ユニバース戦士補ジュウ計画   作:壱肆陸

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今日と明日は慧海学園編後半戦。
バイオマンとメガレンジャー、三一ノ月さんの作品です!
(X:@Mii_no_Tsuki)


科学が爆発‼︎宇宙少年‼︎

 プロローグ アッサムの紅茶周遊

 

 

 

 皆の者、ごきげんよう。

 余は惑星アッサミカのプリンス・アッサムだ。

 

 今日は日課の紅茶周遊(ティー・ランデブー)の旅のため、宇宙に出ている。何故宇宙に出る必要があるか? 決まっているだろう。まだ見ぬ紅茶(ティー)の味を発見するため、未知の星へと探究するためだ。

 もちろん、我が故郷アッサミカの紅茶(ティー)こそが一番の味であることは間違いない。だが、この旅のお陰でまだ見ぬ紅茶(ティー)の一面に出会えるのだ。

 

 例えば、この紅茶(ティー)……おっと、文字では伝わらないのだったな。これはフラッシュ星……と言ったか、かの星で堪能した紅茶(ティー)でな。

 

 そこでは土地が荒れ果てているのもあってか一口目には雑味を感じてしまったが……淹れた者の腕が良かったのだろう、その雑味さえ長所に変えてしまうほどの高貴な甘み、そして透き通るような後味を余に教えてくれた。それは、余にとっては言わずもがな、初めての紅茶体験(ティー・エクスペリエンス)だったことは言うまでもないだろう。

 

 ……どうだろうか。余が紅茶周遊(ティー・ランデブー)の旅に行く理由が伝わればよかったのだが。

 いかんせん文字を書くのには慣れていないし、退屈だ。

 

 自家用UFOでの旅はアッサミカの紅茶(ティー)を嗜むこと以外では、こうして日々の思考を日記にでしか暇を潰すことができぬ。

 余にとってはそれも紅茶(ティー)を楽しむための一種のスパイスとなるのだが……

 

「……おや?」

 

 これは……長く旅をしているが、見たことの無い光景だ。

 まるで惑星がその生涯を終え、最後の花火として爆発をした時のような……光を目撃した。

 あれ程までに大きな光を発するのだ。とてつもないエネルギーを発しながら移動するUFOでもいたのか、はたまた……。

 

「しかし……余には関係の無いことだな。さて、紅茶(ティー)を嗜むか……」

 

 

 

 

 

 一章 迷惑! すっげ〜実験野郎

 

 

 

 慧海学園では今日もいつもと同じの日常が広がっていた。生徒たちはいつもと同じように授業が行われ、いつもと同じように昼食を友人と過ごし、午後の授業を受け──────

 

 そして、いつもと同じように、放課後になっても学校を出ない。

 青春ノーワンによって支配され、青春の牢獄と化していた慧海学園には、今日も多くの生徒が囚われていた。

 この春入学して間もない、鮫山機龍(サメヤマキリュウ)もそうだった。

 

「完成だ! いやった〜!」

 

 彼はこの支配された学園の中でも一風変わっており、校舎裏一人でなにかものづくりをしているのが常だった。

 

「鮫山くん、一体今度は何をしてるんだ?」

 

 機龍に声をかけたのは、学園内をパトロール中だった晴渡一輝。学園ポリス・パトレン1号を名乗り、学園の青春と平和を守っている……と、本人は思い込んでいる。

 

「あ、晴渡先輩! 学園ポリスとしてのパトロールいつもお疲れ様です!」

 

 ギーク趣味の機龍だが、人当たりは皆が思うよりも良く、話しかければ悪い奴ではない……というのが晴渡からの評価だ。

 

 だが、それもこの前までで、今はあまり好印象を持たれていない。その理由は……。

 

「今日は宇宙船の発射装置を考えてたんです! これは1/80スケールなんですけど、機能は全部搭載していて……ここで発射実験しようかなって! いやー、今回で父さんに会えるといいなあ……」

「はあ……また君は実験か! いい加減やめてくれ!」

「え?」

 

 晴渡が止める間もなく、機龍は発射スイッチを押してしまっていた。発射台に乗せられたロケットは炎を上げ美しい青い大空めがけて飛び出した。

 

「ああああ! 皆! 屋内に逃げるんだ!」

 

 頼りがいのある生徒会長の姿とは打って変わって、晴渡は取り乱した様子で生徒たちに声をかけていた。

 

「よし! 行け! このまま行けば実験成功だ!」

 

 そんな晴渡を尻目に、機龍は空に打ち上がったロケットを見上げていた。

 ロケットはそのまま雲をかきわけ、宇宙に向かう……と、ここまでが機龍の計画だったが、そういうわけにはいかなかった。

 

