ユニバース戦士補ジュウ計画   作:壱肆陸

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本日から3作、マジレンジャー編をお送りします。

今回はキュウレンジャーとのミックス作、
未来野ユノンさんの作品です!
(X:@asukyoon)


勇気で救う世界と家族

 指輪争奪戦。それは、願いを掲げる者達の仁義なき戦い。時に裏切り、時に協力し、己の願いを叶える戦いである。

 そんな指輪争奪戦に、また一人身を投じる者が現れた。

 

「んー!いい朝だ」

 

 彼の名は木杖悠介(きじょうゆうすけ)、何の変哲もないただの大学生である。

 

「レポートよし、資料も持った。スマホと………サイフ。よし、今日も勉強頑張るかぁ」

 

 そう言って彼は住んでいるアパートのドアを開ける。普段と代わりのない廊下………そこにはいつも見ない物が落ちていた。

 

「なんだこれ?指輪?」

 

 金色のレリーフの中に絵が描いてある。不思議な指輪だった。

 

「誰かの落し物か?」

 

 指輪を拾い上げると、今まで感じたことの無い、吸い込まれるような衝撃が走り、目の前には巨人がいた。狼を象った顔を持つ、赤と金の巨人。

 

『願いを言え』

 

 先に口を開いたのは巨人だった。と言っても、開く口は見当たらないのだが。

 

『我が名はテガソード。全ての指輪を集めた者の願いを叶える。木杖悠介。私と契約しろ。そして、願いを言え』

「何で俺の名前知ってんだ?てか、急に願いを言えって言われても…………あっ」

 

 その時頭に流れた、忌まわしい過去。

 木杖悠介は5年前、温泉旅行に出かけていた両親と妹を飲酒運転の車によるひき逃げで亡くしている。悠介は当時所属していた野球部の練習試合でどうしても予定が合わず、遠慮する家族を説得して旅行に行かせた。普段から疲れている両親と、いい大学に入ると中学生ながら勉強に精を出していた妹を想っての行動だった。

 そしてそれが、悲劇を招いたのだ。

 悠介は自分を責めた。あの時旅行に行かせなければ。家族の言う通り、旅行を延期させていれば。

 後悔してもしきれなかった。そして今も、あの出来事の後悔は、まるで呪いのように付き纏い、毎日夢を見るほどだ。

 この悪夢から醒められるなら……………

 

「ホントに、どんな願いでも叶うのか?」

『どんな願いでも叶う。富、地位、名声。指輪争奪戦に参加し、全ての指輪を集めれば何でも叶えられる』

「そんなものいらない………俺が欲しいのは家族だ。死んだ両親と、妹を………生き返らせる………それが俺の願い。はぁ…大学はしばらく休みだ。届け出は……いいや。めんどくせぇ。テガソード!契約だ。俺の願いは家族を生き返らせること!力を寄越せ!テガソード!」

 

 そしてそれから、悠介の戦いが始まった

 

 悠介の姿は商店街の花屋にあった。

 中に入ると様々な花の香りとドアに付けられたベルの音が悠介の感覚を刺激する。花屋には初めて来たが不思議と心地良さを感じる。

 

「いらっしゃいませ!どんな花をお探しですか?」

「ああ、今日は花じゃないんですよ。…………あなたのその指輪、貰えないかなと思って」

 

 定員の手には悠介が拾ったものと同じ、金色の指輪がはめられていた。指輪には歯車のようなものが描かれている。

 

「指輪………ああ……そうですか、なるほどそういう事………おいそれとは渡せませんよ。僕にだって、叶えたい願いがあるんですから」

「なら、表に出ましょうか。渡してくれないなら、戦うしかないですよ?」

「いいでしょう」

 

 ここは人が多いとのことで、郊外の廃工場へと二人は場所を移した。ずっと使われていないのだろう、所々錆びていて、一斗缶や鉄骨が放置されている。ホコリ………と言うより砂で床が見えない。とても寂れた場所だった。

 

「ここなら誰も来ないでしょう」

「早速始めますか」

「「エンゲージ!」」

『『センタイリング!』』

 

 テガソードから流れる音と共にステップを踏む。指輪の戦士の戦いの火蓋は切って落とされた。

 

『ゼンカイジャー!ババン!ババン!ババン!ババン!ババババーン!』

『マジレンジャー!マージ・マジ・マジーロ!』

「こっちから行かせて貰いますよ!どりゃああああああああ!!!!」

 

 店員のギアトリンガーが火を吹く。ギアトリンガーは手回し式のガトリング銃。大量の弾丸が悠介を襲う。

 

「なんだこれ近づけねぇ!?」

 

 当たらないよう走って逃げるがその凶弾の雨は徐々に悠介に迫っていく。

 

「うわあああああっ!?」

「やっぱり遠距離攻撃は強いね。これは僕の勝ちかな」

 

 弾丸が悠介の背中を捉えた。大量の弾丸を食らった悠介はあまりの威力に吹き飛ばされてしまった。

 

(痛え……これが戦いか…けど…父さん達に比べたら…!)

