はすおうさんの作品です!
(@Hash_de_oh)
東京都某所。ある住宅にて、火災事故が発生した。時は深夜。火の光は昼間の太陽のように明るく、それは人々を野次馬へと変貌させた。事故現場には消防隊を筆頭に救急隊、警察も立っていた。怪我人は現在は0。救急隊の出番はないかに思われた。火を消して終了。そうだと思っていた。しかし、状況は違った。
「家の中に子供がいるんです!」
この家には父母娘の3人家族が住んでおり、両親が少し出掛けている間に火災が起こった。恐らく、娘による火の不始末であろう。しかし、現場はそんなことを考えている状況ではない。火は依然燃え盛っている。消防隊の命を考えると、火を消化してからの救命が定石だ。しかし、娘の命を考えるとそんな悠長なことを考えてはいられない。火が娘の体を巡って焼死、そうでなくても一酸化炭素による中毒死もありうる。消化を完了してから救命して、生きていたとしても、大量の一酸化炭素により脳機能が一部死んでしまうかもしれない。救命隊が手も足も出ない中、ある声がした。
「
突然、火の中から流水が噴き出た。決して水道管が破裂したのではない。この現象を起こした戦士は、娘を抱えて、火の中から飛び出してきた。
戦士は抱えた娘を降ろし、両親と感動の再会をさせた。
両親は娘を力強く抱きしめ、その戦士に感謝を述べた。
「ありがとう!ゴーレッド!」
戦士の名前はゴーレッド。ここ数ヶ月前から近辺の火災事故から逃げ遅れた者を救う、燃えるレスキュー魂を持った戦士だ。
「ありがとう、ゴーレッド。おかげで小さな命を救うことができた。」
ゴーレッドは家族と消防隊、そして野次馬にも敬礼し、
消化し終えた消防隊は、消防車を走らせて所轄の消防署へと帰った。帰った消防隊の彼らは装備を元の場所に戻し、束の間の平穏を過ごしていた。ただ一人を除いては。
「お疲れ様です。お茶、置いておきます。」
「おう、サンキュー。」
彼は消防隊の彼らにお茶を配り、彼らの空腹を満たすため、料理を作っていた。
「おい龍田!今日の飯は?」
「カレーです。あと煮込むだけなんで、もうちょっと待ってください。」
「あいよー。」
消防隊の面々は次の事件まで各々過ごした。うち一人が暇を潰すため、テレビを点ける。点いた番組は報道番組、先日彼らが対応した火災事故についての報道がなされていた。
「あ、これ、俺たちが対応したやつじゃないっすか?」
「この時も大変だったなぁ。老夫婦二人が家の中に取り残されて。」
「でも、ゴーレッドが助けたじゃないですか。」
「そうだけど、これじゃあ俺らのメンツ丸潰れだぜ?しかもあいつ、消火活動には協力しないし。水だってタダじゃねぇっつうの。」
「消火は俺らの仕事だろう。自分たちのことは自分で。それが彼の考え方だろう。それに、消火まで彼にやられたら、それこそ我らのメンツが丸潰れだろう。」
「それはそうっすけど...。」
消防隊内では、彼についての意見が二分している。彼の存在は是か否か。しかし、世間ではそもそも消防隊の存在自体に疑問を呈する声が出ている。ゴーレッドの能力を持ってすれば、消火活動を瞬時に終わらせることができる。そのため、「もうあいつ一人でいいんじゃないか」という意見が、世間で蔓延っている。隊内でメンツのことを気にするのは、こういう意見があるからである。
各々が好き勝手過ごしている中、警報が鳴り響いた。
「◯◯町××丁目にて火災発生!隊員は至急現場に急行せよ!」
アナウンスが隊員たちの耳に届き、隊員たちは慌ただしく動き出した。ただ一人を除いて。
隊員たちは慣れた手つきで装備を整え、消防車に乗り込み、現場へと向かった。
ただ一人残された彼は、作っていたカレーの火を止め、エプロンを脱ぎ、外へと出た。
「行ったか。」
彼はポケットから金色の指輪を取り出し、絵柄を変化させた。そこには、燃えるレスキュー魂を持った戦士が描かれていた。
同時に彼は、ガンドレッド型の装備「銀のテガソード」を取り出し
「エンゲージ!」
と言って、指輪をテガソードに装填した。
