O-kingさんの作品になります。
(X:@OKing0king)
俺は、この世界が嫌いだ。
才能や運で優劣がはっきりついてしまう……この世界が。
努力しても、必死に足掻いても、俺の人生は報われていなかった。
大好きなサッカーで活躍したくて入学した強豪校。
サッカー才能に恵まれてる奴に囲まれた結果、俺は晩年ベンチだった。
キラキラしたキャンパスライフに憧れて受験した、人気の大学。
勉強したのに、試験は例年に比べ難化。得意科目での得点を潰され、不合格だった。
ここは、第二志望にしていた大学。今は大学一年生。
「は──っ」
「おーい樹! 何ため息ついてんだよ」
「次空きコマだろ? ラーメンいくけど、お前も来る?」
「お、おう……」
正直大学生活は……何も楽しくない。何故なら俺には特に才能もない平々凡々な男だからだ。
何か特別な力もなく、キラキラな人生のレールがある、選ばれし者とは違う。
しかし、そんな俺にも奇跡の出来事があった。
「なんだこれ?」
俺が拾ったのは、金色の不思議な形をした指輪。
何だか宝石のようなイラストが描かれている。これを指につけてみると……
「うわっ!! なんだよここっ!?」
「我が名は巨神テガソード……」
「テガソード……?」
「巨神……神ってことか?」
「そうだ。その指輪選ばれし者の指輪だ。指輪を全て集めれば、願いを叶えてやる」
「選ばれし……者……? 俺が……?」
俺はテガソードという神に選ばれし者だったらしい。
才能のあるやつに揉まれて、何にも選ばれることのなかった俺……。
ついに、俺が認めてもらえる時が来た……!! 選ばれし者になったんだ……!!
「やってやるよ! テガソード!!」
そう誓って気づけば半月ほど経っていた。
俺は神に……指輪に選ばれた。きっと眠ってる才能があるに違いない。
なのに……指輪が見つかるどころか、俺の人生は、前となんら変わらなかった。
~放課後~
大学の授業が終わって、近くの広場に意味もなくやってきた。
「うわ……あいつら楽しそうだなぁ」
SNSを見ると、一緒に大学を目指してた高校の頃の友達は、俺の着たかった大学でキャンパスライフを楽しんでいるのがわかった。行きたい大学に行って、楽しんで……。
「キラキラしてんな……なのに、俺は……」
才能があるやつは羨ましい。努力しなくても、キラキラした未来がお迎えに来てくれる。
「なんだよ……何も変わんねぇじゃん……」
指輪を手に入れられる素質があるはずなのに、何で何も変わらないんだ……そう考えていた。
すると、街の人の悲鳴が次々と聞こえてきた。
「私の芸術を認めよ! これぞ、芸術の答え! 最高傑作!」
「芸術の天才である私だからこそ完成できる……完璧な絵画! 彫刻!!」
「さぁ褒めよ! 認めよ!」
「な、なんだあいつ……」
そこには人間ではない何かが、いろんな人に絵を見せつけていた。
美術に関しては素人だけど……正直、めちゃくちゃ上手い絵だった。
すると……
「ん? お前も私の芸術に魅了されたかぁ?」
「素晴らしいだろぉ? ほら……もっと見たまえ! 私の作品をぉぉ!!」
怪物が俺にズカズカと近づいてきた。別に顔は怖くないけど……
人間とはかけ離れた、見たことのないような姿に、俺はビビっていた。
「や、やめろ……! 来んな……!!」
そこへやってきたのは……
「やめろ! ノーワン!!」
「き……貴様はゴジュウジャー!!」
ゴジュウジャー……? と呼ばれる全身緑色のやつが空から飛んできた。
なんなんだよ……次から次へと……!!
