メガレンジャーで、ニアさんの作品です!
(X:@nia1994jackhero)
グラウンドに乾いた風が吹きぬける。そこには2人の男が相対していた。
「俺は……必ず理想の漢になる!」
「だからと言って、ここで戦う理由がわからないのだが……それでも戦うというのなら、容赦はしない!」
俺は目の前にいる男に勝って、理想の自分になる。そう心に決意したのだ!
事の発端は数か月前に遡る……。俺はここ「月夜市立慧海学園高等学校」に転校してきた高校3年生「才葉源太郎」転校して間もない俺は昔の学校の規則だった黒い学ランとバンカラ帽を被りワイシャツの代わりに赤いTシャツを着ていた。この学校の連中は皆楽しそうに会話したりしているが、俺の姿を見るなりすぐにわき道にそれて逃げていく。俺はさっさと学校を出て帰ろうとした、そんな時だった。たまたま通りがかった際に一人の女子生徒とすれ違う。
「あ、ごめんなさい!」
「あぁ? んぁ!?」
「あ、これ。君のでしょ。はい」
源太郎はすれ違った女子生徒から持っていたカバンを拾われて手渡されると、女子生徒はそそくさと走り去っていった。しかしその後姿を見た源太郎は……。
「……かわいい!」
簡単にひとめぼれした。それから源太郎は女子生徒の事を熱心に調べることにした。彼女の名は
「満さん……ここまで釘付けになるほどにかわいいとは……是非ともお近づきになりたい……!」
と、満の気づかないほど遠くから見つめている源太郎だが、彼には大きな問題があった。それは……彼はスマホやゲームといった電子機器が全くと言っていいほど使いこなせないのだ。今のご時世的にスマホが使えない人間すら珍しいと言われるほどだ。というのも源太郎の家はかなり厳しく厳格な父親に徹底的に娯楽を制限されていた。唯一まともに使えるのはテレビぐらいだが、テレビも夕飯時にしか見られず、普段は父親の武道の稽古と抑圧された日常生活に源太郎は幼いころから父親に反発していた。その結果小学生の頃からケンカっ早い性格になっていき、今では父親とも疎遠状態であった。
そんな源太郎ではあるが中学生時代の恩師の先生に親身に話を聞いてもらい、高校受験も先生とのマンツーマン指導のおかげでどうにか合格したこともあり、彼なりに目指しているものがあった。それは「誰にでも頼られ、そして勇ましくいられる人間」であることだ。だが高校生となり、恩師の先生とも卒業してからは殆ど出会ってない。弱気では恩師に顔向けできないと自分に厳しく言い聞かせていた。
「……でも、満さん……可憐だったなぁ……」
そんな源太郎にとって初めての恋心である満の優しさには、それまで経験したことなかった甘酸っぱい青春を感じさせるには十分だった。初めて一目ぼれをした源太郎はどうにか近づきたいが、スマホも何も触ったことがない源太郎は満の連絡先を知る事すら困難を極めていた。結局源太郎は何もできないままその日学校近くのアパートに帰ろうとしていた。
「はぁ……満さん……どうしたらお近づきになれるんだ……」
いつになく上の空の源太郎はまだちゃんとお話したこともない満に思いを馳せていた。しかしいつまでもうじうじ悩んでは仕方ない。いつかはちゃんとお話を……と思っていたその時、道端にキラリと光る何かを見つける。
「ん? なんだこれ?」
それは周りが金色に縁取られていた指輪のような物だった。そしてそこには赤いマスクをつけたようなヒーローがいた。源太郎はそれを何気なく拾い上げると、突如として脳内に何かが響き渡った。
『……指輪を持つ者よ……』
『ん!? な、なんだ!?』
『指輪を持つ者よ。汝の願いを聞こう』
『な、なんだ!? 誰だ一体!?』
突然何者かの声に驚くが、その声の主は淡々と話を続ける。
『指輪を持つ者同士が戦い、全ての指輪を揃えた者に、願いを叶える。それが我との契約だ』
『願い……よくは分からんが、あんたと契約してこの指輪を全部集めたら、願いを聞いてくれるんか!?』
『そうだ。お前は何を願う?』
『俺は……満さんに……いや違う! 俺は、どんな奴にも頼られ、そして……勇ましく、強い男になりたい!』
