トリを飾るのはハリケンジャー、
TELTELボーズさんの3作目となります!
(X:@teltel_fumibo)
以下、作者様のまえがきです。
またまたお会いしましたね。FLTと同士の皆様の素敵な作品群の熱に当てられて蘇ったゴジュウジャーゾンビです。いつもTRPGで動かしてるキャラくらい濃い戦士書きたいなあと思ってたらいつの間にやら出来上がってしまった恐怖の産物ですが、お気に召すことを切に願っております。それでは皆様、お目とお時間を、あ拝借ゥ〜!!
べべぇん!!
「さぁさ皆様お立ち会いぃ〜!令和に返り咲きし女歌舞伎の立役者っ、ひかり様のお通りだよぉ〜っ!!」
ハキハキとよく通る声と三味線の音色に道行く人々が振り返れば、大通りを闊歩する紅い花々を目にするだろう。ある者は舞い、ある者は踊り、そのいずれもが赤と黒を基調とした豪奢な衣装と道具を身に着けた
「歌舞伎だぁ〜?バカ言ってんじゃねぇ!!」
粋な祭りに水を差したのは、柿色の着物を羽織った五十路あたりの男だった。不躾にも“ひかり様”の先を行く女衆たちをずかずかと掻き分けて皺の深い風貌と敵意を突きつけてくる。
「歌舞伎ってのはなぁ、俺たち野郎のモンなんだよ! ウン百年かけて貫き通して来た伝統を、お前らみたいなにわか芸人どもに名乗られちゃたまったもんじゃねぇわな!」
どうやら歌舞伎界にのさばる野郎どもの一人だったようだ。しかし“ひかり様”は動じない。そんな脅しを高らかに笑い飛ばす。
「はっはっはぁ!黙って聞いてりゃジジイがよぉくほたえることっ!」
「ジ、ジジイだとぉ!? 俺を誰だと思ってやがる!赤坂屋の大谷あk」
「誰だろうと知ったこっちゃあないよっ!」
「にゃ、にゃにぃ〜?」
大谷と名乗りかけた男の長引きそうな能書きを断ち、“ひかり様”はキッと啖呵を切る。
「あたしたちの歌舞伎は止めさせやしないっ!! 何処の誰にもっ! 絶っ対っにぃっ!!」
べべぇん!
迫力を伴って切った見栄はビリビリとあたりの空気を揺らし、見る者を竦ませる。しかし大谷はたじろいだものの、カッと喉を鳴らしてメンチを切った。
「…こっちにもメンツってモンがあんでぃ! 意地張るってなら…神妙にお縄を頂戴しやがれぃ!」
そうやって大谷が懐から取り出したのは、
「エンゲェジ!!」
センタイリング!
それは
ゴーグルファイブ!!
何も知らない者からすれば面妖な光景に思えるかもしれない。しかし“ひかり様”は不敵に頬をつり上げる。
「おおっと奇跡か偶然かっ! まさかお前も指輪持ちだったとは〜っ!! なぁらば丁度良いっ、あたしたちが晴れ舞台の
言うや否や“ひかり様”は隣の女衆に薙刀を放り渡し、
「ェエ〜ンゲェィジィ〜ッ!!」
べべぇん!!
三味線の音と共に銀の手甲に指輪を填める。
べんっ!べべんっ!べんべべんっ!!
続けざまに掻き鳴らされる三味線は、先ほど大谷が舞ったものと同じ旋律をなぞる。“ひかり様”は袖を張るように両腕を広げると一拍、くるりと身体を一回転させてさらに両腕を広げると二拍、反対方向に一回転して右手を突き出すと一拍、大きく髪を振り回して傾くと構えた左手に叩きつけること二拍、すると彼女の周囲に燃え盛る花吹雪が舞い踊り、着飾った豪奢な衣装はそのままに赤い戦士へと変貌させる。その顔はまさにハリケンレッド、それが属する忍風戦隊の名は…
ハリケンジャー!!
