猿装さんの作品です。
(X:@RBGHOSTABR)
「……はぁ……はぁ……腹減った……」
指輪争奪戦。吠による総当り戦の最中。ユニバース戦士との戦いを経てなんとか指輪を手に入れた吠だったが、その帰り道に空腹になってしまった。
「おいおい。大丈夫か兄ちゃん」
フラつきながら歩く吠に声を掛けたのは、茶髪の似合う男性で、彼は今まさに店を開けようとしている所だった。
「……誰だあんた?」
「誰でもいいだろ。とりあえず…ちょっとこい」
「へい。お待ち。パンゲアー名物『濃厚トマトカレー』だ」
「いただきます!」
空腹の吠を見かねた彼は自身が店長をしているカレー屋【パンゲアー】にて吠にカレーを振るまった。
「ん〜うめぇ!助かったぜオッサン!」
「おっ…誰がオッサンだコラァ!まだそんな年齢じゃねぇっての!」
「しょうがねぇだろ…名前知らねぇんだから」
「だとしてもオッサンはねぇだろ…ったく。俺の名前は【杉中風斗】だ。よろしくな」
カッコつけて椅子に腰掛けて足を組み、キリッという効果音が入りそうなキメ顔での自己紹介。しかし吠はカレーを味わって食べており華麗にスルーされた。
「ごちそうさまでした!」
「おーし良い食いっぷりだ。所で兄ちゃん。名前は?」
「遠野吠」
「よし。所で遠野。お前見たとこ1文無しってとこか?じゃなきゃあんなふうに空腹でフラフラにならねぇもんな」
「うるせぇ!……バイトクビになったんだよ」
「ったくしょうがねぇな」
彼はそう言うと吠にエプロンとTシャツを投げ渡した。
「これって…」
「しっかり働けよ。遠野!」
吠は新しいバイト先を手に入れた!
「…しゃーせー……」
「おい遠野ぉっ!もっと腹から声出せ!」
「っ!……ご注文はお決まりでしょうか!?トマトカレー!トマトカレー三つ!」
「あいよぉ!ってこれじゃ居酒屋じゃねぇか!もっとオシャレに出来ねぇのか!」
「どの口が言ってんだ!」
「んだとぉ!」
「すみませーん!」
「はーいただいま!ほら、行け遠野!」
「分かったよ!!!」
ランチタイムは大忙し。風斗の怒号と、吠の叫びと客の注文が飛び交い、カレーの風味が店内を満たしていく。その時店の前で通りすがりのインド人が立ち止まった。
「フゥームゥ。ジャパンのカレーにしては、中々良いスパイシーな香り……」
『お前にも分かるか?』
「えぇ…これでも祖国インドではスパイス通の名を……ん?」
『ならばちょうどいい!!!』
「え?あ、うわぁぁ!!!」
《スパイス》《香辛料》《刺激》《人間》《ナンバーワン》
通りすがりのインド人が円の中に吸収され、とあるワードと共にノーワンに『生成』されてしまった。
「ノーワンワールドスパイスナンバーワン!スパイスノーワンだ!!!ここに顕現!」
スパイスノーワン。様々な草や花、種の生えた枯れ枝のような身体。そこから右目が蜘蛛の巣で覆われており、両手と首には様々なスパイスの入った瓶が腕輪とネックレスのように取り付いている。
「さて、手始めに……スパーイス!ボンバー!!!」
スパイスノーワンが腕を振ると様々なスパイスが瓶から噴出して巨大な塊を形成する。そして塊が爆散して、一気に拡散した。それを吸い込んだ人達はクシャミが出たり、涙が止まらなくなったり、中には唐辛子のスパイスが鼻に入り悶絶する人も出てきた。それはパンゲアーの中まで入ってきて、お客さん達も多種多様なスパイスに悶絶し始めた。
「どうだ!過激!劇的!刺激的!これこそがスパイスの力よ!!!」
「ノーワン!?なんで…おい!やめろ!!」
異常を察知した吠は店外に出て、ノーワンを発見。疑問に思いつつもテガソードを取り出して指輪を嵌めた。
「何者だ!?」
「エンゲージ!」
\クラップユアハンズ!!!/