 

 背中の痛みを堪えつつ、何とか立ち上がる。その手にはマージフォンが握られていた。

 

「魔法の力、見せてやろうじゃねぇか」

「喰らええええええええ!!!」

 

 再びギアトリンガーから放たれた弾丸が悠介を襲う。しかし、避ける素振りは見せなかった。

 

「諦めたんですか!?」

「ふっ、そんな訳ないだろ!ジンガ・マジュナ!」

 

 ジンガ・マジュナは防御の呪文。魔力で作られたバリア、マジカルカーテンによりいかなる攻撃も防ぐことができる。

 当然ギアトリンガーの弾丸も防ぎ切ることができた。

 

「次はこれだ!マジュナ・マジュナ!」

「な!?消えた!?」

 

 マジュナ・マジュナは姿を消す呪文。こうなれば相手は悠介を知覚することはできない。

 

「はぁっ!」

「ぐあっ!?」

 

 背後から現れた悠介の渾身の一太刀が店員を襲う。もろに受けた店員は地面に倒れ伏した。これは勝負あったか。

 

「こんなとこで終われない!」

『十八番!カクレンジャー!』

「忍法!消身之術!」

「えっ!?消えた!?」

 

 カクレンジャーギアで発動した消身之術はその名の通り霧に隠れて姿を消す忍法。悠介は透明化に霧隠で返されたのだ。

 

『三十四番!ゴセイジャー!』

「天装!」

『ROPLANT』

「えっ?はっ!?」

 

 次はゴセイジャーギアの力で蔦で絡め取られ動けなくなった。これでは逃げようにも間に合わない。

 

「必殺全開!」

「くっ…クソッ!」

『ヒーロー!スーパーゼンカイタイム!』

「ゼンカイフィニッシュバスター!」

『ダイゼンカイ!』

 

 凄まじいビームが悠介を襲う。

 

「………フッ」

「終わりだー!」

 

 ビームが悠介の体を貫き、巨大なエンブレムが押し潰す。大きな爆発の後、そこには何も残っていなかった。

 

「え!?い、いない!?跡形もなく消えてる!?」

「マジ・マジ・マジカ!レッドファイヤーシュート!」

「ぐあーーーーー!」

「ふぅ……」

 

 爆発四散したかに思えた悠介は、再び背後を取り必殺の回し蹴りを決める。

 その足は見事に店員を捉え、吹き飛ばした。

 

「な、なんで………」

「マージ・マジュナ。瞬間移動の魔法だ。魔法はな、マージフォンだけじゃなくて、マジスティックでも使えるんだよ」

 

 悠介は、ゼンカイフィニッシュバスターが当たる直前、どうにかマジスティックを手に持ち、ギリギリで魔法を使うことに成功したのだ。かなりギリギリだった為少しビームが当たっており、胸から煙が出ている。

 

「これで終わりだ!マージ・ゴル・マジカ!ブレイジングストーム!」

「うわあああああああああ!!!」

 

 炎の竜巻を纏った斬撃が、逃げようと立ち上がった店員を容赦なく襲う。こうして一人、指輪の戦士が脱落したのだった。

 ゼンカイジャーリングの持ち主だった店員のテガソードは消え、彼は指輪争奪戦からその身を引くこととなった。

 

「俺の…願いが…」

 

 落ちていたゼンカイジャーリングを拾い、変身を解いた彼は一つため息を吐いた。これが初戦闘だ。疲れたのだろう、無理もない。

 

「まずは一つ。ごめんな、これも家族のためなんだ」

 

 ”指輪を持つ者は引かれ合う”指輪の戦士を探すのにそう時間はかからなかった。

 だがそれは、他の指輪の戦士も悠介を探すことが容易だということでもある。

 

「絶対に生き返らせる……待っててくれ、父さん、母さん、真帆………」

「よお!悠介!」

「!?あ!新田先輩!」

 

 手を振りながらこちらに走ってくる男がいる。彼の前に現れたのは、大学の先輩である新田幸助(にったこうすけ)だった。

 

