???「やぁ、初めまして。」
???「『彼女』とは、随分と仲良くしてくれているようだね。」
???「なに、焦って聞かなくてもいいさ。どの道、これから少々時間を貰うのだからね。」
???「……さぁ、こっちに来るといい。この『必然』を使わないというのも勿体ないというものだ。」
???「夢から覚めるその刻まで。少しばかり話をしようじゃないか。」
プロローグ
僕は彼女に促されるまま、目の前にある椅子に腰かける。
白を基調とした、外の景色が一望できるバルコニー。
その外には街の光に掻き消された、霞んだ星空が散りばめられている。
目の前の長いテーブルにはたくさんのお菓子が所狭しと置かれており、夜風に吹かれ甘い香りが鼻腔をくすぐっていた。
???「さぁ、空いている席に座ってくれ。」
「……失礼します。」
僕はテーブルの傍にある空席に腰掛ける。
すると、目の前の少女も、反対側の席へと腰掛けた。
???「まずは、自己紹介といこう。」
セイア「私は百合園セイア。ティーパーティーの一人であり、サンクトゥス分派の首長をしている。」
「あなたが、百合園セイア……。」
目の前にいる少女が、かつてアリウスがターゲットとしていた人……。
セイア「その様子だと、私の姿までは知らなかったようだね。」
「はい……あなたを襲う実行犯達は情報を与えられていたのだと思いますが……私は、実戦場に出る立場ではなかったので、概ねの情報しか聞いていません。」
セイア「……なるほど、そうか。」
セイア「では次に……念の為に聞いておきたい。君の名前は?」
彼女の問いに……僕はノイズの走る、とある『言葉』を発した。
「…… 〇〇〇です。」
〇〇〇。
僕の名前
セイア「……なるほど、やはり君が……。」
そういいながら、彼女は考えを纏めるかのように視線をしたに向けた。
「私を知っているのですか?」
セイア「あぁ、君の
セイア「だが、君という存在そのものが余りにも珍しいからね。一応、直接聞いておきたかったんだ。」
「……ひとつ質問をいいですか?」
セイア「あぁ、構わないよ。」
いくつか聞きたいことはあった。
だが、まずはこれが知りたかった。
「……私が珍しいとは、一体?」
一瞬の静寂の後、彼女は返答を語り始めた。
セイア「そうだね……君は私が『予知夢』を見ることを知っているだろう?」
「……えぇ、まぁ。」
セイア「私の『予知夢』は避けられない。事実、白州アズサの襲撃も、ミカがアリウスを引き連れ、ナギサを狙い……先生と補習授業部に襲いかかることも知っていた。」
セイア「……だが、そこに『君』の姿は無かった。」
「……っ!」
動揺する心を沈め、再び言葉に耳を傾ける。
セイア「……結果は、知っての通り。ミカは補習授業部とシスターフッド、そして先生に敗れ……クーデターは失敗に終わった。まさに予知夢の通りだった。」
セイア「……だが、そこに君の姿がどこにも見えなかったんだ。」
「そんな……。」
セイア「今こうして、君と対話することも、私は予知夢で知ってはいたが……。」
セイア「その夢の中で、私は
セイア「今こうして話している光景も、まるで君という存在が、夢の内容という物語の中に
「……。」
信じられない話だった。
百合園セイアの情報はあまり来なかったが、予知夢の情報だけは伝わっていた。
それほどにも強大で、
だからマダムも情報を統制することなく、ミカ様を使ってでも襲撃したのだ。
その予知夢の内容に、僕がいない。
その事実が僕の思考を加速させていき、思い当たる『事実』に帰結していくのを感じた。
その上で、あえて僕は質問を投げた。
「……何故私は、あなたの予知夢にいなかったのでしょうか?」
セイア「そうだね……おそらく君は、『本来の世界』には存在しえない『
「……『
……あぁ、そうか。やっぱり、そうなのか。
僕は……みんなと、違う。
セイア「……随分と冷静だね。常人であれば興奮し、冷静さを欠き……パニックに陥っているだろうに。」
彼女が問いを投げかける。
落ち込みと孤独の心を押さえつけ、僕は言葉を紡いだ。
「……まぁ……そう、ですね……。内心、驚きはいっぱいですが……」
……そうだ、僕は──────
「『前世の記憶を持ちながら転生した』事実に比べたら、有り得る話かな、と。」
──────この世界でも、孤独なんだ。
セイア「……なるほど、そうきたか。だがしかし、そうか……」
セイア「……もしそれが事実であるのなら、ミカがアリウスにより深く足を踏み入れたことも、白州アズサとミカが予め顔を合わせていたという『変化』にも……納得がいく。」
セイア「だが、君ほどの存在でも……予知夢の結末を完全には変えられない、ということか……。」
「それって、どういう……」
意味深な言葉を発した彼女に質問を返そうとした、その時。
外に広がる景色に徐々に光が差し込み始めた。
「っ!? これは……!?」
セイア「……どうやら、時間切れのようだ。」
セイア「私としてはもっと聞きたいことがあったのだが……仕方が無い。」
僕は彼女に問いた。
「どういうことですか……!?」
セイア「単純な話さ。この世界はどうやら君の夢の中だった、と言うだけの話さ。」
セイア「君が目を覚ました時、この夢の語り場も消え……私たちはもう永遠に会うことは無いだろう。」
「……っ!」
セイア「……私は、君に期待した。『予知夢』で見た世界の流れを、僅かに変えた君に。」
セイア「……だが、『結末』までは、結局誰にも変えられない。」
その時、彼女の顔に影が差し込む。
その諦めの表情が、僕の奥の何かを締め付けた。
助けたい。
「……あの。」
辛さの中で苦しんでいる人がいる。
その事実が、僕の口から言葉を生み出していた。
打開案など、何も無いのに。
セイア「……? どうかしたのかな。」
案もなく動いた口を噛み締めた、その時。
ふと、とある人物の顔が脳裏を過ぎった。
「……だったら……。」
記憶の中の『あっちの僕』に、最後まで手を差し伸べてくれなかった『大人』。
望まずに訪れた
心から嫌悪する、『あの人物』を────
「……『先生』にすがったら、どうですか?」
───『先生』の名を、無意識に口に出していた。
セイア「……なるほど。検討だけしておくよ。」
その言葉が聞こえた瞬間、日の出の光が世界を包み……全てを白く染め上げていく。
目も開けられないほど、輝く世界の中───
セイア「……さよならだ。」
僕は、意識を手放した。
魔女に恋した少年兵の話 第二想 ~不信の捕虜~