「ラブラブラブリーキッス! ご主人様に特上の愛を恵みま〜す!!」
メイド喫茶「アミアス」の従業員である九十九メグミは、この日も「ご奉仕」を求めるご主人様達にたくさんの愛を振りまいていた。ここはTVでも紹介されたりと都内でも割と知名度のある店であり、働いているメイド達もそれに恥じない女性達が揃っているがその中でもメグミは特に皆から好かれており彼女に会いたくてやってくるリピーターも少なくない。
「お疲れ様でした!」
「お疲れ。メグミも毎日大変だね」
「ええ。でも私、この仕事本当に好きですから! じゃあ、また明日もよろしくお願いします!」
先輩達に挨拶を済ませ帰路に着くメグミ。その途中で行きつけのフライドチキンのキッチンカーを訪ねる。
「鳥飼さん!」
「やあ、メグミちゃん。今帰り?」
「はい。いつものやつお願いします」
代金と引き換えに店主の鳥飼翔からフライドチキンの入った袋を受け取る。
「メグミちゃん。たまにはさ、お父さんやお母さんも連れて食べに来なよ。メグミちゃんの家族なら大歓迎だからさ」
「……ありがとうございます。都合が合えば来させていただきます」
そう言って翔に頭を下げ、店を後にする。しばらく歩くと三階建ての小さなアパートが見えてきた。階段を登って二階の一室の鍵を開け、中に入る。靴を脱いで鞄を置きワンルームの自室に帰宅したメグミは椅子に腰掛けた。視線の先には写真立てが置かれており、どこかの遊園地で撮られたであろう家族の写真が飾られていた。父親と母親、男の子が一人と女の子の二人、にっこりと笑ってピースを決めている。
「……」
それを見つめるメグミの表情は、寂しさに満ちていた。
-----
未曾有の局所的大地震によって、九十九家はバラバラになった。家が破壊され、職も失ったことで心まで疲弊した父と母は別居したまま連絡もほとんど取らなくなってしまい、残された一男二女はいつか再開することを誓い、それぞれの場所で働きながら不定期ではあるが連絡を取り合っている。またあの楽しかった家族の生活が取り戻せることを願いながら。
「父さん……母さん……お兄ちゃん、お姉ちゃん……」
しかし人前では明るく振る舞っていても、一年前に二十歳を迎えたばかりの少女にはまだまだ辛い経験だった。街中で楽しそうにしている親子を見かけるたびに胸の奥が苦しくなる。それでも彼女は走り続けるしか無かった。
-いつか必ず家族が再び一つになる-
そう指輪に誓ったのだから。
この日もメグミはいつものように出勤し、開店前の準備を進めていた。今日もいつも通りの日常が過ぎていくと誰もが思っていたその時、大きな地鳴りと共に外から爆音が響く。
「何!?」
メグミが思わず外へ出ると、彼方の方向に互いの拳をぶつけ合う二体の巨神の姿が見えた。
「あれって……!」
激突する金色の巨神と赤色の巨神にメグミは見覚えがあった。あの日大地震が起きたその時も、同じように二体の巨神が街のど真ん中で戦っていたのを忘れるわけがない。そう、家族の幸せな日常はあいつらに奪われたと言っても過言では無いのだ。
メグミはパニックで逃げ惑う民衆を掻き分けながら、巨神同士の戦いの場へと向かっていく。その途中で同じく避難していた翔とすれ違った。
「ああっ、メグミちゃん! そっちは危ないよ!」
「離して! あいつらに用があるの!」
「ちょっ……メグミちゃーん!!」
引き止めようとした翔の手を振り払って更に走っていくと、開けた広場に出た。そこからはさっきよりも間近に巨神の姿が見えた。改めて間近で見ると、数十メートルを超える巨体に思わず圧倒されて脚がすくむ。
「ファイヤキャンドル隊長! ファイトー!!」
すると、すぐ近くから何やら誰かを応援する声が聞こえてきた。見るとそこには、鐘のような頭部を持った人間(?)が数名で巨神のうちの一体に声援を送ってるではないか。「ファイヤキャンドル」というのが巨神の名前なのか、それを操る者なのかは知らないが、名前からして赤い方の巨神を応援しているのだろう。
「……ん?」
すると、唯一金色の頭部をした個体がメグミの存在に気付く。異形とも言える存在と目が合ったメグミは思わず体が震えた。
「この気配……もしや指輪の戦士か」
指輪の戦士。その言葉には心当たりがあった。
「どうやらそのようだな」
「……だったら何?」
「指輪を集めテガジューン様に献上するのが我らアーイーの役目! このお宝強奪パイロット『ゴーカイ・ゾック』の名にかけて、その指輪を奪うまで!」
「……ふん」
するとメグミは普段の営業スマイルとはかけ離れた冷笑を浮かべながら、左手の人差し指に嵌められた指輪を外す。『23』の番号が刻まれた指輪の表面を半回転させるとそこに赤き戦士の一人、ゴーレッドの姿が現れる。そして……。
"センタイリング!!"