「どうしたんですか?」

「いやぁ、お前が花屋の店員とどっか行くの見かけてさ、追いかけてきたんよ。凄かったな!めちゃくちゃ炎纏ってさ!かっこよかったぜ!」

「そんな…そんなことないです。俺は……」

「謙遜すんなよ!凄かったぜ!あんだけすげぇ力なんだ。お前にも本気で叶えたい願いがあるんだなってわかったよ」

「お前にも?どういうことですか?なんで俺にも願いがある事を知ってるんですか?…………まさか、もしかして先輩も指輪の戦士なんですか?」

「当然だろ!でなきゃお前を追いかけてこんなとこまでこねぇよ。……なぁ、悠介、お前の指輪くれよ。俺だって…願いがあるんだからさ。エンゲージ!」

『センタイリング!』

 

 軽快なリズムと共に銀のテガソードを打ち鳴らす幸助。

 ついさっき聴いたばかりのリズムは、再び悠介に戦えと言わんばかりに鳴り響く。

 

『キュウレンジャー!セイ・ザ・チェンジ!』

「構えろ。指輪の戦士が出逢えば二つに一つ。大人しく渡すか、戦うかだ」

「………わかりました。後悔、しないでくださいよ!エンゲージ!」

『センタイリング!』

 

 悠介もまた、軽快なリズムと共に銀のテガソードを打ち鳴らす。例え先輩だろうが容赦はしない。

 

『マジレンジャー!マージ・マジ・マジーロ!』

「俺は………勝たなきゃならない。先輩、たとえ貴方でも!」

「ああ、わかってる。願いのためだ。行くぞ!悠介!」

 

 こうして二人の戦いが始まった。

 

「ジー・ジジル!マジスティックソード!」

「キューソード!ハァッ!」

 

 お互い得意とする剣で切り合う。ぶつかるマジスティックソードとキューソードから火花が散る。激しい鍔迫り合いとお互いが切り合う事で生じる火花が戦いの壮絶さを物語っていた。

 

「こいつでどうだ!」

『イテキュータマ!セイ・ザ・アタック!』

 

 イテキュータマの力で無数の矢が悠介を襲う。が、悠介は意に介してなかった。

 

「ジンガ・マジュナ!」

 

 先程も使った防御魔法により、数千はあるであろう矢が弾き返される。遂に一つも矢が当たることはなかった。

 

「お返しだ!ジルマ・マジーロ!」

 

 放たれた矢をマジレッドの最も得意とする魔法、錬成魔法により無数のナイフに変え、先程まで矢だったものが幸助に襲いかかる。

 

「フン!」

『タテキュータマ!セイ・ザ・アタック!』

 

 ここで今度は幸助がタテキュータマにより無数のナイフを弾き飛ばす。

 

「やっぱり近距離の方がやりやすいか……なら!」

『フタゴキュータマ!セイ・ザ・アタック!』

「は!?そんなのありかよ!」

 

 フタゴキュータマの能力は分身。二人のシシレッドが悠介を襲う。流石の悠介も二対一による猛攻に押されて行った。

 

「「オラァッ!」」

「ぐ…うう………」

「悪いな。これもあいつの為なんだ」

 

 二つのキューソードの切っ先が悠介を捉え、その頭に振り下ろされる。

 

 ガキンッ

 

 聞きなれない音に幸助の手が止まる。

 

「………これは!」

 

 そこにあったのは、マジレッド………ではなくをバラバラに砕けた岩だった。

 

「マージ・ゴル・マジカ!アッシュブレイジングストーム!」

「な!?うわぁっ!?」

 

 炎の斬撃が幸助を襲う。その力に分身体のシシレッドは灰と化した。

 マジレンジャーリングの固有能力、灰化(アッシュ)。この能力を以てすれば、業火で対象は灰と化す。

 

「ぐっ………どういう事だ………」

「簡単なことです。貴方に斬られる直前、地面にジルマ・マジーロの呪文で俺そっくりの人形を作ったんです。そして、マジュナ・マジュナの呪文で姿を消して、先輩の背後を取ったという訳です」

「だが、俺は灰にならなかったな」

「だからちょっとびっくりしてるんですよ」

「俺の指輪の能力、”幸運(ラッキー)”のおかげかな………」

「ともあれ、ここで先輩は敗退です」

 

 先程とは変わって、マジスティックソードの切っ先が幸助を捉える。しかし、幸助は動じない。

 

「知ってるか?俺には…運ってもんが付いてんだ。よっしゃラッキー!」

「え?うわっ!」

 