「……あ、落ちてきてる。機龍5号も落第か……」

「皆! 早く!」

 

 平静のスタンスで設計図にバツ印をつけている機龍。

 その頃晴渡は未だに屋外の生徒を誘導することに専念していた。

 

「伏せてーっ!」

 

 真っ逆さまに落下した機龍のロケットは、発射地点とは少しずれ、運動場へと向かっていた。

 そしてそのまま地面に激突し、信じられない程大きな爆発音とともに、バラバラに砕け散った。

 晴渡は顔を上げると、すぐさま周囲の様子を確認した。見ると、運動場にはクレーターが出来上がっており、辺りには金属片が大量に散らばってはいるが、幸いなことに人が倒れていることはなかった。

 

「良かった……みんな無事だったか……」

 

 そう、これが機龍が煙たがられている理由なのだ。

 最初のうちは宇宙に行った父親に会いにいくため、という動機のもと開発・実験をしているという経緯にいたく感動し容認していた晴渡だったが、発射実験と称してロケットを何度も飛ばし、何度も当然のように落下させ、学園の敷地に甚大な被害を及ぼす機龍に流石に嫌気が差していたのだ。

 

 発射実験の度、晴渡達生徒会役員は避難誘導をしていた。

 そのため、怪我人は今まで1人も出たことがなかったが、こうも毎回やられては流石に我慢ならなかったのだ。

 

「あのなあ! 確かにこういった実験を続けることも青春の一つだ! だが、周りの人をこうも毎回危険な目に遭わせるなど、俺は学園ポリスとして見逃してはおけない! 申し訳ないが……」

 

 そう言いながら後ろを振り向いて機龍の姿を捉えようとした──────だったが、既にそこには機龍の姿は無かった。

 代わりに居たのは……真っ赤なマントを羽織った、嘲るようなシルクハット型の目。

 

 ──────快盗、ルパンレッドだった。

 

「か、快盗! 貴様ぁ!」

 

 突然の出来事に動揺しつつ、晴渡は右手に嵌めていたパトレンジャーリングを取り出し……

 

「エンゲージ!」

 

 テガソードにパトレンジャーリングを装填、

 

『クラップユアハンズ!!』

 

 学園の窓や教室の机をパルクールのように移動し逃げるルパンレッドを追跡しながら、リズムに合わせテガソードを叩く。

 

『パトレンジャー!!』

 

 テガソードの声が響くと、頭上から現れたブラックホールのような真円から光が降り注ぎ、晴渡一輝はパトレン一号にエンゲージした。

 

「待て! 快盗!」

 

 標的の通った道をなぞるようにパトレン一号は追跡を続ける。

 しかし、当然標的はそれを許さない。机やロッカーを倒す、窓やドアの通り道を塞ぐなどして即席の妨害工作をはたらく。

 

「クソッ!」

 

 根が真面目で学園を大切に思っている晴渡に、窓を破壊する、机を飛び越えるなどの発想は滅多に出てこなかった。わざわざ迂回し標的を追いかけてしまっていたパトレン一号は、みすみす逃してしまった。

 

「今回もダメだったか……いつかは俺の手で捕まえて見せるからな! 快盗!」

 

 

 

「ようやく捕まえたぞ……鮫山くん」

 

 自分の隠れ家である用務員室に逃げ込んだ快盗・ルパンレッド。

 彼の正体は、慧海学園"元"校長である、晩堂深也。

 

 現在は用務員として働いている彼は、青春ノーワンに支配された学園の生徒たちを"ルパンレンジャー"と"ゴーカイジャー"のセンタイリングを使うことで、微力ながらも救っていたのだ。

 今回の鮫山機龍もその対象だ。だが……彼に関しては少し事情が違った。

 

(彼にこれ以上実験を続けさせる訳には行かないからな……)

 

 奇しくも、晩堂は弟子であった晴渡一輝と同じく、学校で好き勝手に発射実験をする機龍のことを危険視していたのだ。

 師弟であり、学園を愛する者という共通点を持つ彼らにとって、それはごく自然なことであったのかもしれない。

 晩堂は宝箱にしまっていた、"鍵"と化していた機龍を取り出した。

 

「……ん?」

 

 その時、晩堂は疑問を感じた。

 ゴーカイジャーのセンタイリングの能力で"鍵"と化した人間は、いつもは銀の鍵となる。しかし、機龍は違ったのだ。

 

 ──────その姿は、深也の変身するルパンレッドのように、真っ赤な姿をした戦士の鍵だった。

 

(……まさか……指輪持ちか?)

