりちゃん、今回はまどか本体と共同でQB本体へのクラッキング+電子戦を担当するので、現場にこそ来ません。
が、ほぼ全工程に付きっきりのオペレーターも兼務します。負担かけてすまんな。
>「……他に質問は?」
>ほむらが円卓を見回す。
これでひとまず、作戦の形は完成――と、言いたいところですが。
一つだけ、まだ埋まり切っていない穴があります。
だよね、なぎさちゃん?
しばらく待っても、誰からも声は上がらなかった。
円卓の中央には、作戦開始から撤退までの工程が一本のロードマップとして表示されている。
クラッキング、侵入、監視網の破壊、《朽木》による隔離、戦闘班の投入、アンカーの正常終了、魔女の討伐、グリーフシードの回収、偽装、そして撤退。
ひとまず、すべての工程が繋がった。
ほむらが小さく息を吐き、口を開こうとした、その時だった。
「……ちょっと待つのです」
全員の視線が、声のした方へ向く。
それまで椅子の背にもたれ、眠たげに片目を閉じていたなぎさが、ゆっくりと身体を起こしていた。
半眼のまま円卓中央のスクリーンを見つめ、何かを頭の中で繋ぎ合わせるように数秒黙り込む。
「五人が魔女になる時に発生するエネルギーは、どうやって隠すのです?」
一瞬、沈黙が落ちた。最初に答えたのは、あかりだった。
「そこは考えてるよ。《朽木》で境界を薄くしている間に、発生したエネルギーをこっち側へ流す。幕の外に漏出させなければ、少なくとも直接観測はされないはず」
「境界の内に生じしものを、
神楽も静かに補足する。
しかし、なぎさは二人の答えを聞いても表情を変えない。
「……大丈夫なのですか? 全部隠しきれるのです?」
「一人ならともかく、五人分なのですよ。それぞれどれくらいの規模になるかも分からないのに、流しきれなかった分が少しでも外へ漏れたらどうするのです」
あかりの指が止まった。なぎさはさらに続ける。
「それに、エネルギーそのものを全部こっちへ流せたとしても、その途中で起きる変化まで隠せるのです?」
「境界を跨いだ時の反応とか、こちらへ流れていく道筋とか。キュゥべえが何を拾えるのか、全部分かっているわけじゃないのですよね?」
「万が一でも“ソウルジェムが濁り切ると、とんでもないエネルギーが出る”って知られたら――それだけでまた同じ実験をする理由になっちまうのです」
なぎさが、あかりと神楽を交互に見る。
「もう一回聞くですよ――本当に、大丈夫なのです?」
長い沈黙の末、神楽がわずかに目を伏せた。
「……万全とは、申し上げ難く。殊にその規模が定かならぬ以上、すべてを我が術の内に収め切れると断ずることはできませぬ」
「……待って。五人分のピークが重なる場合も、もう一回シミュレートする」
あかりがすぐさまホログラムを操作し始める。
いくつもの数値と予測曲線がスクリーン上を走り、円卓を囲む面々は黙ってその結果を待った。
やがて、あかりの手が止まる。
「……ダメか。総量は受け止められても、五人分が重なると瞬間的な流量が足りない。余剰が出る可能性がある」
「それに、全部向こうへ流せたとしても……境界面の変動が大きくなりすぎて、完全に隠せる保証がない」
「……つまり」
ほむらが、低い声で口を開いた。
「現世側には残せない。けれど、円環へ直接流すのも危険。なら――別の場所へ逃がす必要があるということね」
「理屈の上では、そうなるよ」
あかりが頷いた。
「あいつらの観測圏外にあって、円環とも直接結びついていない。なおかつ、五人分のエネルギーを受け止めても問題のない場所」
そこで一度、言葉を切る。
「……そんなものがあれば、だけど」
「…………」
「……そんな、都合のいい場所って――」
ほむらが黙り込み、まどかが思い悩むように呟く。
再び、円卓が沈黙に包まれた。
その時だった。
かつ、かつ、と。静まり返った空間に、硬質な踵の音が響く。
