ユニバース戦士補ジュウ計画   作:壱肆陸

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本日はMaster Treeさんの作品。
(X:@OHMA_Master1020)
(ハーメルン:https://syosetu.org/user/137480/
担当していただいた指輪は『ゴーオンジャー』です。

(以下、Master Treeさんの前書き)

 初めましての方は初めまして、そうでない方はご無沙汰してます。しがないハーメルンの二次作家の端くれMaster Treeです。

 お誘いして(半ば強制確保)くださった、146氏主導のユニバース戦士補ジュウ計画 自分が担当するのはゴーオンジャー。

 劇中では角乃/ゴジュウユニコーンが指輪入手済みでユニバース戦士の出番は残念ながら無く当時リアタイしてた自分的には少し悲しかったけど、この企画においてはスーパー好都合。

 出番が無かったということは、裏を返せば幾らでも妄想を形にして作って補完できるということ。

 そんな訳でMaster Treeが送るのは自分が最も得意とするかつ大好きな正統派ヒーロー物語。最後までお楽しみいただけたら幸いです。



正義ノノリテ

 

 

「よし……Go!」

 

 目標は真ん中、2本目のライン。目視で距離を確認しスタート。

 即座にクラッチを握り、ペダルでギアを一気に3速まで上げる。時速40kmまで加速して────え、ちょもうこんなとこに!? 

 気づいた時には2本目どころか3本目を通り過ぎており、咄嗟にブレーキを強く握った衝撃でタイヤがロック。制御が効かなくなり……。

 

 

 

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「って……」

 

 その日の講習の帰り道。

 

 ヘルメットやらプロテクターやらのお陰でほぼ無傷で済んでいるのはありがたいが、どうしても苦手を克服できずマンツーマン式の特別講習になってしばらく経つ。

 このままだと追加講習やらなんやらで余計に金がかかって免許も遠のいて……あぁもうどうしたらいいんだよ……。

 

「……ん」

 

 気持ちが落ち込むと視線も落ちる。

 そうしてスマホを見て色々コツを調べながら駅への道を1人歩いていると、キラリと光るものが。

 

「なんだこれ……指輪?」

 

 近づいて拾い上げてみると、それは赤い鳥のデザインのスーパーカーが描かれた金色の指輪だった。中々カッコいいじゃんこのマシン……

 

「なんつーか……特撮なんかに出てきそうなマシンだな……そういえば、昔はこんなやつに乗ってみたいな〜なんて思ってたっけ……」

 

 まあ今まさにその夢が遠のき始めていたところなのだが。幼い頃に夢見た、ヒーローがカッコいいマシンや、それらが変形・合体したロボに乗って戦う姿。

 とりあえず16歳になればバイクの免許を取れると分かったので絶対に取ってカッコいいやつに乗るんだと決めてこうして挑んでいるものの……現実は非情である。

 

「……お守りにはなるかな」

 

 拾った指輪を右手の人差し指に嵌めてみる。

 ふむ……デザイン的に普段使いのアクセサリーとして使うのは難しいかと思ったけど、中々悪くない……。

 というかこれ道端に落ちてたけど誰かの落とし物か? でもなんか、上手く言えないんだがそんな感じはしないし……。

 

「まあ、探してる人がいたらその人に返すって事で……しばらく預かるだけだから……多分……きっと……Maybe……」

 

 そう言い訳を述べつつも、その指輪をしたまま帰路についた。

 だが、この時の俺はまだ気づいていなかった。この指輪がただのアクセサリーでは無かったという事を。指輪から感じる心……エンジンの鼓動にも似た感覚を。

 

 そして、この指輪がほんの一瞬だけ赤く眩い光を放っていたことを────

 

 

 

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 数日後。

 

「桜! この後 暇ならゲーセン行かね?」

「お、いいな! ……と言いたいんだが悪い。この後アレがあってさ……」

「またか? 頑張るなお前……何もそんなすぐ焦って取らなくてもいいのにか?」

「ずっと昔からの夢みたいなものなんだよ。だから焦るどうこうの話じゃないんだなこれが。またの機会に頼むわ!」

 

 終業を知らせるベルが鳴るや否や、荷物を纏めて帰り支度を始めているとクラスメイトの1人から寄り道のお誘いがあるがそれに断りを入れて教室を飛び出す。

 

 ……あ。今更気づいた。

 ここまで長い事自分語りしてたけど俺が何者かを説明してなかったな、悪い。

 

 俺は木之実 桜(このみ さくら)! 

 年齢は17、高校2年生だ。

 

 さっきも言った通り今は幼い頃からの夢であるカッコいいマシンを乗りこなしたい! という夢を叶えるべく2輪の免許取得に挑戦中なんだがこれが中々難しくて、正直心が折れかけてた。

 けど、ある日教習の帰り道に拾ったこの不思議な指輪。これを手に入れてからというものの、何故か急に運転が上手くできるようになったんだ。

 

 ただの乗り物だからあり得ないはずなんだが、『自分が乗っているマシンの魂を読み取って心を通わせている』というか……そんな感覚。

 とにかくあれからあの重たいマシンを自転車のように自分のものとして扱えるようになって、それまで苦手意識しか無かったのが嘘のようにみるみる上達していったんだ! 

 

「もしかして本当に魔法の指輪だったりするのかお前? だとしたらなんか願いが叶ったりするのか?」

 

 と、指輪を小突くも当然のように反応は無く。……うん、やっぱり気のせいだったのかな? 

 

 とにかく今はなんかもう楽しくて仕方がない。人間、出来なかったことができるようになるとこんなにテンション上がるもんなんだな! 

 

「よーしこの調子でマッハで免許取ってやるぜ! 待ってろ未来の俺のマシン!」

 

 そんなこんなで、学校の方と両立しながらなのでちょっと時間はかかったが技能を終えて卒検をクリアし、学科試験もなんとか合格。晴れて免許を取得したのである。

 バイクも第一号を親に買ってもらい最初は近所から始まり、少しずつ距離を伸ばして行きそれを繰り返しているうちに指輪無しでも乗りこなせるようになっていた。

 

 

 

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「……ふぃ」

 

 鮮やかな青のフルカウルバイクを駐輪場に停めお気に入りのライダースジャケットのポケットの中から指輪を取り出して嵌める。

 もうコイツ無しでも大丈夫とはいえ、お守りとして持っておく分には安心感が凄いな。さて、急がねえと……! 

 

「あ、来た来た!」

「遅いよ木之実くん!」

 

 待ち合わせ場所に行くとそこにはクラスメイトのカズと橘さんがいた。実は今日は3人でこの近くにあるショッピングモールに遊びに行こうって事で集まったのだ。

 

「思ったより渋滞してたんだよ……これでも一応、予定より早く家出たんだがな」

「車の間すり抜けたりとかすれば多少早くなったんじゃないのか?」

「シンプルに危ねえから余程急いでない限り絶対にやらん」

「学校じゃなくても真面目なんだねぇ、木之実くんって……」

「免許取り立てなんでね。下手に違反やらかしたり事故ったりして捕まるのだけはマジでNG」

 

 免許を取る時に教本で勉強した影響でバイクに乗っていなくても最近はより一層交通のルールに気を配るようになった。主に信号とか。

 あと橘さん俺のこと真面目つってたけど実際は悪いことした後が怖くてビビってるだけだからな? まあお陰で学校では優等生で通ってて先生達の信頼も厚いので、結果オーライではあるのだが。

 

「あ、それが例のお守りか?」

「ああ、木之実くんそういえば言ってたね。この指輪を拾ってから運転上手くなったって……」

「ああ。とはいえもうコイツ無しでもかなりできるようになったから、要らないっちゃ要らないんだけど……なんか安心感あってさ。まだ持ってようかなって」

「持ち主探さないの?」

「持ち主、か……」

 

 橘さんの言うとおりだ。

 だが、こんな目立つ物を落としたのなら普通は気づいて必死こいて探すはず……そんな人と全く出会わないというのもおかしなものだ。

 