\ゴジュウウルフ!!!/
「はぁっ!!!」
「ぐはぁっ!」
エンゲージした勢いそのままにスパイスノーワンに斬りかかり、スパイスノーワンは大きく吹き飛ばされる。
「てめぇ!もう乗り手の選抜戦は終わった筈だろ!」
「テガジューンの乗り手になどはなから興味はない!ましてやあんな腑抜けた女王にもう用はない!俺は俺のスパイスで世界を制するんだ!」
「腑抜けだと……!?もういっぺん言ってみやがれ!」
\ウルフデカリバー!50!!!/
スパイスノーワンの言葉に頭に来たゴジュウウルフはウルフデカリバーを召喚して斬りかかった。
「コショウボンバー!」
「何!?」
しかしカウンターでコショウボンバーを喰らってしまい、それを一気に吸い込んでしまった。
「ぐはぁっ!前が見えねぇ…は、鼻が……はっくしゅん!はぁっくしゅんっ!!!」
「ふははは!ゴジュウジャーも俺の敵ではないわ!!!」
コショウを吸い込んでクシャミと涙で動けないゴジュウウルフを踏みつけてスパイスノーワンは高笑い。
しかしそこにどこからともなく白い布が飛んできてスパイスノーワンに覆いかぶさった。
「ぶはぁっ!?な、なんだ!?前が見えん!」
「はぁっ!!!」
白い布の正体は風斗のエプロンだった。彼はそのまま飛び蹴りを繰り出してスパイスノーワンを吹き飛ばす。
「ぶほぁっ!?だ、誰だァ!?」
「てめぇ、よくもウチの客と従業員に手ェ出してくれたな!」
「誰だと聞いてるんだ!」
「教えてやるよ。カレーでナンバーワンを目指す俺の名は…杉中風斗!そして…エンゲージ!!!」
ポケットから取り出した金色のリングを銀色のテガソードに装填した。
\センタイリング!!!/
テガソードをリングを相手に見せる形で顔と同じくらいの高さに持っていって手の甲をクラップ。
身体を屈めつつ捻り、テガソードを左手の前にもっていき2クラップ。
テガソードを前に突き出し、タイミングを合わせて胸でクラップ。
そのまま右腕を引いて、テガソードを再度顔の高さに持っていき、今度はリングを自分側に向けつつ、手首の辺りを2クラップ。
テガソードの剣を下に下ろして、指を指すように相手に向けて突き出す。
\アバレンジャー!!!/
「またの名を、アバレッド!!!」
三本爪の紋章とともに赤いオーラが風斗を包み込み、マスクが恐竜のように雄叫びをあげた。
「ハードな辛口、おごってやるぜ!アバレイザー!!!」
ホルスターから引き抜いたアバレイザーガンモードを連射、スパイスノーワンを的確に撃ち抜いた。
「ぐはぁっ!?こいつ!」
「ティラノロッド!!!」
怯んだところにティラノロッドを手にして接近戦に持ち込む。腹に一撃を叩き込み、振りかぶって頭部を狙うもスパイスノーワンはそれをしゃがみこんで通り抜ける。そして背後から右ストレートで襲いかかるが、ティラノロッドを地面に突き立て、体を持ち上げて回避しつつ、後頭部に蹴りを加えた。
「ぐへぇっ!?」
「どーだ!」
「こうなれば喰らえ!トラウガラシハリケーン!」
「!?」
スパイスノーワンは再度腕の瓶から今度は唐辛子のパウダーをアバレッドに向けて噴射した。
「危ねぇ!」
「フン…【
指輪が輝くと共に緑色の旋風が吹き荒び、唐辛子パウダーを離散。さらにアバレッドの手足の白い模様が棘のように膨らんでいた。
「!?」
「なんだそれは!?」
「力が漲ってくるぜぇぇっ!!!」
「くっ!喰らえ!」
スパイスノーワンは腕の瓶から光弾を発射する。アバレッドは被弾しながらも前身して、飛びかかり、スパイスノーワンの首根っこを掴んだ。
「は、はなせ!?」
「ティラアァァァァァ!!!」
「ぐわああああっ!?」
そのまま地面に叩きつけて、スパイスノーワンを引きずり回す。しばらく引きずった所で廃材の山に投げ捨てた。
