ユニバース戦士補ジュウ計画   作:壱肆陸

4 / 18
今回と次回はTELTELボーズさんの作品です。
(X:@teltel_fumibo)

まず1作目。
「ジェットマン」の指輪の物語になります。


はばたけ議員よ!志は永遠に

─『続いて選挙結果のニュースです。かつてない投票率を記録した今回の選挙において、日本キビダンゴ党が議席の3分の2を獲得しました。日本キビダンゴ党は今後、党首の熱海常夏議員を総理大臣として新政権を発足し…』─

 

 

 流れるニュース音声に、超軼絶塵党(ちょういつぜつじんとう)の党首・藤鷹(ふじたか) 与一(よいち)は拳をぎりりと握りしめる。つい先刻与党となった日本キビダンゴ党は、近ごろ彗星のごとく政界に現れ、破竹の勢いで支持を獲得していった。今や党首・熱海常夏の支持者は国内の有権者のみならず未成年者や海外にも広がり、その総数は50億人という説まである。超軼絶塵党は志が高くやや過剰に積極的なマニフェストを掲げていることから少々民意から敬遠されているが、それを加味せずともなお余りある大敗であった。慙愧の念を抱くのもむべなるかな。

 

 

「おのれ日本キビダンゴ党…! おのれ熱海常夏…! この国の未来の為に、必ずや打倒してみせる…っ!!」

 

 

 普段から年齢相応以上に深い眉間のシワをさらに濃くして臥薪嘗胆を誓う藤鷹の前に、金縁の指輪が舞い降りる。そこには、鳥の顔のような航空機、5条の飛行機雲、さらに、「JETMAN」の文字が描かれていた。

 

 

 

 

「このような場所で会談を申し出たと思えば、まさか貴方も指輪の戦士だったとは。驚きましたよ藤鷹与一議員」

 

「それはこちらのセリフだ。まさかこのような面妖な特権をあろうことか公に晒すとはな熱海常夏総理大臣」

 

 

 黒い岩肌が段々に覗く荒野。到底対立する与野党の党首同士が会合するに似つかわしくないこの場所に、藤鷹と熱海は立ち会っていた。

 

 

「国民の顔色ばかり伺って人気を取ろうなどという浮ついた貴様にこの国の総理は務まらんよ。私がこの国の総理となり、より高みへと導くのだ!」

 

「「エンゲージ!!」」

 

センタイリング!!

 

 熱海常夏の変身動作はそれほど凝ったものではない。しかし、藤鷹与一のそれは輪をかけて無愛想であった。身体の前で一小節に1回の拍手を鳴らすのみの厳かなものであった。熱海の顔にサングラスが舞い込みアバタロウギアが彼の身を通過する頃には、藤鷹の全身に赤い光と白色の格子が浮かび上がり、両者はそれぞれドンモモタロウ、またはレッドホークへと変貌していた。

 

 

 ドンブラザーズ!!よっ!日本一!

 

 ジェットマン!!

 

 

 両者はしばし構えた後、同時に踏み出していく。斬り込んだ二振りの銀のテガソードはその青い切っ先同士を鳴らし、拮抗した鍔迫り合いを見せる。少なくとも膂力や武道の力量においては、両者は互角のようだ。

 

 

「ならば機動力で攻めるとしよう!」

 

 

 レッドホークは身体の側部から翼を広げ、ドンモモタロウの頭上を飛び越える。そのまま縦横無尽に上空を飛び回るレッドホークは、四方八方からドンモモタロウを立て続けに急襲していった。

 

 

「これならどうかな!お供達!!」

 

 

 ドンモモタロウの手元から黒いイヌ、青いサル、桃色のキジの折り紙が出現し、投げ放たれたそれらはみるみるうちに拡大、増殖して飛び回るレッドホークに襲いかかる。

 

 

「ふんっ!!」

 

 

 レッドホークは空中での錐揉み回転で風を巻き起こすことで、眷属の弾幕を散らせる。それでいい。ドンモモタロウの本命はその後に絞り込まれた飛行先への射撃である。急な攻撃への対処およびかなり無理を通した錐揉み回転の後に可能な飛び方は限られる。空中衝突を起こした眷属が爆ぜる炎の揺らぎから予想していた飛び先をさらに絞り込み、その先を読んでドンブラスターの銃弾を放った…が、その光線は何者をも捉えること無く空へ消えていった。晴れゆく爆炎の中を覗くと、なんとレッドホークは空中に地面があるかのごとく仁王立ちで静止していた。

 

 