「まあ、そのうち……それまでは預かっておこうかなって」

「いいの、それで?」

「まあサクがそう言うならいいんだろ。さ、行こうぜ! 誰かさんの遅れの分も取り戻さないと」

「悪かったな遅れて!」

 

 まあそんなこんなで少し遅れてスタートしたショッピングモール巡り。各々互いに服を見繕ったり、アクセサリーを見たり。

 お昼は学生らしくフードコートで。色々駄弁りながら、各々頼んだ好きな料理を食する。

 

 その後はゲーセンで色々なゲームを楽しんだり時にはレースゲームで対戦してみたり(指輪のおまじないのおかげ+アイテム運で俺がぶっちぎり)、普段はそこまでじっくり見ないけどなんだかんだ気になる料理道具とか……あまり立ち寄らない店なんかも見たりして、気づけば時間は過ぎていった。

 

 

 

 

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 時刻は大体3時頃。

 歩き疲れた俺たちは、おやつがてら近くのアイス屋で休憩していた。

 

 ちなみにカズのやつはトイレ行ったので今は橘さんと俺の2人で席を確保しフレーバー選び中。

 

「あぁ〜疲れた……」

「なんか私たちモールのほぼ全部見たんじゃないかな?」

「かもな……でもなんか結構楽しかったな。機会があったらまた来ようぜ! 今度は別のやつも誘って……」

「うーんそれもいいけど……私はまた3人で来たいかな?」

「お、橘さん意外な反応……なんで? 男2人に女子1人だぜ?」

「うーんまあ確かにそうなんだけど……2人といるとあんまり肩肘張らなくて済むから、かな? 特に……木之実くん」

「え……あ、俺!?」

 

 急に名前を呼ばれて思わず体が跳ねた。

 ちなみに俺と橘さんは同じ学級委員同士、なんだかんだ一緒にいる機会は多く、仲もそれなりに良い方だ。

 

「ほら、さっき木之実くんに言ったでしょ? 真面目なんだねって……」

「ああ、あれか……でも俺のはどっちかと言うとビビリなだけだよ。臆病だから悪いことができないのさ」

「それは私も同じ。周りでルールを破って好き勝手してる人達を見て、自分はああなっちゃいけない、ちゃんとしなきゃ、ってついつい固くなり過ぎちゃって……周りにもつい厳しく当たりがちになって……でも木之実くんだけはそんな私を嫌な顔1つせず支えてくれて……一緒にいてすごく頼もしいんだ」

「俺だって同じ気持ちだよ。俺を笑ったり馬鹿にしたりせず認めてくれて……真面目な部分と、妥協することの使い分け……今の自分がいるのは先生もそうだけど橘さんの存在が大きかったからさ。だから……ありがとう」

「木之実くん……」

 

 人から褒められる、信頼されることの喜びってのはやっぱり良いものだな。ちょっと照れるけれど……真っ直ぐ向けられたその言葉のせいか、妙に顔が熱い。

 

「……あのさ、木之実くん」

「な、なに? 橘さん」

「さっきは3人で、って言ったけど……もし、もしだよ? 木之実くんさえ良いならさ……今度」

 

 橘さんが何か言おうとしていたが俺がその言葉の続きを聞くことは無かった。

 突如として響いた爆音と人々の悲鳴が俺たちの会話を遮ったからだ。

 

「な、なに今のは!?」

「外から聞こえたけど……!」

 

 絶対危険だということは分かってはいたが怖いもの見たさか、はたまた別の理由なのか。俺は外へと駆け出していた。

 

「あ、待ってよ木之実くん!」

「橘さんは此処で待ってて」

「そんなこと言って木之実くんに何かあったらどうするの! 私も行く!」

「……分かった。なら俺から離れないで、最悪橘さんだけは絶対に守る」

「分かった。でも木之実くんも自分を大事にしてよ、それは約束して」

「……善処はする!」

 

 無意識に橘さんの手を取り俺たちは外へ駆け出した。絶対に碌でもないことになるのは分かっていたが、俺の中の何かがこの足を動かしていたんだ。

 

「お待たせ〜! 2人とも決まっ……どこ行ったあの2人」

 

 

 

 

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「確か、こっちの方から……! ……は?」

「ま、待って……木之実、くん……! え? ……なに、これ……!」

 

 外へ出ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。金や銀色の鐘を頭に被った……というか、鐘が頭そのものになっているウェイターみたいな格好をした人型の何かが人々を襲い、周囲の物を破壊している。

 

「なんだあれ……ベルの化け物!?」

「え、これなんかの撮影とかじゃ……」

「まさか! だったら……」

『キーン!』

「一般人に明らかな敵意持って襲って来ねえだろ!」

 

 うち一体、銀色の奴がボトルみたいな形をした武器で襲いかかってくる。橘さんを庇いながらなんとか振り下ろされるそれを回避し、蹴りで距離を取る。

 

「っぶね……」

「あ、ありがとう……」

「どういたしまして……! でもちょっと次は……」

『コーン!』

『カーン!』

 

 銀色6体が武器の細い部分をこちらに向けて構える。おいおい、あの武器もしかして……。

 

「避けれる保証はないけど……っ!」

 

 咄嗟に彼女と共に伏せると、先程まで俺たちの頭があった高さをコルクのようなものが飛んでいく。やっぱそれ銃としても使えんのかよ見た目の割に万能かアレ! 

 

「はぁ……はぁ……意外となんとかなるもんだな……! でもやっぱ来るんじゃ無かったかも……! ごめん橘さん……!」

「ううん。木之実くんが庇ってくれなかったら、今頃どうなってたか……」

『互いを想い合う美しい絆……だが! ワシゃそれは気にくわねぇゼヨ!』

「っぶね!?」

 

 さっきまでの奴らとは違う金色の奴が黒ずんで薄す汚れた大剣を持って斬りかかってきた。

 得物がデカかったから避けるのは意外と容易かったけど……。

 

『人間はこういう時、互いの命惜しさに醜く生き汚く足掻くはずなのに! なーんでそんなに普通にしていられるゼヨ!?』

 

 なんだその何処ぞの偉人みたいな変な喋り方……うん? 喋り方? ってか、コイツ今……! 

 

「喋った!?」

『そんじょそこらのアーイー達と一緒にしてもらっちゃ困る! ワシはガイア・クロズミー! ブライダンの未来を開く大剣使いとはワシのことゼヨ!』

「なるほど……銀の奴はただの雑魚みたいなものだったってことか……!」

『雑魚とは失礼な! というか、そのワシの部下達にお前達は追い詰められているゼヨ!』

 

 そうなんだよな……攻撃自体は奇跡的にギリギリ避け続けられてる。昔から反射神経……というか性格上危機回避能力みたいなのが高いおかげで。けど体力的にいつまでもつか……。

 

『うん? そ、それは……!』

「あ?」

『おんしの持っているその指輪! それこそ、ワシらブライダンの求める指輪ゼヨ!』

「指輪? ……コレのことか!」

『おとなしくその指輪を渡せば、おんしら2人とも助けてやらんこともないゼヨ!』

「木之実くん……」

「……分かった。コイツでいいんだな?」

『話の分かる人間は嫌いじゃなか。ほんじゃ、それをワシに寄越すゼヨ』

「……おう」

「待って木之実くん! 幾ら命に変えられないからって……お守りなんでしょ!? なのに大事なその指輪を……!」

 

 橘さんが止めるが、それを無視して指輪を外しそれを持ってゆっくりと歩きながらアイツの前へ。一歩、また一歩と思い足取りで歩いていく。

 奴が剣を持ち替えて右手を開いたそこへ指輪を落とす……その瞬間。

 

「っらぁっ!」

『うごっ!?』

 

 コォーン! という鐘の音を響かせその場に倒れ伏す。そいつが手放した剣を奪い取り、思い切り力の限り遠くへ投げ飛ばした。

 