「君、大丈夫か? 怪我は?」
「あ、いや……大丈夫」
「邪魔をするなゴジュウジャー! 私はそいつに、芸術を認めさせるのだ!」
何だか変なことになってきちゃった……
俺なんかが勝てるわけないし、この緑の人、なんとかしてくんないかな……と思っていると
「武器を持たぬ若人を相手にするとは、卑怯だ!」
「僕も一緒に戦う……!」
「えっ……一緒に……?」
「良いだろう。ならば、どちらが完璧な芸術作品を作れるか勝負といこう」
「私は芸術の天才……2人がかりでかかってくるが良い!」
「えぇ……?」
《芸術ナンバーワンバトルッ!! Ready……? GO!!》
「制限時間は日没まで! 再びここに、芸術作品をもってくるのだ!!」
そう言い残し、怪物は何故か広場の丸街灯へ消えていった。
「とりあえず……これで一安心だな」
「大丈夫か?」
そう言って、緑の仮面が消え姿を見せてくれた。
現れたのは、ぱっと見高校生……俺より年下だったことに驚きを隠せない。
「あ、ありがと……」
「てか、高校生だったんだ。すげぇな」
「かっこわりぃよな、俺。高校生に守ってもらっちゃって」
「やっぱ、選ばれしものは違う……ってか??」
「……」
「わけありって感じっこだな。話、聞かせてくれないか?」
こんな初対面の高校生に話すなんて、普通に考えてどうかしてる。
でも何故か、この子には自分のことを素直に話すことができた。なんなんだろ、色々物事を知っている雰囲気っていうか……そうして、今まであったことや、指輪に選ばれたこと、たくさん話した。
そうして俺も……彼の名前が猛原禽次郎ということ、俺と同じ指輪の戦士であるということを知った。
「なるほど……いっちゃんの過去に……そういうことがあったのか」
「俺は選ばれたはずなんだ……。才能や素質があるはずなんだ」
(ん……? いっちゃん?? 俺のこと??)
「……」
「わかった、それじゃあ行こう」
「は? どこに……?」
「芸術ナンバーワンバトルだよ。早くしないと日没になってしまう」
「でも……あの化け物、めちゃくちゃ絵が上手かった。勝てるわけねぇだろ……」
「才能のある奴に、絵なんかまともに習ってない俺が何したって勝てるわけねぇって……」
「まぁまぁ! とりあえず、やってみようじゃないか」
こうして、半強制的にお絵描きタイムが始まった。
あんなこと言ってたけど禽次郎も特別絵が上手いわけじゃなかった。
何というか……可もなく不可もなく……普通って感じの絵。
「うぅぅぅん……。やっぱり絵を描くっていうのは難しいなぁ」
「言っただろ? 俺たちが何したって才能のある奴には勝てないって」
「才能のある人間は、何したって上手くいく。だからキラキラなレールに乗ってるだけで良いんだ」
「そんな何しなくても無敵の奴らに、俺たちが争ったって……勝負は決まってる」
「……」
「少し、でかけないか?」
「で、でかける? 絵はどうすんの?」
「まぁまぁ、ちょっと……いんすぴれーしょん? を養うために、な?」
そうして禽次郎に連れてこられたのは、さっきの広場から少し離れたところにある小さな公園だった。俺は禽次郎に言われて、何故か公園の茂みの中に隠れることになった。
「ちょっと……どうすんだよ、これで」
「あそこ、見てくれ」
禽次郎が指さしたのは、禽次郎と同じ高校生くらいの男だった。
鉛筆を何本も用意していて、彼の周りには何枚ものデッサンと、失敗したのがうかがえるグチャグチャにまとめられた画用紙だった。どうやら、絵を描く練習をしているらしい。
「絵を描く練習していんのかな」
「彼……僕の孫なんだ」
「ふーん」
「……」
「……え?」
「これを見てくれ。彼の描いた絵だ」
「孫ってどういうこと? ってかうんまっ!? 何この絵!? あいつが描いたの?」
禽次郎が見せてきたのは、彼が描いたらしい絵やデッサンの数々だった。
どれもこれもプロ並みに上手いものばかり。才能がある! って感じのものだ。
「ここまで描けるのに、なんであそこまで練習してるんだろう? 十分上手いのに、本人は納得してないってこと?」