 

 晩堂は困惑しつつも、鍵を机の上に置き機龍を人間の姿に戻し、ルパンレンジャーの指輪能力、"解除(リリース)"の力で青春に縛られた彼の心を解放した。

 気が付いた機龍に、晩堂はすかさず声をかけた。

 

「……何を願ったんだ」

「……校長先生? これって……」

 

 質問をしている晩堂と、状況を飲み込めず困惑している様子の機龍。

 晩堂は軽く咳払いをして、説明をしようとする。

 

「……確か……学園に変なのが出てきて、そこから記憶が……」

 

 機龍は自分のペースで思考を進めているようで、周囲を観察し今自分がどういう状況に置かれているか推理した。

 用務員室のカレンダー、窓から見える植物、そして、ホワイトボード。

 

「おかしい……6月? そんなはず……いや、あそこに紫陽花も咲いているし……それは間違いない……もしかして、僕はあの怪物によって数ヶ月意識を奪われ……ああ……分かりました! それで校長先生が助けてくれたんですね!」

 

 機龍はマイペースに自分の推理をお披露目する。

 

「よく分かったな……」

 

 晩堂が漏らしたその一言には、素直な感心と、何故理解できるという奇妙な気持ちが同居していた。

 

「──────それで、君は何を願ったんだ?」

 

 そう問いかける晩堂。

 

「そうだ……行かないと!」

 

 それを聞いた機龍は、何かを思い出したかのように出入口の扉へと向かった。

 

「──────待て。俺も指輪の戦士だ。理由を話さないならば、力づくでも奪い取るぞ」

 

 大きな壁となって機龍の前に立ち塞がる晩堂。真っ直ぐな目で、機龍は話す。

 

「父に……会うんです。宇宙へと上がった父に!」

 

「……何?」

 

「僕の前に立つのなら……例え校長先生でも容赦しません!」

 

 右腕に嵌めたセンタイリングを手に取り、機龍は叫んだ。

 

「エンゲージ!」

 

『クラップユアハンズ!!』

 

 機龍はリズムに合わせ、テガソードを叩き、頭上に浮かんだ真円から光を浴びることで力を手にした。

 

『バイオマン!!』

 

「レッド、ワン!」

 

 そう叫んだ超電子頭脳のユニバース戦士、レッドワンは取り出したバイオソードとテガソードの二刀流ですぐさま晩堂に踊りかかった。

 

「エンゲージ!」

 

『ルパンレンジャー!!』

 

 晩堂も呼応するようにルパンレッドへとエンゲージし、用務員室を飛び出した二対の戦士は戦いの場を校舎裏の通路へと変える。

 

「レッドワン! ファイヤーソード!」

 

 合図を聞き入れたように発火した2本の剣が、ルパンレッドに襲いかかる。その力は、バイオマンの指輪能力、発火(プロミネンス)によるものだった。

 マントを装備している彼にとっては着火の危険性もあり不利な勝負だ。ルパンレッドは華麗なアクロバットで炎を避ける。埒が明かないと考えたレッドワンは武器を入れ替えた。

 

「グリーン、ブーメラン!」

 

 空に逆Vの字を描くことで、レッドワンはブーメランを具現化させ、ルパンレッドに向かって投擲した。ルパンレッドはそれにも動揺せず、上半身を横に捻りながらジャンプをし、表面積を小さくすることでブーメランを避けた。

 

 しかし、それはレッドワンの計算のうちだった。

 

「バイオアロー!」

 

 巨大な弓を取り出し、ブーメランを避けたルパンレッド目掛けて一閃、矢を放った。宙に完全に浮いてしまっているルパンレッドは、この状況に対応することはできない。

 

 勝敗はついたかに思われた。

 

「ルパンマグナム……」

 

 何を考えたか、ルパンレッドもバイオアローに対抗するかのようにレッドワン目掛けて発砲したのだ。

 

(まさか相討ちを狙ったか? まずい……!)