「はぁ……はぁ……いっっっっ……! 本当に金属じゃねえかクソッタレ……! 痛えなこの野郎!」

『じ、自分から殴っておいてそれは無いじゃろうが……! それよりおんし! なんの真似ゼヨ!』

「なんの真似も何もねえだろ! こんだけ人襲って、好き勝手してるお前らみたいなのに! はいそうですかって渡す馬鹿はいねぇよ!」

『命が惜しく無いゼヨか!』

「惜しいさ! 当たり前だろ! でもそれ以上に、俺の友達を怖がらせたお前ら悪党を許せないって気持ちのほうが強いんだよ! お前らみたいな奴に屈するなんて、俺はまっぴらゴメンだ!」

『っ……ぐぅ……そうか……おんしの気持ちは……よーく分かったゼヨ』

 

 金色の奴は立ち上がると、殴った俺に反撃するでもなく、銀色の奴ら……部下達の方へと戻っていく。そして────

 

『だったらお前のその間違った行い! 後悔しながらあの世へ行くゼヨ!』

 

 ソイツの合図で部下の奴らが一斉にこちらへ銃口を向けて来る。せめて橘さんだけでも守ろうと奴らと彼女の間に入った。

 

「橘さん聞いたろ、狙いは俺らしい。橘さんは逃げろ。中に戻ってカズと合流するんだ、ここより少しは安全なはずだから」

「何馬鹿なこと言ってるの! 木之実くんも一緒に逃げるんだよ! 言ったでしょ、自分を大事にって!」

「逃げてもどうせ2人ともやられるだけだ! だったら、せめて君だけでも……!」

「嫌だ! 木之実くんがいなくなったら、私……」

『せめてもの情けだ、それなら2人まとめて送ってやるゼヨ!』

 

 金色の手が下ろされ、銃弾が放たれる……その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「伏せて!!」

 

《ユニコーン! ドリルアタック!!》

 

 俺たちの頭上を舞う何者かが放ったマゼンタカラーのドリル状のエネルギーが銀色の奴らを貫いた。

 

『リンリン!?』

『コーン!?』

『っ!? おんしは……!』

「全く……こんな所でアンタ達に遭遇するなんてね。こっちは仕事の最中だったのに……」

「誰だ……!?」

「ハイクラス&ラグジュアリー、ゴジュウユニコーン!」

 

 俺たちの前に降り立った何者か。

 金色の右手を模した水色の刃の付いた武器、左手にはユニコーンのような形状のドリル。黒いボディーに白い手足、金色の意匠が施されたその姿は、正に幻獣ユニコーンを表しているようだった。

 

「ゴジュウ……ユニコーン……?」

「って、貴方その指輪!」

「っ! お前も指輪狙いか! 助けてもらったことには礼は言うけど、コイツ狙いなら話が別……」

「そうじゃないわよ! なんでその指輪を使わないの?」

「指輪? 使う? ……なんの話だ……」

「あなたが持ってるそれは私のと同じ、コイツらと戦える力を持ってるの!」

「この指輪が? でも、どうやって……」

 

 すると、俺の手元に何かが出現した。これは……右手? ゴジュウユニコーンとやらの持つものとは違う、色違いの銀色の武器が現れた。

 

「な、なんだ? これ……!?」

「それに指輪を嵌めて!」

「指輪……コイツか!」

 

 ゴジュウユニコーンは駆け出し、襲いかかって来る銀色の奴らを1人で蹴散らしている。

 それなら今のうちに……その手の形を模した武器の中指部分に窪みがある、ちょうどコイツが入りそうな大きさだ。

 

「よく分からないけど……ここに、これを……!」

 

 だが、指輪はガッとなって奥まで嵌った感じがしない。アレ? でもさっきの奴はこう使うんだって……! 

 

「あれ? 入んね……っ、この、コイツ……んぁあもう!」

「何してるの木之実くん! 早くしないと……」

「わからないんだよこれ! 入んないんだもん! あの人もなんだよ全然できねえよ! どうしよ橘さん!?」

「私に聞かれてもどうしようも……木之実くん」

「なに? なんかいいアイデア浮かんだ?」

「ひょっとしてこれ、回せるんじゃない? ほらここ、形が」

「回す? 指輪を? ……あ!」

 

 橘さんに言われてよく見ると、指輪の絵柄が描かれている箇所の下部、何か出っ張りがある。なら、これを上に合わせるようにやれば……! 

 リングの部分を摘み、半回転させる。すると指輪の絵柄が変わり、そのスーパーカーと似た姿をしたヒーローの絵が現れた。

 

「やったーこれならハマりそうだ! 橘さんナイス!」

「やった!」

「青春するのはいいけど、早く手貸してくれる!?」

「最後まで説明して欲しかったんすけど!?」

 

 思わず2人でハイタッチ。

 それをユニコーンに咎められるがそっちも説明不足だったよな? とにかく、これで指輪が使えるようになりそうだ。

 

「橘さん、隠れてて。すぐに終わらせる」

「う、うん……気をつけてね」

 

 その言葉に、力強い頷きで答える。時間がかかって頭が冷静に戻ったのか、はたまたこの指輪の力なのか、使い方が頭の中に流れ込んでくる。今ならやれる。俺なら、橘さんを守れる! 

 

「行くぜ魔法の指輪、お前の力を見せてみろ!」

 

 左手に指輪を、右手には銀色の武器……『テガソード』と言うらしいそれを構える。そして、これの真の力を発揮する為の合言葉は……! 

 

「エンゲージ!」

 

 両手をぐるりと回転させ、顔の右横で構えたテガソードに上から指輪をセット! 

 

《センタイリング!》

 

 その状態のまま左手で裏から一回。

 右手を左足の方へと向けて突き出し、逆に左手を顔の右横へ。そのまま大きく体を捻って顔の右横で二回拍手。左手、右手の順に前に手を突き出し顔の左横で一回。

 そのまま左に体を捻り、両手を大きく上に上げて二回拍手、グリップ部分に付いているトリガーを押す! 

 

「フッ!」

 

 両手を体の横に下ろすと、俺の体が赤いスーツに包まれる。金色のベルトを巻き、両手両足に黒いタイヤ、胸には銀色のシートベルトのようなものがあり、刻まれているのは鳥が翼を広げているようなデザインの数字の1。

 更に頭上から黄色い嘴と両耳部分にタイヤが、ヘッドライトもついた赤いメットが被さり、俺を指輪の絵柄と同じ姿のヒーローに変身させた! 

 

《ゴーオンジャー!!》

 

「こ、こ……木之実くんが……」

「俺……まさか……」

「「変身しちゃった!!??」」

「やっとできたのね……ほんっと、世話が焼ける!」

『まさかおんしも指輪の戦士だったとはの……何者ぜよ!』

「俺? 俺は桜、木之実 桜! またの名を……」

 

 指輪が俺に教えてくれる。乗り物の生命体、『炎神』と言うらしいその力を身に纏った戦士。

 そう、今の俺の名前は────

 

「マッハ全開! ゴーオンレッド!!」

 

 腕を回し、決めポーズをしながら高らかに戦士としての名前を名乗る。

 

「覚悟しやがれ、今の俺ならお前らにも負けねえ!」

『ええい、姿が変わったところでワシらには勝てん! アーイー!』

『キーン!』

『コーン!』

 

 銀色のベルの奴ら……アーイーと呼ばれた戦闘員達が俺に向かって来る。さっきまでならビビってたけど、今なら! 

 

「行くぜ!!」

 

 足に思い切り力を入れて駆け出す。いつも以上に走るスピードが出せ、一気に一体のアーイーの目の前へ。

 

「っらぁ!」

 

 そのまま思い切り飛び膝蹴りを入れ、そのまま右手のテガソードの斬撃で二撃、蹴りを入れてぶっ飛ばし、隣の2体を回し蹴りで吹っ飛ばす! 