しかしその装いはただのハリケンレッドではない。戦隊考古学曰くかつて大江戸に現れたとされる歌舞伎装束めいた姿である。先ほど預けた薙刀を受け取った彼女は、堂々とその姿の名を語り上げる。
「やぁやぁやぁ! 遠からん者は音に聞けぃっ! 近くば寄って目にも見よぉっ! あたしこそは、時代を超え、伝統を超え、夢一つに集いし魂なりぃっ!!刀光ぉう!剣影ぇい!
べべぇんっ!!
“ひかり様”こと絢爛ハリケンレッドの名乗り口上が決まった。
「な、なんでえその随分と粋な出で立ちはよぅ!?」
ゴーグルレッドは身構えながら相手の姿を訝しむ。
「これこそ指輪の力、
いつの間にか鋒が傘に挿げ替わった薙刀を構えてひとたびくるりと回れば通常のハリケンレッドの姿が、いまひとたびくるりと回れば
「ハッ、何かと思えばただの虚仮威しとは笑わせやがるっ!」
そう吐き捨てたゴーグルレッドは女衆の行列の中を突っ切って絢爛ハリケンレッドめがけて駆けていく。
「フン! ハァ! テイヤァーッ!!」
パンチ!パンチ!キック! 大ぶりで次々と猛攻が繰り出される。対して絢爛ハリケンレッドはというと…
「ひらり! ひらり! あ、もうひとつひら〜り〜! 」
足運びによってくるり、くるりと回って受けて立つ。するとゴーグルレッドの拳や脚は紙一重で逸れていくのだ。大きくぴょんと跳び退いて、絢爛ハリケンレッドは煽り立てる。
「どうしたどうしたぁ? あたしにお縄を頂戴してくれるんじゃあなかったかぁ〜っ!?」
「ぬぅぅ〜舐めるなっ!
あ、
ゴーグルレッドは戦士としての固有武器であるレッドロープを取り出し、間合いの先の捕物目掛けて片端を投擲する。
「なんのっ! 巻き起こせ勇気のぉ〜電撃? 稲妻? いやさ熱っ風〜ぅ!!」
再び薙刀を和傘に変えると、天に向かってくるくると回し始める。やがて炎の竜巻が起こり、ロープを上空へ巻き上げていく。だが、それはゴーグルレッドの切り札を無力化しなかった。
「そんなんで凌いだつもりなら甘ぇっ! 俺の縄は
するとその言葉通り、レッドロープは何もない空中にぐるぐると巻き付いて張力を得る。否!空中には読んで字のごとく空気が存在する。指輪の力・
「とうっ!!」
ゴーグルレッドの身体が躍動する。縛った空気を視点にターザンの要領で加速していき、そのまま脚を絢爛ハリケンレッドに刺し出すその技は、さながら宙乗りである。
「スーパー歌舞伎蹴りぃッ!!」
加速が十二分に乗ったその蹴りは、絢爛ハリケンレッドが薙刀を振り下ろして迎撃するよりも明らかに早く胴に達するだろう。
捕った! ゴーグルレッドはそう確信した。
「おおおおっ!?」
だがその確信は突如襲いかかった斬撃によって断たれた。直後に絢爛ハリケンレッドの薙刀が振り下ろされるのが見える。まるで
「奇々怪々ッ! 摩訶不思議ィ! あたしの薙刀は時をも超えて悪を斬るゥッ!! これぞひかり流剣技・時空返しよぉ〜っ!!」
「んなっ!? バカな…ぐうっ!」
その面妖な技への疑問はすぐに痛みに塗りつぶされた。自身の勢いを逆手に取られた反撃がモロに入ったのだ、相当な痛手であることは明白だった。
「さぁさ止めの大立ち回りさぁっ! 皆の者、舞えや踊れっ!ひかり流超忍法・影の舞ぃ〜っ!!」
その号令と共に女衆が身の丈の倍はあろう障子を持って並び、行列も戦士たちも赤い影に覆う。そのうち真ん中で膝をついた影に、赤い猛攻が押し寄せる。左の女衆が舞い踊れば左から風の刃が、右の女衆が笛を吹けば右から火の玉が、そして真ん中の特徴的なシルエットの影がダッと左から右へと駆け抜ければ、止めの一閃がゴーグルレッドの影を斬り裂いた。
「ぐおおっ! ち、ちくしょーめ…っ」
障子を突き破って弾き飛ばされたゴーグルレッドから指輪が転げ落ち、大谷は元の着物姿に戻ってしまった。絢爛ハリケンレッドもまた顔当ての奥の面頬を開いて“ひかり様”の顔を晒し、ダン!と足を踏み鳴らすと、ゴーグルファイブの指輪が地面から飛び上がる。それをしかと掴み取った“ひかり様”は女歌舞伎衆に見せびらかすように大手を振って宣言した。
「あ、大勝利ぃい〜っ!!」
『えい!えい!おお〜っ!!』
そうして彼女らは狂乱のままに大通りを過ぎ去っていった。騒ぎを聞きつけた警察曰く、確かに行列を追っていたはずなのに、日が暮れるころには朧に霞んで姿を晦ましたとのことだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
べべぇん!!
