数日後 横須賀海軍工廠
零
「これが、か…」
瑞鶴
「はい、来年度より配備が予定されている新型の攻撃型潜水艦です。」
零が覗き込んだ乾ドックの中には、巨大な建造中の潜水艦が鎮座し、その左右のドックにも同じ様な潜水艦が合わせて計4隻が建造中であった。
零
「米国の攻撃型原潜とほぼ同じだな。」
瑞鶴
「外観や主要な諸元、外郭装甲材料表等はこっちが提供しました。あとはこの世界の日本の高い技術力の賜物です。ですが、原潜より航続距離や速力、潜航時間、騒音は劣るのが弱点です。」
零
「だが、それでも通常のディーゼル潜に比べて遥かに高い性能を発揮するだろ?それに例のスターリングエンジンも搭載されている。」
瑞鶴
「確かに、従来のディーゼル潜水艦以上の潜航時間を誇り、この世界としては初の垂直ミサイル発射筒の搭載と発射可能。たった一隻で敵主力艦を葬る事すら容易いでしょうね。」
零
「そうだ。潜水艦の最大の力とは目に見えない潜在的脅威にこそ真価を発揮する。しかも搭載しているのは誘導装置搭載型の酸素魚雷にプラスして対艦ミサイルまで装備している。敵からすれば戦艦や空母以上の脅威だよ。」
腕時計を見ると、時計の短針が2を指していた。
零
「そろそろ、彼らが着く頃合いか。行こう。」
そう言い、零は歩き出す。
瑞鶴
「彼らと言うと、この潜水艦群の艦長たちですか?」
瑞鶴が零の後に続きながら聞いてくる。
零
「ああ、ホワイトドルフィンから私がスカウトして来た。彼らなら私の期待に応えてくれるだろう。」
瑞鶴
「確か米海軍に幾度も撃沈判定を出させたと聞いていますが、本当なのでしょうか?」
零
「本当だとも。何度も記録映像を見たが、彼らの腕と連携術は確かなものだ。」
瑞鶴
「はぁ…」
2人は乾ドックを後にすると、造船所の建物内にある会議室へと入る。
零
「遅れましたかな?」
???
「いえ、我々も丁度着いた所です。」
会議室に入ると、ソファにホワイトドルフィンの制服を着た4名の男性隊員が座っていたが、零の姿を見ると立ち上がり敬礼をした。
そして零が返礼をして着席すると、4人も着席する。
零
「改めまして、日本海軍海軍中将の天崎零です。」
瑞鶴
「航空母艦瑞鶴艦長の瑞鶴です。」
海江田四郎
「海江田四郎です。」
深町洋介
「深町洋介です。」
前原一征
「前原一征です。」
速水洋平
「速水洋平です。」
各自が自己紹介を済ませると、零が鞄から資料が入った1つのファイルを4人の前に差し出す。
零
「今回、貴官等の配属に伴い新たに建造される潜水艦の大まかなスペックだ。内容は軍機であるため決して口外はしないように。」
深町が手に取り、ページを1枚捲ると4人はそのスペックに目の色を変えた。
深町
「なんだこのスペックは!?」
海江田
「これは…」
前原
「なんて規格外なんだ。」
速水
「ふむ…」
――――――――――
伊600型潜水艦(仮称)
全長:105.0m
全幅:9.8m
基準排水量:6.075㌧
吃水:8.9m
機関:ディーゼル+スターリング+電動機
武装:魚雷発射管:610mm×6門
VLS:8セル
速力:15ノット(水上)
25ノット(水中)
外観:たいげい型潜水艦を大きくしたような艦影
――――――――――
零
「それとここには記載していませんが、船体はチタン合金製の葉巻船体で軟性ゴム被膜の吸音タイルが船体をすっぽりと覆う様に取り付けてあります。」
深町
「凄い潜水艦を造ったもんだ。」
前原
「正しく、鋼鉄の鯨ですな。」
速水
「潜水艦としては規格外の大きさに加え、VLSも装備している。」
海江田
「米国の新型潜水艦を大きく上回る巨体にVLS。海戦の常識が大きく変化する艦となるでしょうな。」
現在存在する全ての潜水艦を上回る性能を持つこの艦に、各自は各々の反応を示す。
零
「ええ、横須賀の乾ドックで4隻同時に建造中で、現在1番艦を優先的に建造しているので来年の頭頃の竣工が予定されていますので竣工次第、交代で慣熟訓練を行っていただきたい。」
海江田
「分かりました。順番は此方で決めます。」
零
「それで構いません。では、私はそろそろ。」
零は机のファイルを鞄に戻すと立ち上がる。
零
「それでは、失礼。」
四人
「「「「(ビシッ…)」」」」(敬礼)
零は返礼して、そのまま部屋を退出する。
次回、第18話【事変発生】