(X:@pista_hajimen)
2作あるキョウリュウジャーのうち、1作目となります。
激しい爆発音と甲高い悲鳴。ついさっきまで俺が暇を持て余してスマホをいじっていた公園は、もはや火の海だ。突如現れた巨大なロボットは炎で辺りを燃やし尽くし、どこからともなく湧いてきた銀と黒の怪物どもは近くの人間を手当たり次第に襲う。もちろん俺も例外ではない。咄嗟にリュックから【あれ】を取り出そうとした俺に気づいた怪物は、武器でそのリュックを叩き落とし、首を絞めあげる。死とはこうもあっけないものか、と半ば諦めて目を閉じた時、不思議な声が鳴り響いた。
『キングオージャー!!』
そして直後、突然絞められる感覚が失せた。
「早く逃げてください!」
「ガハッ…ォエ…ハァ…ハァ…え…?」
どうやら目の前の赤いやつが怪物を倒したらしい。キングオージャー…こいつのことか?よくわからなかったが、ただ授業で聞いた【戦隊】とは、ヒーローとはこいつのことだとすぐに直感した。
「
虹色に輝くマントで弾丸を弾きながら、彼は怪物の集団へと突っ込んでいく。とにかくその場から離れなければ、とリュックを拾い駈け出そうとすると、リュックのポケットが突然光り出した。
「おいおいまじか…」
光の元...金縁の指輪は、まるであの赤い戦士に共鳴しているように見えた。これをはめれば俺も戦えるのかもしれない、そんな考えが一瞬よぎるもののすぐに消し去る。指輪をリュックに戻し、とにかく走った。俺に戦う勇気なんて…ない。
遡ること5日前。
「今日は事前に知らせた通り、フィールドワークや!!」
教授はいつも通りテンション高く学生に呼びかける。そんなに大声を出さなくとも、どうせ10人くらいしかいないのに。大学の選択授業、【戦隊考古学】。その名の通り古くから伝わるらしい【戦隊】とやらについて研究する科目。
もはやオカルトに近しい領域だ。当然人が集まるわけもなく、こんな授業を選ぶのは俺のような勉強する気はないが単位は欲しい怠惰な奴だけ。だが担当の教授…往歳教授はそんなことを気にする様子もなく、話を続ける。
「この山は過去にも様々な戦隊に関する資料が見つかっとる。お前らにもその発掘を手伝ってもらうで。」
もはや自分の趣味のために学生をこき使おうとしてないか?俺たちは何でも屋じゃないんだぞ、そう思ったのはおそらく俺だけではないが、沸き起こる疑いをぐっと飲み込んで皆しぶしぶ地面を掘る準備を始める。まぁ教室では寝ていると叩き起こされるが、フィールドワークなら先生の目にも限界がある。ちょっと離れたとこでサボるべく俺はやる気のある風を装って歩き出す。
「おっユウダイ!期待してるでー!」
本当にそう思っているのか見透かした上での皮肉なのか、この人は読めない。
「はい、任せてくださいよっ!」
こちらも適当に返事をしてサボり場所を探しに行く。しばらくあてもなく歩き続けると少し開けた場所に出た。
「さーて昼寝できそうな場所はっと…ん?なんだこれ」
そこに落ちていたのは明らかに自然の物ではなかった。かなり大きく派手な金色の…おそらく指輪。
「誰かの落とし物か?センス無いな…」
と呟きつつ、何となくそれを拾い上げた瞬間。周りは真っ暗になり、浮いてるような感覚に襲われる。
「おわぁっ!?」
そして目の前に突然見たこともない奴が現れた。赤い頭に金色の身体…ロボット?