「もちろん、十分過ぎるほど上手い。でもナンバーワンになりたければ努力しなければならないんだ」
「確かに、才能やセンスは大事かもしれない。でもそれを持ってしても敵わないことだってある」
「……」
「天才だって陰で頑張ってるんだ。君はどうかな?」
「正直、才能があるやつは努力なんかしなくても力を発揮できるのかと思ってたわ」
「でも才能があるやつもこうして努力してるって考えると……最初から諦めモードの俺が、なんか馬鹿馬鹿しくなってきたわ」
「もしかしたら高校の時も、もっと努力できたの……かなぁ」
言語化するのは難しいけど……
何だか自分の中で、気持ちが前向きになったような気がした。
「禽次郎、俺やってみるよ」
「才能があるかないか関係なく、今俺ができることをやってみるわ」
「若人なんだから、それくらい明るいパーリィな顔が似合うぞっ!」
「おいおい、禽次郎の方が年下のくせにぃ」
そうして、俺たちは広場に戻り絵を描き続けた。
才能はないかもしれない、でも今自分が持っているものを全力でぶつけていく。
そして……日没がやってきた。
「ふむ。この芸術の天才である私との勝負から逃げなかったことは褒めてやる」
「安心しろ。不合理に勝敗を決めるつもりはない」
「最近我らノーワンの中で流行っている、アーイー君たちの多数決で決める方法を取らせてもらおう」
こいつらも敵の仲間なんじゃないかな……とか思いつつ、
俺と禽次郎、そして相手である芸術ノーワンという怪物は、それぞれ描いた絵を見せ合う。
まずは、芸術ノーワンから。
「私の絵は……これだ!」
「どうだ! この無駄のない完璧を追求した絵! 色使い、構造、テーマ……すべてがお手本中のお手本! さぁ、私を褒めよ!」
確かに上手い……俺のなんかよりも遥かに……何だろう、絵が上手い人が描いた絵って感じで教科書とかにも載ってそう……これ勝てるのか?
そう悩む間に、続いて禽次郎が見せつける。
「それはどうかな! 僕の絵は……これだぁ!」
見せたのは湯呑みと……和菓子……? お茶会? の絵? どういうテーマ?
「テーマは……茶呑みパーティぃ!! ふぉおおおおおっ!!」
こんなキャラだったっけ……
「なかなかやるな、ゴジュウイーグル。では最後はお前の番だ」
「お、俺の絵は……。これだっ!!」
バンッ!!
「て、テーマは……俺にとっての……サッカー……」
「……」
「ふふっ……」
「ふはははははっっ!! なんだその絵は!!」
「サッカーの絵を描くならもっと選手に寄った構図にしなくては! 何だこの構図は!」
「それにこの色!! 芝生の色は緑色!! そんなこともわからないのかぁ!」
「ダメだダメだっ!! これがサッカーの絵? 笑わせるなっ!」
「……」
「笑うなっ!!」
「な、何だと!?」
「いっちゃんのこの絵、素晴らしいとは思わないのか!」
「この斬新なアングル……きっと、ベンチから他の子のプレイを見ているのだろう……」
「芝生を青っぽく描いたのは、いっちゃんの悔しさが滲み出てるんだろう」
「隣の芝は青く見えるってことだぁっ!!」
「な、なんだと!?」
「き、禽次郎……」
「芸術ノーワン。芸術に答えなどない」
「ましてや才能に自惚れて、自分以外の……努力している人を侮辱するとは芸術失格!」
「なっ!! なんだとっ……!!」
膝から崩れ落ちる芸術ノーワン。
そして、禽次郎の言葉を聞き泣き崩れるアーイー(涙は出ていない)。
俺もそんなアーイーのことは言えず、涙がこぼれそうになっていた。
「禽次郎……ありがとう」
「僕にはこんな斬新な絵は描けなかった。いっちゃんこそが、芸術ナンバーワン!」
「そ、そうはいくか……!」
明らかに怒っている様子の芸術ノーワンが立ち上がる。
アーイーも切り替えて、戦闘準備に入っていた。確実に倒しにくる目をしている。
「私の才能をよくも否定してくれたな!! 才能のない凡人のくせにっ!!」
「いっちゃん……今度は一緒に戦ってくれるか?」
「高校生に任せっきりだなんて……ダサいからね。少しは先輩らしいとこ見せなきゃ!」