「トドメだアアァァァァッ!!!」
フラフラと立ち上がるスパイスノーワンにアバレッドは再度飛びかかるが、目の前に謎の穴が開く。
「何!?」
アバレッドはその空間を通りぬけ、あらぬ方向に飛ばされて近くにあった廃車を木っ端微塵にした。
「よく分からんが…一時撤退だ!」
その隙にスパイスノーワンは近くにあったカラーコーンの底に飛び込んで離脱した。
「間に合った…」
「おい!」
先程アバレッドの前に現れたのはウルフデカリバーのワープホール。風斗は変身を解除しつつ吠に詰め寄った。
「なんで邪魔しやがった!?」
「あのまま倒したら、アイツに取り込まれた人間が死んでたんだよ」
「何ぃ?……どういう事だ?」
「着いてこい。俺も色々聞きたいことがあるしな」
ーロボの墓場ー
「ふむ。間違いないな。君たちが遭遇したのはスパイスノーワンだろう」
「のぉわん?なんだそりゃ」
「そこは長くなるから端折るけどぉ〜、ま、ゴジュウジャーの言う通り、あのまま倒したら取り込まれた人間が死んじゃうのは間違いないわよ〜」
「だがほっとけねぇだろ。どうすればいい?」
「俺たちはいつも、ナンバーワンバトルでノーワンから人間を切り離してた。今回もそうすりゃいいが…は、は……はぁっくしょんっ!」
「風邪か?」
「ちょっとうつさないでよぉ?」
「コショウだよ!まだ鼻の中に残ってやがる…!それともうひとつ。なんでノーワンがまた暴れてんだ?」
「実は女王の方針転換を快く思っていないノーワンもいるんです。彼はその一人」
「というより彼は元々乗り手への興味が薄かったな」
「スパイスの研究一筋の男だったわよねぇ」
「正直我々としても手を焼いているんです」
「クオンの言ってた共存か…」
吠の返事にブーケは重々しく頷いた。ノーワンとアーイー達が人間世界でも生きられるようにする。スパイスノーワンの行いはそんな彼らの努力を踏みにじるも同然であり、到底許されるものではない。
「あ、ちなみにこのことはファイヤキャンドル君には伝えないよ。彼の事だ。不要な責任を感じてしまうかもしれないからね」
「そうだな…だがなんとか奴とのナンバーワンバトルに持ち込まねぇとな。スパイス……スパイスかぁ…」
「スパイスナンバーワンねぇ……」
「と・こ・ろ・で、このイケメンは?」
「ハニー!?」
「俺は杉中風斗。カレー屋だ」
「ま!スパイシーな男なのね〜!」
「ハニー!」
「んもう!冗談よ!でもなんだか、シンパシーを感じるのよねぇ、ダーリンも感じない?」
「ん?確かに…彼からはなんだか、"二人で一人"みたいな感じがするな……君!何か心当たりは!?」
「ねぇよ!ちょ、来るな来るな!暑苦しい!」
詰め寄る2人に戸惑う風斗。そんな中吠がある事に気づいた。
「あ」
「なんだぁ!?」
「見つけたぜ!奴をナンバーワンバトルに引き込む方法!」
ところ変わってここは都内某所のビルの屋上。撤退したスパイスノーワンがそこにいた。スパイスを操り、周囲の店からスパイスを強奪した麻袋を開ける。
「人間界のスパイス。これだけあれば、俺のノーワン界のスパイスと合わせて完全無敵のスーパースパイスが出来るはず!そしてそれをこの世界にばらまいて俺が世界を支配する!この世界のスパイスは全て俺のものだーっ!あーっははははは!」
「まて!」
「!?ぐぬぬ、また貴様らか!俺は貴様らに用はない!」
「勝負だノーワン!スパイスナンバーワンを賭けて俺たちと戦いやがれ!」
「……何?」
「あぁ、勝負内容はスパイスを使った代表的な料理。カレー対決だ!」
「カレーだと?なぜ俺がそんな事に付き合わなければ……」
「おっとぉ?スパイスナンバーワンを名乗るくせに、カレーには自信がないのかな?」