「センタイリング!」
テガソードから曲が鳴り出すと、彼は戦士に変身するため、踊り出した。
腕を大きく半回転させ、胸元で1クラップ。敬礼をし、顔左側で2クラップ。腕を大きく引き、突き出して1クラップ。また胸元に引き寄せ、2クラップ。
踊り終わると、テガソードからマント状のエネルギーが吹き出し、彼はテガソードを腕で大きく回して、エネルギーを纏い、マスクが装着された。
「ゴーゴーファイブ!」
そこには、ある世界で宇宙の悪魔を打ち倒し、世界を救った戦士がいた。彼の名は
ゴーレッドは指輪の能力「
現場周辺に到着したゴーレッドは、まず現場の様子を観察した。彼が行うのは、逃げ遅れた人々の救助のみ。消火まで行うと、流ノ介自身の仕事が行えなくなる。そのため、まずは観察し、逃げ遅れた人がいなかったら、そのまま帰り、カレーの仕込みの続きをする。いたら、救助し、帰る。それが彼の仕事である。
現場はまたもや一軒家。深夜火の不始末による火災が多い。被災者は大概逃げ遅れている場合が多い。今回もそのようで、まず2階の窓から大人二人と子供一人が救助された。今回は逃げ遅れた人はいない。そう思っていた。
「まだ一人いるんです!」
ゴーレッドの耳は、事故現場に取り残された人の助けを求める声を聞くため、どんな長距離でも、どんなに小さくても聴こえるようになっている。ゴーレッドはその声を聞いた瞬間、「
この場合、2階に取り残されている場合が多い。しかし、今回被災者は2階から救助された。そのため、取り残された人は1階にいる可能性が高い。
ゴーレッドはすぐさま一階に向かい、取り残された人を探した。キッチンが出火元なのか、一階はすでに火が広がっており、通常の人間では立ち入れない状況だった。
危険な状況だと察知したゴーレッドは、一階を探し始めた。リビング、寝室、キッチン、どこを探してもいない。不思議に思ったその時、微かに呼吸音が聞こえた。今にも死んでしまいそうな、微かな呼吸音。それは浴室だった。
ゴーレッドは浴室に向かい、扉を開けた。そこには、先ほど救助された子供より大きい女性、姉と思われる被災者が倒れていた。
ゴーレッドはその女性を抱え、「
玄関の扉を「
「あぁ良かった!本当に良かった!」
「ありがとうございます!もしかして、あなたが噂の!」
ゴーレッドは家族に敬礼して、能力を発動し、去っていった。
署に戻った流ノ介は変身を解き、室内に戻って、カレーを再度火にかけ、温め直した。
人数分ご飯を皿によそって、カレーを掛けたところで、隊員たちは帰ってきた。
「あーあー、またゴーレッドにいいとこ取られちまったなぁ。」
「いいじゃないですか。それで命が救われたんなら。」
「お前は悔しくないわけ?いいとこ全部取られてさ。」
「いや、それは。」
「お疲れ様です。カレー出来上がってますよ。」
「おう。悪いな。」
隊員は席に着き、各々のペースでカレーを食べ始めた。
これがゴーレッド・龍田流ノ介の生活である。流ノ介は、消防隊の雑用係とゴーレッドの二足草鞋的な生活に、忙しいと思いながらも、満足していた。
流ノ介が雑用係となってしまったのは、消防士になって、最初の現場に当たった時に起因する。流ノ介は最初の現場で燃え盛る火に恐怖し、その場に固まり、何も出来なかった。その後も何回か現場に当たるが、全て恐怖で動けなくなり、最終的に雑用係になってしまった。
己の消防士としてのキャリアについて、ほぼ諦めていた時、転機は訪れた。署内に落ちていた指輪を手にして、テガソードと契約し、ユニバース戦士・ゴーレッドとなった。
流ノ介は戦士となってしばらくは自身の力について研究し、ある程度分かり始めたあたりでこの活動を始めた。最初は恐怖により動けなくなることを恐れたが、力を手に入れたことによる自信は大きく、いとも容易く火の中に突撃することができた。火の中に突撃し、逃げ遅れた人を助ける。絵に描いたようなヒーローになることが出来る。「消防士ナンバーワン」になれると流ノ介は歓喜した。
「これで、人を救うことができる!」
