「地球は青かった」。
かのソ連の宇宙飛行士ユーリィ・ガガーリンの言葉とされるが、これは日本の報道が要約したそれが広まったものと言われている。
ガガーリンは宇宙遊泳に成功し、そしてこういう言葉もまた遺したとされる。
「ここには、神は見当たらない」。
☆ ☆ ☆
────2006年 2月19日
その部屋は、〝高い〟部屋だった。
気密性が高い。総工費が高い。部屋に集まった人間の意識が高い。
そして何より、
「おい新入り、緊張してるのか?
高度が、高い。
NASAが管理するスペースシャトル、〝ジェットファイヤー号〟の船室において、既に5回のシャトルでの宇宙飛行を経験している宇宙飛行士、スカイ・オルドリンは今回の宇宙飛行で初めて宇宙に出た新人宇宙飛行士へと声をかけていた。
新人はこれから、宇宙遊泳に出る。
スペースシャトルの船外の宇宙空間に出た後で、ステーションの簡単な修理を行うのだ。
「……緊張してるってわけじゃあないぜ」
既にヘルメットをかぶり宇宙服を着用した新人は、表情の見えないその姿で答える。
「純粋に楽しみなんだ。まだ足を踏み入れたことのない場所に飛び出していくってのがな」
表情のない声だけの返事。だがその声色は、どこか期待を孕んだもののように聞こえた。
スカイはしばし考えた後、新人を小突く。
「真っ黒な空にピクニックに行ってスモアでも作るつもりか? 生憎だがキャンプファイヤーも凍るようなヒエッヒエのクソみたいな場所だ。それとも……」
「Are you going to get 〝FIRED〟(お前自身が〝燃えてみる〟か)?」
宇宙空間では一瞬の判断の遅れが生死を分ける。
だからスカイにとって、新人のそのウカれたような態度は癪に障るものがあったのだ。だが新人は動じないまま、軽く手を挙げてそれに応えた。
「スカイ、あんたは……いや、何百という宇宙飛行士が、何度もこの無限に広がる地獄に飛び出してる。それはスゲエ話だ。宇宙は既に、人類が足を運んだ場所になってる」
新人の表情は、相変わらずわかりにくい。だがうっすらと透けて見えるそれは────
「けれど、俺の足はまだそこに踏み入ったことは無いんだ。俺の〝冒険〟は、まだ始まってすらないんだぜ」
確かに、不敵に笑っていた。
「……おう」
スカイは淡々と返すが、その笑みが一瞬思い返され、彼はぞくっと身震いをしていた。
やがて宇宙遊泳の準備が整い、船外活動の用意を終えて新人は外へと飛び出していく。しばらくは簡単な報告が船内に通信を通じて聞こえてきていたが、やがて新人はひと呼吸置いた後で、報告とは別に感想を漏らした。
「──────これは人類にとって、そして俺にとっての〝大いなる冒険〟さ」
スカイはまた、どこか空恐ろしくなりぞくっと身震いをした。彼は傍らの同僚に声をかける。
「あの新人、これからの宇宙開発史に名前を残しそうだと思うんだよな。どう思う」
急に話をふられた同僚は困惑するも、やがて思案した後にふうっと溜息をついた。
「かもな。20年後にはボーダーズにヤツの伝記が並んでるかもしれないぜ? 題するなら、そう……ヤツの名前から……」
「〝
☆ ☆ ☆
────2024年12月8日 中東 カタール 米軍基地
「おい、あのヘリコプターはなんだ?」
夕暮れ時、カタールの米軍基地をいっぱいに照らす夕焼けを浴びていた時、空軍大尉のロッキー・デサントスはその光の中に奇妙なものを見つけていた。
オレンジの夕焼けの光の中で、大型の空軍のヘリが基地に接近してきていたのだ。
「この時間にヘリが入ってくるなんて話は聞いていないが……」
ロッキーがそう口にし、周りでめいめい自由にやっていた兵士たちもどうしたんだろうなと首を傾げたその時だった。
〝
誰かがそう叫ぶのと、基地内に爆発と衝撃が走るのはほぼ同時だった。その爆発の正体が今まさに入ってきたヘリコプターから放たれたミサイルが引き起こしたものだと理解するまでに、彼らは数秒の時間を要していた。
「何が……!」
ロッキーが困惑しながら、ヘリコプターの正体を見極めようと視線を向けたその時だった。
「────
ヘリコプターから、勇ましく力強い男の声が響いた。そして次の瞬間、
〝発進シフトオン! ダンプ! GO! GO!〟
「ヘリコが……赤いダンプになりやがった!」
ロッキーはそう叫ぶしかなかった。
地上に迫ってきた黒いヘリコプターは先ほどの男の声と共に変形していき、赤く巨大なダンプカー型のビークル────〝ゴーゴーダンプ〟へと姿を変えたのだ。
ゴーゴーダンプは基地内を疾走すると、その巨体で瞬く間に応戦する軍人たちを蹂躙していく。直接轢かれる者こそいないものの、武装は弾かれ、手がつけられない状況だ。
「乗員だ! 乗員をたたけ!」
ロッキーがそう叫び、ダンプの上部に見える小さな運転席へと向かっていったその時だった。