「これが我が指輪の能力“降着(タッチダウン)”、高みに立ち歩き続ける為の力だ!」

 

 

 制空権を取ったレッドホークはバードブラスターで一方的にドンモモタロウに銃撃を見舞う。対するドンモモタロウの眷属は撃ち落とされ、銃弾は空中歩行と飛行を織り交ぜて躱されるばかり。普通に飛ばれるだけならある程度軌道の先読みができなくもないところを、“降着(タッチダウン)”による停止と再飛行によって不可能にされている。ドンモモタロウにとっては目に見えてジリ貧であった。

 

 

「これが高みの力というものだ。こうして差を見せつけられれば判るだろう、高みの差がいかに多くを不可能とするか、いかに覆し難い勢力差を生むか!だからこそ、例え苦難の坂道であろうとも、人も国もより高みを目指して登り続けていくべきなのだ!」

 

 

 レッドホークは完全に優位に立ったことを示し、決着をつけるべく銃口をドンモモタロウへ向ける。

 

 

「では、その席を退いてもらおうか。熱海総理大臣」

 

 

 絶体絶命と思われるこの戦局で、しかしドンモモタロウは高らかに笑う。

 

 

「やあやあ、確かに人を見上げるというのはなかなか新鮮な経験だ!こうして見ると世界とはまだまだ広いように思える!…しかし藤鷹議員、そういう貴方も上を見上げることをお忘れではないかな?」

 

 

「何を…ぐうッ!?」

 

 

 直後、レッドホークの真上から折り紙のキジが大量に振り注いだ。十分なサイズに拡張された桃色の折り紙細工はその質量と速度を以てレッドホークを撃ち落としていく。

 

 

「な、何故だ!?貴様の折り紙は全て撃ち落としたはずだ!何故私の上から落ちてくる!?」

 

「藤鷹議員、貴方が“降着(タッチダウン)”の能力を十分に活かしたように、私も指輪の能力を活用したのですよ。この“召喚(サモン)”の能力をね」

 

 

 そう言ってドンモモタロウはドンブラスターから光線を放つ。レッドホークは落下しながらもブリンガーソードを抜いて迎撃せんと振り抜くが、その切っ先は虚しく宙を切るばかりだった。光線はレッドホークの身体より手前側の宙空に着弾し、サイバーめいたエフェクトをまとった扉を開く。そこから黒いイヌの折り紙が飛び出し、隙を晒したレッドホークに襲いかかった。ドンモモタロウの指輪の能力は“召喚(サモン)”。普段は眷属を手元に召喚しているが、ドンブラスターを介せばこのように離れた場所に呼び出すことも出来る。レッドホークは確かにドンモモタロウの手元から放たれる眷属には警戒していたが、避けた光弾の行方までは警戒出来なかった。それらがレッドホークの上空にキジの眷属を招いたのだった。

 

 頭から落下してゆくレッドホークに“降着(タッチダウン)”や飛翼で体勢を立て直す余裕はもはやなく、地上に待ち構えるドンモモタロウとの距離が詰まっていく。

 ドンモモタロウは銀のテガソードにドンブラザーズリングの力を溜め、居合の如く構える。

 

 ドンブラザーズ!フィニーッシュ!!

 

 レッドホークが間合いに入った刹那、テガソードの切っ先が七色の弧を描いて相手の胴を撫でた。

 

 

「加持祈桃・サマーソルト斬!」

 

「ぐわあぁぁっ!!」

 

 

 必殺の剣閃と落下の衝撃を受け、レッドホークの変身が解ける。藤鷹が持つ銀のテガソードが霧散し、ジェットマンのセンタイリングはドンモモタロウの手に渡った。

 勝利した熱海はドンモモタロウの変身を解き、ゆっくりとした拍手と共に伏した藤鷹に歩み寄る。

 

 

「いやあ、しかし手強かったですね藤鷹議員!まさかこんなにも早く切り札を切らされるとは!党や主張は違えど、いや、むしろ違うからこそ!これからも良き好敵手として競い合っていきたいものです!」

 

 

 そう言って朗らかに手を差し伸べてくる。戦った相手にここまで余裕のある態度でいられるのは、勝者の特権か。否、もしも藤鷹が勝ったとして、例え上辺のみであろうとも熱海を認めるような言葉は口に出来なかっただろう。現に先の戦闘でも上下を誇示せんと慢心したが故に敗北したと言っても良い。

 熱海常夏こそ、高みにいるのだ。

 

 

「…やはり貴様のような総理が必要とされるのだろうか。この国は私の導きなど求めていないというのか…」

 

 