「そんな訳あるかぁっ!カレーは大好物だ!」
「なら問題ねぇな?」
「ふん!いいだろう!スパイスナンバーワンの誇りにかけて、貴様らとのカレー対決!受けて立つ!対決は3日後!首を…じゃなかった、皿を洗って待っておけー!!!」
再度スパイスノーワンは近くにあったライトの円から離脱。なんとかナンバーワンバトルに漕ぎ着けた二人は安堵のため息を漏らす。
「とりあえずこれで一旦は大丈夫だな」
「あぁ、だがまだ問題は山積みだ」
「え?」
「奴は仮にもスパイスナンバーワン。カレー対決でもそれをフルに活かしてくるだろう。もちろん俺のカレーで負ける気はしない。だが、確実に勝たなきゃならねぇ…だろ?」
「なんかアテはあんのか?」
「一つだけな」
ーテガソードの里ー
「おぉぉ〜!吠っち!久しいなぁ〜!」
「おう。久しぶ…はっくしょん!!!」
「っと…大丈夫?吠君、風邪ひいた?」
「ちげーよ。コショウにやられて未だに鼻の奥がムズムズするんだ」
「なるほど、とにかく風邪じゃなくて良かった!」
「よく考えたら吠君が風邪をひくわけないか」
「遠野がやられるウイルスなら今頃緊急事態宣言発令中だ」
「んだとコラ」
「ちわーっす…」
「おぉ、竜てゃ!お客さんだ!」
「いらっしゃいませ。空いてるお席にどうぞ」
席に着いた風斗は懐から小さなメモ帳を取り出した。
「これは?」
「ここには俺が食べた中でいちばん美味かったカレーのレシピが記されてるんだ。こいつをあのノーワンとの戦いで使う」
「ノーワン!?」
「遠野!またノーワンが現れたのか!?」
「まぁな。んでコイツは俺のバイト先の店長、かつ指輪の戦士」
「よろしく。あ、あとコーヒーもらえますか?」
「かしこまりました。あと当店オススメナンバーワンのテガソード様オムライスもいかがでしょう?」
「あー…俺ケチャップ苦手なんすよ」
「そうですか…」
「あ?トマトカレー作ってたろ?いって!?」
どこから取り出したかスリッパで吠の頭が引っぱたかれた。
「馬鹿野郎!いいか?トマトとケチャップは別モンだ!」
「叩くことねぇだろ!」
「お前が何も分かってねぇからだろぉっ!?ったく、カレー対決に持ち込めたのはいいが、このままじゃレシピもままならねえってのに……」
「まーまーまー!それより吠っち!こっちに来てくれ!な!?」
「コーヒーお待たせしました。それで、そのカレーのレシピとは?」
「ありがとうございます…それが、分からないんですよね」
風斗がページを開くとそこには隠し味の所に何かベッタリとしたシミが付いていた。
「なんと…」
「これ、娘が作ってくれたレシピなんです。基準となるカレーは俺の作ってるやつですけど、そこに隠し味を入れたらしくって」
「零れたのは恐らくその隠し味となる何かでしょうな。こう言ってはなんですが、娘さんに直接聞かれては?」
「あー、いや。娘は今はいないんです…」
「それは…」
「娘との約束なんです。いつか世界一のカレーを作れるカレー屋さんになるって……こいつは、そのための…」
「失礼しました」
踏み込みすぎたと頭を下げる竜儀に風斗は気にするなと声をかけつつ、娘との約束を語り、運ばれてきたコーヒーに口をつけた。その瞬間…
「アオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!」
「ブーッ!?」
店内に響く吠の雄叫びに風斗は口にしたコーヒーを噴き出した。
「げっほ!げほ!な、なんだぁ!?」
「禽次郎さん!?遠野に何を!?」
「ほ、吠っちがコショウが鼻の奥にこびり付くというから、鼻うがいを教えたんだ」
「僕も未使用の市販点鼻薬を持ってたから貸したんだけど……」
「ありがとな陸王!禽次郎!!!鼻の奥の奥までスッキリだぜ!!!」