ゴーゴーダンプは急に制止し、その運転席から一人の男が飛び出したのだ。驚くほどに筋骨隆々で、見るからにタフネスに溢れるその男は、運転席に向かっていたロッキーを見咎めると、そのままロッキーの方へと駆けてくる。
そして、
「エンゲージ!」
男の右手には、銀色の奇妙な装備が嵌められていた。
〝センタイリング!〟
男は金色の指輪を取り出すと、それを銀色の装備───テガソードUNIに嵌め込み、走りながら顔の右横で一度、まるで拍手を打つかのようにそれを叩き鳴らす。
「うおっ……!」
ロッキーが反応する間もなく、今度は顔の左横で二度。そこから流れるように、左肩で一度。
「何をやっているんだ……!?」
ロッキーは困惑するしかなかった。
ここまでの襲撃の手際からして、あの男はかなりの手練だ。しかしながら、今の男の動きは走りながらとはいえあまりにも無駄が多く動きも大ぶりだ。
(……撃てる)
手にしたM4カービンの重みが、ずしりとのしかかってくる。さっきと重さは変わらないはずなのに、感じるものが段違いだ。命を奪うものを手にしたが故の、重み。
だがそれに負けてしまうようでは、空軍は務まらない。
「
な、とロッキーが言い終わるよりも前に、男は左肩で打った後のテガソードUNIを、伸ばした左腕に沿わせて滑らせていく。そして、
「……アタック!」
男────ブラッド・アームストロングは、滑らせたテガソードUNIを再び左手で打った。
すると、ブラッドの全身がアーマーのような、全身スーツのようなものに覆われていく。紅い身体。その中心を走る、太く白いライン。
〝ボウケンジャー!〟
テガソードUNIの力で〝ボウケンレッド〟へと変わったブラッドは、すぐさまマジックハンド付の長杖────ボウケンボーをふるってロッキーの方へと向かってくる。
「……ッ!」
命の危機を感じ、ロッキーはすかさずボウケンレッドを撃っていた。だがスーツに覆われた身体はびくともせず、銃弾は弾かれる。
ボウケンレッドはボウケンボーを操って繰り出してくるが、ロッキーはそれにM4カービンを使って受ける形でなんとか乗り切っていく。
そうしてしばし打ち合っていた時、ロッキーが下からスイングしたM4カービンがボウケンボーを頭上へと跳ね上げた。
「よし!」
明らかにボウケンレッドに隙ができた。このチャンスを逃すものかとロッキーはカービンを構え直そうとしたが……
ボウケンレッドは、もう一歩先を行っていた。
「
叫ぶと同時に、巨大なゴーゴーダンプはガチャガチャと轟音を立てながら、掌に収まるほどの小さな武器、〝スコープショット〟へと形を変える。
それを受け取ったボウケンレッドは、スコープショットからワイヤーを伸ばし、空中に跳ね上げられたボウケンボーを一瞬でその手に引き戻していた。
なっ、とロッキーが反応するよりも先に、ボウケンレッドの足払いがロッキーを地面へと転がす。そして次の瞬間には、
「俺の勝ちだ」
ボウケンボーの先から刃が伸び、〝ボウケンジャベリン〟となったそれが、ロッキーの喉元に突きつけられていた。
その瞬間、重々しい沈黙が基地を支配した。時間にしてみれば一分にも満たないほんのわずかな時間。だがロッキーをはじめとしたカタール米軍基地の人間には、それが何十時間にも考えられるほどの重々しさだった。
米軍の最先端の武器と戦力が揃った基地が、謎の装備を身に纏った男一人に制圧されたのだ。
「……ラッド!」
沈黙を破ったのは、老境に差し掛かった司令官の大声だった。
「離してやれ!」
「もとよりそのつもりですよ、
老境の司令官────キャップラン大佐の方を見ながら、ボウケンレッドはその〝変身〟を解き、ボウケンジャベリンをロッキーの喉元から離した。
「訓練がてら力を見せると息巻いていたから何かと思えば、新しいオモチャを見せびらかしに来ただけか?」
「言うじゃないですか! 大佐ほどの方からすれば、これもオモチャですか?」
ボウケンレッドの指輪に選ばれた筋骨隆々の男────ブラッド・アームストロングは、手にしたテガソードUNIとボウケンジャーの指輪を示す。あまりに大きな体躯と木の幹のような太すぎる腕のせいで、テガソードUNIが本当におもちゃのように見えるほどだ。
「〝神〟に与えられたんですよ、これは」
「主がそんな怪しげなものをお与えになると思うか? それもよりにもよって、お前にだ」
ゾードン大佐はブラッドに怯まず、歩み寄るとブラッドの腹を指で叩くようにしてつついた。
あまりにも大きなブラッドと年のせいか小さめの大佐では、体格差があり自然とそうなってしまうのだ。
「ああ、いや……。〝そっち〟ではないですよ」
ブラッドは複雑な表情をしつつ、大佐が首からかけているロザリオに視線を移していた。