 

 しかし、ルパンレッドの狙いは別にあった。

 ルパンマグナムを発砲した彼はその反動により、大きく後ろに吹っ飛び、それによってバイオアローの着弾を遅らせたのだ。そして、その隙にテガソードを取り出し、矢を弾いてしまった。対して、レッドワンの背中には弾丸が着弾したはずの位置に、大きなクレーターの出来た壁があった。

 一見、まだ勝負は付いていないように見える。しかし、当人たちにとって、勝敗は明らかだった。レッドワンは自分の背後の大穴に気づき、変身を解除し、膝をついた。

 

「なんで……外したんですか……!?」

 

 ルパンレッドはその質問に応えるように変身を解除し、機龍に顔を向けた。

 

「元々君を倒すつもりはなかったからだ。君は父に会いたいと言っていたな。もっと事情を聞かせてくれ」

 

 晩堂は存在はよく認知していたが、機龍とよく話したことは無かった。彼の実験の動機の事などは知らないのだ。そう問いかける晩堂に、機龍は苦い顔をした。

 

「事情なんて関係ありません。負けた者は指輪争奪戦は脱落になる! 指輪を受け取ってください……!」

 

 そう言って機龍はバイオマンの指輪を差し出す。しかし、晩堂はそれには興味がない、というような顔をしていた。

 

「私も娘を取り戻すために戦っている。家族を思う君の思いを、無碍にしたくはないんだ……頼む」

 

 機龍は真摯な目で訴えかける晩堂の気迫に負け、機龍は指輪を引っ込めた。

 

「……僕の父は……科学者でした。純粋に、宇宙に上がることを夢見ている……ちょっと自分勝手ですけど、凄く良い人でした。ですが……ある日のことでした。突然、家の前に巨大なロボットが現れたんです。それには、父が乗り込んでいました。そして……」

 

『俺は夢を叶える! 達者でな! 機龍!』

 

「そう言い残して……ロボットは空に昇って行きました。そうして父は、僕を置いて宇宙に行ってしまったんです」

 

 当時のことを思い出しながら話しているのだろう。機龍の目は赤くなってしまっていた。

 

「……君は、それで宇宙に行く実験をずっとしていたんだな」

 

 青春ノーワンに支配されていた時でも、彼は宇宙に上がることを諦めていなかった。それは彼の思う青春のイメージが自動的に出力された結果なのかもしれないが──────

 きっと、彼が父を思う気持ちが青春の支配に抗っていた結果なのだろう。晩堂がそう考えていた、その矢先。

 

「おやおやおやおやぁ!! 見てしまいましたよお!」

 

 その堂々とした声と共に彼らの目の前に異形の怪物……ノーワンが現れた。

 

「おっと申し遅れました、ワタクシメはノーワンワールド科学者ナンバーワン、科学者ノーワンであります……まさか晩堂! 貴様快盗だったとは! 青春に支配されていないとは思っていましたが……」

 

 顕微鏡、ビーカー、スポイトにホワイトボードなど、彼の姿は科学の名をまさに体に表したようなものだった。背中には場違いな虹色の色彩を持つ羽を持つことから、クジャクを想起させる。

 

「ワタクシメ科学者ノーワン、青春ノーワン様に代わって指輪を奪うついでに、貴様を始末してやりましょう!」

 

 臨戦態勢に入った晩堂とノーワンの間に、機龍が割って入った。

 

「なんだあ? 貴様は……」

「鮫山くん。君がやる必要は……」

「戦います。僕。校長先生に助けてもらって、情けまでかけてもらったのに……僕は何も出来ていない。だからここは……僕に代わりに!」

 

 覚悟の決まった少年の目を見て、晩堂は止めることが出来なかった。

 

「……ふん、まあどうにでもなりますからね。お前をギタギタにした後晩堂を始末してやりますからね」

 

 その言葉と共に、2人はリングの上に飛ばされ、ナンバーワンバトルのゴングの鳴る準備が行われる──────と思われた。

 しかし、そうはならなかった。

 

 突如、天から物凄いスピードで降りてきたロケットと巨大ロボットが科学者ノーワンの頭上に落下し、彼を踏み潰してしまった。

 

「ぐわああああああ!」

 

 科学者ノーワンは物理的に踏み潰され、戦闘不能となってしまった。ロボットが落下したことにより発生した強風に耐えながら、晩堂と機龍の2人は突然の出来事に困惑しながらも、ロボットの姿を確認した。機龍は風にも気をくれず、その正体に目を見開かせていた。

 

「あれは……」

 

 コックピットであろう胸から、搭乗者が現れた。その姿は……指輪の戦士の1人、メガレッドそのもの。そして……指輪を外した彼の顔は……

 

「父さん……!」

 

 

 

 2章 飛翔する機械の龍(バイオドラゴン)

 

 

 

「よう。機龍」

 

 メガレッド、鮫山不動。

 宇宙から帰還した彼は、長髪に髭面。頭や体のあちこちに謎の機械を装着している妙な姿になっていた。彼は自らが開発した愛機・ブラックメガボイジャーから降り、メガレッドの指輪能力・拡縮(スケーリング)で愛機を縮めた。

 

「父さん……!」

 

 その姿を気にすることもなく、機龍は父親に再会できたことに感動していた。しかし晩堂は、不動を警戒していた。

 

「息子よ……来い」

 

 そうして手を広げる不動に、機龍は走って飛び込んでいこうとする。

 

「待て!」

 

 晩堂は機龍に向かって叫んだ。

 

「そいつは……君の父親じゃない! 奴の目は……息子の君を見る目じゃない……!」

 

 機龍は足を止めた。ようやく目の前に現れた父を名乗る男が、父ではない……? 