「――お困りかしら?」
いやあ、なぎさちゃん、ツッコミも圧もキレッキレですね。
本当に小学生かこの子。
ずーっと眠そうにしてたくせに、最後の最後で一番ヤバい穴を突いてきました。
おかげで「これで完成!」と思った作戦が、あと一歩のところでストップです。
で。
現世にも残せない。円環へ直接流すのも危ない。
なら、必要なのは――そのどちらでもない、なおかつあいつらの観測が届かない場所。
そんな都合のいいものがあるのかって? ……あるんだなこれが。
そして、ちょうどいいタイミングで助っ人が来てくれました。
誰なのか。その場所がどこなのか。
そこをわざわざ言葉にするのは野暮ってもんでしょう。
>「あなたは……」
>ほむらが、現れた少女を見てわずかに目を見開く。
>「マr……こほん、女神さまがお困りと聞き、馳せ参じましたわ」
>そう言って、恭しく頭を下げる少女。
綺麗なボウ&スクレープだぁ……
と、彼女を見ていたほむほむが何かに気づいたようです。
>「……そうか。その手があったわね」
>「まぁ、お察しが早い。流石は、女神さまに最も愛された
>歯の浮くような称賛に、ほむらは冷ややかな目を向ける。対するまどかは、なぜか少しだけ頬を赤らめていた。
お前分かってて言ってるだろ。ドヤ顔でこっち見んな。
ここでの彼女、デップーみたく第四の壁を認識してる節があります。おもしれー女。
そうしている間にも、ほむほむの頭はフル回転中。
>「……神楽。確認だけど、《朽木》の接続先は円環に限られるわけではないのよね?」
>「然り。術理の上では、彼方を円環に定めているに過ぎませぬ」
>「なら、話は早いわね」
>ほむらは今度、現れた少女へ視線を向けた。
>「接続先を“あちら”へ変更した場合でも、エネルギーの伝達は可能――そう考えていいかしら?」
>「天使様のご用命とあらば。わたくしが“向こう側”に居れば、造作もありませんわ」
>少女は優雅に微笑む。
>「こちらから押し流す必要はありませんわ。接続していただければ、わたくしが向こうから引き受けます。神楽さんには、その流れの口を保っていただければ」
>「受け手の側より流れを支えていただけるならば、我が術のみで押し渡す場合とは異なりまする。現世側に滞らせず、境の揺らぎも抑えられましょう」
>「五人分が一度に来た場合も、同じように受け取れる?」
>「ええ。その条件でお確かめになって」
行き先変更については問題なさそうですね。
あかりちゃん、念のため再シミュ――ってもうやってる。えらい。
>「……この受け取り方なら、さっきのワーストケースでも余剰は出ない。境界面の変動も《朽木》で隠せる範囲に収まる」
>あかりが予測曲線を見比べる。
>「あとは向こう側で接続試験をして、実際の受け入れ状態を確認する。それが取れてから開始しよう」
最後のピース、見えてきましたね。
……が、ここで一個、当然の疑問が出てきます。
その場所へ繋げられるなら、戦闘班もそこ経由で送り込めるんじゃないの? って話です。
>「それは無理よ。あそこは本来、魔法少女が行き来するための場所ではないもの」
>「流れを受け取ることはできても、あなた達が通れる“道”にはならないわ。あの時とは状況が異なりますもの」
>「“あの時”……?」
>「……あら、失礼。ここではない世界のことだったわ。お気になさらず」
おい、メタネタぶち込むんじゃねえ。
ともかく、“向こう側”を経由して戦闘班を送り込むのは無理。
加えて、今回は魔女化の前後で《朽木》の接続先をそちらへ安定させておく必要があります。
となると、途中まで円環へのゲートとして使って、土壇場で接続先を切り替える――なんて余計な不確定要素は増やしたくありません。
というわけで戦闘班の現地入りについては、ちょっと方法を変えましょう。
>「円環から直接送り込めない以上……戦闘班も演出班と同じく、フィールド外から入ることになるわね」