右手に装着した銀色のテガソードに指輪を嵌めると同時に電子音が響き、続いて音楽が鳴り響く。それに合わせてメグミはまず顔の横近くで一回手拍子を行い、続けて反対側で二回手拍子、更に両手を前に突き出して一回手拍子、最後に両手を胸の前まで持ってきて二回手拍子を行った。
"ゴーゴーファイブ!!"
メグミの身体に真っ赤なスーツが装着されていき、やがて彼女はユニバース戦士『ゴーレッド』へと変身を遂げた。
「はああっ!!」
変身を終えたゴーレッドは果敢にアーイー軍団へと立ち向かっていく。
「野郎ども、行けえ!」
アーイーたちもゾックの命令で一斉にゴーレッドに襲いかかる。
「ファイブレイザー!」
ゴーレッドはまず自身の固有武器であるファイブレイザーを取り出し、遅いくるアーイー達に赤いレーザー光線を放って攻撃する。数人のアーイーが倒れたところで、右手に装着されたテガソードの刃で次々と切り裂いて撃破していく。
「はあっ!」
アーイーがランス状の武器シャンバーンで殴りかかるが、メグミの変身したゴーレッドは普段の接客に加え体型維持を目的としたトレーニングの甲斐もあって軽やかな身のこなしでこれを躱す。
「何をしている! さっさと小娘一人、さっさと片付けろ!」
「おのれ! 小娘如きが舐めるなよ!」
部下たちが翻弄される姿を見て苛立ってきたゾックは八つ当たり気味に他のアーイーの頭を叩きながらなおも出撃させていく。
「ちょっと数が多いわね……」
ここの戦闘力はそれほどでもないとはいえ、このまま数で押されては向こうが有利なのは明白だ。
「!?」
どうやって攻略するか考えていたその時、突然猛スピードで何かが横切り、アーイーたちを蹴散らしていった。立ち止まりその姿を見せたのは、同じく指輪の戦士であるレッドバスターであった。
「指輪を持つ者はライバル同士……でも今は力を合わせようか」
「……ええ」
どこかで聞き覚えのあるような声に疑問を抱きつつもすぐに戦闘モードに切り替え、ゴーレッドとレッドバスターは二人がかりでアーイー軍団を一気に撃破する。
「おのれおのれおのれえええええっ!!」
見かけによらず怒りの沸点が低いのか、我慢の限界を超えたゾックがゴーレッドに銃口を向ける。
「死ねえっ!」
「……! うわあっ!」
刹那、銃口から連射された光線がゴーレッドの足元を中心に炸裂し、爆音と共にゴーレッドの身体が炎に包まれた……かに思われた。
「……なんてね♪」
「何ィ!?」
爆炎の中から現れたのは、もう一つの固有武器であるブイランサーを構えたゴーレッドの姿であった。更に、ゴーレッドはブイランサーの切先にゾックが放った光線のエネルギーを見る見るうちに集中させていく。これこそが彼女の固有能力『
「はああああああ!!」
ゴーレッドはそのままエネルギーが増幅されたブイランサーを構え、Vの字にゾックを切り裂いた。
「ぐわあああっ!!」
重い一撃が炸裂し、吹っ飛ばされるゾック。そこへゴーレッドとレッドバスターがすかさずトドメの構えに入る。
「一緒に決めるわよ!」
「オッケー」
"It's Time For Special Buster"
ゴーレッドはブイマシンガン、レッドバスターはイチガンバスターにソウガンブレードを合体させたスペシャルバスターモードそれぞれゾックに向けて構え、同時にフルパワーの一撃を放った。
「ぐわあああーっ!! は、派手に散るぜえーっ!!」
そう言い残し、ゾックは豪快に爆散した。戦いに勝利したゴーレッドがふと見上げるといつの間にか二体の巨神はどこへともなく消え去っており、後には彼らが戦ったことで破壊された街の残骸だけが残されていた。
「……!」
ゴーレッドはその中に瓦礫の前で泣いている一人の少女を発見し、彼女の方へ歩み寄る。
「あ、ちょっ……」
