シェフ実装で思ったけど、フォンテ発明家キャラが実装していないと思って書いた小説   作:ヒラメもち

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【前書き】
エスコの好感度を上げたタイミングで
時系列をまとめていたら...

(エスコがメロピデ要塞から出る)→(魔神任務の期間中も修行に夢中になる)
だったという。てっきり逆だと思っていました。

メロピデ要塞の食事には抗議しただろうとか。
刑期を終えた直後に、どうにもフリーナとナヴィアが友人の友人として親しくなりそうなパーティーがあったりとか。

いろいろ疑問点も出まして、まぁ書きたい内容のために、ほんの少し時系列を前後させたく、オリジナル要素のタグを入れさせていただきます。





メロピデ要塞③

 

 どうやら作業の途中で眠ってしまっていて、そこそこ長く夢を見ていた気分だ。

 断片的とはいえ、過去のことを思い出していたらしい。

 

 スメールの教令院で研究されてそうな『夢』に関する論文は読んだことがないし、俺では稲妻の夢喰い(ばく)たちのように追体験することもできない。

 

 まぁその分野に素人な意見だけど、深層心理に大きく残っていることではあるだろう。

 だから、今の遺志を貫くために、いつか必要かもしれない。

 

 まるで物語のように、昔のことを思い出しながら文字として書き起こしてみようか。

 

 

***

 

 

 『だっだだー!』という音が似合うように、俺の研究室に押し掛けてくるお嬢さんがいた。

 

源也(ゲンヤ)いる!?」

 

 科学院には、好き勝手に自分たちの分野を研究したい者が集まっているけど。

 資金提供を受けるためにも、パレ・メルモニアという行政機関を通して、科学院は人々から研究依頼を受けることがある。

 

 しかもそれは当番制で、無理難題すら多い。

 ある程度は結果を出して、そこでお断りして、再び自分の研究に戻る者も少なくない。

 

 あの頃の俺はまだまだ駆け出しで、科学院に飛び込んできた稲妻人で、とても若いお嬢さんの研究依頼を担当することになった。

 最初は簡単な調理器具の開発だったけど、その使い心地が気に入られたらしい。

 持ち運びできる調理型マシナリーを名指しで依頼されたりとか、マシナリー技術を学ぶにあたって作っていた『順応型運動シグナル応答補助マシナリー』の試作品を買い取ってくれたりとかな。

 

 どうやら幼い頃から小さなレストランで、しかも修行のために自らの意志で働いていたようだ。そんなお嬢さんも今では有名レストランのコックらしい。

 

 料理研究のことで頭の中がいっぱいらしく、お給金のほとんどをつぎ込んでくる。

 フォンテーヌ風に言えば、俺のスポンサー様だ。

 

「また寝ないで続けてたのね? 相変わらず本まみれだし、もしこれが厨房だったなら、私はアルレッキーノ様くらいカンカンよ?」

 

 今は表現や声が優しいけど、厨房だと例えばそうやって脅しているんだろうな。

 

「言われた通り、安価で高性能な冷却装置の理論を組み立てている最中でして」

 

 物の温度を上げることより、物の温度を下げることは非常に難しい。

 それこそ氷スライムから取れた素材を冒険者協会から買うほうが、何十倍もコストがかからない。

 

 このフォンテーヌでも、最低限の研究しかされてこなかったようだ。

 しかもお嬢さんは冷蔵どころか、冷凍技術の領域すら欲しがっている。

 

「だから良い情報を仕入れてきたわ。モンドという国は知ってる?」

 

 行ったことはないけど、頷いておく。

 

「その近くのドラゴンスパインという雪山に永久的な冷媒があるんですって」

 

「永久……それほど強大な氷元素力なら魔神関係でしょう。俺は科学者で、元素関連や歴史研究家は専門外で……」

 