>「……全員ってなると、さすがに目立たない?」
>「さやかの意見はもっともよ。そうね、それなら……こうしましょう」
>「まどか、マミさん、さやか、杏子、陽光、それにまもり。この六人を私の影空間に入れた状態で、現世に降り立つ。今回の人数なら収容できるわ」
>「これなら外見上は私一人。演出班が監視網を潰したところでフィールドへ入り、X地点で展開する。陽光はそのまま中に残って、演出を終えた縁と愛理にも入ってもらう」
>「神楽の降下は、私たちの到着後に変更するわ。まもりが護衛位置についたのを確認してから、《朽木》を展開して」
>「ん? まどかって入れないんじゃなかった?*1」
>「分身なら、因果をうまく調整すれば入れると思う……たぶん。それに、一回入ってみたかったんだ、ほむらちゃんの中……ウェヒヒ」
>「誤解を招く言い方はやめなさい」
ちょっと気持ち悪いっすよ女神サマ。
ともかく、これなら戦闘班をほむほむ一人分に圧縮して運べます。
フィールドの中へ一人で入って、現地でパカッと必要な面子を展開。便利ですねえ。
……ただし、一個だけ問題が。
>「私の影空間に収容できるのは、あくまで“仲間”だけなの。本人に付随する装備品とかならともかく、無関係な物品を荷物として格納することはできないわ」
>「じゃあ、キューブは影空間じゃ運べないってこと?」
>「ええ。誰かに持たせても、本人の装備とは別の荷物として弾かれるわ」
そうなんです。人は運べるのに荷物は運べない。
ゲーム的な制約と言ってしまえばそれまでですが、《シャスール・ノワール》はインベントリじゃありませんからね。
なんでこんな重要な仕様、テキストに書いてないんだよ。盾時代*2と全然違うじゃねぇか。
……ともかく、キューブだけは別口で現地へ持ち込む必要があります。
>「影空間にしまえないなら、普通に袋か何かに入れて持ってけばいいんじゃねぇの?」
>「それも考えたけど……できれば避けたいわね」
あんこちゃん、ごもっとも。
そんなふうに考えていた時期が私にもありました(刃牙)
>「見た目だけなら、それで隠せるわ。でもキューブそのものの魔力反応までは消せない」
>「あ……」
>「監視網をほとんど潰した後とはいえ、完全に観測されない保証はない。私が侵入した時点で六個分の反応を拾われて、作戦終了後に同じ数のキューブが現場から見つかったら――」
>「持ち込んだってバレる、か」
>「少なくとも、私があいつらの立場なら、その線を疑うでしょうね」
そうなんです。袋に入れたところで、隠れるのは見た目だけ。
これから「こいつらはここで魔獣になって死にました」という壮大な嘘をつくのに、主犯が証拠品ぶら下げて現場入りしてたら台無しです。
理想は、外見からも魔力反応からも、キューブを持ち込んだと分からないこと。でも現地には、確実に六個を運び込むこと。
そんな都合のいい収納スペースが――今回、ひとつだけあります。
>「じゃあ、なぎさの中にしまっておけばいいのです」
>「なぎさの体の中なら、外から魔力反応を拾われることもないのですよ。現地に着いたら、必要な時に出せばいいだけなのです」
>「……どうやって?」
>「飲み込んでおくのです。そうすれば、キュゥべえの目も誤魔化せるのですよ」
……だそうです。ま、まあ、あんたほどの実力者がそういうのなら……
というわけで、偽装用キューブはなぎさちゃん便で現地搬入となりました。
追われる役として先に入り、《朽木》が展開された後、安全地帯で取り出してもらいます。
さて、侵入方法を変えたなら、帰り道の確認も必要です。
>「撤退の時も、向こう側は通れないんだよね?」
>さやかが、ホログラムの帰還経路を指した。
>「ええ。ただし、エネルギーを処理し終えた後なら、円環へ繋ぎ直せる。神楽、そこは可能ね?」