 無数の”飛ぶ拳”が悠介を襲う。余りの拳の量とその飛んでくる速度に堪らず悠介は吹き飛ばされてしまった。

 その拳が飛んできた方向にいたのは、ステップを踏んでいるバクのような怪物だった。

 

「どうやら悪い運の方だったみたいだな」

「あー、戦いたい、戦いたい!なのに何故だ!誰も俺に戦いを挑まねぇ!」

「なんなんですか?コイツ」

「お?お前ら戦ってんのか!いいねぇ、俺も混ぜろよ!」

「こいつはノーワン!人を取り込んで具現化する化け物だ!」

「なんで先輩がそんな事知ってるんですか?」

「さあな………」

 

 実は幸助はゴジュウウルフとトレジャーハントノーワンの戦いを見ていた。その時、中から人が出てきたのを見て疑問に思い、パーリーピーポーノーワンやおせっかいノーワンの戦いも見て確信を得ていたようだ。

 

「とにかく!中の人を助けるにはナンバーワンバトルとかいうので勝たなきゃならねえ!その上でノーワンから中の人を引きずり出すんだ!」

「中の人を助けなきゃだし、このままだと二人揃ってやられるかも…先輩!休戦協定を結びましょう!」

「ああ、俺もそう思ってた!」

「お?おお?バトルか?いいぜいいぜ!やるぞオラァ!」

 

 すると、目の前にリングが現れた。周りには応援団のような人達が太鼓を叩いたり旗を振っている。

 これは、ノーワンとユニバース戦士の戦いの合図である。

 

『いざ掴め!ナンバーワン!』

『ゴー!ゴー!ゴジュウジャー!』

「弱え奴に興味はねぇ!強え奴だけかかってこい!豪気の拳、ボクシングノーワン!てめぇの拳、砕いてやるぜ」

 

『フレー!』

「胸の勇気を力に変えて!」

「己の運を信じて進む!」

「マジレッド、木杖悠介!」

「シシレッド、新田幸助!」

「「願いの為に悪を討つ!」」

『ボクシングナンバーワンバトル!レディー!ファイト!』

 

 戦いが始まったが、ボクシングノーワンは動こうとしない。

 

「ん?なんでだ?」

「これはボクシング!グローブが無いやつと試合はせん!」

「な、なるほど。先輩、ここは俺に任せてください」

「な、どういうことだ?」

「いいですから。俺が合図したら、中の人を助けてください。ジー・ジー・ジジル」

 

 悠介がマージフォンを構えて魔法をかけると、グローブ型のアイテム、マジパンチが装備された。これにより、ボクシングノーワンとのナンバーワンバトルの条件を満たした。

 その瞬間、ボクシングノーワンが目にも止まらぬスピードでストレートを放ってきた。

 

「うわっ!」

「まずは貴様からか!どんなもんか、かかってこい!」

 

 ボクシングは一対一。幸助は強制的にリングから放り出された。

 4本の腕から繰り出される圧倒的な連撃に、瞬く間に悠介はボロボロになっていった。

 

「つ、強い…!」

「オラオラどうした!防戦一方じゃ勝てねぇぞ!秘技・百裂連撃!」

 

 猛攻に耐えきれず、モロに大量のパンチを食らった悠介は遂に倒れ伏してしまった。

 

「レフェリー!カウント!」

 

 レフェリーの格好をしたアーイーがカウントを進める。負ければ何があるかわからない。

 

「立ち上がれ!悠介!」

 

 悠介は深刻なダメージを負いつつもなんとか立ち上がろうとする。その手足は震えている。

 何度も倒れそうになりながらも何とか立ち上がった。しかし、今にも倒れそうな程ふらついている。

 

「魔法…何か魔法を………これだ!マージ・マジカ!」

 

 呪文を唱えると、ありえない程のパワーが漲ってくる。疲れも痛みも吹き飛ぶほどだ。

 

「滾る…滾る!力が溢れる!うおーーーーーーーー!!!!」

「しぶといヤツめ。続けるぞ!」

「オラァッ!」

「なっ!?ぐおおおおおおおおおお!?」

 

 先程とは打って変わって、悠介がボクシングノーワンを押し始める。元々ゼンカイザーと幸助との戦いで消耗してたのだが、魔法でそれを帳消しにしたことにより、本来の力が出せるようになったのだ。

 

「なんという連撃…!すごい!すごいぞ!」

「トドメだ!ハァッ!」

 

 悠介が空高く飛び上がる。その手のマジパンチには熱い炎が宿っている。

 