満面の笑みで二人に握手しながら爽やかな笑顔で礼を言う吠に三人はやや引き気味にオドオドしてると、吠の鼻が嗅ぎつけた。
「ん?…おい店長!そのメモ帳…」
「あ?あぁ、こいつには伝説のレシピが乗ってるんだが如何せん隠し味がな」
「見せてみろ!」
「あ、おい!」
吠は風斗からメモを奪い取るとシミの部分に鼻をつけて思い切り吸い込んだ。
「って匂いなんて残ってるわけねぇだろ!何年前のシミだと…」
「わかった!」
「えーーーっ!?」
「竜儀!アレだ!アレ持ってこい!」
ー決戦の日ー
「逃げずに来たのは褒めてやる!」
「それはこっちのセリフだ。行くぜ遠野!」
「押忍!」
「ルールは簡単!今このまさに昼下がり!ここでカレーを実演販売してより多く食べてもらった方が勝利だ!!!」
「いいぜ、やってやる!」
\カレーナンバーワンバトル!!!/
\レディーーーー!!!GO!!!/
スパイスノーワンは単独で、吠と風斗は共同でカレーを作り始める。しばらくするとギャラリーがカレーの匂いに引き寄せられてきた。
「ふっふっふ…ここで俺特性のスパイスを入れて…完成だっ!!!スパイスカレー!」
最後に謎のスパイスが入ると虹色の輝きが鍋からオーロラのように解き放たれ、スパイスノーワンのカレーが完成した。その匂いにふらりふらりと人が集まってくる。
「もう出来たのか!?」
「焦るな!俺達のカレーに集中しろ!」
「ささ、よってらっしゃい見てらっしゃい!スパイスナンバーワンのスパイスカレーだよー!」
ノーワンの風貌に恐れつつも、人々はスパイスカレーの方に向かっていく。そして配られたカレーをひとくち食べた。
「んまぁぁぁぁ〜い!」
「なんだこれ!なんだこれ!」
「とろけちゃううぅ〜!」
スパイスカレーに皆が群がっていく。そんな中風斗達のカレーが煮込む段階にはいった。
「よし!」
「…ん?」
すると吠はノーワンカレーの、正確にはそれを食べた人間の異変に気づいた。
「もっと…もっとちょうだい!」
「頼む!鍋ごとくれ!金なら出す!」
「足りない!足りないのぉ!」
「なんだ…これ」
「ふっふっふ、俺特製のスパイスをカレーに入れた迄よ、こいつは口にした瞬間、多幸感を含めた様々な刺激を与えてくれるように調合した。ただ、そいつが持つのはせいぜい…10秒ほどだがな」
「てめぇ…カレーをなんだと思ってやがる!」
「勝てばなんでもいいのさ!こいつらを使って俺の勝利は確実だ!はははははは!」
「分かってねぇな」
「はははは……あん?」
「スパイスってのは、確かに多種多様のハーモニーを奏でる。だが、お前はスパイスを使い潰してるに過ぎねぇ。スパイスを生かす。それが出来ちゃいねえ」
「店長…」
「…さ、仕上げだ!」
鍋を開けたカレーから噴き出した圧倒的なスパイシーな匂い。それはスパイスノーワンと吠を吹き飛ばしそうな程の勢いだった。
「な、なんだ!?こ、これはぁ!!!」
「おまちどう!俺たち特製!【スペシャルトマトカレー】だ!!!」
皿に盛り付けられたカレーは、まるで情熱のように赤く、宇宙のように煌めいて、全てを包み込むような朗らかな匂いを放っていた。その匂いは、スパイスノーワンのカレーの虜になっていた人達を正気に戻して、風斗のカレーの方に引き寄せていた。
「ば、馬鹿なぁあああああ!?」
さらに遠巻きに見ていた通行人や、通りすがりの通行人もその匂いに足を止め、駆け寄ってくる。風斗はその一人一人に丁寧にカレーを提供した。
「遠野ぉ!見てねぇで手伝え!」
「おう!!!」
「くそ!負けん!」
呆気にとられていたスパイスノーワンもカレーに更なるスパイスを入れて対抗しようとしたものの、その匂いすら風斗のカレーにかき消されてしまい、何も出来ずに膝から崩れ落ちた。
