ユニバース戦士補ジュウ計画   作:壱肆陸

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今日と明日は慧海学園シリーズ前編
1作目はよっしー/FSさんによる、メガレンジャーの作品です!
(X:@kingcalibure)


駆け出せ!太陽への一本道

屋上に2人の人物が立っている。それぞれ黒白に情熱の色を纏った姿。

 

「ついて来れるか?この俺に」

「追いつき、並んで、超えていく!」

 

「「2人で守って掴み取る!」」

 

これは青春に囚われた学園が夏を迎える少し前の物語。

 

 カタカタカタ……ポチッ。

画面の中で軽快にキャラクターが動き出す。特に不審な動きもないが何だかパッとしない。

手の入っていない肩くらいまでの黒髪を抱えながら銀河(しらかわ)心奇(こうき)はパソコンの電源を落とした。時計はもう0時を過ぎている。

 

ピコン。

 

スマホが光る。大学の友達3人組で作った“デジャヴ研究会”通称“デジ研”のグループにメッセージが届いていた。出身も趣味も違うが波長の合った者同士がデカいゲームを作ろうと集まっている。

 

“誰も見たことがないゲームが作りたい” “そのためにデジャヴは避ける”みたいなノリで作られたがこの時代、何をやってもだいたい先例があるものだ。

 

『そっちどんな感じ?』

「一応できたけど微妙」

 

『こっちも』

『何か足りないんだよね』

 

「また明日集まろ」

『明日ってか今日な』

 

デフォルメされたロボットがおやすみ、と言っているスタンプを送るとスマホにプラグを挿した。

 

大学生になってからというものの、心奇は高校生のとき以上に昼夜逆転に気をつけている。どれだけ忙しくても1時までには布団に入るようにしているのだ。

 

月夜の光と共に部屋は今日も静寂を迎えた。

 

 東京某所。夏休みも間近に控えた学生たちに雨が降り注いでいる。23区のいわゆる西部にあるその大学にたくさんの雨傘が吸い込まれていった。心奇もその1人で長かった黒髪はハーフアップに結ばれている。

 

「お、おはよ〜心奇」

「おはよ。雨大丈夫?」

「全然。絶対に洗濯物取り込むの忘れたし」

「それより2限のテストでしょ」

「おぉい!」

 

早くも全員集合のデジャヴ研究会。会と名乗っているわりにメンバーは同じ学科の暁人(あきと)哲多(てった)、そして心奇の3人しかいない。それに大学の公認サークルでもない、ただの仲良しグループだ。

 

さて、みんな無事に朝を迎えたわけだが、すぐに議題はテストをどう乗り越えるかへ。だが、心奇にはそんな心配はない。右手に輝く指輪もそれを告げていた。

 

ひときわ大きい教室に詰め込まれた学生たちがそれぞれに配られた紙とにらめっこをしている。

 

心奇は普段の授業のときと変わらずいたって落ち着いていた。サラサラとシャーペンを動かし、問題を解き進める。試験時間が半分を超えたところでペンが置かれた。

 

(ま、チートで取るナンバーワンに価値なんてないけどな)

 

当の本人はこの調子だが。もともと成績上位の心奇、誰かの力に頼るのは癪だとテスト中は指輪をしまっている。

 

見直しも早々に大きなミスがないことを確信したところで解答用紙を提出、教室を後にした。チラッと後ろを見るとデジ研2人のうらめしそうな視線が刺さってくる。

 

(先に食堂行って席取るかー)

 

2限真っ只中なこともあり、食堂の人影は少なかった。窓際のテーブル席に陣取るとパソコンを取り出して()()のゲーム画面を開く。格闘ゲームを基盤にカラフルなキャラクターたちが戦うのだがなんとなくしっくりこないのだ。

 

キャラ数を増やすとかサイドストーリーをつけるとか色々と試したがどれも違う気がしてならない。ということでこれからデジ研緊急会議が始まろうとしていた。

 

「あ、いた。おーい」

「なあ、大問3ってどうやって解いた?あれって数IIIの応用だよな?」

「ああああ暁人!テストはもう終わったんだから、止めようその話、うん」

「じゃあ……ゲームの調子は?」

 

テストが終わって合流した3人。もっとも哲多は別の意味で終わってそうだが。早速話題はテストからゲームへと変わる。

 

「なーんも。お2人さんは?」

「今の今までテストやってましたっての」

 

いつも通りの軽口を叩きながら購買のパンを片手にダラダラと会議は始まる。結局、結論が出ないのがオチなのだが。今回も例に漏れず3限が近づいていた。

 

また1日、何の進展もないまま放課後を迎えてしまった。今日はみんなバイトがあるので放課後の活動はナシ。哲多に至ってはバイトの制服を忘れたと言って休むかどうか迷っていた。暁人が意地で取りに行かせたが。

 

久しぶりに1人で街中を歩いていたときのこと。学校帰りの高校生、憂鬱そうなサラリーマン、楽しそうなカップル……人混みの中に見覚えのあるはじめましての顔があった。気がした。思わず立ち止まって振り返ったが、それは既に人波に溶けていた。

 

(晩堂先生……?)