 

「まだまだ! もう一丁!」

 

 そのまま体を反対に捻ってもう一体に左拳での一撃。からの右足を突き出してのキック! 普段の何倍もの力が籠ったそれはさっき殴って手を痛めたアーイーを安易とぶっ飛ばした。

 

「っはは! すげえや、体が軽い! 攻撃が強い! これが指輪の戦士の力か!」

「木之実くん凄い……」

「あの子、指輪の戦士として戦うのはこれが初めてなのに……なんてセンス」

 

 橘さん、そしてユニコーンも揃って驚きを隠せないでいた。いやぁ、自分でも強さに惚れ惚れする……自画自賛に値するぜ。

 

『おのれ……よくもワシの仲間を!』

 

 金色の隊長格……黒ずみだっけ? まあいいや。

 とりあえずソイツがいつの間にか拾ったのか大剣を持ち向かって来る。得物が大きい+変身してるおかげでさっきより避けやすいし捌けてるけどあの武器の対処はコレ(テガソード)じゃ難しそうだ……だったらこっちもデカい剣で対抗だ! 

 

「来い、ゴーオンギア!」

 

 胸に描かれた1の数字が浮かび上がり、一本の剣へと変わっていく。そして、ETCのゲートと道路を模したデザインの大剣が姿を表した! 

 

「ロードサーベル!」

『そんな剣で!』

 

 ゴーオンレッドの専用武器『ロードサーベル』を手に駆け出す。真っ向から振り下ろされた敵の剣を頭上で受け流し左下から斬りあげ→右上から斬り下ろしのコンボ。

 

「っルァ!」

 

 更に回し蹴りで吹っ飛ばす。剣が手を離れ、地面を転がる黒ずみ。だが周りを見渡すと、まだ少し数が残っている。一気に片付けたいが1人だと決め手に欠けるな……待てよ? 確かこの近くって……。

 

「……あった!」

 

 そこにあったのは俺のバイク。さっきの騒ぎのお陰で駐輪場のチェーンも壊れていた。バイク本体がやられて無かったのは奇跡だな……。

 

「使ってみるか!」

 

 キーを回してエンジンを始動すると同時に指輪の力を引き出す。変身してない時に感じたあの運転がうまくなるあの力、どうもアレは、この指輪が持っていた能力らしい。変身している今それを使ったらどうなるか? ぶっつけ本番、やるだけやってみる! 

 

「『操縦(ステアリング)』!」

 

 いつも通り感じ取れ、このマシンの魂を! 

 一気に加速し、アーイー軍団に突っ込んでいく。やや機体を倒しながらハンドルを切って高速回転。左手に持ち替えたロードサーベルで奴らを次々に切り裂いていく。

 

「オラオラオラオラオラ!!」

 

 加速しながら繰り出される斬撃はものの数瞬で銀のアーイー達を壊滅させてしまった。

 

『そんな、バカな……たった1人にこのワシの仲間達が……!?』

 

 思いもよらぬ大逆転に、さっきまでの余裕が嘘かのように狼狽えている黒ずみ。

 絵に描いたような大チャンス、決めるならここだ! もう一度加速し、黒ずみに向かって一気に突っ込む。人間相手は絶対にやっちゃならないが、相手は怪物、問題ねえ! 

 

『な、な、まさかおんし……!』

「ぶっ飛べ ベル野郎!!」

『ああああああ!?』

 

 そのまま正面から思い切り衝突。突っ込まれた黒ずみは天高く宙を舞う。

 

「振り切るぜ、ラストスパート!」

 

 そのまま奴を追ってバイクから飛び上がる。輝く道路のフィールドが展開され、それに飛び乗ると更に加速し、急接近。

 

「サーベル・ストレートォッ!!」

 

 そして体の横で構えたロードサーベルで、思い切り奴を斬りあげた! 

 

『ぐおおおっ!?』

 

 だが黒ずみの奴も咄嗟にガードしており大ダメージとは行かなかったが、必殺技を喰らい大きく吹っ飛ばすことができた。

 ぶっ飛ばした先の椅子やテーブルを壊しながら地面に叩きつけられた黒ずみ。怯んでる隙に追撃しようとするが……。

 

『っ……中々やるな……ここは一時撤退あるのみ! 次はその指輪、貰い受けるゼヨ!』

 

 そんな捨て台詞を吐くと、アイツは近くのポスターに描かれた光る円の中に駆け寄っていた部下達と共に吸い込まれていった。

 

「……逃げたか」

 

 敵の気配が消えたのを確認すると変身が解けて元の姿に戻った。かなり体力を使ったのか腰が抜けてその場に尻餅をついてしまった。

 

「木之実くん!」

 

 隠れて見ていた橘さんが駆け寄ってくる。

 正直かなり疲れてはいるが、安心させる為に笑顔をつくり答えてみせた。

 

「橘さん、終わったぜ……」

「馬鹿! 無茶して……でも、無事でよかった……!」

 

 そのまま力強く抱きしめられる俺。

 ────え、あの橘さんちょっとそれは……!? 

 

「あ、あ、あの橘さん!? 安心してくれるのはありがたいんだけどそれはちょっと刺激が強いと言うかですね……!?」

 

 うおお腕細い……柔らか……女子ってこんななんだ……生まれてこの方モテた試し無かったから、いい気分だがなんだか複雑な気持ちだ……。

 

「全く……見ていてヒヤヒヤしたわよ。無事だったからよかったものの……」

 

 戦っていた別の銀色のアーイー達を片付けたのか、ゴジュウユニコーンがこちらに近づいてきた。

 

「勝ったんだからいいだろ? それに、アンタがもう少し丁寧に教えてくれたら……」

「知ってると思ったのよ。指輪の戦士ならね……まさか使い方を知らなかったなんて」

「あ、そうだ! アイツも言ってたけど……コレは一体なんなんだ? それとアンタ何者なんだよ?」

 

 そう言われるとゴジュウユニコーンは指輪を外し変身を解除。

 性別は声から予想した通り女性。年齢は俺らより歳上みたいだが遠くはなさそう……20代か? 

 肩まで伸びた髪とオシャレな服装ですごく大人な雰囲気を纏っている。

 

「私は一河角乃、探偵よ。そしてあなたと同じ指輪の戦士、ゴジュウユニコーン」

 

 そう言って差し出された名刺を、俺はとりあえず受け取るのであった。

 

 

 

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「あ、いた! サク! 橘さん!」

 

 とりあえず3人で建物内に戻ると、店の近くでようやくカズと合流できた。

 

「カズ! 無事だったのか!」

「お前何処行ってたんだ…………おいサク」

「なんだよ」

「なんだよじゃねえよ! 急にいなくなったと思ったら橘さんの他にもう1人女の人連れて! しかもお前! おいその手!」

「手……? あ、いや、これはだな……」

 

 カズが興奮してるのも当然である。

 さっき会ったゴジュウユニコーン……もとい一河角乃さん。まあそれはいいのだが……。

 

「……」

 

 そう、この手である。

 何故かさっきから橘さんが俺の左手を握ったまま離してくれないのである。

 

「いや、まあ……色々あって」

「色々ってなんだよ……というか、俺がトイレ行ってる間になんか外がめちゃくちゃ騒がしくなってなかったか? なんか鐘の頭の怪物が出たとかなんとか聞こえてきたぞ」

「残念ながら正解だよカズ。俺も橘さんもその怪物に襲われてた」

「はぁ? お前な、嘘つくにしてももう少しマシな嘘をだな……」

「残念ながら嘘じゃないわよ、お友達の子。彼らも私も、その怪物を見てるし襲われたの」

 

 そう言って一河さんは自身のスマホでさっきのアーイー達の動画をカズに見せていた。

 

「……これ、まさかAI生成とかじゃ……」

「だったらこんな怪我しねーよ」

 

 そう言ってさっき生身で殴った際できた手の怪我を見せると、ようやく信じたのか黙ってしまった。

 

「だがまあ、信じられないのは俺も同じだ。だから一河さん教えてくれ、アイツら何者なんだ? 何故俺を……俺の指輪を狙った?」

「そうよね、まずはそこから説明しないと……でもまずは場所を変えましょう。この近くに懇意にしてる喫茶店があるの」

 

 そんな訳で、一河さんの案内でやってきたのは2つ程離れた街にあるとある喫茶店。

 ……見間違いじゃなければ『テガソードの里』って書かれてなかったか……? 