\WINNER!杉中風斗!!!/
「すみませーん!今日のカレーショーはここまでです!ありがとうございましたー!」
「……つぇあ!!!何故だ!スパイスを極めた俺に、カレーで勝ることなど…っ!?」
「御託はいいから食ってみろよ」
自分の卓をひっくり返して怒るスパイスノーワンに風斗は最後の1皿を差し出した。払いのけようとするスパイスノーワンだが、スプーンを手に取り、カレーを1口食べた。
「なっ……こ、これは……う、美味い!?な、なぜだ!なぜ……なぜこんな…!」
「隠し味は、コイツさ」
風斗が取り出したのは何の変哲もないケチャップだった。
「ケ、ケチャップ?」
「意外だよなぁ」
ーテガソードの里にてー
「はぁ!?ケチャップ!?」
「あぁ、このシミからケチャップの匂いがした。間違いなくコイツはケチャップだ!」
「おま、んな訳ねぇだろ!」
「吠っちは指輪の力で鼻がいいんだぞ!」
「しかも鼻うがいでスッキリした今の遠野ならば、こびり付いたシミから元を辿ることも出来るかもしれません。物は試しです。お貸しします」
「……厨房借りていいか」
ーそして今ー
「おそらく、ケチャップ嫌いの俺のカレーにケチャップを入れて、克服させたかったんだろうな。優しい子だ」
「店長…」
「……ない…」
「あ?」
「スパイス以外で、カレーが美味くなるなんて!俺は認めないいいい!!!」
ちゃぶ台返しの如く風斗のカレーを放り投げて臨戦態勢に入る。しかしその光景はもはやあとが無くなった悪足掻きにしか見えない。
「っと!てめぇ…なんてことしやがる!!!」
「だだだだだ黙れ!!!俺はスパイスナンバーワン!貴様らに我がスパイス道を止められるものか!」
投げ捨てられたカレーを受け止めて、近くの安全なところに置いてから一口食べて、吠と風斗が並び立った。
「止めてやるよ。俺が……いや俺達が!行くぞ遠野!」
「あぁ!」
「「エンゲージ!!!」」
\クラップユアハンズ!!!/
\センタイリング!!!/
\ゴジュウウルフ!!!/
\アバレンジャー!!!/
「アオォォォォォォォォン!!!」
ゴジュウウルフの雄叫びと、アバレッドのマスクの咆哮が重なり、二人の戦士が立ち上がる。
「いざ掴め!ナンバー!ワーーン!!!」
\GO!GO!GOZYUGER!!!/
\GO!GO!GOZYUGER!!!/
「てぇいっ!辛味!旨味!甘味に渋味!全ての味覚は俺の手の中に!スパイスナンバーワン!スパイスノーワン!!!スパイスなき生は生にあらず!!!」
「フレェェェッ!!!」
\GO!GO!ユニバース!/
\GO!GO!ユニバース!/
「娘と誓ったあの約束。いつか遂げるぜ!カレーナンバーワン!カレー莫大!アバレッド!!!本当のスパイスを教えてやるよ!」
\ナンバーワンバトル!!!/
\レディーー!GO!!!!/
ゴジュウウルフとアバレッドとスパイスノーワンによる戦闘。スパイスノーワンは両手首の瓶からの光弾で二人を近寄らせない。さらにスパイスによる弾を作り出そうと手を上げた。
「またスパイス漬けにしてくれるわ!!」
「二度も同じ手が通じるかよ!オルカブースター!」
\オルカブースター!50!50!!/
\ワイルドパワーアップ!!!/
ワイルドゴジュウウルフに強化変身し、そのまま流れるようにスパイスノーワンの瓶を狙い撃った。
「ぬああああああ!?俺の、俺のスパイスがずぶ濡れにぃ!?」
「これで厄介なスパイスは潰したぜ!」
「なんともったいない事を!許さん!」
「攻撃に使うお前が言うな!【
憤るスパイスノーワンに飛びかかり、腕を振り下ろして攻撃しつつ着地して、さらに両手で薙ぎ払い、ストレートパンチで吹き飛ばす。
「ぐはぁっ!?」