 

 3年前。春風が新しい旅の始まりを運んでくる季節。鮮やかな桜並木が人々の門出を祝う。

 

「入学おめでとう。数多くある高校の中から我が校を選んでくれたこと、心から嬉しく思う」

 

母親のカメラロールには新品の制服に身を包む心奇と『慧海学園高等学校 入学式』の立て看板のツーショットが残っていることだろう。

 

慧海学園に入ったことで様々な出会いを経験した。例えば個性の強い同期に後輩たち、熱血校長に……願いを叶える(らしい)指輪、とか。

 

部活は生徒会に入ったのだが、これがなかなか楽しかった。誰もいない教室や学校祭の運営は生徒会ならではだろう。校長や教頭と関わる機会も少なくなかったし、顔も覚えてもらえた。なんやかんやで生徒会長になったのも良い思い出だ。

 

そして引退したその日に歯車は回り始めた。

 

「銀河、1年間お疲れ様。会長としてこの学園を盛り上げてくれて助かったよ」

「ありがとうございます。俺がここまで来れたのは皆さんの力があったからですよ。晩堂先生にもたくさんお世話になりましたし」

 

生徒会の交代演説が終わり、会長としての仕事を最後にして教室に戻っていたとき廊下で校長……晩堂 深也先生と遭遇した。今日も教師としての貫禄がにじみ出ている。

 

「私は何もしてないさ。ところで、進路はどうするんだ?もうそろそろ受験だろう」

「明鳳大の工学部に行こうと思ってます」

 

「さすがだな。あそこは素晴らしい先生がたくさんいるから、いい学びになるに違いない。あと少しだが、存分に頑張ってくれ」

「はい、いい報告ができるように頑張ります」

 

……とは言ったものの近頃、模試の成績が伸び悩んでいた。ほとんどがCかD判定、調子がいいとBが取れるくらいだ。このままの状態が続けば志望校のレベルを下げることになるのは言うまでもない。

 

『C 学力向上に努め、着実に頑張ろう』

1人だけの教室でそう書かれた紙をリュックの後ろに追いやり帰る準備をする。

 

(勉強しないと……今日は物理を中心に、いや数学もやりたいな。英作文の練習もしたいし)

 

心奇はぼんやりと今日の出来事を思い出しながら学校を出た。「頑張れ」と言われた以上は頑張るしかないが、半年もせずに受験という現実が焦りを加速させる。

 

(頑張るって何なんだろうな……)

 

気晴らしに最寄りのバス停を通りすぎて海の方まで行ってみる。決して近くはないが行けない距離ではない。『夢ヶ浜』と名付けられたそこは広がる青とおおらかな茶色、たくさんのハトで埋まっていた。否、無造作に転がった指輪がその調和を乱している。

 

(あ、落とし物……)

 

指輪と呼ぶにはやや大きい、サーフィンをする人や戦艦が描かれた物体。落とした人が困っているだろう、と拾い上げて石段の上に置こうとした……置こうとはしたのだ。指輪が光って消えるまでは。

 

「っ……!?」

 

瞬間、視界から海も砂浜も消え黄金の巨人が立っていた。

 

 浜辺で指輪を拾って、それから何だかわからないうちに真っ暗な空間に来て……目の前に変な巨人がいて。これが明晰夢というやつかもしれない。そんなことを心奇は考えていた。

 

「我が名はテガソード。全ての指輪を集めた者の願いを叶える……それが指輪の契約。さあ、願いを言え」

「願、い……」

 

テガソードと名乗った巨人は低い威圧感のある声でそう言う。新作のゲームなんじゃないかと疑うくらいのリアリティの中で改めて思い返してみる。しかし、願いらしい願いは特にない。そう結論付けると同時にある人物の顔を思い出した。

 

(そうだ、俺は応援してもらってるんだ。母さんも、担任だって。なら……)

 

もう(ゲーム)現実(リアル)かなんて関係ない。こんな奴が相手でも言うだけタダだ。覚悟を決めた心奇は巨人を見上げて答えを発した。

 

「俺は、信じてくれた人たちに誇れる人間になりたい」

 

永遠にも感じる刹那のあと、テガソードが口を開いた。

 

「契約成立だ」

 

再び光に視界を覆われたと思えば、そこは公園だった。人差し指に指輪がはめられていたことで、それが夢でも気のせいでもないと知った。

 

「銀河 心奇」

 

どこからか名前を呼ばれ周囲を見渡すと1羽のハトが不自然に心奇を見ていた。

 

「指輪を全て集めろ、さすればお前の願いは叶うだろう」

 

一方的に言い切ったハトは間抜けな顔に戻り空の彼方へ飛び去っていった。

 

 慣れた手つきでドアを開け、靴を脱ぐ。階段を上がってリュックを置き、制服から着替えるとベッドの上にダイブ。丸型の蛍光灯が掲げた指輪を照らしている。

 

「全ての指輪……」

 

残された言葉を反芻するも、願いが叶うということは俄かに信じがたい。ガバッという効果音と共に起き上がり、青い表紙の参考書を取り出した。

 

(そんなものに頼らなくても自分で叶えてやる)

 

一心に問題と向き合う心奇だったが3、4問解いたところで詰まってしまった。ため息をつきながら答えを確認しようとしたとき、脳内に自分では思いつかなかった解法が溢れてきた。ペンを取り計算すると模範解答と全く同じなのである。

 

(何でいきなり……まさかこいつか?)