困惑するレッドバスターを他所に、ゴーレッドは少女の目の前までくるとレスキューツールの一つであるビークドリラーを呼び出して瓦礫を砕いていく。
「あっ……」
やがて中から出てきたのはまだ新品と思しきアニメのキャラクターのぬいぐるみだった。ゴーレッドは変身を解いてメグミの姿に戻ると、ぬいぐるみを拾って少女に優しく手渡した。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「マイ!」
そこに少女の母親であろう若い女性が駆けつけてきた。
「やっぱりここにいた! 心配したんだから……!」
「だって……この子どうしても置いていきたくなかったんだもん……ママお仕事でなかなか家にいないから、この子がその間代わりになってくれるって買ってくれたのに……」
「もう、この子ったら……でも、無事で良かったわ」
それから母娘はメグミに一礼して帰っていった。メグミは続いて一部始終を見ていたレッドバスターに向き直る。
「……さて、指輪の戦士同士、今度こそ決闘といく?」
メグミは戦うつもりでいたが、レッドバスターは首を横に振った。
「悪いけど、今日はなんだかそんな気分じゃないや。もしまた会うことがあれば、その時は今度こそ敵同士だね」
「……ええ、そうかもね」
そう言ってメグミは指輪を指に嵌め直す。
「じゃあ、またどこかで」
レッドバスターはそう言ってあっという間にその場から消えた。おそらくあの高速移動こそが彼の固有能力なのだろう。
「ん……」
メグミはふと、スマホに新着メッセージが届いてるのに気づく。見ると、兄からであった。
「……!」
そこには写真が添付されており、兄が母と二人で食事をしながら笑い合ってる姿が映っていた。兄によると母は今でも自分たち兄妹を大切に思っており、苦労をかけさせている現状を申し訳なく思っているとのことだった。今はまだ時間がかかるが、いつかはまた皆で一緒に暮らしたいとも思っていると書かれていた。
「……そっか」
家族がまた一つになれる。自身の願いが少し前進したかもしれないという希望を抱きながら、メグミは絶対そこに辿り着くと決意を新たにするのであった。
「……あの指輪、なかなか使えそうですね」
そんなメグミの様子を一人の少女が陰から見つめていた。彼女の名は『慈愛のブーケ』。アーイー達を従えるブライダンの幹部であり、そんな彼女も勿論指輪を狙ううちの一人である。
程なくしてメグミは彼女と相まみえることとなり、そこで指輪の戦士としての運命が大きく動くことになるのだが……それを語るのは、またの機会にしておこう。
・設定
ゴーゴーファイブリング
21歳 メイド喫茶従業員
願い:バラバラになった家族を元に戻したい
三人兄妹の次女で末っ子だが、兄や姉に依存しないしっかりした性格。
自身の住んでいた街がテガソードとキングキャンデラーの戦闘に巻き込まれたことで住んでいた家が全壊し、そのショックもあって父と母の関係が悪化。やがて半ば追い出されるような形で家族全員がバラバラに暮らすことになってしまった。
かつては明るく元気な性格をしていたが、今では仕事で人と会う時以外はあまり笑わなくなってしまった。そんな中指輪の戦士に選ばれたことで、もう一度あの頃の家族を取り戻そうと奮闘する。
固有能力は『
レッドバスターこと鳥飼翔とはよく店に来店する顔馴染みの関係。共闘したことで互いに指輪の戦士であることに気がつくも、二人が直接拳を交わすことはなく、やがてメグミはブーケに、翔はファイヤキャンドルにそれぞれ敗北し指輪争奪戦から離脱する。
しかしメグミは同時に母と再会したことで、もう一度夫婦で一緒に暮らしたいと彼女が願っていることを知る。指輪を失うも希望は残っていることを知り、以降は兄妹で力を合わせて両親のためにお金を稼ぐようになる。