源太郎の願いを聞き入れた謎の声は、指輪に力を与え、そして源太郎の右腕に銀色に輝く右手の形をした何かが装着される。
『うお!? な、なんだ!?』
『そのテガソードに契約の指輪をはめることで、力を手に入れられる。そして全ての指輪を手に入れた者の願いを叶えよう』
『面白れぇ。なら俺は、全ての指輪を手に入れて誰からも頼られる漢になるんじゃ!!』
謎の声に導かれた源太郎はふと意識を取り戻すと、そこはいつもの帰り道だった。さっきのは何だったのか頭をかくが、その時源太郎の左人差し指にあの金色の指輪がついていた。
「こ、これは……あれは、夢じゃなかった?」
それからしばらくして、源太郎の周りは静かに変わっていった。表向きは普通の高校生としての生活をしながら、その裏で他の指輪の戦士との戦いを繰り返していた。そして源太郎の指輪の力がだんだん理解できて来た。源太郎が契約した指輪はメガレンジャーという戦隊の力が宿ったリング。そして普段スマホすら持っていない機械音痴な源太郎に反して能力はかなりデジタルな能力が多かった。最初はかみ合わないような性能とも思えたが、源太郎の元から鍛えていた武道の技術が功を奏し、かなりの相手と戦ってこれた。
「フフフ、この指輪のおかげで戦えば戦うほど力が増してくる! これならば俺は、満さんと……!」
と満との妄想にうつつを抜かしていたその時、ふと源太郎の目に映ったのは……。
「……わかった。なら勉強あるのみだな」
「お願いします!」
「み、満……さん!? それとあいつは……!」
そこにいたのは満と仲良く話をしていた晴渡一輝だった。話の内容はほとんど聞こえなかったが、2人が何やら楽しそうに会話している場面を目撃した源太郎は……。
「な、なんで満さんがあの生徒会長さんと……ま、まさか、あの二人……付き合ってる!?」
源太郎は二人の仲良く話している姿が忘れられず、後ろからこっそりついていくが、会話の内容はあまり聞き取れないがどうやら満と一輝は何かを相談している様子。だが満はとても嬉しそうに会話しているのを見て、源太郎は……。
「な、なんであんな……生徒会長さんが、満さんと……!!」
謎の嫉妬の炎を燃やしていた。それから何日か過ぎた放課後……。
「晴渡一輝!」
「き、君は、才葉源太郎君?」
「俺は、あんたに……決闘を申し込む!!」
突如として源太郎は晴渡に一方的に決闘を申し込んだ。当然晴渡は意味不明なことに困惑するが、強引に彼を連れ出す。
「ちょ、ちょっと君!?」
「聞いたぞ……あんた、指輪の力を持ってるんだろ!」
「!?」
困惑する晴渡の前に、源太郎は自分の指輪を見せる。
「……なるほど、指輪をかけての決闘という事か……」
「それだけじゃねぇ! あんた……あの満さんと仲良くしゃべってたみたいだな!」
「え? 満……あぁ、九条満さん? あの人は……」
「俺はあんたに絶対負けられん! そのためにも決闘だぁ!!」
「いや、あの人の話をだね……!」
一方的に意見を展開する源太郎に困惑する晴渡だがなんとか話をしようとしても全然聞く耳を持たない源太郎は既に指輪を構えて臨戦態勢だった。
「俺は……必ず理想の漢になる!」
「だからと言って、ここで戦う理由がわからないのだが……それでも戦うというのなら、容赦はしない!」
「「エンゲージ!!」」
【センタイリング!】
「おりゃあ!」
【センタイリング!】
「はぁ!」
【メガレンジャー!】
【パトレンジャー!】
源太郎はメガレッドに、そして晴渡はパトレン1号にエンゲージして武器を構える。先に仕掛けたのは源太郎だった。源太郎、もといメガレッドは右腕についたバトルライザーの01ボタンを押して打撃力を強化してくる。
「バトルライザー、01! ライザーチョップ!」
「シールド!」
「ぐぅ! なら、ライザーパンチ!!」
メガレッドが打撃攻撃で接近戦を仕掛けるが、パトレン1号の防護盾で攻撃を封じていく。そしてパトレン1号のVSチェンジャーで威嚇射撃をするが、メガレッドはバトルライザーで強化された右腕でそれを弾いていく。
「ふん、なかなかやるじゃないか! ならこれならどうだ!