 

じっと見ていると描かれた戦艦がこちらに迫ってくる感覚に襲われる。あまりの不気味さに人差し指から指輪を離した。

 

探求(リサーチ)

 

見聞きした物事を瞬時に理解・応用できるという能力。その力をいま身を以て感じた。本当にこの指輪が答えを教えてくれたのなら志望校への挑戦は終わったも同然、それどころか国内最高峰の大学だって余裕だろう。両親や先生も喜んでくれるに違いない。違いないが……

 

(こんなんじゃ、誰にも誇れる人間になれない)

 

心奇の願いは指輪を使えば簡単に叶ったかもしれない。それでも指輪を机の抽斗(ひきだし)にしまうと再び机上の問題を見つめ直した。ただひたすらにペンを動かし、自力でぶつかっていく。

 

“チートは認めない”と合格までの半年弱、指輪が光を見ることはなかった。

 

 今春、入学式へと出席した心奇の右手にはかの指輪が輝いていた。ここまで自分を引き上げてくれた感謝と、これから本格的に願いを叶えるための挨拶として身につけることにしたのだ。こうして僅かな期待を胸に始まった大学生活だが特に面白いこともなく漫然と過ぎていった。そうしていつものように1日を浪費していたとき。

 

「しーらかわくん!俺たち、新しいゲーム作りたいんだけど良かったら協力してくれない?」

「ゲーム……?」

「そ、せっかく大学生なんだし何かデカいことやりたいよねって」

「俺らより頭良さそうだし。頼んでみよっかって」

 

このときに声をかけてくれた暁人、哲多と結成されたデジャヴ研究会(通称デジ研)。いま、学業とゲーム制作と指輪集めの三足の草鞋生活が始まろうとしている。こうして退屈だった日常とはおさらばした。

 

試行錯誤しながらゲーム作りをする日々。ゼロから作り上げるのはいつだって簡単ではない。そんなとき心奇は指輪の能力を応用することを考えた。そして本人の思惑通り、プログラミングも情報収集も順調に進んだ。手こずったのはアイデア出しくらいである。

 

(誰かのためになるチート……裏ワザは悪い気しないな)

 

そうこうしているうちに夏休みが近づいて来た。もちろん、期末試験というラスボスつきで。

 

 現在。

 

(晩堂先生……?)

 

卒業してから約4ヶ月。関わりのあった先生の顔を忘れるほど無慈悲な元・生徒会長ではなかった。夏の澄んだ空気の中に一抹の不安を抱き、足が勝手に来た道を引き返していた。

 

大通りを抜けて路地まで走ったところで足が止まる。もともと姿を追えていたわけではないので、どこかで諦めなければいけない状況ではあった。辺りを見渡してもそれらしい人はいない。

 

「やはり君だったか」

 

人混みの中だというのにその声は真っ直ぐに心奇を刺してきた。声の主と目が合っても呼吸を整えるのに夢中で感嘆の声すら出なかった。

 

「お久し、ぶりです……晩堂先生」

 

いつも見ていたスーツとは違う、薄汚れたつなぎ姿。この数ヶ月で何があったのか、察するに余りある。

 

「久しぶりだな、銀河。ここでは何だ、良かったら静かなところで話でもしよう」

 

初めて見る晩堂の姿に心奇は小さく頷くことしかできなかった。

2人が再会した路地から少し離れた公園。ベンチとすべり台しかないような、公園と呼ぶには寂しすぎる場所に来た。缶コーヒーを開けながらお互いに近況報告をする。もっとも心奇は「毎日楽しいです」と言う他になかったが。

 

「今の学園はどうですか?」

「……残念ながらだいぶ変わってしまった。君の努力を無駄にしてしまってすまない」

「年によって変わるのは当たり前じゃないですか。先生が謝ることじゃないですよ」

 

今の生徒会長、つまり心奇の後を継いだのは当時副会長だった晴渡 一輝(はれわたり いっき)。1年半見てきたが特に問題行動を起こすようなタイプではなかった。それどころか学園の平和を守る、と晩堂に武術の教えも乞うていたはずだ。コーヒーをぐっと流し込むと缶が握られた右手に彼の視線が吸い寄せられた。

 

「何か叶えたい願いがあるのか?」

「えっ?」

「いや、少し気になっただけだ。些か唐突すぎたな」

「ありますよ。まあまあ恥ずかしいですけど」

 

“信じてくれた人たちに誇れる人間になりたい”なんて今思えば恥ずかしすぎる。大学合格を果たしたためちょっとは叶ったかもしれないが十分とは言えない。そもそもこんな曖昧な願いさえも叶えてくれるテガソードは未だに信用しづらい。

 

「俺も願いを叶えるために用務員として働いているんだ」

「先生の願いって何ですか?」

 

何でわざわざ用務員になったんですか、とも聞きたかったが見えない空気に憚られてしまった。代わりに想像もしていなかった願いがその口から零れ落ちた。

 