 晩堂の行動に、不動は高笑いをした。

 

「ふっふっふ……ははははは! よく気づいたな……」

 

 それが終わると、生身の晩堂に対してドリルスナイパーカスタムで発砲した。晩堂は油断せず、得意のアクロバットでかわした。

 

「な、なにをするんだ父さん!」

 

「黙れ! 私はお前の知っている鮫山不動ではない!」

 

 声を荒らげ息子を圧する不動には繊細な優しさはなく、敵対心がむき出しの、とても家族に対する態度ではなかった。

 

「なんでこんな……父さんはこんなことする人じゃない!」

 

 涙ながらに機龍は訴える。

 

「あの時までの私しかお前が知らないからだ。私は宇宙を長く漂流する間、地球のことを思い出していたのだ。地球には様々な人間がいたが……私の研究を認めた者は居なかった。孤独な宇宙生活の中……地球が私を否定したことを思い出したのだ。私は地球に復讐するのだ! 私を認めなかった地球にな! 機龍……その為に、お前も手伝え」

 

 不動はそう囁く。機龍はその誘いに即答した。

 

「嫌だ! 科学は人を傷つける為のものじゃないって父さんが教えてくれたんじゃないか! 僕はそんなこと肯定しない!」

 

 それは、機龍が生まれて初めての、親に対する反抗だった。彼の父を思う芯の強さには、例え父本人が現れようと折れることはなかった。

 

「そうか……なら私だけで終わらせよう」

 

 そう言って"拡縮(スケーリング)"で再びブラックメガボイジャーを巨大化させると、それに乗り込んだ。

 

「ボイジャーパルサー!」

 

 胸部のビーム砲からレーザーを降り注がせ、ブラックメガボイジャーは立て続けに建造物を破壊する。

 

「……これは……早く何とかしないと……世界が滅びてしまうぞ……!」

 

 晩堂がそう呟く。

 

「やめてくれ! やめてくれ父さん! 科学は……科学は皆の生活を豊かにするためのものだ! 決して争いや虐殺の道具なんかじゃない!」

 

 しかし、その叫びに応えず、ブラックメガボイジャーは止まらない。父の蛮行に大粒の涙を流した機龍は、再び叫んだ。

 

「やめてくれーーーーーーーーーっっ!!」

 

 

 

 時を同じくして、とある星。

 その星は、バイオ粒子という偉大な力を持つ特殊粒子によって、大きな発展を遂げていた。そう、この時空における、"バイオ星"そのものだ。元の時空では500年前に滅びていたが、この時空ではバイオハンター・シルバとバルジオンが誕生することなく、存続を果たしていたのだ。

 そして、強大な科学力を象徴する船、バイオドラゴンも同様に存続しており、格納庫に収納されていた。

 

「バイオロボ! 今日もピカピカにしてやるからな〜!」

 

 バイオドラゴンを管理する専属ロボット、ピーボはバイオロボを洗浄しようとホースを手に取った。しかしその時、バイオロボの目が赤く光り輝いた。

 

「ん? どうしたんだ? バイオロボ」

 

 ピーボが疑問に感じていると、格納庫の扉が突如として開き、バイオドラゴンは空へと舞い上がった。

 

「な、なんだァ!? 何が起こってるんだこれはァ!?」

 

 超新星爆発とも見紛う大きな光を発しながら、途中様々な障害物があったがそれには目もくれず、バイオドラゴンは地球へと向かっていった。

 そして──────

 

 

 

 ──────青い大空かきわけて、バイオドラゴンが地球へと到着した! 