 

「いらっしゃい……おや、一河か」

「竜儀、4人行ける?」

「無論だ。お客様、あちらのお席へどうぞ」

「ああ、どうも……」

 

 まるで何かの民族衣装のような服に身を包んだ男性に案内され、テーブル席に着く俺たち。

 だが俺は見逃さなかった。竜儀と呼ばれた男性の右手にも指輪があったのを……あの人も指輪持ちか。

 

「……あれは」

 

 ふと目を向けると店の中心に鎮座する青い翼のついた黄金のロボのようなフィギュアが。

 

「……これが、テガソード?」

「テガソード様に興味があるのか少年?」

「うわびっくりした!?」

 

 気づくとあの店員さんが背後にいた。

 その人は俺の肩をガシッと掴むと捲し立てるように語り始めた。

 

「ならば今日という日は偉大な吉日となるだろう! 昨今頻発する様々な災いや煩わしいしがらみ、人々に降りかかるそれを祓う至高の存在! テガソード様を信じれば必ずや人類は救われるだろう! この機会にぜひ、色々知っていくといい!」

「は、はぁ……」

 

 なんかこの人うるせえ。

 まあ諸々の事情から予想しても他の変な仏壇とか買わされるようなクソな宗教よりかはマシ……だと、信じたいな……? 

 

「そいつの話は半分無視していいわよ。竜儀、紅茶4人分お願い」

「承った」

 

 なんか色々あるなこの店……全部にテガソード様って付いてる辺り多分あの人のアイデアか……。

 

「あ、でもコレ美味そうだな……えと、竜儀さん?」

「ええ、竜儀です。暴神竜儀と申します、以後お見知り置きを」

「ああ、どうもご丁寧に……自分桜、木之実 桜です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 そう言ってゴーオンジャーリングを見せると、驚いたように目を見開いた。

 

「なるほど、指輪持ち……しかしテガソード様を知らないとは珍しいな」

「この子、指輪を拾ったはいいもののテガソードの契約とか指輪の戦士云々全部知らないみたいなの。だからこれからレクチャーってとこよ」

「そういうことか、ならばここに連れて来たのは打って付けだな。私からも聞かせてしんぜよう」

「ああ、どうも……その前に、注文いいすか?」

 

 そうして各々紅茶に追加でカズはテガソード様パンケーキ、橘さんはテガソード様パフェ、俺はテガソード様オムライスを頼み、一河さんから話を聞くことになった。

 

「晩飯入らなくなるぞサク」

「なんか戦ったら腹減っちゃって。多分行ける」

「橘さんもパフェ結構デカくない?」

「甘いもの欲しかったんだ。なんか色々ありすぎて頭が……」

「さて……そろそろいい?」

「ああ。あいつらのこと、指輪の戦士のこと……教えてくれ一河さん」

 

 そうして各々頼んだものを食しながら一河さん(with竜儀さん)は語り始めた。知らなかった俺を除き、指輪の戦士達は皆各々の願いを抱いており、それを叶えるためにテガソードと契約を結んでいること。指輪を全て集め、戦士達の頂点に立った者だけが願いを叶えられるということ。

 そして指輪を狙っているのは他にもおり、それがアイツらブライダン。女王テガジューンの元今回はいなかったが、ノーワンという怪物や、アイツらアーイーを率いて戦士達の持つ指輪を狙っているらしい。

 

「とまあ、ざっくり説明するとこんな感じ。ここまではOK?」

「ああ、なんとなくだけど」

「つまり木之実くんはその指輪の争奪戦に巻き込まれたってことですか?」

「そういう事になるわね」

「でも、一河さんはなんであんなタイミング良く俺を助けに……?」

「偶々よ。あのショッピングモールの経営状況調査の依頼で来てたんだけど、まさかアイツらや貴方に遭遇するとは思わなかったわ」

「あの怪物は敵組織……第3陣営ってことか」

「言ってしまえばそうね。この戦いは本来指輪を持つ者同士の争いだもの」

「つまり……言ってしまえば俺にとって2人は……」

「敵、という事になるな」

 

 咄嗟に椅子から立ち上がり警戒心を強める。が2人はまるで襲ってくる気配は無い……どういう事だ? 

 

「安心しろ、木之実少年。ここで君を狩るような無粋はしない。ビギナー相手に2人がかりで襲って指輪を奪うような汚い真似は、テガソード様もお認めになるまい」

「それに、私たちは今は敵じゃないってだけ。ある程度は協力しようって協定があるのよ」

「同盟、ってことか?」

「ええ。私たちの他に3人……同じ金色のテガソードを使う戦士がいるの。どっかの教授曰く、ゴジュウジャー……って事になってるわ。チーム名みたいなものが」

「ゴジュウジャー……」

「それでどうする?」

「どうするって……」

「どういう経緯があれ、その指輪を持つという事は争いに身を投じるってこと。貴方にはある? そうするだけの、願いが」

「俺の、願い」

 

 カッコいいマシンに乗りたい。その願いはこの指輪を手に入れて、力を使って免許を取って……そう言った意味では、もう願いは叶っていると言っても過言ではない。でも今この指輪を手放すのは違うと俺の中の何かが言っている。

 あの時指輪の力が無ければ、一河さんが助けてくれなければ俺も、橘さんも、ただでは済んでなかった。

 指輪争奪戦云々はともかく、アイツらが俺にとって大切な人を傷つける存在だというのなら放ってはおけない。

 

「……俺は、アイツらが許せない。街の人を、橘さんを、俺にとって大事なものを汚すアイツらが。この力が、アイツらに対抗できるものなら俺はこれを手放す気は無い。俺も戦う! 大切な存在を傷つける奴らを倒す、それが俺の願いだ!!」

 

 オムライスを平らげ既に指輪を持っている2人にそう力強く宣言する。俺も指輪の戦士の1人として戦うと、新たな願いを抱いて。

 

「決まりだな」

「みたいね」

「サク、お前とんでもない事に巻き込まれたな……」

「まあ、やれるだけやるさ。手に入れたこの力が、誰かのために使えるなら手放す理由はない」

 

 その後竜儀さんによるテガソード講座が開かれて、2人も巻き込まれた結果帰りが遅くなったのはまた別の話である。ちなみに何かを買わされる事は無かったし、なんならテガソードに関する資料をタダで色々くれた。

 ただ、橘さんがその間もしょっちゅう俺の方を見ていたのは気になったが……。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 あの事件から数日後。

 自主トレを重ねて本当の意味でゴーオンレッドの指輪を使うのにも慣れて来た頃。今日も今日とて学生としての本分を終え、そろそろ帰ろうかと思っていた時だった。

 

「桜! 今日どっか寄ってかね?」

「ん、そうだな……とりあえず免許取ってひと段落したし、特に用事も無いし……いいぜ、何処に……」

「木之実くん、ちょっといい?」

「橘さん?」

 

 急に呼ばれて振り向くとそこには橘さんが。

 タイミングがちょっとアレだが一体なんだろうか? 

 

「ちょっと先生から頼まれごとがあって、木之実くんも呼んでくれって」

「了解。悪い、先行っててくれ。時間あったら追いつくから何処行くかはスマホに頼む!」

 

 そんな訳で橘さんに連れられやって来たのは職員室……ではなく普段は生徒が全く近づかない屋上(基本立ち入り禁止)へ続く階段付近。

 あれ、頼まれごとはどうした? 

