シェフ実装で思ったけど、フォンテ発明家キャラが実装していないと思って書いた小説   作:ヒラメもち

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妄想で補完したくなった、伝説任務の前日譚(たん)

まだ本格的にエスコフィエ伝説任務そのものは扱っていませんが、そこに出てくる情報は出てきています。

ネタバレを避けたい場合はブラウザバック推奨です。


メロピデ要塞①

 

 

 

 生まれた国である稲妻を離れ、フォンテーヌで暮らし始めてから何年も経過している。

 

 俺はいろいろと罪を犯してしまい、メロピデ要塞という監獄で、刑期が終わるまで囚人として穏やかに過ごしていたけど。

 最近は知り合いの女性がやってきたことで、慌ただしい生活になっていた。

 

 今日もエスコフィエさんが、執務室で叫んでいる声が要塞内に響いている。

 俺が彼女と出会った頃は、とても小さな少女だったのにな。

 

 今となっては、フリーナ様から『カーネル・デセール』の称号を与えられ、スイーツ以外もプロ級の腕前で、現在このフォンテーヌで最高のシェフとされている。

 

 だからマシナリー製作に携わるのではなく、彼女も当然のように調理場を希望したけど。

 

 たった1日で、俺たち素人料理人を全員(ひざまず)かせた。

 俺もレシピ通りならそこそこ料理できると思っていたんだけどな。

 

「あんな食材で、どうやって貴方の舌が満足のいく料理を作ればいいか、是非とも教えてほしいわね、公爵様?」

 

 あまり音を立てないように執務室に入れば、エスコフィエさんは握り拳を作り、挑発的な態度で大柄な男に抗議していた。

 まるでお姫様かのように煌びやかな金髪に対して、相変わらず古びたツナギな作業着は似つかわしくないな。

 

「エスコフィエさん、それがここのサービス食のルールなんだ。刑期が続いているうちは、囚人として従ってもらおうか」

 

 声からして明らかに怒っているエスコフィエさんに、大柄な男は動じた様子を見せず、紳士的な態度で接している。

 執務室の席に座っているリオセスリさんは『公爵』の称号を持ち、ここで最も偉い人である。

 

「そっちの事情も分かってますけどね。作る側にも食べる側にも限度ってものがあるのよ」

 

 このメロピデ要塞において、たとえ貨幣が払えなくとも、最低限の『食』の保証がサービス食というわけだ。おみくじ要素で日々にちょっとした変化をもたらしているが。

 

「例えば今日送られてきたサービス食用のパン、あれはヒルチャールの棍棒のように硬かったわ。あれなら小麦そのものを送ってくれた方が何百倍もマシよ」

 

 エスコフィエさんは早口で畳み掛ける。

 まさか早朝から食材一覧を確認したエスコフィエさんが激怒して、俺たちで軽く濡らしたパンをチネチネと、お米のように丸める作業が始まるなんて思わなかったな。

 

「それに、砂糖だって全く量が足りないわ。こっちだって何とかやりくりしてるけどね。サービス食のほんの一部に、スイーツを作ってあげるのも許されないわけ?」

 

「嗜好品の(たぐ)いは、特別許可券を使っての食事も高額に設定されているはずだ。その理由がエスコフィエさんなら分かるだろう?」

 

 つまりメロピデ要塞にモラがない。

 先日の大洪水からの復興により、カツカツで運営しているのだろう。

 

 噂によれば、フリーナ様やヌヴィレット様が数百年分ものお給金を、国に寄付してくださったそうで、俺たち市民は頭が上がらない。だが、それで足りないほどあの災害の被害は大きかった。

 

「食事は単なる栄養補給じゃないの。美味しい料理は希望と力、そして幸せな気持ちを与えてくれる。それは貴方も理解しているはずだけど?」

 

「それは身に染みて分かっていることさ」

 

 リオセスリさん自身が、ここで囚人として服役したことも真実なんだろうな。

 

「わかった、ならヌヴィレットさんに、こう申請しておこう。小麦のままで送ってくれたとしても、こちらの一流シェフとコックたちが、美味しい料理に変えてくれるだろうってな」

 

 公爵はニヤリと笑みを浮かべるも、それは脅しにはならないぞ。

 

「ええ、それでいいのよ。ちょっと作業工程が増えるだけで、レシピは数百倍に選べるもの」

 

 どれくらいの工程が増えるんだろうな。

 明日もがんばろうな、今頃すでに寝ているクストとラヴェリューヌ。

 

「ふむ、ちょうどいいか」

 

 何かを思いついたように公爵は席を立って、奥の戸棚に向かっていった。

 今のうちにと思って、俺は声をかけることにした。

 

「あの、エスコフィエ…さん?」

 

「あら、いたの? 他の人たちのように疲れ果てて、もうとっくに部屋で眠っているものだと思っていたわ」

 

 こちらを振り向き、その青い瞳で優しげな声をかけてくれる。

 

「コックの朝は早いんだから、早く休みなさいよ」

「それはこちらの台詞ですよ、シェフ」

 

 他人にも厳しい指導をする人だけど、その何倍も自分に厳しい人だ。

 エスコフィエさんはこの後も調理場に戻って、古い調理場にこべりついた油汚れの清掃だったり、料理の研究だったり、またたぶん徹夜するんだろう。

 

「ここに来てからあまり休めていないでしょう。もしここが稲妻だったら、温泉にでも入って、ゆっくり身体を癒してほしいほどです」

 