 

「な、なんだ……!? あの巨大なロボットは……!」

 

 運動場へと着陸したバイオドラゴンは玉手箱のように出撃ドックを開き、中から、バイオロボが颯爽と登場した。

 

「君は……誰だ?」

 

 バイオロボは、そう言う機龍を手に取り捕まえた。

 

「な、なにやってんだバイオロボォ! どうしたんだァ!? ここは……前に観測していた地球という星じゃないか!」

 

 ピーボはバイオロボに向かって走り、叫んでいた。

 

「まさかあのロボットを止めようとしてるのか!? でも、今君が捕まえてるその人間は地球人なんだぞ!? 君のことを使いこなせない!」

 

 ピーボは機龍に指を差しながら言った。

 

「まさか……乗れって言ってるのか?」

 

 バイオロボはピーボには目もくれず、機龍の問いかけに応じるように顔を頷かせた。

 

「……分かった!」

 

 機龍はバイオロボの読んで字のごとく、手のひらの上でセンタイリングを構えた。

 

「エンゲージ!」

 

『クラップユアハンズ!』

 

 リズムに合わせ、両手を胸の前に突き出し、一拍。右手を顔の横に出し、二拍。右手を空を切るように横から切り、胸の前で止め一拍。そして最後に両手を下ろして二拍。

 

『バイオマン!!』

 

 ピーボはその赤い戦士を見て、驚愕した。

 

「あれは、何……あれはバイオマン!? バイオマンじゃないか!」

 

「ふんっ!」

 

 機龍はバイオロボに乗り込み、ブラックメガボイジャーにすかさず立ち向かった。空中へと飛び上がったバイオロボは、同じく空中を舞うブラックメガボイジャーをプロレス技の如く地面に叩きつける。

 そして相手を威嚇するように拳同士を叩き合わせ、構え直した。

 

「逃げろ! 建物の中は危険だ!」

「皆! 早く避難を!」

 

 晴渡と晩堂の2人は学内の生徒達の避難誘導に専念していた。

 

「よく分からないけど、バイオドラゴンの中なら安全だよ! 皆こっちに!」

 

 ピーボもそこに加勢するが、よく分からない金色のロボットのことなど誰も信用することが無かったので道行くもの皆遠ざかっていた。

 

「何でだよ〜!」

 

 その最中にも、バイオロボとブラックメガボイジャーの戦いは続いていた。レーザー砲やミサイル砲などによる攻撃で、バイオロボは窮地に立たされていた。この時空におけるバイオロボは、争いのない平和なバイオ星にいたために、戦闘用の整備を受けていなかった。そのため、使い切りのミサイルなどの質量兵器を持っておらず、遠距離戦は大の苦手だったのだ。

 

「くっ……!」

 

 乗組員であるレッドワンは仮面の奥で苦い顔をしていた。

 

(父さんを止めたい……だけど……どうすればいいんだ!)

 

 防戦一方のバイオロボ。彼を守っているバイオシールドも悲鳴を上げていた。その時、バイオロボはレッドワンの超電子頭脳に囁いた。

 

「……! そうか……そういうことか……!」

「ハハハハ! 私を認めぬ者は皆死ぬのだ!」

 

 遠隔攻撃を続けるブラックメガボイジャー。その前に、炎の円が現れた。

 

「……!? なんだこれは……!?」

 

 突然の出来事に困惑していると、炎の円は形を変え、細くなっていく。そして、こちらに向かって高速で回転してきた。

 

「ファイヤーバイオシールド!」

 

 それは、レッドワンの"発火(プロミネンス)"の能力で炎を纏った、バイオシールドだったのだ。高速で回転するファイヤーバイオシールドによりミサイルとビームは完璧に防がれてしまった。

 

「ちぃ……!」

 

 それによりブラックメガボイジャーは一瞬だが隙を見せた。それを、バイオロボとレッドワンは見逃さなかった。

 

「スーパーメーザー!」

 

 そう叫びながら、レッドワンは"発火(プロミネンス)"の能力を使い、スーパーメーザーに全てを包み込む火炎を灯した。

 

「父さん、目を覚ましてくれ! スーパーメーザー・ファイヤーソード!!」

 

 その掛け声と共に、ブラックメガボイジャーは機体を両断され、そのまま爆発し最期を迎えた。

 

「ぐああああああ……!」

 

 バイオロボとレッドワンの前に、悪は砕け散った。

 

 

 

「鮫山くん!」

 

 バイオロボから降りた機龍を、晩堂は笑顔で迎え入れた。

 

「すごいな……あんなロボットを動かして敵を倒したなんて」

 

 謙遜するように機龍は首を横に振った。

 

 そこに、ピーボが現れた。

 

「ちょっと! 説明してもらうからね! 君は一体何者なんだ、どうしてバイオマンになれる!? どうやってバイオロボをここに呼んだんだ!」

 

 質問責めをするピーボに、機龍は何も答えることができなかった。強いて言えば……。

 

「僕が、父さんに止めたいって、強く思って、叫んだから……かな……」

 

 ピーボはその返答に対して手に顎を乗せて考えた。

 