 

「橘さん、頼まれごとがあるって言ってなかった?」

「……」

「橘さん……?」

「ごめんね、アレ嘘だから……」

「嘘? なんでそんなこと……」

「木之実くん、本当に戦うの? 指輪争奪戦」

「え? そりゃまあ……願いが叶う云々はともかく、ブライダン……奴らは放っておけないし。経緯がどうあれこの力を手に入れた以上、俺は戦わなきゃならない」

「戦ったら死んじゃうかもしれないんだよ!? そんな危険を冒してまで木之実くんが戦う必要なんて……」

 

 確かにそうだ。俺は本来ただの高校生、一般人だ。

 あんなヒーローみたいな戦いなんて本来は無縁のものだし、なんならあの場で犠牲になる程度の存在かもしれない。でも……。

 

「もしあの時……指輪の本来の使い方を知れてなかったら……一河さんが助けに来てくれなかったら……どの道俺たち2人とも死んでた。あんなのはもう2度とゴメンだ。それを防げる力がこれにあるのなら……手放せない、これは大切なものを守るための力だから」

「大切なものを守るための、力……」

「それにアイツら倒すついでに他に願いが叶えられるかもしれないってなら願ったり叶ったりだし! 何頼もうかな〜億万長者、不老不死、それから……」

「今の私が感動してた気持ち返して……」

 

 だって、あるものを集めれば願いが叶うなんて物語の中でしか聞いたことない! それがリアルにあるって分かったらそんなの興奮するに決まってる! 

 

「まあ半分冗談だけどさ……」

「半分は本気なんだ……」

「守りたい、ってのは本当だよ。学校の連中も家族も、俺にとっては大事だし。……でも、それだけじゃないかも」

「……というと?」

「そうだな……え〜っと……なんて言ったらいいんだろ……願いとか、アイツらを倒したいってのも俺の本心だよ。でも、俺が何よりも守りたいって思ったのは……側にいたい、いて欲しいと願ったのはきっと───」

 

 顔を熱くしながらも言葉を告げようとしていた時、間がいいのか悪いのか鳴り響く地響き。

 何が起きているのか確認すべく施錠されているドアの鍵を銀のテガソードで叩き斬り屋上へ。外の景色を見ると、両肩の部分が鐘になっている巨大ロボが街で暴れ回っているのが見えた。

 

「なんだあの巨大ロボ!?」

「両肩にベル……木之実くん、アレってもしかして!」

「まさかとは思うが……」

『出て来いゴーオンレッド! この前の決着、今日こそ着けたるゼヨ!!』

 

 大音量でスピーカーから響く声。やっぱりこの前のアイツか! アレで諦めたとは思っていなかったけど……。

 

「やっぱり、あの時の黒ずみ野郎!」

「前に私たちを襲ったアイツ……」

『出てこないのなら、ここら一帯纏めて粉々にしてやるゼヨ!!』

「……橘さん、ここを動かないで。でも危なくなったらすぐ避難すること」

「木之実くん……何する気!?」

「俺がアイツを引きつける、今の俺なら上手く立ち回れるはずだから」

「何言ってるの! 相手はあんな巨大ロボだよ!? 木之実くん1人じゃどうにも……」

「まあ倒すのは難しいだろうな……可能性があるとしたら……」

 

 ポケットに入れていた一河さんの名刺を取り出す。俺の指輪の能力はほぼ把握したが、あんなサイズのロボを出す力までは無かった。

 だが、竜儀さんが言っていた。他の指輪の戦士とは異なり、金のテガソードを持つ5人……ゴジュウジャーであれば巨神テガソードと一体になり戦える。その一員の一河さんならなんとかできるかもしれない。俺は一河さんの名刺を橘さんに渡し、しっかり手に握らせた。

 

「……木之実くん?」

「俺が時間を稼ぐ。その間に橘さんは一河さんに連絡を!」

「待って木之実くん!!!」

 

 引き止めようとする橘さんの手を振り解き屋上のフェンスを飛び越える。そして即座に指輪を回転させて銀テガソードにセット! 

 

「エンゲージ!」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

『待てども待てども……いつまで隠れているつもりゼヨ、ゴーオンレッド……! どうやら本当に出てくるつもりがないようゼヨな……ならば宣言通りに……!』

「待ちやがれ黒カビ野郎!!」

 

 すんでのところでなんとか到着。このゴーオンレッドの加速力に感謝だな……! 

 

『黒カビじゃなくてガイア・クロズミーゼヨ!』

「どっちでもいいそんなもん! 結局汚れてんじゃねえか!」

『分かってないゼヨなァ! 汚れているという事は、長く活躍しより励んだ証! 綺麗なものよりよほど価値ある! 人間のお前には分からんゼヨ!』

「生憎掃除の時間は毎度真面目にやるタチでな! 汚れは俺の大敵だよ! マンタンガン!」

 

 取り出した給油ノズル型の銃を連射し攻撃するも、鈍い金属音を響かせるだけで全く効いている様子がない。

 

『ハッハッハッ! そんな豆鉄砲じゃ痛くも痒くもないゼヨ!』

 

 巨大ロボが腕を振り下ろし攻撃してくる。大きさ故に速さで避けられるけど……。

 

「どれだけデカくてもアレはロボ……機械だ。ならどっかに弱点くらいあるはず……!」

 

 マンタンガンを連射しながら持ち前の機動力を活かして地上に、建物にと飛び移りながら攻撃を続けるが、所詮等身大の敵用武器なのかマトモに効いてる気がしない……! 

 

「だったらコイツで……! カンカンバー!」

 

 追加で取り出したのは踏切の遮断機を模した武器。それを手に持ち敵のロボに飛び掛かる。

 

『フン! そんな武器が通用するとでも……』

「踏切鳴ったら……渡るんじゃねぇ!!」

 

 それを振るうとロボの前後を挟むようにして踏切が出現、その動きを封じてみせた。

 

『なっ!? なんだこれは……っ! 動けんゼヨ!』

「これならどうだ! クロッシングストッパー!!」

 

 そのままカンカンバーを振るうと、ティラノサウルスがモチーフの『ティライン』トリケラトプスがモチーフの『ケライン』電車型の2機の炎神を模したエネルギーをぶつける技が炸裂。

 

「更に連結! カンカンマンタンガン!」

 

 ガンモードのマンタンガンとカンカンバーを合体させたカンカンマンタンガン。さっきの2機に加えマンモスモチーフの『キシャモス』が加わる。3機分の銃口にエネルギーをチャージし、それを一気に撃ち放つ! 

 

「カンカンカンエクスプレス!!!」

 

 放ったそれは防がれることもなく直撃。発生した爆煙が視界を遮った。だが単独で出せる最大級の技を2連続で喰らわせた。これなら……! 

 

『フゥ……! 今のは危なかったゼヨ……!』

 

 さっきに比べたらダメージは入っていた。だが、それでもアレを倒すには至っていなかった……。

 

「……マジ、かよ……っ!」

『なかなかいい攻撃だったゼヨ、しかし! 所詮ワシを倒すには程遠いゼヨ!!』

 

 そう言いながら繰り出されるロボのパンチ。やっべ……倒したと油断して膝ついたからこれだと……! 