 科学院に押し掛けてきて、発明して欲しい物の要望を熱心に語ってきた。

 あの時の小さな少女が、そこそこ成長して淑女と呼ぶべき年齢になったとはいえ、どうにも心配になってしまう。

 

「……ふん、そんなヤワじゃないわよ」

 

 身体の前で腕を組み、モチモチで柔らかそうな部位が強調されるけど。

 

 それよりも、猫の尻尾のように『順応型運動シグナル応答補助マシナリー』がフリフリと動いている。いつの間に、そんな機能にまで発展したことも気になるけど。

 

「……まぁ心配してくれて探しにきたなら、一応……」

 

「いえ、急いで公爵にお伝えしたいことがありまして」

 

「……ああ」

 

 机に木箱を置いて座っていた公爵が静かに頷いてくれた。

 エスコフィエさんは肩を跳ねさせて、少し離れた距離に移動したけど。

 

「公爵、ぜひ見てくださいよ、この修復及び改良したプロスペクタードリルMk-II!」

 

 地面に立ててドリルを回転させて実演する。

 あぁ…なんと静かな音で緩やかな回転だろう…。

 

「数百年前に使われていたとされるドリル、まさかこれほど精巧にできたドリルが、メロピデ要塞の地下区画にいくつも置かれているなんて思いませんでした!」

 

 400年前、フォンテーヌの科学院の創立者である『アラン・ギヨタン』は、制御可能な『プネウムシア対消滅エネルギー』を発明した。

 それから研究を重ねることで、現在に至っては安定してエネルギーを貯める電池が実用化しているが。

 

「動力源は壊れていましたが、()の部分を最新の物に置き換えました。これなら現代のツール以上に活躍することでしょう」

 

 配線を接続したり、機構を見直したり、なかなか骨が折れる作業だった。

 

「そう、フォンテーヌ風にたとえれば、熱したナイフをバターに刺すかのように、深々と岩石に食い込むはず」

 

「そんなバターそのものをステーキのような食べ方で……いえ、バター風味のスイーツなら……温かいナイフで、冷たいバター…アイスならどうかしら」

 

 『こほん』と公爵が俺たちの注目を集めた。

 

「こっちは、とあるお方からの差し入れの茶葉だ。食材の見直しに関する申請が通るまで、スイーツの足しにでもしてくれ」

「あら、この香りは璃月の……沈玉仙茶ね! しかも1人で飲みきるなら、何か月分も毎日飲めるほどの量があるわ!」

 

 公爵が何やら高級そうな茶葉を大量にくれるようで、エスコフィエさんは華やかな笑顔を浮かべて『助かるわ』とお礼を述べた。

 

「それで、そっちのドリルはあんた名義で科学院に送っておく」

「元々そのつもりでしたからお願いします」

 

 ドリルの動作を止めて、机の上に置いた。

 実証実験や耐久試験はまたここを出てからになるな。

 

「俺の予想だと所有すら許可制だろうな。またここに戻ってきたくないなら、執律庭に申請してから、その発明品の研究を続けるといい」

 

「なるほど、フォンテーヌのルールだと、ドリルの所持も許可制ですか……」

 

 レンジゲージという大型分度器を骨董品屋で見つけて、修理して所持していたことも罪の1つとして問われたからな。まさかあれが当時に戦闘用に使われていた弓だなんて思わなかった。

 

 まぁ元々捕まった罪状は、フライドチキン屋さんの前にあった人形を、酒に酔ってクロックワークマシナリーに改造したことだったけど。

 

「そこそこ槍を使える身としても、これは武器としても使われていたと思うわ」

 

 エスコフィエさんは『まったくすぐ発明に熱中するんだから』と、やれやれとした様子を見せた。

 

「まさかまたレムリア関係…… 面白い発明品が多いのに、すぐ兵器運用していた時代のようですからね……」

 

 プロスペクタードリルMk-IIも、執律庭で徹底して管理してもらうしかない。

 この発明が復興の助けになるかと思って、喜んでいたんだけどな。

 

「編み出された科学も使い手次第ってことよね。水中生物のルエトワールから抽出した成分が、医学における薬にもなれば、身体に害を及ぼす調味料にもなるように」

 

 その罪は、エスコフィエさん自身のせいじゃないってのに。

 

「エスコフィエさん、シェフとして責任を、あまり溜め込みすぎないでくださいね」

 

「ふん、あんな調味料を、厨房に入れた子を反省させてやりたいってだけよ」

 

 そう言いきって、尻尾のようにマシナリーをゆらゆらさせながら、エスコフィエさんは背を向けた。あれには数年前に試作として学習機能を付けてみたけど、どこかの猫から学んだんだろうか。

 

「茶葉を運んでちょうだい、源也(ゲンヤ)

 

「わかりました。それでは失礼します、公爵」

 

「ああ、あまり研究に熱中しすぎて、完徹しないようにしろよ」

 

 公爵にそう言われてたものの。

 すでにこの茶葉を使ったレシピの考案で、頭がいっぱいのエスコフィエさんに朝まで付き合うことになるだろう。

 

 そんな彼女が子どものように笑っている横顔が好きだ。

 

 この子と出会った直後は、発明した調理用マシナリーに何度も修正点を言われて、その度に作り直す日々だったな。俺は『依頼人が満足するまでお代は払わなくていい』というスタンスだし。

 

 でも、発明品を使った感想を興奮して話してくれたり、実際に使って料理を作ってくれたり、共同研究した時間は楽しいものだった。

 

 お互い忙しい立場になって、なかなか会えてなかったけど、お嬢さんが元気そうでよかった。

 

 

 

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