「願いを言え…」
「は?願い?いやお前誰だよ!?」
「全ての指輪を集め。No.1になれ。そうすれば願いを叶えてやろう。」
どうやら会話のキャッチボールをする気は無いらしい。色々ツッコみたいことはあったが、それらより先に無意識に声が出ていた。
「プロドラマーに…なりたい…」
「その願い、聞き入れた。」
「えっいや別にこれって決めたわけじゃ…てか誰だよ!No.1ってなんだよ!!」
そいつの返事が聞こえることは無く、次瞬きした時には元の山の中であった。何だったんだ…どうせ願うなら金持ちとか不老不死とかにしておけばよかった…何だよプロドラマーって。一瞬蘇った苦い記憶をすぐさま振り払った。でも何故かその指輪を捨てる気にはならず、リュックに無造作に放り込んだ。適当に時間を潰し、集合場所に戻った時に先生からの変な視線を感じた気がしたが、すぐに普段通りオタク語りを始めたから気のせいだったのだろう。
「お前らが見つけたこの石板たちは俺が責任を持って解読する。今日は解散にしてええで。」
あの事件から逃げ延びた後SNSで情報を集めてみたが、あの炎を出す巨大ロボはどうやら別の巨大ロボットが倒したらしい。普通ならいいね稼ぎの嘘としか思えないSFじみた話だが、実際に怪物に襲われた以上これも本当だと思ってしまう。
一体あいつらやこの指輪…【戦隊】って何なんだ…あの講義真面目に聞いておくべきだったか?などとぐるぐる思考を回しながら、ブラブラ歩いていると見知らぬカフェに着いてしまった。変なことばかり考えていたせいで腹も減ったのでここで昼飯を済ませよう、と扉を開けた先に目に入ったのは…俺に「願いを言え」だの言ってきた、あのロボットの模型だった。
突然の遭遇につい「あっ!?」と小さく声が漏れてしまう。不気味に思いすぐさま退散しようかと思ったが、店主らしき男性と目が合い「お1人様ですか?こちらの席へどうぞ。」と案内されてしまったため、座らざるを得なくなった。
「えっと…じゃあこのテガソード様?オムライスを1つ。」
「かしこまりました。」
テガソード様って何だ?まさかあそこに飾ってあるあれのことか?ますます不審に思いつつ、癖の貧乏ゆすりをしながら待っていると、意外とすぐオムライスが出てきた。
手のような独特な見た目…あっテガソードの『テ』ってこの『手』なのかよ!?
内心ツッコミを入れてから、恐る恐るその店主らしき男に尋ねてみた。
「すいません、あそこに飾ってあるのって…?」「おぉ!!よくぞ聞いてくださいました!いやぁほとんどのお客様はテガソード様に目もくれず帰ってしまいますから、気に留めていただくだけでも大変ありがたい!あちらにおわすテガソード様は真の力を得ることで、この不完全な世界から悲しみを無くす救世主なのです!いやさか~」
かなり行くとこまで行った信者なようだ。
「へー…それじゃNo.1、ってやつは?」
「……テガソード様はNo.1を重んじておられる。No.1になった者の元へ指輪が集まり、全て手に入れた暁には、その者の願いを叶えてくださるそうだ。」
一瞬険しい顔をしたので何かまずい質問をしたか?と思ったが、すぐに普通に喋りだした。
「さぁ冷めないうちに召し上がってください。」
「あっそうですね、ありがとうございます。」
肝心のオムライスは結構美味かった。そこそこ高い金を取るだけある。腹も満たしたし、3限も授業があるからそろそろ大学に戻るか…と考えつつ会計を済ますと、先ほどの男がお釣りと共に何か紙を渡してきた。無言の圧を感じたため一旦店を出てからその紙を広げると…「店を出て右手の川辺で待て」、とやたら丁寧な文字で書かれたメモだった。怪しさも感じるが、もしかしたら俺の持ってる指輪について何かわかるかもしれない。ほんの少し好奇心を抱いて、3限はサボって川辺へ行ってみることにした。30分ほど待ち、そろそろいたずらを疑い始める頃にあの男はやってきた。
「待たせたな、急遽店を閉めて片づけたもので。」
