フラフラしてる人さんの作品です!
(X:@ufq2mz83xV58167)
機械を止め、表現されたポッドの中のデータの記録を写す。
「陸王…あいつが1番無限に近かったんだけどなぁ…」
付けていた指輪がふと目に入る。
「…やっぱり指輪の力か…」
そう一言呟きポッドの女性に目を戻す。
「俺は無限を捕まえて見せるよ…絶対に……ね」
ナニかを感じ取った指輪が脈打つように光っていたが、玲は目もくれずデータの記録に戻っていた───
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はい」
隣の席に座っていた小さな女の子が返事をして、黒板の前に立つ。
黒板にふと目を向けると自分の名前、
(授業の流れ書かないとなぁ…)
と
「私の…」
彼女は不安そうな目でこちらを見つめる。
(頑張って)
そう思ったと同時に部屋が笑い声と大きな音で包まれた。
「なんだ…これ……」
次第に意識は薄れ、見慣れた天井が鮮明に浮かび上がる。
「……夢か…」
次第に目覚まし時計の音が大きくなっていった。
机の上に置いていたノートをリュックに入れ、今日の授業の教科書があるか確認する。
「国語に戦隊考古学、数学と…今日提出の宿題…よし、全部ある」
リュックを背負い、靴を履く。
「行ってきます」
─────────
駅に着き、改札を通ろうとする。
が、ご老人が困っている所が目に入る。
『助けて大丈夫か?もしかしたら物を取られたって騒がれるかもしれないぜ?』
もう一人の自分の言葉に手が下がっていく。
『乗る予定の電車はギリギリな時間だから助けてたら学校に遅れるかもしれないぜ?』
踏み出す足が後ろに下がる。
(でも…助けてあげないと)
「どいて」
冷たく、トゲと強さを見せつけるような声が吹き抜ける。
(
その目の中にはっきりとした嫌悪、怒り、そして拒絶が宿っていた。
彼女は老人へと駆け寄り優しい口調で、だが正確に説明をしていた。
(いつもこうだ…)
くちびるを噛み締め去って行く姿は他の人から見ると惨めに映るのだろう。
──────
ホームに降り、1人立ち尽くす。
(また…まただ…なにも出来なかった)
そんな事をお構いなしに電車のアナウンスが響く。
『まもなく、5番線に快速
周りの学生達は乗る準備をし始めるが
(
さっきの嫌悪された顔を思い出す。
(なにか…大事な事…忘れてる気がする…)
「そこの君!この電車逃すと遅刻すっぞ!」
大きな声におどろき顔を上げると自分に言っている事に気付く。
「えっ!あっ!ちょっと!」
降ろしていた荷物を慌てて担ごうとするも上手くいかない。
『まもなく、ドアが閉まります。かけ込み乗車は危険ですのでおやめください。』
急かすようにアナウンスが響き渡る。
「待って!」
〜〜〜 具島玲 〜〜〜〜〜〜
足が止まる。
「気のせいか…」
歩きだそうとした瞬間、また声が聞こえる。
『具島…玲…!』
「ゔぐっ…」
目を開けると辺りが一瞬にして暗くなり宙に浮くような感覚になる。
『契約だ…お前の望みを言え…』
暗い闇の中で赤いひとつの光があった。
「へぇ…これが指輪の契約ってやつかっ…」
心臓が急激に苦しくなる。
『お前の望みはソレだな』
ひと呼吸置き、返事を返す。
「…勝手に…決めないでほしいね」
『お前の望みを叶える為には我の失われた力を取り戻さねばならない』
玲の頭の中で今までの出来事が繋がる。
「その力を取り戻すために指輪を集めろってことか」
『いや、方法は問わん…我の厄災の力を引き出す事が出来るのであれば望みを叶えよう』
その言葉は玲の予測していたものではなかった。
「…おい!待て…」
ナニかが体に入り意識が遠のく。
「ぅう……」
倒れた玲は元の場所に戻っていることも、指輪が強く光っていたことも知るよしはなかった。
「───大丈夫ですか?」
──────