「学園の平和を、娘を取り戻すことだ」

 

(取り戻す……?学園は荒れてるのか?それに娘さんって……)

 

「銀河。俺と一緒に戦ってくれないか」

「戦う……って何と、どうやってですか!?」

 

普通の教師だったはずの晩堂から普通は聞かない言葉が出てきて声が大きくなってしまう。願いを叶えることと戦うことに何の関連性があるのかもわからない。

 

「順を追って説明させてくれ」

 

 全ての説明が終わる頃には陽が落ちかかっていた。怪人にされた娘さん……美月さんと教頭先生を助け、洗脳された晴渡たち生徒を元に戻すために戦ってほしい、か。

 

「でも、俺、先生みたいに武術とかやってないですよ」

「大丈夫だ。その指輪があれば戦える」

 

自分のポケットから黄色の指輪を取り出してそう言った。描かれている柄こそ違うが心奇の持っているそれと確かに同じだった。

 

まさか指輪の能力で戦うと言うんじゃないだろうな?心奇の指輪はとても肉弾戦向きではない。しかし、ここまで聞いて立ち去れるような人間でもない。

 

「わかりました。できる限り手伝わせてください」

「ありがとう。早速で悪いが乗り込む日を決めよう。直近で空いている日はあるか?」

 

そう言うと思っていた、と言わんばかりに淡々と話が進んでいく。スマホのカレンダーを開くと平日は学校、土日はデジ研の集まりが入っている。

 

(1日くらいサボるか……?あ、待てよ)

 

学校の在学生向け学習支援システムを開く。来週の時間割を見ると煌々と『休講』の文字が光っていた。テストも終わり、最後の講義を迎えた授業も少なくない。そんな中での休講を喜ばない学生はいないのだった。

 

「来週の木曜日、いけます」

「わかった。13時に学園の用務員室に来てくれ」

 

 それからの1週間はあまり眠れなかった。もしかすると自分のせいで晴渡たちがおかしくなったのかもしれない、考えたくはないことを延々と考えざるを得なかった。光陰矢の如しとはまさにこのことだ。

 

ついに当日。戦う、と聞いていたので動きやすい服がいいかなーとか汚れてもいい服がいいかなーとか何故かそんなことばかり脳内を揺れ動く。そもそも当時の制服で来てくれ、と言われてはいるのだが。卒業してからそんなに月日が経っていないのにだいぶ小さくなったように感じる。

 

歩き慣れた並木道を進むと学校が見えてきた。用務員室の中には晩堂がいて、やはり用務員然とした格好である。

 

「よく来てくれた。俺の目的は生徒たちを元に戻し、化け物を倒すことだ。だが、どこまでできるかわからない」

「美月さんは?」

 

放ってから失言だったと気がつく。娘を救い出したい気持ちは晩堂が一番感じているというのに。

 

「……まだ黒幕の場所が掴めていない。そのためにも」

「そのためにも、まずは手が届く人たちを助ける。ですね」

 

3年間生徒やってましたから、とでも言わんばかりに握り拳を突き出す。さっきまでの堅い空気とは一変、肩の力が抜けた拳が帰ってきた。

 

「さすが俺の生徒だ。よくわかってるじゃないか」

 

ここまで来たならば引き返せない。用務員室を後にして心奇たちは校内に向かった。

「ここからは学園ポリス……生徒会に見つからないように進んでいく。まあ、俺に任せておけ」

 

こうして心奇は再び学園に足を踏み入れることとなった。用務員の清掃カートの中に隠れて。

驚くほどに賑やかな廊下。なのに血の通っていないのがカート越しにも伝わってくる。心奇の通っていたクラスも同じだ。思い出の詰まった虚ろな教室に言いたいことはたくさんある。しかし今は誰にも見つからないように先を急ぐのが先決だ。

 

ある程度校内を回ったところで廊下の奥から整然とした足音が聞こえた。この先は体育館のはずだ。

 

「学園ポリスだ。退くぞ」

 

顔を出して覗き見ると左腕に赤い腕章をつけた生徒たちがいかにもなパトロールをしている。しかもよく見ると生徒会の後輩たちではないか。GSPO……Gakuen Seitokai Police Organization。生徒会はいつの間にそんな組織に……何だかよくわからないが鉢合わせるのは避けるらしい。と思ったのも束の間、頭にバケツを被せられ再びカートに押し込まれてしまった。

 

しばらくするとよく聞いたチャイム音が鳴り徐々に校内が静かになる。昼休みが終わる時間のようだ。

 

「出てきていいぞ」

 

数十分ぶりの光に目がやられる。掲示物も差し込む光もあのときと変わっていない。これでいて制服までしっかり着ているのだから気持ちは高校4年生だ。

 

「で、ここから先は何するんですか?」

「生徒が1人になる瞬間を狙って洗脳を解除する。そのために生徒の動きを抑えてほしいんだ。特に運動部のやつらが手強くてな」

 

能力の発動条件にも色々あるんだなあとぼんやり考えているとガラガラと音がした。ドアが開いた方を見ると男子生徒がどこかへ向かおうとしていた。

 