「人生は常に冒険。小さなこまごまとしたものじゃつまらない。人生に必要なのはいつだって、〝大いなる冒険〟! 俺はそれをやってるだけです」
ブラッドは自信たっぷりに言うが、大佐の目は已然厳しかった。
「それよりも大佐。私の力を一度見せたところで……どうです? 来年の年明けのオキナワの話ですが」
☆ ☆ ☆
────2025年 3月16日 沖縄 米軍基地 某所
「はーっはっはっはっはっ! はーっはっはっはっはっ!」
軍の基地という物々しい場所には場違いすぎるほどに場違いな高笑いが、よく響きわたっていた。
「……あれが本当に、今の
兵士の一人がそっと隣に耳打ちする。
「マジだぜ。しかも支持率は5000%! バケモン級の支持を日本中から得ている〝人気者〟さ」
「5000%……!?」
どういう計算だ、と突っ込みたくもなったが、それが事実なのだから仕方がない。
「米軍基地の諸君! 今日は私にその実力のほどを、しっかり見せてもらいたい! わ──っはっはっはっは!!」
高笑いの主は、熱海常夏。
兵士たちの噂通り、今現在の日本の首相であり、
「エンゲージ!」
〝センタイリング!〟
〝ドンブラザーズ!〟
指輪の戦士、ドンモモタロウへと選ばれた男だ。
常夏がエンゲージすると同時に、うおおっと鬨の声が上がった。既に装備を構えていた米軍の兵士たちが、一斉に銃を構え撃ちながらドンモモタロウに向かっていく。
だが、やはり銃弾は武器になり得ない。ドンモモタロウの全身を覆ったスーツには弾かれるだけだ。
「〝
動じないままに、ドンモモタロウは折り紙で作った黒い犬、桃色の雉、青い猿を繰り出して兵士たちへとぶつけていく。その勢いに兵士たちは敵わず、地面に転がされていく。
「おいウソだろ!? 紙でできた動物にステイツの最新の武器が歯が立たないなんて……あっちゃいけねえだろうが!」
そうぼやいた兵士もまた、折り紙のお供たちに武器をはじきとばされ地面へと転がされる。
そうして演習を繰り広げるうち、気づけばドンモモタロウの周りにはノックアウトされた兵士たちが累々と転がっていた。
皆気絶するかうめくかの状態で、ドンモモタロウだけがただただ絶対王者のごとく立っている。
「流石は米軍……! 鍛え方が違う!」
ドンモモタロウはと言えば、一人佇む中で彼らの健闘っぷりに声をあげていた。
「我が国の自衛隊とも同じように訓練したけれど! 君達の方がダウンまでの時間が長かったぞ、流石だ!」
一応褒められているのだろうが何とも複雑になる一言に、兵士たちは苦笑いだ。
誰もがダウンし、演習があっさり終わるかと思われたその時だった。
「待ちな、
ブラッド・アームストロングが基地の奥から、遅れてのそりと姿を現したのだ。
「おっと、立派な体格だ……! 鍛え方が違うようだな!」
「ああ、確かに鍛え方が違う。なにせ……」
その瞬間、ブラッドはボウケンジャーの指輪を見せつけた。
「〝こいつ〟で鍛えてきたからな。テガソードの啓示のもとに」
「指輪の戦士……! まさか、ここで会えるとは!」
常夏は一瞬驚きこそすれ、動揺はしていない。指輪の戦士は互いに願いの為に戦いあうライバル。
いつどこで相まみえるかもわからないし、誰が指輪を持っていても不思議ではない。
「エンゲージ!」
〝センタイリング! ボウケンジャー!〟
ブラッドはエンゲージを済ませると、ボウケンレッドとなってドンモモタロウに向かってくる。だが常夏はロッキーとは違い、自身もテガソードUNIを構えるとすぐさま飛び出し、互いにテガソードUNIの刃と刃がぶつかって火花を散らした。
「やるな……! ドンモモタロウ!」
「君こそだ! ボウケンレッド!」
目に見えてわかるほどに強大な、強者同士のオーラ。
ガキンガキンと刃がぶつかる度に、そのオーラもまたぶつかりあうかのようで、周りで見ていた兵士たちはただただ戦慄するしかなかった。
「……やっぱりこいつしかないな! 〝
ボウケンレッドは指輪能力、〝
するとその瞬間、米軍基地が姿を変え、地形が、空が、周りの景色が、何もかも変化していく。
「これは……!」
地形の変化に飲み込まれ驚く常夏には気づく術もなかったが、基地の中にはまるで『ハリー・ポッター』のホグワーツ城の如き、冒険とロマンに満ち溢れた巨大な西洋の城が君臨していた。
そして気づけば、ドンモモタロウは城の中に設けられた冒険ステージに立たされていた。
天井まで岩が覆った、洞窟の中のようなステージ。だがその足元には、溶岩のたまった巨大なマグマだまりができている。
常夏の足元はそのふちの岩場であり、マグマだまりの反対側に向かって岩場には一本の岩の橋ができあがっていた。
自然に岩が削れてできたといったテイの、人ひとりがやっと通れるといった程度の細い橋は、ちょっとでも足を踏み出せばすぐにでも崩れてしまいそうだ。
「『どうだい、気に入ってくれたか?
