航空巡洋艦「鈴谷」から発艦した水上偵察機は硫黄島基地から報告があった海域へ急行した。
そして所属の水上偵察機3番機から驚きの報告が上がった。
鈴谷
「大日本帝国海軍第三航空機動艦隊?確か扶桑さんを旗艦とした艦隊じゃなかったけ?」
士官妖精
「はい、偵察機に接触した戦闘機が第三航空機動艦隊所属の航空隊の戦闘機でした。」
鈴谷
「…一旦合流してみましょう。」
「鈴谷」と「さどしま」他陽炎型駆逐艦は第三航空機動艦隊のいる海域へ向かった。
数時間後 日本海軍 横須賀鎮守府 司令長官執務室
嘗ての海軍鎮守府を彷彿とさせる赤レンガ製の司令部の司令官執務室では零が「鈴谷」からの報告書を読んでいた。
零
「第三航空機動艦隊か…航空戦艦扶桑を旗艦とした艦隊だったな。確か無寄港航海出港の5日前に硫黄島の海軍基地でのイベントへ参加しに行っていたな。」
士官妖精
「はい、詳細は不明ですが、どうやら我々と同様に艦隊ごとこっちに来たようです。」
零
「…取り敢えず、第三航空機動艦隊を横須賀湾まで誘導させろ。私は米内大臣を通じて総理に報告する。」
士官妖精
「分かりました。」
そして士官妖精は敬礼をして退出する。そして零はパソコンを開くと報告書の製作に入った。
翌日、第三航空機動艦隊が横須賀湾に入港した。
第三航空機動艦隊
旗艦:扶桑
扶桑型航空戦艦 扶桑 山城
隼鷹型航空母艦 隼鷹 飛鷹
鳳翔型航空母艦 鳳翔
妙高型重巡洋艦 妙高 那智 足柄 羽黒
天龍型防空巡洋艦 天龍 龍田
朝潮型駆逐艦 朝潮 大潮 満潮 荒潮 朝雲
山雲 夏雲 峯雲 霞 霰
白露型駆逐艦 白露 時雨 村雨 夕立 春雨
五月雨 海風 山風 江風 涼風
畿内丸型貨物船 南海丸 北海丸
同日 横須賀鎮守府 司令長官執務室
扶桑
「第三航空機動艦隊旗艦、扶桑です。」
零
「日本海軍聯合艦隊司令長官の天崎零中将だ。早速で悪いが、ここまで来た経緯を話してくれ。」
扶桑
「はい、実は…」
「扶桑」は此処まで来た経緯を話し始める。
時間軸は零達、聯合艦隊が消息を絶った日と同日であった。艦隊は硫黄島海軍航空基地で開かれていたイベントに参加しており最終日に引き上げ予定であったが、使用していた実物の一式陸攻、銀河等の双発機に二式飛行艇や陸軍機を輸送する貨物船が機関故障と接触事故に巻き込まれ、仕方なく急遽派遣された2隻の貨物船と「扶桑」と「山城」に搭載し内地へ輸送のため出港した直後、晴れていたのに何故か落雷が艦隊を直撃し、気づけばこちらの硫黄島沖におり本土を目指していた途中で、「鈴谷」の水上偵察機に発見され今に至ると言う事だった。
零
「そうか。何の因果か分からんが、よく無事だったな。」
扶桑
「皆さん、訓練を頑張っていたからですよ。」
そう言うと、互いにお茶を一口飲む。
零
「第三航空機動艦隊の一件は海軍大臣を通じて総理に伝え、私に全権限が与えられている。第三航空機動艦隊を日本海軍に編入したいと考えているがどうする?」
扶桑
「よろしいのですか?なら是非とも司令の下に置かせてください。」
零
「よろしい。これからよろしく頼むぞ、扶桑。」
扶桑
「不詳航空戦艦扶桑始め第三航空機動艦隊、天崎零中将の指揮下に入ります。」
この日、正式に第三航空機動艦隊は日本海軍へ編入された。予想外の収穫として航空戦艦「扶桑」「山城」の格納庫と畿内丸型貨物船「南海丸」「北海丸」の貨物室に分解された状態で格納された一式陸攻を始めとした双発機や飛行艇、陸軍機などであった。