 元素力を扱えるような『神の目』を持っている人は限られていて、それ以外の元素力は、例外を除けば永久のものとは言えない。

 お嬢さんが求めているのは、もっと大衆向けのマシナリーだろう。

 

「科学的な可能性もあるなら探求するべきよ。もし見つからなかったとしても、何かインスピレーションも湧いてくるかもしれないわ」

 

「まぁ一理ありますけど、それならもう少し安全な場所でも……って、もしかしてここで断ったら1人で行く気ですか?」

 

 このお嬢さんは、料理に関することなら一般人の何百倍も行動力がある。

 一応は俺も水元素の『神の目』を持っていることもあり、たまに羨ましがっている様子は見せていた。

 このフォンテーヌではなかなか味わえないような、氷元素の『神の目』を手に入れるきっかけとしても、ドラゴンスパインに行きたがっているんだろう。

 

「うっ…私もそこそこ戦えるけど……やっぱり神の目を持ってないと元素生物の相手は大変だし……」

 

「氷元素に有効な炎元素や雷元素ではなく、水元素だし、戦うのも得意じゃないんですけど……」

 

 尻尾のようなマシナリーと合わせて、両手の指をもじもじさせているお嬢さんの身が危ないだろう。

 あの尻尾で、背丈以上の鉄パイプを振るってみせたことがあるとはいえな。

 

 それに、稲妻では(くわ)を振っていた俺にできることと言ったら、素人の動きで両手剣を振るうことか、空中偵察型マシナリーから水鉄砲を飛ばす程度のものだ。

 

 治安のいいモンドや璃月の首都から離れていることもあって、盗賊やヒルチャールも多そうだ。

 

 最近は棘薔薇の会(スピナ・ディ・ロースラ)も慌ただしそうで、冒険者協会の冒険者に護衛を頼むにしても、旅費と合わせてどれだけの費用がかかることか。

 

「まぁエスコフィエさん1人で旅立つよりはマシか……」

 

 若き努力家な天才なお嬢さんにとって、一刻も早く冷凍技術を気軽に使いたいんだろう。俺の研究が遅れていることもあって、スポンサー様からの追加依頼と考えようか。

 

「では、ご両親に挨拶してからいきましょうか」

 

「えぇ!? あいさつ!?」

 

 お嬢さんのご両親も、急に1人娘が外国に旅立つことになって、安心して夜も眠れなかったことだろう。

 

 まったく、ただ研究室に籠っているだけの人生だと思っていたのにな。『フォンテーヌ以外でも使えるエネルギー技術の確立』、まだまだ完成には程遠いけど。

 

 インスピレーションだったか、そういうのは大切だろうし。

 

 まるでサラダのように、日々に彩りをくれるお嬢さんだ。

 

 

***

 

 

 このメロピデ要塞にはいくつかルールがある。

 消灯時間からは宿泊エリアで生活することだったり、サービス食は1日1食だったり。

 『助け合いの会』のような組織を新たに作る時は公爵の許可が必要だったり。

 医療従事者には決して手を出さないことだったり。

 

 しかしそんなルールが書かれた掲示板のほかに、囚人の間には『隠しルール』が存在しているようだ。

 

 そのうちの1つがこれだ。

 3日連続で、食事と寝る時以外、ずっと生産エリアで働き続けたら、4日目の昼ご飯の時に悪いことが起こる。

 

 そう、特別許可食堂のサービス食が『不気味な肉』となるのだ。

 

「身体に効く味だな……」

 

 柑橘系な濃い目のソースをかけても、謎の肉の独特な風味をかき消すことは不可能だったらしい。

 フォンテーヌの伝統料理らしく、羊の内臓をミンチにした料理『ハギス』を食べた時以上の強烈さだ。

 

「なんか……ゴメン」

 

 彼女が素直に謝っている理由は、この料理のアレンジ技術的が足りなかったことと、冷蔵設備を整える作業の依頼を出したこと、その両方といったところだろう。

 