「さぁて皆の衆! 今日も今日とて、あ、ご覧あれぇ〜!」
それからというもの、“ひかり様”ら傾奇者の女衆は幾度も街に現れた。初めは難色を示していた住民も、気付けば三味線の旋律に耳を奪われ、派手な行列に目を奪われ、そして“ひかり様”の芝居に心を奪われる。今やちょっとした風物詩と化しつつあった。三味線の音色に乗せて和傘で器用に回して遊ばせている指輪の中には、“ひかり様”の指輪と大谷から奪った指輪、さらにはもう一つ、胸にライオンの顔を持つロボットの絵をしたためた指輪もある。見る者が見ればライブマンの力を宿すものであると分かるだろうそれは、大谷と同じく寄って来た戦士を返り討ちにして得たものだ。それを皮切りに花魁道中程度の規模だった行進は今やちょっとした大名行列を連想する規模にまで膨れ上がっている。
「快っ進撃ぃ〜!! 迫りくる刺客をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、手にした指輪はぁはや三つ! あたしたちひかり流女歌舞伎衆にぃ〜?」
『敵はなぁーし!!』
べべぇん!!
舞い踊る女衆たちは前にも増して生き生きと躍動し、“ひかり様”の快進撃を盛り上げる。…死神が現れたのは、そんな折のことだった。
「騒がしいと思ったら、なかなか大物が釣れたねぇ…」
初夏にも入ろうという季節でありながら仕立ての良いスーツの上に黒い毛皮のコートを涼しげに着たその男は、女歌舞伎衆の行く先に割って入った。1代にしてかの大企業クオンAIコンツェルンを設立した今最も勢いのある若い社長、それが彼、クオンである。
「お前は僕の…獲物だ。エンゲージ」
そしてどうやら指輪の戦士でもあるらしい。しゃれこうべのように白い指輪を、同じく白い銃身と刃を伴う手甲に填めて静かに赤い軌跡を描く。やがてそれは傷痕のように痛々しく裂け拡がって男を包み込み、赤と黒の戦士へと変貌させる。その指輪の戦士の、否、
ガリュード!!