 

「ぐああああぁ!!?」

 

 咄嗟に膝に力を入れて立ち上がるも、その攻撃は俺の立っていたビルに直撃し転落、地面に叩きつけられてしまった。

 

「いっ……つぁ……がぁ……!」

 

 落ちた衝撃+瓦礫の落下のダメージが重なって変身が強制解除された。身体中傷だらけで立つこともままならない。

 

「木之実くん!!」

 

 声がした方へ首を向けると、おぼつかない足で駆けつけてくれたのは橘さん。彼女もここに来るまでに色々あったのか、所々に傷を負っている。

 

「たち……ば、な……さん……」

「っ……酷い怪我……だから言ったのに……!」

 

 細い腕で俺を抱き起こしてくれる橘さん。その表情は今にも泣きそうになっていた。

 

「なんで……逃げなかった……! ここは危ないって……!」

「木之実くんを置いて行けないよ! 君がいなくなったら、私はどうすればいいの!?」

 

「どうにでもなる、だろ……君は、優しい人だ。君を大切に思うのは、俺だけじゃ、ないから……」

 

 そうだ。

 ちょっと不器用かもだけど、真面目で優しい、人を思いやる心を持ってる女の子。俺が心から好意を抱く、一緒にいて心地よく正しい人間の君なら、きっと────

 

「……いよ」

「……? すまねぇ、聞こえなかった……もう一回……」

 

 

「ならないよ!!」

 

 ポタポタと俺の胸元に落ちる水滴。

 顔を上げると、橘さんが涙を流して、こちらをキッと睨むように見ていた。

 

「私が自分に自信を持てるようになったのは、君がいたからなの! 木之実くんが側にいたから、支えてくれたから! 私は今の私になれたの! そんな君が、こんな形でいなくなったら、私……私は……!」

「……たち、ばなさん」

 

 泣いている。1人の女の子が俺のために、こんなにも本気になって、声を荒げて心配してくれている。なのに自分は何をしていた? 我が身を蔑ろにして、友達の気持ちも考えずに1人で突っ込んで……傷を負って、心配させて泣かせて……。

 まったく、情けないにも程がある。側にいる人をこんなに悲しませるヒーローが何処にいる。やれやれ……どうやら俺に、正義の味方は向いていないらしい。

 

 でも、それでも。やらなければならない事が、まだある。

 

「そう、だな……! そうだよな……!」

 

 傷だらけで、体力もほぼ枯渇してマトモに動けない体に鞭を打ち、膝に力を込めて立ち上がる。

 

「俺は、まだ死ねない……!」

『おんし、まだ立ち上がるゼヨ……!?』

 

 明日もやりたい事がいっぱいある! まだバイクで行きたいところがいっぱいあるし、カズと、みんなと勉強したり遊んだり! 

 それに……それに……! 

 

 

「俺はまだ……大好きな人に! 自分の気持ちを伝えられてねぇんだよ!!」

 

『コイツ、急に闘志が……!』

「だから戦う、お前を倒して! 俺が! みんなを! 橘さんを! 守るんだ!!!」

 

 その覚悟と共に握りしめた拳を高らかに天に掲げる。指輪を通して感じる轟くエンジンの音。

 

 覚悟を決めた俺の心とシンクロし、指輪の力が極限まで高まった時かつて大いなる厄災を挫くために戦い眠りについた、巨大なる炎神の王が轟音と共に今蘇る! 

 

 空に開いた穴から降り立ったのは、指輪に描かれた赤い鳥のスーパーカー炎神『スピードル』と、黄色いクマのRV車炎神『ベアールV』青いライオンのバス炎神『バスオン』。

 その三機が合体して生まれた合体ロボ、その名も『エンジンオー』! 

 

「あれは……!」

「巨大ロボが、もう一体……?」

「俺の味方、いや……『相棒』かな?」

「木之実くんの……相棒?」

「橘さん、もう少しだけ待ってて。終わらせてくる」

「木之実くん……」

「大丈夫。絶対帰ってくる、約束する」

 

 肩に手を置き、じっと彼女の目を見て言う。橘さんはこくりと小さく頷くと……。

 

「うん、分かった。木之実くんを信じる、だから絶対に……」

「ああ。……じゃあ、行ってくる!」

 

 指輪を回転、ゴーオンレッドの絵柄を出現させる。テガソードと交差させるように構え……。

 

「エンゲージ!」

 

 腕を大きく回し、テガソードに手をかざすようにしてリングをセット! 

 

《センタイリング!》

 

 左手を横に広げ、裏から一回。右手を左足の方へと向けて突き出し、逆に左手を顔の右横へ。そのまま大きく体を捻って顔の右横で二回拍手。

 左手、右手の順に前に手を突き出し顔の左横で一回。左に体を捻り、両手を大きく上に上げて二回拍手、グリップ部分に付いているトリガーを押す! 

 熱いソウルに包まれて俺をゴーオンレッドに変身させる! 

 

《ゴーオンジャー!!》

 

「よーし……!」

 

 エンジンオーに向かって飛びコクピットらしき場所へ。指輪の力のおかげか、はたまたこのロボ自身の魂が訴えかけているのか操縦桿を握るだけで動かし方が分かる。

 恐らくは後者だと信じたいな。

 

『話は終わったゼヨか? ゴーオンレッド!』

「ああ、充分過ぎるくらいに話したよ! でもまだ話し足りなくってな……だからマッハでお前をぶっ倒させてもらうぜ!」

『舐めるな! 今度こそこの手で、お前を倒すゼヨ! そしてその指輪、我らがファイヤキャンドル隊長の為に!』

「悪いが、お前にこれは渡さない……ここで決着を着ける!!」

 

 その時、周囲の空間がまるで格闘技のリングのように塗り替えられる。そして仮面をつけた応援団やチアリーダー達が現れて……

 

「いざ掴め!」

 

「ナンバー・ワァァァァァァン!!!」

 

『GO!GO!UNIVERSE!!』

 

 響く応援歌、太鼓の音。一瞬戸惑ったが、心がやるべき事を教えてくれる。俺はリングの上で高らかに自分の意思を叫ぶ。

 

「一人じゃないってその声が、胸の勇気を加速する! キブン壮快、ゴーオンレッド! 咲かせてやるよ、平和の花を!!」

 

《No.1 Battle!Ready……Go!!》

 

 開戦のゴングと共に操縦桿を握りエンジンオーを敵のロボに向ける。

 振りかぶった右拳を叩きつけ、更に反対の拳でもう1発。更に回し蹴り! 

 

『ッ……! やるな……だがこちらも負けんゼヨ!』

 

 クロズミーの操るロボが奴の使っているものと同じデザインの剣を取り出し、切りかかってくるも、すぐには避けられず二撃喰らってしまう。

 

「っ! 野郎……」

『そら、もう1発行くゼヨ!』

「そうは行くかよ! Vシールド!」

 

 エンジンオーの背中部分をパージし、その盾で剣をガード。そのまま上に弾いたあと、その盾を叩きつける。

 

『ナニッ!?』

「オラァッ!!」

 

 盾といえば攻撃を防ぐものと思われがちだが、こうすれば守りだけでなく攻めにも使える。

 更に追加でもう1発。強い衝撃を喰らい、火花を散らしながら後退りするクロズミーのロボ。

 

「今だ! ゴーオンソード!」

 

 エンジンオーの左足後部が開き、折りたたまれたそれが展開。青い大剣へと姿を変える。

 

「一気に行くぜ!」

 

 剣を握り、一気に接近。一撃、二撃。おまけに真っ向からもう一撃。

 連続攻撃を喰らい、吹っ飛ばされてクロズミーのロボが倒れる。

 

「これで終わりだ! 貰ったぜ、最終コーナー!」

 

 操縦桿を押し込み、一気に加速。

 そして、構えたゴーオンソードを一気に振り抜いた! 