岩場に、ボウケンレッドことブラッドの声が響く。
「なかなか面白そうというか映画みたいだが……これはなんだ? どういう趣向だ?」
常夏は動じず、声に向かって返す。
「『簡単なことさ。あんたは俺の考えた『冒険』のステージをくぐり抜けて、この城の上で待ってる俺のところまで来てくれればいい。そこで俺とやりあって、勝てばこの指輪をくれてやる。ただし』」
「ただし?」
「『俺に負ける前に途中のステージで脱落しちまったら、その時点でこの戦いは俺の勝ちだ。このステージは俺の指輪の『冒険に必要なものを作る』能力の〝
冒険に必要なもの、という解釈を広げて、ブラッドはこのステージを『冒険できる場所』として作ったというわけだ。
随分とスケールの大きい指輪能力に常夏は感嘆するも、すぐにドンモモタロウの姿のまま頬を叩き、気合を入れ直していた。
「流石に私の相手になろうと向かってくるだけはある! 受けて立つとも、はーっはっはっはっはっ!」
その様子を城の一番上のモニタールームで見ながら、ブラッドはふふっとほくそ笑んでいた。
「そうは言っても、いきなり溶岩に細い一本橋ときたもんだ。首相ってんならまずは慎重にいくだろ?」
慎重に進んでいけば橋は崩れるし、崩れなくても下から溶岩が噴き出したり上から岩が降ってくるようにブラッドはこのステージを設定していた。
並大抵の相手なら即ゲームオーバーのクソ難易度ステージ。だが、それでいい。
ブラッドはあくまで指輪を手に入れるためにやっているのであって、フェアなゲーム開発者ではないのだ。
「まあ、大いなる冒険を楽しんで……」
と、ブラッドがモニターに目をやったその時だった。
「はーっはっはっはっはっ! 一気に……どんどんと、駆け抜ける!」
なんとドンモモタロウは、陸上選手も目を見張るかのようなフォームとスピードで一気に一本橋を駆け抜けていたのだ。そこには慎重さのかけらもない。
「は……!? はああああ!?」
ブラッドが驚いた矢先、カメラの向こうでドンモモタロウが渡っている橋が崩れ始めた。
「びくびくしていれば飲み込まれる! ならば、崩れる前に一気にだ!!」
ドンモモタロウは橋が崩れることを恐れていないのではない。
むしろ崩れることを危惧しているからこそ、その結果が最悪のものになる前に突き抜けるという大胆すぎる奇策で切り抜けようとしているのだ。
だが、やがて橋の崩れるスピードがドンモモタロウの走るスピードに追いついていく。
「終わりだな……!」
ボウケンレッドは勝利を確信するが、
「〝
その確信は画面の向こうの橋よりも脆く、崩れ去った。
ドンモモタロウは折り紙の雉を召喚し、その背に乗りながら、優雅にふうわりと反対側の岩場へと着地する。
「このステージは私の勝ちでいいのかな? ブラッド!」
まるで遊びの後のように爽やかな声をあげるドンモモタロウにブラッドは面食らったが、すぐに咳ばらいをし呼吸を整えた。
「ああ。ネクストステージに挑むかい?」
「もちろんだとも!」
すぐさま、〝装備〟の力によってその場が変化していく。溶岩渦巻く火山の次に現れたのは、背の高い木々の森を擁する山だった。斜面はきつく、うっかり足を滑らせれば滑落の危険もある。
「『頂上まで登ってこい。簡単だろ?』」
ブラッドの声は、木々の葉をざわざわと揺らした。
「確かに私は何でもできる。私こそオンリーワン、熱海常夏だ」
ドンモモタロウは頂上の方向を見据え、ぼそりと呟く。
「だが、どんな物事も……『簡単だ』と手を抜いたことは、一度もないぞ!」
言うが早いか、ドンモモタロウは急な斜面を木々の枝をかき分けながら信じられない速さで登っていく。先ほどの火山もそうだが、勢いに迷いが無い。
「『やるな
「生憎だが……一緒に駆け回る友達がいなかったなあ!」
ドンモモタロウは軽口に軽口で返しつつも、木々を伝ってどんどんとゴールに歩を進めていた。
「『冒険には試練が伴う。いつだってな』」
ブラッドの声が聞こえると同時に、ドンモモタロウは異変を感じ取っていた。
「焦げ臭い……?」
鼻に伝わってくる独特の臭いを感じ取ったその瞬間、伝いながら手をかけた木がぶわっと燃え上がる。次の瞬間にはその火は葉を、枝を通して燃え広がり、いつしか巨大な山火事の様相を呈していた。
「『さあ! 山火事の中からどうやって抜け出す? どうやってこの局面を冒険して切り抜ける?』」
ブラッドは内心、ここで終わりだなと思っていた。火事はやがてこの山のステージ全体に広がっていき、全てを燃やしつくす。周りの環境を利用しようにも、全てが燃えてしまえば利用できるものすらなくなる。