「待って!」
そんな嘆きも虚しくドアが閉まり、出発する。
(終わった…さっきの電車が最後だったのに…)
「いや…」
スマホを取り出しマップで駅から学校への移動時間を検索する。
「まだ…間に合う!」
走り出し少しの時間がたった頃、
十字路で右に曲がり一歩進む。するとそこには倒れた人がいた。
「っ…」
手が震える そこの人がナニか異様な
『いや…違うだろ?』
息が浅く、速く、苦しくなる。
『お前は助けるのが怖いんだろ?』
手を強く握りしめ、深く息をする。
〜〜〜〜 玲 視点 〜〜〜〜〜
目が覚めるとまるで冬で時が止まったような美しい女性がそこにいた
「大丈夫ですか?」
ハッと我にかえる。
「あぁ…大丈夫…?」
周りを見ると下手な医者よりも上手い救急処置がされていた。
「これ…君が?」
近くで見守っていたおじさんが代わりに答える。
「お嬢ちゃんすごかったよ…!みんなあたふたしてたら1人だけ冷静に指示して、テキパキ動いてさ…」
しかし彼女は首を横に振る。
「いえ、私だけだったらそもそも倒れてた
手を叩き声を大にして話す。
「そうそう!誰かが大っきい声であんたが倒れてる事を教えてくれたんだよ、それでわしらが飛び出て来たんだ」
しかし、声は玲に届くことなく1人を見つめていた。
(彼女こそ…俺を救ってくれる…!)
〜〜〜〜〜 灰視点 〜〜〜〜〜
「ハッ…ハッ…ハァハァ…ハァハァ…」
スマホの示す道を、森を走り抜ける。
(あの人…助かったかな…)
少しずつ減速していく。
「ちょっと…休憩…」
地面に座り込む。
(あの指輪…たぶん…センタイリング…だよね)
カバンを開け、
「センタイリング…センタイリング…あった…」
そこにはセンタイリングの説明があった。
「う〜ん…文だけだと分かりづらいなぁ…」
そう一言
「なんなんだこれ…」
光った場所の地面を詳しく見ると金に輝く指輪が落ちていた
「これ…本当に…?」
指輪を拾いまじまじと見つめる。
「文章と完全に一致してる…ってことは」
本物だと確信した瞬間 体が空へと浮かび辺りが暗くなる。
「我が名はテガソード」
金色の体に赤い顔、そして頭に響く神々しい声。
「すごい…本当に居たんだ…」
その姿に呆気に取られているとテガソードが声を発する。
「全ての指輪を集めた者の願いを叶える…それが指輪の契約」
間を空け心の奥底へと語りかける。
「お前の願いを言え」。
頭の中に色々な欲望が溢れる中、口が無意識に動く。
「
今までの感情が爆発するかのように話し出す。
「あいつと僕はいつも笑い合ってた!」
一緒に絵本を読んで笑い合っていた姿が脳裏に浮かぶ。
「でも!久しぶりに会ったら、あんなに怖い顔してるんだ…話そうにも話せないし、話しかける勇気も僕にはない…」
吐き出しきったのか落ち着いて話す。
「だから…僕の願いは『
テガソードは頷く。
「契約…成立だ!」
目を開けると元の場所に戻っていた。
「これで…僕も指輪の戦士か…」
テレビで見た常夏総理の真似をする。
「エンゲージ」
指輪を構え手に当てる。
「…?あれ?」
何度も何度もポーズを変えてやってみる。
「エンゲージ…やっぱりだめか…」
動き疲れ、座り込む。
「なんでだ…?」
動画で確認しようとスマホの電源を付けるともう1時間目の終わりの時間を示していた。
「遅刻…だ…」
〜〜〜〜〜 玲視点 〜〜〜〜〜
立ち止まり、一言。
「安静になさってください」
そして彼女は去って行く。
「見つけた…」
風に吹き飛ばされるほどの小さな声で呟く。
「俺の『無限』を…」
その手には「校外学習のしおり」と書かれた手描きの冊子が握りしめられていた。
〜〜〜 灰視点 〜〜〜
「変身出来ないなら…頑張るしかない…」
雪華のクラスの前でしゃがみ込み自分に発破をかける。
「よし!」
立ち上がりクラスに入っていく。
「………」
「………」
肩に手を伸ばす!