 藤鷹は伏したまま項垂れる。その鋭い目に平素から宿している闘志は無く、すっかり萎んでしまっている。そんな藤鷹を見て、熱海は憐れむような目で一瞥した後、差し出した手を仕舞って去っていった。

 

 

 

 

 1年後、藤鷹は再び指輪に選ばれた。どうやら熱海さえも倒した優勝者が巡ってくるまで待っていなければならないようだ。…負けた勝負をもう一度繰り返して今さら何になる?勝つことを考えていたときは総理大臣となってこの国を高みに導こうと張り切っていたが、自分よりも強い者が蔓延る勝負で、何か得るものがあるか?その答えが出ないまま、藤鷹の番が訪れた。礼儀のなっていない態度で訪ねてきたその若者は、大それた志など持っていなさそうなガラの悪いチンピラに見える。ただ、その目には確かな光が灯っている。

 

 

「君は数多くの強敵に勝ち、それでもまた指輪争奪戦をやり直しに来たそうだな。そんな君の理想はなんだ?君にとってのより良い明日とはなんだ?」

 

 

 そんな問いを、藤鷹は投げかけた。納得のできる回答ならば、とっとと指輪を譲ってしまおうかと思っていた。その問いに相手は、遠野吠はこう答える。

 

 

「俺は所詮流れ者、わりと負ける勝負もあるし、今この時を生きていくのに結構精一杯だ。だがよ…そうやって精一杯生きて、こうやって思いっきり戦い合えば、明日の俺はちょっとは良くなってるもんだと思うぜ」

 

「それも…そうか」

 

 

 志や理想というにはあまりにも曖昧で、ただ、戯言とも吐き捨てがたい答えが、塞がっていた視界を晴れさせていく気がした。

 

 

「それに俺のダチも言ってたぜ、『人生は上り坂、つらくて苦しいけど今日は昨日より高いところにいる』って」

 

 

 それは、熱海が藤鷹を降した直後の街頭演説で使っていた言葉だった。案外したたかな熱海は藤鷹の主張すらも取り込んで己の人気へと昇華していたのだ。藤鷹はその事を思い返すと、段々と頭に血が昇っているのを自覚した。そもそも自分に勝っておきながら指輪争奪戦に敗れたことを思うと余計に腹が立った。そしてあの日、闘志を失った藤鷹に対して落胆の目を向けた事に、ようやく血が逆立った。そんなにも歯応えのない相手が哀れか、ああいいだろうならば何度でも挑み直そう。やたら持て囃される熱海の政策にも目につく甘さに耐えかねて来たところだ。前回優勝者だろうと知ったことか、熱海常夏への再戦の権利は自分が貰い受ける。そうでなくとも次の選挙は覚悟しておくといい、我らが超軼絶塵党はこの国を良くするため、国民を味方に付けて再び現与党と相見えよう。

 

 

「…ならば私も精一杯叫ぶとしよう!私の思い描く高みを!そして思いっきり向き合うとしよう!国民が求める理想に!」

 

 

 そして吠と藤鷹はそれぞれのテガソードと指輪を構え、その合図を唱える。

 

 

「「エンゲージ!!」」

 

 センタイリング!ジェットマン!!

 

 クラップユアハンズ!ゴジュウウルフ!!

 

 

 2人の赤き戦士が向き合えば、今日もここで小さな戦いが幕を開ける。

 

 

「いざ掴め!ナンバーーー!ワーーーーーン!!」

 

 Go!Go!ユニバース!!

 

「国民の声と我が理想、2つ合わせて一対の翼!君たちの胸に、レッドホーク!共に飛び立とう、さらなる高みへ!!」

 

「フレーッ!」

 

 Go!Go!ゴージュウジャー!!

 

「高みとかよくわかんねぇが、聞きたきゃ聞けよ俺の遠吠え!はぐれ一匹、ゴジュウウルフ!…消費税は結構高えと思う!」

 

 

「ナンバーワンバトル!レディー…ゴー!!」

 

 

〈了〉

 




レッドホーク
指輪/センタイリング ジェットマン
契約者/藤鷹(ふじたか) 与一(よいち)
職業/超軼絶塵(ちょういつぜつじん)党党首/国会議員
願い/総理となってこの国をより良く導く。
降着(タッチダウン)」の能力を使い、空中を足場にして留まることが出来る。元から備わった飛翼と併せて予測不可能の三次元機動による圧倒的な制空性能を誇り、文字通り優位に立つ戦法が得意。ドンモモタロウと戦うが意表を突かれて敗北し、指輪争奪戦から脱落した。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。