「いくぞ」

「はい!……はい?」

 

追いかけるかと思えば晩堂は指輪を構えている。見よう見まねで同じように構えたのに不思議とこの先の行動がわかった。指輪を回転させる。指輪の絵柄が変わり赤、白、黒のマスクに包まれた戦士が出てきた。

 

「「エンゲージ!!」」

 

『『センタイリング!!』』

 

2人は右手に現れた銀色のガントレットに指輪をセットした。初めて手にしたはずなのに妙に馴染んでいるし、何だか力が溢れてきた気がする。とりあえずリズムに合わせてクラップをしてみると全身が光に包まれた。

 

『メガレンジャー!』

『ルパンレンジャー!』

 

白い手に赤い腕。まるで自分の姿が自分でないように感じられた。横にいた晩堂もマントに身を包んだ赤と黒の戦士に変わっている。

 

変身が完了したのを確認すると晩堂……ルパンレッドは即座に駆け出していった。人生初の変身に感動する間もなく後を追う。再び生徒の姿を捉えたところでルパンレッドが一気に迫る。しかし、追手の存在に気がついた生徒はクネクネした動きでその手を避けた。

 

「あいつ……古武道部の部長か」

 

実際の古武道部は古武術だかエアロビだかよくわからない活動をしているらしい。本当によくわからないので生徒会も黙認している。どちらかというとこの動きはエアロビに近いが。

 

(でも見えた、指輪の力ってのは伊達じゃないな)

 

常人離れの計算力で次の動きを予測し、そして拘束する。

 

「よくやった。解除(リリース)

 

『0』『1』『0』

 

生徒にテガソードをかざすとダイヤルが回り出す。抵抗がなくなったことで心奇はこれが洗脳の解除だということを認識した。

 

(まさか今までずっと1人でこんなことを……?)

 

この慧海学園は他の高校と比べて特別人数が多いわけではない。それでもその洗脳を解除しながら黒幕を倒すとなると莫大な時間がかかることは想像に難くない。それは晩堂の狂気とも言える根性だった。

 

それからというものの予定のない日や空きコマを上手く使い、短期間で1クラス分くらいの人数は解放することに成功した。しかも律儀に毎回カートに隠れて潜入している。心奇も「制服を着てる意味ないのでは……?」と思っているがあえて口にはしていない。残りの生徒数も数え切れないし、教頭先生を取り込んだという化け物にもまだ会えていない。このままではまた新入生が狙われてしまう、そう思っていた日だった。

 

(恐らく)空き教室があるところを通っているとき晩堂が足を止めた。同時に廊下を歩く音もいくつか聞こえてくる。絶ッ対に高校生では出せないような圧をビシビシと感じた。

 

「おや、まだ青春になってないやつがいるな~?」

「ようやく会えたな。ぜひ会わせたいやつがいるんだ」

 

相手の声でその推理が合っていたことがわかる。会わせたかったのが自分だと感じた心奇は載せられたゴミ袋を投げ捨てて飛び出した。声がした方を向く……前に少し制服のゴミを払って。

 

「ゲホゲホッ、お前が!ん?お前が元凶か」

 

眼前には頭部が金色のベルになった戦士と、明らかに怪人だろうという見た目の2人(?)がいた。ずっと隠れていたため、声を聞かないとどちらが黒幕かわからない。ひとまず金色の方を指差しておいた。

 

「教頭先生はあっちだ」

「あ、お前か!」

「ふっ。私こそはノーワンワールド、青春ナンバーワン。教頭の青春ノーワンです!さあ、あなたたちも青春するのです!」

 

晩堂に訂正され慌てて指先の向きを変える。こいつを倒せば全てが終わる、そう思うと俄然やる気が出てきた。隣の晩堂も同じ気持ちだ。

指輪を外して構える。何度目かの変身ともなれば勝手は掴めていた。

 

「「エンゲージ!!」」

 

『『センタイリング!!』』

 

テガソードに指輪をセットすると腕を後ろに引いて顔の右側で1回、左胸の前で2回、斜め下に向けて1回、両手を胸の前に持ってきて2回のクラップを済ませる。最後に前に伸ばした右手が次に見えたときには既にメガレッドになっていた。

 

「メガレッド、俺についてこれるな」

「野望なこと聞きますね、ルパンレッド。俺が一度でも遅れたことがありましたか?」

 

前後を大量のベルの兵士と自称教頭の青春ノーワンに囲まれる。追い続けた大きな背中に背後を預けた途端、ベルの兵士が一斉に襲いかかったきた。

 

数こそいるものの単体の強さはそこまでではない。テガソードを使って薙ぎ倒していく。ルパンレッドが青春ノーワンを相手している間に片付けたかったが、竹刀を持った金色は色違いなだけあってそう簡単にはいかなかった。

 

「ドリルセイバー!」

 

竹刀相手に刃部分の短いテガソードでは不利だと判断したのかメガレッドは得物を変える。その名の通りドリルのような刀身の剣で、互角に渡り合っていた。

 