メガレッドが能力を発動すると、するとメガレッドの姿が5人に分身し、5人が全員同じポーズをとる。
「何!?」
「メガスナイパー、はぁ!!」
5人のメガレッドが同時にメガスナイパーを発射すると、シールドで防ぐだけで精一杯のパトレン1号は大きく後退する。そこから畳みかけるように接近戦に持ち込む。
「すまないけど、何か勘違いしてるんじゃないか? 俺は別に九条さんとは……」
「問答無用だ! ドリルセイバー!」
メガレッドはドリルセイバーを出現させて再び攻撃を仕掛ける。パトレン1号はシールドで防御するが、ドリルの突進力に押し負けてシールドが破壊されてしまう。
「ぐぅ! 強い!」
「まだまだここからだ! セイバースラッシュ!」
「ちぃ! パトメガボー!」
メガレッドのドリルセイバーに対抗して、パトレン1号もパトメガボーの警棒モードで受け止めていく。
「どうしたどうした、まだまだこんなものではないぞ!」
「いい加減人の話を聞きなさい!!」
パトレン1号は何とか説得しようとするがやはりメガレッドは未だに攻撃の手を休めない。メガレッドこと源太郎はパトレン1号に猛攻を仕掛け続けるがパトレン1号こと晴渡は攻撃を仕掛けつつもなんとか説得を試みる。しかしお互いも体力が疲弊してきたその時だった。
「おぉ、ずいぶん張り切ってるやつじゃねえか」
「何!?」
「なんだ!?」
突如として謎の攻撃が2人の間に割って入った。その攻撃の先にいたのは……
「あ、あなたは……遠野吠さん!?」
「あぁ? 誰だあんた?」
「この指輪を集めてる、通りすがりのはぐれ者……的な?」
「んな! あんたも指輪の戦士か!」
「遠野さん、どうしてあなたが?」
「俺も新しい願いを見つけてぇからな。だから、俺もその指輪のバトルに乱入させてもらうぜ! エンゲージ!」
【クラップユアハンズ! ゴジュウ、ウルフ!】
いきなり現れた男、遠野吠は赤いリングを使って新たな指輪の戦士、ゴジュウウルフにエンゲージした。ゴジュウウルフは戦う2人の間に割って入ると、三つ巴の戦いが始まる。
「いきなりなんだあんたは!」
「俺も指輪を集めてるってだけさ。それ以外に理由は、ねぇ!」
「遠野さん! またあなたと戦うことになるとは!」
「あの頃より腕を上げたか? ド根性警察さん!」
ドリルセイバー、パトメガボー、ウルフデカリバー50、それぞれの武器がつばぜり合いを繰り広げる中、源太郎はゴジュウウルフのパワーに競り負けて吹っ飛ばされてしまう。
「うわぁ!」
「よし、このまま……!」
「っは! させるか!」
倒れたメガレッドを庇うようにパトレン1号こと晴渡はパトメガボーでゴジュウウルフを受け止める。その姿に源太郎は一瞬困惑する。
「んな! なんで……」
「どんな理由があるかはわからないけど、君もこの学園の生徒なんだ! だから……俺は君だって守る!」
「いい仲間だな。あんたはやっぱいいダチになれそうだ。でも、指輪の戦いは別だ!」
パトレン1号はVSチェンジャーでゴジュウウルフを牽制し、メガレッドからゴジュウウルフを引き離す。その姿を見た源太郎は……
「な、なんで……こんな俺を守って……うおおおおおおお!!」
「ん!?」
「っはぁ!」
メガレッドは腰につけたメガスナイパーでゴジュウウルフを狙うが、ゴジュウウルフはすぐにひらりと交わして距離を取る。
「才葉君?」
「……俺、あんたに助けられた。だから今度は、俺が庇う番だ!」
「……ふぅ、全く。話を最後まで聞かなきゃダメだろう」
「へ、お前ら案外仲いいじゃん」
「「ど、どこが!? あっ……」」
「まぁいい。お前ら二人とも俺の……獲物だ!」
「遠野さんは強い。才葉君、君と協力しても勝てるかどうかわからない。でも、手伝ってくれるかい?」
「……仕方ない、今回だけだ!」
「いざ掴め! ナンバー、ワアアアアアアアアアアアアン!!」
「GO! GO! ゴージュウジャー!」