今回の第三航空機動艦隊の編入には陸軍からしたら棚から牡丹餅的な展開であり、当初は海軍の機体を生産し配備する予定であったが、今回の一件で少なからずの旧式の九七式戦闘機から最新鋭の陸風*1、他四式重爆撃機〝靖国〟、百式新司令部偵察機等の多種多様な陸軍機を入手する事ができた陸軍は、陸軍航空隊の設立を行おうとしたが、扱う人員や整備・生産ノウハウが確立できていなかった。
そこで陸軍は海軍に協力を仰ぎ[先行導入]という形で陸軍飛行船部隊より志願者を募り、陸軍と海軍での厳格な体力・身体検査を行い、志願者748名(ほぼ全隊員)の中から13名が選出され、海軍航空隊で育成を行う事が陸海軍で決定した。
更に日本海軍横須賀鎮守府所属の航空基地で技術研修が取り決められた。
数週間後 横須賀鎮守府 司令長官執務室
零
「東京海洋大学校飛行力学研究室より碇ゲンドウ教授、碇ユイ准教授、冬月コウゾウ講師、真希波・マリ・イラストリアス助教、早稲田海洋大学校新飛行物体力学研究室から篠ノ之束博士と助手の篠ノ之クロエさんと篠ノ之ラウラさんですね。確認しました、私が聯合艦隊司令長官の天崎零中将です。」
横須賀鎮守府の司令長官執務室では要請を受け、派遣された研究団の各校の代表者が挨拶に来ていた。
ゲンドウ
「碇ゲンドウです。どうぞよろしくお願い致します。」
各自が挨拶を済ませると、零は彼らを専用の研究所へと案内した。
横須賀航空隊基地
鎮守府のすぐそばのフロート上に建設された全長約2kmの滑走路脇に併設された格納庫には母艦の整備で一時的に基地に降ろされた烈風改を始めに零戦、彗星、流星、天山、そして貨物区画から陸揚げされ、組み立てられた一式陸攻等の双発機や陸軍機が翼を休めていた。航空基地を横切った先に新しく建設された3階建ての建物の正面玄関の横には大きく「航空研究所」と書かれた札が埋め込まれていた。
零
「ここが今日から皆さんが利用して頂く研究所です。大きな室内作業所に奥には小さいながら航空機格納庫を併設し、旧式ではありますが以前使用していた零戦の初期生産型を駐機しておりますので、研究材料としてご利用ください。」
ゲンドウ
「ありがとうございます。」
零
「いえ、ではこれで失礼。」
そう言い、後の案内を士官妖精に丸投げし書類作業に戻った。
2週間後 横須賀鎮守府 司令長官執務室
外では日が沈み、窓から差し込む夕焼けが室内を赤く染めた司令長官執務室の長ソファに零と反対側に真霜と真冬が座っていた。
零
「本日はどの様なご用向きで?ああ、ラフな話し方で結構ですよ。」
真霜
「そうですか、ならそうするわ。実は、先の陸軍飛行船部隊の航空隊員育成の煽りを受けたうちの上層部が、ブルーマーメイドの飛行船部隊からも何名か選抜して同じように航空部隊の育成を依頼してほしいと天崎中将と繋がりがある私に言ってきたのよ。」
零
「なるほど、良いでしょう。当初30名の受け入れを想定していましたが、予想以上に少なかったので、どうするか考えていた所だったので丁度良い。基礎はほぼ同じなのでそこは共通化して陸軍は陸軍機、ブルーマーメイドは海軍機で分けて育成をしましょう。」
真霜
「ありがとうございます。それとこれを。」
そう言い、机に置いたのは[次期日本ブルーマーメイド艦艇整備要目]と書かれたファイルであった。
零
「これは?」
真霜