「『まあ、あんたも頑張ったが……指輪は俺のもんだ。願いを叶えるのはあんたではなく、この俺』」
「はーっはっはっはっはっ!」
ブラッドは驚いた。この絶望的な状況の中で、常夏はドンモモタロウの姿でやはり高笑いをあげていたのだ。その堂々たる笑いっぷりには、虚勢など微塵も感じられない。
「叶えたい願いが、君にもあるんだな」
「『……でなきゃ、テガソードには選ばれないさ』」
「結構けっこう! だが、願いの強さなら私も負けていない!」
そう言うとドンモモタロウは、〝召喚〟の能力で折り紙のサルを呼び出し、自分よりもはるか下方へとそれを向かわせた。そして次の瞬間、
ドンモモタロウは近くの木を蹴り、その勢いで滑落していった。
「なっ……何!?」
ブラッドは驚くが、当然そこには常夏の策がある。滑落した先には折り紙のサルが待ち構えており、ドンモモタロウをぐっと力強く受け止めた。
そしてその落ちてきた勢いの反動のままに、サルはドンモモタロウを山の頂上に向かって強く投げ飛ばしたのだ。
「さあ……ここからが大冒険だ!」
〝センタイリング! ジェットマン!〟
ドンモモタロウは既に獲得していたジェットマンの指輪をテガソードUNIに装填すると、レッドホークの翼を生やし飛んでいく。山火事の中もお構いなしにだ。
「『上昇気流……!』」
熱い空気は上に昇る。火災によって発生した上昇気流を常夏は利用し、その上を突っ切るための足掛かりとしたのだ。
風の勢いに翼を乗せるために、一度滑落し勢いをつけるところまで含めて大胆な策。しかもこれを即座に思いついたのだから、抜け目がない。
「『なかなかの冒険野郎じゃねえか!』」
ブラッドがそう言っているうちに、ドンモモタロウは山頂にたどり着く。ステージクリアだ。
「ラストステージだな……!」
ブラッドがそう言うと同時に、ステージが切り替わり、今度は巨大なビルのフロアが舞台となった。しかも。
「また火事か!?」
ドンモモタロウが驚いたのも無理はない。巨大なオフィスビルらしきそこは既に炎に包まれ、あちこちで壁や柱がガラガラと崩れる音が聞こえてきていた。
「その通り。ラストステージの冒険はただひとつ」
ボウケンレッドにエンゲージし、ブラッドはドンモモタロウの前に姿を現す。
「燃え盛るビルの中から、助けを求める仲間を先に救い出した方が勝者となる。それが、俺達に与えられた
ブラッドの声は真剣そのものだ。
「それは、冒険というよりレスキューじゃないか?」
「大事な何かのために、命を懸けて挑む。それは〝大いなる冒険〟と言っていいだろ?」
それと同時に、フロアのどこかから助けを求める女性の声が聞こえてきた。
「今行く!」
ブラッドは言うが早いか、声の方に向かって走り出す。途中の障害はテガソードUNIで切り伏せながら、前へ、前へと進んでいく。その技量はかなりのものだ。
だがその技量に対し、ドンモモタロウも同じように切り伏せながらついていっているのだからやはり大したものだ。
「なあ! ラッド!」
ブラッド、の愛称で呼ばれ、ボウケンレッドはちらと後ろを振り返る。
「なんだ! ミッション中だぞ!」
「……そんなに、炎が怖いのか?」
ドンモモタロウの不意の一言に、ボウケンレッドははっとしながら足を止めてしまっていた。
「何だって? 俺が? 炎が? 怖い?」
「……最初のステージは火山。次のステージは山かと思えば山火事。そしてこのビルの火事。君の考える冒険はどれも、炎に挑むかのようなそればかりだ」
ボウケンレッドは踵を返すと、炎の中でドンモモタロウに向かい合った。
「やめろ。
「君にとって、炎は冒険して挑戦しなければならないそれなのか?」
「やめろって言ってるんだ」
「君の願いは、何か炎に……」
「やめろって言ってんだろ!!」
ボウケンレッドは拳でドンモモタロウの胸元をどついた。
カタールの基地を襲撃した時にも、ここまでドンモモタロウの相手をしてきた中でも見せなかった激しい感情が、そこには渦巻いていた。
☆ ☆ ☆
1990年代後半、ブラッド・アームストロングは、ニューヨークでは評判の消防士だった。
どんな炎の中にも勇敢に飛び込み要救助者を助け出し、火を消し止めていくその姿は、炎に食らいつく〝牙〟のようだとよく言われたものだ。
「ラッド! おかえりなさい」
彼がそこまで頑張れるのは、待っていてくれる人がいるからだった。