わざわざ店を閉めてきたのか?他に従業員いないのかよ、と再び心の中でツッコんでしまう。
「それで、何のご用ですか?」
「単刀直入に聞く、君は指輪の戦士だな?」
「え…指輪のこと、何で知って…?」
「さっきも言っただろう、残念だが普通の客はわざわざテガソード様について聞いてこない。気になるのは実際にテガソード様にお会いした者だけ。それにNo.1バトルについても知っているようだったからな。」
なるほど…探偵みたいだ、と思いつつリュックから指輪を取り出す。
「すごいですね、知ってるなら話が早いです。これは一体なん…」と言い切る前に、彼は右手から黄色の指輪を外していた。
「エンゲージ。」
いつの間にやら現れた金色の手?に指輪をはめると、『クラップ ユア ハンズッ!』と声が響き、軽快な音楽が流れだす。良いリズムだな、なんて呑気に思ってしまったが、冷静に考えて目の前で踊りながら手を叩くこの人は何なんだ??そんな疑問を持った刹那、彼はまばゆい光に包まれた。
『ゴジュウティラノ!!』
光が収まった時にはあの男はおらず、代わりに黄色の戦士が立っていた。
「ええぇぇぇ!?あんたも…戦隊…!?」
「何を言っている?指輪の戦士が出会ったのならば、願いのために戦うのみだ!」
一切躊躇いなく殴りかかってくる黄色の戦士。あまりの展開の速さについていけないものの、なぜだか素直に指輪を差し出そうとは思えなかった。無意識に【プロドラマー】を願ってしまったが、もし本当にこいつの言う通り願いが叶うのなら、戦うべきか…でもそれってマジの殴り合いってこと?普通に痛いやつだよな?思考が渋滞し、頭がパンクしかけたところを相手は見透かしてくる。
「迷っているのか。変身する勇気も無いなら、大人しく指輪を渡せ。」
指輪ば渡したくない、でも逃がしてもらえる雰囲気でもない。なら…っ!
「これは…渡さない!!」
指輪を握りしめて思いを叫んだその時、頭に変身する方法が浮かんだ気がした。指輪の絵柄を回転させると、右手に銀色の手が現れる。
「…エンゲージッ。」
指輪を取り付けると『センタイリングッ!』と鳴り響き、黄色の戦士の時とは異なる音楽が流れる。とりあえず何となくリズムに乗って手だけ叩いてみると、辺りは再び光に包まれる。
『キョウリュウジャー!!』
まず自分の両手を見て、その後水面に反射する自分の姿を見た。
「おわぁぁぁぁ!?!?なんだこりゃ!?」
赤いボディに黄色のライン、まるで恐竜を思わせるデザインだ。
「本当に初めてエンゲージしたのか…君には願いへの執着が無いのだな!」
振り下ろされた刃をギリギリ受け止めるものの、腕がひどく痺れる。パワーの差は歴然だった。
「願いなんて…とっくに捨てた!!」
それでも湧き上がる怒りのような感情を抑えられず、がむしゃらに刃を振るう。
「ならばなぜ指輪に願った?なぜテガソード様に縋った?」
「それは…」
迷い、力が緩んだところを思いっきり蹴り飛ばされる。彼は無言で左手の指輪を金色の手にはめ、数回手を叩いて胸からさらなる武器を取り出す。
『ティラノハンマー50!』
「これで終わりだ。」
『ティラノハンマークラッシュ!!』
鳴り響く声は俺にとっての死刑宣告だ。
「何で俺ばっかり…!」
拳を握りつつもこの一撃を防ぐ術などなく、目をつむる。…しかし。「…気が変わった。」そう言うと彼はハンマーを下ろし、人間の姿に戻った。
「今のお前は…そうだな、幸せそうに見えない。」
「…は?」
「そんなしけた顔の子供から指輪を奪うというのは、テガソード様もお喜びにならないだろう。」
あまり本心ではなさそうな口調だが、視線はどこか遠く、何かを思い出しているようだ。
「テガソード様を崇拝するといい。君も何か変われるはずだ。」
そう言い残し彼は歩き去っていった。手も足も出なかった、だがそれ以上にショックだったのは彼の言葉だ。
「…何だよ、幸せそうじゃないって…」