「仲良くなるだけがダチじゃねえ。ケンカしても仲間は出来る。はぐれ1匹、ゴジュウウルフ! 俺は殴り合いでも仲間になるぜ!」
「ウエエエエエエエエエエエイ!」
「昨日の敵は今日のライバル!」
「人の話はしっかり聞きましょう!」
「才葉源太郎、メガレッド!! この恋の炎を、あなたに捧げる!」
「晴渡一輝! パトレン1号! 相手が恩人でも、負けません!!」
【友情、ナンバーワンバトル! レディーーーーー、ゴーーー!】
ゴジュウウルフの乱入が思わぬ形で二人に変な協力関係を生み出すことになったが、それがかえって思わぬ連携を産むことになった。そしてゴジュウウルフとメガレッド、パトレン1号の変則的な2VS1が続いて……。
「ハァ、ハァ……あぁあ、負けたぜ……」
「ハァ、ハァ……遠野さん、やっぱ強い人だ……」
グラウンドで大の字で寝転がる源太郎と晴渡、その姿は随分ボロボロになっていたが、それでも二人はどこかスッキリとした表情だった。
「あぁ、生徒会長さん……色々、済まなかったな……」
「全く、もう少し人の話を聞かないと、でしょうが」
「うっ、す、すまない……」
「でも……なんだか不思議と君のこと知れた気がする」
「へへ、なんか俺も今までのもやもやが消えた気がするわい!」
2人の指にはもう指輪は無い。だが二人は清々しいほどの笑顔で笑いあっていた。とそんな時だった。
「ところで、どうして君は決闘なんていきなり申し込んできたんだ?」
「そ、それは……あ、あんたが満さんのか、彼氏だから、俺にも告白したくて……」
「……え? 何それ?」
「へ?」
晴渡は源太郎に事の顛末を述べると、あの時満に相談されたのは、ダンスサークルでの練習をもっと広げるために海外の大学に進学するつもりで、海外の大学に行くにはどうしたらいいかという相談だったらしい。
「えええ!? じゃ、俺あんたに勘違いして関係ないことを!?」
「だから何度も弁明しようとしたのに何も聞いてくれないから……」
「す、すんませんでした!!」
源太郎は飛び上がるとすぐさま土下座で晴渡に深々と謝る。だが晴渡はそんな様子を咎めることはせず、笑って許した。
「まぁまぁ、そういうのはもう過ぎたことだから気にしないで。それに君とはちゃんと真剣に話をしてみたいと思っていたからね」
「そ、そうなのか!?」
晴渡は笑って許してくれて、お互いに友情が芽生えたその時、ふと後ろにあの九条満がいた。
「うおおお! 満さん!!」
「え? あ、えっと……」
「あ、あの、俺才葉源太郎といいます!」
「は、はぁ……」
「そ、その。先日は俺の落としたノートを拾ってくださり、ありがとうございました!!」
「あ、あぁあの時の」
「そ、それで、あの時のお礼を、し、したくて……あの、その……!」
緊張しながらも満になんとかデートの誘いをしようとした、その時だった。
「あ、満~」
「あっ! ヨッシー!」
「おいその呼び方ハズいからやめろって」
「いいじゃん! 別に~!」
「そいえばさ、今度面白い映画あるんだけどさ」
「……へ?」
「……一ノ瀬吉高。3年C組で九条満のクラスメート。同じダンスサークルに通っている人だ」
「あ、ヨッシーちょっとまって」
「え?」
「才葉君ごめんね。あの時たまたま通りかかっただけだったから、お礼とか気にしないでね! あと、こっちは私の彼氏のヨッシー! もしダンスに興味あるなら、いつでも寄ってみてね! と言っても今年で私たち卒業だけど!」
そういって満は吉高と一緒に腕を組んで学校を後にした。その後姿をぼう然と見つめていた源太郎は、真っ白に佇んでいた……。
「あ、あぁ……ほら、元気出して! あ~、ほら、あれだ! スマイルスマイル!」
「……生徒会長おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
それは、才葉源太郎高校3年生の短く儚い青春の一時であった……。