 いつもなら『体調管理くらい自分でしなさいよ』とか言いそうなのにな。実際、筆が乗ってしまって睡眠時間をさらに削ってしまったし。

 

「昔もね、シェフに料理を教えてもらったことがあるのよ」

 

 どこかワクワクしながらエスコフィエさんと話しているのは、看護師長のシグウィンさんだ。

 全体的に見た目が人間の少女でも、長い時間を生きている。まるでウサギな耳や尻尾もあって、その清潔な服装からも、フォンテーヌの物語に出てくるような天使や妖精のようだ。

 

 俺がフォンテーヌに移住して驚いたことの1つが、彼女たちメリュジーヌという種族が人間と共存していることだった。稲妻にも妖怪がいるけど、人里に住んでいる数は少なかったし。

 

「そうだ、源也さんは見ないように食べててね。ウチは可愛いと思ってても、キミたちはそうじゃないみたいだから」

 

「えっ、なんなの…この植物……」

 

 シグウィンさんに言われて、エスコフィエさんが珍しく食材に驚いていて、俺は目の前の食事に集中することにするけど。

 

 これから一体どんなものを追加で食べることになるんだ。

 

 それにしても、彼女が腰に身に着けていたのが『メリュジーヌ専用携帯型統合医療設備』か。

 ヌヴィレット様経由の依頼だとされていて、遠い過去から現在でも定期的に改良計画が行われる。技術面よりデザイン案を持ち寄って相談する時間が長いらしいけど。

 

「その、シグウィンさんはどういうことを意識して、料理を…」

 

 エスコフィエさんも、さすがにメリュジーヌの伝統料理などは管轄外なのだろうか。彼女たちもスイーツは好きみたいだし。

 

「そうねー、身体にいい食べものはたくさんあって、それぞれに違う栄養価があるのよ。だから…」

 

「だから?」

 

 エスコフィエさんは、長年生きた彼女の知恵を学ぶべく、興味深そうに耳を傾けているようだ。

 

「ウチは、それらを全部混ぜ合わせるっていう、いい方法を思いついたのよ」

 

「ちょっ!? ストップ!? どこから何よその粉末は!?」

 

 支離滅裂な言葉で慌てるエスコフィエさんに、『あら、かわいいお顔ね』と楽しそうに返すだけだ。

 

 料理しているはずなのに、とても物音が静かだ。

 むしろそれが恐ろしい。

 

「さっ、ウチ特製の栄養ミルクセーキよ。2人ともどうぞ」

 

 どうやら加熱の工程なんてなかったらしい。

 よいしょという感じで、目の前のテーブルに置かれた。

 

 可愛らしい容器が花で飾られている。

 しかしなぜか中身が青色に染まっている。稲妻の海にあるウミレイシのような鮮やかさだ。これは本当にミルクセーキなのか。

 

「ウチは公爵にも届けてくるね! あとで他に何を入れればいいかアドバイスしてね、エスコフィエさん!」

 

 どうやらまだ食材の種類を増やしたいらしい。

 そんな純粋な笑顔に、スパルタで有名なシェフも、ひきつった笑みを浮かべるしかないようだ。

 

 テクテクと歩いていくシグウィンさんを見届けてから。

 

 プロの表情に戻ったエスコフィエさんは、紙とペンを持って席についた。

 

「ここでの生活は試練ね。料理人として新たな可能性を開けそうな気がするわ」

 

 このミルクセーキの味覚を研究することで、栄養価の高さをそのままに、人間の舌で美味しく感じるレシピに改良するつもりなんだろう。

 

「このロマリタイムフラワー、日用品の原材料なんだけど、さすがに食べないわよね?」

 

 水色で弾力がある花びらをかき分けながら、エスコフィエさんはストローに口をつけて、ゴクゴクと味わうように飲み始める。

 

 さて、味の感想はいかがなものか。

 

「わぁーー」

 

 この日、エスコフィエさんとシグウィンさんの、果てのない戦いが始まった。

 

 

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