「マジ・マジ・マジカ!レッドファイヤースクリューアタック!」

「一拳入魂!鬼突き!」

 

 全身に炎を纏い、ボクシングノーワンに錐揉み回転しながら突撃する、レッドファイヤーとファイヤースクリューアッパーの合わせ技だ。ノーワンの攻撃を躱したその一撃は、ノーワンの体を削り取っていく。

 

「今です!先輩!」

『キュウレンジャー!フィニッシュ!』

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 

 テガソードを使い、ボクシングノーワンに取り込まれた人を助け出す。

 

「ぐうっ…く、ククク……最後にいい試合が出来た……こんなにも清々しい気持ちは久しぶりだ!はははははははははははは!!!!」

 

 宿主を失ったボクシングノーワンは力尽き爆発四散した。何とか取り込まれた人を救い出し、一安心、と言ったところだ。

 そして、試合終了のゴングが鳴り響くのだった。

 

『WINNER!MAGI RED!&SHISHI RED!』

 

「後は取り込まれた人をどうするかだが」

「俺に任せてください」

 

 こうしてボクシングノーワンから救い出された人はマージ・マジュナで一番近場の公園に飛ばされ、何とか助かったのだった。

 

「さて………俺たちの戦いの続きをしようか」

「待てぇい!」

「「!?」」

 

 野太い声とともに巨大なロボット………アイアイザーが現れる。その視線は紛れもなく今しがたボクシングノーワンを倒した二人に向けられていた。

 

「次から次へと…」

「よくも俺のライバルその一を…!許さん!指輪を奪うついでにあいつの元へ送ってやる!ボクシング隊長リュウ・ソレート、推して参る!」

 

 巨大な鉄の拳が悠介達がいる場所へと打ち付けられる。当たればひとたまりも無い。ただひたすらに逃げ続けるしかないのだ。

 

「先輩!幸運(ラッキー)で何とかならないんですか!?」

「くっ…よ、よっしゃラッキー!」

 

幸助が叫ぶとどこからともなくもう一体のアイアイザーが現れた。

 

「ルパ・レッパー!?どうしてここに!?」

「ボクシングノーワンの敵を討ちにきたのさ!行くぞライバル!」

「悪化してるじゃないですか!」

「くっそぉ!」

 

 そう、キュウレンジャーリングの固有能力、幸運(ラッキー)は、必ずしもいい事が起こるわけではない。一定確率で”幸運”が”不運”に変わるのだ。

 

「今日の星座占いは1位だったんだ!次こそは!よっしゃラッキー!」

「お?おおおおおお?」

「キター!」

『キュウレンオー!』

 

 どうやら運が「いい方」に傾いたらしい。

 円の中から巨大なロボットが現れた。名はキュウレンオー。キュウレンジャーと共に戦い、宇宙を救ったロボットだ。

 

「よっしゃラッキー!行くぜ!はぁっ!」

 

 キュウレンオーが動き出す。カジキスラッシャーによる斬撃で、徐々に二体のロボットを押していく。

 が、コンビネーションでは敵の方が上らしく、分散してからのヒットアンドアウェイで今度はキュウレンオーが徐々に押されていく。

 

「ぐっ……このぉっ!」

 

 カメレオンタングを振り回して牽制するがそれすら掻い潜ってくる。二人はかなりアイアイザーの扱いに長けているらしい。

 幸助がアイアイザー相手に苦戦している中、悠介は頭を悩ませていた。

 

(どうすればいい……俺には何も出来ないのか………俺は……)

 

 マジレンジャーリングにロボットを召喚する力などない。幸助を助けられない自分の小ささに嫌気がさしていた。

 

「そうだ!魔法!何か………これだ!マージ・マジ・マジカ!………クソッ、なんで何も起きないんだ!俺も!戦わなきゃ!先輩だって消耗してるはずだ…このままじゃ負けちまう!」

 

 自分の小ささに打ちひしがれている最中も、徐々に徐々に、キュウレンオーは打ちのめされていく。

 

「クソッ…こんなのどうすれば………ぐあっ!」

 

 遂にキュウレンオーは倒れ伏した。押さえつけられて身動きが取れない。

 

「また…失うのか…?あの時みたいに、俺のせいで…いや……俺はもう二度と、大切な人を失いたくない。俺はもう二度と!あんな思いしたくない!頼む!テガソード!俺に……俺に大事な人を守る力をくれ!」

『願いを変えるということか』

「そうだ!確かに家族にもう一度会いたい。会って目いっぱい抱き締めたい!けど…あの時のあんな思いをするくらいなら…………」

『…………願いの変更は認めない』

「テガソード!」

『お前にはやれることがある』

 