>「然り。流れの途絶えしことを確かめ、彼方との繋りを閉じてからであれば。ただし、その間も《朽木》は維持いたします」
>「受け取りの完了は、わたくしからお知らせしますわ」
>「こちらでも残留と境界の状態を確認する。両方の確認が揃ってから、撤退用のゲートを開こう」
危ないのは、大量のエネルギーが流れ込んでいる最中の切替です。
戦闘も処理も終わって流れが止まれば、円環への帰り道を開ける。ただし、受け手の連絡だけで即切替、とはしないわけですね。
>「グリーフシードは、まどかが保持したままゲートを通って。帰りに影空間へ入れる必要はないわ」
>「うん。ちゃんと連れて帰るよ」
>「まもりは最後まで神楽の護衛。それ以外の全員が戻ったら、あなたも帰還。その後で神楽がゲートを閉じ、《朽木》を解除して外周の二人と合流する。そこは先ほどの手順通りよ」
>「三人がフィールドから離脱するまでは、こっちも観測妨害を続けるね」
>「通信の連絡路は、接続先を変えても残せるのよね?」
>「うん。エネルギーを送る接続とは別に保つから、現地との連絡は維持できる。向こう側の受け取り確認も、同じ端末で送ってもらうよ」
これで、入り口だけ変えて出口がなくなる心配もなし。
>ほむらは地図に残っていた侵入経路を消し、新しい線を引いた。
>「変更点を確認するわ。演出班が監視を潰した後、私が戦闘班とまもりを運んで入る。神楽はその後に降下。護衛配置を確認して《朽木》を展開し、魔女化の前からエネルギーの受け入れが完了するまで、接続先を向こう側に固定する」
>「戦闘と回収、偽装を終え、エネルギー処理の完了を双方で確認してから円環へ繋ぎ直す。それまでは帰還ゲートを開かない」
>「接続に異常が出た場合は、すぐに私へ知らせて。開始前なら見合わせる」
>「開始後、五人と現地の仲間を守ることと偽装が両立しなくなった場合は、人命を優先する。独断でアンカーへ触れたり、《朽木》を解いたりしないこと」
いくつか組み直しましたが――これで今度こそ、作戦の最終案がまとまりました。
>「――では、これを最終案とするわ」
>ほむらが円卓を見回した。
>「……あかり。臨界予測までは?」
>「まだ余裕はあるよ。これから準備に入っても十分間に合う」
>「分かった。では、準備が整い次第作戦開始とするわ。各自、今説明した役割に従って準備を進めて」
>「何か異常や変更点があれば、すぐにあかりか私へ連絡。独断では動かないこと」
>ほむらは一度言葉を切り、全員の顔を見渡した。
>「……必ず、五人とも連れて帰りましょう」
異論なし。
では皆さん、作戦開始まで各自準備のお時間です。
>円卓の周囲から、ひとり、またひとりと少女達が立ち上がっていく。
>それぞれが、自分に与えられた役割を果たすために。
まず、まどか。
現地へ送る分身の調整を済ませ、影空間へ出入りできることも確認した後、本体はあかりちゃんのラボへ移動。
本番ではそちらからQB本体へのクラッキングに参加します。
>『えへへ、どうかな?』
>そう言って笑う、もう一人の「まどか」。
>その姿は、かつてほむらが幾度も目にしてきた、桃色の魔法少女そのものだった。
おお、これが分身。
なんだか懐かしいですね。ほむほむは複雑な顔してますが。
一方、あかりちゃんは大忙し。
>「通信端末は退出前に全員受け取ってね。装着テストもその場でやるから」
>「その後、六個のグリーフキューブを加工する。五個は被験体の識別データに、一個は千景さんたちが演じる魔獣の反応に合わせる」
>「千景さんと緋鞠さんは、練習が終わったら一度こっちに来てくれる? 偽装用の衣装の切れ端や破片も、その時に反応を確認しておこう」
>「最後にクラッキング環境と現地オペレートの最終確認。それと、向こう側の接続試験。……うん、いける」
さらっと言ってますが、これ一人でやる作業量じゃなくない?