「もしかすると、君のバイオマンの超電子頭脳と、父さんを助けたいっていう強い思いが相乗して強い電波になり、遠く離れたバイオロボに信号として届いたのかもしれないね……」

 

 そう考察するピーボだったが、機龍と晩堂にとっては彼自身の存在が謎だったために、あまり話が頭に入らなかった。

 

「まあ何はともあれだ! 問題が解決したなら、僕らはバイオ星に帰るとするよ」

 

 そうして踵を返そうとしたピーボの前に、1人の男が現れた。

 ──────鮫山不動だ。

 

「父さん!」

 

 いち早く気づいた機龍は、すぐさま父の元に駆けつけた。ブラックメガボイジャーが爆発する寸前に脱出していた不動だったが、機械化されたパーツが半壊しており、ボロボロの状態だった。それは頭脳の方も例外ではなかった。

 

「父さん! しっかり!」

 

 息子の呼びかけに、最後の力を振り絞るように不動は答えた。

 

「機、龍……機龍、か……」

「父さん!」

「すまな……かった……どうやら……私はある者に、脳改造を……受けていたらしい……」

「脳改造……!? それじゃああれは、父さんの意思じゃ……」

 

 機龍は自分の父が自分の意思で凶行に及んだ訳ではないことを知り、心の底から安堵した。

 

「お前は、強くなったな……私が居なくても、私が揺らいでも、お前はいつも一直線だった……私達が産んだお前が……私の……一番の誇りだ……」

 

 そう言いながら、不動はメガレンジャーの指輪を機龍に託した。その時、自分が一番だった父が自分を認めてくれて、機龍は涙が止まらなかった。

 

「悪かったな……1人にして……もう……離れないから……」

 

 ──────そう言って、不動は意識を失った。

 

「父さん!? 父さん! 死なないでくれ! 父さーん!」

 

 ずぶ濡れの顔で、機龍は父の肩を揺らした。このままでは彼の命は失われてしまう。どうすればいいのか、機龍には分からなかった。

 

 自分に生を与えてくれた、父。

 

 自分を男手一つで育ててくれた、父。

 

 自分に科学を教えてくれた……父。

 

 その父が、今死の危機に瀕していることに、機龍は立ち向かえなかった。

 

「その人間を救いたいのか!?」

 

 しかしその時、機龍にピーボが叫んだ。

 

「僕らの星、バイオ星に連れて行けばどうにかなるかもしれない! あそこの科学力でどうにか治せるはずさ!」

「そうか……そうなのか!?」

 

 機龍は共に戦ったバイオロボのことを見た。すると、バイオロボは任せてくれと言わんばかりにゆっくり頷いた。

 

「良かった……良かった……!」

 

 機龍は父のことをゆっくりと抱きしめた。

 

「ただ……この電子頭脳だけが懸念点だな、これだけは未知の技術が使われてるみたいだ。でも、どうにかして見せるよ! バイオロボ! その人間のことを頼む!」

 

 機龍は、その最後のピーボの話が引っかかった。

 もし、自分が生きている間に父が蘇らなかったら、どうしよう。

 もし、それで二度と父に会えないとしたら……

 

 バイオロボは不動を持ち上げ、バイオドラゴンへと連れていった。ピーボもそれに続き、バイオドラゴンへと向かっていく。

 

「待ってくれ!」

 

 機龍が声を張り上げると、ピーボはすぐに振り向いた。

 

「……どうした?」

「……俺も行けないかな、バイオ星」

 

 ピーボは少し考え込んだ。

 

「……父親と一緒に居たいんだね。でも……バイオ星は危険だぞ」

「違う。俺の手で……父さんを直したいんだ。バイオ星の科学力でももし直せないんだったら、俺の力で、バイオ星の科学を発展させる。そして、父さんを蘇らせたいんだ」

 

 ピーボはその真摯な少年の気持ちを汲み取って、答えた。

 

「ハハ、バイオ星のことを少しも知らないくせに。いいよ。一緒に行こう。君のような若さを持つ青年こそが、文明を次のステップに進めるのかもしれないしね」

 

 機龍はそのピーボの答えに、屈託のない笑顔を見せた。

 

「じゃあ、行こうか!」

 

 ピーボはそうして、機龍の手を引いた。

 

「……うん。でも最後に、ちょっと待ってくれ」

 

 機龍はそう言うと、晩堂の前に立った。

 

「……どうした?」

「晩堂先生。僕の願いは叶いました。だから……これを渡したいんです」

 

 機龍はバイオマンと父から受け取ったメガレンジャーのセンタイリングを再び差し出した。

 

「俺には、もう持っている理由がないですから」

 