『お前みたいなやつに話しかけられる所をクラスの人に見られたくないんじゃないの?』
手の動きが止まる。
「
「分かった すぐに行く」
席から立ち上がり教室から出て行く
(そうだ!クラスの人に見られたくないんだったら廊下で!)
「あっ!
話しかけようとしたことを悟られないように空へ目を向ける
話しかけようとするも…
「
「
「
(結局…教室の前まで付いて来ちゃった…)
カバンを開けなにか探し物をしているようだ
(今だ!)
「おはよ…」
話しかけようとすると呟く声が聞こえた。
「ない…」
顔はとても青ざめている明らかに様子がおかしい。
「ちょっと!どうしたの!」
顔を上げこちらを見るが朝のあの目に変わる。
「あんたには関係ない!」
手で振り払われ空気が凍りついたのが分かった。
『お前なんかに助けてもらいたくないんだってよ』
自分の声で悟る。
(舞い上がってたんだ…指輪の戦士に選ばれて…強くなったって思い込んでた…)
上がっていた腕がだらんと下に落ちる。
(僕には勇気なんてものはなかったんだ)
ドサッとなにかが倒れる音が聞こえ顔を上げるとそこには倒れた彼女がいた。
『お前が話しかけたからぶっ倒れちまった…』
「あぁ…ぁあ…!」
心に突き刺すように自分が言葉を放つ。
『お前のせいだ』
膝から崩れ落ち、泣き叫ぶ。
『お前はまた、こいつを救えない』
泣き声を聞き生徒や先生が駆けつける。
「誰か!
──────
目が覚めるとそこには知らない天井があった。
「おっ!目覚めたか?」
保健室の先生の声が聞こえる。
「はい…」
「親御さんには連絡してあるからあんたはゆっくり休んでよ」
「…はい…」
なにかを察した先生が優しい声で話す。
「
ベッドの上で三角座りに体勢を変えうずくまる。
「つい最近大きな大きなチャンスが目の前に転がってきたんです」
視線はいつの間にか下がっていた。
「そのチャンスは僕には掴めなかった…」
ポケットに入れていた指輪が転がり落ちる。
「チャンスが来たことがうれしくて、舞い上がってたんです…だから」
落ちた指輪から目を逸らす。
「身の丈に合ってないことをしてしまった…」
少しの沈黙の後、
「先生は君のことなんにも分からないから正しいことは言えないけど…1回子供の頃に戻ってみたら?」
下がっていた顔が上がる。
「魔法を信じたり、ちょっとした冒険をしてみたり…今の君にはそれが1番いいんじゃないかな」
ベッドから体を降ろし指輪を拾い上げる。
「……そうしてみます」
その返事は風船のようにどこか軽いものがあるように感じた。
ー翌日ー
今日は土曜日、
「あった…」
本棚から探し出したのは少し大きな絵本だった。
「『魔法使いとお姫様』…懐かしいな…」
近くの椅子に座り絵本を開く。
〜〜〜まほうつかいとおひめさま〜〜〜
むかし、くにに とてもきれいなおひめさまがおりました
そのくにはくものうえにあってたいそうへいわだった
しかしあるひ、おひめさまはつちの おくの おくにいる
あくまにつれさられてしまいました
おひめさまが くらいへやで まっていると
おおきなドアがギィとひらき
あかいローブをきたまほうつかいがでてきました
あくまたちが、まほうつかいにきづき やっつけようとすると
まほうつかいのなかまたちがやってきました
みどりのうしは、じめんをふみしめ
ピンクにひかるようせいは、かぜにゆれ
あおいのうろこのにんぎょは、みずとゆらめき
きいろいはねのとりが、かみなりのように たかくなきました
あくまたちにかった、まほうつかいたちは おひめさまをたすけました
かえってきたふたりはむすばれ、なかよくしあわせにくらしました
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読み終わると胸にじんわりと温かみが広がっていた。
「お〜い…お〜い…」