これにより、流ノ介は現在に至るまで、この活動を行うことが出来た。当初は消火活動も行っていたが、自身の仕事をする時間が無くなってしまうため、現在は救助活動のみとしている。
ある日の昼下がり、流ノ介はいつも通り救助活動を終え、消防署に帰還していた。
「
「ぐあっ!」
攻撃を受けたことにより「
無事着陸できたゴーレッドはダメージにより強制的に変身解除され、流ノ介の姿に戻った。しかし、痛みで立ち上がれなかった。そんな彼に、ある人影が近づいてきた。
白と紫のゴスロリ衣装に身を包み、美しく可愛らしい薔薇を彷彿とさせる少女がそこにいた。ふと手元を見ると、二丁の銃のようなものを持っていた。
「誰だ!」
流ノ介はその少女に名を尋ねた。
「あなた、指輪の戦士、ですよね。」
彼女は指輪の戦士を知っている。流ノ介は彼女が自分と同じ、指輪争奪戦の戦士だと予想した。少女が指輪争奪戦に参加していることに多少の驚きを覚えたが、流ノ介はすぐに思い直し、
「君も指輪の戦士か。」
と尋ねた。しかし、回答は予想に反した。
「いいえ。」
流ノ介は驚いた。指輪の戦士でなければ、何故その単語を知っている。何故自分を狙ったのだ、と。
「初めまして、私はノーワンワールド・ブライダンのテクニカル隊長の『慈愛のブーケ』と申します。」
意味の分からない単語が流ノ介の耳に入った。ブライダン?ノーワンワールド?初めて聞く単語に、流ノ介は困惑した。
「指輪の戦士じゃないなら、なんで俺を。」
流ノ介はかねてからの疑問を相手にぶつけた。
「我らが女王が望んでいるのです。大人しく渡せば、痛くはしません。」
また意味不明な単語を言うブーケに流ノ介は戸惑ったが、流ノ介は理解した。
(こいつの女王とやらが指輪を集めている。この子はその尖兵。ということは、敵だ!)
流ノ介は力を振り絞って立ち上がり、ブーケの発言にこう返した。
「断る!」
ブーケはその返答に、当たり前かと言わんばかりに軽くため息をし、二丁の銃「カレンデショット」を構えた。
「なら仕方ありません。実力行使です。」
ブーケはそう言い終えた瞬間、二丁のカレンデショットを交互に発砲した。流ノ介はそれを避けるために、近くにあった貯水槽か何かの設備の影に隠れた。流ノ介はその場で「センタイリング」を取り出し
「エンゲージ!」
ゴーレッドにエンゲージした。
ブーケは当たるわけないのにカレンデショットを乱射しているため、ゴーレッドは出られなかった。
そんなゴーレッドにブーケはカレンデショットを乱射しながら近づき、至近距離で撃ち放った。
ゴーレッドは急いでテガソードをぶん回したが、数発弾いただけで殆どまともに食らってしまった。
ゴーレッドは「
ゴーレッドはすぐさま立ち上がり、両者は見合った。
このとき、ゴーレッドは考えた。このまま攻撃してもいいのかと。敵とはいえ、相手は生身の人間。このまま切り付けてしまえば、相手は死んでしまうかもしれない。このまま戦闘を継続してしまっていいのかと。
ブーケは迷っているゴーレッドの隙を見逃さず、すぐさまカレンデショットを放った。
ゴーレッドは防げず、体勢を立て直すために右側へ逃げた。
ブーケはそれを逃すまいと、銃を放ち続けた。両者は並行して移動する形となった。
ゴーレッドはこの逃げている間、ある結論に至った。
(やはり、無理だ。)
ゴーレッドはビルから飛び降り、「
ブーケはこれも逃すまいとカレンデショットを放ったが、ゴーレッドはすぐに射程圏外に出てしまい、撃ち落とすことはできなかった。
「っく!」
ブーケは逃げるゴーレッドを眺めることしかできなかった。
命からがら逃げたゴーレッドは変身を解除し、消防署へと帰っていった。そこには、すでに同僚たちが帰ってきていた。
「おい龍田!お前どこにいたんだよ!」
「...すみません、道に迷ってた人がいたので。」
「ったく、消火活動出来ないんだから雑用ぐらいちゃんとしてくれよ。」
「...すみません。」
流ノ介はトボトボ歩いて、皿洗いを始めた。この間、流ノ介は考えていた。