昔から音楽に興味を持つ子供だったらしい。物置から出てくる小さい頃のおもちゃは大抵楽器の形をしていたし、中学の軽音部に入って初めてドラムを叩いた時の感動はまだ覚えている。学業をかなぐり捨て、夢中になってドラムを叩き続けた結果、3年生になる頃には部の中で1番と褒められるドラマーになっていた。誰よりも練習したし、正直この先ドラムで食っていけると本気で思っていた。だがそれも高校に進学するまでの話だ。
同じように軽音部に入り、突きつけられた。俺より上手い奴などごまんといる。俺のようなレベルで叩けるのが当たり前で、先輩や同期には「気持ちが乗ってない」などと言われる始末。子供の夢なんて案外こんな風にあっさり燃え尽きるものらしい。部活は2年の秋ごろに辞め、受験にもろくに力を入れぬまま、流れるように平凡な大学に入って今に至る。
金や人間関係には特段困ることもない。人並みに授業を受けて、人並みにバイトして、至って普通の生活を送っている。にも関わらず初対面の店員になぜ「幸せそうじゃない」などと言われなければならないのか。イライラを募らせながら4限が始まるギリギリに席に着くと、間もなく教授がどたばたと教室に駆け込んでくる。
「お前ら!またデカい発見があったで!!」
このテンションは話が長くなる時の往歳教授だ…さらにイライラが加速する。
「こないだのフィールドワークで見つかった石板を組み合わせて解読したんやけどな?意外な戦隊の関係性が見つかったんや!」
早口で捲し立てながら教授はプロジェクターに写真を投影する。
「前々から研究されていた【獣電戦隊キョウリュウジャー】にまつわる石板と今回見つかった【王様戦隊キングオージャー】に関する石板は、繋がっているんや!つまりこの2つの戦隊には何かしらの関わりがあるっちゅうことや!!」
キョウリュウジャー…俺が持ってる指輪だ。さっき変身した時その名前を聞いた。それにキングオージャー…怪物に襲われたとこを助けてくれた赤いあいつの名前だ。あの時指輪が光ってたのは、何かしらの関わりがある戦隊同士で共鳴してたのか…?いやそんなアニメみたいなこと…
「…たしかに戦隊五十故事録によると初代キョウリュウレッドこと桐生ダイゴは「キング」の異名を持つ、と書かれていた。王様戦隊と関わりが生まれたのも必然なんかもしれへ…おいユウダイ?どした珍しく考え事しおって。」
「…へっ?あぁいや、何でもないっす。」
「なんやねん、いつにもまして真剣な顔しとったからやっと戦隊に興味持ったんかと期待したやんけ!」
笑いながら背中を叩いてくる教授にはいささかウンザリしつつ、たしかにほんの少しだけ興味が湧いたかもしれない。
「えーどこまで話したか?…あーそうそう、前にも話した通り、キョウリュウジャーは音楽とも関わりが深い。彼らは正義のメロディーを力に変えて戦っていたという記録が…」
音楽を力に、ね…。まるで俺とは正反対だな。リュックの中の指輪を覗きながら、心の中で苦笑する。その後教授がひとしきり戦隊について語った後、「石板の話もしたし、今日は早めに講義終わるわ。」と言い放つと、皆ガッツポーズしながら荷物をまとめだす。
「おい講義早く終わって喜ぶなや!たくっ…あぁユウダイ、お前ちょっと成績のことで話あるからついてこい。」
げっ…戦隊についてちょっと調べてみようか、なんて考えた矢先にこれだ。
「まぁそんな嫌そうな顔すんなや。あ、そのリュックも持って来いよ。」
歩く教授の後をリュックを背負ってしぶしぶついて行く。てっきり事務室や教授の部屋で何か言われるのかと思いきや、連れてこられたのは校舎裏の端、誰も来ないだだっ広いスペースだ。
「お前の願い、当ててやろうか。」
講義中とは違う重めの口調で、突然の質問。
「えっ?願い?」
「ドラムが上手くなりたい…あぁいや、プロドラマーになりたい、とかそんなんやろ。」
あの時無意識に願ったこととはいえ、図星だ。
「何を急に…いや俺ドラムやめたんで…」
「の割には、普段からドラム叩くみたいな動きしてるで?」
えっ嘘、たしかに貧乏ゆすりはよく注意されてたけど…無意識で叩いてたのか俺?