\オルカブースト!!!/
「あん?なんだこぐぅぅっ!?」
「!」
オルカブースターがアバレッドに強力なパワーを流し込むと、その姿は金と赤の最強戦士。アバレマックスへと強化された。
「こいつは…」
「ったく、また勝手なことしやがって」
「まぁいいさ。決めるぜ遠野!」
「おう!お前は俺たちの…獲物だ!!!」
金のリングを立ててスパイスノーワンに狙いを定めると周囲が暗闇に包まれる。そして狼が獲物に飛びつくように凄まじい速度ですれ違いざまに切りつけてノーワンに取り込まれたインド人が開放された。
「今だ!」
「必殺!スラッシュマキシマム!!!」
追撃の一閃。アバレマックスの一撃が不安定になったスパイスノーワンにトドメを刺した。
「スパイスは…かけすぎに注意いいいいい!!!」
断末魔をあげてスパイスノーワンは爆散した。
\WINNER!アバレッド!!!/
「やったな!」
「あぁ!……っ!?」
二人が拳を合わせた。その次の瞬間、ビルについた大きな時計からキングキャンデラーが飛び出してきた。
「ファイヤキャンドル!?」
「……逝ったか。スパイスノーワン。お前らを咎めるつもりはねぇ。だが…誰も弔ってやらねぇのは、寂しいだろ」
弔い合戦。裏切り者たるスパイスノーワンでも彼の仲間であったことにはかわりないのだ。
「だから、俺と戦え!ゴジュウウルフ!!!」
「いいぜ…相手になってやる!こい!テガソード!」
\アウェイキング!!!/
\テガソードアカツキ!!!/
テガソードとオルカブースターが合体した真紅の侍。テガソードアカツキがキングキャンデラーと斬りあった。好敵手である彼らの剣は互角であり、お互いが1歩も譲らない状態になる。そんな中、巨神達の戦いを見ていたアバレッドにキングキャンデラーが剣を向けた。
「おい!てめぇも来やがれ!」
「俺も!?」
「当然だ!弔い合戦の相手はテメェら二人だからな!」
「俺にはテメェらみたいなロボットはねぇぞ!?」
「いや、呼べるはずだ!その指輪に選ばれたのなら!お前にはその資格がある!」
そこまで吠えた後、キングキャンデラーはテガソードアカツキの刀を前屈みになって回避し、カウンターで下から切り上げた。
「くっ!」
「くらえぇ!!!」
キングキャンデラーの必殺技がテガソードアカツキを斬り飛ばす。あまりの破壊力に武装が解除されてしまい、テガソードレッドとなってダウンしてしまった。
「あっ!……遠野。お前は…娘のレシピを俺に教えてくれた…お前は俺の恩人だ!俺は、お前を助けたい!吠ーーーっ!!!!」
銀のテガソードのアバレンジャーのリングが輝き、地面が大きく揺れた。
「なんだ!?」
「これは……!?」
次の瞬間キングキャンデラーの真下からドリルが飛び出してきて、キングキャンデラーを吹き飛ばした。そのドリルは穴の中から飛び出してテガソードの前に降り立つ。
「……俺に力を貸してくれるのか!?」
巨神はアバレッドを見て頷いた。そして内部へと風斗を招き入れた。人神一体。巨神『アバレンオー』が完成した。
「行くぞ!吠!!!」
「おう!」
\テガソードデカクロウ!!!/
ウルフデカリバー50を装備したテガソードとアバレンオーが並び立つ。
「やっぱり喚べるじゃねぇか!そうこなくちゃあなぁ!!!」
キングキャンデラーも燃える炎のオーラを噴き出して、自身の剣をかつてトランプノーワンによって強化された時のものと同じ、ロッド型の薙刀へと形を変えた。
「行くぜぇ!」
キングキャンデラーとテガソードデカクロウ、アバレンオーがぶつかる。テガソードのクロウを受け流すも直後にアバレンオーのドリルに切り裂かれる。そこから裏拳のように飛んできたクロウに一撃入れられるも、直後に飛んできたアバレンオーのトリケラパンチとデカクロウスラッシュを薙刀で受け止めて、弾き返して二体まとめて横に薙ぎ払った。