(今後も、彼女のような人たちと戦わないといけないのか。)
流ノ介はこのとき初めて戦った。そんな相手が、予想外の生身だったことに、流ノ介はショックを受けていた。彼はそのモヤモヤを抱えたまま、今日を終えた。
先ほどの戦いの後、ブーケはあの戦いを振り返っていた。
「あの方、戦いを躊躇っていたように見えた...なぜ?」
ブーケは考えた。そこで一つの結論に至った。
「...メリットが無いから?」
相手は指輪の戦士であり、指輪を求めて戦う。指輪を持ってない自分と戦うことは、ただ体力を消耗するだけで、メリットが無い。指輪を失うリスクを考えると、デメリットしかない。そう考えた。ゴーレッドが、ブーケの命の安全を考慮した可能性を一度も考えなかった。
「...ならば、これを餌にするしかありませんね。」
そう言いブーケは、かつて改造実験を行う帝国から地球を救った戦士が描かれた指輪を取り出した。
数日後、流ノ介は消防署前の敷地を箒で掃いていた。
(あれから、あの子は姿を現していない。もう諦めたのか...?)
そんなことを考えていると、遠くからハイヒールが地を踏む音が聞こえた。
「お久しぶりです。」
そのハイヒールの音を鳴らしていた人物は、以前聞いたような声を発した。驚いて顔を上げて見ると、そこにはかつて戦ったブーケがいた。
「君は...!」
「あなた、人を助けるのが仕事なんですよね。何故ここにいるのですか?」
「君こそ...何故ここにいる。」
「以前と同じです。」
「...悪いけど、君とは戦えない。」
「そう言うと思いまして、今回はこれを持ってきました。」
そう言ってブーケは、金色に輝く指輪を取り出した。
「それは...!」
「これを賭けて戦いましょう。」
流ノ介は黙った。そして考えた。ブーケに勝てれば、指輪が手に入る。しかし、ブーケは強い。殺す気で戦わないといけない。
ブーケは黙ったままの流ノ介を不思議に思った。指輪を出せばすんなり戦ってくれるかと思ったのに、戦わないのだ。このまま戦いを仕掛けてもいいが、また逃げられるかもしれない。
両者が黙ったまま時間が過ぎ、車の排気音が聞こえた。消防車だ。
「おい流ノ介!そこ邪魔だよ!」
「ん?誰かいるな。すみませーん!車入れるんでそこ退いてもらっていいですかー!」
二人は消防車を見た。流ノ介は不味いと思い、ブーケに別の場所に移動するよう要請しようとした。しかし、ブーケは違った。
「...あの方々は、貴方のお仲間ですか?」
「...え?」
「このまま戦わないと言えば、あの方々を殺しますが、よろしいですか?」
「な?!」
もちろんブーケはそんなことをするつもりは毛頭なかった。無益な殺生はしない、それが彼女のポリシーだった。これで相手が戦う気になれば万々歳だ。
「...分かった。やってやるよ。」
流ノ介はそう言って、ゴーゴーファイブのセンタイリングを取り出した。
「エンゲージ!」
そう言い、流ノ介はゴーゴーファイブのセンタイリングの絵柄を変化させ、テガソードを取り出し、装填した。
「センタイリング!」
テガソードはそう発し、軽快な音楽を鳴らした。流ノ介はそれに合わせて踊る。
腕を大きく半回転させ、胸元で1クラップ。敬礼をし、顔左側で2クラップ。腕を大きく引き、突き出して1クラップ。また胸元に引き寄せ、2クラップ。
踊り終わると、テガソードからマント状のエネルギーが吹き出し、彼はテガソードを腕で大きく回して、エネルギーを纏い、マスクが装着された。
「ゴーゴーファイブ!」
流ノ介がゴーレッドに変身すると、何処からともなく応援空間が出現した。
「いざ掴め!ナンバーワーン!」
「キン!コン!キンコンカン!」
「女王様、愛する貴方のため、この指輪捧げます!ブライダルテクニカル隊長───慈愛のブーケ!今はこの命、貴方に捧げます!」
「フレー!」
「ゴー!ゴー!ユニバース!」
「ようやく手に入れた勇気と力、誰にも渡さない!龍田流ノ介───ゴーレッド!人の命は地球の未来!」
「ナンバーワーンバトル!レディーゴー!」
「先手必勝!