「リングハンター・ガリュード、お前たちに罰を与える」
「ええぃ珍妙な指輪狩りめぇっ! 妖魔必滅の薙刀ぁ、受けてみよぉ〜っ!!」
“ひかり様”は異質な相手を前に闘気を昂ぶらせ、面頬とバイザーを閉じて薙刀を構える。先日レッドファルコンなる戦士と戦った際、エンゲージの舞踊中に斬りかかられて以降、“ひかり様”はいついかなる時も絢爛ハリケンレッドの姿になれるようにしていた。どうやらガリュードも似た系統の無粋者らしく、囲う女衆もお構いなしに早速銃弾を放ってくる。絢爛ハリケンレッドが薙刀を持つ手と逆の手で和傘を差し出しまわすと、和傘の中心を渦巻く風が全ての銃弾を弾いて落とした。
「そっちも随分と珍妙な姿じゃないか。何の意味がある?」
「ぃ意味は無くとも意気があるっ! それこそまさしく“
「へぇ? ならこっちは遠慮なく無粋な真似をしようか」
そうやってガリュードは二つの指輪を取り出す。それらの形はユニバース戦士たちが使うものと同じ金縁のものであり、一つ、また一つと白い手甲銃に装填してはコックする。ガリュードの前方に放たれた二閃の光はやがて二人の戦士・ファイブレッドとティラノレンジャーを形作る。
ファイブマン!
ジュウレンジャー!
指輪狩りに加勢させられた傀儡たちは、片やVソード、片や龍撃剣を構えて絢爛ハリケンレッドに襲いかかる。
「多勢に無勢とは卑怯なりぃ! だが、ものの数ではないわあ〜っ!!」
絢爛ハリケンレッドもお返しとばかりに左半身を手前に突き出し拍手を二度、四度と打ち鳴らすと、二つの指輪の力が顕現する。
「“っ
ゴーグルファイブ!ライブマン!フィニーッシュ!!
絢爛ハリケンレッドが手に現れたレッドロープを丸ごと放り投げると、端の片方がティラノレンジャーの動きを封じる。さらに、もう片方の端がまるで蛇のようにひとりでに動き出し、先行しようとするファイブレッドに絡みついて自由を奪う。やがて二体は一絡げにされ、いつの間にか空中を旋回して加速していたファルコンセイバーに諸共貫かれて消滅した。
「むうっ! 木偶どもを獲っても指輪は捕れねぇかぁ〜? しかぁし! 何をしようがぁ無ぅ〜駄ぁ〜よぉ〜っ!!」
手駒をあっさりと屠られたガリュードだが、ふっ、と一笑に付した。
「いや? 引きで見たおかげでハッキリしたよ、この茶番劇のカラクリがねぇ」
ガリュードはそう嘯くと、出し抜けにあたり一面に銃撃をばら撒いた。
「なっ!?」
放たれた凶弾たちは当然取り巻きの女衆たちを撃ち抜く。右から、左から、悲鳴と苦悶の声が上がる。絢爛ハリケンレッドは人を人とも思わない凶行に戦慄した…
「ああごめん、ちゃんとお前にもくれてやるよ」
周囲への弾幕の濃度はそのままに、ガリュードはさらに絢爛ハリケンレッドにも乱射する。…っ!このままだと拙い、演出を放棄しなければ庇いきれない! そう判断した
「…くっ」
「全ては君の仕込みだったわけだ…
そうやって炙り出されてしまった戦士は、指輪の力によって漆黒の装束に身を包んだハリケンレッド、名付けて
「…驚いた、お姉ちゃんとわたしの“
指輪の力の真名を口に出したと同時に、全ての“偽装”が暴かれる。わたしの黒衣は剥がれて元の赤い戦士になり、“ひかり様”の化粧と衣装は霧散しシャツとハーフパンツを質素に着古した双子の姉・
「まさか指輪の力で見た目だけ戦士になれるとは。でもタネが割れればつまらない芸だ、そこのお姉ちゃんみたいにね」
「…つまらない芸、だって?」
聞き捨てならなかった。わたしのちゃちな手品ではない。お姉ちゃんを並べて侮辱されたことにだ。
「何でもできるみたいな顔をしておいて、妹がいなければ何の面白みもないただの小市民。そんな役者をつまらない以外に何て言えば良い?」
「…っ」
お姉ちゃんがガリュードの言葉に唇を噛む。聞く必要ないよ、こいつはお姉ちゃんのことをなんにもわかってない。