大学の時に知り合ってから交際を重ねてきた恋人のブロッサムと、小さなアパートで二人の生活を営む。いずれは郊外に家を持ちたいと考えるなど、二人の未来は順調だった。
「ねえ見てラッド? 今日公園に花が咲いてたから、ちょっと摘んできちゃった」
ブロッサムは花が好きだった。差し出してきた花瓶の中の花を見ながら、ブラッドは笑った。
「なるほど、きれいだな。でも別に公園の花じゃなくても、花屋でもっときれいなのを買ってやるぞ? そのぐらいの稼ぎは……」
「そうじゃないんだって。何気なく見つけた花を、いいなって思えるのが大事なのよ。……なんというか、〝ちょっとした冒険〟ってやつ?」
「ちょっとした、ねえ」
よくわからないなと思いつつも、ブラッドは幸せだった。目の前で笑うブロッサムの笑顔が、何よりの
だがその幸せは、突然理不尽に奪い去られた。
2001年、9月11日。
誰もが口を揃えて最悪だと言う、アメリカにとって最大の悲劇の日だ。
「ラッド! 急げ! 手が足りない!」
あの日ニューヨーク中の消防士たちが、目の前の命を救うため、理不尽で残酷な炎に立ち向かうため、必死に戦っていた。
ブラッドもまた、そんな運命に立ち向かう為に戦った一人であった。
けれど。
「ああ……そんな! そんな、嘘だあああああああああああ!!」
炎は、ブロッサムをブラッドから奪っていった。
崩落したワールド・トレード・センターの中から見つかった左腕だけが、ブロッサムがそこにいて、そして命を落としたという証明だった。
本当ならば、その薬指に指輪を嵌めるはずだったのに。
「主よ! これが……! これが! あなたに祈ってきた者に対する仕打ちですか!?」
ブラッドもブロッサムも、敬虔なプロテスタントだった。日曜日の礼拝は欠かさなかったし、主の加護があると思うと、それは人生を明るく照らしてくれる道標だった。
だが、目の前の現実はこの通りだ。
それから、ブラッドは変わった。
消防士の職を辞し、ひたすらに世界中の秘境を、危険な場所を渡り歩く冒険家へと彼は転じていた。
「神はいない。いるはずもない。だとすれば、世の中の真理はどこにある?」
冒険を繰り返すことで、彼は人間の理解の及ばない場所────神の領域を知りたかった。
神がいるのだとすれば、なぜブロッサムは命を落とさなければならなかったのか。なぜ、祈ってきた者がこんな目にあわなければいけないのだと。
その答えを知るために、彼は前人未踏の場所へ〝大いなる冒険〟を繰り返すのだった。
気づけば彼は世界中を回った後でアメリカ空軍に入り、そこから志願して宇宙飛行士になっていた。
まだ行ったことのない宇宙を冒険すれば、何かがまたわかるかもしれないと思ったからだ。
そして2006年。宇宙から地球を見た時。
「……美しい」
地球は青かった、という言葉は本当なのだなと彼は思っていた。自分が足をつけていた大地は澄んで輝き、とても美しい。
だが同時に、美しいとは思うものの……ここにも、自分の求める答えはないのだと彼は悟っていた。
「一つだけはっきりとわかるのは……神はいない」
それから二十年近くの間、彼はただ無心に空軍の任に戻って世界中を渡り歩いた。同僚たちには熱心なキリスト教徒も多かったものの、彼はやんわりと信仰と距離を取っていた。
このまま何も見いだせないまま、人生が終わるのかと思っていた中……2024年の半ば頃。
「これは……なんだ? 指輪か?」
演習場に落ちていた金色の指輪を手にした時、彼は真っ暗な空間へと誘われていた。
「ブラッド・アームストロング。お前は、指輪の戦士に選ばれた」
空間では、巨大な金色の存在が彼に言葉をかけてくる。
「あんたは何だ? パワーレンジャーのゾードンか?」
「私は、お前たちが言う神のようなものだ」
それを聞いた瞬間、ブラッドはハッ! と声をあげた。
「礼拝に行かなくなってから20年ぐらい経つが、とうとう邪神に魅入られたか」
「……私がお前を選んだのにはそれもある。全人類にチャンスを与えたいが、人間の信仰に立ち入りすぎたくはない。だから、選ばれる人間は自然と日本人が多くなってしまった」
「なるほど?」
目の前の神を名乗る存在は、妙に律儀なところがあるらしかった。
一神教の人間にとって、信仰する神以外のものなど邪悪なそれでしかない。キリスト教圏のホラー映画が『ウィッカーマン』や『ミッドサマー』のように信仰の外にある理解できない存在を描く例を見れば明らかだ。
だからこの〝神〟とやらは、多神教と無宗教の狭間にあるような日本人を多く選んでいるのだと。
「願いは、あるか?」