ゴーレッドは「
しかし避けられ、ブーケのカレンデショットを受けてしまった。
ブーケは体勢が崩れたゴーレッドに近接戦を仕掛けた。ゴーレッドはすぐさま体勢を立て直し、近接戦に応じた。
しばらく近接戦を続けた後、二人は距離を取った。ゴーレッドはテガソードをファイブレーザーに、ブーケはカレンデショットを構えて、両者避けながら放った。
しかし二丁持っているブーケが優勢だったため、ゴーレッドは銃撃を受けた。
ブーケはそこからカレンデショットをゴーレッド目掛けて乱射した。ゴーレッドはファイブレーザーをテガソードに戻し、「
ブーケは「
ゴーレッドはその隙を見逃さなかった。ゴーレッドはテガソードをブイランサーに変化させ、ブーケに襲いかかった。
すでに刃先はブーケの頭に目掛けて直撃する。そのすんでのところで、ゴーレッドは攻撃を止めてしまった。
ブーケはその隙を見逃さなかった。ブーケはカレンデショットをゴーレッドに連射し、ゴーレッドを攻撃した。
ブーケは立ち上がり、ゴーレッドに忠告した。
「真面目に戦いなさい。でなければ、貴方は負けることになりますよ。」
ゴーレッドはまだ迷っていた。しかし、相手の言うことも事実。このままでは、指輪は取られ、同僚たちを危険に晒してしまう。ゴーレッドは迷った。迷いに迷い続けた。
ゴーレッドは雄叫びを上げ、必殺技を放とうとした。
「ゴーゴーファイブ!フィニーッシュ!」
テガソードは「ライフバード」に変化した。ゴーレッドは引き金を引き、災厄を打ち滅ぼす光弾を放った。
「カラミティブレイカー!!」
雄叫びを上げながら放った光弾は、ブーケに襲いかかった。普通の人間には避けられない速度。ゴーレッドはこの時初めて放ったが、勝てると思った。
しかし、ブーケは体を半身にして軽々と避けた。迷いを振り切らなかった一撃が、戦闘経験豊富な相手に敵うはずもなく、ただ避けられた。
ゴーレッドは驚愕し、その場に固まった。その隙をブーケは見逃さず、カレンデショットを何発も撃ち込んだ。
ゴーレッドは吹き飛び、変身が解除された。それと同時に、ゴーゴーファイブのセンタイリングはブーケの下へと落ちていった。
「か、返せ!」
そう言う流ノ介をよそに、ブーケはその指輪を拾った。
これにより、龍田流ノ介は指輪争奪戦から脱落となった。
ブーケはその場を去る前に、流ノ介にこう告げた。
「貴方、戦い向いてないですよ。」
そう言ってブーケは、その場を去った。その時、近くのマンホールに引き摺り込まれるように消えたが、流ノ介も、その同僚もそんなことを気にする余裕は無かった。
「ど、どういう状況だよ...」
しばらくして、流ノ介は元の生活に戻った。
同僚たちは、流ノ介に何があったのかは聞かなかった。それは彼らなりの優しさであったし、聞くまでもなかった。
あの一見以降、同僚たちは流ノ介に対し、普段通りに接することを心掛けた。しかし、やはり微妙に接し方が違った。そのため、彼らの優しさが滲み出てしまい、それが流ノ介の心を傷つけた。
ある日、突然全国であらゆる災害が発生した。竜巻、地震、土砂崩れ、もちろん火災も発生した。それは流ノ介たちの所轄の地域も例外ではなかった。
彼らは警報が署内で鳴り響き、同僚たちはどよめいた。何処を優先すべきかを重点的に話し合い、それが終わると、彼らは準備を始めた。そんな時だった。
「隊長、俺にも行かせてください。」
流ノ介だった。流ノ介がそう言ったのだ。同僚は驚いた。火を怖がって、ゴーレッドにならないと克服できなかった彼が、自ら名乗り出たのだ。
「分かった。すぐ準備しろ。」
隊長は承諾し、流ノ介に準備をするよう促した。