「違う。お姉ちゃんは最高の役者だ。わたしはただ…お姉ちゃんを最っ高に最高にしてるだけだ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お姉ちゃん、あの日のお姉ちゃんの目、とても眩しかったんだ。
施設育ちのわたしたち姉妹は、来る日を生きのびていくだけで精一杯だった。この国に義務教育があるおかげで小学校には通えてたけど、散々みずぼらしさを揶揄われたなぁ。わたしはいつも泣いていて、そのたびにお姉ちゃんが守ってくれた。お姉ちゃんだって同じくらい傷ついてたのに。埃と涙に目を晦ませながら、わたしたちは身を寄せ合って生きるために生きていた。
その日は社会見学で歌舞伎座に連れて行かれたんだった。客席から見上げた表舞台は見たことのない熱と気迫に溢れていて、まるで違う世界に来てしまったような心地になって戸惑いながらお姉ちゃんの方を見たんだ。…初めて光が差したって顔してた。舞台を見上げるお姉ちゃんの瞳が眩しくって、ぽかんとして見入っちゃったな。そして最っ高にキラキラした顔を向けて、こう言ったの。
「あたし、あそこに行きたい!一緒に行こ!!」
昔からお姉ちゃんは大切なものだったけど、その日からはわたしにとって一番眩しい光にもなった。…叶えてあげたかった、ううん、叶えたかったんだ。お姉ちゃんもわたしも自分の足で行けるところにはどこへも行って、一生懸命我流で身につけられる芸は全部磨いてきた。
でも、そうしていくうちにわたしたちは気づいてしまった。名だたる歌舞伎役者は皆、名門の家に生まれた男の人たちだけだということに。貧乏なだけならまだいいだろう、努力と運次第では誰かの目を引いて拾って貰えるなんて御伽話もあるかもしれない。けど女であるという事実だけは、頑なにお姉ちゃんを夢から遠ざけてきた。
生まれたその日から夢が潰える運命が決まっている、なんでそんなことを決めつけられなきゃいけないの。お姉ちゃんが輝くのを認めない世界なんて嘘っぱちだ。例えどんな手を使っても、どんな形でも、お姉ちゃんの夢は絶対に叶えなきゃ。そんなわたしの願いは
この力が、この争奪戦が、 曲がりなりにもわたしたちが歌舞伎を演れる最後のチャンスだから…!
「…任せてお姉ちゃん」
「火狩? 何を…」
「超忍法!消え身の術!」
訝しむお姉ちゃんにも構わず、わたしは煙玉を投げてガリュードの視界を眩ませる。
「逃がすと思う?」
無論、霧中に乱射することも厭わないだろう冷酷な刺客を相手にこの逃げ方は下策だと分かっている。だからこそ
間もなく、ガリュードの目の前に絢爛ハリケンレッドが煙を割って現れた。薙刀を持ってゆらりと応戦の構えを取る。
「芸がないなぁ、また偽装だろ?」
さすがにすぐに気づかれる。
「どうせお姉ちゃんを守りにくるのはわかりきってるのにねぇ!」
そうやってガリュードは偽物と分かりきった絢爛ハリケンレッドを撃たんとする。しかしガリュードの思惑と異なり、銃弾は何の妨害もなく絢爛ハリケンレッドの身体を貫いていった。
「…何?」
…ガリュードの誤算は二つある。一つは絢爛ハリケンレッドの演者が宇上日刈ですらないこと。それはお姉ちゃんとは似ても似つかない、ライブマンの指輪で動かしたただの案山子だ。上手く罠にかかったことを確かめたわたしは、三味線のネックに収まっていた忍者刀・ハヤテ丸を引き抜いてガリュードの死角に襲いかかる。
「少しは工夫したんだろうけど、やることが同じなら結果は…っ!!」
予期していたかの如くわたしの迫る方角へ銃口と目線を向き直すガリュードは、しかし予想外の光景に驚愕することになる…
ハリケンジャーの指輪、
「逃がした…ってわけだ」