「俺はチャン・バラバ。可愛い生徒たちの(かたき)を取ってやる!問題。1529年と1683年の2回にわたって行われたオスマン帝国による……」

「ウィーン包囲」

「コラッ!問題は最後まで聞かんか!」

 

先に仕掛けてきたのはそっちなのに勝手に逆ギレされた。再び周囲を囲まれてしまったので一度金色……チャン・バラバから距離を取って銀色を斬りに行く。

 

「俺はウィーンかよ」

 

どれだけ数がいようと、今までの戦闘を探求(リサーチ)して強くなっているメガレッドの前では倒れ伏すのみだった。軽く辺りを掃除して残されたチャン・バラバに模範解答を叩きつける。

 

「知ってるだろ?ウィーンは最後にオスマン帝国の包囲を突破するんだ」

 

横を見るとルパンレッドもノーワンに止めを刺そうとしていた。

 

「今日こそこの学園を返してもらう」

「本当にいいのですか?私を倒せば中の人間も死んでしまいますよ」

「何…!?」

 

一瞬動揺した隙を突かれて体勢を立て直されてしまった。中の人間、ということは教頭先生が死ぬということだ。平和を取り戻す戦いで誰かを死なせたら本末転倒でしかない。遠くから廊下を走る音もたくさん響いてくる。

 

「チャン・バラバ先生、あとは頼みましたよ」

 

自分たちの有利を悟ったのか青春ノーワンは足早に戦線離脱してしまった。

 

(くそっ……それより、いま生徒が来たら巻き込まれる!)

 

「そいつを連れて離れろ!」

 

ルパンレッドの声で咄嗟に我に返る。その視線の先はチャン・バラバを指していた。言い換えるとこいつなら倒してもいいということだ。

 

「サイバースライダー!」

 

何かあることを感じたメガレッドはサーフボード型のマシン『サイバースライダー』を召喚し、チャン・バラバの首根っこを無理やり掴んだ。抵抗されようと根性で抑え込み、狭い廊下をサーフィンしていく。

 

そのときに背後ではルパンレッドと生徒会のメンバーが睨み合っているのが見えた。間違うはずがない、先頭にいたのは指輪をした晴渡であった。

 

 正面玄関まで来ると善戦虚しく拘束を解かれてしまった。互いに臨戦態勢になるもチャン・バラバはすぐに視線を外し、召喚した後ろの巨大ロボットに乗り込んだ。

 

「とうっ!」

「こういうのってロボ対ロボがセオリーじゃないのかよ」

 

それはゲームの中だけの話である。残念ながら現実ではそんなルールは通用しない。できる限り戦うしかないと腹を括り、銃を取り出した。

 

「メガスナイパー!」

「どうした、痛くも痒くもないぞ。さあ、テストだ!ホログラム発動!」

 

機内でチャン・バラバがスイッチを押すと建物に囲まれていた風景が海に変わり、紅と白に分かれた舟も何艘か浮いている。メガレッドはその紅い方の舟に乗っていた。敵は鎖鎌を手に一歩ずつ近づいてくる。

 

「この歴史の出来事は何でしょう?」

 

向かい合う舟、紅白の旗、狙われたメガレッド……ここから導き出される答えは1つ。生徒会長サマには()()する必要もないくらい簡単な問題だ。

 

「答えは屋島の戦いだ」

「正解!そしてお前は扇の的だ!」

 

振り回された鎖鎌がメガレッドを捉える。あまりにも違いすぎるサイズに受け身を取る間もなく吹き飛ばされてしまった。

 

屋島の戦いといえば源氏の弓の名手・那須与一が、平氏の舟に置かれた扇の的を射抜いたというエピソードが有名である。

 

「だったらせめて弓使えよ……!サイバースライダー!」

 

もう一度サイバースライダーに飛び乗り、敵の顔の近くまで上る。下に見えた校舎裏ではルパンレッドと晴渡が変身したであろう戦士、学園ポリスたちが混戦を広げていた。

 

(あの戦い方……)

 

疑念とメガスナイパーを手に銃撃するが、やはり効いている感じはしない。空中を旋回しながら攻撃を繰り返す。なんとか鎌から逃げるているもののいつ当てられるかわかったものじゃない。

 

「チョロチョロとうるさいぞ!叩き落としてやる!」

「俺だっていつまでも守られてばっかの高校生じゃないんだよ」

 

策などどこにもないのに身体が勝手に動き出していた。好奇心にもハイテンションにも似た何かに突き動かされて。

 

ドリルセイバーを取り出しメガスナイパーと合体、ドリルスナイパーカスタムを構える。狙いは敵の頭、風穴を開けるために回転する銃口のトリガーを引く。

 

「俺は負けない、信じてくれた人のために!シュート!」

 

勢いよく放たれた光線と不安定な足場はその反動でメガレッドの体勢を崩しにかかった。そのタイミングを狙い鎖鎌が飛んでくる。もはや避けることなど考えていなかったメガレッドは、サイバースライダーから落とされホログラムの海へと沈んでいった……

 

 心奇が目を開けるとそこに広がっていたのは青空ではなく古くなった天井。頬に痛みを感じ伸ばした手は大きめの絆創膏へと当たった。

 