「そんなにドラムが染みついてんのに今はドラムをやってないっちゅうことは、挫折でもしたか。」
的確に痛いところばかり突かれる。
「何なんです、心理学者にでもなったんですか?」
「心理学ではあらへんけど、観察が大事な考古学修めとると人間観察も上手くなるんや。」
本当かよ?
「突然人の黒歴史発掘なんて趣味悪いですね、帰っていいっすか?」
「まぁまぁ待て、今日はお前と、お前の持つ指輪にも用があんねん。」
なんで指輪持ってることまで…まさか?
「これは観察やなく、指輪の戦士としての感覚やけどな。」
そう言って教授はポケットから俺と似たような指輪を取り出してはめる。
「俺が持ってんのは恐竜戦隊ジュウレンジャー。お前のも見せてみ。」
ここまで見透かされると誤魔化せない。大人しくリュックから指輪を出す。
「その絵はガブティラ…キョウリュウジャーか、タイムリーやなぁ。さしずめ、お前の音楽好きなスピリットに引き寄せられたといったとこか。」
「音楽好き…別にもうドラムなんて、」
「嘆かわしいわぁ…いつまでウジウジしてんねん!【ブレイブ】が全く足りとらんわ。」
「ブレイブ?」
「そや、戦隊五十故事録のキョウリュウジャーの項にデカデカと記されとる、彼らにとって最も大事な概念のようや。直訳すると勇気やけど、決して折れず諦めず、立ち向かう心そのものが力になる。彼らはどんな敵が現れても、大切な仲間を失ってしもても、地球が滅亡の危機に瀕しようとも、最後まで諦めず戦い続けた。だから巨悪を打ち倒すことができた、らしい。そんな戦隊の力を受け取ったんやからお前も根性見せてみんかい!」
「根性って…教授には何もわからないでしょ!才能が無いとわかってしまった哀しみも、変われない自分への怒りも!!」
「あぁわからへん。俺は自分が好きな戦隊考古学を必死に学んできた。めちゃくちゃ大変やったし、周りから後ろ指さされることなんてザラにあったわ…それでも追い続けられたのは、好きやったからや!新しい発見があった時の喜びや楽しいという感情が俺を突き動かした。俺は一度も『自分は戦隊が好き』という事実に目を逸らしたことはあらへん!お前はどや?周りの目や自分の体裁が気になったんちゃうか?」
…体裁。たしかに周りと比べて上手く叩けない自分が恥ずかしかった。成長しない自分の姿を見られたくない、というプライドがあったのかもしれない。
「もういっぺん自分に問いただしてみぃ。お前は本当に【ドラムを叩くこと】が嫌いになったんか?」
教授の言葉で、まるで心の霧が晴れるように見えてくる、挫折の本質。
「…俺がドラムを辞めたのは…ドラムじゃなく、自分が嫌いになったから…ドラムの癖が残ってるのも、無意識にプロドラマーを願ったのも…そっか、まだドラム好きだったんだ、俺…。」
思わず笑みがこぼれる。久々にドラムを叩きたいという想いが湧き始める。
「ましな顔になったわ。…ほんなら指輪を賭けて、【趣味を楽しむ奴No.1】を決めるっちゅうんはどうや!?」
「えっ?」