流ノ介は、片手で数えるしかない開けたことがないロッカーを開けて、ほぼ新品の消防服に袖を通した。着なれない服と装備に時間がかかり、他の人間よりも遅れた消防車に乗り込んだ。
すでにあちこちで火の手が回っており、当初の予定が通用しないことが分かってしまった。そのため、まずは近場から放射線状に火を消していくことにした。
時間帯が昼間であったため、人々は基本外に出ている。火災による被害者は想定より少ないと思われた。実際、家屋に取り残されたという報告を受けていない。
消防隊員は懸命に消防活動を続けた。しかし、それでも流ノ介は動けなかった。火が怖い。消防隊員にあるまじき恐怖が彼の体を縛りつけた。
一軒、二軒と火を消していく。幸い、一軒ごとの火は大きくないため、すぐに消せた。
三軒、四軒と火を消し、五軒目に差し掛かっている途中である声が流ノ介の耳に届いた。
「まだ中に人がいるんですー!」
今回の現場には、どうやら人が取り残されているようだ。
流ノ介は火災現場を見た。まだ火は大きくない。しかし、同僚たちは現場に入ろうとしない。当たり前だ。普通の消防士は入らないし、そもそも危険過ぎる。だが、流ノ介には分かる。あの火の量なら、人は入れる。今なら、まだ間に合う。
流ノ介は車のドアを開けようとした。ふと、家の火を見た。
怖い。
自分が死ぬ。
自分の体に火が付く。
躊躇うと人が死ぬ。
自分が出ても助けられる保証は無い。
誰かが出ないと死んでしまう。
考えを巡りに巡らせ、葛藤に葛藤を重ね、最後の結論が出た。
「俺は...消防士だ...!」
流ノ介は消防車を出て、火災現場の中に入り込んだ。誰かが止める声が聞こえた気がしたが、振り切った。
ゴーレッドの時のように、何処に人がいるかは分からない。そのため、あらゆる部屋を調べた。
リビング、キッチン、寝室、トイレ、浴場、書斎、あらゆる部屋を探して、最後の個室に居た。
恐怖で涙ぐんでいた、年齢5-6歳程度の男児が居た。煙のせいで咳き込んでいた。流ノ介はその子に駆け寄り、頭を撫でた。
「もう大丈夫だ。さ、ここを出よう。」
流ノ介はその男児を抱えて、部屋を出た。
部屋を出た時、階段の手前まで火の手が回っていた。しかし、階段を出ればすぐに玄関だ。
「僕、ちょっと熱いかもだけど、大丈夫?」
「なにするの?」
「大丈夫。俺が君を守る。」
流ノ介は男児の目を見て言った。
「...分かった。」
男児は流ノ介を信じて、目を力強く閉じた。
流ノ介は階段を駆け下り、火の中を突っ切った。両手は防がれているため、扉を肩で力強く開けた。
流ノ介は男児を立たせて、両親と再会させた。
男児は両親との再会を涙して喜んだ。流ノ介はその光景を見て微笑み、力が抜けてその場に倒れ込んだ。
仲間が懸命に消防活動をしている最中、一人流ノ介に近づいてきた。
「隊長...。」
部隊の隊長が流ノ介に近づいて、流ノ介は顔を暗くした。
「お前、失敗したらどうするつもりだったんだ。」
「...すみません。」
「あんな危険なことしやがって。」
「...居ても立っても、居られなかったんで。」
「ふざけんな!消防士は人の命を救う仕事だ!命を救う人間が、命捨てるような真似するな!」
「...すみません。」
「...お前は消防士としては半人前以下だ。火は怖がるし、いざ現場に出たら命令無視して火の中に突っ込むし。」
「...すみません。」
「...まぁでも。」
隊長は流ノ介の頭を撫でて、言った。
「お前はよくやったよ。」
流ノ介は撫でられた頭を押さえて、夜空を見て言った。
「ありがとう...ございます...タツミ隊長。」
龍田流ノ介/ゴーレッド 脱落
指輪/ゴーゴーファイブ
契約者/龍田流ノ介
職業/消防士
願い/消防士ナンバーワン