まあ、まどか本体が後で合流するので頑張ってください。
続いて、演技班。
>「縁、愛理、奏、なぎさ。あなた達は千景についていって」
>「短時間でも、“本気で追われているように見える動き”だけは身につけてもらうわ。逃走経路と、撃ってはいけない方向の確認も忘れずに」
>「任せて。開演までには、それらしく仕上げてみせるわ」
千景助監督による地獄の演技レッスン、開幕です。
>「緋鞠さんは、その後で千景と偽魔獣形態のすり合わせをお願い」
>「あいよ。燃やしすぎなきゃいいんだろ?」
>「そこから指導が必要そうね……」
……頑張れ、千景ちゃん。
外周組も練習が必要です。
>「あすか、あすみはマミさんと《グイダート》の訓練。実際に烏を散らして、呼び寄せられる感覚に慣れておいて」
>「了解」
>「……また“刻む”必要はないよね?」
>「もう済んでいるから大丈夫よ?」
>「ほっ……」
あすみん、若干トラウマになってません?
それから戦闘班。
杏子とさやかには、《影空間》から展開した直後にどこへ散開するかを軽く確認してもらいます。
マミさんは外周組の訓練後に合流。まどかの分身、まもりも含めて出入りの順番を合わせ、本番でほむほむの影から飛び出したら、そのまま持ち場につけるように。
陽光は中に残ったまま、ほむほむとの能力の受け渡しを確認。縁と愛理も、演技の練習が終わったら合流して同じ確認をしてもらいます。
>「動きを合わせたら、あとは休んでいて。無駄な魔力消費は避けること」
>「へいへい」「了解」「御意」
神楽ちゃんも同様。
>「あなたは《朽木》の展開座標と、向こう側への接続を最終確認。通信の連絡路を残せるかも試しておいて。その後は、術式の調整と休息を優先して」
>「承知仕りました」
今回一番デカい魔法をぶっ放す人ですからね。じっくり英気を養ってもらいましょう。
そして、まもりちゃん。
>「……わ、私は……」
>「影空間から出る手順を合わせたら、あなたも休んでいて。配置と防御範囲、それから味方を外へ出す時の連携を、頭の中で繰り返しておいて」
>「……はいっ」
というわけで、イメトレしてます。
本人は円卓に残り、ホログラム上の安全地帯をじっと見つめながら、何度も指で防御範囲をなぞっています。真面目だなぁ。
……あれ? さっきのおもしれー女は?
>「……もう“あっち”に向かったみたいだよ。端末も受け取って、接続試験の準備ができたら連絡するって」
>あかりが端末を確認しながら答える。
>その隣で、ほむらは深々と溜息を吐いた。
ほんと自由人だなあいつ。今も昔も変わんないですね。
嵐みたいだったのが、風みたいな女になっただけです。
ともかく。
各自準備が整い次第、作戦開始です。
長かったですねえ。
最初は「五人を助けましょう」くらいの話だったはずなのに、気づけばオーシャンズ11ばりの大作戦になりました。
まあ、相手が相手ですからね。ここまでやってようやく対等です。
>会議室を満たしていた声が遠ざかり、まもりが見つめるホログラムの光が、円卓を静かに照らしていた。
>配置図の中には、五つの光点。その一つ一つが、今もゆっくりと――しかし確実に、臨界へ近づいている。
次はいよいよ――本番です。
次回、ついに作戦開始。