「あるさ。俺は冒険の果てに、神の領域を知り……」
そう言いかけたところで、ブラッドは固まってしまう。
本当に自分の願いがそれなのか、逡巡するかのように。
「……いいや、違う」
なぜ冒険を繰り返したのか。なぜ、理不尽な運命に対して神の領域を知りたいと思ったのか。
「俺はただ、ブロッサムとまた話がしたい。あいつが毎日聞かせてくれる、何気ないけれど楽しそうな〝ちょっとした冒険〟の話が……また聞きたいんだ」
「ならば、指輪を集めろ。指輪の戦士と戦って、お前の願いを叶えるのだ! ナンバーワンになれ、ブラッド・アームストロング!」
そうしてブラッド・アームストロングは願いのため、指輪の戦士・ボウケンレッドとなったのだった。
☆ ☆ ☆
「俺には願いがある。その為に戦ってるだけだ」
「私だってそうだ。譲れない願いがある」
「……何でもできて支持率5000%のあんたに、願いなんかあるのかね」
ボウケンレッドはそれだけ皮肉気に言うと、助けを求める声がだんだん小さくなっているのを感じ取り、その足を声の方へと進めた。
その瞬間、ガラガラとでかい柱が目の前で崩れてくる。ボウケンレッドは対処しようとするが、その必要はなくなった。
ドンモモタロウが彼よりも先に、崩れてくる柱を切り伏せていたからだ。
「私の願いはまあ……言うなれば! 冒険をすることさ」
「冒険をすることが、願い?」
「その通り! 鬼ごっこにドッジボール……。おままごとなんかもいいな!」
ドンモモタロウのその言葉に、ボウケンレッドは怒り混じりに詰め寄った。
「ふざけてるのか? それのどこが冒険だ」
「冒険の定義はひとつじゃないさ! 挑戦者たちとそういった何気ない冒険の中から意味を見出す……。言うなれば、〝ちょっとした冒険〟だ」
ボウケンレッドは驚いたように固まってしまっていた。ちょっとした冒険。その言葉は。
「……どうした!?」
ドンモモタロウの声でボウケンレッドは我に返った。気づけば、炎が勢いを増している。
「だから行こうじゃないか! この試練を乗り越えて……次の冒険に!」
「仕切りたがりだなあ
何故だか、その瞬間にブラッドは常夏の器を真に理解できたような気がした。やがて二人は声の出処へとたどり着く。瓦礫の中から、女性の左腕が覗いている。
「助けて……!」
「ああ、勿論!」
ボウケンレッドは手を伸ばすが、その瞬間周りがさらに崩れ、彼らの方へと落ちてくる。瓦礫に阻まれ、女性の救助は一筋縄ではいかない。
「君の能力は……?」
「だめだ。〝
それでも能力の範疇とは別に呼び出せるボウケンボーを取り出すと、ボウケンレッドは瓦礫を取り除いていく。やがて、再び女性の手が見えてきた。
「……いくぞ!」
手を握り、ボウケンレッドは女性を引っ張り出そうとする。だが、一人の力では足りないのか、女性は出てくることはない。
「駄目なのか……!」
ボウケンレッドが諦めそうになったその時だった。
「自分の作ったステージで、あきらめてどうする!」
ドンモモタロウが、ボウケンレッドに手を添えた。二人の力が合わさった時、女性の身体は瓦礫から抜け────その貌が、露わになった。
「……ブロッサム」
ボウケンレッドの声は、悲痛だった。
そう。瓦礫の中にいた女性はあの日助けられなかった、ブロッサムの姿をしていたのだ。
ブロッサムはか細い息をしていたが、やがてにこっと笑った。
「────ありがとう。ラッド」
その瞬間、ブロッサムが消える。いや、燃えるビルが、巨大な冒険城が、すべてが消えていく。
後には元の通り、米軍基地のコンクリート固めの地面の上で佇む、ボウケンレッドとドンモモタロウの姿だけがあった。
「……ステージクリア、だな。ラッド」
ドンモモタロウはゆっくりと、しかし優しくそう告げた。
「まだ勝負はついていないぜ。常夏」
ボウケンレッドはボウケンボーを構えると、それをジャベリンに変える。
「さっきのは俺とあんたで二人でやったこと。あんたの三本先取にはまだ足りない」
ボウケンレッドにそう言われ、ドンモモタロウもザングラソードを取り出し構える。
「……ならば決闘だ。勝った方が、冒険ナンバーワンだな!」
「いざ掴め!! ナンバァ──、ワ──ン!!」
「危険、探検、何のその! 生きる道こそ大冒険!
「この
「
「フレ────ッ!!!」
「知見、発見、これも縁!」
「袖振り合うも他生の冒険! ドンモモタロウ!!」
「人気者の秘訣その4、ちょっとした遊び心!」
冒険 NUMBER ONE BATTLE!!
READY~~GO!!!