「No.1バトルに勝てば相手の指輪を奪える。お前は全ての指輪を揃えればプロドラマーになれるし、俺もある計画のためになるべく多くの指輪を集めたかったとこや。ちょうどええやろ?」
「…わかりました、受けて立ちます!!」
「「エンゲージ!!!」」
同時に叫んだ途端、互いの手に銀色の手が現れる。指輪を嵌めることに、もう躊躇いはない。『『センタイリングッ!』』流れるメロディーに身を任せ、手を叩きながら踊る。
『キョウリュウジャー!!』
『ジュウレンジャー!!』
≪いざ掴めっ!ナンバァァワーーーァァンッッ!!!!≫
「真の戦隊をこの目で見るまで、俺は好きなもんを追い続ける!ティラノレンジャー、往歳 巡!!お前のブレイブを見せてみぃ。」
「もう誰かとなんて比べない、周りの目なんて気にしない!キョウリュウレッド、荒池 ユウダイ!!止められるもんなら止めてみろ!」
≪No.1 BATTLE Ready...Go!!!≫
駆け出し、思いっきり刃を振り下ろす…が教授はそれを受け止め蹴り返す。
「隙だらけやぞ!」
勢いそのまま次々と繰り出される攻撃に防戦一方。
「なんで戦い慣れてるんだよ!」
敬語を使う余裕もなくつい叫ぶが、またもやその一瞬の隙を突かれ吹っ飛ばされる。
「防ぐだけやなく、恐竜らしく荒れてみんかい。お前の覚悟はそんなもんか!?」
そう言われるとこちらも黙っていられない。
「もう諦めない…今度こそ、俺はプロドラマーになりたい!!」
本心をぶつけたその時、突然力がみなぎる。
「そっか…これがブレイブ!」
「ほう…何か掴んだみたいやな。来いユウダイ!」
ブレイブと共に思い浮かんだある言葉を口に出してみる。
「
叫んだ刹那、身体が黒いオーラに包まれる。オーマイ…銃を使え、咄嗟にそう直感する。懐から黒と黄の銃を取り出し、教授目がけ弾丸を撃ち込む。
「ぐっ…!えらい急所を狙ってくんなぁ…銃なんて使ったことあらへんはずやのに…。」
そう呟きながら教授は距離を詰め殴りかかってくる。しかし今度は俺に青色のオーラが。みなぎる溢れんばかりの力を信じてパンチを正面から受け止めると、まるで鎧を着ているようにビクともしない。
「なっ!?」
そのまま腰を掴み、思いっきり投げ飛ばす。
「ユウダイ投げぇ!!」
「なんやそのダッサい技!」
受け身を取った教授は懐から両刃の剣を取り出す。それを見た途端緑色のオーラが現れる。こちらは片刃の剣を思いつくまま逆手で持ってみる。教授は容赦なく剣を振るってくるが全て弾き返した後、次第に攻めに転じていく。
「さっきと動きが全く違うやんけ…!」
勢いのまま飛び上がり、回りつつ思いっきり斬りつける。
「斬撃無双剣!!」
「どわっ!?」
剣を手放した隙を突く!続いて現れた桃色のオーラを纏うと、角で刺すように連続で足技を繰り出す。
「Yes!」さっきから思わぬ言葉がつい口から飛び出してしまうが、テンションが最高に高まっている今そんなことは気にしてられない。
「まさかこれがお前の指輪の能力か?