「来年、再来年に航空部隊配備を見越した日本ブルーマーメイド艦艇群の整備要目書です。この整備要目の最重要艦艇の航空母艦の建造、配備に関しての意見が欲しいのです。」
そう言い、要目書艦艇一覧表の1番上に記載された航空母艦の完成図と諸元を指差す。外観は翔鶴型に近いが、全長が150m、飛行甲板の全長は155mと短く搭載機も烈風改・流星改としながらも搭載機数は半分程まで減少していた。
零
「なるほどねぇ… 少々お待ちを。」
そう言い、ポケットから携帯を取り出して何処かへ電話を掛け、数分話すと電話を切った。
零
「今現場の者が来ますので、暫くお待ちください。」
そして十数分後、扉がノックされると一人の海軍航空兵が入室した。
疾風
「天崎疾風大尉であります。」
零
「よく来た、隣に座れ。それといつもの感じで構わん。」
疾風
「…りょ~かい。」
そう言い、零の隣に[ドカッ]と座る。
疾風
「それで零兄、俺に何か用か?(ゴソゴソ…)零兄、煙草持ってねぇか?切らしちまった。」
零
「はいよ。それと、此処に呼んだのは現場の声を聞きたくてね。これなんだが。」
そう言い、煙草を一本手渡し、さっきの整備要目書の空母の完成諸元を指差す。
疾風
「翔鶴型っぽいな。性能で言えばサンガモン級か?いや1からだからカサブランカ級はあるな。でも155mで烈風や流星は運用できねぇな。零戦でもこの発艦距離は結構キツいだろうな。」
疾風は現場の人間として、この空母の欠点を指摘していく。その様子をまじまじと見る真冬にメモを取る真霜。
数分後
疾風
「とまぁ、現場の人間からはこれくらいかな?」
そう言い、カップのお茶を一気飲みする。
真霜
「貴重なご意見をありがとうございます。」
疾風
「いやぁ、とんでもねぇ。」
零
「それにしても、こんな護衛空母擬を本気で造るつもりなのですか?」
真霜
「まぁ、少なくとも上層部はそのつもりよ。海軍が航空戦力を保有して陸軍も保有し始める中で自分たちが置いてけぼりになっているのが問題視されたの。それとこの空母が仮に建造され配備された場合、中将は賛成ですか?」
零
「いいや、私は反対だ。艦隊での実戦運用には使えん。最も船団護衛なんかの護衛任務には艦載機を変更してなら使えるが、艦隊の主軸としては性能不足が否めん。せめてアメリカのヨークタウン級くらいは欲しいな。」
真霜
「ヨークタウン級?」
零
「ん?ああ、失礼。元いた世界のアメリカ空母でね。全長252m基準排水量21.000tの正規空母です。確か艦載機の搭載機は…」
疾風
「80〜90機で最大98機だぜ。」
零
「おお、すまんな。」
そう言い、お茶を一口飲む。
零
「貴官らが空母をどの様に運用するかは分かりませんが、我々と同じ様に運用する場合、この要目書の空母では圧倒的に性能が不足していると言っても良いでしょう。」
疾風
「そうだよな〜、せめてカタパルトでも有れば良いんだがな〜。」
ソファの座り背もたれにだらし無く寄っ掛かる疾風が付け加える。
真霜・真冬
「「カタパルト?」」
真霜と真冬がハモる。
真霜
「カタパルトとは何ですか?」
疾風
「…零兄、もしかして提出し忘れたか?」
零
「いや、間違いなく提出した。翔鶴型の性能表に記載されていませんでしたか?」
真霜
「真冬ちょっと調べてみて。」
真冬
「わかった。」
そう言い、タブレット端末でデータを調べる真冬。暫くすると「あった」と言っても資料を見せる。