 そう言ってテガソードは姿を消した。テガソードにさえ見放された悠介は、絶望に打ちひしがれていた。

 

「やれることってなんだよ………出来ることなんかなにも………いや、そうか。俺はマジレッド!なら、魔法で少しでも奴らの気を逸らす。そうすれば………木よ!柱に変われ!ジルマ・マジーロ!」

 

 呪文を唱えると、アイアイザー達は鉄骨の柱に囲まれた。自慢の拳で柱を壊そうとするが、中々壊れない。

 

「なんなんだこれは!抜け出せねえ!」

「その質量の鉄骨をそう簡単に壊せるわけないだろ!先輩!逃げて!」

「いや、今が好機!ぶっ潰す!」

(先輩ってチャンスと見るとすぐ突っ走る…俺がブレーキ役にならなきゃ…)

 

 プルルルル、プルルルル、プルルルル

 ふと、マージフォンに着信があった。マージフォンを開くと、ボタンがキラリと光った。

 

「なんだ………これを使えってことか?」

 

 二・〇・〇・三の順に押し、呪文を唱える。それは、この状況を打開する最適の呪文だった。

 

「出でよ!魔神の王!ジルマ・マジ・マジ・ジジル!」

 

 上空に現れた巨大な魔法陣。その中から巨大な魔神・マジキングが姿を表した。魔神の王、その名に相応しい佇まいである。

 

「これで先輩を助ける!」

 

 マジキングに乗り込み、アイアイザーと対峙する。どうやら、鉄骨を粉砕して脱出したようだ。

 

「二人に増えたからなんだ!ぶっ飛ばす!」

「やれるもんならやってみろ!ジー・マジ・ジジル!魔法剣キングカリバー!」

 

 呪文と共に現れたキングカリバー。腰から引き抜いた王の剣のその切っ先が二体のアイアイザーに向けられる。

 

「てめえさえいなければ!」

 

 そう言うと、リュウ・ソレートが乗るアイアイザーの腕が変形し、砲身が現れる。普段は金属製のグローブを付けたような腕だが、必要に応じて遠距離攻撃と使い分けているようだ。

 

「蜂の巣にしてやる!」

 

 そう言うと無数の砲弾が放たれる。弾が尽きるまで撃ち続ける。爆発による土煙でマジキングは覆われてしまった。

 

「悠介!」

「こんなもんか?」

 

 土煙が晴れ、そこには翼で砲弾をガードし、無傷で立っているマジキングがいた。

 

「き、効いてない!?ありえん!」

「今度はこっちの番だな。マジカルショータイム!」

 

 マジキングが地面に魔法陣を描く。その中から無数のキングカリバーが現れた。

 ”ファントムイリュージョン”

 無数のキングカリバーがアイアイザーを襲う。

 

「ぐうっ………!」

「先輩!立ってください!決めますよ!」

「お、おう!」

「「はああああああああああ!!!」」

 

 キングカリバーとカジキスラッシャーによる斬撃の嵐がアイアイザー達を襲う。

 

「「おらぁ!」」

 

 最後に放たれた渾身の一限で、遂にアイアイザーは倒れ伏した。

 

「決めるぞ!悠介!」

「はい!」

 

 空に向けたキングカリバーから放たれた光が雲に巨大な魔法陣を描く。

 

「先輩!ちょっと堪えててくださいね!」

「はぁ!?」

 

 翼を広げたマジキングが魔法陣に向かって飛び上がる。

 魔法陣を抜けると、そこにはフレイジェル、ボルジェル、スプラジェル、ウインジェル、グランジェルの姿があった。彼らは天空聖者、マジレンジャー達に力を貸した天空聖界マジトピアの住人である。

 

「力を貸してくれるか?」

 

 天空聖者は静かに頷く。悠介の事を認めてくれたのだろうか。

 

「先輩!いいですよ!」

「ぐぬぬぬ…でぇいっ!はあっ!遅せぇんだよ!」

 

 幸助は最後の力を振り絞って立ち上がったアイアイザーを抑えていた。やはり二人を纏めて相手するのはキツそうだった。

 

「キュウレンオー!スターブレイク!」

 

 キュウレンオーのエネルギーがカジキスラッシャーに蓄積され、光り輝いていた。

 

「マージ・ジルマ・マジ・マジカ!キングカリバー天空魔法斬り!」

 

 魔法陣から現れたマジキングが五人の天空聖者の力を纏い、急降下しながらアイアイザーに斬りかかる。

 