「みたいです!アームドオン!」
続けざまに銃のシリンダーを腕で回し、恐竜の牙のような武器を生み出す。
「ガブティラ岩烈パンチ!!」
赤色のオーラを込めながら繰り出したパンチで、教授は派手に吹っ飛び転がる。
「いったたた…とんでもない威力やな…やけど俺も負けへんで!」
トリガーを押し、刃にエネルギーを纏わせる。
『ジュウレンジャーフィニッシュ!!』
『キョウリュウジャーフィニッシュ!!』
渾身の力を込めて互いに振り下ろした刃がぶつかり、鍔迫り合いのようになる。
「「うぉぉぉぉぁぁぁあ!!!」」
純粋な力勝負となった…その時。
「おわっっ!?!?」
「何や!?!?」
突如地震のようなものを感じ、互いに距離を取る。
「…!?なんだあれ!?」
かなり離れた場所ではあるが確かに見える。半分銀・半分ピンクの巨大な怪物が現れ、黒と金のロボと戦いだした。
「あのロボ…ゴジュウジャーか。すまんユウダイ、この勝負は一旦お預けや!
教授が叫ぶと今度は目の前に別の巨大ロボットが現れる。
「えぇぇぇぇっ何すか!?」
「指輪の能力で蘇った大獣神や。」
そう言い残すとロボに飛び乗り、怪物のもとへと行ってしまった。
「ありゃチートだろ…。」
苦笑いしつつ、得も言われぬ心地よさも感じていた。久々に好きなもののために全力になれたからだろうか。
翌日、教授の元に行って指輪を差し出した。
「…なんや、リベンジマッチかと思たのに手渡しかいな?」
「最初からあのロボ使えばよかったのに手加減してましたよね?」
「端からロボに乗って敵踏み潰す戦隊がおってたまるかい!」
「いいんです。教授のおかげで思い出せました、俺のやりたいこと。俺の夢は指輪に頼らなくても叶えられますし!」
「ほーん…ええ顔になったな。ほな遠慮なくいただくわ。」
教授は俺の指輪を受け取ると、ポケットからもう1つ指輪を出した。
「アバレンジャーと合わせてこれで3つ、ぼちぼちやな。」
「で、教授の願いって結局何なんです?」
「言ったやろ?真の戦隊を見ることや。叶えるには、この世界におる唯一5色の戦隊ゴジュウジャーに賭けるしかあらへん。この指輪はあいつらへの報酬にしよかと思てな。」
「唯一5色?」
「俺もお前も赤だったやろ?やけど本来戦隊はチーム。真の戦隊にはメンバーそれぞれに色が与えられてるはずやねん。俺が知る中で5色なんはゴジュウジャーだけ…ってこれこないだの講義で話したやろ!?」
「あっやべ…。」
「やっぱお前俺の話聞いとらへんかったな~?」
「あー次からはちゃんと聞きますから!…あれ?」
「なんやどうした?」
「いや、この前俺が戦ったのは黄色でしたよ?」
「ほう、そいつはゴジュウティラノやな…お前やたら恐竜に縁があるなぁ。そんでそいつはどこにおった?」
「レストランで店員してましたよ。たしか…テガソードの里って言ってました。」
「テガソードの里…なるほどな。行ってみるとしよかな。」
目の色が変わった教授はさっさと出かけて行ってしまった。忙しない人だが、今の俺にはなんだか良い人生を送っているように見える。
「じゃあ俺も…!」
軽音サークルへの入部届を握りしめ、駈け出した。
(完
キョウリュウレッド
指輪/センタイリング キョウリュウジャー
契約者/荒池 ユウダイ
職業/大学生
願い/プロドラマーになること
「英魂(スピリット)」の能力を使い、強き竜の者たちの魂の一部をその身に宿すことができる。通常時は口調や行動の癖が移る程度だが、ブレイブを最大限高めた時には彼らの技をも繰り出せる(威力はオリジナルには劣る)。挫折によって自分の本質を見失っていたが、往歳巡の言葉で覚悟を決めて正々堂々と戦った後、感謝と共に彼に指輪を託す。そして後に努力が実ってドラムで活躍し始め、とあるスーパーアイドルのライブでドラムを叩くほどに成長する。