「君と出会えてよかった……! ボウケンレッド、ブラッド・アームストロング!」
「もう勝ったつもりかよ……! ドンモモタロウ、熱海常夏!」
その瞬間、天が割れた。
正確には、天が割れたとしか形容できないほどの覇気がぶつかり合ったのだ。
ザングラソードとボウケンジャベリンが互いに唾ぜりあったその時に、二人の込めた気概は力の奔流となり、その場の空気を支配していった。
「あの日、俺は何もできなかった……! だから炎が怖かった! だから答えを求めて冒険を続けた! だから、だから……!」
「ひとつ言っておくが!」
ボウケンジャベリンに対し、ドンモモタロウは容赦なくザングラソードの刃を滑らせてその距離を詰めてくる。
「冒険は、現実から逃げるためにするものなのか?」
「知ったような……ことを!!」
技量の常夏に対し、ブラッドは力だ。ドンモモタロウの細やかな剣裁きを、彼はボウケンジャベリンに込めた力でねじ伏せようとしてくる。
「俺が逃げてるかどうか、この一撃でわかると思うぜ。常夏」
「受けて立つとも……。ラッド!」
そして。
「
「疾風怒桃・サンシャインマニフェスト!!」
互いの全力の必殺技が、繰り出される。
必殺技の後、二人はお互いに立っているだけだった。まるで、先ほどの一撃など意に介していないかのように。
だが。
「ああ……!」
ボウケンレッドは膝をつき、変身を解除してブラッドの姿でそのまま倒れ伏した。
「大丈夫か?」
同じく変身を解除した常夏が、そこに手を差し出す。ブラッドは一瞬迷うも、その手を取った。
「……約束だからな」
ブラッドは指輪を外し、常夏へと差し出す。
「ありがとう。ところで君……どうだ? 私の、友に……」
常夏は自分の願いに通じる提案を口にしようとする。
「あんたはスゲえぜ。常夏。完敗だ」
常夏の言葉が終わるよりも前に、ブラッドは膝を突き、服従の姿勢を取っていた。
それは敗北を認め潔く、というブラッドなりの矜持だったが、常夏にしてみれば残念以外の何物でもなかった。
(やはり、駄目なのか)
優秀であるが故に。オンリーワンであるが故に。誰もが熱海常夏に対し、崇拝者となってしまう。
「これからも俺は空軍にいるからよ。何かあったら力を貸すぜ」
「ああ……ありがとう」
ブラッドがそう言ってくれるのは、本当に嬉しいのだけれども。
こうして常夏の発案によってパフォーマンスとして行われた米軍基地での演習は、ボウケンジャーの指輪がドンモモタロウの手に渡ることで幕を閉じた。
ただ一つの、置き土産を残して。
「おいおいおいおい!! えらいことだ、えらいことだ……!」
演習の一部始終を見ていた基地の付近の恰幅の良い住民が、目を丸くしていたのだ。
「常夏総理は……武器を振り回していたんだああああああああああああああ!!! こんなの銃刀法違反じゃないかああああ!!! 極悪人だあああああああああああああああああああああああ!!!」
この男の一言から波及した世論が常夏を総理の職から追いやり、やがて『常夏城の大冒険』と呼ばれる事件を起こすのだが……それはまた、別の話だ。
☆ ☆ ☆
ブラッドの願いは、結局直接的には叶うことはなかったのかもしれない。
だが彼はあの時、自分の作り出した冒険のステージの中で、確かに聞いたのだ。
ずっと聞けなかった、ブロッサムの「ありがとう」を。
彼はきっと、その答えを考え続ける。悩み続ける。
そしてまた、〝大いなる冒険〟に……否。自分を変えてくれる、どこかに転がっている〝ちょっとした冒険〟に、挑んでいくに違いない。
この後、彼は全人類が〝戦隊〟になったあの夏の日にもボウケンレッドの力を手にし、そして厄災と戦った。
全人類が〝レッド〟になって星を覆い、テガソードに力を与えたあの瞬間を、彼はこう称している。
「地球は赤かった。そこに、確かに神はいた」
(了)
山は西からも東からでも登れる。
自分が方向を変えれば、新しい道はいくらでも開ける。
松下幸之助(1894~1989)
ボウケンレッド
指輪/ボウケンジャー
契約者/ブラッド・アームストロング
職業/消防士(2001年)→宇宙飛行士(2006年)→米空軍少佐(2025年)
願い/喪った恋人の話が聞きたい
アメリカ空軍少佐。
かつては敬虔なプロテスタントであり日曜日の礼拝を欠かさない青年だったが、恋人のブロッサムを9.11で喪って以降、信仰と神に疑念を持ち、人間の理解の及ばない世界を求めて〝大いなる冒険〟を繰り返すようになった。
その過程で宇宙飛行士となり宇宙から地球を見るほどに冒険を極めたが、それでも答えを見つけられず空軍に身を置いていた時にテガソードから「一神教の圏内で信仰や神に疑念を持っている人間」としてボウケンジャーの指輪を渡され、「ブロッサムの話がまた聞きたい」という願いを以てボウケンレッドのユニバース戦士となった。
指輪の戦士、ドンモモタロウとなった日本の首相、熱海常夏がデモンストレーション的に沖縄の米軍基地でその力を見せると聞き、まずカタールの米軍基地で自身の力を示して対戦相手の一人に任命される。
常夏との戦いでは自身の指輪能力、「装備(パラファーナリア)」で造った城の冒険ステージで常夏を試すがその圧倒的なまでの技量によってステージをクリアされ、その過程で彼自身が抱えている過去のトラウマを見抜かれていた。
最後は正々堂々の一騎打ちによってドンモモタロウに敗れるが、常夏を尊敬し彼の崇拝者のひとりとなり、戦いの中で見つけたものに思いを馳せながらも前を向いて指輪争奪戦を降りた。