懐かしい声が耳に入り自然に目が動いていた。
「あっ!お久しぶりです〜」
手を小さく振っている彼女はこの図書館の司書さんだ。
司書さんが隣に立ち懐かしみながら話し出す。
「いや〜ほんと大きくなりましたねぇ…」
「もう高校2年生ですから…」
「そうでしたか…でもそんなに経ってもその本はまだ好きなんですね」
手に持った絵本を指差す。
「えぇ…
「
「一緒には来てなくて…」
悲しそうな声で一言。
「ある日からパタッと来なくなったけどなにかあったんですか?」
思い出せず険しい顔をしていると詳しく教えてくれる。
「ほら!小学4年生の始まった頃!」
頭の中に雷が流れる。
「思い出した!」
思い出した衝撃をそのままに口早に話す。
「自分を知ってもらう期間として好きなものを発表する授業があったんです!」
興奮のあまり司書さんの肩を掴み力説する。
「その時
「なるほど…ということは!」
息を整え結論を出す。
「
降ろしていたカバンを背負い走り出していった。
──────
息を切らし、
『本当に大丈夫か?』
「大丈夫…ちゃんと思い出したから」
インターホンに手を伸ばす。
『こっちが思い出しても、あっちは覚えてるのか?お前は少なくとも覚えてなかっただろ?』
「…」
手の動きが止まる。
(確かに…覚えてなかったら謝る意味なんかないし…)
『謝る為に嫌な記憶を思い出させるのか?お前の
その場にうずくまる。
(僕は…どうすれば…)
「あら〜
「えっ?」
──────
殺気すら感じる目で睨みつける
「……」
「……」
部屋には2人しかおらず暗い雰囲気が漂っている。
「なんでここにいるのよ」
「いや…あの…お母さんに家の前にいるとこを見つかって…入れられた…みたいな」
目に怖じ気付きしどろもどろになりながら返事をする。
「で…あんたはなんで家に来たの」
冷房が効いているのだろうか、その一言だけで心の底から震え上がってしまう
「『まほうつかいとおひめさま』って」
その名前を口に出した瞬間、強い衝撃が
「その名前を言わないで!」
その目には怒りと悲しみが詰まっていた。
「私は弱みは捨てたの!強いの!強くなくちゃいけないの!完璧じゃないとだめなの!」
息が乱れている。
「だいじ…」
「帰って!」
──────
あっという間に校外学習の日になっていた。
「今日は平和学習として実際の戦地になった場所に行ったあと、戦後はどんな生活だったのかを…」
バスの前で先生が校外学習の内容を説明しているが頭にはそんな事入ってこない。
『私は弱みは捨てたの!強いの!強くなくちゃいけないの!完璧じゃないとだめなの!』
あの時の顔は後悔しているようには見えなかった、まるで追い詰められているかのような顔だった。
「なにかまだ忘れてることがあるのかな…」
無意識に口からこぼれ落ちていた。
〜〜〜〜〜 玲視点 〜〜〜〜〜
足を止め、タイミングをうかがう。
(今だ…)
震えた手で機械を落とす。
その瞬間、辺りは煙で覆われ困惑と恐怖の混ざった声が湧き上がった。
だが、そんな事関係ない煙を巻く前の位置を頼りに目的地へと突き進む。
(ようやく報われる…!)
過去の事が次々とよみがえる。
陸王を庇い怪我を負ったこと。
そのせいで医者としての人生が消えたこと。
そんな時に誰も助けてくれなかったこと。
途端に心が揺らぐ なぜ自分だけこんな目にあっているのか と。
それは小さな揺らぎだった、だがその揺れはどんどんと大きくなる。
いくつもの声が心の中で反響する。
そしてその声が大きくなればなるほど指輪が息を吹き返す。
『時は満ちた!』
やがて指輪はナニかを呼び寄せるように波動を放つ。
その媒体とされた玲の体は今まで以上の苦痛に苛まれた。
〜〜〜〜
「なんだ…これ…」
急にとても強い風が吹いた瞬間、怪物達が大量に現れた。
「か…怪物…」
(逃げないと…っ!)