「随分と無茶をしてくれたな」

「あの状況で逃げるわけにはいかないですよ」

 

身体に感覚が戻ってくると同時に全身が悲鳴を上げ始める。何度か大きく飛ばされたのが相当堪えたのだろう。そんな心奇を見て晩堂が声を搾り出した。

 

「俺じゃなくても誰かが願いを叶えてくれればそれで良かったんだ。なのに……巻き込んで、すまなかった」

「晩堂先生にはお世話になりましたから」

 

らしくない謝罪にらしくない理由をつけて返す。お互いにちょっと気まずくて無言の時間が続く。扇風機だけが小さく首を動かしていた。段々と目標を達成できなかったことを悟ると後悔と申し訳なさが募ってくる。これから先は、という言葉を心奇は言えなかった。

 

「銀河、この件からは手を引け。後は俺がやる」

「ここまで来て諦めろって言うんですか?」

「そうだ。お前には家族もこの先の人生もある。これ以上、命を無駄にしてほしくない」

 

確かに晩堂の言い分には一理ある。リセットの効かない命懸けのバトル。大学生活も始まったばかりの心奇には返答に詰まるセリフだった。だからといって引き下がらないのはお互いにわかっているはずだ。

 

「でも、先に誘ったのは先生ですよ。そんなの勝手すぎます!」

「わかっている!ただそれでも、もう俺の生徒に傷ついてほしくないんだ」

 

ここまで来ればどちらかが折れないことには終わらない。3年間の経験がそれを物語っている。

 

(全く、俺たちの熱血校長には頭が上がらないな)

 

すっと折れることを決めた心奇だったが恩師に傷ついてほしくないのは同じなのである。

 

「でも先生、このままだと長くは保たないですよ」

「俺がそう簡単に死ぬと言いたいのか?」

「だって晴渡相手に本気じゃないですよね、あれ」

 

不意を突かれたのか晩堂が少し驚くのが見えた。心奇はそのまま言葉で畳み掛けていく。一瞬しか見えなかった戦いでも心奇が違和感を覚えるには十分な長さだった。

 

「俺の見てきた先生はもっとキレのある戦い方をしてました」

 

 静まり返った廊下に自分の足音だけが響く。仕事中に生徒会室から出る理由など休憩か人探ししかない。生徒会の予算書を片手に軽い足取りで階段を下っていた。今日締め切りのものを今日出してくるなんて弛んでるんじゃないか、などとボヤきなからも渡り廊下の先を行く。重たいドアを開けると予想通り、そこにいた。

 

「ふっ!はあっ!!」

「まだまだ甘いぞ」

 

放課後名物、特訓する師弟。今日も体育館では晩堂と晴渡が稽古をしている、心奇はいつも一段落するまで声をかけないのだが、晴渡が勝っているところを見た試しがない。今もまさに最後の一撃を食らっていた。

 

「晩堂先生。予算書の確認をお願いします」

「ああ。いつも悪いな」

「相変わらずお強いですね」

 

予算書に目を通す晩堂から笑みが零れる。

 

「まだまだ根性だけのヤツには負けられないからな」

「この根性も先生に教えてもらったものですよ」

 

道着姿の根性だけのヤツが反論するもあっさりといなされていた。

 

「根性だけ学んでどうする。もっとあるだろう」

「……もう1本お願いします!」

 

その言葉を受けると予算書が手元に帰ってきた。

 

「それで通してくれて大丈夫だ。さあ、来い!」

「根性ッ!」

 

逸らしていた視線が晩堂を収める。

 

「何の心配してるか知りませんけど、あいつは少し本気を出したくらいでやられる根性してないですよ」

「……銀河」

「それに、大切なものは失くならないですよ。先生が手放さない限り」

 

あのとき晴渡……後輩たちと戦わせないためにわざと離れるように指示したことくらいは気づいている。心奇は丁寧に包帯の巻かれた自分の右手を見てある決断をした。

 

「まだ諦めてないですよね?もらってください、俺の指輪」

「いいのか?お前の願いが叶わなくなるんだぞ」

 

心奇の願い──晩堂をはじめとした、信じてくれた人たちに誇れる人間になること。誰かの力でそれが叶うならこれほど楽なことはないだろう。それでもあの青春という名の檻を見たことで決意は固まっていた。晩堂を1人にするのは不本意だがこの状態ではやむを得まい。覚悟は決まっている、と晩堂に指輪を差し出した。

 

「いいんです。どうせすぐには戦えないし、指輪欲しさに教頭先生たちを助けるやつが来るかもしれないし。それにやっぱり……自分で叶えたいんで」

「やはり俺の生徒だ」

 

出された指輪に晩堂の手が触れる。教え子から恩師へ、ヒーローからヒーローへ。願いが託された瞬間だった。

 

「その代わり、絶対取り戻してください。俺たちの学園も仲間も」

「もちろんだ。今度こそお前の思い、無駄にはしない。それから……」

 

約束を枯らさない。そう誓うと改めて心奇の方を見て、今まで思っていたことを一度に吐き出した。

 

「戦ってくれてありがとう」

 