「エンゲージ!!」
《ゴジュウイーグル!!》
《キラメイジャー!!》
「うわっ、眩しっ」
「こういうのガラじゃないんだけどなぁ……」
「そうか? 意外と似合ってるぞ~?」
「「いざ掴め!! ナンバ────ワアアアアアンッ!!」」
「芸術、それは人を魅了させるもの!!」
「私が芸術の模範解答、芸術ノーワン!!」
「爆発させます、あなたのハートを!!」
「才能なんて関係ない……最初っから甘えない!」
「自分にできることをぶつけたい!!」
「チャララッといこうよ! ゴジュウイーグル!」
「自分の力で、未来の行き先を変えてやる! キラメイレッド!!」
「「キラキラした芸術みたいな未来を、この手で掴む!」」
「「No.1 Battle !! Ready……? Go!!」」
爆弾を投げつけ、攻撃をする芸術ノーワン。それを華麗に回避するゴジュウイーグル。
俺も真似して、爆撃の中を掻い潜り、芸術ノーワンの懐に突っ込む。
「才能あるからって……調子に乗るなぁぁあああっ!!」
「おりゃあああああっ!!」
「ぐはっ……!!」
「あ……当たった……!!」
「うんうん♪ 若人は、これくらいエネルギッシュな方が良い!」
「さぁ、いっちゃん! 仕上げだ」
「よっしゃあ!!」
そうして禽次郎は胸の部分から弓矢のようなものを取り出す。
「「イーグルシューター 50!!」」
「……!! そうだ!!」
「「ひらめき────んぐっ!!」」
「な、なんじゃ!!」
俺にもよくわからない……なんで意味わからん言葉叫んだのかもわからない。
でも、とにかく自分が思った方向へ動いてみた。
今できることを……自分が持っているものを……最大限にぶつけられるように……
「「できた!!」」
俺が描いたのは、禽次郎の出した弓矢だ。
なんとびっくり、その画用紙から同じ弓矢が飛び出してきた。
「……!?」
「すごいなぁ! そんなこともできるのか!?」
「これで、僕とお揃っちだなっ!」
「あぁ! 行こうぜ!!」
「「ダブル・イーグルシュートッ!!」」
禽次郎と俺が構えた二つの弓から、同時に無数の矢が芸術ノーワンに向けて放たれる。
そして……
「ぐはああああっ!!」
「今だっ!!」
「「フィニッシュフィンガー!! イーグル!!」」
「そりゃあああっ!!」
「げ、芸術は……!!」
「爆発だ──────っ!!」
もはやこれが言いたかっただけなのだろうか。
断末魔を残して、芸術ノーワンは爆散していった。
「さて、ノーワンも倒したところだし……」
「ん? まだ何かあるの? 禽次郎」
「忘れちゃいけない。僕も気が乗るわけではないが……」
そういって彼は、自らの指輪を見せてきた。
それは、いわゆる「指輪争奪戦」の合図だと感じられた。
「少し気まずいだろうし、日を置くか?」
「いや……覚悟を決めたよ」
「この指輪争奪戦が、俺を変えてくれる気がするから」
「禽次郎……頼む……! 俺と指輪バトルをしてくれ……!!」
「いっちゃん……! あぁ! 今の君となら、正々堂々……パーリィな試合ができそうだ!」
───そして、そんな争奪戦から1ヶ月ほど経ち。
「おーい、樹!」
「……? お前、資格の勉強してんの?」
「あぁ、俺将来入りたい企業が見つかったんだ」
「スク○ッチっていうんだけど、そこでスポーツ選手のユニフォームとかデザインする部署があってさ、そこに入れたらなぁって」
「いやいや、あそこの倍率とんでもないだろ?」
「才能ある人が入るとこだよなー」
「俺たち凡人には夢のまた夢だよなー」
それでも良い。才能があるやつは確かにいる。
でも、才能がある奴だけが勝ち続けられるわけじゃない。
勝ち続けられるのは、自分をしっかり持ってる奴と……諦めず努力ができる奴だ。
そういうやつらが、キラキラした未来を掴み取るんだろうな。
指輪争奪戦で勝ち続けるのは……どんなやつなのかな。
是非とも禽次郎には、俺の分まで頑張ってほしいな。
そういえば……孫? とか言ってた気がするんだけど、どういうことだったんだろう。聞き忘れたな。