「「うおりゃあああああああああああああああ!!!!!」」

 

 2人の斬撃がアイアイザーを切り裂く。脱出用のサークルは砕け、金アーイー達は逃げる術を失った。

 

「負けた…仕方ない…か。あの世でボクシングノーワンとひたすらスパーリングしてやろう」

「俺も混ぜろよ、ライバル」

「「試合終了ー!」」

 

 この言葉を最後に、アイアイザーは爆発。金アーイーの二人もボクシングノーワンの元へ旅立つこととなった。

 役目を終えたロボ達は悠介達を降ろし、再びロボの墓場に戻って行った。

 

「さて、それじゃ、指輪争奪戦の続きをやりますか」

「ま、最後に笑うのは俺だ」

「大分消耗してるくせに」

「悠介こそ」

「「エンゲージ!」」

 

 二人は剣を構える。最後の一撃、全力を振り絞って相手を斬り伏せる。

 先輩後輩もない。己の願いのために剣を振るう。

 

『ギャラクシー!』

「レグルスインパクト!」

「マージ・ゴル・マジカ!アッシュブレイジングストーム!」

 

 しし座の力と炎の魔法がぶつかり合う。凄まじいエネルギーのぶつかり合いの衝撃で廃工場にはヒビが入り、草木は吹き飛ばされる。

 

「彼女を救う!」

「家族を生き返らせる!」

「「あああああああああああああああああああ!!!!!」」

 

 そして……………

 

 夜、家に帰るその男の手にはキュウレンジャー、マジレンジャー、ゼンカイジャーの指輪が握られていた。

 

「父さん、母さん、真帆………」

 

 指輪争奪戦、シシレッドとマジレッドの戦いはマジレッド………悠介の勝利で終わった。戦いの後、幸助は清々しい表情で倒れていた。

 

「効いたぜ、かなりな…」

「先輩、もしかして美奈さんのこと…」

 

 幸助の願いは、彼女である美奈の目を覚まさせること。3ヶ月前に誰かに階段から突き落とされ、意識不明の重体になっていた。

 

「そうだ、ゲホッ!結局俺は何もしてやれなかったな。だが、後悔はしてない。お前の家族と違って美奈は生きてる。生きてればチャンスはある。お前の願いの方が…大事だ」

「願いに大事も大事じゃないもないです!でも、願いは一つだけ…俺は…家族を………」

「アイツはきっと目覚める。俺はラッキーだからな。だから、お前の願い、叶えろよ」

「…………はい!」

 

 

 

「先輩の分まで…」

 

 その悠介の後ろに怪しい影がつけている事に、彼は気づかなかった。そして………

 

「がっ!?」

 

 後ろから思いっきり頭を殴られた。地面に倒れた衝撃でリングが地面に転がる。

 

「誰だ…ぐっ…」

 

 意識が朦朧として視界がぼやける。さらに腕を踏みつけられた。これでは指輪を拾えない。

 

「これは貰っていくよ」

「ま、待て…!」

 

 指輪を拾った男はこちらを一瞥して去っていった。

 テガソードは消え、悠介は指輪争奪戦から脱落したのだった。

 その男の顔を見た悠介は、こう呟いた。

 

「灰色の…目………」

 

 

 

 

 数ヶ月後……

 悠介の姿は墓地にあった。

 

「父さん、母さん、真帆、俺もそろそろ就職先探さなきゃかな。でもしばらく指輪争奪戦で休んでたし単位取れるかなぁ」

「そこまで休んでた期間は長くないし大丈夫だろう」

「先輩!」

 

 後からやって来た幸助が悠介の両親と妹の墓前で手を合わせてくれた。

 

「どうしてここに?」

「買い物行こうとしたら見かけてな。俺の家すぐそこだから。…………指輪、残念だったな」

 

 あの後必死に『灰色の目』の男を探したが、ついぞ見つからなかった。

 

「もう何ヶ月も前のことなんで大丈夫です。それに、家族が居なくても、俺には先輩や大学の友達がいますから。寂しいけど、みんながいれば寂しくないです」

「そっか………」

「美奈さんは?」

「おう、今リハビリ中だ。相当頑張らなきゃだけどな。けど、経過は良好。リハビリ次第では来月には退院だってさ」

 

 幸助の恋人、美奈はこの数週間前に目を覚ました。もう二度と目覚めないとまで言われていたのに、奇跡に等しかった。

 

「もしかしたら、どこかで幸運(ラッキー)が発動してたんですかね」

「最初からそうすりゃ良かったな」

「いや、万が一悪化したらどうしてたんですか」

「確かに。ん?」

 