立ち上がり走りだそうとする…だが。
「ハァ…ハァッ…来ないで…ハァッ…来ないで…」
(なんで逃げないんだ…)
良く見ると足を引きずっている。
(…助けないと………)
その直後…もう一人の自分が耳元で囁く。
『どうやって助けるんだ?』
足が急に重くなる。
『走って?間に合うのか?それか石を投げるか?お前に当てれるのか?』
(………それじゃぁ!…どうやって…考えろ…何をすれば…助ければ良いんだ!)
「待て…今は違う…」
言おうとしている事が分かる…
心の底で微かに…だが確かに考えていたこと。
考えてしまっていたこと。
『お前は…そもそも…なんで…』
「言うな!言うなぁ!」
息は詰まり、視界がぼやける。
『なんで…助けようと…してるんだ…?』
「あっ…あっ…」
膝から崩れ落ちる。
『目の前の命を見捨てたくないから?願いを叶える為に必要だから?』
「違う…違う違う違う違う!こんな事考えるな!助けに行くんだ!」
『お前が死ぬかもしれねぇのにか?』
「あぁ…!あぁ…!!」
「お願い…助けて…赤の…魔法使い様…」
涙と共に流れたその声は縋るように小さく…弱く…とても脆かった…
(魔法…使い…)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それじゃあ…次は
少しざわついた教室に先生のよく通る声が響く。
「はい」
隣の席に座っていた小さな女の子、
「私の…」
彼女が不安そうな目でこちらを見つめる。
教室の空気が少し緩む。
「私の好きなものは…」
隠していた絵本を体の前に出した。
「この絵本…『まほうつかいとおひめさま』です」
教室が静まりかえり、空気が変わる。
「それ子供のやつじゃん!まだそんなん読んでんのかよ!」
その沈黙を破った言葉は良いものではなかった。
「いや…ちょっとキツくね?」
「いやそれな」
先生が前に立ち
「皆さん!笑わない!気持ちは分かりますが!」
「でも先生〜」
その声に負けず、絵本を持ち直す。
「この…絵本の!好きなところはぁ…!」
だが涙があふれ出る。
「言わない方が良いって!はずかしい!」
笑っていた生徒の1人がこちらに近づく。
「お前もおかしいと思うよなぁ?」
「……っ…」
「なぁ?」
その瞬間
〜〜〜〜〜〜〜〜
立ち上がり走り出す、他の人の目は気にせず
(そうだ…そうだ!あの時笑ったんだ…笑ってしまったんだ…助けを求めるほど大事なことを!…それを言葉にする勇気を…僕は笑ってしまったんだ!)
「あっ…!」
思いの熱に浮かされて足がもつれ、転んでしまう。
膝が痛む。だが、そんな痛みなんて些細だ。あの日に捨てた勇気に比べれば。
(僕が願っていた…本当に叶えたかった…願いは!)
もう一度立ち上がる。
「うぉぉぉ!!」
声を上げ、地面を蹴り、風を切り、水を目から振り払い、怪物に近づく、そして手を強く…とても強く握りしめ、雷のように拳を薙ぎ払う。
「はぁぁぁ!!」
胸は炎のように燃え上がる。
(もう…迷わない!)
「…っ!」
「なんで…!逃げなかったの?死ぬかもしれないのに?」
少し鼻声ながらに話し出す。
「気付いたら体がとか、友達だからとかそんな綺麗で、かっこいい理由じゃない…」
地面に座り目を合わせる。
「許してもらわなくていいから…謝りたいんだ…あの時のことを」
覚悟を決めたはずなのにまた恐怖心が湧いてくる。
「好きなものを笑っちゃって…」
あの時の教室が頭に浮かび、言葉が詰まる、だが絞り出す、5年言えなかったその一言を深く頭を下げて口に出す。
「ごめんなさい」
彼女が口を開く。
「
怪物が迫ってきた。
(避けれない…!)
ポケットに入れていたリングが強く光り、怪物の攻撃をはね返す。
「これは…?」
困惑していると
「きっと、謝る勇気に答えてくれたんだよ」
指輪が「そうだ」と言わんばかりに光を放つ。
「そっか…そっかぁ…」
(それじゃあ、あとやらないといけない事は一つだ)
怪物達に目を向ける。
「マジで決めるぜ」
指輪を回転させ、手の形をした剣を取り出す。
(どうするか、今度は分かる!)