 そう言って微笑む機龍に、晩堂は答えた。

 

「……そうだな。だけどな、鮫山」

「え?」

「これは勝負に勝った者が手に入れるリングだ。勝負もついてないのに受け取るべきじゃない。そうだろう?」

 

 晩堂はそう言って顔を綻ばせた。

 

「……ちょ、ちょっと待ってください、どういう……」

「君たち親子を見てたら、私も悔しくなってきた。私とナンバーワンバトルで勝負して欲しい。もし私が勝ったら、指輪を渡せ」

 

 そう言いながら、晩堂はルパンレッドへとエンゲージした。

 

「……ああ……なるほど、そういうことですね!」

 

 全てを理解した機龍はそれに合わせて、レッドワンへとエンゲージした。

 

『いざ掴め! ナンバーーーーーッ! ワァァァァンッ!』

 

 応援空間のリングの上に立った二対の赤の戦士。仮面を付けた男女達からの歓声を受けながら、彼らのプライドを掛けた戦いが今、始まる。

 

「娘を救うこの気持ち、何が起ころうと変わらない! 子思い、負けない、ルパンレッド! 予告する、俺のお宝、いつか取り戻す!」

「恩を返すその日まで! 例え荒野も太陽の中も! 不撓不屈、レッドワン! 5番? 4番? 3番2番? いや……目指すは1番だ!」

 

『ナンバーワンバトル! レディ……ゴーーーーーーー!!』

 

 戦いのゴングが、空に響いた。

 

 

 

 エピローグ 王子墜落物語

 

 

 

 慧海学園から離れた、木々に囲まれた山奥。そこにはUFOが墜落していた。

 

「ケホッ……ケホッ……全く、何事だ……」

 

 墜落したUFOから這い出てきたのは、惑星アッサミカの王子、アッサムだった。アッサムは山から慧海学園に停まっているバイオドラゴンを発見した。

 

「……まさか、あの迷惑な宇宙船に激突したのではあるまいな……このままではアッサミカに帰れないではないか」

 

 宇宙に向かって発進するバイオドラゴンを見上げ、アッサムは途方に暮れるしか無かった。

 

「仕方ない……おや? この草は、紅茶(ティー)になる草ではないか。持ってきた紅茶(ティー)は全てダメになってしまったからな。迎えが来るまで、暫くはこの星で紅茶(ティー)を堪能するとするか……」

 

 迷惑に思いつつも、この不足の事態を面白く思ったアッサムは、地上へと歩を進めて行った。

 




 レッドワン

 指輪/センタイリング バイオマン
 契約者/鮫山機龍
 職業/慧海学園・1年生
 願い/宇宙に行って父と再会したい



発火(プロミネンス)」の能力を使い、武器に火炎を纏わせることが可能である。バイオソード、グリーンブーメラン、バイオアローなど多彩な武器を使用出来、ルパンレッド・晩堂深也とは激しいバトルを繰り広げた。指輪争奪戦が始まって以来行方不明になっていた自身の父、メガレッド・鮫山不動がブラックメガボイジャーに搭乗して現れ窮地に立つものの、バイオ星から降下したバイオロボに搭乗しブラックメガボイジャーを撃破。晩堂との親子愛ナンバーワンバトルに敗北し、指輪争奪戦から脱落した。その後はバイオ星に行き、父の治療のための研究をしている。



 メガレッド

 指輪/センタイリング メガレンジャー
 契約者/鮫山不動
 職業/宇宙科学者
 願い/宇宙の全てを知りたい


拡縮(スケーリング)」の指輪能力により、あらゆる物質を巨大化・縮小などさせることが可能である。不動は自身の制作したロボット・ブラックメガボイジャーを巨大化させ、宇宙への旅に出ていた。その旅の途中で謎の組織に改造・半機械化・地球への憎悪を増幅させられた状態で地球に帰還。息子である機龍と壮大なロボット戦を繰り広げたが、敗北。息子の機龍にメガレンジャーリングを託し、指輪争奪戦から退いた。




 科学者ノーワン

 生成ワード/科学 探究 栄光 人間 ナンバー1

 慧海学園・科学部部長の「科学の真髄を探究したい」という願いを元にジェネレイティブされたノーワン怪人。クジャクを思わせる姿をしており、青春ノーワン、ド根性ノーワンの部下として学園に潜入していた。
 晩堂を始末しようとしたところ目の前に立ち塞がった機龍に科学者ナンバーワンバトルを挑もうとしたが、ブラックメガボイジャーに踏み潰され戦闘不能となった。その後はボロボロで街を歩いていたところをゴジュウジャーに襲われ敗北した。
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