 不意に空を見上げると、こちらに向かって飛んでくる光が二つ。その光の主は二人の眼前でふわふわと浮いている。

 

「これって………指輪!?」

「どういうことだ…?指輪争奪戦は終わったのか?」

「でもまあ」

「ああ、願いが叶うかもな。…………ほら」

 

 幸助は悠介にキュウレンジャーリングを差し出す。自ら指輪争奪戦をリタイアしようと言うのだ。

 

「い、いや、いりませんよ!」

「俺の願いは叶った。次はお前の番だ」

「…………なら、こうしましょう。先輩の願いを俺と同じにしてください。俺、もっかい先輩と戦いたい。そんで、もう一回勝ってやるんです!それに、二人で同じ願いにした方が、叶う確率上がるじゃないですか」

 

 幸助は一瞬驚いた顔をしたが、フッと笑うと指輪をポケットに仕舞った。そして、こう続けた。

 

「それならそうしよう。願いもそうだが、実を言うと俺ももう一度お前と戦いたい。戦って、勝って、願いを叶えたい。俺は………ラッキーな男だからな」

 

「でも先輩って美奈さんのことになるとすごいですよね。惚気が。事故に遭う前も凄かったのに目が覚めてからは更に多くなって…」

「うるさいなぁ」

「あ、そういえば美奈さんも惚気話してくるんですよ。俺の身にもなってくださいよ。ほんっと、おしどり夫婦ですよねぇ」

 

 悠介はクスクスと笑いながら幸助をからかう。幸助はというと、顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。

 

「う、うるせえええええええええ!!!!ぶっ飛ばす!エンゲージ!」

『センタイリング!』

「ちょ!?他人の家族の墓前で何しようとしてるんですか!」

「うるせぇ!俺の願い、お前をぶっ飛ばすに変更だ!」

「めっちゃいい話て締めくくろうとしてたのに!」

 

 シシレッドに変身した幸助がキューソードを構えて向かってくる。どうやら、まだまだ二人の戦いは終わらないらしい。

 まあ次の指輪争奪戦は遠野吠との総当たり戦。それまでは例えどちらが勝っても指輪は二人の手元に残る……はず。

 そんなことは知らず、ただ二人はお互いの願いのために、遠野吠との戦いまでひたすらに戦い続けるのだった。




マジレッド
指輪/センタイリング  マジレンジャー
契約者/木杖悠介(きじょうゆうすけ)
職業/大学生
願い/死んだ家族を生き返らせる
 小さい頃に両親と妹を亡くし、親戚に引き取られて成長した。
 自分のせいで家族が死んだことに負い目を感じ、毎日のように死んだ家族の夢を見る。そんな中マジレンジャーリングを拾ったことで指輪争奪戦に参戦。
 探し当てたユニバースゼンカイザーを倒した後、大学の先輩であるユニバースシシレッドと交戦。勝利を収めるが帰り際に灰色の眼の男に襲われ指輪を強奪される。これにより指輪争奪戦から脱落した。
指輪能力/灰化(アッシュ)
アッシュフレイムで周囲を焼き尽くす他、ゼンカイザーをゼンカイザーブラックへ変貌させることが出来る

シシレッド
指輪/センタイリング  キュウレンジャー
契約者/新田幸助(にったこうすけ)
職業/大学生
願い/意識不明の彼女を生き返らせる
 悠介と同じ大学の1つ上の先輩。卒業と同時に彼女と同棲するために就活中。今は居酒屋とコンビニのバイトを掛け持ちしている。
 3ヶ月前に階段から突き落とされ、意識不明の重体になった彼女を目覚めさせるために指輪争奪戦に参加。
 悠介に勝負を仕掛けるが、激闘の末敗北。指輪争奪戦から脱落した。
指輪能力/幸運(ラッキー)
 発動すると自分に幸運が降りかかる。しかし、その幸運は一定確率で不運に変わる。

ゼンカイザー
指輪/センタイリング  ゼンカイジャー
契約者/花屋の店員
職業/花屋の店員
願い/花好きな妻が欲しい
 街角の小さな花屋を営む若い男。共通の趣味を持った人との出会いが中々なく、仕方なく指輪に願った。
 願ってからはしょうもない願いをしたと後悔した。
悠介との激闘の末敗北。指輪争奪戦から脱落した。
指輪能力/全開(フルパワー)
 力を解放してそれまで受けたダメージの回復+あらゆるフィジカルを強化する。使えるのは1日1回。未使用。
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