「エンゲージ!」
指輪を剣のくぼみに入れると声が鳴り響く。
"センタイリング!"
剣が黄色い光を帯びる。
腰の高さで1回、そして2回連続で叩く。
「
隙を狙った怪物が剣を持って襲いかかる。
「っ!」
間一髪で受け止める。
「ぐぅ…!ふっ!」
剣を受け流し斬り飛ばす。
腕を腹の前でクロスさせ横に広げる。
低く、渋い声が呪文を唱える。
"マージ・マジ・マジーロ"
炎を纏った精霊が現れ、姿が変わっていく。
"マジレンジャー!"
「マジスティックアックス!」
ドシンと音を立て、斧が手から落ちる。
「ヴォラァ!」
振り上げると衝撃が地面を舞い上げ怪物達を吹き飛ばす。
「マジスティックボウガン!」
斧が形を変えボウガンになる。
「ハァ!」
無数の弓矢が空へと放たれ、怪物が次々と塵へと変わる。
「マジパンチ!」
グローブを取り出し、残りの怪物達を倒す。
「
装甲を灰にし、打撃を叩き込む。
「ハァ!」
その時、空が急に禍々しく暗くなった。
「なんだ…」
その正体がなにかはすぐに分かった。
振り返るとそこには全身が鎧で覆われた怪物がいた。
〜〜〜〜 玲視点 〜〜〜〜
もう止まっていたはずの感情がまた動き出す。
そこには戦いでの傷ついた記憶や、仲間に裏切られた記憶など自分ではない記憶が一緒に流れ込んでいた。
玲の心は2つに引き裂かれていた。
『俺は救えなかったし!…救ってもらえなかった!なら!』
「違う!たしかに俺は救えなかった…だけど…まだ俺を救ってくれるやつが…無限が…きっと…いるはずだ!」
『そう言ってどれだけ経った?救えると思っても…結局は俺も救えなかったじゃないか!』
その時突然、ある声が耳をつんざく。
「うぉぉぉ!!」
彼の目は真っ直ぐと前を見据えていた。
直感的に分かった自分を救ってくれるとようやく光が見えた。
力を振り絞り手を伸ばす。
あと少し…
だった
彼は自分の横を過ぎ去って行って行く。
一筋の光が闇へと変わる。
「分かったよ…厄災…」
玲の心はまたひとつに戻る。
「この世界も…俺も…!救われるべきじゃない!」
その心に呼応し鎧が飛んでくる。
『具島玲…その体存分に使ってやる!』
厄災の声と同時に甲冑が体にまとわりつき、
最後にひとつの目が赤く光に染まる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
学ランを着て顔には仮面を被った男が手を上に上げ大きな声で叫ぶ。
「いざ掴め ナンバーワァーン!!」
そう言いながら男は右手の人差し指を伸ばした手を下へ降ろす。
男の後ろには男と同じ服装をした男やチアリーダーの格好をした女性が現れ、次々に人差し指を伸ばした手を上に上げ…一斉に降ろす。
「どけ!」
甲冑を着た怪物が、応援の声を振り払いリングの上に立つ…後ろには応援をする者は誰も居ない
「辛いだろう!苦しいだろう!」
盾を上に突き上げる
「救いのない世界など
滅ぼしてやろう」
その瞬間2つの声が重なって聞こえた
「我は深淵なるクラディスの一角 戦禍のベルルム」
武器を前に突き立て一言。
「滅びの理に平伏せ」
男は左手の人差し指を上げ声を上げる
「ワァーン!」
がリングの上に上がると後ろに男達が現れ、息の合った掛け声をする。
「ゴー!ゴー!ユニバース!ゴー!ゴー!ユニバース!」
その掛け声は不思議と背中を押してくれている様に感じる。
拳を見つめながら下を向いて前に出る。
「絞り出した勇気と『ごめん』」
拳を少し上に上げ額に当てる。
その姿はなにかに思いを届けるようだ。
「たった少しの勇気でも魔法に変えてお前を倒す!赤の魔法使い…」
少し間を空け、手を払い前を向く。
「マジレッド!」
その手は奮い立たせるようにマントをひるがえす。
「明日はこの手で掴んでやる!」
剣を取り出し構える。
「……」
「っ…!フゥ……………」
二人は睨み合い男達の応援だけが響き渡る。
どこからともなくまた違う男の声がこう叫ぶ。
『ナンバーワンバトル!! レディ…!? ゴー!』
カァーン!