唐突なセリフに思わず声が止まる。世間ではありふれた感謝の言葉でも心奇には初めて聞く言葉のようで。また少し願いが叶った一言だった。そんな思いにここ何ヶ月かで一番の笑顔を見せて返す。

 

「こちらこそ。先生の生徒で良かったです」

 

数週間後。

 

用務員室を後にして帰宅した心奇はあまりにボロボロすぎたので母親にこっぴどく詰められた。こういうときに一人暮らしの暁人たちが羨ましく思える。最初の食事も勉強もロクにできなかった頃と比べると、だいぶ痛みは引いた。傷か深かったところはまだ完治していないので、夏休み真っ只中だというのに出かける際には傷薬と絆創膏も持っていかなければいけない。

 

今日はデジ研の集まりで哲多の家で焼き肉をしている。さっきまでライバルの調査だのなんだのと理由をつけてテレビゲームをやっていた。ちなみに暁人の圧勝である。

 

「今までは戦闘がメインだったけどそこに学園モノの要素を足してみるんだよ」

「学園モノ〜?例えば?」

「学校生活の委員会とか部活でレベルを上げて、そのレベルで戦うんだ。多くの人たちにとって身近だからこそ、とっつきやすいっていうか」

 

肉を焼いたり野菜を押しつけあったりと楽しいひと時を過ごしている一方、ゲームの新しい構想について白熱(?)した議論が飛び交っていた。

 

「あ〜まあ〜アリだ」

「アリだな」

 

熱く語っているのは慧海学園での青春の日々と激動の日を胸に大学生へと戻った心奇。晩堂に全てを押し付けたことに何も感じていないと言えば嘘になるが、信じているからこその選択だということはわかってほしい。

 

何杯目かのコーラを流し込むとまた軽快に喋り出した。

 

「お前たちにも高校の思い出の1つや2つや3つ……あ、それ俺の肉」

「いやもう焦げてたし、タマネギあげるからほら」

 

綺麗な色に焼けたカルビが網から消え、代わりにどっさりとタマネギが盛られる。哲多はカルビとタマネギが釣り合うと思っているのか。

 

「ほう。ありがたくいただこう」

 

そう言うと網で焼かれていた肉をとんでもないスピードで回収しはじめた。

 

「「ああー!!」」

「こ、心奇クン、まだ怪我治ってないし無理しない方が」

 

トングなら左手でも使える、とニヤリとすると躊躇わずに持っていった。絶望する2人の前でタレをたっぷりつけた肉を頬張る。まだ口の中にタレが沁みるが白米とのコンビネーションには敵わない。

 

「いって……」

「そんな勢いで食べるから。お前って頭いいのにバカだよな」

 

まともなツッコミをする暁人を発端にやいのやいのとご飯を食べていると携帯にメッセージが届いた。忙しいから後で見ようとしたが送り主を見て箸を置く。

 

「うわ、俺らとの飯よりスマホが大事なのかよ!」

「彼女か、彼女なんだな!」

「高校の後輩だよ、うるさいなあ」

 

ロックを解除すると未読メッセージが1件。開くとそこには楽しそうに写る生徒会メンバーと晩堂()()の写真があった。かつてと変わらないその姿に思わず顔が綻んでしまう。続けざまにメッセージも送られてきた。

 

『お久しぶりです!1年生がたくさん入ってくれて生徒会も賑やかになっています。晩堂先生が心奇さんにも写真を送ってほしいと言っていたので送りますね』

 

守りたくなるくらいの笑顔が見れる、それだけで十分だ。いつだって、どこだって科学の力は人と人を繋げてくれる。覚束ない左手で文章を作成すると送信ボタンを押した。

 

『これからも学園の平和は任せたよ、生徒会長』

 

いつもと変わらない日常のいつもと違う一瞬。それは青い春の延長線上。

雲ひとつない空で、太陽が微笑んでいた。




・ユニバース戦士設定
メガレッド
指輪/センタイリング メガレンジャー
契約者/銀河(しらかわ)心奇(こうき)
職業/大学生
願い/信じてくれた人たちに誇れる人間になること
「探求(リサーチ)」の能力を使い、物事や技を分析して戦う。慧海学園の元生徒会長であり、現在の学園の事情を聞き晩堂に協力、指輪を託す。現在は仲間たちと“青春”できるゲームを作っている。

以下、作者様のあとがきです。

この度『ユニバース戦士補ジュウ計画』にてメガレンジャー編を担当させていただきました。よっしー/FSと申します。
まずは素敵な企画を考案・運営してくださった皆様に感謝申し上げます。書いている時間や他の方々の意見を聞いているときなど、とても充実しており完成が楽しみでした。
作品内にはメガレンジャーを始め、かなり小ネタを仕込んだつもりです。1つだけ解説するならば今回の主人公の名字である銀河。銀河は晴れた日の夜に見える、ということでメガレンとルパパトの要素を落とし込みました。他の箇所は私からは解説しませんので「これかな?」と思うところがあっても読者の皆様の心の中に留めておいてくださると幸いです。
模範解答がないということは答えもないということ、あなた様の考えが全て正解です。1人ひとりの心から100万倍の好奇心が無くならないことを願っています。最後まで読んでくださりありがとうございました。
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