 

「エンジンオー! ゴーオングランプリ!!」

 

 すれ違いざまの一閃。

 エンジンオーは足をブレーキに静止し、また切り裂かれたロボは火花を散らしながら膝を突いた。

 

『クッ……! 申し訳ありませんゼヨ、ファイヤキャンドル隊長……! そして……レツ……! 忌々しいが……隊長のことを、お前に託すぞォォォォ!!』

 

 ロボは倒れ、そのまま派手に爆散。

 それを確認すると、エンジンオーはゆっくりと立ち上がり剣を下ろした。

 

「チェッカー、フラッグ!」

《WINNER! GO-ON RED!!!》

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「木之実くん!」

 

 エンジンオーを降りた俺に駆け寄る橘さん。

 俺は変身したまま頭部のメットだけを脱ぎ、笑顔でサムズアップしてみせた。

 

「良かった……本当によかった。無事で……!」

「言っただろ? 絶対帰ってくるって……」

 

 その言葉を言うと同時に抱きついてくる橘さん。2回目だからあの時程の驚きは無いが、代わりにすごく安心感が増している。

 

「信じてたよ。木之実くんならやってくれるって……」

「まあな、俺はやる時はやる男だから。1人でも意外となんとかなるモンだな!」

「本当よ、せっかく仕事放り出して来たってのに……私結局骨折り損じゃない」

「それは悪かった……ん?」

 

 振り向くとそこには腕を組んでご立腹な様子の一河さんが。あ、そういや呼んでたんだった……。

 

「い、い、一河さん!?」

「わああそうだった! 電話した後私早く木之実くんのとこに行かなきゃってなって……」

「まったく……急に呼び出されて仕事に穴開けた分本当はきっちり損害賠償請求したいところだけど……」

「学生に払えますかねそれ……」

「生憎だけど、相場通りの値段はきっちり貰うタチなの私」

「うわぁ……」

 

 いや俺そこまでお金持ってるわけじゃないんですけど……探偵へ払うお金ってバイト代何ヶ月分飛ぶのかなぁ……あ、いや待てよ……ワンチャンこれで交渉できるか? 

 

「一河さん! 提案! 提案があります!」

「……聞くだけ聞いてあげる」

 

 銀のテガソードから指輪を抜き取り変身解除。そしてその指輪を掌に乗せ彼女の前に。

 

「その代金、コイツで如何ですか?」

「え?」

「えっ!?」

 

 一河さんも、そして橘さんも目を見開いて驚いていた。そりゃそうだ。少し前にあんな啖呵切って宣言した手前、指輪を手放すのは確かに早いかもしれない。

 でも、今の俺にコイツは手に余りそうだ。ならもっと使うのに相応しい人の手元に置いてある方がよっぽどいいはずだ。

 

「いいの木之実くん? だって、木之実くんの願いは……」

 

「アイツらを倒すことだけど……橘さんも見てただろ? 俺には、君1人守るのすら精一杯だった。俺にできることなんてたかが知れてたんだ。

 でも、それでいいのかもしれない。多くの人の為じゃなく、近しい誰かのためのヒーロー。俺がなれるとしたら、多分そんな奴だと思う。

 それに……それ以外に願いがあるとしても、それはもう叶ってる。だから、俺にはコイツはもう良いかなって」

 

 そう言って、俺は自分の指輪を一河さんに手渡した。彼女は少し考えた後、その指輪を手に取った。

 

「毎度あり、確かに受け取ったわ」

「じゃあ、これで交渉成立ってことで」

「ああ、ちょっと待って」

 

 一河さんは何やら紙切れを2枚取り出すとサラサラと何かを書き込んで行く。そしてそれを俺たち2人に渡した。

 

「これは……」

「これっきりってのもなんだからね、一応渡しておくわ。まあ、せいぜいそれを使わないようにちゃんと生きること」

 

 書かれていた文字は、探偵料30%割引券。

 何かあれば力になる、という彼女のおせっかいだろうか。

 

「と言っても、探偵なんてフィクションでしか見たことないからイマイチ分からんな……何を頼めば?」

 

「なんでも良いわよ。無くしたもの探し、ペット探し、今回みたいな企業の調査……それから……『浮気調査』、とかね」

「「浮気調査……」」

 

 何故か声が重なり、俺と橘さんは互いに顔を見合わせるも、バッと顔を背ける。え、いや別にやましい事は無いですけど。というかまだそういう関係じゃないんですけど!? 

 

「ま、まあとりあえず受け取っておこうかな!? いや別に無くしものとか人探しならともかく最後の一つはそんな機会無いだろうけど一応な!? な、橘さん!?」

「そ、そうだね!? そもそもまだそんな相手なんて全然、これっぽっちも見つかってないし……まあ余計なお世話と言えば余計なお世話だけど一応ね!? うん!」

「なら良いけど。生憎私はおせっかいナンバーワン! なのよね。何かあったらいつでも力になるわよ」

「ああ、うん。その時は頼らせてもらうよ」

「ええ、頼もしそうなのは確かだしね」

「それじゃあ、私はもう行くわね」

 

 そう言って踵を返し、去っていく一河さん。

 だが、歩き始めた彼女はふと何かを思い出したようにこちらを向き直すと一言。

 

「ああごめん、最後に一つだけ。桜くん、それから橘さん。────大切な人との時間は大事にする事。お姉さんとの約束ね」

 

 何処か意味深な表情と共に一言添えると、今度こそ彼女は去っていった。

 

「大切な人との時間、かぁ……」

「そういや聞きそびれたけど……一河さんはどんな願いを叶えたがってるんだろ……」

「あの顔……なんか大切な人関係であるっぽいけどね」

「指輪、渡して良かったのかもな。……叶うといいな、あんたの願い」

 

 数瞬目を閉じギュッと祈るように指輪を持っていた手を握りしめる。

 

「────さて、帰るか!」

「うん。そうだね!」

 

 そう言って歩き出す。が、3歩歩いたところで足を止めて橘さんに向き直す。

 

「そうだ橘さん、結局先生に頼まれた用事は無かったんだよね?」

「え? ああ、うん……」

「なら、この後暇?」

「うん、一応何もないけど……」

「そっか。なら、よかった」

 

 そっと手を差し伸べる。指輪を手放しても、願いを手放した訳じゃない。なら、それを大切にし続けるのもまた願いの為に戦うという事だ。

 

「このあと、何処か寄ってかない?」

「────うん!」

 

 橘さんがその手を握ると、俺たち2人で歩き出した。

 

「あ、そうだ。行くのはいいけど……」

「けど?」

「……名前で呼んでくれたらいいよ。()()()

「────ああ。行こう、()()!」

 

 何処へ行こうか、何をしようか。

 それはこれから決めればいい。時々ケンカもするかもだけど、俺たちは走り続ける。

 前進しよう、未来(まえ)しか見ずに! 

 

 

 おわり。

 

 




ゴーオンレッド
指輪/ゴーオンジャーリング
契約者/木之実 桜(このみさくら)
職業/高校2年生
願い/カッコいいスーパーマシンに乗りたい→自分の周囲の大事な存在を汚す奴らを倒す正義の味方になる

 以下キャラ紹介

 幼い頃憧れたヒーローのようにカッコいいマシンに乗りたいという夢を叶える為普通自動二輪免許取得に挑戦していたが、実技が思うように上手くいかず悩んでいた時 偶然ゴーオンジャーの指輪を手に入れる。
 指輪の能力『操縦』ステアリングで、バイクに自動車など、一度座席に座りハンドルを握ればその乗り物を自在に操れるようになる力を手に入れたことで晴れて免許を取得。
 その後指輪の能力無しでもバイクを操れるようになり力を持て余していたが、ある休日に高校の友人達と街に遊びに来ていたときブライダンのアーイー軍団に遭遇。
 本来の指輪の用途を知り、指輪の戦士 ゴーオンレッドとして戦うようになる。

 性格
 やや内気ではあるものの仲間思いで仲間や友を何よりも大切にする。
 曲がったことが大の苦手なバカがつくレベルの真面目キャラ(実際は悪い事した後を考えて怖がってるだけだが)それが幸いしてか学校ではクラスの担任はおろか同学年他クラスの先生達からも厚い信頼を得ている。

 能力
 ・操縦(ステアリング)
 桜の手にした指輪の戦士としての能力。
 ひとたび座席に座りハンドルを握れば車も飛行機も電車も、この世に存在するありとあらゆる乗り物を巧みに乗りこなせるようになる能力。
 感覚としては例えるならハンドルを握った瞬間にその乗り物と心(ソウル)を通わせているような感じ。
 なおこの能力は理論上ロボも操縦可能。
 本来であればゴジュウジャーのみがテガソードと人神一体できるところ、この能力を使えば彼も擬似的に人神一体が可能となる。
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