戦いの火蓋が落とされた!
〜〜〜〜
「マジスティックソード…」
剣を取り出し構える。
(戦いと無縁だった僕にも分かる…こいつは強い…)
ジリジリと間合いを詰める。
(だから…短期決戦に持ち込む…)
〜〜〜〜 ベルルム視点 〜〜〜〜
砂利の小さな山を踏み壊し動きを止める。
(まだ…力が不完全だ…この体を維持出来る時間も限られている)
足を引き静かに構える。
(なら…)
(一撃でかたを付ける…!!)
「マジ・マジカ!」
赤の魔法使いが炎を体にまとう。
「「…!」」
2人の立っていた場所が入れ替わり刹那の時が流れる。
「うぅ…!」
倒れたのは赤の魔法使いだった。
〜〜〜〜
「まだだ…まだ!」
小さく叫ぶが傷のせいで上手く立ち上がれない。
「マジ・マジ・…」
呪文を唱えながら立ち上がる。
「マジカ!」
体が鳥の形をした炎に包まれ、浮き上がる。
だが…まだ届かない。
「アッシュ…フレイム!」
銀のテガソードとマジスティックソードを手にベルルムへと立ち向かう。
(今…倒せなくて良い…)
炎は形を変え狼へと変わる。
(こいつを退けるくらいの力をくれ!)
赤い炎が灰色の炎へと色を変える。
「ハァッ!」
防ごうとした盾をマジスティックソードで吹き飛ばし、
「ウォリャァ!」
テガソードでトドメを刺す。
"マジレンジャー!フィニーッシュ!"
その炎もまとった斬撃はベルルムの脇腹を切り裂いた。
地面へと倒れ込んだ
〜〜〜〜 ベルルム視点 〜〜〜〜
脇腹を抑え指輪を拾い上げ、同時に鎧に亀裂が入る。
(限界か…)
体の周りに黒い煙が立ち込め姿が完全に隠れ、煙が消えるとベルルムの姿はそこにはなかった
〜〜〜
「…きて!起きて!」
小さな頃からよく聞いた声で目を覚ます。
「良かった…」
体を強く抱きしめられる。
腕の怪我を見ると、とても荒い処置がされていた。
「…ありがとう」
〜〜〜〜 玲視点 〜〜〜〜
路地裏で足を止め、手のひらに乗った指輪を見つめる。
「我が名はテガソード」
いつの間にか空間そのものが変わっていた。
「全ての指輪を集めた者の願いを叶える…それが指輪の契約…」
重々しい間が空きまた声が響く。
「お前の願いを言え」
「俺の願いはあの頃へ戻ること…だった」
体からあの力が溢れ出す。
「今の俺の願いは!この世を深淵の底へ沈めることだ!」
指輪が指輪を喰らい空間が裂け、元の場所へと戻る。
「もう遅いんだよ…」
踏み潰した水たまりにはベルルムの姿が玲の変わりに映っていた。
マジレッド
指輪/センタイリング(マジレンジャー)
契約者/
職業/高校2年生
願い/
「
本日はこの作品を読んでくださり本当にありがとうございました!
このような企画には始めて参加させて貰い、提出期限を過ぎてしまったり色々、主催者様にはご迷惑をおかけしました…
それでも、この企画を通して反省点や学んだことがたくさんあり貴重な経験になりました。
改めて、ゴジュウジャーに関わった方々、ゴジュウジャーを愛してくださった方、この企画に携わってくれた皆様へこの言葉を送らせてください。
本当に、ありがとうございました!