語気に微かに怒りを滲ませたガリュードは、銃口をその向きのままに引き金を引く。わたしなんて構わずにお姉ちゃんを追われないように指輪を一つだけ持ってきたのだ。こうして仕掛けは全てわたしの意図した通りに機能した。欲を言えば刺し違えてでもこの指輪狩りを始末出来れば僥倖だったが、やはり戦士でもない一般人では到底
「…お姉ちゃんの晴れ舞台、見たかったなぁ」
しかし覚悟した死は訪れなかった。赤い戦士がガリュードとわたしの間に割り込んだからだ。それは今や紛うことなきハリケンレッドとなった
「…お膳立てしてもらったのに、ごめんね」
「っ、お姉ちゃん!!」
「…嫌よ、火狩。あたしの夢はね、火狩を連れて行くところまで含めて夢なの。あんたがいないと、意味ないでしょ…」
「…そんなの、わたしだって! わたしだって、お姉ちゃんがいないと嫌だよ…!」
息も絶え絶えにわたしの肩にもたれかかるお姉ちゃん越しに、ガリュードが未だ銃口を向けているのが見える。お姉ちゃんが本来の契約者ではないからか、またはわたしがまだライブマンの指輪を所持しているからか、
「…っ、
その力を銀のテガソードに当てると同時に、指輪を脇に放り捨てる。銀のテガソードは刃先を鳥の羽のごとく拡げると、宙に投げ出された指輪を中指の先に引っ掛けてまたたく間に空高く飛んでいった。
「…指輪、見失っちゃうよ。追いかけなくていいの?」
もはや指輪狩りはわたしたちから得るものが何もない。さんざコケにされた腹いせに姉妹ごと撃ち殺す可能性も否定できないが、少しでもお姉ちゃんを守ろうと細っちくて頼りない腕で姉の身体を抱えて庇い、ガリュードに注意を向け続ける。
「…チッ」
舌打ちを吐き捨てて、指輪狩りは銀のテガソードが飛び去った方へと消えていった。
こうして、わたしたちは夢を放棄したのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜~〜
「…随分としけたツラしてんじゃねぇか」
ボロボロの身体を公園の隅で休めるわたしたち姉妹の前に、見覚えのある壮年男性が歩み寄ってきた。
「…ああ、この前のジジ…おじいさんね」
「…まだおじさんだバカ」
気にしているのだろうか、僅かに間を空けて大谷は自らの年齢を特定する呼称を否定した。
「あの、この前はごめんなさい。最初で最後のチャンスだったから、夢を見ていたかったんです」
わかっていた。お姉ちゃんの願いを叶えるならば“
「…なんだ、やめちまうのか?ウチで拾ってやろうと思ったが、要らねえ世話だったか?」
「「…え?」」
てっきり怒鳴られるものだと思ってたから、存外優しい声色と言葉にわたしたちは戸惑いを隠せなかった。
「テメェらの芸、にわかだか悪か無かったよ。俺らを差し置いて歌舞伎を名乗ったのはいただけねぇが、このまま埋もれさせるにゃ惜しい。お前ら弟子に来い、鍛え直してやる」
「でも…あたしたちは女だよ?」
「だからハナから諦めるってか? カッ! 粋じゃねぇ!! そんなもんは芝居で黙らせてやりゃいいだろうが!!」
そこでようやく大谷は声を荒げた。しかし怒声とは違い、鼓舞をするような声の張り方だった。
「言っとくがな、この業界は甘かねぇぞ。恵まれた奴が赤ん坊の頃から血の滲む努力して、そんな奴が何人も膝折る中でなお生き残って来た連中でやっとこさ繋いできたのが今の伝統だ。真っ向から歯向かうにゃ生半可な覚悟じゃ足りねえ」
後に聞いたことだが、大谷もまた貧乏な生まれから血反吐をぶち撒ける思いで腕を磨き看板役者にまで上り詰めた身だったそうだ。
「夢を鼻っ面からぶち折られてもなお食らいつく気があるってんなら、赤坂屋が持ってる伝統を叩き込んでやる。全部食らって、全部ねじ伏せに来いっ!!」
ああ、なんてめちゃくちゃな道だろう。そんな茨の道は、きっとお姉ちゃんなら誰よりも力強く踏破してくれるに違いない。何より、わたしがそうさせたい!!