「喰らえ!」
「負けるか!」
キングキャンデラーの砲門から噴出した炎をティラノヘッドから放たれた爆竜ファイヤーで相殺する。
その炎を切り裂いてテガソードが突貫。左手の突きでキングキャンデラーを吹き飛ばした。
「今だ!テガソード紅狼パニッシャー!!!」
「爆竜!電撃ドリルスピン!!!」
デカクロウの必殺技に合わせてアバレンオーが高速回転させたドリルで突っ込む。二つの攻撃を同時にくらい、キングキャンデラーは腹部に大きな風穴が空いた。
「……悪ぃな。スパイスノーワン」
キャンドルの撤退と共にキングキャンデラーはその場に倒れ込んで爆発した。
ー戦いは終わり、後日ー
「さてと……」
「店長ー」
「お、吠!」
「今日もバイトに…ん?なんでシャッター開けてないんだ?」
「あの化け物との戦いでわかったんだよ。俺はまだまだだってな。いつか、娘に誇れるカレーを作れるために、本場で修行してくらぁ」
「そっか……ん?って俺のバイトは!?」
「あー……お前クビってことで」
「えぇぇぇぇっ!?」
「こいつは、昨日のバイト代だ」
そう言って風斗はアバレンジャーのリングを吠の投げた。
「ありがとな。吠」
「……しょうがねぇか」
渡された指輪を握りしめ、吠はキャリーケースを持って立ち去る風斗を見送った。そんな中、風斗のスマホが鳴り響く。
「もしもし?あぁ、俺もそっち行くよ!なんだ?パパとまた一緒にカレー作れて嬉しいだろ〜?え?そりゃねぇぜ〜!」
ーロボの墓場ー
「……」
「ファイヤキャンドルさん…」
「……悪りぃな。ブーケ嬢。また負けちまった」
「…………そうですか」
「……呆れるだろ?裏切り者の弔い合戦なんかで勝手に暴れて、勝手に負けてきたやつだぜ?」
「いいえ。その優しさは絶対に間違ってませんから」
「……ありがとな」
ーテガソードの里ー
「久しぶり〜」
「おぉ!角ぽよ!いい所に!」
「何?なんか良い匂いしてるけど…カレー?」
「吠君がね、バイト先で教えてもらったカレーを作ってるんだ」
「へー…………って吠が!?」
「遠野。材料費もツケに加えておくぞ」
「へーへー、おーい出来たぜーっと。お、角乃。食ってくか?」
「アンタのカレーか……食べて大丈……って美味しそうじゃん!」
「だろ?店長のトマトカレーだぜ!」
「ほう。なかなか美味そうだな2代目。だが、忘れてるものがあるんじゃないか?」
「カレーにはリンゴと蜂蜜クマー!」
「はぁっ!??やめろ!味が崩れんだろ!」
「何言ってやがる!蜂蜜は全てを包み込むこのゴッドネスイチオシのスパイスだぜ!?」
「だ、おま、やーめーろー!!!」
end
名前:杉中 風斗(すぎなか かざと)
職業:カレー専門店「パンゲアー」店主。
願い:最高のカレーを作る。
能力:刺突(スティング)。
白い部分に鋭いトゲを生やす。腕や足だけと部位ごとに分けることも可能で、全開放すること「スティングモード」となり戦闘力が向上する。
スティングモード:能力を全開放した姿。外見はアバレモード。『アームドデカレッド』と同じ立ち位置。
カレー屋「パンゲアー」の店主。既婚者だが妻とは死別しており、『舞里』という一人娘がいる。
スパイスノーワン
生成ワード
「スパイス」「調味料」「刺激」「人間」「ナンバーワン」
女王テガジューンもといブライダンから離反したノーワン。そのため応援団のパートではアーイー達の応援はない。スパイスの研究に没頭しており、人間の世界を手に入れて世界中のスパイスを我が物にするのが目的。戦闘時は腕に腕輪のように括り付けられた瓶から光弾や様々なスパイスの粉末を相手に浴びせる。