真冬
「飛行甲板に三基搭載されているって書いてある。」
真霜
「でも、それっぽい物は見当たらないけど…」
翔鶴のイラスト図を見る真霜と真冬。
零
「カタパルトとは、これの事だよ。」
そう言い、イラストの飛行甲板の先端に描かれた黒い線を指差す。
真霜
「これが、カタパルトですか?」
真冬
「…てっきり中世の攻城兵器のやつかと思ってたぜ。」
零
「…まぁ、飛行機が無かったら、空母もカタパルトも無いか。」
疾風
「カタパルトの和訳名は射出機だから、自分で浮遊する事ができる飛行船には必要無ぇから開発どころか構想すら無いわな。」
カタパルトの存在がない事に納得してする2人。
真霜
「天崎中将、このカタパルトについて教えて頂けないでしょうか?」
零
「疾風、飛べるか?」
疾風
「モ〜マンタイ。いつでも行けるぜ〜」
零
「うむ。真霜さん、真冬さん。カタパルトは観てもらった方が早い。今から時間あるかね?」
真霜
「えっ?ええ、ありますが。」
零
「良し、では付いて来てくれ。カタパルトがどういう物かお見せしよう。行くぞ疾風。」
疾風
「了解〜」
4人は執務室を出て、内火艇で停泊中の空母「阿蘇」へと乗り込んだ。疾風はその足で格納庫は行き、零と真霜、真冬は艦橋へと向かった。
阿蘇
「司令長官に敬礼!」
そう言いうと、艦橋の士官妖精達が一斉に敬礼をする。
零
「うむ。諸君、急な訓練要請に応じてくれてありがとう。発艦、着艦訓練は一度で済む。故に諸君らはいつも通りに動いてくれ。以上。」
阿蘇
「気をつけ、敬礼。」
再び敬礼をされて返礼を済ますと、士官妖精達は訓練通りに動き始めた。3人は防空指揮所へと移る。その間に飛行甲板では疾風が乗る零戦が格納庫から飛行甲板へ上げられ、エンジンを回し始めた直後であった。
阿蘇
『一番射出機、射出体勢へ。ワイヤー最終確認。』
航空整備妖精達にカタパルトへ移動させられた零戦の主脚に取り付けたワイヤーの最終確認へと移る。
そして1人の航空整備妖精が「セット完了」と知らせると、甲板要員に退避命令が出され、射出用意が完了した。
阿蘇
『一番射出機、射出用意! 射出!』
「阿蘇」が合図を出すと、ワイヤーに引っ張られた零戦が停船状態の「阿蘇」から勢い良く飛び立った。
零
「こいつがカタパルトです。これが有れば停船・低速航行、大型、小型空母関係なしに艦載機を発艦させる事が出来ます。特に小型空母で大型大重量の最新鋭機を運用するのには必要不可欠です。」
真霜
「これがカタパルト…」
真冬
「一体、何キロ出てるんだ…」
零
「そうですね。正規空母ではアメリカ製のC-11型を搭載して最大62mの機体を最大252km/hまで加速させる事が出来ます。」
真霜
「すごい…」
真冬
「……」( ゚д゚)
真霜は驚き、真冬は驚きの余り目を点にして口をポカーンと開けていた。そして疾風の零戦が着艦すると、コックピットから飛び降り艦橋へと入った。
疾風
「終わったぜ〜」
零
「お疲れさん。」
疾風
「それじゃ、俺は戻るけど零兄たちはどうする?」
零
「ああ。我々も一緒に戻ろう。」
そう言い、艦橋から出た一行は内火艇へ乗り鎮守府に戻るとそこで解散した。真霜と真冬は本部へと戻ると、上層部へ提出する修正案の作成を始め、残業が確定し朝一番に行かなかった事を後悔したのは言うまでもない。
次回、第12話【航空研究所製作、試作試験研究機「羽ばたき」離陸。】