「…ここで挑まなきゃ
うん、きっとお姉ちゃんならそう言うって信じてた!
「やろうよ! わたし、お姉ちゃんを夢まで連れて行きたい!」
珍しく声を弾ませたわたしにお姉ちゃんは目を丸くするが、すぐにいつものギラギラ輝く不敵な笑顔で応えてみせた。
「…生意気よ火狩。あたしが火狩を夢まで連れてくの!
そんなわたしたちを見て、大谷はニヤリと白い歯を覗かせる。
「…ハラは決まったみてぇだな。なら吹かせてみやがれ、新しい風ってぇやつをな!」
「「お願いします! 師匠っ!!」」
三つの声が、夕暮れの公園にこだました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつかの未来、歌舞伎座の壇上に赤坂屋一門の名だたる役者たちが座し、それぞれの口上を諳んじていく。
「還暦過ぎれどなお現役ぃ〜!掴みは上々ぅ若葉にゃ負けぬぅ〜!ぁ赤坂屋家長・五代目ぇ
べべぇん!!
「女だてらにぃ男勝りぃ〜!掟破りのぉ〜後継者ぁ〜!ぁ赤坂屋一門・初代ぃ
べべぇんっ!!
役者たちを讃えるように三味線の音色が響く。挨拶口上には異色ながらも観客を拍手に駆り立てるように撥を弾くわたしこそ、赤坂屋お抱えの一番裏方、
カンッ!カンッ!カン!カン!カンカンカンカッカッカッカッ…
ヵ
ハリケンレッド
指輪/センタイリング ハリケンジャー
契約者/宇上 日刈(うかみ ひかり)…もとい、宇上 火狩(かがり)
職業/自称歌舞伎役者…もとい、自称裏方役者
願い/歌舞伎界ナンバーワン…もとい、姉の夢の成就
ひかり流女歌舞伎衆の立役者を自称する傾奇者の女。「
…その正体は指輪能力によって見た目だけ取り繕われた影武者。真の契約者はその双子の妹・火狩であり、「
その後、姉妹揃って赤坂屋の門戸を叩き、地獄も温い猛特訓と紆余曲折の末、伝統歌舞伎における前代未聞の女役者・初代宇上
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ゴーグルレッド
指輪/センタイリング ゴーグルファイブ
契約者/
職業/歌舞伎役者
願い/活きのいい後継者を捕まえる
歌舞伎界の名門・赤坂屋のベテラン歌舞伎役者。歌舞伎を自称するハリケンレッド・宇上日刈らの横暴をとっちめるべく「
かつては貧しい家の出身ながら赤松屋の門下で死に物狂いで芸を磨き、五十路でようやく一門の家長にして看板役者にまで上り詰めた。生まれで夢を否定されることに反感を持っており、後継者には自身と同等以上の反骨精神と熱意を持った者をと願っていた。そんな中で騒ぎを起こしていた宇上姉妹を見いだし、彼女らを門下に誘った。
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センタイリング ライブマン
レッドファルコンにエンゲージすることができるセンタイリング。超獣戦隊ライブマンのパワーが込められている。この指輪を用いた者は非生物を一時的に動物のように動かし操る「
以下、主催者の壱肆陸のコメントです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
こんなに企画が大きくなるとは思ってもなく、なんと全部で50作ジャスト!参加者と読者の皆々様に支えられ、戦隊愛に溢れた企画にすることができました!
投稿作はこれで全部……の予定だったのですが、
続編やクロスオーバー作を書きたいという方、新しく指輪の物語を書きたい方に挙手いただきまして、番外編集「ユニバース戦士補ジュウ計画 EXTRA ROUND」の投稿が決定いたしました!
今のところ7月の投稿を予定しております。
それまで少しではありますが、お待ちいただければと思います!
もうちょっとだけ続きます!よろしくお願いします!